金沢大 学十 全 医 学会 稚 誌 第9 3巻 第3号 51 3 −5 33 く19 84J
肝
線
推 症 の 進 展 に 関す
る形 態学
的 研究
A Ipha−N aphthyl−Isothio cy a n ate および 3,−M ethyl− 4 −D im ethyla min o a z obe n e z e ne 投 与ラ ット 肝の
光 学 顕微鏡 的 並び に電 子 顕微鏡 的 観察
金沢 大学 医学 部 病理学 第一儲 産 く主任二中西 功 夫教 授ナ
井 川 正
く昭和5 9年5 月1 8日受 付1
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肝 線 維 症の進 展 過 程を明ら かにす る た めに, alpha−n aphthyトis othio cya n ate くA N m およ び 3,−m ethyl−4−d im ethyla min o a z obe n z e n eく3I−Me−D A Bl 投与ラッ ト肝を光顕 的並びに電顕 的に観察し た一
A N 汀 投与によ る肝 線推 症は小葉 問お よ び 小葉 内胆 管の著しい増 生に随伴し, 門 脈域か ら線 維 芽細 胞ま た は筋線 維芽細 胞が進入 し膠 原線 維を形 成す ることによって進 行し た. この肝線 維 症にD is s e 腔の伊 東 細胞 が関与す ること は少な かっ た.
d 方, 3,−Me−D A B 投 与によ る肝 線 維症で は, まずo v alc ell く電顕 的には
小葉 内再生 胆 管上皮 細 胞1の増殖が起こり, 同時に, この周囲に伊 東 細胞が mi c r o丘bril を沈 着し, つ いで,
門脈域から線 推芽 細 胞ま た は筋線 維 芽 細 胞が進入 して膠 原線 推を形 成す る という過 程を とって進 行す る も のと考え ら れ た. A N I T 投与 群に お いて も,3INMe−D A B 投 与群に お いて も,
一 部にC e ntrilobula ra br o sis
をみること が あった. こ の線 維 症は, 小 葉 中 心域の伊 東 細 胞のみ な らず 中心静 脈壁の筋 線推 芽細 胞が膠 原 線椎を形 成す ることによって進 展し ている ものと思わ れ た.肝 線維 症に伴なって類 洞のC apilla riz atio n を みること があっ た が, そ の類洞 内 皮細 胞に連 続性の基 底膜が形成さ れ ること は な かった. 伊 東細 胞と紳 網
線経と の関 係や, 丘br o u s s ep ta 内に おけ る弾性 線 推 形成の意 義に つ いて考 察を加え た,
K ey w o rds alph a−n aphthyトis oth io cya n ate,3,−m ethyl ヰ dim ethyla min o a z o−
be nze n e,hepatic fibr o sis,Ito7s c ell
, m yOfibr obla st
肝線維 症は, 肝に おけ るコラ ゲン産 生とコラ ゲン分 解との均衡が くずれ, コ ラ ゲン産 生が優 位にな り, 膠 原線維が過 剰に形 成さ れて いる状 態であ るり. 膠 原 線 維の過 剰沈 着は, 実験 動物に おけ る肝線 推 症の観察や ヒトの肝線 維 化の解 析か ら,1フ グリ ソン掃く門 脈域う,
2う 傷害肝 細 胞 周囲, 3う 増生細 胆 管周囲の3 カ所か ら初 発す る と考え ら れ て お り, そ れ ぞ れpo rtal f
i br o sis,intr apa r e n chym al 丘br o sis, pe ri du ctula r
A br o sis と呼ば れて いる2131. こ の よ うに肝 緑 綬 症が 異っ た部位ま た は領 域から発症す ること を考え る とt
肝にお け る 膠 原線 維の過 剰 形成は単一 の細 胞 種, た と え ば線 維芽 細胞によっての み行わ れ る という もの では なく, む し ろ複 数の コラ ゲン産生細 胞が関与して いる
A M orphologi c al Study o n the Progr e s sio n
ものと考え ら れ る. 従って, 肝 緑 綬症の進 展はかな り 複雑であ ること が十 分推 定さ れ る.
肝 線維 症に関与す る細 胞の種類並 びに線 維 症の進 展
に伴う 丘br o u s s ep ta の形 成過 程に つ いて は, これ まで
に多くの実 験 的研 究が な さ れ ている. 19 4 0 年Or r4Iは pLdim ethyトa min o a z obe n z e n e を投 与し た ラッ ト肝 を観 察し, 肝細 胞の変性 脱 落, 胆 管の増 生にひ きつづ
いて門脈 域に形成さ れ た肉芽組 織が小葉 内へ伸 展して
線維 化が進 行す る と述べている. その後, 3,−m ethyl
−4−d im ethyla min oaz obe n z e n eく3,−M e−D A Bl な どの
ア ゾ色 素5ト7や , alpha−n aphthyl−is oth io cya n ate
くA N nlう投 与8糊 によ る実験 的 肝線 維 症が検 討さ れ,
これ らにお け る肝 線 推 症は細 胆 管の増 生や o v al c ell
of H epatic F ibr o sis ニ Ligh t a nd E le ctr o n M ic r o s c opic O bs e r v atio n s of the L iv e r s of Rats F ed A lpha−N aphthyトIs oth io cya n ate and 3l−M ethyl−4−D im ethyla min o a z obe n z e n e . Ka z u m a s a I ka w a, D epa rtm e nt of P ath olog y O
のir e cto r こPr of.I. N aka nis叫,S cho ol of M edicin e
, K a n a z a w a U niv e r sit y,K a n a z a w a,92 0.
