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地震時衝撃上下動による杭の力学挙動に関する模型実験

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(1)

大阪産業大学論集 自然科学編 第130号 2020

地震時衝撃上下動による杭の力学挙動に関する模型実験

玉野 富雄

,金岡 正信

††

,水谷 夏樹

††

,山下 典彦

††

,荒木 重信

†††

Model tests on mechanical behaviors of piles installed in the sandy ground due to impact up-down loadings

TAMANO Tomio

, KANAOKA Masanobu

††

, MIZUTANI Natsuki

††

, YAMASHITA Norihiko

††

, ARAKI Sigenobu

†††

Abstract

 Failures of piles by impact up-down earthquake motions due to a pressing subject which can not be overlooked. In the investigation after the Kobe Earthquake, the shear failures and the tension failures had revealed. However, the still obscure point is left behind about the mechanical behaviors of such the impact failures. From such a viewpoint, in this study the experiments with the model tests on mechanical behaviors of piles due to impact up- down loadings were conducted. As the results, the mechanical behaviors about the impact failures of piles were presented.

Key Words: earthquake, model test, pile, sandy ground, impact up-down loading キーワード:地震,模型実験,杭,砂地盤,衝撃上下動

† 大阪産業大学 名誉教授

†† 大阪産業大学 工学部 都市創造工学科 教授

††† 大鉄工業株式会社勤務(元大阪産業大学大学院 工学研究科 大学院博士前期課程 大学院生)

 草 稿 提 出 日 2018年11月12日  最終原稿提出日 2019年12月19日

(2)

1 はじめに

 杭(本論文では基礎杭を単に杭と呼ぶ)の衝撃支持力については,エネルギーの釣り合いを 基にしたのものと,波動理論を基にして誘導されたものがあり,理論解析および実験の両面か らの研究が進められてきている1)。こうした中で,1995 年に発生した兵庫県南部地震時にお いて,多くの構造物で衝撃上下動によると考えられる破壊形態が生じ,地中の杭においてもせ ん断破壊や引張破壊の衝撃破壊形態が観察され,地震時における杭の衝撃力学挙動に関する研 究の重要性が認識された2),3)

 実験法として見た場合,杭の衝撃載荷実験には計測方法に難しさがある。特に,杭設置下の 地盤変形挙動や杭体に発生する力学挙動を示すひずみ変化を µ や µsec のオーダーで議論する 必要がある。従来の研究で適切に応力波の伝播挙動が示された事例は見当たらない。すなわち,

衝撃ひずみや地盤の微小変形の計測そのものが研究課題である。

 近年の計測技術の重要な進歩として,江藤ら4)による毎秒 100 万コマを撮影できる超高速 ビデオカメラの開発がある。この超高速ビデオカメラを用い,玉野ら5),6)は,高精度での衝 撃実験が可能な衝撃実験装置を製作し,各種の基礎的衝撃力学現象について示している。

 こうした観点より,本論文では,新たな実験方法・計測方法・解析方法の導入により地震時 衝撃上下動による杭の力学挙動に関する模型実験を行い,杭の変形・破壊力学挙動や杭底面下 の地盤力学挙動を中心に詳細な計測結果や解析結果を示し,それらに基づく力学考察を行って いる。

 本論文の構成は,次のとおりである。1:はじめに,2:実験装置と地盤作製法,3:実験計 画と計測方法,4:実験結果と考察,5:画像解析および PIV 解析,6:まとめ。

 なお,実験法における動的と衝撃の違いについては,載荷速度によって区分され,低速の場 合を動的,高速の場合を衝撃としているが明確な定義はない8)。本研究で対象とする実験時の 載荷速度は,たとえば落下高さ 1.0m であれば 4.4m/sec であり,動的載荷速度と衝撃載荷速度 の中間程度に位置するものと考えられるが,衝撃載荷実験と呼ぶことにする。

 また,本研究では,地盤工学の定義に従い,圧縮ひずみをプラス,引張ひずみをマイナスと する。

2 実験装置と地盤作製方法 2.1 実験装置

 杭の衝撃載荷支持力実験(以下,単に衝撃支持力実験と呼ぶ)装置は,軸対称衝撃支持力実 験装置(以下,単に軸対称実験装置と呼ぶ)およびそれを単純に半割りした実験装置(以下,

単に半割実験装置と呼ぶ)の 2 種類を作製した。

 軸対象実験装置および半割実験装置の 30cm 径実験装置の写真を図−1 に説明図を図−2 に示

(3)

す。また,軸対象実験装置および半割実験装置の 80cm 径の実験装置の写真を図−3 に説明図 を図−4 に示す。実験に際しては側方境界の影響をなくすため径がより大きいことが望ましい が,実験に大変な労力を要する。そこで,30cm 径での実験と 80cm 径の実験を同じ実験条件 で行い実験径の検討を行った。その結果,同じ実験結果が得られたことから,30cm 径の実験 装置で実験を行うことにした。

 半割実験装置は,軸対称実験装置を単純に半割にしたものである。アクリル製透過板を設 け,特に杭と地盤の動きを前面よりビデオカメラで撮影し可視化できるように製作したもので ある。

 軸対象実験装置および半割実験装置における杭上端面と重錘の接点部分を図−5 に示す。重 錘載荷による衝撃力は,重錘先端部に設置した半球が杭の中心部分へ載荷する。すべての実験 に際しては,偏心が生じないように細心の注意を行った。

2.2 実験杭

 実験に使用した杭はアルミ製である。アルミの材料特性が花崗岩やコンクリートによく似て いることより選んだ。軸対象実験杭は,直径 2.83cm で長さ 30cm である。半割実験杭は直径

