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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 川 本 千 春

     学位論文題名

冷間等方加圧を利用した新しい陶材インレー作製法 学位論文内容の要旨

【緒言】

  陶材は古くから生体親和性,化学安定性,審美性に優れた修復材料として評価されてお り,接着技術の進歩により近年,見直されている.しかし,従来の陶材インレー作製法は 技工操作が煩雑で熟練を要するほか,製作者の技量により製作物のバラツキが大きい.ま た,多数回焼成を行うため強度の低下やマイクロクラック発生の危険性などの欠点があ る.本研究では陶材成形の簡便化,製作物の均質化を図るため,一般工業界においてセラ ミックスの粉末成形に応用されている冷間等方加圧(CIP)法を導入し,CIPを利用した陶材 インレー作製プロセスを確立,その物性を評価し,本方法に適する陶材粉末および模型材 選定したのち,これらの材料を用いて作製した陶材インレーの寸法適合性を検討した.

【材料および方法】

実験1CIPによる陶材成形と物性評価

  陶材粉末として,G−CERAC○SMOI丶ECHI[(以下CSと記す),及びCSより有機物を除い た陶材(PO)を用い,耐火模型に乾燥状態のまま過剰に充填,密閉しCIP装置にて100,20 0,300,400MPaで加圧成形を行った.これを形態修正後,真空焼成した(970℃).また対 照に,陶材粉末を手指圧で充填したO MPaの試料と,従来のコンデンス法により築盛し一 回焼成した試料(コンデンス法)を作製し,焼成収縮,密度,ピッカース硬さ,二軸曲げ 強さ,SEM観察を評価した.

実験2シリカ添加による影響  ′

  シリカ粉末に破砕状,球状,細粒状,フュームドシリカの4種を用い,POと重量比で0, 10,30,50%で配合し,各配合物を耐火模型に手指圧で充填,970―1130℃の焼成温度で 焼成し,シリカ選定のため色調,収縮を比較した.また収縮率を定量的に測定するため破 砕状シリカを同様に混合したものを用い,400MPaで加圧成形後,焼成し(890−1130℃),

MMA樹脂に包埋,中央部で切断し図形計測プ口グラムにて焼成時の収縮率を算出した.

実験3模型材の寸法変化

  耐火模型材には,CVの粉末と専用練和液を用いたCV(30%コ口イダルシリカ),40%お     ‑ 456―

(2)

よび50%コ口イダルシリカを用いたCV40,CV50を使用し,硬化膨張,熱膨張,CIP圧カ による影響を調べたのち各過程での寸法変化を検討した,模型の寸法変化はめ4 X8 mmの 円柱状試料を作製し,直径及び長さの変化率から求めた.

実験4インレー体の寸法適合性

  上端 の直径6 mm,高 さ2mm, 片側 傾斜角10度 のテ ーバー を付 与し たイ ンレー用金 型,および同寸法の測定用金型を用意し,インレー用金型を印象採得後,CV50を使用し て耐火模型を作製した.これに破砕状シリカを添加した陶材を用いCIP法によルインレー を作製し,収縮率を測定用金型を用い,沈下量から算出した,

【結果および考察】

  CIPは「バスカルの原理」を利用し,圧力媒体を通じすべての方向から等しい圧カを加 える方法である.等方的,静的圧カである静水圧を利用しているため,通常の一軸圧縮に 比ベ破壊応カを越える超高圧でも近似的に非破壊のまま圧縮可能であり,また複雑な形態 にも応用できる.この性質を利用し,模型を破壊することなく粉末のみを加圧成形する CIP法を確立し,以下について調べた.

〔実験1〕従来のコンデンス法では微細な陶材粉末が耐火模型表面の凹凸に入り込み焼結し たため,全ての試料で陶材が耐火模型と焼き付き,いくっかの試料では中央部に亀裂が生 じていたが,CIP法では陶材は均一に収縮し模型より離型し,亀裂は観察されなかった.

  400 MPaで加圧した圧粉体のSEM像では100 MPaより陶材粉末が緊密に充填されている のが観察され,CIP法で成形した場合,圧カの上昇にともなって緻密化が進行し,見かけ 密度が大きくなる,このため内部空隙率が減少しCS,100 MPaで12.7%の収縮率が,400 MPaで9.6%と減少したと考えられる.一方,焼成体のSEM観察では,均一に焼成されて おり,圧カによる違いが見られなかった.これは焼成体の物性値に圧力依存性を認めず,

硬さHv 530―550,曲げ強さ225―260 MPa,密度2.4 g/cm゜とほぽ一定になった結果と一 致した.また,CIP法に比較しコンデンス法では曲げ強さが低下し,パラツキが大きかっ た事実も,CIP法が均質な製作物を再現性よく得るのに優れた方法であるのを示唆してい る.さらに陶材粉末中の有機物を除去したPOを用いると密度が高くなることから以後POの みを用いた.

