大豆未発芽種子の酸性エキソ型プロテアーゼの精製
著者 宇高 京子, 川名 広子
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 37
ページ 23‑26
発行年 1997
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010594/
大豆未発芽種子の酸性エキソ型プロテアーゼの精製
宇高 京子,川名 広子
(平成8年10月7日受理)
Purification of the Acidic Exoproteases derived from Ungermination Soybean Seed
Kyoko UDAKA and Hiroko KAwANA
(Received October 7,1996)
1.緒 言
大豆乾燥完熟種子は極度な脱水状態にある.非休眠種 子を発芽に好適な条件下に置くと「幼根が種皮を破る」
という形態的な現象を最終過程として,それに先立って 起こる一連の細胞内生理生化学的変化を一般に「発芽」
と言う.前報の通り,乾燥完熟大豆種子は本実験条件下 では,24時間後から発芽が始まり,発芽3日目から胚軸 の伸びが大きくなり,発芽6日目から根毛の発達が著し
く,発芽8日目から上胚軸の伸びが始まると言う形態的 な変化が著しいω.
従来から宇高らは発芽過程での第一段階であるこの異 化作用(catabolism)に関与するプロテアーゼ(2〜3)と 大豆種子たんぱく質の生合成について検討してい
る〔4− 1°〉.そこで前報(3)では,発芽各時期より得た酸性
エキソ型プロテアーゼ活性は基質0.2%変性ヘモグロビ ンおよび0.4%大豆11Sたんぱく質を用いた場合も発芽 0日目が最大であり,その後,活性は減少していく傾向 が得られたので,本論文ではその発芽0日目(未発芽種 子)を用いて,その酸性エキソ型プロテアーゼの精製と その活性を検討したので報告する.
2.実験方法
(1)試料の調整
大豆乾燥完熟種子(ボンミノリ種,遺伝子型a,早生)
は低温保存2年以内のものを用いた.種子を1%洗剤で 洗った後,70%エタノール中で30秒,次ぎに5%さらし 粉液に浸漬し,これを滅菌水で十分に洗い流した後,滅 菌シャーレーに滅菌水をしみこませたガーゼを敷き,発
芽さす(20℃).試料採取は0,1,2,3,4,5,6,7,8および
9日目に行ったが,本実験では未発芽種子(発芽0日目)
を用い以下の実験に供した.
(2)未発芽種子からの粗酵素液の抽出
未発芽大豆種子を40粒採取し,1.OM食塩を含む0.01 Mバルビタール緩衝液(pH8,0)を30m1加え, ultra−
turraxホモジナイザーで3分間(4℃)摩砕した,次ぎ に日立高速冷却遠心機(20PR−・52)でx15000 rpm,
20分間遠心し,その上澄液を粗酵素液とした.
(3)ゲル濾過法による粗酵素液の精製
上記(2)の粗酵素液10mlをBio−gel A−1.5 M(Bio−
Rad社製)によるゲル濾過を行った.1.O M食塩を含 む0.01Mバルビタール緩衝液(pH8.0),カラムサイズ 30x950 nm,流速0.5ml/分で9.5m1ずっ集め,280nm でその吸光度を測定した.次ぎにプロテアーゼ活性の見 られるところを集め,O.8飽和硫酸アンモニウムで硫安 分画し(第一回プロテアーゼ活性区分),再度ゲル濾過 をおこない,分離精製した(第二回プロテアーゼ活性区 分).また同様にこの内,プロテアーゼ活性のみうけら れるところを集め,0.8飽和硫酸アンモニュウムで硫安 分画し,Bio−gel P−100でゲル濾過をおこなった,
カラムサイズ15x200mm,流速0.5m1/分で4.8 m1ず つ集め,その吸光度を280nmで測定した(第三回およ び第四回プロテアーゼ活性区分).
食品学第3研究室
(4)プロテアーぜ活性の測定
(4−1)第一回目プロテアーゼ活性区分を用いた場合0.2 %変性ヘモグロビン(pH7.5)O.2m1と1M酢酸緩衝 液(pH5.0)0.5 m1に第一回目プロテアーゼ活性区
宇高 京子・川名 広子
分0.2m1を加え,撹搾混和する.全て盲験は純水を用 いた.次ぎに38℃恒温槽で0分と120分反応させ,終 了後ただちに50%TCA(トリクロロ酢酸)0.2ml加 え,撹絆混和し,氷水中に15分放置,次ぎに卓上遠心 機(x2800rpm,10分)で遠心し,その上澄液0.7ml に純水0,8mlを加え撹搾混和し,その吸光度を280nm で測定した.その結果をFig.1に示した.
