杭の衝撃力学挙動を考えるうえで,最も重要な要因として弾性抵抗と応力波伝播速度がある が,両値を正確に算定することは極めて難しい。そこで,近似的に弾性抵抗や応力波伝播速度 を算定する 2 つの方法を考える。検討事例は実験名 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm である。
方法−1(図−32 参照)
各ひずみ測点の単位時間(5µsec)ごとの増減値をもとに経過時間とひずみ増減値の関係図 を作成する。ひずみ(µ)と時間(µsec)で積分し面積を求める。ひずみを応力に読み替える と力積に相当する値となる。各ひずみ測点での面積の減少率から弾性抵抗,形状のピーク発生 時間差から応力波伝播速度を算定する。
方法−2(図−32 参照)
各ひずみ測点における時間−ひずみ関係から,最大圧縮ひずみの減少率を弾性抵抗,圧縮ひ ずみを示し始める時間の差から応力波伝播速度を算定する。
図−33(a)に測点 2 ~測点 6 での測点位置と面積減少率:弾性抵抗の関係を示す。方法−1 では,
測点 2 ~測点 3 で 14.6%,測点 3 ~測点 4 で 12.3%,測点 4 ~測点 5 で 11.2%,測点 5 ~測点 6 では 32% の減少率を示した。方法−2 では測点 2 ~測点 3 で 13.3%,測点 3 ~測点 4 で 13.0%,
測点 4 ~測点 5 で 12.7%,測点 5 ~測点 6 で 37.1% の減少率を示した。方法−1 と方法−2 で 11.2 ~ 14.6% であり測点 1 ~測点 5 間では両方で減少率にほとんど差がなかった。それに対し,
測点 5 ~ 6 で他測点間に比べて 2 倍程度の 32% と 37.1% の減少率を示している。埋設部分の 周面摩擦や杭下端で先端支持力の影響があったのかもしれない。これらは今後の研究課題とい える。
次に,図−33(b)に測点 2 ~測点 6 間の応力波伝播速度の算定値を示す。時間差は,方法−1 では 9 ~ 13µsec(平均 10.5µsec)であり,速度に換算すると 4.76km/sec である。方法−2 で は 5 ~ 15µsec(平均 10.0µsec)であり,5.00km/sec となる。前述した式(2)で示したアル ミ杭の密度と弾性係数より計算できる応力波伝播速度は 4.68km/sec であるので,両方とよく 一致した値を示している。
図-32 方法-1 弾性抵抗および応力波速度検討プロセス(1)
図-32 方法-2:弾性抵抗および応力波速度検討プロセス(2)
図-33 弾性抵抗の変化および応力波速度の解析結果
(実験 F-2:重錘質量 40kg・落下高さ 2m・埋設 20cm)
5 画像解析および PIV 解析
半割実験での画像解析結果より,杭に 衝撃が発生してから 200µsec までの地 盤変位ベクトル分布,最大せん断ひずみ 分布,体積ひずみ分布の算定を直接法に より行った。第 2 章での重錘落下実験で 用いた逐次法での場合と異なり,地盤変 位ベクトルが直線的に伸びていくことか ら直接法を採用した。
実験一覧を前述の表−4 中に示す。解 析は 40µsec ピッチで 160µsec まで行っ た。図−34 に実験名 N の 160µsec 時に ついての解析結果を図−34 に例示する。
最大地盤変位量 0.436mm,最大の最大 せん断ひずみ 24.9%,最大の体積ひずみ 25.0% であり,地盤変位は杭直下近傍で 垂直方向に生じていることが鮮明にわか る。図−35 に経過時間と最大の最大せん 断ひずみ・最大の体積ひずみ関係図を示 す。体積ひずみと最大せん断ひずみは,
ほぼ同じ値であることが特徴であり,地 盤変位が垂直方向に卓越して生じたこと が原因する力学値であると言える。
これらの画像解析および PIV 解析結 果と前述した静的支持力実験結果を比較 すると,両実験が極めて異なった力学現 象であることがわかった。
図-34 実験名Nの衝撃発生から160µsec時のベクト ル分布・最大せん断ひずみ分布・体積ひずみ 分布
(実験名 N:重錘質量 20kg・落下高さ 1m・埋設 10cm)
図-35 解析経過時間と最大の最大せん断ひずみ・最大の体積ひずみ関係
6 まとめ
実験結果を以下に要約する。
① アルミ杭を用いた衝撃実験で,おおよそ,0 ~ 20µsec の間で第 1 波ひずみ波形,20 ~ 200µsec 間での第 2 波ひずみ波形,200µsec 以降で減衰自由振動ひずみ波形が生じた。
② 第 1 波ひずみ波形は,重錘が杭上端面に衝突し,大きな衝突力が生じたことが原因して生 じたと考察できた。すなわち,杭の軸方向中心部がバネとして縮み,それが杭側面から中 央部へバネで引っ張られた結果として,すべてのひずみ計測点で圧縮ひずみが生じたと考 えられた。また,第 1 波ひずみ波形の最大圧縮ひずみの大きさは,重錘の衝突速度に比例 して生じた。
③ 20 ~ 200µsec 間で入射圧縮応力波と反射引張応力波の 1 往復の重ね合わせの結果として 第 2 波ひずみ波形が生じた。杭と杭下端面下地盤のインピーダンス比が大きく,反射応力 波は引張応力波として生じたと考えられた。第 2 波最大圧縮ひずみは杭下端面に向かうほ ど小さくなった。
④ 経過時間 60µsec で重錘が杭上端面から離れ,応力波が 30cm の杭を一往復するのに要す る時間が 128µsec であるので,おおよそ 200µsec で上端面に戻り,200µsec 以降,減衰自 由振動が生じた。減衰が生じる原因として,杭の弾性抵抗である。また,減衰自由振動開 始時の 200µ を超える引張ひずみは,コンクリート杭を引張破断させる大きさのひずみで あった。
⑤ 杭下端面下が砂地盤の砂地盤実験,鉄板を設置した鉄板実験,および風船で支えた風船実 験での実験結果を比較した。砂地盤実験と鉄板実験での第 2 波最大圧縮ひずみを比較する と鉄板実験の場合が砂地盤の場合より 5.8 倍大きく生じ,発生時間は 8.5 倍遅れて生じた。
鉄板実験では杭を応力波が,杭上端面で圧縮応力波入射⇒下端面で圧縮応力波反射⇒上端 面で引張応力波反射⇒下端面で引張応力波反射⇒上端面で圧縮応力波反射⇒下端面で圧縮 応力波反射とそれぞれの大きさを減少させつつ繰返し生じるため,砂地盤に比べ,第 2 波 圧縮ひずみが大きくなりピークの発生時間が遅くなった。次に,砂地盤実験と風船実験を 比較すると,第 2 波最大圧縮ひずみはほぼ同じであった。その差異は,杭下端面下の砂地 盤のインピーダンスがごく小さいことが原因と考察できた。
⑥ 埋設 20cm および埋設 0cm の実験条件で,砂地盤実験および風船実験で第 2 波最大圧縮 ひずみがほぼ同じ大きさであったことより,衝撃実験では周面摩擦の影響がごく小さいも のであることが考察できた。
⑦ アルミ杭の弾性抵抗による ch2 ~ ch6 間の第 2 波最大圧縮ひずみの減少は 40µ であった。
⑧ アルミ杭での応力波速度は 4.76km/sec であった。杭の密度と弾性係数より計算できる応 力波速度の 4.68km/sec と実測値と計算値ほぼ一致した。