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機械的伸展刺激がヒト歯肉線維芽細胞と共培養したヒト

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機械的伸展刺激がヒト歯肉線維芽細胞と共培養したヒトiPS細胞由来心筋細胞の 成熟に与える影響

出射 明美

緒言

iPS(induced Pluripotent Stem)細胞を用いた再生医療は近年多様な分野で研究 が進み、網膜の分野など一部では既に臨床応用されている1)。 心臓に関する分野 においても、iPS細胞由来心筋シートによる治療が試みられるなどその研究は発展 を遂げており2)、iPS細胞から心臓を作製することによる自家心臓移植も今後の臨 床応用が非常に期待される分野である。

心臓移植は、薬物療法や補助循環装置のみでは治療困難となった末期心不全に 対する唯一の治療法である3)。本邦では 2010年7月の臓器移植法改正後に脳死臓 器提供数が増加し、また2014年2月に心臓移植の望ましい適応年齢が60歳未満 から65歳未満へ引き上げられたことで心臓移植施行件数も増加した。改正前12 年間で計69件のみであった件数は、2018年の1年間で55件に上る4)。しかしな がら、ここ数年で件数は頭打ちとなっており、新規申請者数はそれを大きく上回 る状況が続いている。2011年4月に連続流植込み型補助循環心臓が心臓移植への ブリッジとして保険償還されたことに伴い、移植待機日数は長期化し待機患者数 も増加傾向にある。その結果、心臓移植の適応がありながら亡くなる人が毎年 228人から670人いると推定されている4)

iPS細胞から心臓を作成することが可能となると、この移植待機の問題が一気に

解決し得る。しかしながら、iPS細胞から心筋組織への分化誘導は様々な方法が考 案されてきたものの、現状では大量の心筋組織を得ることは困難であり、分化誘 導効率は重要な課題となっている5)。また臨床応用のためには、分化誘導効率だけ でなく得られる心筋組織の成熟度も保たれなければならない。

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過去の研究では、心筋線維芽細胞がiPS細胞の分化誘導を促進し、心筋組織の 成熟に影響を及ぼす因子であることが示唆されており6)-8)、松田らはヒト由来線維 芽細胞の中で採取が比較的簡易であるヒト歯肉線維芽細胞(Human Gingival

Fibroblast : HGF)に着目し、フィーダー細胞として iPS細胞と共培養を行い、心

筋組織への分化を誘導するプロトコルを確立した9)。また、対照群としてラミニン コーティングによるフィーダーレス培養条件下で分化誘導したiPS由来心筋組織

(iPS-CMs)と比較したところ、iPS細胞とHGFとの共培養によって得られた心 筋組織でより収縮力が高い成熟したiPS-CMsを誘導したと報告している。またそ の他の研究では、機械的伸展刺激によりiPS細胞由来の心筋組織の成熟が促進す ることも報告されており、これを用いた研究が発展している10)

そこで本研究では、iPS細胞から心筋組織への分化誘導効率、及び得られる心筋 組織の成熟度の向上を目標とし、過去の研究をもとに、iPS細胞とHGFとの共培 養条件下で分化誘導の比較的早い段階から機械的伸展刺激を与えることで、iPS- CMsの分化効率の促進、成熟度の向上が得られるのではないかと仮説を立て、こ れを検証した。

材料ならびに方法

HGFの単離


岡山大学病院矯正歯科治療中の患者の抜歯を行う際に、約2 mm3の歯肉組織を 採取した。患者は16歳以上とし、歯周炎を有する患者は除外した。採取された歯 肉組織片を4 g/mlゲンタマイシン(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)およ び50 g/ml アンホテリシンB(Sigma Aldrich、MO、USA)を添加したリン酸緩 衝化生理食塩水(PBS)で4 回洗浄した。次いで、組織培養皿に入れて細かく刻 み、10 %ウシ胎仔血清(FBS:Sigma Aldrich、MO、USA)、1 mol / 1 -HEPES 緩衝溶液(ナカライテスク、京都、日本)およびペニシリン-ストレプトマイシン 溶液(和光純薬、大阪、日本)を添加したダルベッコ・モディファイド・イーグ ル低グルコース培地(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を加え 37℃、5 % CO2加湿インキュベーター中で静置培養した。組織培養皿内でコンフルエントに なったHGFに定期的にトリプシン処理を行い継代した。すべての実験は第3から

