有機質面に沿っての線条図形並びにその性質(第2報 )
著者 池尻 忠夫
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 9
号 1.2
ページ 52‑73
発行年 1961‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5176
52
有機質面に沿っての線条図形並びにその性質(第 2 報) 池 尻
J忠 夫
Studies 00 Streamer Figures Along the Organic Membrane and Their Characteristics.
( 1 I )
Tadao IKEJIRI
By electric sparking
,
abnormal streamer figures were produced along the sensitive paper which had been exposed to light,
when it was used for the organic membrane. So that,
from several points of view,
various experiments were carried out to study those fundamentalcharacteristics and to offer data to discuss the formation of figures.
Namely
,
in this report,
the experimental results concerning the effects of surrounding media,
the pressure,
the surface treatment of test material,
the form of electrode and the polarity of applied voltage,
were described.緒
有機質国に沿って生ずる放電図形の概要については前報
¥11に於て報告したが,その後更に諸種 の実験により未知の性質が見出されたので,これ等について報告する
oすなわち,外周媒質,気 圧,供試面の表面処理,電極形状及び極性等の影響等について調べ放電図形の生成原因探究につい
てのー資料とした
o2 . 実 験 装 置 及 び 方 法
実験装置は前報山のものと全く同様で,電源としては主として直流を用い比較の為,交流,衝 撃波及び高周波を印加した。試料は,ガスライト印画紙,クロロブロマイド印画紙,ブロマイド印 画紙等を用い,何れも感光したものを使用した。
3 . 実 験 結 果
(3・ 1 ) 外 周 媒 質 の 影 響
絶縁性の液体媒質として,変圧器油,ベンゼン,キ
Vローノレ,ヘキサ
Y,l‑}レエン v リゴンオ イル等を用いて実験したが,これ等の液中に於ても,大気中と同様の図形が形成された。線条の延 び及び巾は大気中の場合に比し,かなり減少するが,その数には顕著な変化は認められなかった
Dこの場合も印画紙面は感光させ或る程度紙面が変色し,線条の判別が容易になる状態に於て研究し た 白 (又液中にて感光させても同様である。〉図形の様子は変圧器油中の場合,最も鮮明であり,
申 工 学 部 講 師
他の場合は殆んど変化は認められなかった。これは変圧器油の増感剤としての作用によると考えら れるo次に気中と夜中の図形の拡りの比較を見る為に印画紙を第 1図に示すように垂直に保持して 電圧を印加すると,気中の部分は線条の拡りが急速に拡大されるに反
し液中の拡りは一向に増大せず気中の部分の数分の一程度である。然 も空気と液体の境界部に於て延びは最大で
E
つ境界部に沿い延びよ5
とするo尚境界部に於て線条は最も明瞭な色彩を示しているo両電極 の中聞にて甚しい時は発煙し拡大するD 気中の延びとの割合は液面の 位置により幾分変動し,これらの関係を示すと第 2図の如くである。
そり波面も静電界の為,変形を受け変動の一因となるo更に第3図の よ
5
に三部分に区別される時に於ても三部分共,皆延びの長さを異に している。文電極よりの炭化路が液面に迄到達し,液中に於てのみ線 条図形が見られる事もあるo電圧印加時聞を増大した時,初めの5 ち
或る程度の時間中は気中における線条の延びは増加するが,液中の延 びはあまり増加しない。然しその割合は印加時間により顕著な変化を 示さない。この関係は第 4図に示される。概して絶縁油中の線条は気有機質面に沿っての糠条図形並びにその性質 (第2
