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日本に長期滞在する欧米人に関するハイブリッド・

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

日本に長期滞在する欧米人に関するハイブリッド・

アイデンティティ構造の類型論的研究

グレゴリー, ジェームズ, オキーフ

https://doi.org/10.15017/1866241

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(比較社会文化), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 グレゴリー ジェームズ オキーフ

Gregory James O’Keefe

The typological hybrid identity formation of long-term western foreign residents in Japan (

日本に長期滞在する欧米人に 関するハイブリッド・アイデンティティ構造の類型論的研究

)

論文調査委員 査 九州大学 准教授 杉山 あかし 査 九州大学 教 三隅 一百 査 九州大学 教 太田 好信 査 九州大学 教 阿尾 安泰 査 九州大学 准教授 相穆

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、日本に長期滞在する欧米人(

"Long Term Western Foreign Residents" :

以下

"LTW"

と略記)の、日本社会への文化的・社会的適応のあり方を、実証的に明らかにしたものである。研 究方法としては、対面的およびインターネットを利用した聞き取り調査により構成される質的調査 と、質問紙調査ならびにインターネットを利用したアンケート調査による数量的調査を実施し、こ れらを組み合わせることにより、複合的に分析している。

本研究が取り上げた

LTW

は、マイノリティとして特殊な立場にある。これまで研究されてきた マイノリティは基本的に、欧米社会へ移民としてやってきたアフリカ系やアジア系の人々、あるい は、英語圏へ移住した東欧系やヒスパニックの人々など、文化的・社会的ステータスとして、ホス ト社会から一段下に見られる人々であった。しかし、日本社会における欧米人のステータスは決し て低くない。また経済的にも、英語教師という選択肢を有することによって、貧困層となることは ない。さらに、来日の理由も、既存研究では何らかの形で前提とされていることが多い、やむを得 ない経緯によるものではなく、自らの意志によるものであり、自らの意志でホスト社会を去ること も可能である。このような状況下で日本での生活を続けているのが

LTW

であり、このため

LTW

の、

ホスト社会との関係構築のあり方は、これまでのマイノリティ研究で考えられてきたものとは異な り、これまでのマイノリティ研究では理解できないものと考えられる。

本論文では、

25

人に対する聞き取り調査と、

306

人の有効回答を得たアンケート調査が行われて いる。なお、調査において「日本に長期滞在」は、

10

年以上日本に居住」と操作的に定義されて いる。質問の際に用いられた分析的な媒介変数、すなわち、個人と社会を媒介する触媒(

"catalysts"

として質問の具体的内容とされたものは、「日本社会との関わり

"commitment"

」、「家族、友人、趣 味や仕事の集団といった人間関係」「日本語能力」、そして、軽微な他者扱い(

"micro aggressions"

からはっきりと分かる差別までを含む「被差別経験」である。

本論文の一つの発見は、一般的には異文化適応において最も重要な要素の一つと考えられる言語 能力が、

LTW

では、日本社会への適応に決定的な意味は持っていないということである。

LTW

場合、生活のすべての場面を英語で通すといったことが可能であり、それで十分快適に

10

年以上 日本に居住しているという調査対象者がいた。本論文では日本社会への適応状況を大きく左右する 要素として、言語能力に替わって「文化的適合度」という概念が提示される。調査技法上この概念

(3)

は、日本でのものごとのやり方に関して違和感を覚えた場合を尋ねる複数の質問肢から構成され、

日本社会への適合度が測定される。

LTW

の日本社会への態度および、それをもとに決められる自らの位置づけとしてのアイデンティ ティー構築は、この文化的適合度と、自らの生活の各場面で感じる満足度を総計した生活満足度の

2

つの変数によって概ね決定されていると本論文は論じる。具体的には、文化的適合度と生活満足 度の2つの軸を組み合わせることによって構成される4類型によって、

LTW

のアイデンティティー のあり方は理解されるとする。文化的適合度および生活満足度が共に高く、完全に社会の一員とい うアイデンティティーを獲得した

"Full Circle"

、文化的適合度が低いので日本との付き合いを社会 的 ・ 心 理 的 に 限 定 的 な も の と す る こ と に よ っ て そ れ な り に 高 い 生 活 満 足 度 を 達 成 し て い る

"Satisfied but Separate"

、文化的適合度は高く日本社会での適応を試みているものの十分な生活満

足度を獲得できていないので適切な均衡点を模索している"Balance"、そして、文化的適合度も生活 満足度も低い

"Frustration"

、の4類型である。なお、この4類型は個人において固定的なものでは なく、その時の生活満足度や、置かれた状況と本人の学習によって文化的適合度が変化するのに従 って、移行する可能性がある。

LTW

は、このような多様な立ち位置において、日本社会との付き合 い方を構築していると、本論文は結論づける。

グローバル化が進む現代世界において、様々なタイプの異文化・異社会生活者が発生している。

本論文はこれまでのマイノリティ研究が対象としていた人々と全く異なったタイプのマイノリティ のあり方を明らかにした点で、学術的な意義を有するとともに、実践的な価値も有しているものと 考えられる。博士(比較社会文化)の学位授与に値する論文であると考えられる。

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