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1 倫理審査委員会とは何か

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Academic year: 2021

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平成25年度 治験推進地域連絡会議

倫理審査委員会の現状と課題

昭和大学 研究推進室

田代 志門

2014年3月16日(日) 16:10-16:45 於 日本医師会館大構堂

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日本の文脈

• 1980年代以降に、「倫理委員会」と「治験審査

委員会(和製IRB)」が別々に発展してきた

– 日本の「倫理委員会」は、当初は新しい医療技術 (体外受精や臓器移植)の社会的受容のために作ら れ、診療に関する倫理問題(治療拒否など)の検討 から研究審査まで様々な役割を担ってきた

• そのため委員会の目的が曖昧で、組織内の

管理職の寄り合いという色彩が濃い

– 委員資格が組織内の管理的な役職に限定されて いることが多い(教授会や薬事委員会の延長線上)

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「倫理審査委員会」の起源

アメリカにおけるIRBの歴史

• 1960年代初頭 – 研究計画の事前審査は一般的ではない • 1966年、NIHの声明 – NIHからの資金援助を得るためには「同僚委員会」による 事前審査が必要であることを明記 • 1969年、NIHの声明の改訂 – 委員会に医学の専門家以外のoutsiderを加えるよう指示 • 1971年、FDAも同様の委員会による事前審査を要求 • 1974年、全米研究法の制定 – 連邦助成を受ける研究機関にIRBの設置を義務付ける 同僚審査(ピアレビュー)+社会の眼

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倫理審査委員会の目的と構成

「被験者保護」

のために

「研究審査」

を行う

– 「各研究機関は、……人を対象とする生物医学・行 動科学研究の被験者の権利を守るために、機関 によってまたは機関で実施される研究の審査を 行う委員会……を設置する」(全米研究法)

• 鍵になるのは

「専門性と多様性」

– 「研究や医療」がわかる人 – 「規制やガイドライン」がわかる人 – 「被験者の立場」がわかる人 などなど

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何を審査するのか

• アメリカにおけるIRB承認の基準

1. リスクの最小化 2. 適切なリスク・ベネフィット比 3. 公正な被験者の選択(特に社会的弱者) 4. インフォームド・コンセントを得ること 5. インフォームド・コンセント文書の適切さ 6. 適切な場合のモニタリング 7. 適切な場合のプライバシー保護 8. 社会的弱者への追加的セーフガード 6 丸山英二, 1996, 「ヒトを対象とする研究に関する合衆国の規制(1)-厚生省の規則①」 『神戸法学雑誌』46(1): 242-220.

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独立・中立であることの重要性

• 研究を推進する立場から独立した第三者に

よる事前審査であることが重要

– そのため、欧州では施設の外部に倫理審査委員 会があることも多い(地域倫理審査委員会) 7 ヘルシンキ宣言(2013) 第23項 • ……この委員会は……研究者、スポンサーおよ びその他のあらゆる不適切な影響から独立 したものでなければならない(must be independent)

(8)

「倫理審査委員会」とは何か

• 人を対象とする研究における被験者保護を目的

として設置された組織

– 治験とそれ以外で本質的な違いはない – 施設の中にあっても外にあっても良い

• 審議には、当該研究の専門家とともに、非専門

家が加わる(

ピアレビュー+社会の眼

• 核になるのは、リスクと利益を天秤にかけて、

「やる意義がある研究か否か」について、立場の

違う人間が話し合って結論を出すところ

• 判断の中立性・公平性が担保される必要がある

(9)

現実はまだまだ

• 形式的な構成の問題

– 外部委員がいない委員会:12.4% – 女性委員がいない委員会:6.2%(半数は1,2名)

• 中立性・独立性の問題

– 研究機関の長が委員を務める委員会:8.4% – 研究者が採決の場に同席する委員会:23.0% – 名簿・内規・議事録を公開しない委員会:約30~40%

• 教育・研修の問題

– 委員教育をしていない研究機関:57.3% 疫学研究にかかる倫理審査委員会の実態調査(中間報告) 第8回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議 資料6 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000031891.html)