〔実験2〕 CIP圧カの増加により焼成収縮はかなり減少するが臨床応用のためには不十分で あり,さらに収縮を減少させることを目的として粒径,形状,結晶構造の異なるシリカを 添加し,CIP法に有効な陶材粉末を検討した.

  細粒状及びフュームドシリカを添加した試料は焼成収縮が他のニつに比較し大きく,透 明感が低下している他,かさ密度が大きく,添加量が10%以上になると充填時の取り扱い が困難であった.球状シリカでは焼成収縮が最も小さく有効に思えたが,摩擦カが小さい

(3)

ため,400 MPaで加圧成形しても圧カを除去すると粒子間が分離し,圧粉体が容易に崩壊 し形態付与が困難であった.破砕状シリカでは焼成収縮が比較的小さく,加圧により互い に差し込み合い,生じた嵌合効カにより圧粉体の成形維持性が良く,形態付与が容易であ った.そこで破砕状シリカを添加し,シリカ添加量が焼成温度と焼成収縮に与える影響に ついて調べたところ,焼成収縮は焼成温度が高くなるにしたがって増加し,シリカ添加量 の増加にともない減少を示した.POの主成分はSioz 61%,Al2〇314%,Kz〇19%,Na2〇 6%であり,これに10,30,50%のシリカを加えると,陶材粉末中のシリカの含有量は6 4,72,80%となり,シリカは高融点のため,融解しにくくこのため収縮率が減少したと 考えられる.

〔実験3〕以上では耐火模型に対する陶材の相対的な収縮を測定したが,模型の寸法変化も 陶材の寸法適合性に影響を及ぽすため,硬化膨張,熱膨張,CIP圧カの効果を調べた.

  硬化膨張はCV,CV40で0.3%,CV50で0.7%と膨張が増大し有意に大きな値を示し,

また熱膨張率では差を認めなかった..CIP圧カの増加により耐火模型は収縮し,CVを400 MPaで加圧すると約2.3%の収縮を認めたことから,CVを使用した場合,硬化膨張を考慮 しても約2%の収縮が残り,ポーセレン自身の収縮と合わせCIP法ではかなりの収縮が起き ることが予想される,一方,CV50の場合,硬化膨張が増加し,CIP加圧時の収縮が減少 するため最終的にO.16%の収縮になった.

〔実験4〕現段階で最も有効な模型材を実験3で選択した後,原型に対する寸法適合性を評 価した.テーバー金型を用いた本方法では,耐火模型と陶材の間隙から算出した方法に比 ペ,より大きな収縮値を示したが,シリカ添加量の増加にともない収縮は減少する定性的 な 傾 向 は 一 致 し て お り ,890℃ で 焼 成 し たP50で は 最 小 の1.6% を 示 し た .

【結語】

  コンデンス法を前提とした陶材粉末及び耐火模型材を,CIP法に適するように改良を加 えた結果,焼成収縮の大幅な減少が可能となった,本方法では術者によらず簡便に再現性 良く,均質な焼成体を得ることができ,接着性レジンセメントとの併用により臨床への応 用も可能になると考えられる.

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

亘理 大畑 佐野 小松

文夫      英彦 久憲

     学位論文題名

冷間等方加圧を利用した 新しい陶材インレー作製法

  審 査 は 主 査 , 副 査 全 員 が , 同 に 会 し て 口 頭 で な さ れた 。 は じめ に 本 論 文の 要 旨 の説 明 を 求 め , 申 請 者 か ら 以 下 の よ う な 内 容 に つ い て の 論 述 が な さ れ た 。

  近 年 , 接 着 技 術 の 進 歩 に よ り 陶 材 は 見 直 さ れ い る が , 従 来 の陶 材 イ ン レー 作 製 法は 技 工 操 作 が 煩 雑 で 熟 練 を 要 す る ほ か , 製 作 者 の 技 量 に よ り 物 性 に 差 が でる 可 能 性 があ る 。 本研 究 で は 陶 材 成 形 の 簡 便 化 , 製 作 物 の 均 質 化 を 図 る た め , 一 般 工 業 界 にお い て セ ラミ ッ ク スの 粉 末 成 形 に 応 用 さ れ て い る 冷 間 等 方 加 圧(CIP)法 を 導 入 し ,CIPを 利 用 し た 陶 材 イ ン レ ー 作 製 プ 口 セ ス を 確 立 , そ の 物 性 を 評 価 し , 本 方 法 に 適 す る 陶 材 粉 末 お よび 模 型 材 選定 し た のち , こ れ ら の 材 料 を 用 い て 作 製 し た 陶 材 イ ン レ ー の 寸 法 適 合 性 を 検 討 し た 。

【 材 料 と 方 法 】

  CIP法 の 手 順 は 耐 火 模 型 に 陶 材 粉 末 を 乾 燥 状 態 の ま ま 過 剰 に 充 填 , 密 閉 しCIP装 置 に て 100 400MPaで 加 圧 成 形 を 行 い , こ れ を 形 態 修 正 後 , 真 空 焼 成 す る 。