報)
a/b‑pjq, ajb‑d曲線
二層媒質のi時〔空気一変庄器摘〉
a
11""""'1'" ""
a/b .... 斗 宇
f
553
空 気
変圧器拍
第
1図e
O
pfq=O.5
X←
ヌー一一ー一斑
ガ ス ラ イ ト 紙 ( F‑3) 3
T air: 20 oC Trans oil: 21 oC P: 759 11¥11¥ Hg R. H. : 76 %
O
O
E
I ? ? 一 一 一 →
d(mm)。
2 3 6‑‑‑‑.. p/q
第
2図
中の線条に比して色彩は濃厚であり,ばらつきも少い。一例としてガスライト印画紙の場合(変圧 器油使用),線条の色彩は濃黄色を呈し,クロロブロマイド印画紙の場合茶褐色を呈すo液体の膜 を薄く塗布した時でも,この図形はできるが,それのとは幾分異なり椋条の延びが大きい。更に液 を印画紙に浸潤させた後引上げて,電圧を印加した場合は,薄膜塗布の場合よりも更に伸びは減 少するが液中のそれよりは大であるo尚気中放電の場合に見られる陰極よりの折出物は見られない が,放電により局部破壊を起し樹枝状の炭化路が発達し線条図形の変歪を起す事があるo印画紙の
54 福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第1・2
号
e ¥f
ロ 〆 印 両 紙二 J 二
'///f,竹久 ¥ G
イ ロ ノ 、
1 1
1 1 )
‑i l l i l i
‑‑‑第 3 図
a/b
10
s
2
相違による影響は色彩の変化以外はあまり認める事ができ なかった。以上のような図形生成の相違は電位の傾きの相 異,供試面の性質及び気中と液中の熱伝導及び冷却効果の 相異等が複雑に関係しているものと思われるo更に油温を 100Cより400C迄変化させた時の線条の諸性性と油温との 関係及び絶縁抵抗と油温との関係を第
5 . 1
,2
図に示す。こ れ等より見ると高温時には油の絶縁抵抗が小になる為電流 は油中を流れ紙面を流れていないように考えられるo又油 中浸潰時間と絶縁抵抗とを温度を変数として示すと第6図 のようになり夫々温度400C附近,油中浸潰後2時間程度 で飽和に達する。次に外周気体媒質を種々変更して,その影響を調べて 見た。気体の種類としては,炭酸ガス,窒素,アンモニア,
塩化水素,塩素,亜硫酸ガス等を用いた。炭酸ガス窒素及
変圧器袖中 p/q: 1
d==20 m m 9 K V
o
2.8‑2.9 mA 7 KV 2.1‑2.4 m A。
。
6時間t(sec)
3 F 3
第
4図
び亜硫酸ガスの場合は空気中と何等差異はなく同様に生成される。アンモニア気中(還元性〉に於 ては例えばガスライト印画紙 (F‑3) を使用した時は,感光した状態で紫色を呈するが,アンモニ アガスの存在に於て化学変化を起し,黄櫨色に変色するo電圧を印加すると電極間は再び紫色に変 色し,図形は明確には認め難いが,伸展する様子はわかるo即ち点々と線条跡らしいものが出来て いるロ然し紫色変色部の外縁は黄色に変化しているo (この場合発生したアンモニアガスはナトロ ンカノレクを通して乾燥したが不充分であったので紙面は吸湿の為,この時の絶縁抵抗は約 1 ‑
1 .
5 M.Q‑cm程度であったo一般にガス体中に於ては,ゼラチYの気体収着の現象もあり絶縁抵抗も幾 分変化を与えると思われる。)塩化水素中に於ては,ガスライト印画紙 (F‑3)を使用した時,赤挑有機質面に沿っての糠条図形並びにその性質
(第2報)5 5
の巾 の
ガスライト紙 (F‑4)
(mm) びI申
変圧器油中 5 ... 10
(mm)
d=lOm m
s
2
!o
3ト 6
2
o 。
10 20 30 40 50 60 0 変圧器油 ("C)第
5・1図思
絶縁抵抗
M.Q
凸り1
cm
O 10 2け 30 40 50 60
変圧器油温度 (00
第
5
・2
凶56 福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第 ト2
号
初
絶 縁 抵 抗 地
cm
O
10
変圧器泊中 ガ;:t.ヲイT紙 (F‑4)
。
2 6 10 12 t (時間〕4
第
6図
60 練 条 の 伸u;
(mm) 50
40
空隙を気圧・
に応じて可 t=2‑‑‑8 s民 変 に し た 時
。
, ,
,
鉛
F ,
ノノ, , ,
, ,
, , , .
