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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 井 鍋 一 則

     学位論文題名

牛 白 血病 ウイルス のウイ ルス感染 と細胞融 合にお ける エンベローブ糖蛋白質gp30YXXL 配歹!の役割に関する研究

学 位論文内容の要旨

  牛自血病ウイルス(BLV)は、ヒトT細胞白血病ウイルス‐1および−2に最も近縁のレトロ ウ イルス で、 ウシ の悪 性Bリン パ腫よ りな る地 方病 性牛自血病を引き起こす。BLVのエン ベ ロープ 糖蛋 白質 は、72‑kDの前駆蛋白質として合成され、表面蛋白質gp51と膜貫通蛋白 質gp30に 分解 され る。gp30の細 胞内 領域 には 、3つ のYXXL配 列が 存在 する 。そ のN‑末端 側2つ の 配 列 は 、Tお よ びB細 胞 抗 原 受 容 体 か ら の 情 報 伝達 に関 与するimmunoreceptor tyrosine‑activation motifと同様に、TyrおよびLeuに依存した情報伝達を展開できることが 明 ら か と な っ て い る 。 また 、YXXL配 列は 、分 子を 細胞 表面 から 細胞質 ヘ内 在化 させ る internalization signalとしても認識されることが知られ、BLVのYXXL配列の様々な機能 に興味が持たれている。そこで、申請者はYXXL配列のin vitroにおけるウイルス感染と細 胞融合能の役割を詳細に解析した。

  1つ のlong terminal repeat (LTR)を持 つ環 状型 ウイ ルスDNAの感染 性分 子ク ロー ン (pB6490)よ り 、2つ のLTRを 持 つ 完 全 長BLV感 染 性 分 子 ク ロ ー ン(pBLV‑IF)を 構 築 し た 。更に 、こ のpBLVーIFを 用い て、gp30に存 在す る3つ のYXXL配 列の うち 、情 報伝達に 必 須 で あ る と 報 告 さ れ て い るN― 末 端 側2つ の 配 列 のTyrお よ びLeuをsite‑directed mutagenesisに よ りAlaに 変 異 した ウ イ ル スDNA (Y487A、L490A、Y498A、L501Aおよ び Y487/498A)を作製した。

  これらYXXL配列変異ウイルスの発現と粒子産生を検討する゛ため、野生体および変異型 ウ イ ル スDNAをCOS‑1細 胞 に 一 過性 に 導 入 し た 。60時 間 後、 細胞 のSDS可溶 化物 を調 製 し 、BLV感 染 ヒ ッ ジ 血 清 を 用い て免 疫ブロ ット した 。全 ての 変異 型ウ イル スDNA導入 細 胞は、野生体導入細胞と同程度にp24、Pr45gag、Pr70gag、gp30、gp51韜よびgPr72en'を発 現することが示された。また、培養上清中のウイルス粒子を超遠心により濃縮し、逆転写 酵 素活性 を測 定し た結 果、 全て の変 異型 ウイ ルスDNA導 入細 胞の 培養 上清 は、 野生体導 入 細胞と 同程 度に 活性 を示 した 。こ れら の結 果か ら、 いず れの変 異型 ウイ ルスDNA導入 細 胞も正 常にBLVを発 現し 、粒 子を産 生す るこ とが 明ら かと なっ た。 続い て、 直線化し た ウ イ ル スDNAをCOS‑1細 胞 に 安定 導 入 し 、 ウ イ ル ス の 安 定 発 現 細 胞 株 を 樹 立 し た 。   変異ウ イル スのin vitr〇における感染性と増殖性を検討するため、BLV感受性FLK細胞 に ウ イ ル スDNAを 一 過 性 に 導 入 し 、 導 入 細 胞 を 継 代 し た 。 野 生 体 、 お よ びY487A、 L490Aお よ びL501A変 異 ウ イ ル スDNA導 入 細 胞 は 、 継 代 に っ れてBLV抗 原 陽 性 率 お よ び 培 養上清 中の 逆転 写酵 素活性の増加を示した。一方、Y498A韜よびY487/498A変異ウイル スDNA導 入 細 胞 に お い て 、 両 変 異 ウ イ ル ス は 増 殖 性 を 示さ なか った。 また 、ウ イル ス

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DNAの 安定 導入COSー1細 胞の 培養上清を超遠心してcell‑freeウイルスを調製し、FLK細胞 に接 種し た場合 も、Y498Aお よびY487/498A変異 ウイ ルス 接種 細胞 のBLV抗原 陽性 率は 、 野生体および他の変異型に比べ著しく低下していた。

