幾何学概論 II
————–
曲線と曲面
田崎博之
2006年度
幾何学概論
IIIntroduction of Geometry II
開講授業科目概要
曲線や曲面の形を語るための言葉:曲率を使いこなして、曲線や曲面の形の秘 密を解き明かす。
目 次
第1章 微分積分 1
1.1 二変数関数の微分 . . . . 1
1.2 一次微分形式 . . . . 11
1.3 三変数関数の微分 . . . . 15
第2章 曲線 21 2.1 平面曲線の概念 . . . . 21
2.2 平面曲線 . . . . 26
2.3 空間曲線 . . . . 36
第3章 曲面 47 3.1 空間内の曲面の概念 . . . . 47
3.2 曲面の曲率 . . . . 53
3.3 回転面 . . . . 63
第4章 極小曲面 73 4.1 曲面積 . . . . 73
4.2 Bernsteinの定理 . . . . 75
4.3 等温座標系 . . . . 84
4.4 Weierstrass-Enneperの表現公式 . . . . 89
4.5 極小曲面の例 . . . . 94
4.6 Gauss写像. . . . 96
4.7 極小曲面の曲率 . . . . 100
4.8 n次元Euclid空間内の極小曲面 . . . . 104
参考文献について 124 参考文献 . . . . 125
第 1 章 微分積分
1.1
二変数関数の微分
この節では一変数関数の微分を復習し、二変数関数の微分の意味を考える。一 変数関数の微分の定義は微分係数として最初は与えられるが、局所的な一次関数 による最良近似とみることもできる。いずれにしても、一変数関数の微分は関数 の局所的な増加減少の度合を表現している。これに対して二変数関数の場合は一 変数の場合と異なり定義域に色々な方向があるので、単純に増加減少を考えるこ とはできない。しかし、一次関数による近似を考えることはできる。この一次関 数の定数項を除いた線形な部分が二変数関数の微分であり、全微分とも呼ばれて いる。この微分を線形写像とみなすということで、多変数の場合の微分を曖昧な 言い方をしないで表現できる。
一変数関数の微分の復習から始めよう。実数の開区間Iで定義された関数f(x) に対して、x0 ∈Iにおいて極限
lim
h→0
f(x0+h)−f(x0) h
が存在するときに、fはx0において微分可能といい、上の極限をfのx0における 微分係数と呼ぶ。この極限は関数の変化率の極限になっているので、関数の局所 的な増減を表わしているとみることもできる。f のx0における微分係数は次のよ うな記号で表わされる。
f0(x0), df
dx(x0), df dx
¯¯
¯¯
x=x0
, df(x) dx
¯¯
¯¯
x=x0
, d
dx
¯¯
¯¯
x=x0
f(x).
この値が上の極限の極限値になっているということは、任意のε > 0に対してあ るδ >0が存在し
0<|h|< δ ⇒
¯¯
¯¯
f(x0+h)−f(x0)
h −f0(x0)
¯¯
¯¯≤ε が成り立つということである。最後の不等式は
ε≥
¯¯
¯¯
f(x0+h)−f(x0)
h −f0(x0)
¯¯
¯¯=
¯¯
¯¯
f(x0+h)−(f(x0) +f0(x0)h) h
¯¯
¯¯
となる。二変数の場合を扱うときにはhで割るという操作はできないので、上の 不等式を
|f(x0+h)−(f(x0) +f0(x0)h)| ≤ε|h|
という形に変形する。後で示すようにこの不等式の形は二変数のときにも考える ことができる。hが0<|h| < δの範囲を動くとき、hの一次関数f(x0) +f0(x0)h はhの関数f(x0+h)の近似になっている。変数をx = x0 +hと表わすと、xが 0<|x−x0|< δの範囲を動くとき、xの一次関数f(x0) +f0(x0)(x−x0)はxの関 数f(x)の近似になっている。
x0の近傍でf が増加の状態にあることとf0(x0)が正であることは同値であり、
x0の近傍でfが減少の状態にあることとf0(x0)が負であることは同値である。つ まり、f0(x0)6= 0ならば、x0の近傍でのfの増加・減少の状態は傾きf0(x0)の一 次関数の増加・減少の状態で決定されていることになる。f0(x0) = 0の場合は、後 で関数の二階微分を考察する際に扱う。
以上の一変数関数の微分をふまえて二変数関数の微分について考えよう。平面 R2の開集合Dで定義された関数f(x, y)に対して、この関数の(x0, y0) ∈ Dにお ける変化を知るために、まず一変数に制限して微分する。平面ベクトル(u, v)をと ると
t7→f((x0, y0) +t(u, v)) = f(x0+tu, y0+tv) は一変数関数になる。この一変数関数の微分係数
d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv)
がすべての平面ベクトル(u, v)について存在する場合に、それらをすべて集めたも のは関数f(x, y)の(x0, y0)におけるすべての方向に関する変化を表わしていると 考えることができる。そこで、平面ベクトルに対してその方向の関数の微分係数 を対応させる写像