図-1 30cm径衝撃実験装置

(a)軸対称衝撃実験装置 (b)半割衝撃実験装置

(4)

図-3 80cm径衝撃実験装置 図-2 30cm径衝撃実験装置説明図

(a)軸対称衝撃実験装置 (b)半割衝撃実験装置

(5)

図-5 重錘と杭の接点部分 図-4 80cm径衝撃実験装置説明図

表-1 アルミ製杭の材料物性 密度

(g/cm3) P 波

(km/sec) S 波

(km/sec) 弾性係数 E

(MN/m2) ポアソン比

(ν) 剛性率

(GN/m2

2.7 5.62 2.88 59.2 0.32 22.4

(6)

4cm で高さ 30cm である。軸対象杭と半割杭の断面積は同じである。表−1 に使用したアルミ 製杭の材料物性を示す。これらの値は Vpと Vsの計測値より求めたものである。

 杭は実験に際し,繰り返し使用は残留ひずみの影響が懸念されたため行わず,正確さを期 するため 1 回使いとした。なお,アルミ杭の静的実験による応力−ひずみ関係を図−6 に示す。

弾性限界は 1500 ~ 2778µ である。

2.3 ひずみ計測

 軸対象杭および半割杭におけるひずみゲージの設置位置を図−7 に示す。ひずみゲージの仕 様を表−2 に示す。

 上位置ひずみゲージの中心は上端より 0.5cm,下位置は下端より 0.5cm,中心部分については,

縦方向 1cm のひずみゲージであり,ch1 および ch7 は 3mm のひずみゲージである。ch8 は偏 心載荷のチェック用に,ch4-2 は横方向のひずみを把握するために設置した。

 なお,ひずみゲージの計測値に温度変化の影響が生じないようにひずみゲージ設置時および 実験時の実験室内温度は常に 20℃に設定した。また,ひずみ測定器として,毎秒 20 万回のひ ずみを記録できる EDX-2000 を使用した。

図-6 アルミ杭の応力−ひずみ関係

(7)

表-2 ひずみゲージの仕様

名 称 ゲージ長さ 10mm ゲージ長さ 10mm(二軸) ゲージ長さ 3mm

KFG-10-120-C1-11L5M3R KFG-10-120-D16-11L5M3S KFG-03-120-C1-23L5M3R GAGE FACTOR

(24℃,50%RH) 2.07 ± 1.0% 2.09 ± 1.0% 2.24 ± 1.0%

GAGE LENGTH 10mm 10mm 3mm

図-7 ひずみゲージの設置位置

(8)

2.4 地盤作製

 軸対称地盤の作製は次のように行なった。締め固め厚さは 1 層を 5cm とし,図−8 に示す直 径 30cm で質量 20.4kg の半割形状締め固め装置を地盤上に 3 秒置き 4 回円周方向に回転させ,

それを 3 周させ締め固めた。

 次に,軸対象実験での地盤作製および杭の設置方法は,図−9 に示すように埋設 0cm の場合 は杭下端地盤から 5 層で 25cm を締め固め,その後,杭を垂直に置いた。埋設 20cm の場合は 埋設 0cm と同様に杭下端まで地盤を作製し,杭側方の地盤を 4 層で 20cm 積み上げた。

 その際に使用した締め固め装置を図−8 に示す。埋設部分に使用する締め固め装置はアタッ チメントを取り外すことで杭の周囲まで丁寧に締め固められる仕組みとなっている。地盤の均 一さは,地盤中の任意の地盤高さと平面位置でのポータブルコーン貫入試験によるコーン値が 図−10 に示すように深さ方向 5cm ごとに 3.5kgf/cm3の増分を示すことで検証した。

 半割実験での地盤作製および杭の設置については,軸対象地盤作製で用いたのと同じ締め固 め装置を地盤表面に 3 秒置く作業を 6 回行った。その際,アクリル面と杭の間に砂が入ると画 像解析・PIV 解析に支障が出るので慎重に作業した。

 使用した地盤材料は,均等係数 2.5 の珪砂である。締め固め後の地盤の密度は 1.57g/cm3で それに対応する一面せん断試験による内部摩擦角は 26.7°である。また,弾性係数やポアソン 比は表−3 に示す。アルミ杭と同様に Vpと Vsの計測値より求めた。

図-8 30cm径地盤用の半割形状締め固め装置

(9)

図-9 杭の設置方法説明図

図-10 ポータブルコーン貫入実験結果

表-3 実験砂の材料特性 密度

(g/cm3) P 波

(km/sec) S 波

(km/sec) 弾性係数 E

(MN/m2) ポアソン比

(ν) 剛性率

(GN/m2) 内部摩擦角 φ(°)

1.57 0.3 0.101 45.99 0.44 16.02 26.7

(10)

2.5 杭の沈下計測

 軸対称実験における杭上端面の時間−沈下関係の解析には毎秒 100 万コマ撮影できる超高速 度ビデオカメラを用いた4)。超高速度ビデオの設定条件は,毎秒 25 万コマ,タテ 260 ×ヨコ 360pixel の解像度で撮影を行った。また,計測トリガーはレーザー法を用いた。解析精度を保 持したままで 102 枚の画像を記録できることに最大のメリットがある。

 次に,このようにして求めた杭上端面の沈下量とその時点で杭に生じている計測ひずみから 杭下端の変位量を算定した。また,半割実験における杭下端における杭の時間−沈下関係につ いては直接的にビデオカメラで撮影し算定した。

