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学生時代と図書館

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Academic year: 2021

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GAIDAI BIBLIOTHECA

学生時代図書館とは縁が薄かった私にとって本 稿の執筆はいささか面映ゆい感じがするが、反省 の意味も込めて当時を振り返ってみたいと思う。

私が京都での学生生活を始めたのは1969年(昭 和44年)4月である。高校時代から下宿生活をし ていたので親元を離れての一人暮らしには慣れて いたが、信州から遠く離れた京都での学生生活に は何かしら胸がときめき、大いに張り切っていた。

それまで読書の時間があまり取れなかったことも あり、入学を決めると早速本屋に行って高校の恩 師から薦められ心に残る一冊となった五味川純平 の『人間の条件』を買い求めた。また、入学する 前に何とか英語の力を少しでもつけておきたいと 思い、『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』など の作品で知られるロバート. L .スティーブンソン の短編集を購入し準備に取り掛かった。

ところが、胸を膨らませて門をくぐった大学に 程なくして出鼻をくじかれる出来事が起こった。

前年の全共闘による東大の安田講堂占拠(昭和44 年3月実施予定の東大の入学試験が中止になると いう異例の事態に発展した)に端を発し全国に広 がった学生運動の煽りを受けて学内は俄に騒然と し、大学当局と学生自治会との「大衆団交」がた びたび繰り返される中で授業のボイコットが行わ れ、やがて大学が全面封鎖されてしまったのであ る。

こういった状況の中で、いきおい社会問題にも 一人前の関心を寄せるようになり、友人達とも下 宿で夜を徹してよく議論をした。授業再開の見通 しが立たないまま、今と違ってテレビもない下宿 では、本でも読むしか時間の潰しようがなかった。

学生運動に積極的に関わる気持ちはなかったが、

同世代の学生達の議論に後れを取りたくはないと いう多少の自負心と、『人間の条件』に触発され た人間の生き方に対する強い関心から、気負いも 手伝って随分背伸びをしながら様々なジャンルの

本をせっせと買い込んだ。

生 活 費 を か な り 削 っ て い た に も 拘 わ ら ず 、 こ の と き 図 書 館 の 利 用 は 全 く 視 野に入ってこなかったし、

物 理 的 に も 当 然 不 可 能 だ った。

大学紛争も収まり、緊張感の薄れた学生生活を 送っているうちにあっという間に4回生になって いた。ゼミでは、3回生の時にたまたま興味深く 読んだ短編集によって知るところとなったトマ ス・ハーディの『ダーバヴィル家のテス』を卒論 のテーマに選んだ。一般的なものは別として一通 りの研究書に目を通すには個人では当然まかない きれず、ようやく図書館のお世話になることにな った。この時に英国文化センターにも出向いたの を記憶している。

大学院に進学し、2年目の9月に第一回目の派 遣留学生として財団法人日本国際教育協会からの 奨学金でサンフランシスコ州立大学に留学するこ とになった。当初は寮生活をしながら大学に通っ ていたが、ここでは日本と違い図書館をよく利用 した。授業の課題として、図書館のリザーブセク ションというコーナーに用意されている指定図書 や論文を読むことが義務づけられていたからであ る。持ち帰り禁止のために、一人一回2時間とい う時間制限付きだったので、時間内に読み終える ことができずに、借り出しては返し、また借り出 すということをしばしば繰り返した。課題図書に 限らずアメリカの大学の学生たちは図書館の本を 利用するのが常態で、われわれのように個人で多 くの本を所有している者は私の友人達の中には一 人もいなかった。心のおもむくまま自由に本を手 に取って見ることができ、ゆったりと読書ができ る空間は確かに居心地がよかった。

このように、私は、図書館の良さや利用価値に 気づくのが少し遅かったけれども、新入生の皆さ んには一日でも早く図書館と仲良くなって、豊か な知識を得られることを切に願っています。

しもむら ひでのり(教授・英語教育)

下村 秀則

学生時代と図書館

「入り口でつまずいた私の図書館利用」

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参照

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