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博 士 ( 理 学 ) 児 玉 喜 明

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 児 玉 喜 明

学 , 位 論 文 題 名

CYTOGENETICAL ANALYSIS OF RADIATIQN‑AND     CHEMICAL ― MUTAGEN ・ INDUCED MUTANTS     IN HUMAN LYMPHOCYTES

     (放射線および化学突然変異原物質によって誘発された      突然変 異ヒト リンパ球における細胞遺伝学的研究)

     学位論文内容の要旨

  染 色体異 常は 自然 発生 突然 変異 とし ても 生じ るが 、電 離放 射線や 化学 物質 によ って も 誘 発され る。 多く の突 然変 異原 物質 は遺 伝子 突然 変異 と染 色体異 常を 誘発 する と考 え ら れてお り、 突然 変異 体に っい て細 胞遺 伝学 的解 析を 行う ことは 、そ の発 現の メカ ニ ズ ムを知 る上 で重 要を 情報 を提 供す るも のと 思わ れる 。し かし、 染色 体分 析に は多 く の 時間と 労カ を必 要と し、 突然 変異 体に 対す るこ れま での 細胞遺 伝学 的研 究は 、特 に ヒ ト細胞 を対 曩と した 場合 必ず しも 十分 では ない 。ま た、 マウス やチ ャイ ニー ズハ ム ス ター細 胞で の報 告を 含め ても 、突 然変 異の 発現 と染 色体 異常と の闇 には 一定 の関 係は認められていなぃ。

  本 研究 で は 、 突 然 変 異 と 染 色 体 異常 の関 連を 議べ るた めに 、3個 の異 なる 遺伝 子、

hypoxanthinephosphoribosyltransferase(HPRT)、thymidine kinase(TK)、組織適 合抗原(HLA−A)を選ぴ、それぞれの遺伝子突然変異体にっいて、細胞遺伝学的解析と遺 伝子解析より検討を行った。

  1)HPRT突然 変異 体: 原爆 被爆 者および非被爆者の末梢血中のHPRT欠損突然変異T―リ ン パ 球を分 離し 、そ の染 色体 分析 を行 った 。被 爆者 群お よび 非被爆 者の 対照 群と もに 染色 体異 常の出 現頻 度は 同様 であ り、また、原爆放射線との関連性は見られなかった。

し か し、HPRT欠 損 変 異 体 で 、X染 色体 の 異 常 が み ら れ た 細 胞 で は 、X染 色体 の異 常部 位 はHPRT遺 伝 子 が 存 在 す るXq26で あっ た。 また 、こ の異 常に 関与 したX染色 体は 活性 化Xで あ っ た 。 こ れ ら の こ と か ら 、HPRT突 然 変 異 はX染 色 体 の 特定 部位 の異 常と 密接 を関連性があると考えられた。

  2)TK突然変異体:ヒトリンバ球系細胞株より、TK欠損突然変異コロニーを分離した。

突 然 変異体 コロ ニー はそ れが 由来 した 親細 胞と 同様 を染 色体 異常を 示し たが 、突 然変

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異誘発薬剤の処理で得られたTK欠損コロニーでは、新たを染色体異常が見いだされ、