3 実験計画と計測方法 3.1 実験計画

 本研究で行った実験一覧を表−4 に示す。軸対称実験における実験条件は,水平地盤,杭の 埋設深さ:0cm・20cm,重錘質量:20kg・40kg,重錘を落下高さ:0.25m・1m・2m ある。

3.2 30cm 径実験の妥当性の検証

 30cm 径実験の妥当性の検証を次のように行った。80cm 径実験結果と 30cm 径実験の時間

−ひずみ関係の差異,半割実験で杭底面下の地盤変位は 80cm 径実験と 30cm 径実験での画像 解析・PIV 解析結果で地盤変位ベクトルや発生ひずみにおける差異の 2 点より 30cm 実験装置 の妥当性の検証をした。

 まず,80cm 径実験装置の地盤の締め固めの方法を以下に述べる。

 軸対称地盤作製には図−11 に示す質量 40kg の締め固め装置を用いた。締め固めは地盤に 3 秒置き,円周方向に 6 回締固めた後土槽中心点に 1 回設置を 3 周繰り返す。これを杭設置地盤 から 1 層 5cm として 5 層分の計 25cm 分行った。埋設部分に関しても同様の締め固め器を用 いて,中心点以外を同様の作業で締め固めた。80cm 径半割実験での地盤の締め固めは図−12 に示す質量 40kg と 80kg の締め固め装置を用いて杭円周部を 4 回締固め,アクリル面側に 3 回締固めを 3 周行った。締め固め時間は軸対称地盤作製と同様である。これらの締め固めにお いても,コーン値は 30cm 径地盤とほぼ同様の数値を示した。

 次に,実験結果を時間−ひずみ関係と杭底近傍地盤での画像解析・PIV 解析の 2 方法で評価 した。なお,時間−ひずみ関係の比較検討には,ローパス 3kHz をかけた計測値を用いた。

 埋設 20cm・落下高さ 1m・受高 0.1mm の実験条件での時間−ひずみ関係の実験結果を図−

13 に,画像解析による地盤変位ベクトル分布および PIV 解析による最大せん断ひずみ分布・

体積ひずみ分布を図−14 に示す。

 経過時間−ひずみ関係から土槽径の違いによる最大圧縮ひずみの差は 39.2µ であり,発生時

(11)

図-12 半割80cm径地盤用締め固め装置 図-11 80cm径地盤締め固め装置

表-4 実験一覧

杭径状 土層直径

(cm) 地盤 杭長(cm) 杭径(cm) 重錘質量(kg) 埋設(cm) 落下高さ(m) 力積(N·sec) 実験名

軸対称 30 風船 30 2.83 20

0 0.25 44.3 Ex.1

20 Ex.2

0 1 88.5 Ex.3

20 Ex.4

0 2 125.2 Ex.5

20 Ex.6

軸対称 30

30 2.83 20

0 0.25 44.3 A

1 88.5 B

2 125.2 C

20

0.25 44.3 D

1 88.5 E

2 125.2 F-1

40 2 250.4 F-2

鉄板 30 2.83 20 0

0.25 44.3 G

1 88.5 H

2 125.2 I-1

40 2 250.4 I-2

半割 30 30 4 20

0 0.25 44.3 J

1 88.5 K

2 125.2 L

20 0.25 44.3 M

1 88.5 N

2 125.2 O

(12)

図-13 土槽径による影響の検討:時間−ひずみ関係

(13)

図-14 土槽径による影響の検討:画像解析およびPIV解析

(14)

間は 5µsec 差であった。また,画像解析および PIV 解析結果から,どちらも杭下端部直下に 限定した影響が出ている。本実験での杭に関わるひずみや地盤への影響は,杭下端部のみに生 じており,土槽径を 80cm から 30cm にしても実験結果に支障はないと判断できた。

3.3 ローパスの設定

 地盤に関係する常時微動計測や衝撃実験では,ひずみや土圧の計測を行う際,ノイズの除去 を主目的としてローパスを設定することが多い。本研究の当初においても,一般的に使用され ているローパスを 3kHz に設定した。その結果,きれいな計測値が得られたが,同じ実験条件 でも引張ひずみが生じる場合と生じない場合があるというジレンマに落ちいった。実験上の注 意点を確認し実験装置を修正しながら実験に取り組んだがその問題解決はうまくいかなかっ た。そこで使用しているひずみゲージの応答性能が本実験の現象を計測することが可能である と考え,ローパスなしとする計測条件の設定を新たに行った。その結果,ひずみ計測値が圧縮 と引張を繰り返し振動するという計測値が得られた。

 同じ実験に対し,ローパスなしの計測結果とそれにローパスを 3kHz かけてデータ処理をし たデータの例を図−15 に示す。実験名 F-1(重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)のこ の例からも,ローパスをかけてある値(たとえば 3kHz)以上の高周波振動を除去し,低周波 域で整理すると安定したひずみ計測値が得られるが,正確な計測値ではないと言える。

 ローパスなしでの計測記録は,第 1 波応力波・第 2 波応力波・減衰振動がシンプルな力学挙 動を明確に示している。本研究では,第 1 波応力波による圧縮ひずみをヒゲとしてとらえる考 え方をせず,一連の力学現象として考えた。すなわち,ひずみゲージの応答性能が 100kHz,

ひずみ計測器の EDX-3000 の応答性能が 200kHz であることより,今回示された第 1 波応力波 の周波数が約 50kHz であり計測可能範囲にあたる周波数であった。