  Y498Aお よびY487/498A変異 ウイ ルス の感 染性 およ び増 殖性低下の機序を明らかにする ため、cell―freeウイルスをBLV感染ヒッジ血清を用いて免疫ブロットし、ウイルス粒子の エン ベnー プ糖 蛋白 質の 取り 込み を調 べた。Y498Aお よびY487/498A変異 ウイ ルス のgp51 取り 込み は、野 生体 の約40%に減少していた。更に、変異ウイルスの標的細胞に対する、

吸着と侵入について解析するため、cell‑freeウイルスとFLK細胞を4℃または37℃で反応さ せ、 相互 作用し たウ イル ス量 を抗‑p24モノ クロ ーナ ル抗 体を用いた免疫ブロットにより 定量 した 。吸着 した ウイ ルス 量のみを測定するため4℃で反応させると、いずれの変異ウ イルスも野生体とほぼ同等のp24カミ検出された。次に、37℃で反応後、細胞表面に吸着し たウ イル スをト リプ シン 処理 により除去し、侵入したウイルス量を求めた。Y498Aおよび Y487/498A変異 はウ イル スは 、野生体および他の変異ウイルスに比較して、極めて少量の p24し か検 出さ れな かっ た。 これ らの 結果は 、YXXL配 列の 変異 はウ イル ス粒 子の 標的 細 胞へ の吸 着には ほと んど 影響 を及 ぼさ なぃ が、 その 後の 侵入 過程 におい てY498Aおよ び Y487/498A変異 は、 その 効率 を著 しく 抑制す るこ とを 示し ている。っまり、Y498Aおよび Y487/498A変異 ウイ ルス の細 胞への侵入効率の低下の結果として、著しい感染性の低下を きたしていると考えられる。

  ウイルス感染における機能に加え、エンベロープ糖蛋白質の重要な機能である細胞融合 能 に つい て 解 析 す る た め 、 変 異 型 ウ イ ル スDNAの 安 定 導 入COS‑1細胞とFLK細胞 を混 合 培 養 した 。L490Aお よ びL501A変 異 型 ウ イ ル スDNA導 入 細 胞 は 、野 生体 導入 細胞 とほ ぼ 同数 の多 核巨細 胞を 形成 した のに 対し 、Y487A、Y498A為 よびY487/498A変異 型導 入細 胞 は、野生体導入細胞のそれぞれ8、8および14倍の多核巨細胞を形成した。また、ウイルス DNAあ る ぃ は エ ン ベ ロ ー プ 糖 蛋白 質発 現プ ラス ミド の変 異型 を一 過性にFLK細胞 導入 し た場 合も 、Y487A、Y498Aおよ びY487/498A変 異型 導入 細胞 は、 野生 体導 入細 胞に 比較 し て 強 い多 核 巨 細 胞 形 成 能 を 示 し た。 次に、 ウイ ルスDNAの安 定導 入COS‑1細 胞表 面に 発 現し てい るエン ベロ ープ 糖蛋 白質について抗‑gp51モノクローナル抗体を用いてFACS解析 し た 結 果 、Y487A、Y498Aお よ びY487/498A変 異ウ イ ル スDNA導 入 細 胞 は 、 野生 体 翁 よ び他 の変 異型ウ イル スDNA導 入細 胞に 比較し て有 意に 発現 上昇 して いた 。ま た、 細胞 の 全エンベロープ糖蛋白質の発現量は、野生体および変異型におレ℃て顕著な変化がなぃこと から、これらの変異がェンベロープ糖蛋白質の発現ではなく、細胞表面上での局在に影響 し て いる と 推 測 さ れ る 。 そ し て 、こ の局在 変化 が細 胞融 合能 を増 強し たと 考え られ 、 YXXL配 列 がinternalization signalと し て 認 識 さ れ て い る こ と を 示 唆 して い る 。   以 上の 解析結 果よ り、BLV gp30 Tyr498はウイルス感染性、特にウイルス粒子のエンベ ロープ糖蛋白質取り込みおよび侵入過程を保持するために重要なアミノ酸残基であること が明らかとなった。また、Tyr487紹よびTyr498の両アミノ酸残基はエンベロープ糖蛋白質 の細胞表面発現抑制、更に、細胞融合能に関与していると考えられた。今回示した結果か ら、YXXL配列は 情報 伝達 に関 与す るば かり でな く、 ウイ ルスの感染、伝播、さらには自 血病発症において重要であると考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    生田和良 副査    教授    吉木    敬 副査    教授    柿沼光明