その中の1個に第17染色体の異常が観察された。その異常箇所はTK遺伝子座の近傍で あった。これらの結果からTK突然変異と特異的染色体異常との関連性が示唆された。

  3)HLA−A突然変異体:ヒト末梢血中のT−リンバ球のHLA−A突然変異体(体内自然発生 突然変異体)と採血後試験管内でX線照射して得られた突然変異体コロニーの染色体 およびHLA一A遺伝子分析を行った。前者のコロニーでは特定染色体異常の頻度は低かっ たが、X綴誘発コロニーでは第6染色体の部分欠失がみられ、その欠失部位はHLA一A遺 伝子座を含む6p21ーp23であった。また、これらHLA一A突然変異体ではHLA一遺伝子が欠失 していた。したがって、染色体分析で見られた欠失はその特定領域の遺伝子座の欠失 を 示 し て お り 、 細 胞 遺 伝 学 的 分 析 が 分 子 レ ベ ル の 解 析 で 確 認 さ れ た 。   ヒト細胞における突然変異に関する細胞遺伝学的研究は、これまで主としてHPRTと TK遺伝子突然変異体について行われてきた。本研究では、まず始めにこれらの遺伝子 突然変異体を用いて、染色体異常と遺伝子突然変異の関連性の有無を詳細に調査した が、これまでの分析結果と同様、遺伝子レペルの異常は必ずしも染色体レベルの異常 を伴っていをかった。その原因として、使用した変異原あるいは細胞の種類によって 結 果が異なる 可能性や現状における染色体異常検出法の感度の低さが考えられる。

  一方、HLA一A遺伝子に関しては、放射線誘発突然変異体において遺伝子の欠失が頻繁 に生じ、その欠失は染色体レペルで検出可能な大きさの変化を伴っているという、初 めての知見を得た。

  以上の結果から、HLA一A突然変異体ではHLA一A遺伝子座を含む大きを欠失があっても その細胞は生存可能であるが、HPRTとTK突然変異体では染色体レペルで検出可能をほ ど大きな異常は致死に至ると考えられる。このような違いは、対譲遺伝子とその周囲 の他の遺伝子を含む大欠失をもつ突然変異体の生存能に差があるためと思われ、異な った遺伝子座を含む染色体欠失をもっ細胞の生存カに関して、ヒトのゲノムは極めて 不均質である可能性を示している。ゲノムは同じ大きさの異常に対して必ずしも同じ ようを生物学的反応を示すとは限らないと思われる。従って、ゲノムがどの程度の異 常に酎えられるかは、他の遺伝子座に関する同様の実験を稜み重ねなぃと予想出来な い。また、螢光f,7si'tuハイプリダイゼーション法をどの新しい技術を応用することに より染色体レペルと分子レベルの解像カのギャップを埋める試みがをされをい限り、

突然変異の発現と染色体異常の関連性にっいて、より正確な情報は得られなぃことを 本研究の結果は示している。

− .77

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    吉 田 廸 弘 副 査    教 授    堀    浩 副 査    教 授    高 木 信 夫 副査    助教授   阿部周一

学 位 論 文 題 名

CYTOGENETICAL ANALYSIS OF RADIATION‑AND     CHEMICAL‑MUTAGEN‑INDUCED MUTANTS

    IN HUMAN LYMPHOCYTES

     (放射線および化学突然変異原物質によって誘発された      突 然変異 ヒ卜 リンパ球における細胞遺伝学的研究)

  児 玉 喜 明 提 出 の 学 位 論文 は主 諭文 (英文 )と 参考 諭文 (36編) より なる 。主 諭文 はヒ ト リ ン パ 球 に お け る 特 定 遺 伝 子 の 突 然 変 異 に 関 し た 研 究 で あ る 。   染 色 体 異 常 は 自 然 発 生 突 然 変 異 と し て も 生じ る が 、 電 離 放 射 綜 や 化 学 物 質 に よ って も 誘発 され る。 多く の突 然変 異原物 質は 遺伝 子突 然変異と染色体異常を誘発する 、と考 え ら れ て お り 、 突 然 変 異 体 に っ い て 細 胞 遺 伝学 的 解 析 を 行 う こ と は 、 そ の 発 現 の メカ ニ ズム を知 る上 で重 要な 情報 を提供 する もの と思 われ る。

  本 研 究 で は 、 突 然 変 異 と 染 色 体 異 常 の 関 連を 調 べ る た め に 、 ヒ ト リ ン バ 球 系 細 胞を 用 い3種 の 遺 伝 子 、hypoxanthinephosphoribosyltransferase(HPRT) 、thy niidine kinase(TK)、 組織 適合 抗原 (HLA‐A) のそ れぞ れの遺伝子突然変異体について、細胞遺 伝 学的 解析 と遺 伝子 解析 によ り検討 を行 った 。