R2 →R; (u, v)7→ d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv)
をfの(x0, y0)における微分として扱うことを考える。この写像をdf(x0,y0)と表わ すことにすると、
df(x0,y0)(u, v) = d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv)
となる。このR2からRへの写像df(x0,y0)の性質を調べてみよう。実数sに対して、
一変数関数の合成関数の微分の公式を使うと df(x0,y0)(s(u, v)) = d
dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tsu, y0+tsv) =s d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv)
= sdf(x0,y0)(u, v)
となるので、
df(x0,y0)(s(u, v)) =sdf(x0,y0)(u, v)
が成り立つ。これはスカラー倍と写像df(x0,y0)の作用が可換になることを示してい る。この性質は線形写像の条件の一つである。そこで、一変数関数の場合と比較 して同等になるように、一次関数すなわち定数項と線形写像の和によって関数を 近似し、この線形写像を関数の微分と定義する。その定義をするために
k(u, v)k= (u2+v2)1/2 ((u, v)∈R2) によってR2におけるノルムk · kを定める。
定義 1.1.1 f(x, y)を平面R2の開集合Dで定義された関数とする。(x0, y0) ∈ D をとる。ある線形写像φ :R2 →Rが存在し、任意のε >0に対してあるδ >0が 存在しh∈R2に対して
0<khk< δ ⇒ |f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ(h))| ≤εkhk
が成り立つときに、fは(x0, y0)において微分可能といい、線形写像φをfの(x0, y0) における微分と呼ぶ。1
注意 1.1.2 上の定義の線形写像φは存在すれば一意的であることが次のようにし てわかる。線形写像φ1 : R2 → Rも同じ性質「任意のε > 0に対してあるδ1 >0 が存在しh∈R2に対して
0<khk< δ1 ⇒ |f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ1(h))| ≤εkhk が成り立つ」を満たすと仮定する。0<khk<min{δ, δ1}のとき
|f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ(h))| ≤εkhk
|f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ1(h))| ≤εkhk が成り立つ。これらの不等式より
|φ(h)−φ1(h)| = |{f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ1(h))}
−{f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ(h))}|
≤ |{f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ1(h))}|
+|{f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ(h))}|
≤ 2εkhk
1偏微分と区別するために、fは(x0, y0)において全微分可能といい、線形写像φをfの(x0, y0) における全微分と呼ぶこともあるが、ここでは単に微分可能と微分という言葉を使うことにする。
を得る。任意のr >0に対して
|φ(rh)−φ1(rh)|=r|φ(h)−φ1(h)| ≤r2εkhk= 2εkrhk となり、任意のh ∈R2に対して
|φ(h)−φ1(h)| ≤2εkhk
が成り立つことがわかる。さらにこの不等式が任意のε > 0について成り立つの で、φ(h)−φ1(h) = 0、すなわちφ = φ1を得る。したがって、上の定義の線形写 像φは存在すれば一意的である。
そこで線形写像φをdf(x0,y0)とも書くことにする。この線形写像が先に考察した 写像
R2 →R; (u, v)7→ d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv)
と一致することを見ておこう。任意のε > 0に対してあるδ > 0が存在しh ∈R2 に対して
0<khk< δ ⇒ |f((x0, y0) +h)−(f(x0, y0) +φ(h))| ≤εkhk
が成り立つ。(u, v) ∈R2に対してkt(u, v)k < δとなるt ∈Rをとり、上の不等式 にh=t(u, v)を代入すると、