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第10継代間のHGFを用いて行った。なお本研究のHGFの取り扱いおよび実験 手順はすべて、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会の承認(承認番号 1612-007-002)のもと行い、研究に参加する前に、すべての被験者からインフォ ームドコンセントを得た。

iPS細胞の培養

ヒトiPS細胞(201B7型)を理化学研究所(茨城、日本)から購入し、培地は

StemFit AK02N培地(味の素、東京、日本)を使用した。まず、PBSで0.5 g/ ml

に希釈したラミニン511-E8断片を、6ウェル培養プレートに1ウェルあたり2 ml 添加し、これを一晩4℃にて静置しコーティングした。翌日、iPS細胞の培養皿か らラミニン511-E8断片溶液を除去し、iPS細胞をPBSで洗浄した。続いて、800 μlのTrypLE Select(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)を添加し、

37℃、5 % CO2の加湿インキュベーター内で7分間インキュベートした。次い

で、TrypLE Selectを除去し、細胞を再びPBSで洗浄し、Rho結合キナーゼ阻害 剤であるY-27632(10 μM)を含む1 mlのStemFit AK02N培地を添加した。次い で、スクレーパーを用いて培養皿の底面に接着しているiPS細胞を剥がし、ラミ ニン511-E8断片でコーティングした6ウェル培養プレート上に 3.0×104 cells/ウ ェルの密度で播種した。翌日、培地を除去しY-27632を含まないStemFit AK02N 培地と交換した。培地は1日目、4日目、5日目および6日目に交換した。すべて の実験は、第7から第20継代間のiPS細胞を用いて行った。

iPS 細胞の心筋組織への分化誘導

心筋細胞への分化誘導中に機械的伸展刺激を加えるため、全てのサンプルは PDMS(polydimethylsiloxane)製のストレッチチャンバー(サイズ:20×20

mm、メニコン、愛知)を用いて培養した。まずMatrigel®(Corning、NY、

USA)をダルベッコ・モディファイド・イーグル低グルコース培地(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)で35.5 μl / mlに希釈し、各チャンバーに1.4 ml添 加し、一晩4℃にて静置しコーティングを行った。翌日、1チャンバーあたり、

iPS細胞4.9×105 cells、HGF 2.1×105 cellsを混和し、播種した。播種の翌日か ら、Essential 8培地(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)で3日間培養し、培

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地を毎日交換した。続いて、iPS細胞の分化誘導を、PSC cardiomyocyte

Differentiation Kits(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を用い製者のプロト コルに従って開始した。要約すると以下の通りである。培地を除去し、心筋細胞 分化培地Aを添加した。2日後、培地を除去し、心筋細胞分化培地 Bを添加し た。2日間インキュベートした後、培地を除去し、心筋細胞維持用培地を添加し た。その後2日に一度、心筋細胞維持培地を交換した。培養開始14日目に ShellPa(メニコン、愛知)を用いて、機械的伸展刺激(伸展率 2%、伸展頻度 30回/分)を72時間加えた。なお、伸展刺激を加えずに静止した状態で培養した サンプルをコントロール群とした。

定量性RT-PCR

High Pure RNA Isolation Kit(Roche、IN、USA)を用いてRNAを抽出し、

Verso cDNA合成キット(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)を用いてcDNA に逆転写した。標的遺伝子を心筋マーカーcTnT、中胚葉マーカーNkx2.5、多能性 マーカーSox2、Oct4とし、内在性コントロールを18S rRNAとした。これらの遺 伝子のプライマーをSYBR green試薬(Life Technologies、Warrington、UK)と 混合して定量性RT-PCRを行い、標的遺伝子の発現レベルを定量した。プライマ ーの塩基配列を表1に示す。標的遺伝子の発現量を18S rRNAの発現量で正規化 し、ΔΔCt 法により算出した。すべての測定は、標的遺伝子ごとにトリプリケー トで3つの独立したサンプルで実施した。