〔 実 験 1 G CERA COSMOTECHn(CS), 及 びCSよ り 有 機 物 を 除 い た 陶 材(PO)を 用 い , 従 来 法 とCIP法 と の 比 較 , お よ びCIP圧 カ に よ る 影 響 を 焼 成 収 縮 , 密 度 , ビ ッ カ ー ス 硬 さ , 二 軸 曲 げ 強 さ ,SEM観 察 よ り 評 価 し た 。

〔 実 験2〕 シ リ カ 粉 末 に 破 砕 状 , 球 状 | 細 粒 状 , フ ュ ー ム ド シ リ カ の4種 を 用 い ,POと 重 量 比 で050% で 配 合 し , シ リ カ 選 定 の た め 色 調 , 焼 成 収 縮 を 比 較 し た 。 ま た 収 縮 率 を 定 量 的 に 測 定 す る た め 破 砕 状 シ リ カ を 同 様 に 混 合 し た も の を 用 い ,400MPaで 加 圧 成 形 後 , 焼 成 (8901130℃ ) し ,MMA樹 脂 に 包 埋 , 中 央 部 で 切 断 し 図 形 計 測 プ □ グ ラ ム を 用 い て 焼 成 時 の 収 縮 率 を 算 出 し た 。

〔 実 験3〕 耐 火 模 型 材 の 寸 法 変 化 を 知 る た め ,CVの 粉 末 と 専 用 練 和 液 を 用 い たCV(30% コ 口 イ ダ ル シ リ カ ) ,40% お よ び50% コ 口 イ ダ ル シ リ カ を 用 い たCV40CV50を 使 用 し , 硬 化     459

(5)

膨張,熱膨張,CIP圧カによる影響を調べた。

〔実験4〕原型に対する陶材の寸法変化を調べため,インレー用金型を印象採得後,CV50 を使用して耐火模型を作製し,これに破砕状シリカを添加した陶材を用いCIP法によルイン レーを 作製 した ,なお ,収 縮率 を同 寸法の 測定 用金 型を 用い沈 下量から算出した。

【結果および考察】

〔実験1〕コンデンス法では微細な陶材粉末が耐火模型表面の凹凸に入り込み焼結していた ため,全ての試料で陶材が耐火模型と焼き付き,更にいくっかの試料では中央部に亀裂が生 じていたが,CIP法では陶材は均一に収縮し模型より離型し,亀裂は観察されなかった。

  焼成収縮はCIP成形の上昇に従って減少したが,焼成体の密度,硬さ,曲げ強さでは圧カ による違いは認めなかった,しかし,コンデンス法では曲げ強さが低下し,パラツキも大き か っ た 。 ま た , 有 機 物 を 除 去 し た 陶 材 を 用 い る と 密 度 が 高 い 値 を 示 し た 。

〔実験2〕収縮を減少させることを目的としてシリカを添加し,CIP法に有効な陶材粉末を 検討した結果,細粒状及びフュームドシリカを添加した試料は焼成収縮が他のシリカに比較 し大きく,透明感が低下し,シリカ添加量が10%以上になると取り扱いが困難であった。

球状シリカでは焼成収縮が最も小さく有効に思えたが,400 MPaで加圧成形しても圧カを除 去すると,圧粉体が容易に崩壊した。一方,破砕状シリカでは焼成収縮が比較的小さく,か つ圧粉体の成形維持性に優れていた。そこでこのシリカを添加し,焼成収縮を測定した結 果,焼成温度が高くなるにしたがって収縮は増加し,添加量の増加にともない減少を示し た。これは,シリカが高融点のため融解しにくくこのため収縮率が減少したと考えられる。

〔実験3〕模型の寸法変化も陶材の寸法適合性に影響を及ぽすため,硬化膨張,熱膨張,

CIP圧カの効果を調べたところ,硬化膨張はCV50で他のニつに比較し膨張が倍以上増大し た,一方,熱膨張率では差を認めなかった.CIP圧カによる寸法変化は圧カの増加により模 型 は 収 縮 し , コ 口 イ ダ ル シ リ カ の 濃 度 の 高 いCV50で は 収 縮 が 減 少 し た 。

〔実験4〕 CV50を使用し,原型に対する寸法適合性を評価した結果,金型を用いた方法で は実験2での値に比べより大きな収縮率を示したが,シリカ添加量の増加とともに収縮は減 少する定性的な傾向は一致しており,890℃で焼成したP50では最小の1.6%を示した。

  これらの結果よりCIP法を用いることにより,陶材成形を簡便かつ短時間で行い,均一な 製作物を作製出来ることが示唆された。

  以上の論文内容についてひきっづき各審査員と申請者のあいだで,実験方法,結果,考 察,展望および関連分野の質疑応答がなされ,申請者はいずれにも明快な回答,説明を行っ た。本研究は,陶材成形へのCIP応用を可能にした点で独創的な研究であり,今後陶材のみ ならず他の材料への発展性も考えられる。これらから,歯科医学の発展に貢献する研究であ り,博士(歯学)学位の授与に十分値すると認められた。

参照

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