|f((x0, y0) +t(u, v))−(f(x0, y0) +φ(t(u, v)))| ≤εkt(u, v)k が成り立つ。この不等式は
|f(x0+tu, y0+tv)−f(x0, y0)−tφ(u, v)| ≤εkt(u, v)k=ε|t| · k(u, v)k となり、t6= 0のとき
¯¯
¯¯
f(x0 +tu, y0+tv)−f(x0, y0)
t −φ(u, v)
¯¯
¯¯≤εk(u, v)k となる。したがって、
d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv) = lim
t→0
f(x0+tu, y0+tv)−f(x0, y0)
t =φ(u, v)
を得る。つまり、先に考察した各ベクトルの方向にfを微分して得られる写像は 線形写像φ = df(x0,y0)に一致する。上の考察は、どの(u, v)に対してもtの関数 f(x0+tu, y0+tv)はt = 0で微分可能になることも示している。
変数を(x, y) = (x0, y0) + (u, v)と表わすと、(x, y)が0<k(x, y)−(x0, y0)k< δ の範囲を動くとき、(x, y)の一次関数f(x0, y0) +φ(x−x0, y−y0)は(x, y)の関数
f(x, y)の近似になっている。
この線形写像df(x0,y0)の表現行列を求めてみよう。
df(x0,y0)(1,0) = d dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+t, y0) = ∂f
∂x(x0, y0), df(x0,y0)(0,1) = d
dt
¯¯
¯¯
t=0
f(x0, y0+t) = ∂f
∂y(x0, y0) となるので、線形写像df(x0,y0)の基底(1,0),(0,1)に関する表現行列は
·∂f
∂x(x0, y0), ∂f
∂y(x0, y0)
¸
になる。上の考察は、fは(x0, y0)で偏微分可能であることも示している。
R2のx成分を対応させる関数をxと書くことにすると、xはR2全体で定義さ れた関数になる。x : R2 → R自身が線形写像なので、微分はどの点でもdx = x になる。この等式の左辺は関数xの微分であり、右辺は線形写像xである。上の 関数の微分の表現行列を使うと
df(x0,y0)(u, v) = ∂f
∂x(x0, y0)u+ ∂f
∂y(x0, y0)v
= ∂f
∂x(x0, y0)dx(x0,y0)(u, v) + ∂f
∂y(x0, y0)dy(x0,y0)(u, v)
= µ∂f
∂x(x0, y0)dx(x0,y0)+∂f
∂y(x0, y0)dy(x0,y0)
¶ (u, v) となるので、
df(x0,y0)= ∂f
∂x(x0, y0)dx(x0,y0)+∂f
∂y(x0, y0)dy(x0,y0) が成り立つ。この等式はfが微分可能な点(x0, y0)で成立するので、
df = ∂f
∂xdx+ ∂f
∂ydy
と書くこともできる。つまりこの等式はfの定義域の各点でdf というR2からR への線形写像をx成分とy成分に分解した等式とみなせる。分解したときの係数 に偏微分係数∂f /∂xと∂f /∂yが現われるわけである。
二変数関数の合成関数の微分の公式を振り返ってみよう。実数の開区間Iで定 義されたR2に値を持つ関数c= (c1, c2)と、cの像を定義域に含む関数fの合成関 数f ◦cを考える。cとfは共に微分可能であると仮定する。合成関数の微分の公 式とは次の等式である。
d
dt(f◦c) = ∂f
∂x dc1
dt + ∂f
∂y dc2
dt .
この等式は、dc/dt= (dc1/dt, dc2/dt)より d
dt(f ◦c) = df µdc
dt
¶
となることがわかる。右辺は線形写像dfにベクトルdc/dtを代入したものである。
これがfの微分dfを線形写像とみたときの合成関数の微分の公式である。
上記の合成関数の微分の公式より、二変数関数の定義域の曲線上での関数の増 減は、曲線の速度ベクトルを関数の微分に代入することでわかる。関数f の微分 dfpが線形写像として0ではない点pでは、微分の線形写像としての性質が関数の 一点の近傍での増減を決定していることになる。
{X ∈R2 |dfp(X) = 0}
に接する方向についてはこれだけではわからないが、次に述べる陰関数定理を利 用することで、この方向に接する曲線として関数の値が一定になる点の集合が現 われることが明らかになる。dfp = 0の場合は、後で関数の二階微分を考察する際 に扱う。
一変数関数と二変数関数の大きな違いの一つは、関数が一定の値をとる点の集 まりが離散的なものになるかつながったものになるかである。実数の開区間Iで 定義された一変数関数f(x)が一定の値aをとる点の全体
{x∈I |f(x) = a} は通常Iの離散的な部分集合になる。たとえば
I =R, f(x) = sinx, a = 0 とすると
{x∈R|sinx= 0}=πZ.