3.4 ストッパーの設定

 本実験においては,重錘と杭上端とのスペースを設定可能な最も小さいスペースとして 0.1mm に設定した。設定理由を整理すると次の通りである。超高速ビデオカメラでの画像解 析より,衝撃力が作用し杭が重錘より離れて沈下するのが 0.1mm より小さい。すなわち,第 1 波応力波の発生,その反射応力波が重錘載荷衝撃力と合成され第 2 波応力波が発生するとい う力学機構がわかった。また,0.1mm の沈下以降の杭上端はフリーとなり,また,杭下端の 地盤のインピーダンスが小さいことより杭下端もほぼフリーとなり,杭が弾性バネとなり減衰 振動を示すと考察できる。なお,計算できる応力波の伝播速度は後述するように弾性棒中での 計算法より 4.68km/sec である。

 上記のことより,重錘と杭の分離が 0.1mm 以内で生じることにより,それ以上のスペース

(15)

図-15 ローパスなしにすることにより得られた実験結果例

(実験名 F-1:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(16)

であれば原理的に同じことになるが,より複雑さを避けるために 0.1mm のスペース設定は力 学的に適切であると判断した。結果として第 1 波応力波・第 2 波応力波・減衰振動という順で 連続した力学挙動としての計測値が得られた。

4 実験結果と考察 4.1 全実験の結果

 図−16 に静的支持力実験でのひずみ−沈下量関係を示 す。静的支持力実験は,図−1 に示した軸対象実験装置 および図−2 に示した杭を用い,静的載荷装置を別途製 作し,毎分 68mm の載荷速度で行った。静的極限支持 力発生時の沈下量とひずみは,6.0mm と 3.2µ あった砂 地盤軸対称実験の結果を図−17 ~図−23 に示す。本論文 の主要結果であるので,全ての計測結果を示す。

 図−17 ~図−23 および実験結果を杭中央部の ch4-1 で 整理した表−5 より軸対象実験での力学挙動を考察すれ ば以下のようである。0 ~ 10µsec で第 1 波応力波によ る圧縮ひずみが生じ,最大圧縮ひずみは 5 ~ 10µsec で 発生し,32.6 ~ 678.6µ あった。また,第 1 波応力波で 生じた圧縮ひずみは三角形分布であり,杭全体が圧縮ひ ずみの状態であった。

 次に,30 ~ 200µsec 間で第 2 波応力波による圧縮ひずみが生じ,最大圧縮ひずみは 75 ~ 125µsec で発生し 14.2 ~ 910.9µsec あった。それ以降では 100µsec 程度の周期をもつ圧縮と引 張が繰り返す減衰振動が生じた。

 第 1 波応力波と第 2 波応力波での顕著な違いは,第 1 波応力波による圧縮ひずみが 10µsec,

第 2 波応力波が 170sec と 17 倍もの時間を要していることである。第 1 波応力波では地盤も杭 も剛体に近い非常に大きい弾性挙動を示し,その結果として,超高速で応力波は伝播したと考 える。

 前述したように,第 1 波応力波が圧縮波として上端より下端へ伝播したのち,反射圧縮波と して跳ねかえり下端より上端へ伝播していく。その時の杭下端の沈下量は 0.02 ~ 0.09mm の 間である。各ひずみ測点の計測値を考えるうえでの注意点として,杭上端から 0.5cm のひずみ ゲージ ch1 は他のひずみ計測値とは異なった変化を示した。杭断面で均一なひずみが生じてい ないことなどが原因と考えられた。また,ch2 と ch8 では杭上端面から 5cm の対角線上に貼 り付けひずみ値はほぼ同じ値を示し偏心が生じていないこと,ch2 ~ ch7 では比例的にピーク 図-16 静的支持力実験のひずみ−

沈下量関係

(17)

図-17 実験名Aの実験結果(1)

(実験名 A:重錘質量 20kg・落下高さ 0.25m・埋設 0cm)

(18)

図-17 実験名Aの実験結果(2)

(実験名 A:重錘質量 20kg・落下高さ 0.25m・埋設 0cm)

(19)

図-18 実験名Bの実験結果(1)

(実験名 B:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 0cm)

(20)

図-18 実験名Bの実験結果(2)

(実験名 B:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 0cm)

(21)

図-19 実験名Cの実験結果(1)

(実験名 C:重錘質量 20kg・落下高さ 2m・埋設 0cm)

(22)

図-19 実験名Cの実験結果(2)

(実験名 C:重錘質量 20kg・落下高さ 2m・埋設 0cm)

(23)

図-20 実験名Dの実験結果(1)

(実験名 D:重錘質量 20kg・落下高さ 0.25m・埋設 20cm)

(24)

図-20 実験名Dの実験結果(2)

(実験名 D:重錘質量 20kg・落下高さ 0.25m・埋設 20cm)

(25)

図-21 実験名Eの実験結果(1)

(実験名 E:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 20cm)

(26)

図-21 実験名Eの実験結果(2)

(実験名 E:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 20cm)

(27)

図-22 実験名F-1の実験結果(1)

(実験名 F-1:重錘質量 20kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(28)

図-22 実験名F-1の実験結果(2)

(実験名 F-1:重錘質量 20kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(29)

図-23 実験名F-2の実験結果(1)

(実験名 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(30)

図-23 実験名F-2の実験結果(2)

(実験名 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(31)

値は減少しており,ひずみエネルギーが減少すると考察できる。

 次に,200µsec以降,圧縮と引張が繰り返される減衰振動が生じた。減衰率は10~30%程度で,

時間経過とともに減衰率は上昇した。周期は 115µsec 程度である。それ以降も減衰振動が続 き 2815 ~ 3960µsec でひずみはゼロとなった。

 杭上端の沈下が 0.1mm のスペースを超えると,杭上端は完全自由端となり,圧縮波は引張 波として,杭上端より杭下端に伝播する。逆に引張波は圧縮波として反射する。また,杭と杭 下端地盤のインピーダンス比が 55 であり,発生する現象はほぼ自由端として機能する。両端 自由条件のばね振動が生じている。ひずみエネルギーの減少しながら,杭の沈下が生じている。

