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はじめに:富郷ダム流域の森林の貯留能は小さいという推測

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Academic year: 2022

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(1)【Ⅱ-4】 別子銅山が森林の貯留能に与えた影響に関する研究. はじめに:富郷ダム流域の森林の貯留能は小さいという推測. 徳島大学大学院. 学生員. 徳島大学大学院. 正. ○大島. 康平. 田村. 隆雄. 員. 1) がある.富郷ダム流域では過去に住友家が. 別子銅山を操業していた.その操業に伴って行われた伐採や植林によって,流域の植生が変化したり,降雨 により土壌が流失する等,銅山付近の山林は大きな影響を受けており,そのことが他の吉野川流域の貯留高 (降雨が土壌中に貯留される量)との違いに影響しているのではないかと考える.本研究では,別子銅山の 影響を大きく受けたであろう富郷ダム流域を対象に流出解析を行い.そこで求められたモデルパラメータを 元に富郷ダム流域の貯留高の特性を考察し,銅山による伐採とその後の植林が流域の貯留能に与えた影響に ついて考察する. 解析対象流域概要:解析対象流域は富郷ダム流域である.図 1 は富郷ダム流域内における別子銅山の位置と 鉱山備林の範囲を示したものである.流域の大部分が銅山備林(鉱山用の木材の伐採や植林を目的とした地 域)であり,流域の半分以上が伐採・植林をされていたことが分かる.地質は流域全域が三波川帯となって いる. 別子銅山:別子銅山は吉野川支流銅山川の左岸の山中にあって,1690 年に発見され,以後 1973 年まで約 280 年間にわたり採掘精錬を行っていた銅山である.現在は様々な樹種が育つ山だが,1890 年代には禿山であっ た.同年代後半から住友グループにより植林・復旧造林が本格的に開始され,植生が回復した. 使用モデル:分布型流出モデルを用いて解析を行った.斜面の雨水浸透・流出計算には地表面流分離直列二段 タンクモデルを用い,河道の合流・流下計算には修正 Muskingum-Cunge 法を用いた 1). 解析結果:流出解析するにあたって富郷ダム流域を図 1 のように 7 つの斜面部(サブ流域)と 3 つの河道区 間からなる分布型流出モデルで表現した(1 番から 7 番は斜面番号).このモデルに 2004 年台風 23 号を適用 し,モデルのパラメータ同定を行った.再現性は図 2 に示すように良好である.同定されたモデルパラメータ を利用して過去の研究により推定された他流域の貯留高 1)と比較を行うため,過去の研究で用いられた 2004 年台風 23 号早明浦降雨を適用して貯留高の推定を行った.そこで得られた流域最大貯留高(タンクモデルで 推算される洪水時の最大貯留高から計算開始時刻の貯留高を除いたもの,早い中間貯留高,遅い中間貯留高, 地下水貯留高で表される,図 3 参照)を図 4 と図 5 に示した.図 4 は富郷. ピー ク 降雨 38.5m m 総降雨 量 3 97.4.m m. ダム流域における各斜面ごとの流域最大貯留高と植林が開始された年を. 0. 100 0. 示した図であり,図 5 は富郷ダム流域と,同じ三波川帯を地質に持つ吉野 川流域の他の流域の貯留高を比較した図である.. 80 0. 観測値. 40. 富郷ダム 東赤石山. 4. 6. 2 5 1. 3. 7. 60 0. 80. 40 0. 120. 20 0. 160. 東光森山 登岐山. 別子 銅山. 鉱山備林 0. 冠山. 1. 2. 図 1 鉱山備林の分布と流域の分割. 3. 4. 0. 200. 10 / 19. 10 / 20 10 / 21 20 0 4年. 5km. 図 2 ハイドログラフの再現性 -73-. 降 雨 量 (mm/ hr). 流 量 (m 3 /s ). 再現値.