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の増 殖に随 伴し て門 脈域から進入 す る線 推 芽細 胞がコ
ラ ゲンを産生 す ることによって進 行す る という考え方 が支 配 的になっている. こ のよ う な変 化は 一般にcho−
ra ngi 0丘br o sis と も呼ば れて いる61.
一方, 四塩 化炭 素 投与によって引き起こさ れ る肝 線 推症で は, 上記薬 剤の場 合と違って, 小葉 中JLJ或の肝 細胞が選択 的に傷 害さ れ, C e ntrilobula ra br o sis と呼 ば れ る線維 症を釆た す1 0ト 用0 こ の場 合には, 類 洞壁の 伊 東 細 胞川 くfat−StO ring c ell1 4卜1 61, lipo cy te1 2u31
,
pe risin u s oidal c elll Ol, adv e ntitio u sc o n n e ctiv etis s u e c ell1 71, 脂 肪摂 取 細胞1 811 9りがコ ラ ゲンを産 生し, 線 推 症を引き起こす ものと考え ら れて いる. ま た, 近年,
アルコ ー ル投 与ヒト の肝 線 推 症の初 期 像を観 察し た Naka oら叫は,アルコ ー ル性の初 期 線推 症は大 部 分 中 心 静脈 壁の筋 線 維芽 細 胞の増 殖と共におこる もの であ
る と指摘し てしミる
. 肝 硬 変 症に おけ る 丘br o u s s ep ta
内叫2 21や, 日本 住血 吸 虫症によ る肝の線 維 化 病 巣2別に は筋線 雄 芽細 胞が し ば しば同定さ れ ている. 更に, 肝
において は, 以上のよう な線緑 芽細 胞, 筋線 推 芽 細 胞,
伊 東細 胞に加え て, 最 近で は肝 細 胞瑚2引も血 管 内 皮細 胞抑 もコラ ゲン産 生 能を もつ こと が培 養 実 験で確か め ら れ ている. 従って, この よ う な最 近の知 見をふま え て,従来からchola ngi 0丘br o sis で あ る と考え ら れて いた肝 線 維 症を再 検 討す る必 要が あ.る よ うに思 わ れ
る.
そこで, 著 者は A N I T 投与ラット肝と 3,−M e−D A B 投与ラット肝を光 学顕 微 鏡 く光 顕J 並 びに電子顕 微 鏡
く電 顕う を 用い て経 時 的に観 察し, 肝 線 維 症の進 展 過 程を精査し た の でこ こ に報 告す る.
材 料およ び方 法
実 験 動 物と し て W ista r 系 雄ラットく体 重こ約2 0 0 gう を用いた.
1 . A N n l投 与群
0.1%の,割 合で A N I T くA l drich C he mic al Co.,
U S AIを混じ た飼料でラッ ト を飼 育し, 投 与 開 始 後5,
7, 1 3, 18, 2 0, 2 5, 3 0, 3 5, 5 0, 65,7 2 日 の ラッ ト を と殺し, その肝組織を光顕並 びに電 顕用試料と し た. ま た, 投 与後9 0,1 0 0,12 0 日目のラットの肝 組 織は光頗 的観 察の みに供し た.
光顕用試料 作 成こ肝 組 織の 一 部を 1 0 中 性緩 衝ホ
ルマリン で固定, パラフ ィ ン包埋, 薄 切し, へマ ト キ シリン. エオ ジンくH −El,pe riodic a cid−Schi ffくP A SI,
エ ラスチ カ. ワ ンギー ソ ンくE V GI, ア ザン, 鍍 銀 染色 を施し て観 察し た.
電顕用試 料作成二肝 組 織の 一部を細 切し,2 .5%グル ター ルアルデヒドく0.1 M カコ ジル酸 緩 衝 液,pH 7.射
で 4 8C, 6 0 分 間前 固 定し, つ い で 2 %オス ミウム酸 く0.1 M カコ ジル酸 緩衝 液, p月7−4うで 40C, 90 分間 後 固 定を行った0 材 料を アルコ ー ル系 列脱水 後, エボ ン812 に包埋 し た. 超 薄切片は ダ イ ヤモ ンド ナイフを 用 いて ウル ト ラ ト ームくL K B 8 8 0 0 型フで作製し, 酢酸 ウ ラニル .鉛二重染 色 並 びにタンニ ン酸染 色2 7J を施
し て 日 立 H−5 0 0型 電子顕 微 鏡 く75 E VI で直 接倍 率 9 00 へ 10.0 0 0 で観 察し た.電 顕 試 料観 察に先立って,光 顕所 見と対比 さ せ る た めに各ブロ ックか ら 1ノ上切片を 作 成,1%トルイ ジンブル ー で染 色を行い, 光顕 的に病 変 部を チェック し た.