これに対して平面R2の開集合Oで定義された二変数関数f(x, y)が一定の値aを とる点の全体
{(x, y)∈O |f(x, y) = a} は通常O内の曲線になる。たとえば
O =R2, f(x, y) =x2+y2, a >0 とすると
{(x, y)∈R2 |x2+y2 =a} は原点中心半径√
aの円になる。このような二変数関数の一定の値をとる点の集 まりを平面曲線の節で考察の対象にしたい。このような点の集まりが曲線と呼ぶ
に相応しいかどうか判断する際に、陰関数定理が重要になる。二変数関数の偏微 分を
∂f
∂x(x, y) =fx(x, y), ∂f
∂y(x, y) =fy(x, y) とも書くことにする。
定理 1.1.3 (陰関数定理) 平面R2の開集合Oで定義された二変数関数f(x, y)は Oにおいて微分可能であり、df をOからR2の双対空間(R2)∗への写像とみなし て連続になっていると仮定する。(x0, y0)∈Oにおいて
f(x0, y0) =a, fy(x0, y0)6= 0
ならば、x0を含む開区間IとI上定義された可微分関数g(x)が存在し y0 =g(x0), x∈I ⇒(x, g(x))∈O, f(x, g(x)) = a が成り立つ。さらに、次の等式が成り立つ。
g0(x) =−fx(x, g(x))
fy(x, g(x)) (x∈I).
g(x)をf(x, y) =aから定まる陰関数と呼ぶ。
注意 1.1.4 上の陰関数定理の前半の主張を認めれば、後半の陰関数の微分を表わ す等式は簡単に求められる。まず、それを確かめておこう。x ∈ Iに対して等式 f(x, g(x)) = aが成り立つので、これをxで微分すると0になる。
0 = df(x,g(x)) µ d
dx(x, g(x))
¶
=df(x,g(x))(1, g0(x)) = fx(x, g(x)) +fy(x, g(x))g0(x).
これより次の等式を得る。
g0(x) =−fx(x, g(x))
fy(x, g(x)) (x∈I).
上の陰関数定理はf(x, y) = aという二変数x, yの方程式を(x0, y0)の近傍で解 こうとしている。さらに、解の集りを関数g(x)を使って(x, g(x))という形の点で 表現している。この状況をfの一次近似関数に置き換えて考えてみよう。(x0, y0) の近傍でfを近似する一次関数を
f(x, y) =˜ f(x0, y0) +df(x0,y0)(x−x0, y−y0) = a+df(x0,y0)(x−x0, y−y0) と書くことにする。
{(x, y)∈R2 |f˜(x, y) = a}
= {(x, y)∈R2 |df(x0,y0)(x−x0, y−y0) = 0}
= (x0, y0) +{(u, v)∈R2 |df(x0,y0)(u, v) = 0}
となる。df(x0,y0)(u, v) = 0はu, vに関する一次方程式であり、
fx(x0, y0)u+fy(x0, y0)v = 0
と表わすことができる。fy(x0, y0)6= 0という定理の仮定より、この方程式は v =−fx(x0, y0)
fy(x0, y0)u という形に解くことができ、
{(x, y)∈R2 |f˜(x, y) =a} = (x0, y0) +
½µ
u,−fx(x0, y0)
fy(x0, y0)u¶ ¯¯¯¯ u∈R
¾
=
½µ
x0+u, y0 −fx(x0, y0)
fy(x0, y0)u¶ ¯¯¯¯ u∈R
¾
となる。そこで、
˜
g(x) =y0−fx(x0, y0)
fy(x0, y0)(x−x0) によって一次関数˜g(x)を定めると、
{(x, y)∈R2 |f˜(x, y) =a}={(x,˜g(x))|x∈R}
が成り立つ。以上のことが一次関数とは限らない関数fに対しても成り立つこと を主張しているのが、陰関数定理である。