蛍光免疫組織染色

心筋マーカーの発現レベルを、蛍光免疫組織染色により評価した。染色の前 に、細胞を室温で15分間、PBS中の4 %パラホルムアルデヒドで固定し、続いて PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を0.2 %Triton X-100(ナカライテスク、京 都、日本)で15分間透過処理し、3 %ウシ血清アルブミン(BSA:Sigma

Aldrich、MO、USA)で30分間ブロッキングした。続いて、一次抗体を添加し

4 ℃で一晩インキュベートした。次いで、PBSで 3回洗浄した後、二次抗体を添 加し室温で1時間インキュベートした。 NucBlue®試薬(Thermo Fisher

Scientific、MA、USA)を添加したPBSで5分間インキュベートすることによ

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り、核を染色した。一次抗体は心筋トロポニンTマウスモノクローナル抗体(13- 11)(cTnT:Thermo Scientific、Rockford、IL、USA)は3 %BSAで1/750の 希釈を行い、またMyosin Light Chain 2抗体(ab79935)(MYL2; abcam, UK)

は3 %BSAで1/1800の希釈で適用した。二次抗体はヤギ抗マウス抗体 Alexa

Fluor 488 (Life Technologies、UK)およびヤギ抗ラビット抗体 Alexa Fluor 546

(Life Technologies、UK)を3 %BSAで1/1000に希釈した。共焦点レーザー顕 微鏡(対物レンズ:20倍、40倍、LSM780、CarlZeiss、Oberkochen、

Germany)を用いて蛍光画像を取得した。

電子顕微鏡観察

2%グルタールアルデヒド、2%パラホルムアルデヒド含有0.1 Mカコジル酸緩

衝液にて、一晩4℃で前固定した。0.1 Mカコジル酸緩衝液で洗浄後、2%OsO4

て1.5時間4℃で後固定した。その後、0.1 Mカコジル酸緩衝液で洗浄し、エタノ

ールで脱水した。次いで、Spurr樹脂(ポリサイエンス)で包埋し、熱重合させ、

ウルトラミクロソーム(LEICA EM UC7)(Leica Microsystems、Wetzlar、

Germany)にて80 nmの超薄切り切片を作製した。これをウランと鉛の二重染色

を行い、透過型電子顕微鏡 (H-7650、日立ハイテクノロジーズ、東京、日本)

を用いて観察した。サルコメア構造の計測にはImage J software(US National Institute of Health、Bethesda、Maryland、USA)を使用した。

iPS-CM の動画解析


iPS-CMの収縮の動画を、位相差顕微鏡(BZ-X710、KEYENCE、大阪、日本)

を用いて、機械的伸展刺激の前後で10秒間記録した。またコントロール群におい ても同じタイムポイントで撮影した。全ての動画は固定された位置で、4倍の対物 レンズを用いて1秒間に20フレームで撮影した。この動画のフレーム1 とそれ に続くすべてのフレーム(フレーム1とフレーム2、フレーム1とフレーム3、フ レーム1とフレーム 4等)との間で、変位ベクトル場を計算した。 変位ベクト ル場の計算にはフィジソフトの粒子画像度測定プラグイン11)(image J、NIH12)) を用い、16×16 ピクセルごとに変位ベクトル D(x, y)を求めた。最大変位のベ クトルM(x, y)は、(x, y)対ごとに以下のように定義した。

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𝑀(𝑥, 𝑦) = 𝐷𝑘(𝑥, 𝑦)

ここで、kは|Dk (x,y)| = max [|D2 (x,y)|, |D3 (x,y)|, ..., |Dn (x,y)|]となるフレーム番 号、nは最後のフレーム番号(本研究ではn=200)を示す。また収縮能Cを以下 のように任意単位で計算した。

𝐶 = ∑|𝑀(𝑥, 𝑦)|.