表-5 実験結果一覧(ch4-1の計測値)

実験名 第 1 波

最大圧縮ひずみ

(µ)

第 1 波 最大圧縮ひずみ

発生時間

(µsec)

第 2 波 最大圧縮ひずみ

(µ)

第 2 波 最大圧縮ひずみ

発生時間

(µsec)

A 302.7 10 269.5 115

B 467.9 5 326.6 95

C 394.3 5 633.3 105

D 253.9 5 532 95

E 367.8 5 542.6 110

F-1 395.8 5 666.1 100

F-2 366.8 5 686.9 105

G 171.5 5 886.1 925

H 306 5 1903.7 810

I-1 2335.4 575

I-2 3032.6 950

J 548.6 5 121.1 205

K 564.6 5 253.3 125

L 284.5 5 350 120

M 501 5 114.4 210

N 881.3 5 226.4 120

O 493.9 5 337.2 190

Ex.1 130.5 150

Ex.2 389.4 5 111.3 165

Ex.3 920.8 5 402.1 120

Ex.4 187.5 5 304.7 110

Ex.5 28.9 5 426.5 115

Ex.6 47.6 5 424.8 115

(注) :ひずみ発生なし

(32)

 衝撃応力波は圧縮状態および引張状態においても杭体の弾性抵抗で減少する。なお,200µ の引張ひずみは,コンクリート杭を引張破断させる大きさである5),6)

 第 1 波応力波により生じたひずみの考察を次に示す。

 ひずみをローパスなしで計測すると,約 50kHz の高周波の圧縮ひずみが確認された。第 1 波応力波によるひずみの特徴を全実験結果より以下に整理する。

 第 1 波応力波では軸方向・水平方向ともに圧縮ひずみを示す。第 2 波応力波では最大圧縮ひ ずみが測点 2 で生じたのに対し,第 1 波応力波では ch-6 であった。第 1 波応力波により生じ る最大圧縮ひずみの大きさは杭埋設の影響をうけない。第 1 波応力波により生じる最大圧縮ひ ずみの大きさは力積変化によって変動する。第 1 波応力波と第 2 波応力波により生じる最大圧 縮ひずみの大きさの大小は実験によって異なる。埋設のない実験では第 1 波応力波のほうが大 きく,埋設 20cm 実験では第 2 波応力波のほうが大きく圧縮ひずみを生じさせている。

 以下に,基本的数値を整理して示す。

  ① 物体のインピーダンス Z の計算方法を次式(1)に示す。

     Z =

ρ・C

(1)

 ここで,ρ 密度(kg/m3),C は応力波速度(m/s)である。

  ②  応力波の伝播速度 C は,アルミ杭の密度と弾性係数より次式(2)で計算でき,密度 が 2.7g/m3で弾性係数が 59.2GN/m2であるので 4.68km/sec となる。

     C =

E

ρ (2)

  ここで,ρ は密度(2.7g/cm3),は弾性係数(59.2GN/m2)である。

  ③  ア ル ミ 杭 の バ ネ 係 数 は 124kN/mm(k=EA/L,E=59.2GN/m2,A=0.000628m2, L=0.3m)と計算できる。

4.2 杭下端支持力学状態の検証:鉄板実験

 次に,地盤を鉄板に変更し,杭に発生するひずみにどのような影響が出るかを計測した。実 験一覧を前述の表−4 に示す。鉄板の形状は直径 10cm・厚さ 2.8cm・質量 1.65kg で,22 枚の 鉄板を直接実験装置底盤上に置いた。鉄板実験計測結果を図−24 ~図−27 に示す。

(33)

 砂地盤での同じ実験条件での実験結果と比較すると第 2 波応力波の圧縮ひずみの最大値は ch4-1 で 3032.6µ あった。全体として砂地盤と鉄板の場合の最大の圧縮ひずみを比較すると鉄 板の場合が砂地盤の場合より 5.83 ~ 3.29 倍大きく生じ,発生時間は 8.53 ~ 5.48 倍遅れて生じた。

 なお,鉄板は砂に比べて密度や弾性係数が大きいことから,アルミ杭から伝わった応力波が 砂地盤では引張として下記の式での計算値では 96.2% 反射するのに対し,鉄板では応力波は 43.5% 圧縮で反射することになる。

 以下に断面積比が一定のときの反射率αと透過率βの算出式7)を示す。

     α= 1 −β (3)

     β= 21 + q (4)

 ここで,q はインピーダンス比である。

また,表−6 に本実験でのインピーダンス比・反射率・透過率のまとめを示す。

 杭中を伝播する応力波が,鉄板実験では圧縮で行き来するため,圧縮ひずみが大きくなりピー クの発生時間が砂地盤に比べて遅くなったと考えられる。

 実験条件 F-1 と F-2 を比較すると第 1 波応力波による圧縮ひずみは F-1 のほうが強く発生 している。鉄板実験の G ~ I-2 では G<H の順で初期ひずみが発生するのに対し,I-1・I-2 で は初期ひずみが発生しなかった。このことから,衝撃力に対して初期ひずみが発生するのはあ る一定の範囲であると考えられる。F-1 の衝撃力では,増加した砂地盤の弾性係数で受けられ たのに対し,F-2 の衝撃力では増加した弾性係数でも支持しきれなくなり,数値が低下した。