     学位論文題名

牛白血病ウイルスのウイルス感染と細胞融合における エンベローブ糖蛋白質 gp30YXXL 配列の役割に関する研究

  牛自血病ウイルス(BLV)は、ウシの悪性Bリンバ腫よりなる地方病性牛自血病を引き起 こ す 。BLVのErN蛋白 質gp30の細胞 内領域には 、3つのYXXL配列が存在 する。そのN 一末端側2つの配列は、情報伝達に関与するimmunoreceptor tyrosine−based activation motifと同様に情報伝達を展開できる。また、単独のYXXL配列は、分子を細胞表面から 細胞質へ内在化させるsignalとしても認識され、BLVのYXXL配列の機能に興味が持たれ ている。そこで、申請者は ̄YXXL配列のin vitroにおけるウイルス感染と細胞融合能の役 割を解析した。

  BLV感染性分子ク口ーンを用いて、gp30のNー末端側2つのYXXL配列のTyrおよびLeu をAlaに 変 異し た ウイ ル スDNA (Y487A、LA90A、Y498A、L501Aお よ びY487/498A) を 作製した。これら変異ウイルスの発現と粒子産生を検討するため、ウイルスDNAを COS−1細胞に一過性に導入した。60時間後の、BLV感染ヒツジ血清を用いた免疫プ口ッ トと、濃縮した培養上清の逆転写酵素活性の測定から、いずれの変異型ウイルスDNA導 入細胞も、正常にBLVを発現し、粒子を産生することが明らかとなった。この結果を踏 まえ、COS−1細胞のウイルスDNA安定導入細胞株を樹立した。これら、ウイルスDNAの 安 定導入COS−1細胞の産生するウイルスを、FLK細胞にcell―freeで接種した場合、

Y498AおよびY487/498A変異ウイルスの感染効率は、野生型および他の変異型に比べ著 しく低下していた。

  変異ウイルスの感染性低下の機序を明らかにするため、ウイルス粒子をBLV感染ヒツ ジ血清を用いて免疫ブロットし、ウイルス粒子へのErN蛋白質の取り込み量を調べた。

Y498AおよびY487/498A変異ウイルスのgp51取り込みは、野生型の約40%に減少してい た。更に、変異ウイルスの標的細胞に対する、吸着と侵入について解析するため、ウイル ス粒子とFLK細胞を4℃または37℃で反応させ、相互作用したウイルス量を抗―p24モノ

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ク口ーナル抗体を用いた免疫プ口ットにより定量した。吸着したウイルス量のみを測定す るため4℃で反応させると、いずれの変異ウイルスも野生型とほぽ同等のp24が検出され た。次に、37℃で反応後、トリプシン処理し、侵入したウイルス量を求めた。Y498Aお よびY487/498A変異ウイルスは、野生型に比較して、極めて少量のp24しか検出されな かった。これらの結果から、Y498AおよびY487/498A変異ウイルスの感染性の低下は、

細 胞 へ の 吸着 で はな く 侵入 効 率の 低 下 に起 因 して い るこ と が明 ら かと な った 。   Env蛋白質の細胞融合能について解析するため、ウイルスDNAの安定導入COS―1細胞 と非感染のFLK細胞を 混合培養し た。LA90AおよびL501A変異型ウイルスDNA導入細胞 は、野生型導入細胞とほぽ同数の多核巨細胞を形成したのに対し、Y487A、Y498Aおよ びY487/498A変異型導入細胞は、野生型導入細胞のそれぞれ8、8および14倍の多核巨細 胞を形成した。次に、ウイルスDNAの安定導入COS―1細胞表面に発現しているEnv蛋白 質について抗―gp51モノク口ーナル抗体を用いてFACS解析した結果、Y487A、Y498Aお よびY487/498A変異 ウイルスDNA導入細胞 は、野生型 および他の 変異型ウイルスDNA 導入細胞に比較して有意に発現上昇していた。

  以上の解析結果より、BLV gp30 Tyr498はウイルス感染性、特にウイルス粒子のEnv 蛋白質取り込みおよび侵入過程を保持するために重要なアミノ酸残基であることが示され た。また、Tyr487およぴTyr498の両アミノ酸残基はEnv蛋白質の細胞表面発現抑制、更 に、細胞融合能に関与していると考えられた。今回示した結果から、YXXL配列はウイル ス の 感 染 、 伝 播 、 さ ら に は 自 血 病 発 症 に お い て 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。   公 開発表にあ たり、副査 の吉木教授 からmWv0でのgp30YXXLの役 割、BLVの感染受 容体、ウイルス感染とシンシチウムの関係、野外のウイルスにおけるgp30の変異の状況 について、副査の柿沼教授より、導入した変異はワクチン開発を目指したものか、細胞融 合活性にgp51とgp30のどちらが必要か、ロイシン変異にアラこンを用いた理由につい て、主査の生田教授より、導入した変異はウイルスのライフサイクルのどの段階に影響す るのかと、YXXL配列の情報伝達に関する知見についての質問がなされたが申請者はおお むね妥当な回答を行った。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 充分な資格を有するものと判定した。

参照

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