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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 下 谷    啓

     学位論文題名

Electric conduction of DNA derivatives measured     by advanced electric probing system

(新規プローバーシステムによるDNA 誘導体の電気伝導特性の研究)

学位論文内容の要旨

  近年、有機分子1分子あるいは複数分子から なる電子デバイス(トランジスタやワイヤー 等)の実現を目指した研究、いわゆる分子エレクトロニクスが注目を集めている。分子エレク トロニクスが目指すデバイス(分子デバイス)の大きさは、分子サイズであり、現在のシリコン 半導体デバイスと比較すると、桁違いに小さい。従って、シリコン半導体デバイスよりもさらな る微細化、集積化が可能である。それ故、分子デバイスがシリコン半導体デバイスに替わりう るデバイスとして非常に期待されている。

  1993年にMurphyら は 、デ オキ シリ ポ核 酸(DNA)の 中を 電子 が高速で移動するとい う研 究結果を発表した 。この結果は驚くべきもの で、DNAが分子エレクトロニクスの有望な材料 のーっと考えられるきっかけとなった。DNAは4つの塩基(アデニン、チミン、グアニン、シト シン)からなる直 径2nmの2重螺旋構造をもつ 非常に細長い有機分子であり 、かつ、特異的 な水素結合形成能 をもつ。これらの特徴を利 用すれば、既存の半導体デバ イスをはるかに 上回 る 微細 化、 集積 化 が可 能で ある 。ところが、DNAの 電気特性に関しては、未だ にDNA は伝 導 体か 絶縁 体な の かの 議論 が続 いて い る。 この 理由 はDNAのサイズが非常に小 さい ために、電気特性 の測定自体が困難であり、 その結果、様々な方法を用い て測定が行われ てい る から であ る。 従 って 、DNAを 用いた分子デバイス を実現する上でDNAの電気伝 導特 性を明らかにすることは、重要な研究課題となっている。

  DNAの電気特性 を調べるためには、ナノメー トルの領域でも、信頼性高く測定できる方法 を開発することが 必要である。我々は、この測定を行うためには、半導体評価装置であるプ ロー バ ーの ように直接DNAに 電極となるプローブを複数 本当てて測定する方法が有効 であ ると考えている。何故なら、この方法は電極作製が不要で、DNAにダメージを与えること無く 測定 で き、 加えてDNAの任意 の部分の測定ができるから である。我々は、走査型プロ ーブ 顕微鏡(SPM)を応用してナノメートル領域で測定できるいくっかのプローバーシステム(マル チプ ロ ーブSPM)を開 発 して きた 。そ れら の1種で あ るTriple‑probe AFMを用 いてDNAの 電気伝導を測定し たところ、DNAは半導体であ り、このままでは電流が流れないことがわか った。さらに、ホ ールを注入すれば電流が流 れることもわかった。従って、DNAを分子デバ イスとして利用す るためには、ホールを注入 によってDNAの電気伝導度を向上させ、かつ、

制御する必要がある。

  DNAに ホー ル 注入 する ため に、 電 子受 容性 分子 をDNA鎖 のグ ア ニン に特 異的 に 結合 さ せた誘導体を合成 することが有効であると考 えている。何故なら、DNAの4塩基中グアニン が最も低い酸化電 位をもっため、電子受容性 分子からグアニンヘ効率的に ホール注入(い わゆる化学ドーピング)されることが期待できるからである。さらに、DNAは有機分子であり、

化学修飾は比較的 簡単である。この方法は、 電子受容性分子が必ずグアニ ンに結合するた

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め、DNA鎖中のグア ニン濃度を変えることによっ て精密にドーピング量を変 えられる特徴を 持 っ 。 す な わ ち 、DNA誘 導 体の 電気 伝導 度 を精 密に 制御 でき る 可能 性が ある 。ま たDNA 同士が電子受容性分 子を介して架橋するため、誘導体はネッ卜ワーク構造をとる。それ故、1 本のDNAより長距離で電気を流すことも期待できる。