20ι"
, ,
.~, , ' ,
"
'
, ,
'a', .
, , ,
lO'"
一 ,
凶 せけ 定
形 ずl
∞
200 300 400 5叩 6∞
P (mm Hg)
第
7図
有機
1 1 百
ζi沿っての綜条図形並びにその性質 (第2報 〉
57色地に白く濁った放電路の跡が見えるが,線条は明瞭に認められなかった。然し電圧を一旦切断し 更にもう一回印加すると,既報の(1)ような空白部分を生ずる等の事より,線条図形の生成成は同様 に可能なものと考えられるo更に塩素気中ではガスライト印画紙 (F‑ 3)の場合, 決桃色地に栓 色の変色を来し,そこに黄色の図形が出来るが,線条の数は 2‑‑‑3個程度であった。これも乾燥不 充分なる為絶縁抵抗抵の低下によるものと思われるo尚電極(アノレミニワム〉及び膜面は長く放置 すると化学変化の為腐蝕する。以上により各種気体媒質内に於ても特にその乾燥に留意すれば,図 形の生成は可能である事がわかるo従って本質的には空気中と異なる所はないよ
5
に思われ外周気 体媒質の影響をうけないように考えられるo これは図形の生成が保護膜層文はパライタ層に生成さ れるとすると,これ等の各層が気体によって余り変化をうけない事と共にイオン等の振舞も制約さ れないことを示している。(3
・
2) 低気圧に於ける放電図形気圧を大気圧より順次下げて約lmmHgの領域迄到達する時,線条図形の性質が如何に変る かを調べて見た。第7図に示されるよ
5
に約10"....,50mmHg程度迄低下すると,図形は不鮮明にな り単純な加熱による変色のよ5
な外観を呈するo従って,この程度の気圧が生成限界だと考えられ るo放電路は低気圧の場合供試面を離れる傾向が強くなるので上部印画紙を密に接触させ,放電路 が下面に接触するよ5
にした。又低気圧中での絶縁抵抗の変動の有無を測定したが,第8図のよ5
に少しの変動も認められなかった。従って図形の生成消滅はこの場合絶縁抵抗の変動には関係ない
1伐』
ガスライト綬(F‑3)低気圧中 Temp: 90C R.H. :7796
P: 760mm Hg
60
40
d=14 m m 20
。
2(冶 40(¥ 6(XJ 8叫j Iα)() 12'∞
(mm Hgt
。
10 20 30 4Q 50前
低気圧中放置時間〈分〉
お 8
図
事がわかったo文,低気圧中封入時閣の効果も調べたが,これも影響はないようであった。電極間 隔,印加電力等に対して気圧をパラメータとして延び等との関係を示すと第9図等のようになるo
これ等より考えて見ると気圧の影響は印加電界の低減と同時に,それに伴う発生エネノレギーの減少 及びその拡散度の大なる為(グロー状になり〉紙面を流れず空隙に集中し,表面を伝ってエネJレギ
58
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
9巻 第 ト
2号
ーを供給せず,線条図形の生成不能になるのではないかと思われるo但し