  1)HPRT突 然 変異 体 : 原 爆 被 爆 者 お よ び 非 被 爆 者 の末 梢血 中のHPRT欠損 突然 変異T‑リ ン パ 球 を 分1し 、 そ の 染 色 体 分 析 を 行 っ た 。 被爆 者 群 お よ び 非 被 爆 者 群 と も に 染 色 体 異 常 の 出 現 頻 度 は 同 様 で あ り 、 原 爆 放 射 隸 被爆 と の 関 連 性 は 見 ら れ な か っ た が 、HPRT 欠 損 変 異 体 細 胞 の ー 部 にHPRT遺 伝子 座の特 定部 位(Xq26)の 異常 がみ られ たこ とか ら、

HPRT突 然 変 異 はX染 色 体 の 特 定 部 位 の 異 常 と 密 接 な 関 連 性 が あ る と 考 え ら れ た 。   2)TK突 然 変 異体 : リ ン パ 球 系 細 胞 株 よ り 、TK欠 損突 然変 異コ ロニ ーを 分離 し、 染色     ‑ 78−

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体分析を行った。TK 欠損コロニーのーっにTK 遺伝子座の特定部位(17q) での染色体異常 が 見 い だ され 、 こ の 特 異 的 異 常 が TK 突 然変 異 に 関 与 し て い る こ と が示 唆 さ れた。

  3)HLA ―A 突 然変異 体: ヒト 末梢血中のT −リンバ球にっいてX 綜照射により突然変異 体細 胞を 得た 。これ らの 細胞 では第 6 染色 体の部 分欠 失が みられ、その欠失部位はHL A‑A 遺伝子座を含む部位(6p21 ‐p23) であり、さらにこれらの細胞ではHLA 一遺伝子の欠失 をと もな って いた。 した がっ て、染色体分析で見られた欠失はその特定領域の遺伝子 座 の 欠 失を 示 し て お り 、 細 胞 遺 伝 学 的分 析 が 分 子 レ ベ ル の 解 析 で確 認 さ れた。

   以上のようにヒト細胞の突然変異体において、染色体異.常と遺伝子突然変異の関連 性の 有無 を詳 細に調 査し たが 、遺伝子レペルの異常は必ずしも染色体レペルの異常を 伴っていなかった。しかしながら、HLA‑A 遺伝子に関しては、放射隸誘発突然変具体に おい て遺 伝子 の欠失 が頻 繁に 生じ、その欠失は染色体レベルで検出可能な大きさの変 化を伴っているという新たな知見を得た。これは、HLA‑A 突然変異体ではHLA ‐A 遺伝子 座を 含む 大き な欠失 があ って もその細胞は生存可能であるが、HPRT とTK 突然変異体で は染 色体 レベ ルで検 出可 能な ほど大きな異常は致死に至ると考えられる。このような 違`、は、対象遺伝子とその周囲の他の遺伝子を含む大欠失をもっ突然変異体の生存能 に差 があ るた めと思 われ る。 これらについては、さらに他の遺伝子座にっいて行う必 要があるが、本研究はこのような細胞生存に関する染色体や遺伝子の機能、役剖・等を 分 析 す る 上 で 新 た な 手 法 を 開 発 し た も の と し て 注 目 さ れ て い る 。    参 考諭 文は 主論文 の内 容に 直接関 連し た3 輻の 諭文 の他 に、原爆被爆者の染色体異 常、 実験 腫癌 の枝型 、ラ ット やマウスの各系統の核型的特徴、仁形成部位分染法の開 発な どに 関す る論文 等計 36 綴 よりなり、国内外の国際学術専門藷に発表し、それらの 内 容 は い ずれ も 新 知 見 を 含 む も の と し て関 連 分 野 に お い て 高 く 評 価さ れ て いる。

   審査員一同は主誓文と参考諭文の内容を慎重に検討した上で、申請者が博士(理学)

の学位をうけるに十分な資格を有することを認めた。

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参照

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