  本 研 究 の 目 的 は 、DNAの 分子 デバ イス 実 現を 目指 して 、上 記DNA誘 導 体を 合成 し、 そ の電 気 伝導特性 を明らかにすることである 。特に、ホール注入による誘 導体の伝導度の向 上、 電 気伝 導度 の制 御、 の2つの 効果を明 らかにする。加えて、誘導体 中の電気伝導機構 も詳細に調べ、明らかにしていく。さらに、誘導体を測定するために、現状のマルチプローブ SPMをさ らに 発展 さ せ、 誘導 体の 電気測定 をナノメートルの領域で再現 良く安定的に行う ことができるAFMを基本としたプローバーシステムの開発も行う。

  本 研 究 で 合 成 し たDNA誘 導 体 の 構 造 はDNA鎖 の グ ア ニ ン 塩 基 に 特 異 的 に 結合 する り ンカー分子(cis‑platin)を介して電子受容性分 子(DIDSおよびcongo red)が 結合してぃる。

この 誘 導体 を測 定す るた め に開 発した新た なプローバーシステムは、AFMのプローブに対 向して10nmの精度で 制御できるもう1本のプロー ブを備えている。このプロ ーブを高性能の ピェゾアクチュエー ターで制御することによっ て2本のプローブを自由に動 作させ、誘導体 に接続し電極として用いることができる。加えて、それぞれのプローブ先端にカーボンナノチ ユーブを取り付けることによって、プローブ同士をナノメートルの領域まで近づけることができ、

その領域での電流電圧特性の測定を可能にした。

  こ の 装 置 を 用 い てDNA誘 導 体 の 微 小 領 域 で の 詳細 な 電流 電圧 特性 の 測定 を行 った 。 AFM像か ら表 面は 約2〜4 nmの高 さで 凸凹 して い るこ とが わかった。こ の凹凸は、誘導体 の架 橋 構造に起 因すると考える。誘導体上 の一点に固定した第二プロー ブからの距離を20

〜 300n亅ニnまで変 えた点に、AFMプローブを固定し、これらのプローブの間での電流電圧特 性を 測 定し た。 距離 が、150 nm以下では電 流が流れるが、200nm以上で は電流が検出でき なか っ た。 加え て、 ホー ル 注入 され てい ないA‑DNAで は6nm以上で電流 が検出されなかっ た。 従 って 、グ アニ ンヘ の ホー ル注入がDNAの電気伝導度を向上させた ことがわかった。

  DNA鎖 中の グア ニ ン・ シト シン 塩 基対 の濃 度を 変え て 合成したDNA誘 導体のキャスト膜 の電気伝導特性を測 定すると、グアニン・シト シン濃度が上昇するにっれ伝導率も上がって いる。この結果はグアニン濃度を変化させることによって誘導体の電気伝導を制御できること を示している。さら に、我々の誘導体の合成指 針が正しいことを示しており、電子受容性分 子 が グ ア ニ ン に 結 合 し 、ホ ール が グア ニン 塩基 に移 動 して いる こと を 示唆 して いる 。   さ ら に誘 導体 の電 流電 圧 特性 を詳 細に 解析 し た。 電流 電圧特性は電 圧が増加すると電 流は非線形で増加し ている。電圧がOV付近のギ ャップは距離の±曽加に従って大きくなって いる。この振る舞い は、誘導体中では電荷がホ ッピングによって移動している可能性を示し ている。そこでホッ ピングモデルで解析を行っ た。電流電圧曲線をホッピング伝導を表す式 でフィッティングしたところ、非常に良く再現できていることがわかった。従って誘導体中、ホ ールはホッピングによって伝導していることが明らかになった。そのときのホッピング距離は 約7 nmで、このホッピング距離も化学ドーピングによって増加することがわかった。この誘導 体の伝導機構は、ネ ットワーク構造を形成して いるDNA鎖上をホールがホッ ピングすること によって伝導していると結論づけた。

