博 士 ( 薬 学 ) 瀬 理 智 弓
学 位 論 文 題 名
ジルコノセンを用いた多置換ナフタセン類の 合成とその光電変換素子への応用
学位論文内容の要旨
は じ めi三
多 環 式 化 合 物 に は 、 生 理 活 性 物 質 や 機 能 性 物 質 な ど の 機 能 を 有 す る 化 合 物 が 知 ら れ て い る 。 生 理 活 性 物 質 と し て は 、4環 式 の 化 合 物 で あ る ア ド リ ア マ イ シ ン や7ー ク 口 口 テ ト ラ サ イ ク リ ン が あ る 。 こ れ に 対 し 、 機 能 性 物 質 と し て は 、 ア セ ン 類 を 挙 げ る こ と が で き る 。 こ の よ う な 化 合 物 が 、 上 記 の 機 能 の 調 節 や 発 現 を す る た め に は 、 置 換 基 の 種 類 と そ れ を 導 入 す る 位 置 が 重 要 と な る 。 し か し 、 現 在 ア セ ン 類 の 合 成 法 に は 制 約 が あ る の で 、 導 入 で き る 置 換 基 の 種 類 お よ び 位 置 に 制 限 が あ る 。 こ れ ま で に 、 当 研 究 室 で は ジ ル コ ニ ウ ム を 用 い た 多 置 換 ア セ ン 類 の 合 成 法 を 開 発 し て き た 。 本 研 究 で は 、 こ れ ら の 方 法 を さ ら に 発 展 さ せ 、 新 規 ナ フ タ セ ン 誘 導 体 の 合 成 を 目 指 し た 。 ま た 、 合 成 し た ナ フ タ セ ン 誘 導 体 を 光 電 変 換 素 子 へ と 応 用 し 、 導 入 し た 置 換 基 が 物 性 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 し た 。
1.3環 式 ジ ル コ ナ サ イ ク ル と2ヨ ニ ド ベ ン ゼ ン 萱 ― 豊 体 と の 盈 型 プ リ ン グ に よ る ナ フ 夕 聖2萱 蔓 倥 堕 金 成
第 一 章 で は 、3環 式 ジ ル コ ナ サ イ ク ル と ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 類 と の カ ッ プ リ ン グ 反 応 に よ る ナ フ タ セ ン 誘 導 体 の 合 成 法 を 開 発 し た 。 本 研 究 で は 、 用 い る ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 類 に あ ら か じ め 電 子 的 に 影 響 の 異 な る 置 換 基 を 導 入 し て お く こ と で 、 ナ フ タ セ ン 骨 格 に 種 々 の 置 換 基 の 導 入 す る こ と が で き た 。 さ ら に 、 こ の 手 法 で 導 入 さ れ た 官 能 基 を 足 が か り と し 、 こ れ ら と は 異 な る 置 換 基 を 有 す る 新 規 ナ フ タ セ ン 誘 導 体 の 合 成 を お こ な っ た 。 こ の カ ッ プ リ ン グ 反 応 を 開 発 し た 過 程 で 、 ジ ル コ ナ サ イ ク ル 上 と ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 類 上 に 存 在 す る 置 換 基 に よ っ て カ ッ プ リ ン グ 体 の 収 率 が 大 き く 変 化 す る こ と を 見 出 し た 。 2: 重 壟 基 童 壷 立 る ナ フ タ セZ三 量 恷Q金 盛
第 二 章 で は 、 第 一 章 で 開 発 し た ジ ル コ ナ サ イ ク ル を 用 い た カ ッ プ リ ン グ 法 を 応 用 し 、 置 換 ナ フ タ セ ン 二 量 体 の 合 成 を お こ な っ た 。 ア セ ン 類 の 二 量 体 は 単 量 体 に は な い 性 能 を 示 す 可 能 性 が あ る 。 た と え ば 、 置 換 ア ン ト ラ セ ン の 二 量 体 は 単 量 体 よ り も 優 れ た 性 能 を 示 す と 報 告 さ れ て い る 。 置 換 ナ フ タ セ ン 関 し て も 同 様 の 効 果 が 期 待 さ れ る が 、 合 成 す る の に 多 段 階 を 必 要 だ っ た り 、 二 量 化 の 位 置 を 制 御 す る の が 難 し い た め 、 置 換 ナ フ タ セ ン 二 量 体 の 合 成 法 は 報 告 さ れ て い な い 。 そ こ で 本 研 究 で は 、3環 式 ジ ル コ ナ サ イ ク ル と テ ト ラ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン
