日本小児循環器学会雑誌14巻ユ号35〜36頁(1998年)
<Editorial Comment>
動脈管開存に対するコイル閉鎖術
一Gianturcoコイルとdetachable PDA coli一
札幌医科大学医学部小児科 富田 英
detachable PDA coli(Cook⑧)が1995年にリリースされて以来,動脈管開存に対するコイル閉鎖術はわが 国でも爆発的な勢いで普及してきた1)2).JPIC研究会の会員から集計した,218例に対する231回のコイル閉鎖 術に関するアンケート3)では,1996年9月30日現在,動脈管開存の閉鎖術に用いられているコイルの72%が detachable PDA coil,16%がGianturcoコイルで,その他がDuct−Occlud,つづみ型コイルなどである.後 二者は治験中または開発者自身による臨床試験と改良4)が加えられている段階であり,現在,わが国で一般的に 入手可能なのはdetachable PDA coilとGianturcoコイルの二つである.ステンレスを用いたスプリングコイ ルという意味で,二つのコイルは共通の構造を持っているが,血栓性を高めるために編み込まれたダクロン繊 維の量はdetachable PDA coi1が明らかに少なく,米国でGianturcoコイルを用いている医師の中には,こ の違いがコイルの塞栓性に与える影響を問題視する声が少なくない.先のアンケート調査でこれら二つのコイ ルのいずれかのみを用いた閉鎖術は,Gianturcoコイル34例, detachable PDA coil 150例であった. detach−
able PDAcoi1ではコイル留置の成功率がやや高い傾向があり,コイル脱落の危険もやや低いものの,年齢分 布,動脈管のサイズや形態のみならず,コイル留置後24時間以内と遠隔期における完全閉鎖率,脱落を含めた 合併症の総数には二群間に有意差を認めなかった.二群問の症例数に大きな違いがあり,Gianturcoコイルを 用いているのは相当数の症例をこなしている施設に限られていることを差し引いても,この結果はダクロン繊 維の量の違いが,完全閉鎖率に影響するほどのレベルでは無いことを示す一方,着脱機構を有することが,必 ずしもコイル閉鎖術の安全性を絶対なものにしているわけではないことを示している.
著者らはCambierら5)が始めて報告した逆行性アプローチによるGianturcoコイルの留置,スネアカテーテ ルを併用したGianturcoコイルの留置6),逆行性または順行性アプローチによるdetachable PDA coilの留 置1)など,種々のアプローチによる閉鎖術を行ってきた.スネアカテーテルの併用や,detachable PDA coi1を 用いたコイル閉鎖術は,コイルを適切な位置に留置する上でCambierらの方法よりはるかに容易で安全であ る.一方,着脱機構の簡便さという点でこの二つの方法を比較した場合,detachable PDA coilが優れている と考えられる.しかし,鎌田ら7)の論文にあるように一見簡便なdetachable PDA coi1の使用にあたっても,
いくつかの注意が必要である.
ネジ込み式の着脱機構は,このコイルの最大の利点であるとともに欠点でもある.デリバリーワイヤーとコ イルの結合は偶発的なコイルの離脱を防ぎ,留置後スムーズにコイルを解放する上で最も重要な点で,著者ら も3巻程度が適当と考えている.しかし,いかに適切に結合しスムーズな留置を行っても,離脱時にスクリュー 部が支え立ってしまうこと,コイルが供回りをして,位置がずれることはまれならず経験する.また,この事
は着脱機構を有するにもかかわらず,留置時にコイルが脱落する一つの原因になっているものと考えられる.
現在のスクリュー部の長さは明らかに過剰であり,速やかな改善が望まれる.マンドリルをコイルの芯に挿入 して引き延ばす構造となっているため,スプリングとしての復元力がGianturcoコイルに比較してやや弱く なっている点も改善が望まれる.特にループ径の大きなコイルでは,ループが緩くなって肺動脈や大動脈に突 出する原因となりうるため,マンドリルを抜いた状態でのループの形状について事前に確認しておくことが望
ましい.
コイルを複数留置することにより最小径4mm程度の動脈管まで閉鎖が可能になってきた8).先のアンケート 調査では,完全閉鎖できたもっとも大きな動脈管の最小径は4.6mmで,留置された最多のコイル数は5個で
あった3).大きなループ径のコイルを用いる,順行性に2個のコイルを同時に留置するなどの方法で,何らかの 形でコイルを留置することができれば,漸次コイルを追加することにより完全閉鎖することは可能と考えられ
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る.しかし,複数のコイルを留置する際には,1個のコイルを留置する場合に比べて,脱落を始めとする合併 症の頻度は有意に高く3),スネアカテーテルによる脱落したコイルの回収を始めとする合併症対策に習熟する 必要がある.また,肺動脈や大動脈へのコイルの突出を最小とするためには,余分なループをカットする,ルー プ径やループ数の規格が豊富なGianturcoコイルを併用する,といった工夫が必要である.
最後にdetachable PDA coil 1個の価格はGianturcoコイルの約20倍である.Gianturcoコイルには規格が 豊富であるという利点の他に,スクリュー部分が無く,またスプリングの復元力が強いためよりコンパクトな コイルの留置が可能という特徴があり,膨大部の小さな動脈管では重宝することがある.コイル脱落の危険が 低く,1個のコイルで完全閉鎖する可能性の高い最小径2mm未満の動脈管の閉鎖術にdetachable PDA coil
を必要とするかどうか,複数のコイルを留置する際にすべてがdetachable PDA coilでなければならないか,
など再検討する必要があると最近考えている.
文 献
1)富田 英,布施茂登,千葉峻三:動脈管開存に対するCoil塞栓術. Snare法とdetachable PDA coilの比較.日小 循誌 1996;12:652659
2)Hazama K Nakanishi T, Tsuji T, Kinugawa Y, Matsuoka S, Mori K, Saitou A, Tomita H, Momma K:
Transcatheter occlusion of arterial duct with new detachable coils. Cardiol Young l996;6:332−336 3)Tomita H, Fuse S, Akagi T, Koike K, Kamada M, Kamiya T, Momma K Ishizawa A, Chiba S:Coil occlusion for patent ductus arteriosus in Japan. JPn Circ J l997;61:997 1003
4)松本康俊,坂井美穂,原田 務:動脈管開存症に対する動脈管塞栓専用コイルの改良ついて.日小循誌 1996;12:
613−−614
5)Cambier PA, Kirby WC, Wortham DC, Moore J:Percutaneous closure of the small(<2.5mm)patent ductus arteriosus using coil embolization、 Am J Cardiol 1992;69二815−816
6)富田 英,布施茂登,千葉峻三:動脈管開存に対するコイル塞栓術におけるスネアカテーテルの有用性.日小循誌 1995;ll:776 781
7)鎌田政博,大月審一,佐藤恭子,荒木 徹,石原陽子,清野佳紀:着脱式コイルによる動脈管塞栓術一施行上の注意 点を中心に一.日小循誌 1997;in press
8)Hijazi ZM, Geggel RL:Transcatheter closure of large patent ductus arteriosus(≧4mn〕)with multiple Gianturco coils:Immediate and mid−term results. Heart 1996;76:536 540
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