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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 牧 野 一 石

学 位 論 文 題 名

16 員環 テト ラエン マクロ ライド ・ヒグ ロ 1J ジンの 全合成研究

学位論文内容の要旨

1.Lよヒ塑に

  ヒグロ リジン およぴ バフイロ マイシ ン類は、Streptomyces sp.の菌代謝物として単離構造決 定され た化合物 である 。これ らの化 合物は 近年発 見され た細胞 内v‑AIPaseを極 めて特異的に 阻害す ることか ら、生 体機能 解明の ための 分子プ ロ―プ や新た な作用機 序に基 づく骨粗しょ う症治療薬のりード化合物として期待されている。

  筆者は 三次元 立体構 造ならび に生物 活性への興味から、構造活性相関を行うことを念頭に、

これら マクロラ イド類 全般に 適用可 能な効 率的か つ高立 体選択 的な合成 法を確 立することを 目的と した。そ こでこ れらの 化合物 のうち 未だそ の立体 化学の 決定され ていな いヒグロリジ ン(1)及び 関連誘 導体の 合成に 着手した 。今回1の初全 合成を 達成す るとと もに、 あわせて絶 対立体配置を決定できたので以下に報告する。

2.金成註画

  筆 者 は1の 立体 化 学 を 、Coreyら が1H‑NMRと分子 力場計 算をもと に提案 した相 対立体 配置 ならび に構造類 縁体で あるバ フイロ マイシ ンAlの絶 対立体 配置を もとに 推定し 、その逆合成 解析を 行なった 。1をC17‑C18位間で 切断し たCl‑C17フ ラグメ ント(2)お よびC18‑C25フラグメ ント(3)に 分割し 、両者 をジア ステレオ 選択的 アルド ール反 応によルカップリングすることと した。2は対応 するセコ 酸く4) より合 成可能であり、さらに4はC12‑C13位間で切断したCl‑C12 フラ グ メ ン トく5) とC13‑C17フ ラグメ ント(6)の アルド ール反 応によ り得ら れると 考えた。

三:C1‑C12ラグメZとQ金處 、

  文献記 載の方 法に基 づき1のC6,7,8位 の三連 続不斉 中心を構築した。本フラグメントに存 在す る3箇 所 の 三置 換 オ レ フイ ン の 立 体選 択的 な構築 は、ClO‑C11位に関し てはア ルキン に 対するCPzZrくニlrMち触を用いたカルボメタレーションにより、Cl―C5位のa,p,Y,お不飽和エス テル 部 はWimg反 応とHomer一Emmons反 応によ り達成 した。 なおC7位 の水酸 基の保護 基に関 し てはTBS基 の まま で は最終段 階での 脱保護 が困難 であっ たため 、より 緩和な 条件で脱 保護可 能な1ES基に切り替えた。

豊:ぐ!三〓g!ヱフラグメント¢当金盧

  本フラ グメン トにつ いてはEvansらのア ルドー ル反応 によりC15,C16位の2つの不 斉中心な らびに 必要な炭 素骨格 を構築 した後 、保護 基の導 入およ びオレ フイン部 の酸化 開裂を経て目 的とする6を短工程かつ高収率で得た。

5.C18:C笛2乏ZゴZヒQ金成

  C22,C23位 の不斉中 心をEvansらのの アルド ール反 応により 構築後、常法に基づきWeinI℃b aInideに変換した。次にこのアミドに対して(粥gnad試薬を作用させ必要な炭素鎖を導入した。

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(2)

C21位の 不斉 中 心に 関し ては 、Me4NHB(OAc)3を用 いた ジ アステレオ選択的な還元を 機軸とし て、 望 みとするC21位がB配 置であるアルコール(7)を10:1の選択性で得た。7のジオ ールをシ リレ ン として保護した後、 エキソオレフインをケトンヘ と変換し、目的とする3へと 導いた。

蠱:圭呈酸ヱ仝堕変換

5と6の カッ プリ ング 反応 はLiHMDS−ZnCI2を 用い たア ル ドール反応により高収率で 達成する ことができた。得 られたアルドール付加体をジ エノンへと変換した後、Zrl(BH4)2によるキレー ショ ン 還元 によ りC14位 不斉 中心 を構築した。C14位水 酸基をメチル化後、エステル 部を加水 分解し、2級水酸基の脱保護の後に4を得た。