  以 上 の結果、 新規プロービングシステム の微小領域の測定によって、 電子受容性分子を グアニンに特異的に 結合させたDNA誘導体では、 ホッピング伝導によってホ ールが伝導し、

さらに、この電気伝 導度をDNA鎖中のグアニン濃 度を変化させることによっ て制御できるこ とを明らかにした。DNAを用いた分子デバイスの 実現には、この誘導体が有 効であることを 示した。

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学位論文審査の要旨

主 査    教 授    川 端 和 重 副 査   教 授    新 田 勝 利 副 査   教 授   中 田 允 夫 副 査    助 教 授    芳 賀    水

     学 位 論 文 題 名

Electric conduction of DNA derivatives measured     by advanced electric probingSySten1

( 新 規 プ ロ ー バ ー シ ス テ ム に よ る DNA 誘 導 体 の 電 気 伝 導 特 性の 研究 )

  近 年、 有機 分子 の1分子 あるいは複数分 子からなる電子デバイスの実 現を目指した分子 エレクトロニクスの発展が注 目を集めているが、その基本のひとっに分子電気伝導鎖の研究 がある。DNA(デオキシリボ核 酸)は、長い塩基鎖であるが、その配列を人工的に制御するこ とができるために、分子伝導 鎖としての応用が注目され ている。しかし、DNAの電気伝導性 に 関 す る 研 究 領 域 は 、 ま だ 未 開 拓 で 今 後 の 発 展 が 待 た れ て い る 状 況 に あ る 。   本 論 文 は 、 この よう な現 況に あ るDNAの 分子 電気 伝導 鎖へ の 展開 のた めに 、DNA誘 導 体を合成し、その電気伝導特 性を新たなプローブ顕微鏡システムを用いて明らかにすること でDNAの伝導機構を解明しよ うとしたものである。特に、 ホール注入による誘導体の伝導度 の向上、電気伝 導の制御機構に注目した。 誘導体の伝導性を測定するた めに、現状のマル チプローブ走査 型プローブ顕微鏡(SPM)を さらに発展させ、ナノメート ルの領域で電気測 定を再現良く安定的に行うこ とができるSPMを基本とした プローバーシステムの開発を行っ た。

  合 成 し たDNA誘導 体の 構 造は 、DNA鎖 のグ アニ ン塩 基 に特 異的 に結 合 する りン カー 分 子を介して電子受容性分子が 結合したものである。新しく開発したプローバーシステムは、

SPMの プロ ー ブに 対向 して10nmの 精度 で制 御で き るもう1本のプローブ を備えている。こ のプローブを高性能のピェゾ ァクチュエーターで制御す ることによって2本のプローブを自 由に作動させ、誘導体の任意 の位置に直接接続し電極として用いることができる。加えて、

それぞれのプローブ先端にカ ーボンナノチューブを取り付けることによって、プローブ同士 をナノメートルの領域まで近 づけることができ、その領域での電流電圧特性の測定を可能に した 。こ の装 置を 用 いてDNA誘導体の微小 領域での詳細な電流電圧特性 の測定を行った。

誘導 体上 の一 点に 固 定し た点から第二プロ ーブまでの距離を20^‑ 300 nmまで変えた点ま での 間の 電流 電圧 特 性を 測定 する と、 距 離が150 nm以 下 では 電流 が流 れる が、200nm以 上では検出できなかった。さ らに、ホール注入されてい ないA‑DNAでは伝導性はなかった。

従 っ て 、 グ ア ニ ン へ の ホ ー ル 注 入 がDNAの 電気 伝導 度 を向 上さ せた こ とが わか った 。   DNA鎖中 の グア ニン ・シ ト シン 塩基 対の 濃度 を 変えて合成したDNA誘 導体のキャスト膜 の電気伝導特性を測定すると、グアニン・シトシン濃度が上昇するにっれ伝導率も上昇した。

この 結果 は、 我々 のDNAの 電 気伝 導機 構で ある グ アニ ン塩 基に おけ る ホー ルが移動する

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実