日本小児循環器学会雑誌 13巻5号 629〜630頁(19974}三)
Editorial Comments、
動脈管塞栓術 現状と将来への展望
北海道大学医学部小児科 間 峡介
1992年のCambierらによる最初の動脈管コイル塞栓術の報告1)に続き, Lloyd2)やMoore3)らにより小さな PDAに対するコイル塞栓術の有効性が相次いで報告された.しかし,合併症としてコイルの脱落が起きること
も報告されt},脱落防止とコイルが望ましい位置にとどまるようスネアカテーテルを利用した方法4や,バルー ンカテーテルを併用した方法5}が考案された.1995年の米国での多施設研究では,使用されたコイルは離脱機構 のないGianturcoコイルがほとんどであると思われるが,535例中102例(19.1%)がコイルの脱落や位置不良 のために【・|収され,15例(2.8%)では脱落したコイルが回収不能であったと報告されている6).
わが国では,1994年に小林ら7),1995年に井埜ら8)によりGianturco Coilを用いた動脈管塞栓術が報告され たが,塞栓術は成功したもののやはり留置したCoilの位置不良もみられた.1995年にデリバリーワイヤーと連 結機構で繁がれたJacksonデタッチャブルコイル9)やPDAデタッチャブルコイルによる塞栓術1°)が行われる ようになり,コイルの脱落の危険は大きく減少し,位置不良の場合の回収および留置のし直しも容易になった.
しかし,米国ではコストの問題もあり,最も低価格であるGianturcoコイルが用いられている.
次に,コイノレ留置後の問題点として,残存短絡,大動脈内へのコイルの突出,肺動脈内へのコイルの突出が あげられる.残存短絡が残らないようにするためには複数個のコイルを留置する必要があるが,これはコイル がltll管内に突出する危険を伴う. Ilijaziらは5個のコイルの留置をして軽度の左肺動脈狭窄を来たした2症 例11}の遠隔期で,左肺血流が減少していたと報告している12).また国内でも,肺動脈内にコイルが突出しルー プも安定しないためコイル塞栓術を断念した症例が報告されているが13},いずれも乳児の太いPDAである
(5.2mm/2.3kg,4.7mm/6.3kg,4.6mln/3.9kg.)また,大動脈内にコイルが突出したと報告されたものも2.9 kgの症例である12).最小径4.Omm以ヒの太いPDAに対するコイル塞栓術の報告もあるが,合併症は少ないと はいえず,掲載された図を見るかぎり大動脈内へも大きく突出している1 .
筆者らは,太いPDAのため心不全や肺高血圧があり,?急に治療を要する新生児や乳児症例に対しては,
今のところ手術治療を奨めている.
斎藤論文の主題は,最狭窄部径が2.5〜3.Omm以トの小さなPDAに対するコイル塞栓術において,残存短 絡を城さずいかにしてlfLl管内へのコイルの突出を防ぐかということである.コイルによる塞栓機序は動脈管内 でのコイルおよびダクロン糸にできるJfr1栓による.したがって,肺動脈内のコイルはその復元力により留置し たコイルの形態を保てればよく,ダクロン糸による血栓形成は必要ない.工夫1は合理的であるといえる.筆 者らの経験でも,形態を保つための肺動脈内のコイルは1/2〜1巻で十分である.
次に逆行性アプローチ(大動脈経由)の場合であるが,肺動脈から引いてきたコイルは大動脈膨大部でルー プを作る.PDAデタッチャブルコイルは太さ約lmm(O.{}38inch)あるのでコイルが3巻できれば約3mmの 厚さになる.大動脈膨大部内にコイルを納めるためには,PDAの長さに加え,膨大部の深さや径を測して,コ イルの長さを調節する必要がある.順行性アプローチ(肺動脈経由)で同様の形にコイルを留置する場合,肺 動脈側のコイルが短いため,デタッチの瞬間に大動脈内に引き込まれる可能性があり,その場合,動脈塞栓の リスクがある.斉藤論文の工夫3を行う時には,逆行性アプローチのほうが安全であると考えられる.ただし,
コイルの切断端が血管壁を傷つけないよう細心の注意を払う必要がある.
工夫2は離i脱機構を持つコイルを用いた場合に問題となる点である.PDAデタッチャブルコイルは連結部 の長さは4mlnであるが, Jacksonデタッチャブルコイルではさらに長いので,コイル留置後に突出してしまう
ことが想像される.筆者らも工夫2と同様に連結部を曲げているが,意外とこつがいり,また,うまく離脱で きるかどうかを心配しながら行っている状態である.しかし,今までのところ,離脱不能となったり予期せぬ
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6:}() (12) 1{ノJ\fll「i|:↓ミ 13(5)¶ 1997
離i脱をきたしたことはない.
アメリカで広く用いられている最もコストの低いGiantUrcoコイルi2)や,ヨーロッパで臨床試験が行われて いたDuct Occlud pfini5}などのコイルでは本論文のような1:夫をこらすことは困難であり,そういった報告も ないようである.
現在までに,太いPI)Aや形態的に困難な症例以外を除いて,最狭窄部径が2.5〜3.omm以下の1 1)Aであれ ば,ほとんどの症例で残存短絡を残さずにコイル塞栓術が可能になってきている.今後のコイル塞栓術u)iii]題 は,適応を広げることだけではなく,いかに良い形に留置するかであろう.現在もコイルの素材や形態などに 開発や改良が続けられているだけでなく,新たな方法も研究されている.しかし,現在ある川具を用いて塞栓 術を行う我々にとっては,斉藤論文のように,既存の製品に対して,さらに工夫することも重要なことである と.考えられる.コイル塞栓術は技術的に容易であるといわれているが,良い形に留 置することは決して容易な ことではない.我々カテーテルインターベンションに関わる者は,用具に対する知識と技術をしっかりと身に つけ,患者にとって何がより良い治療方法なのかを常に.考えていなければならない.
文 献
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