7.マク旦弖クトン化

マク ロ ライ ド合 成の 鍵工 程 であ るマクロラクトン化反 応は、セコ酸およぴその閉環 体の三次 元立 体 構造 に大 きな 影響 を 受け る。したがってそれら の安定コンホメーションは、 この反応 を行 な う上 で重 要な 情報 を 提供 するものと考えられる 。すなわちマクロ環化反応が 効率的に 進行 す るた めに は、 セコ 酸 とそ の閉環体ラクトンが類 似したコンホメーションをと り、反応 点と な るセ コ酸 のC1位カ ル ポキ シル 基とC15位水 酸基 が 空間的に近接することが重 要である と考 え られ る。 そこ でセ コ 酸と マクロラクトンのモデ ル化合物としてそれぞれ8お よび9を設 定と し てCONFLEX3を 用い た 分子 力場 計算 を 行っ た。 その 結果、8はC4位,C6位,C8位の連続 するメチル基間の1,3‑allylic strainと1,3‑syn‑pentanemte瑚Icnon、さらにC1位カルボニル基とC15 位水 酸 基間 の水 素結 合に よ りC6位とC9位でコーナーを 形成し、分子全体が巻き込ん だ構造を とることが有利で あることが示された。したが ってセコ酸が閉環する際大 きなコンホメーショ ン変化を必要としないことから、効率よく閉環することが期待された。

上記 の 計算 結果 を踏 まえ 山 口法 によるマクロラクトン 化反応を試みたところ、トリ クロ口ベ ンゾ イ ルク ロリ ドと の混 合 酸無 水物の調製段階で、混 合酸無水物10と自己酸無水物llの混合 物(10:11=6:4)が得られることが分かった 。11が生成する原因は不明 であるが、近年マク ロラ ク トン 化反 応に おい て 最も よく用いられている山 口法にーつの問題点を残すこ ととなっ た 。 な お 現 在 の とこ ろ 、4とDMAPの トル エン 溶液 に45℃ にて トリ ク ロ口 ベン ゾイ ルク ロ リ ドを 加 える こと によ り目 的 とす るマクロラクトン12を 収率52%で得ることに成功し ている。

本結 果 はその収率において 満足のいくものではないもの の、45℃という緩和な条件 下,1時間 以内 に12を 与え たこ とか ら 、合 成したセコ酸は閉環に 有利なコンホメーションをと るという 当初 の 予測 が支 持さ れた も のと 考えている。また、実 際の合成中間体である4と12のIH−NMR のカ ッ プリ ング 定数 を比 較 した ところ、よく類似した 値をとることからも、両者は 相同性の 高いコンホメーションをとることが示された。

8:倒鎖堕糞ム壑よぴヒグ里塑2Z仝Q変換

12を ァ ルデ ヒド2へ と変 換後 、Evansらのパフイロマイ シンAlの合成における知見を もとに、

PhBC12― Pr2NEtを用いたアルドール反応により3の導入を行なった。しかし目的とする立体イヒ 学をもつアルド― ル付加体13を収率45ワ。で得 たものの、対応するジアス テレオマー14が15% 得ら れ 、そのジアステレオ 選択性は低いものであった。13をT王正溶液中TBAF‐AcOHで処理す るこ と によ り、C21,C23位 シリ レン 基とC7位TMS基の 除 去を同時に行ないヘミアセ タールヘ 導い た 。C21位 フマ ル酸 ユニ ット は 、フ マル 酸を ヨー ド エタノールとのハーフエス テルとし てEDCを 縮合 剤 に用 いて 導入 した 。 ヨー ドエ チル 基は 低 温下亜鉛を用いた緩和な条 件での脱 保護 が 可能 であ り、 目的 と する1を高収率で得ることに 成功した。化学合成により 得られた1 は天 然 より 得ら れた ヒグ ロ リジ ンと各種スペクトルデ ータならびに比施光度がよく ー致する ことから、ヒグロ リジンの絶対立体酉彊は合成 した化合物と同一であるこ とが明かになった。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    橋 本 俊 一 副 査    教 授    森    美 和 子 副 査    助 教 授    浜 田 辰 夫 副 査    講 師    中 島    誠      学位論文題名.

16 員環テトラエンマクロライド・ヒグロ1J ジンの全合成研究

   本論 文は 16 員 環マ クロ リド 抗生 物質 ヒ グロ リジ ンの 全合 成に 関す るも ので あ る 。 著 者 が 標 的 化 合 物 に 設 定 し た ヒ グ ロ リ ジ ン は 1982 年 に 瀬 戸 ら に よ り

&ア'eptomyces hygroscopicus の培養液から単離された化合物である。その平面構 造 は決 定さ れて いた が、 相対配置ならびに絶対 配置については分子力場計算や高 分 解 能 NMR を 駆 使 し た 推 定 構 造が 提示 さ れて いる のみ であ った 。ま た、 ヒグ ロ リ ジン の類 縁化 合物 には バフイロマイシンやコ ンカナマイシンとよばれる一連の 化 合物 が知 られ てい る。 近年、これら化合物群 は、細胞内のv‑ATP .ase を極めて 特 異的 に阻 害す るこ とが 見いだされたことから 、特異な構造様式に基づく合成対 象 化合 物と して の魅 カの みならず、生体機能解 明のための分子プローブとして生 化学・薬理学の分野 でも注目されている。