1 0 0 . ‑ ‑ 4 0 0 m mHg
の範囲 では,電界の低下に拘らず放電々流は大となり(印加エネルギーは大になる)線条の延び等も同一 間隙長ではむしろ大気中より大となるo 従って線条図形生成の要因が印加電界のみでなく,印加エ ネルギーに関係ある事を確認する事ができた。(図形の生成はPのみに関係し, p.dには関係しな線 条 の 5 { 中L
、
(mm)
。
6 10 KVXmA第
9図
い。)この図形の生因に関しては更にイオンの分布等より研究考察中で次報以下に於て詳細に報告 するo
(3
・
3) 供紙面の種類及び表面処理による影響現像印画紙と比較の意味で焼出紙(食塩紙,難卵紙,
P . O. P
紙〉等を作製して試みたが図形 は同様に生成されたoi/ァゾタイプ感光紙,重クロム酸ゼラチシ紙等では明瞭に現れなかったが,これはゼラチシ等の量の少い為だと思われる。次に天然色印画紙(オリエンタノレ)について調べた。
今可視光線中に取出すと,潜{象の形成により初め談黄緑色であるが,淡青色→青色→紫色と変化す るロこの状態で司電圧を印加すると図形は生成されるが,その色彩は無色乃至白色であるo普通カラ ー印画紙を取出した状態(常温,常圧の下に於て〉での絶縁抵抗は
1 5 0
r‑'1 6 0
M~Q~cm 程度で図形 の生成も弧光状火花によって形成されその外観は汽泡の盛上った如き感を呈するo今供試印画紙を 高湿度気中に放置し絶縁抵抗が 80‑100MQ‑cm程度以下迄低下した状態では,明白な整然たる図 形が得られ,その色彩も黒褐色味を帯びる。電圧印加時聞が長いと両電極聞はプリッヂされて,黒 褐色の溝(トラッキング〉が出来るoそうしてその両側に膜の成分が堆積するロ天然色印画紙は,第 10
図のよ5
にその乳化剤層は各感光剤により層状に作製されたものであるから,図形生成の位置 (図形は上層,中間層,下層のどの層に生成されるかと云うこと〕及び乳化剤の種類が及ぼす影響 等を調べる意味で,図形の生成と印画紙処理方法との関係について考察したo本印画紙は多層乳剤 内式発色印画紙であるから,次の様な実験を行ったo有機質面
i
こ沿っての線条図形並びにその性質 (第2報) 5 9
( 1 ) 主露光のみによる線条図形 の生成
(2) 発色現像処理による線条図 形の変化
(3) 停止定着液浸漬後の図形の 変化
(4) 漂白後の図形の変化 (5) 硬膜波及び定着液浸漬後の
図形の変化
(6) 未感光印画紙の定着液浸漬 後,電圧印加時の図形の有無
生印画紙 1 現像処理後の印画紙
制乳剤+貧困宥→ f?jjjjJ7//7PJJjJ~ノ』ー黄色
線感乳剤ー-~7TTTT/7ZZil///L///// /キー 7 -t'ンタ画像 赤 感 乳 剤 ー 占 ん ' l////γん 日(///h心仏
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.r‑... ‑r‑.."全ー原紙‑ ‑ ‑‑‑1 句‑‑.