変数xとyは対等であるから、陰関数定理の変数xとyの役割を入れ換えても同 じ主張が成り立つ。つまり、df(x0,y0)6= 0ならば、f(x, y) = aの陰関数は存在する ことになり、陰関数の存在は一次近似関数の陰関数の存在で決定されていること になる。f(x, y) =aの陰関数の存在はf(x, y) =aを満たす点の集りが局所的には 一つの一変数関数で表わされることを示している。この話は平面曲線のパラメー タ表示に続く。
一変数関数の微分を扱う目的の一つは関数の変化を調べることである。微分が 正のところで関数は増加の状態にあり、微分が負のところで関数は減少の状態で ある。微分が0になるところでは、さらに二階微分を調べることによってそこで 関数が極大になっているのか極小になっているのか判断できる。一階微分が0で 二階微分が正のときは関数は極小になっていて、一階微分が0で二階微分が負の ときは関数は極大になっている。以上の一階微分と二階微分の考察から、関数の 変化の概略は把握できる。関数の極大や極小を判別できるということは、関数の グラフの曲り方を判別できるということにつながる。一変数関数の二階微分を利 用して、曲線の曲り方を表現する幾何学的量:曲率を後で扱う。
二変数関数の場合に色々な方向に対してその方向の関数の微分係数を対応させ ることで線形写像を定めた。二変数関数の二階微分についても同様のことを考え
てみよう。f(x, y)を平面R2の開集合Oで定義された関数とする。平面ベクトル (u, v)と(u1, v1)をとり、
f((x0, y0) +s(u, v) +t(u1, v1)) =f(x0+su+tu1, y0+sv+tv1)
をsとtに関して微分した微分係数が存在する場合に、それらをすべて集めたもの は関数f(x, y)の(x0, y0)における二階微分の情報を持っていると考えることがで きる。そこで、二つの平面ベクトルに対してその方向の関数の微分係数を続けて とった値を対応させる写像
(R2)2 →R; ((u, v),(u1, v1))7→ d dt
¯¯
¯¯
t=0
d ds
¯¯
¯¯
s=0
f(x0+su+tu1, y0+sv+tv1) をfの(x0, y0)における二階微分として扱うことを考える。
d dt
¯¯
¯¯
t=0
d ds
¯¯
¯¯
s=0
f(x0+su+tu1, y0+sv+tv1)
= d
dt
¯¯
¯¯
t=0
(fx(x0+tu1, y0+tv1)u+fy(x0+tu1, y0+tv1)v)
= fxx(x0, y0)uu1+fxy(x0, y0)uv1+fyx(x0, y0)vu1+fyy(x0, y0)vv1
= [u v]
"
fxx(x0, y0) fxy(x0, y0) fyx(x0, y0) fyy(x0, y0)
# "
u1 v1
#
となり、これは(u, v),(u1, v1)の双線形形式になっている。fがC2級であるときは fxy(x0, y0) = fyx(x0, y0)
が成り立ち、上の双線形形式は対称になる。この対称双線形形式をD2f(x0,y0)と書 くことにする。つまり、
D2f(x0,y0)((u, v),(u1, v1)) = [u v]
"
fxx(x0, y0) fxy(x0, y0) fyx(x0, y0) fyy(x0, y0)
# "
u1
v1
# . 関数の同じ方向の二階微分を考えると次のようになる。
d2 dt2
¯¯
¯¯
t=0
f(x0+tu, y0+tv) = [u v]
"
fxx(x0, y0) fxy(x0, y0) fyx(x0, y0) fyy(x0, y0)
# "
u v
# .
これはu, vに関する二次形式になっている。df(x0,y0) = 0の場合、この二次形式の 値によってその方向に沿って関数が極大になるか極小になるかが判別できる。特 に二次形式の値の符号が重要になる。関数の二階偏微分係数を並べた対称行列を 対角化すれば符号の判定が容易になる。