鉄板実験においても,G や H は鉄板が衝撃を受けられたのに対し I-1・I-2 では鉄板が十分に 剛である状態を保てなかったと考察できる。

表-6 インピーダンス比・反射率・透過率

地盤条件 砂 鉄 アルミ 空気

密度(g/cm3) 1.57 7.874 2.7 0

弾性係数 E(MN/m2) 45.99 152300 59200 0

アルミとのインピーダンス比 Z 50.8 0.39 1 ∞

アルミとの透過率(%) 3.8 143.5 100 0

アルミとの反射率(%) -96.2 43.5 0 -100

(34)

図-24 実験名Gの実験結果

(実験名 G:重錘質量 20kg・落下高さ 0.25m・埋設深さ 0cm)

(35)

図-25 実験名Hの実験結果

(実験名 H:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設深さ 0cm)

(36)

図-26 実験名Ⅰ-1の実験結果

(実験名Ⅰ -1:重錘質量 20kg・落下高さ 2m・埋設深さ 0cm)

図-27 実験名Ⅰ-2の実験結果

(実験名Ⅰ-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設深さ 0cm)

(37)

4.3 摩擦の影響の検証:風船実験

 杭の静的支持力は,杭周面の摩擦力と杭底部での先端抵抗力の和として算定できる。衝撃支 持力時の力学挙動については不明な点であり,重要な研究要因となる。以下に,摩擦について 検討を行う。衝撃時には摩擦が作用する・しないの両論があるが,実験的実証されていない。

杭を埋設する・しないの実験条件では,杭底面に作用する上載土荷重の影響をなくすことがで きない。静的実験であれば摩擦の影響はひずみ分布より推定できるが,衝撃の場合には摩擦の 影響なのかどうかを判定することは難しい。

 そこで,本研究では,杭下端をフリーにする力積大・中・小の 3 種類の実験を行った。実験 装置を図−28 に示す。杭底が当たる部分に局所的に穴を開け,風船を設置し,杭をその風船の 上に設置した。実験一覧を前述の表−4 に示す。風船は単に杭を支える程度の膨らませ方とし たので,ほぼ空気とみなせると考えた。

 実験結果を図−29 ~図−31 に示す。風船実験と砂地盤実験の実験結果を表−5 および表−7 に示 す。風船実験の方が全体的に第 2 波応力波における最大ひずみの値が小さく,発生時間が力積 小風船実験では遅かった。また,落下高 0.25m・質量 20kg と落下高 2m・質量 20kg の実験で は実験時に風船は割れなかったが,落下高 2m・質量 40kg の実験では風船が割れた。表−8 に 行った 6 種類での第 2 波応力波による ch4 における最大の圧縮ひずみの大きさと発生時間の比 較を示す。実験 1-2 は圧縮最大ひずみに 14.7% の差が生じた。実験比較 3-4 では圧縮最大ひず みおよび発生時間共に差が生じなかった。これらのことから,力積小では摩擦の影響を受ける が,力積大では摩擦の影響を受けないことが考察できる。

図-28 風船実験装置

(38)

図-29 力積小風船実験結果

(39)

図-30 力積中風船実験結果

(40)

図-31 力積大風船実験結果

(41)

表-7 風船実験結果一覧 実験条件

実験名Ex.1Ex.2Ex.3Ex.4Ex.5Ex.6 杭下地盤風船風船風船風船風船風船 重錘質量(kg)202020204040 埋設深さ(cm)020020020 落下高さ(m)0.250.251122 実験結果ch4の最大圧縮ひずみ(µ)130.5111.3402.1304.7426.5424.8 ch4の発生時間(µsec)150165120110115115 表-8 風船実験結果のch4-1計測値による比較 落下高さ質量最大圧縮ひずみ (µ)最大圧縮ひずみの差発生時間 (µsec)発生時間の差 (m)(kg)埋設0cm埋設20cm(µ)とその比率埋設0cm埋設20cm(µsec) 比較1-20.2520130.5111.319.2 (14.7%差)15016515 比較3-42.0020402.1304.797.4 (24.2%差)12011010 比較5-62.0040426.5424.81.7 (0.4%差)1151150 (注)   力積小風船実験1(実験名Ex.1):落下高さ0.25m・埋設0cm・質量20kg   力積小風船実験2(実験名Ex.2):落下高さ0.25m・埋設20cm・質量20kg   力積中風船実験3(実験名Ex.3):落下高さ1.0m・埋設0cm・質量20kg   力積中風船実験4(実験名Ex.4):落下高さ1.0m・埋設20cm・質量20kg   力積大風船実験5(実験名Ex.5):落下高さ2.0m・埋設0cm・質量20kg

(42)

4.4 埋設の影響の検証

 衝撃支持力に与える杭の埋設の影響を調べた。埋設は周面摩擦と先端支持力の両方に影響を 与える要因である。実験一覧を表−4 に示す。

 第 1 波応力波および第 2 応力波による最大圧縮ひずみとその発生時間でその比較検討を行っ た。比較結果を表−9 に示す。表より以下のことが考察できる。

 埋設があると第 2 波応力波による最大の圧縮ひずみは大きくなる傾向がある。落下高さ 0.25m では 1.97 倍差があり,落下高さ 1m では 1.66 倍の差,落下高さ 2m では 1.05 倍差があった。