. 、 . ,
第
10図
(7) 未感光印画紙現像虎理後,電圧印加時の図形生成の有無 (8) 未感光印画紙漂白液浸漬後,電圧印加時の線条図形の状況
初め印画紙に図形生成後,直ちに現像処理を行
5
と緑変し,次いで緑灰色になるが,図形の存 在は認められる白次に停止停着液に入れると茶褐色に変ずるが,尚図形の存在はわかるo更に清浄 液に入れ取出して,漂白液に浸漬する。印画紙は黒褐色で,線条は緑檀色を呈する。それを硬膜液 に入れ,定着液に浸すと黒青色と変色し,線条は青色,焼けは栓褐色であった。尚試料を図形生成 後直ちに停止定着液に入れると黄変するが,その存在は認められるo 又図形生成後直ちに漂白液に 入れた場合は,存在は認められるが,色彩は余り変化がなく幾分薄れるように感じられた。(青白 色地である。)更に文図形生成後直ちに定着液に入れると黄白色に転ずるが,線条はみとめられ黄 褐色になるo即ち青白色の綜条が檀褐色となるo現像液に初めより浸潰し,黄褐黒色に変色した印 画紙に電圧を印加すると,絶縁抵抗が極めて低いと図形は生成されず,電圧印加により,蒸気発生 し,時閣の経過と共に線条の延びの如く外側に向って放散されるロ即ち乾燥の模様は判るが図形は 生成されない。絶縁抵抗が大になり,弧光状火花にて生成されるようになると黄黒色地に茶褐色の 線条が生成されるo初めより停止定着液に入れた時は淡青色であるが,電圧印加による焼けは盛り 上って炭化し易く,線条も生成されるものの如く思われる。漂白液に浸すと黄色になるが,図形も 生成される白この場合,更に露光すれば,紙面は青色となり,これより紫色味をます。又単一ブイ ノレターを用い単色光を照射し,それによる図形についても観察した。以上により得られた結果につ いて考察すると,図形生成には,乳化剤層の各層が関係していて,単独の層のみに生ずるものとは 考えられない。従って各種感光乳剤即ち青,緑,赤感乳剤,黄カップラー,マゼYタカップラー,Vアジカップラ一等の単独の影響も認められないように思われる。文保護摸層及び原紙等に生成さ れるのではない事は,普通の印画紙の場合と同様にして表面にきずをつけたり,膜面剥離状謹の観 察等より確かめたD
一般にこれ等の椋,条図形は現像波及び定着液に浸した印画紙の場合でも生成されるが,更に印 画紙の膜面を化学的に処理した場合に線条図形の影響を見る為に硝酸銀,アンモニア性硝酸銀,タ ングステシ酸銀,モリデン酸銀水器液等の
1%
位の溶液に浸潰して調べた。このように銀表面を鑑 体にすると増感作用も増大するが,又線条図形も同様に形成される。更に苛性ソーダと瑚酸よりな る溶液, ブエニノレヒドラヂY3/200水溶液, ヒドロキV Y, メチノレアミン, エチノレアミ Y等に於て も現われる。硫酸 (30妬)で処理しても図形は同様に形成されるo (但し処理時聞は数時間)又補 力液{(水,昇乗〈漂白〉臭化カリクム) (水,塩酸,重クロム酸カリワム(漂白)) (水,硝酸鉛,赤血塩)},減力液(水
1%KMn04'
稀硫酸)等更に調色液(チオ硫護ナトリウム,温水) (穆酸カ リウム,硫酸鋼液,赤血塩,酢酸,水〉等中に浸潰しても図形の発生には変化はない。又ゼラチン60 福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第 卜2
号
には多少不純物として,ケラチシ,コy ドリンの如き蛋白が含まれているが,これ等を大別すると 含硫増感剤,還元増感剤,抑制剤となるo これ等個々別々のものについて線条図形に対する影響を 考察中であるが,その効果はあまりないよ
5
に思われる。その他可溶性ハログジ塩乳剤層,パライタ層属中の不純分の影響及びその含有量の効果等に就いて目下研究中であるo次に光化学反応の量 子効果を低下せしめる為に減感色素を前浴法により使用して見た。すなわちピナクリプトーノレ,グ リーシを例にとれば, 1/5000水溶液として暗黒中にて3‑‑6分浸し 2分間水洗し,これに線条図 形を生成せしめたが,その影響は余り明瞭ではなかった白
(3
・