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とのカップリング反応を用いてジヨードナフタセンの合成をした。さらにこの 反応でナフタセン骨格上に残ったヨウ素を利用することで二量化反応をおこ ない、これまでに合成例のないナフタセン二量体を合成することができた。
3 .ジルコニウムを用いたルプレン誘導体の合成
第三章では、ナフタセン誘導体であるルブレンをジルコニウムを用いる手法 で合成した。ルブレンは有機電子材料として優れた性能を示すと知られている
。ルブレンが高性能を示す理由は、その隣り合う環上に導入された 4 つのフェ ニル基だと考えられている。これらのフェニル基を修飾すればルプレンの性能 はさらに高くなると推測されるが、アセン骨格の隣り合う環に置換基を導入す るのが困難であるためその効果の詳細はわかっていない。そこで本研究では、
ジルコナサイクルを用いた手法でナフタセンキノンを合成し、そのカルポニル 位を足がかりとし、様々な置換基をナフタセン骨格に導入した。さらにこれら の化合物をルブレン誘導体へと変換した。この方法により、これまでには困難 であった隣り合う環に置換基の導入が可能となった。
4 .ルプレン誘導体の光電変換素子への応用
第四章では、第三章で合成したルブレン誘導体を用いて置換基の違いが物性 に与える影響について考察した。ルブレンは有機材料として高い性能を示すが
、そのフェニル基上に置換基を導入してさらに性能を改善した研究例は知られ ていない。本研究では、置換基を有するルブレン誘導体と無置換ルプレンを光 電変換素子へと応用し、その性能を比較した。この結果、置換基を導入したル ブレン誘導体は、無置換ルブレンよりも高い性能を示すことがわかった。また
、置換ルブレンを光電変換素子へと応用したとき、その薄膜表面を観測すると
、無置換ルブレンを用いたときよりも均一だった。このことから、置換ルプレ ンが高い性能を示すのは、より均一な薄膜を形成できるからだと考えられる。
5 .ナフタセン誘薑笠の物性測定
第五章では、第一章で開発した 3 環式ジルコナサイクルとジヨードベンゼン 類とのカップリング反応によルナフタセン誘導体を合成し、置換基の違いが物 性に及ぼす影響について考察した。この方法で導入したアルキル鎖の長さの違 いによる溶解度の差について検討したところ、工チル基、プ口ピル基またプチ ル基をもっナフタセンは非常に高い溶解度を示すことを見出した。これに対し
、メチル基は溶解度向上には寄与しないことが判明した。また.、ナフタセン誘 導体の薄膜を作製し分子配列を観察したところ、その分子配列は製膜条件によ って変化するとわかった。
6 .まとめ
本研究ではジルコナサイクルを用いた反応による、種々の新規ナフタセン誘 導体の合成法を開発した。また、合成した化合物を光電変換素子へと応用した
。そして、これらの化合物を評価したところ、置換基を有するとその性能が無 置換のものより高くなることを見出した。
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学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 准教授 准教授
高橋 佐藤 小笠原 齋藤
学 位 論 文 題 名
保 美洋 正道 望
ジ ルコノセ ンを用いた多置換ナフタセン類の 合成 とその光 電変換素子への応用
瀬 理 智 弓 氏 の 「 ジ ル コ ノ セ ン を 用 い た 多 置 換 ナ フ タ セ ン 類 の 合 成 と そ の 光 電 変 換 素 子 へ の 応 用 」 と 題 さ れ た 学 位 論 文 は 、 序 章 と ま と め を 含 め て 全7章 か ら な る 。
初 め は 序 章 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 、 そ の 着 想 に い た っ た 経 緯 に つ い て 述 べ ら れ て い る 。 多 環 式 芳 香 族 化 合 物 で あ る ア セ ン 類 の 特 徴 的 な 機 能 の 発 現 に は 、 導 入 す る 置 換 基 の 種 類 と 位 置 が 重 要 と な る 。 し か し 、 現 在 ア セ ン 類 の 合 成 法 に は 制 約 が あ る の で 、 導 入 で き る 置 換 基 の 種 類 お よ び 位 置 に 制 限 が あ る 。 こ れ ま で に 、 著 者 の 所 属 す る 研 究 室 で は ジ ル コ ニ ウ ム を 用 い た 多 置 換 ア セ ン 類 の 合 成 法 を 開 発 し て い る こ と か ら 、 本 研 究 で は 、 そ れ ら の 方 法 を さ ら に 発 展 さ せ る こ と で 、 新 規 ナ フ タ セ ン 誘 導 体 の 合 成 を 目 指 し た 。 ま た 、 合 成 し た ナ フ タ セ ン 誘 導 体 を 光 電 変 換 素 子 へ と 応 用 し 、 導 入 し た 置 換 基 が 物 性 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 し た 。