落下高さ 1m までの実験では沈下量が埋設の有無で差が発生しているのに対して,落下高さ 2m では埋設の影響が出ていなかった。傾向として衝撃力が増大すると埋設影響差がなくなっ ていく。これは衝撃力が小さいと埋設の支持力が,影響した結果と考える。衝撃力が強いと埋 設の影響がなくなっていく理由として,沈下速度の差が影響していると考えられる。落下高さ 1m までは沈下量として 60µsec 付近までは埋設 20cm の方が遅いが,それ以降埋設 20cm の落 下スピードが埋設 0cm を大きく上回っている。それに対し,落下高さ 2m の結果では 2 実験 とも差が出ていない。双方の沈下スピードが変わらないということは地盤の特性が同様の反応 をしていることと同じである。結果として,実験 F-1 の沈下量が実験 C より若干小さいこと からひずみの数値として 1.05 倍の値が示された。

 以上のことより,力積が大きくなると第 2 波応力波により生じる最大圧縮ひずみは大きくな ること,発生時間およびポアソン比には変化が見られないことが考察できる。

表−9 埋設の影響比較 重錘質量

(kg) 落下高さ

(m) 埋設深さ

(cm) 実験名 ch4 の第2波応力波

最大圧縮ひずみ

(µ)

ch4 の第2波応力波 最大圧縮ひずみ発生時間

(µsec)

20

0.25 0 A 269.5 115

20 D 532.0 95

1 0 B 326.6 95

20 E 542.6 110

2 0 C 633.3 105

20 F-1 666.1 100

(43)

4.5 弾性抵抗と応力波伝播速度の検証

 杭の衝撃力学挙動を考えるうえで,最も重要な要因として弾性抵抗と応力波伝播速度がある が,両値を正確に算定することは極めて難しい。そこで,近似的に弾性抵抗や応力波伝播速度 を算定する 2 つの方法を考える。検討事例は実験名 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm である。

 方法−1(図−32 参照)

 各ひずみ測点の単位時間(5µsec)ごとの増減値をもとに経過時間とひずみ増減値の関係図 を作成する。ひずみ(µ)と時間(µsec)で積分し面積を求める。ひずみを応力に読み替える と力積に相当する値となる。各ひずみ測点での面積の減少率から弾性抵抗,形状のピーク発生 時間差から応力波伝播速度を算定する。

 方法−2(図−32 参照)

 各ひずみ測点における時間−ひずみ関係から,最大圧縮ひずみの減少率を弾性抵抗,圧縮ひ ずみを示し始める時間の差から応力波伝播速度を算定する。

 図−33(a)に測点 2 ~測点 6 での測点位置と面積減少率:弾性抵抗の関係を示す。方法−1 では,

測点 2 ~測点 3 で 14.6%,測点 3 ~測点 4 で 12.3%,測点 4 ~測点 5 で 11.2%,測点 5 ~測点 6 では 32% の減少率を示した。方法−2 では測点 2 ~測点 3 で 13.3%,測点 3 ~測点 4 で 13.0%,

測点 4 ~測点 5 で 12.7%,測点 5 ~測点 6 で 37.1% の減少率を示した。方法−1 と方法−2 で 11.2 ~ 14.6% であり測点 1 ~測点 5 間では両方で減少率にほとんど差がなかった。それに対し,

測点 5 ~ 6 で他測点間に比べて 2 倍程度の 32% と 37.1% の減少率を示している。埋設部分の 周面摩擦や杭下端で先端支持力の影響があったのかもしれない。これらは今後の研究課題とい える。

 次に,図−33(b)に測点 2 ~測点 6 間の応力波伝播速度の算定値を示す。時間差は,方法−1 では 9 ~ 13µsec(平均 10.5µsec)であり,速度に換算すると 4.76km/sec である。方法−2 で は 5 ~ 15µsec(平均 10.0µsec)であり,5.00km/sec となる。前述した式(2)で示したアル ミ杭の密度と弾性係数より計算できる応力波伝播速度は 4.68km/sec であるので,両方とよく 一致した値を示している。

(44)

図-32 方法-1 弾性抵抗および応力波速度検討プロセス(1)

(45)

図-32 方法-2:弾性抵抗および応力波速度検討プロセス(2)

(46)

図-33 弾性抵抗の変化および応力波速度の解析結果

(実験 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)

(47)

5 画像解析および PIV 解析

 半割実験での画像解析結果より,杭に 衝撃が発生してから 200µsec までの地 盤変位ベクトル分布,最大せん断ひずみ 分布,体積ひずみ分布の算定を直接法に より行った。第 2 章での重錘落下実験で 用いた逐次法での場合と異なり,地盤変 位ベクトルが直線的に伸びていくことか ら直接法を採用した。

 実験一覧を前述の表−4 中に示す。解 析は 40µsec ピッチで 160µsec まで行っ た。図−34 に実験名 N の 160µsec 時に ついての解析結果を図−34 に例示する。

最大地盤変位量 0.436mm,最大の最大 せん断ひずみ 24.9%,最大の体積ひずみ 25.0% であり,地盤変位は杭直下近傍で 垂直方向に生じていることが鮮明にわか る。図−35 に経過時間と最大の最大せん 断ひずみ・最大の体積ひずみ関係図を示 す。体積ひずみと最大せん断ひずみは,

ほぼ同じ値であることが特徴であり,地 盤変位が垂直方向に卓越して生じたこと が原因する力学値であると言える。

 これらの画像解析および PIV 解析結 果と前述した静的支持力実験結果を比較 すると,両実験が極めて異なった力学現 象であることがわかった。

図-34 実験名Nの衝撃発生から160µsec時のベクト ル分布・最大せん断ひずみ分布・体積ひずみ 分布

(実験名 N:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 10cm)

(48)

図-35 解析経過時間と最大の最大せん断ひずみ・最大の体積ひずみ関係

(49)