   今回 著者 はヒ グロ リジ ンを C1 − C12 、 C13 ― C17 、C18 ―C25 フ ラグ メ ント の3 つ に 分 割 し 、 収 束 型 経 路 に よ る 立 体 選 択 的 な 全 合 成 を 行 な っ た 。   C1 ‐ C12 フ ラグ メン トに 関し ては 、合 成上 問題 とな る3 つ の三 置換 オレ フイ ン を Cp2ZrC12 ‐ Me3Al を 用 い た カ ル ボ メ タ レ ー シ ョ ン 、 Wimg 反 応 お よ び Homer ・Wadsworth ‐ Emmons 反 応を 用い る こと によ り構 築し た。 C13 ‐ C17 フラ グ メントに関しては、 〃−プロピオニル−2 ‐オキサゾリジノンとメタクロレインとの Evans アル ド ール 反応 によ り2 つの 不斉 中 心な らび に必 要な 炭素 骨格 を導 入し た 後 、官 能基 変換 を行 なぃ 目的とするフラグメン トを合成した。C18 ‐C25 フラグメ ン トに つい ては 、Evans ア ルド ール 反応 なら びに Me4NHB (OAc )3 によるジアステ レオ選択的な還元反 応によりその合成を行なった。

   各フ ラグ メン トの カッ プリングはいずれもア ルドール反応により達成した。ま

ず C1 ‐ C12 フ ラ グ メ ン ト と C13 ‐ C17 フ ラ グ メ ン ト と の カ ッ プ リ ン グ を

LiHMDS .ZnC12 に より 行な った後、C14 位不斉中 心をZn (BH4 )2 によるケトンの立

体 選択 的還 元に より 構築 し、セコ酸へと導いた 。一般にマクロライド合成の鍵工

(4)

程であるマクロラクトン化反応は、セコ酸およびその閉環体の三次元立体構造に 大きな影響を受けることが知られている。著者は、マクロラクトン化反応が効率 良く進行するためには、セコ酸と閉環体が類似したコンホメーションをとり、反 応点となるセコ酸のCl 位カルボキシル基とC15 水酸基が空間的に近接することが 重要であると考えた。そこで、マクロラクトン化反応に先立ち、セコ酸と閉環体 のモデル化合物について分子力場計算を適用し、それぞれのコンホメーション解 析を行なった。その結果、合成したセコ酸は閉環に適した構造をもつと予測され た。この予測をもとに実際に山口法を機軸とするマクロラクトン化を行なったと ころ、緩和な条件下短時間で目的とする閉環体を与えた。また 1H −NMR スペク卜 ルの比較からセコ酸とマク口ラクトンが極めて近いコンホメーションをとること が判明した。この意味で、計算結果を支持する結果を得ることができたが、最高 収率は52a/o と満足のいく結果は得られなかった。著者は環化収率の低下を招く原 因のーつは、混合酸無水物の調製段階で副生する自己酸無水物にあると考えてい る。なお、山口法によるマクロラクトン化反応においてl 自己酸無水物副生の報告 例 は な く 、 副 生 の 要 因 に つ い て は 今 後 の 課 題 と な っ て い る 。    マ クロ ラ クト ン 環 をもつ Cl‑C17 フラグメン トと C18‑C25 フラ グメント の PhBCl2 ‐ PrNEt を用いたアルドール反応は、立体選択性に問題を残しているもの の、目的とする立体配置を有する付加体を主生成物として得た紡鹹‐Feu く血:

Feu くm =3 : 1 )。著者はこの反応におぃて、C18 ‐C25 フラグメントのC22 位メチル 基の立体化学がアルデヒドの面選択性に大きな影響を与えることを明らかにした。

   最終段階の C21 位水酸基へのフマル酸導入は、EDC を縮合剤として用いフマル 酸をヨードェタノールとのハーフエステルとして位置選択的に導入することによ り 、 そ の 後 の 脱 保 護 も 含 め て 高 収 率 で 達 成 す る こ と が で き た 。    著者の合成したヒグロリジンは、天然より得られるヒグロリジンと同一のスペ クトルデータならびに比施光度を示したことから、ここにヒグロリジンの立体化 学を決定することができた。

   以上、著者はヒグ口リジンの初全合成を達成するとともにその絶対立体配置を 明らかにした。さらに本合成法の開発は、今後のヒグロリジン類の構造活性相関 に 不可欠な類縁体合成研究に大きく寄与するものであると考えられる。.、

   従って、審査委員会は牧野一石氏の論文が博士(薬学)の学位を受けるのに十分

値するものと認めた。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実