2.5
20
εζOo9創 PO O 5 1︒ 0︒
彰可 OO=05﹄﹂Oの﹄︽
0.0
m! ^/
/
!〆
/ /
!
/
0 10 20 30 40 50 60
Fract i on nuldber
o怨①も﹂Ωox四
ハU n◎ ハ0 0 00 0 0 ﹂b診〜一ぢ0 4T 2 0 0
0 0 〇二卜
0 0 0
Fig.1 Gel Filtration Pattern on Bio−gel A−
1.5M and the Activity of Acidic Exop rotease derived from Ungermination Soybean Seed
*Fraction Number 25〜32 is precipitated
by 80%Ammonium Sulfate
(4−2)第二回目プロテアーゼ活性区分を用いた場合0.2 %変性ヘモグロビン(pH7.5)0.2m1と1M酢酸緩
衝液(pH5.0)0.5 mlおよび第二回目プロテアーゼ 活性区分0.5m1を加え,撹絆混和する.次ぎに38℃
恒温槽で0分と120分反応させ,終了後ただちに50%
TCAO.2ml加え,撹搾混和し,氷水中に15分放置,
次ぎに卓上遠心機(x2800rpm,10分)で遠心し,
その上澄液0.3mlを分取し,280nmでその吸光度を測 定した.その結果をFig.2に示した.
(4−3)第三回目プロテアーゼ活性区分を用いた場合0.2 %変性ヘモグロビン(pH7.5)0.2m1と1M酢酸緩
衝液(pH5.0)0.5 mlおよび第三回目プロテアーゼ 活性区分0.8m1を加え,撹絆混和する.次ぎに38℃
恒温槽で0分と120分反応させ,終了後ただちに50%
TCAO.2ml加え,撹絆混和し,氷水中に15分放置,
次ぎに卓上遠心機(x2800rpm,10分)で遠心し,
その上澄液1.6m1を分取し,280nmでその吸光度を測 定した.その結果をFig.3に示した.
2.0
5
∈⊆Oo9創胴⑩ 0 5t a
OO=o臨﹄﹂O切﹄<
0
280m 500nm
∈50・4
十 一●一
oo
だo.3
oo
⊆口0.2
』Lo
ω
.◎0.1
<
0 10 20 30 40
Fract ion number
o怨βo﹂直×山
4 2 0
0 0 0 ↑0
08 0
﹀と≧ぢ02ト
6 4 2 0 0 0 0 α 0 0
Fig.2 ●Gel Filtration Pattern on Bio−Gel A−1.5M
.Quantity of ungermination Soybean Protein
,The Activity of Acidic Exoproteases at 280nm Absorbance
*Fraction Number 27〜34 is Precipitat ed by 80%Ammonium Sulfate
2.0
5
ε⊆Oo9尉翌唱 む t 9αOOにO﹄﹂Oω﹄︽
0
Fract i on number
oω8ぢa×国
4可 9﹂ 0α q α 甲oo8
q
﹀ご≧ぢ煽o↑
0 α q O 06@ 04 02
Fig.3 ●Gel Filtration Pattern on Bio 一 Gel
P−100
.Quantity of Ungermination Soybean Protein
JThe Activity of Acidic Exoproteases at 280nm Absorbance
*Fraction Number 13〜16 is Precipitat ed by 80%Ammonium Sulfate
(4−4)精製したプロテアーゼ活性の検討
0.2%変性ヘモグロビン(pH7.5)0.2mlと1M酢酸 緩衝液(pH5.0)0.5mlおよび第四回目プロテアー ゼ活性区分酵素液0.5m1を加え,撹梓混和する.次ぎ に38℃恒温槽で0分,90分および120分反応させ,終 了後ただちに50%TCAO.2m1加え,撹搾混和し,氷 水中に15分放置,次ぎに卓上遠心機(x2800rprn,
10分)で遠心し,その上澄液1.3m1を分取し,280nm
でその吸光度を測定した.その結果をFig.