𝑥,𝑦

なお、機械的伸展刺激前の収縮能をCbefore、機械的伸展刺激後の収縮能をCafterと定 義し、機械的伸展刺激前後における収縮能の変化率Rを以下のように求めた。

𝑅 = Cafter Cbefore− 1

統計解析

実験から得られたデータは、平均±標準誤差(SEM)として表した。2群間の 比較は対応のないt検定を用いた。マーカー遺伝子発現量の定量性RT-PCR解析 に関しては2元配置分散分析法を用い、コントロール群とストレッチ群との発現 量比較にBonferroniのpost hoc検定を行った。差はp <0.05の場合に有意である とみなした。

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結果

1. 心筋マーカーおよび多能性マーカーの遺伝子発現

培養開始14日目(伸展刺激開始前)と18日目(伸展刺激開始72時間後)にお いて、コントロール群、ストレッチ群の心筋マーカー、未分化マーカーの発現を 比較した。中胚葉マーカーであるNkx2.5は両群において継時的に減少した(時間 による発現量の有意差p < 0.01)。伸展刺激開始72時間後の18日目において、

心筋マーカーであるcTnTはコントロール群と比べストレッチ群で有意に増加し ていた(p < 0.05)(図2A)。また、未分化度の指標となる多能性マーカーの発 現を比較したところ、Sox2に関しては継時的に発現量が減少した(時間による発 現量の有意差p < 0.05)。Oct4の発現量は継時的に減少傾向にあった(時間によ る発現量の有意差p=0.061)(図2B)。

2. 蛍光免疫組織染色によるiPS-CMsの形態的比較

コントロール群、ストレッチ群のiPS-CMsの蛍光免疫組織染色を行ったとこ ろ、両群において、cTnT陽性細胞(緑色)、MYL2陽性細胞(赤色)が認められ

た(図3A)。また両群ともにサルコメア構造が確認でき、心筋組織の成熟が示さ

れた。なお、ストレッチ群において、一部サルコメア構造の整列が見られる部位

(矢頭)があった(図3B)。

3. 電子顕微鏡によるiPS-CMsの形態的比較

コントロール群、ストレッチ群のiPS-CMsの構造をさらに詳細に比較するため に、電子顕微鏡による観察を行った。両群においてサルコメア構造の配列が見ら

れた(図4A-a,b)。強拡大像において、ストレッチ群では暗帯と明帯を有するサ

ルコメア構造が確認でき、コントロール群と比較し、より成熟心筋に近い構造を 呈していた(図4A-c,d)。また両群のサルコメア長を比較したところ、コントロ ール群が1.164±0.158 μmであるのに対し、ストレッチ群は1.586±0.194 μmと 有意に大きな値を示した(図4B)。

4. iPS-CMsの収縮能の評価

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iPS-CMsの自発的収縮を記録した動画を解析し、ストレッチ前後における収縮

能の変化を可視化したところ、ストレッチ群において、収縮能の増大が認められ

た(図5A)。また、ストレッチ前後における最大収縮の平均値の変化率を両群で

比較したところ、ストレッチ群において変化率が上昇する傾向があった。コント ロール群において、サンプルの1/4で収縮能の低下が認められ、他の1/4は変化 がほぼ認められなかった。一方で、収縮能が大きく増大したものもあり、コント ロール群の中でサンプルによってばらつきが大きかった。また、ストレッチ群に おいては収縮能が低下したサンプルはなく、平均的には安定した収縮能の増大が 認められた(図5B)。

(9)

考察

今回の結果から、心筋組織への分化誘導中に機械的伸展刺激を与えることで、

iPS-CMsの成熟度の向上、分化効率の促進が示唆された。

まず定量性RT-PCRの結果より、コントロール群と比較し、ストレッチ群にお いて、心筋マーカーであるcTnTの発現量の増大が認められた。Nkx2.5は両群と もに継時的に減少した。Nkx2.5は心筋組織への分化の比較的早い段階に見られ、

cTnTは比較的成熟した心筋組織に認められるマーカーである13)。ストレッチ群 においてcTnTの発現量が有意に上昇したことにより、機械的伸展刺激によって iPS細胞から心筋組織への分化が促進されていることが示唆された。また、未分化 度の指標となる多能性マーカーのOct4、Sox2の減少はiPS細胞の分化効率を示し ている。Sox2の発現量に関しては継時的に有意に減少し、Oct4の発現量に関して も継時的に減少傾向にあった。以上のことから、ストレッチ群においてips細胞か ら心筋細胞への分化が亢進されていることが示唆された。