(2) 貯留能に与えた影響に関する考察:シミュレーション結果か 全流出強度. ら植林が早い時期から行われた場所では貯留高が高く,植林 開始時期が遅かった場所では貯留高が低くなっているとい. 降雨. 表面流出. うことが推測できた.このシミュレーション結果を図とした ものが図 4 である.例えば,流域内で貯留高が最大の値とな. 全地中水貯留 高. っている斜面番号 4 番は 1899 年という早い時期に植林され. 早い中間貯留 高. ており,貯留高が最小の値となっている斜面番号 2 番では. 遅い中間貯留 高. 1915 年に施業案(森林計画)が編成されている. 地下水貯留高. 2).このこ. とから土壌の回復による貯留高の増加という植林の成果は. 降り始め. 現れてきており,住友家が行った植林が森林の貯留能に良い. 時間. 流域最大貯留高. 図 3 流域最大貯留高の説明. 影響を与えたことが推測できる.. 図 5 から富郷ダム流域は吉野川流域三波川帯に属する他の流域と比べて貯留高が明らかに小さいというシ ミュレーション結果を得た.具体的には,吉野川流域三波川帯の流域最大貯留高の平均 251.6mm に対して富 郷ダム流域の流域最大貯留高は 22.4mm であり,約 10 分の 1 という大きさになっている.このことから富郷 ダム流域の土壌は他の流域と比べると荒廃していると推測できる.富郷ダム流域の貯留高が低い理由として, 植林が開始されてから 100 年ほどしか経過していないということが挙げられる.禿山の土壌が形成されるま での時間は,上層部が回復するのに 100 年,土壌全体では 200〜400 年かかるとされている 3).このことから 別子銅山は未だに土壌回復の途中であるため貯留高が他の流域と比べて小さいと推測できる. まとめ:別子銅山が森林の貯留能に与えた影響として,山林の伐採が行われたことによって,流域の貯留能が 小さくなっていることが推測できる.また,富郷ダム流域内の植林の早かった場所では貯留高が少し高くなっ ていることと,他の流域と比べると富郷ダム流域の貯留高は小さいことから,現在の富郷ダム流域の土壌はま だ回復途中であると推測できる. (mm). (mm). 50. 0. 40 0. 早 い中 間 貯 留 高. 25. 0. 35 0. 地 下 水 貯留 高. 30 0. 8.6 (27 %). 3.7 (25 %). 7.5 (25 %). 7.4 (49 %). 8.9 (34 %) 13 .5 (42 %). 12 .4 (41 %). 12. 5 10 .2 (32 %). 0. 0. 斜面 番 号 植林 年. 4 18 9 9. 10 .4 (34 %). 5 18 9 9. 4.5 (24 %) 9.0 (35 %). 4.0 (26 %). 4.0 (31 %). 流域 最 大貯 留 高. 流 域最 大貯 留高. 37. 5. 遅 い中 間 貯 留 高. 6.7 (24 %). 7.0 (54 %) 1.9 (15 %). 11 .0 (40 %). 7.9 (31 %). 4.6 (25 %). 1 19 0 5. 6 19 1 3. 34 (1 2%). 13 4. 25 0. (42 %). 12 1. 20 0. (34 %). 2 19 1 5. 10 .0 (36 %). 50. 3 19 1 5. 0. 14 1. 16 7 (66 %). 15 8. 17 4. 15 9. (54%). (5 9%). 14. (12 %). 12 0 (4 0%). 31 (4 % ). 貞光川. 図 4 富郷ダム流域の各斜面の最大貯留高と植林開始年. 14 (6 % ). (4 8%). (44 %). 7 19 1 3. 78 (29 %). 15 0 10 0. 9.7 (51 %). 80 (22 %). 63 (28 %). 6 (2 7 %) 10 (4 3 %) 7 (3 0 %). 穴吹川 三縄ダ ム 富郷ダ ム 松尾川 ダム 早明浦 ダム. 図 5 吉野川流域(三波川帯)の最大貯留高とその内訳. 参考文献 1) 田村隆雄,岡部健士,江尻雄三郎,新名祐輔,小河健一郎:大規模斜面崩壊が発生した豪雨時における森 林斜面の貯水高に関する考察,水工学論文集,第 54 巻,pp.511〜516,2010. 2) 住友林業株式会社:住友林業社史(上巻),pp.125〜134,1999. 3) 塚本良則:森林・水・土の保全. 湿潤変動帯の水文地形学,朝倉書店,pp.25〜26,1988. -74-.

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