た.
0.07
0.06
5 0 α
∈⊆OcoN
4 α 0
ρ0 3 n∠ ︵U O α α
①O=口﹄﹂Oのコ<
0.Ol
0
0 30 60 90 120
1ncubation time (min.)
4に示し
Fig。4 The Activity of Acidic Exoprotease from the Purified Ungermination Soybean Seed
*Substrate(O.2%Denatured Hemoglobin (pH7.5)0.2ml,1M Acetic Acid Buffer (pH5.0)0.5ml, Engyme Solution O.5ml
5.Folin一フェノール試薬法によるたんぱく質量の 定量
酵素液0.1m1と純水0.1m1およびアルカリ性銅溶液1m l加え,良く混和し,室温で10分放置し,フェノール試 薬0.1m1を加え,30分以上経過してから500 nmでその 吸光度を測定した.盲験は純水を用い,たんぱく質標準
溶液は牛血清アルブミンを用い,その検量線をFig.5 に示した,またその結果をFig.2およびFig.3に示
した.
3.実験結果と考察
Fig.1は未発芽大豆種子(発芽o日目)からの粗酵素 液をBio−gel A−1.5 Mを用いてのゲル濾過図とその プロテアーゼ活性図である.フラクションNo.25〜32 にその活性が強く見られたので,その区分を集め,0.8 飽和硫酸アンモニウムで硫安分画した.Fig.2は上記 の硫安分画したプロテアーゼ活性区分をBio 一 gel A−
1.5Mを用いての再ゲル濾過図とそのプロテアーゼ活性 図とたんぱく質量を示した.
フラクションNo.27〜34にその活性が強く見られたの で,その区分を集め,80%硫酸アンモニュムで硫安分画
し,以下の実験に供した。
Fig.3は硫安分画したプロテアーゼ活性区分をBio−
gel P−100を用いてのゲル濾過図とそのプロテアーゼ 活性図とたんぱく質量を示した.
フラクションNo.13〜16にその活性が強く見られたの で,その区分を集め,80%硫酸アンモニウムで硫安分画
し,透析,遠心し,それを0.5mlと基質O.2%変性ヘモ グロビン0.2mlと1M酢酸緩衝液0.5m1とでのプロテアー ゼ活性を検討したのがFig.4である.すなわちプロテ アーゼ活性は保温90分で0,045と保温120分で0.062 と活性が認められた.
1.5
0 1
5︵α
目自OOゆ 邸 OO唱吋O﹂Oωρ<
0.0
0
20 40 60 80 (Bovine Ser1ロロ■ ▲1bu国匿in β9/・1)Fig.5 Protein Standard Curve by Cu・Folin s Method
宇高 京子・川名 広子
4,要 約
前報(3)で大豆発芽各時期より得た酸性エキソ型プロテ アーゼ活性は基質0.2%変性ヘモグロビンおよび基質0.
4%大豆11Sたんぱく質を用いた場合も発芽0日目が最 大であり,その後,活性が減少していく傾向が得られた ので,発芽0日目(未発芽大豆)を用いて酸性エキソ型 プロテアーゼを分離・精製し,その確認実験をおこなっ た.その結果は前報と同様に,基質0.2%ヘモグロビン で酸性エキソ型プロテアーゼ活性が認められた.
1)宇高
2)宇高 3)宇高
5.文 献
京子:東京家政大学生活科学研究所研究報告,
13 (1990)
京子:東京家政大学研究紀要第35集(1995)
京子:東京家政大学研究紀要第36集(1996)
4)C,Fukazawa, K.Udaka, et a1:Kulturflance,
32, 7578 (1984)
5)C.Fukazawa, K.Udaka et al:J.Biol. Che m.,260,6234−6239(1985)
6)T.Momma K.Udaka et a1:Eur. J.Biochem.,
149,491−496 (1985)
7)T.Momma K.Udaka et al:FEBS Lett.,118,
117−122 (1985)
8)C.Fukaxawa K.Udaka et al:Nucleic Acids Res.,15,8117−8119(1987)
9)C.Fukaxawa KUdaka et al:FEBS Lett.,
22,125−127(1987)
10)N.A.Yeboah K.Udaka et a1:Protein Expre ssion Purif.,7,309−314 (1996)