また、蛍光免疫組織染色により、iPS-CMsの形態を観察したところ、両群にお いて、cTnT陽性細胞(緑色)、MYL2陽性細胞(赤色)が認められ、MYL2陽 性細胞にはcTnTが共発現していた。また両群ともにサルコメア構造が確認で き、心筋組織への成熟が示された。なおストレッチ群において、一部心筋内線維 の配列が見られる部位があった(図3Bの矢頭)。

より詳細に細胞内構造を観察するために、電子顕微鏡による観察を行ったとこ ろ、両群においてサルコメア構造の配列が認められた(図4A)。健康で成熟した 心筋細胞内線維の配列は整っていることが知られており、心筋細胞内線維の配列 の変化が、心筋組織の拍動に影響を及ぼすことが報告されている。この報告によ ると正常な配列をもつ個々の心筋細胞は全体が協調して拍動したのに対して、配 列が乱れた心筋細胞では拍動の協調性が失われ、細胞内の各部位が様々な方向に 拍動していることが判明した14)。したがって、協調性の高い拍動を示す心筋組織 を作製する上で、心筋細胞内線維の配列は非常に重要であると言える。

また得られた写真から、両群のサルコメア長を比較したところ、コントロール 群が1.164±0.158 μmであるのに対し、ストレッチ群は1.586±0.194 μmと有意 に大きい値を示した。またヒト成熟心筋のサルコメア長は1.6〜2.2 μmとされてお

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10

15)16)、ストレッチ群の方がこれに近い大きさを呈していた。またストレッチ群

において、暗帯と明帯を有するサルコメア構造が確認でき、より成熟心筋に近い 構造を呈していた。したがって、機械的伸展刺激によってサルコメア構造がより 成熟したことが分かった。

iPS-CMsの自発的収縮を記録した動画を解析し、ストレッチ前後における収縮

能の変化を可視化したところ、ストレッチ群において、収縮能の増大が認められ た。また、ストレッチ前後における最大収縮の平均値の変化率を両群で比較し た。コントロール群において、1/4において収縮能の低下が認められ、他の1/4 は変化がほぼ認められなかった。一方で、収縮能が大きく増大したものもあり、

コントロール群の中でサンプルによってばらつきが大きかった。また、ストレッ チ群においては収縮能が低下したサンプルはなく、平均的には安定した収縮能の 増大が認められた。このことから、心筋組織分化誘導中に機械的伸展刺激を与え ることで、収縮能の向上が得られることが示唆された。

松田らによると、HGFとiPS細胞の共培養によってiPS-CMsの分化誘導を行 った場合、培養開始15日目から30日目にかけてiPS-CMsの成熟が継続している ことが示されている9)。したがって本研究においては、iPS-CMsの分化誘導中で ある培養開始15日目から72時間、機械的伸展刺激を与えることとした。また機 械的伸展刺激の伸展率に関する論文は様々あり10)17)、心筋幹細胞に伸展率20%の 機械的伸展刺激を与えると、非ストレッチ群と比較し、ストレッチ群において生 存細胞の減少、細胞の成熟と増殖が抑制されることが報告されている18)。今回の 実験では、HGFとの共培養条件下でiPS細胞から心筋組織への分化中に伸展率 2 %の機械的伸展刺激を与えることで、iPS-CMsの成熟度の向上、分化効率の促 進が示唆された。ただし、機械的伸展刺激は細胞の形態や配向の変化をもたらす ことが報告されており19)、伸展率を変えることでiPS-CMsの収縮能に影響を及ぼ すことが予想できる。今後は、伸展率の最適化によるiPS-CMsの収縮能の最大化 を目標とする。

結論

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HGFとの共培養条件下でiPS細胞の心筋分化誘導中において、機械的伸展刺激 を与えることで、iPS-CMsの成熟度の向上、分化効率の促進が示唆された。