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2 倫理審査委員会制度の動向

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日本の倫理審査委員会の問題

1. 各施設ごとの審査のバラつきが大きすぎて、

多施設共同研究実施に困難が生じている

– 施設間でのトラブルや迅速審査の運用上の困難 – 根本的な原因は、施設間での研究支援体制や審 査の質の格差

2. 質の向上や標準化を行うには倫理審査委員

会の数が多すぎる

– 全国でおおよそ2500~3000と推定(治験含む) – 人口比換算で仏の約38倍、韓国の約7.5倍、米国 の約2倍

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集約化と質の向上

• 多施設共同研究のスムーズな実行を考えれ

ば、全体としての底上げは不可欠

• しかし、現在ある

すべての

倫理審査委員会の

底上げはほぼ不可能

• 倫理審査委員会の集約化を進めると同時に

質を向上させる取り組みが必要

1. 地域単位での倫理審査委員会の集約化 2. 審査の質保証メカニズムの導入

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倫理審査委員会の「脱施設化」

• EUが強力に推進

– 英仏等の地域倫理審査委員会制度 – 国による審査の質の標準化・向上を行い(どこに 出しても一定の審査水準が保てる)、多施設共同 研究を1回の審査で実施可能に

• アメリカも同様の方向へ

– 施設外の商業IRBや中央IRB(NCI等)の発展 – 被験者保護に関する行政規則(コモンルール)改 正案において、多施設共同研究の1回審査の義 務化が提案

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臨床研究・治験活性化5か年計画2012

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集約化において考えるべき点

1. 司令塔の必要性(中央委員会)

– 地域IRB全体にかかわるポリシー策定や倫理審 査の質の評価を行う主体

2. 施設固有事情(local context)評価法の確立

– 実施機関の体制と各機関の研究責任者の評価

3. 地域IRBを利用するインセンティブの設定

– 多施設共同研究が1回の審査で実施可能など

4. 安定的に継続して運営できる基盤の整備

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臨床研究・治験活性化5か年計画2012

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「認定制度」の2つの形

1. 登録(registration)

– 法律や指針等に定めた要件を満たしていることを確認 して登録(日本の現状は「報告」システムに留まる) – 定期的に報告を受け、必要に応じて監査 • 国:米国OHRPの連邦保証制度(FWA)

2. 認証(accreditation/recognition)

– 詳細な評価を行い、質の高い審査ができるかどうかを 認証し、定期的に更新(病院の機能評価に近いイメージ) • 民間:米国のAAHRPPや途上国中心のSIDCER/FERCAP • 国:主にヨーロッパ各国

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再生医療等の安全性の確保等に関する法律

日本版「認定・地域IRB」の始まり

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ディオバン事件

• 臨床試験の適正な実施に係る様々な問題を提

– 不正行為(捏造・改ざん・盗用)の防止策 – 市販後臨床試験における信頼性確保の手段 – 利益相反(特に奨学寄付金の取り扱い)

• 2013年9月30日に検討会(

高血圧症治療薬の臨 床研究事案に関する検討委員会

)が中間報告書を

公表

– 指針改正にとどまらず、来年秋を目途に臨床研究に 関する新たな法整備を検討 19

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いま、倫理審査委員会に

問われていること

• 社会的・学術的意義のない臨床研究のゲート

キーパーとして機能できるかどうか

– 意味のない研究に患者を巻き込まない

• その1つの試金石は、倫理審査委員会が販

売促進のための市販後臨床試験(

いわゆ る”seeding trial”

)に対する有効な防波堤となり

得るかどうか

– 利益相反委員会との連携も重要

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IOM報告書(2003)の分業モデル

二つの審査結果を 踏まえて倫理審査

継続した監視へ

(23)

疫学指針・臨床指針見直し「中間取りまとめ」

6. 倫理審査委員会の質の担保

• 論点1:倫理審査委員会の教育

– 「負担に配慮」しつつも、「教育・研修を求めるこ と」に(現在は努力義務)

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疫学指針・臨床指針見直し「中間取りまとめ」

6. 倫理審査委員会の質の担保

• 論点2:自施設内への設置義務

– 外部への審査委託の条件を明確化することを条 件に、設置義務を外した(中央/共同IRBの推進)

• 論点3:情報公開の徹底

– 全ての倫理審査委員会に現在の「倫理審査委員 会報告システム」への報告を求めることに(少なく とも年1回以上)

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まとめ

• 日本の倫理審査委員会制度は過渡期にあり、

集約化と質の向上・標準化が不可避

– 施設外の倫理審査委員会への委託の促進 – 委託される方には、事務局機能の強化(専門的 な専任スタッフ必要)と審査能力の向上(教育・研 修の充実含む)が求められる

• 自施設の倫理審査委員会を地域の「公共財」

とするか、他施設・施設外の倫理審査委員会

を積極的に活用するかの二極化?

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倫理審査委員会とピア・レビュー文化

26 わが国の学界は、本来きびしい同僚相互批判(peer review)の精神的土壌を欠き、とくに臨床医学の世界で は、今日なおムラ意識が強く支配し、むしろ仲間をかば いあうことを美徳とする風潮が強いし、親分子分にも似 た封建的な従属関係が支配しているから、IRBが機能す ることをたやすくは期待できないように思われる。むしろ 仲間ぼめ、かばいあいの仕組みとなる恐れが多いであ ろう。IRBが何よりも患者や被験者の人権保護のための 機関であり、厳しい社会的責任が求められていることを 忘れるべきではないのである。 砂原茂一『臨床医学研究序説:方法論と倫理』医学書院, 189,190頁, 1988年

参照

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