6 まとめ

 実験結果を以下に要約する。

①  アルミ杭を用いた衝撃実験で,おおよそ,0 ~ 20µsec の間で第 1 波ひずみ波形,20 ~ 200µsec 間での第 2 波ひずみ波形,200µsec 以降で減衰自由振動ひずみ波形が生じた。

②  第 1 波ひずみ波形は,重錘が杭上端面に衝突し,大きな衝突力が生じたことが原因して生 じたと考察できた。すなわち,杭の軸方向中心部がバネとして縮み,それが杭側面から中 央部へバネで引っ張られた結果として,すべてのひずみ計測点で圧縮ひずみが生じたと考 えられた。また,第 1 波ひずみ波形の最大圧縮ひずみの大きさは,重錘の衝突速度に比例 して生じた。

③  20 ~ 200µsec 間で入射圧縮応力波と反射引張応力波の 1 往復の重ね合わせの結果として 第 2 波ひずみ波形が生じた。杭と杭下端面下地盤のインピーダンス比が大きく,反射応力 波は引張応力波として生じたと考えられた。第 2 波最大圧縮ひずみは杭下端面に向かうほ ど小さくなった。

④  経過時間 60µsec で重錘が杭上端面から離れ,応力波が 30cm の杭を一往復するのに要す る時間が 128µsec であるので,おおよそ 200µsec で上端面に戻り,200µsec 以降,減衰自 由振動が生じた。減衰が生じる原因として,杭の弾性抵抗である。また,減衰自由振動開 始時の 200µ を超える引張ひずみは,コンクリート杭を引張破断させる大きさのひずみで あった。

⑤  杭下端面下が砂地盤の砂地盤実験,鉄板を設置した鉄板実験,および風船で支えた風船実 験での実験結果を比較した。砂地盤実験と鉄板実験での第 2 波最大圧縮ひずみを比較する と鉄板実験の場合が砂地盤の場合より 5.8 倍大きく生じ,発生時間は 8.5 倍遅れて生じた。

鉄板実験では杭を応力波が,杭上端面で圧縮応力波入射⇒下端面で圧縮応力波反射⇒上端 面で引張応力波反射⇒下端面で引張応力波反射⇒上端面で圧縮応力波反射⇒下端面で圧縮 応力波反射とそれぞれの大きさを減少させつつ繰返し生じるため,砂地盤に比べ,第 2 波 圧縮ひずみが大きくなりピークの発生時間が遅くなった。次に,砂地盤実験と風船実験を 比較すると,第 2 波最大圧縮ひずみはほぼ同じであった。その差異は,杭下端面下の砂地 盤のインピーダンスがごく小さいことが原因と考察できた。

⑥  埋設 20cm および埋設 0cm の実験条件で,砂地盤実験および風船実験で第 2 波最大圧縮 ひずみがほぼ同じ大きさであったことより,衝撃実験では周面摩擦の影響がごく小さいも のであることが考察できた。

⑦  アルミ杭の弾性抵抗による ch2 ~ ch6 間の第 2 波最大圧縮ひずみの減少は 40µ であった。

⑧  アルミ杭での応力波速度は 4.76km/sec であった。杭の密度と弾性係数より計算できる応 力波速度の 4.68km/sec と実測値と計算値ほぼ一致した。

(50)

⑨  半割アルミ杭,砂地盤,重錘質量 20kg,落下高さ 1m,埋設 20cm の実験条件での画像 解析および PIV 解析の事例より,最大の地盤変位は 0.176mm,最大の最大せん断ひずみ は 11.55%,および最大の体積ひずみは 11.95% であった。地盤変位は,画像解析と PIV 解 析結果より杭下端面下地盤で鉛直方向にのみで生じたことが考察できた。このことより,

30cm 径土槽での衝撃実験を行うことの力学的妥当性を示せた。

謝辞

 本研究は,科研研究(2011 年−2013 年度,課題番号:23560601,基礎杭における地震時衝撃 上下動による支持力発生力学挙動の模型実験に基づく研究,研究代表者 玉野富雄)および大 阪産業大学産業研究所共同研究(2012-2013 年度,耐震機能杭に関する基礎的研究,研究代表者:

玉野富雄)により行いました。記してお礼申し上げます。

参考文献

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3)  福井次郎,大塚雅裕,秋田直樹,野々村佳哲,喜多直之:杭の地震時の鉛直支持力に関する研究,

土木研究所資料,第 4106 号,pp.1-32,2008.

4)  T. Etoh, D. Poggemann, G. Kreider, H. Mutoh, A. Theuwissen, A. Ruckelshausen, Y. Kondo, H.

Maruno, K. Takubo, H. Soya, K. Takehara, T. Okinaka, Y. Takano: An Image Sensor Which Captures 100 Consecutive Frames at 1,000,000 Frames, Transactions on Electron Devices, Vol.50, No.1, pp.144-151, 2003.

5)  玉野富雄,金岡正信,竹原幸生,水谷夏樹,大島賢吾,江藤剛冶:モルタル・花崗岩におけるクラッ ク伝播速度に関する衝撃実験,材料,日本材料学会,Vol.57,No.1,pp.8-11,2008.

6)  T. Tamano, M. Kanaoka, K. Takehara, N. Mizutani: Crack Propagation Velocity of Granite by Impact Splitting Tests, Proceedings of the 17th International Conference on SMGE, ISSMGE, pp.356-359, 2009.

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8)  臺丸谷政志,小林秀敏,志澤秀康:反射引張応力波によるモルタル材の衝撃引張強度測定と評価 法の検討,材料,日本材料学会,Vol.50,No.3,pp.217-222,2001.

参照

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