謝辞

稿を終えるにあたり、懇篤なる御指導、御校閲を賜りました岡山大学大学院医 歯薬学総合研究科システム生理学分野、成瀬恵治教授、高橋賢助教に心より感謝 の意を表します。そして主任教授であります岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 歯科矯正学分野上岡寛教授に謹んで感謝の意を表します。最後に本研究を行うに あたり、御援助と御協力をいただきました岡山大学大学院医歯薬学総合研究科シ ステム生理学分野および歯科矯正学分野の諸先生方に御礼申し上げます。

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12 図の説明

図1 HGFおよびiPS細胞の心筋分化プロトコルと機械的伸展システム

A:HGFおよびiPS細胞の共培養システムを用いた心筋分化プロトコル

B:ヒト歯肉組織の採取およびHGF単離プロトコルの概略図

C:培養細胞伸展システムShellpa

D:PDMS(polydimethylsiloxane)製のストレッチチャンバー E:ストレッチチャンバーのサイズの模式図

図2 心筋マーカーおよび多能性マーカーの遺伝子発現

コントロール群、ストレッチ群のmRNA発現レベルを定量性RT-PCRで比較し た。時間軸はbefore(伸展刺激開始前)、after(伸展刺激開始72時間後)とし た。それぞれサンプルはn=5、数値は平均±標準誤差(SEM)で示す。* p< 0.05 A:心筋マーカー(左:Nkx2.5、右:cTnT)の遺伝子発現レベル。

B:多能性マーカー(左:Oct4、右:Sox2)の遺伝子発現レベル。

図3 蛍光免疫組織染色によるiPS-CMの形態的比較

コントロール群、ストレッチ群のiPS-CM の蛍光免疫組織染色を行った。緑色:

cTnT、赤色: MYL2、青色: DAPI。

A:上段はコントロール群、下段はストレッチ群の染色像を示す。スケールバー:

50 μm

B:コントロール群、ストレッチ群の強拡大像を示す。矢頭はサルコメア構造を示 す。スケールバー:20 μm

図4 電子顕微鏡によるiPS-CMsの形態的比較

(13)

A:コントロール群、ストレッチ群のiPS-CMsの電子顕微鏡写真を示す。c,dはサ ルコメア構造の強拡大像を示す。スケールバー:2 μm、dの黒矢頭は暗帯、白矢 頭は明帯を示す。スケールバー:1 μm

B:サルコメア長の比較を示す。コントロール群n=7、ストレッチ群n=9で数値

は平均±標準偏差(SD)で示す。*** p< 0.001

図5 iPS-CMの収縮能の評価

自発的収縮を示すiPS-CMの動画から、iPS-CMの収縮能の定量化をimage Jソフ トを用いて実施した。

A:定量化されたiPS-CMの収縮能をカラーバー(右端)に示す矢印の色および大

きさで可視化した。スケールバー:500 μm

B:ストレッチ前後における収縮能の変化率を両群で比較した。(コントロール群 n=8、ストレッチ群 n=6)

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14 参考文献

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(17)
(18)

18

図2

A

B

(19)

B A

MYL2DAPIMargecTnT

control stretch

50μm 50μm

control 強拡大像

20μm

stretch強拡大像

20μm

図 3

(20)

20

A

a b

B

control stretch

2μm 2μm

c

1μm

d

1μm

図 4

(21)
(22)

22

Primer Direction Sequence Size (bp) Ref.

Nkx2.5 forward reverse

5’-TTCCCGCCGCCCCCGCCTTCTAT-3’

5’-CGCTCCGCGTTGTCCGCCTCTGT-3’ 139 (20) cTnT forward

reverse

5’-GGCAGCGGAAGAGGATGCTGAA-3’

5’-GAGGCACCAAGTTGGGCATGAACGA-3’ 150 (21) Sox2 forward

reverse

5’-GCCGAGTGGAAACTTTTGTCG-3’

5’-GCAGCGTGTACTTATCCTTCTT-3’ 154 (22) Oct4 forward

reverse

5’-CAGCGACTATGCACAACGAGA-3’

5’-GCCCAGAGTGGTGACGGA-3’ 196 (23) S18 forward

reverse

5’-CTTAGAGGGACAAGTGGCG-3’

5’-GGACATCTAAGGGCATCACA-3’ 71 (24)

表1. 定量性RT-PCRで用いたプライマーの塩基配列

参照

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