本 論 の 第1章 で は 、 「3環 式 ジ ル コ ナ サ イ ク ル と ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 誘 導 体 と の カ ッ プ リ ン グ に よ る ナ フ タ セ ン 誘 導 体 の 合 成 」 に つ い て 述 べ ら れ て い る 。 用 い る ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 類 に あ ら か じ め 電 子 的 に 影 響 の 異 な る 置 換 基 を 導 入 し て お く こ と で 、 ナ フ タ セ ン 骨 格 に 種 々 の 置 換 基 を 導 入 す る こ と が で き た 。 さ ら に 、 こ の 手 法 で 導 入 さ れ た 官 能 基 を 足 が か り と し 、 さ ら な る 置 換 基 導 入 を 行 っ て い る 。 ま た 、 こ の カ ッ プ リ ン グ 反 応 を 開 発 し た 過 程 で 、 ジ ル コ ナ サ イ ク ル 上 と ジ ヨ ー ド ベ ン ゼ ン 類 上 に 存 在 す る 置 換 基 に よ っ て カ ッ プ リ ン グ 体 の 収 率 が 大 き く 変 化 す る こ と を 見 出 し て い る 。
第2章 で は 、 「 置 換 基 を 有 す る ナ フ タ セ ン 二 量 体 の 合 成 」 に つ い て 述 べ ら れ て い る 。 ア セ ン 類 の 二 量 体 は 単 量 体 に は な い 性 能 を 示 す 可 能 性 が あ り 、 ナ フ タ セ ン に 関 し て も 同 様 の 効 果 が 期 待 さ れ る が 、 こ れ ま で 置 換 ナ フ タ セ ン 二 ―57―
量体 の合成法は 報告されていない。そこで本研究では、3 環式ジルコナサイ クルとテトラヨードベンゼンとのカップリング反応を用いてジヨードナフタ センの合成をした。さらにこの反応でナフタセン骨格上に残ったヨウ素を利 用することで二量化反応をおこない、これまでに合成例のないナフタセン二 量体を合成することができた。
第3 章では、 「ジルコニウムを用いたルブレン誘導体の合成」について述 べられている。ルブレンは、有機電子材料として優れた性能を示すことが知 られている。これを修飾すればルブレンの性能はさらに高くなると推測され るが、その効果の詳細はわかっていない。そこで本研究では、ジルコナサイ クルを用いた手法でナフタセンキノンを合成し、そのカルポニル位を足がか りとし、様々な置換基をナフタセン骨格に導入した。さらにこれらの化合物 をルブレン誘導体へと変換した。この方法により、種々のルブレン誘導体の 合成に成功した。
第4 章では、 「ルブレン誘導体の光電変換素子への応用」について述べら れている。前章で合成したルブレン誘導体を光電変換素子へと応用し、その 性能を無置換ルプレンのものと比較した。種々の実験の結果、置換基を導入 したルブレン誘導体は、無置換ルブレンよりも高い性能を示すことがわかっ た。置換ルプレンの薄膜表面を観測すると、無置換ルプレンよりも均一だっ たことから、この要因は、置換基の導入により成膜性が向上したためである と考えられる。
第5 章では、 「ナフタセン誘導体の物性測定」について述べられている。
アルキル鎖の長さが異なるナフタセン誘導体を用い、置換基の遠いが物性に 及ぼす影響について考察した。溶解度の差について検討したところ、エチル 基、プロピル基またプチル基をもっナフタセンは非常に高い溶解度を示すが、
メチル置換のものは非常に溶解性が低かった。また、ナフタセン誘導体の薄 膜を作製し分子配列を観察したところ、その分子配列は製膜条件によって変 化することがわかった。
最後に、まとめとして上述の内容を要約して、本論文を締めくくっている。
以上のように本論文では、ナフタセン誘導体の合成法、および置換ナフタ センの物性について新たな一面を見出し、置換基の違いにより、合成におけ る反応効率に差が出ることや、得られたナフタセンについても物理的性質が 顕著に変化することを見出している点で大変興味深い。これらは、有機合成 化学、および有機材料化学における大変重要な知見であり、今後のさらなる 発展を大いに期待させる結果である。以上の点から、本論文は博士の学位に 十分に値する内容であると判断した。
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