2 .3,qM e−D A B 投 与群
0 .0 6%3I−M e−D A B 含有 固形 飼 料け リエ ンタル酵 母 社 製, 東 京フで ラット を飼 育し, 投 与 開 始後7,20,
3 0, 4 0, 45, 5 0, 6 0, 7 5, 8 0 日目のラットの肝 組織を 採 取し, 光顕 並 びに電 顕用試料と し て 用いた. ま た,
投 与 後9 0, 1 00, 11 0, 11 5, 120, 15 0, 2 0 0 日日の ラッ
トの肝組 織を光 顕 的に観 察し た.
光顕 用試 料 作 成こ採 取さ れ た肝 組 織の 一 部を A N 工丁投 与群の場 合と同様に, ホ ルマ リン固定, パ ラ
フ ィ ン切 片を作 成し, 各 種 染色を施し て観 察し た. 電 顕 用試 料 作 成こ電 顕用試 料も A N nl 投 与群の場 合と同 様の方 法で作成し た.
成 績
工. A N エー投与群 1 . 光 頗所 見
A N 工丁投 与ラットの肝 病 変は投 与 期 間と ほ ぼ平行 し て進 行す る が, 若干の個 体 差が あ る ので本 論文では 肝 線 推 症の進展に基いて, 5 日, 7 日, 13 日目の病変 を病 期I くStage I, e a rlystagel, 18 日, 2 0 日,25 日, 3 0 日目の病 変を病 期II くStageII, inte r m ediate Stagel, 3 5 日, 5 0 日, 65 日, 7 2 日 日の病 変を病期1II くStageIII, adv a n c ed stagel と分 類し, 各 病期 卸こ ま と めて記載す ることにす る. 病 期工 は, 門 脈域と門 脈 域との間を結ぷ細網 線 維ま た は膠原線 推の細い隔壁 く丘br o u s s ep tal が み ら れ るくP−P bridgel 程度の肝 線 椎 症の病 期を, 病 期II は,P−P bridge のみ な らず,
門 脈 域と小葉 中心域との問に細 網 線 維ま た は 膠原線維
から成る 丘br o u s s ep ta が形 成さ れ るtP−C bridgej 肝 線 維 症の病 期を, ま た, 病 期IIl は, P−P bridge およ
び P−C bridge に加えて, 弾 性線 稚が fi br o u s s ep ta内
に出 現す る病 期を 示 し ている.
1う 病 期工
門 脈 域には 胆管上皮 細 胞の腫大, 軽い胆管の増生お よ び胆 管周囲の線 維症がみら れ る. し ば し ば, 浮腫や 円形 細 胞 浸 潤が認め ら れ る. 小 葉周辺域や Zo n e12 別に
肝 線 維症の進展に関す る 形態 学 的研 究
沿っ て 小葉 内胆 管 く細 胆 酎 が増生 す る. 細 胆 管を小 葉中心域にみ ること は少ない. 紹 胆管の増生部位には
。V al c ell が少数 混 在している. 細 胆管や o v al c ell は 珊網線 維によっ て と り ま か れ ており, 隣接 類 洞壁に比
べて紳 網線 維が増 加して いる.
一部で は門 脈 域から隣 接門脈 域まで細 胆 管が連 珠 状に配 列し, これに沿って p−P bridge が形 成さ れ ている く図1l. ま た,
一部の
細 胆管の外周には門脈域と連 続す る膠 原線 椎が存 在す る. し ば し ば, 細 胆 管 周 囲に単核 細 胞や好 中 球の浸 潤 を認め ること が で き る. 肝 細 胞の壊死 や核 分 裂が散 見 さ れ る. 変性 肝細 胞は 小葉 周辺域や細 胆管に接してみ
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と め ら れ る傾 向がある. 単 核細 胞の集在が小 葉 内に少 数散 見さ れ る.
21 病 期H
門脈域の胆 管の増 生およ び線維 症は進 行す る. これ に伴って門脈 域は拡 大し, 限界 板は不 規則と な る. 門 脈 域には単核 細 胞の他に紡錘 形の結合 組織 細 胞が増 加 す る. 小 葉 内では細 胆 管の増 生が著し く, 小 葉周 辺 域 の み な らず小葉 中心域にも多数の細胆 管を み る. o v al
c ell は相 対 的に減 少し ている. 細 胆管の増 生と共に線 維症は進 行す る. こ の病簸で は細 胆管の周 囲に膠原 線 継が増加し, 同時に細 胆管の走行に沿って紡 錘 形の細
F ig.1. Po rto−Po rtal B br o u s s ep tatP−P bri dgelin a s s o ciatio n with pr olife r atingdu ctule sin theliv e r of r ats fed a−n aphthyトis othio− cya n ate 仏N I Tlfo r1 3 days.S ilv e rimpr egn atio n, X2 5 0−
Fig.2. P−P bridge a nd po rtopc e ntr al fi br o u s s ep taくP−C bridgelin theliv e r of r atsfed A N I T fo r25 days.Silv e rim pr egn atio n,X lO O.