4) 各種写真効果存在時の線条図形以上の請実験に於ては,光により感光した印画紙に電圧を印加し,線条図形を形成させたが,
ここでは薬品又は物質によって潜像を生ぜしめた場合について,線条発生の有無を調べて見た。一 般には,ハロゲシ化銀粒子にこのよ
5
な影響を与える物質としては還元性薬品があり,過酸化水 素,第一E
枇酸ナトリワム NaH2AS03塩化第一錫 Snc12‑2H20等で,これにて感光した場合にて も図形は生成される。次に新しく切断した金属の面,藁,木材等種々の物質の一群にても感光し,この場合も形成される。(この現象は或る種の物質が空気をオゾン化し,これが分解する時に紫外 線を発するとか,又は光線を蓄光して,盤光を発し,長い時間放置する事により感光すると考えて いる。〕次に火花放電,
X
線等で印画紙を照射するか又は爵断力を加えると,最初の強い光で潜像 が出来且つ内部潜像が出来易い。(すなわちクライデン効果の存在する時)この場合の印画紙に電圧 を印加した時の線条図形は(火花放電にて感光させた場合〉あまり明瞭ではなかったが発生する白 更にサパチエ効果の影響を調べて見た。すなわち感光させた印画紙に電圧を印加し,線条図形を生成させて,現像を始め後画面に拡散光を与えて,更に現像をつづけ完全に黒色化する前に引場げた が,線条図形は反転せずナパチエ効果の影響を受けない事がわかった。アノレパート効果について調 べる為,マグネ
V
ウム閃光を当てクロム酸+硫酸に浸潰して反転の効果を調べたが,この場合も影 響はなかった。次にベクレノレ効果に関して実験を行ったoこの現象はハロゲン化銀結品が青色光を吸収するこ とによって潜像ができると結品構造に歪が出来,固有吸収が長波長に延び且つ
F
中心が新たに長波 長光を吸収して更に安定な潜像になるものと考えられるが,この場合黄色又は赤色光にて曝した り,赤色光にて追露光を与え,その後水銀蒸気で現像したりしたが,特異な変化は認められなかっ た白以上よりわかる如く線条図形の生成は光学的のものではなく電気的若しくは熱的に或ひはそれ に付随して生成されるものである事がわかるo(3
・
5) 極性効果,紙面の幾何学的配置,電極形状,電極配置等の影響極性効果は殆んど認められなかった。電極形状による影響についてのべると,針電極の場合,
正極の角度を一定に保ち,負極の角度を変えると,第11図のように延びは僅かに増大する" (絶縁 抵抗は角度と共に滅少し,延びはこれによって変化すると思われる。〉両電極尖端の角度を同一に 保った時の線条は諸性質をギャップ長をパラメータとして描くと,第12図のよ
5
になる。この結果 から電極角度が大なる程,電界が平等になる程延びが大きくなることがわかるo次に線条図形が電 位の傾きの影響を受ける状況を詳しく知る為に印画紙を水平面より順次傾けて調べた白上部電極付 近の線条は下部電極付近のそれより不明瞭で,延びの方向を変じ,下部に向う傾向を有する。すな わち偏向するロこの時の両電極付近の延び等を水平面よりの紙面の傾斜角度に対して描くと,第13 図の如くなる。又電極軸を軸として回転させた時の諸特性を示すと,第14図のようになるoこの場 合は電極軸より上部の拡りは下部の拡りより大になるo 電極軸の水平面よりの傾き及び電極軸のな す角と図形の性質との関係は第16図及び第17図むよ5
になるo印加電圧繰返し時に空白部の生ずる事は,前報告(1)等に於て述べた。ここでは,この特異現象
61
( 第
2報)有 機 1 1 而i 乙沿っての線条図形並びにその性質
30
線条数︿本﹀
ω
線 条 の
延 び (mm)
別
︒
ーR =却 M Q‑cm
ガ ス ラ イ ト 紙(F‑4)d=10 m m 10股Vconst
@ 極 的 。const 10
140 160 180 2(陥
。
@紐の電極角度(勺
図
120
11
H削
第
60 80 40
。
20線
2 . 0 *
条3
線条数A本}
30
20 30
線 条 の 娃 び (mm)
20
1.0 10
ー
巾。 』
10
d==¥!)mm
lOKV
。
o
1
1却 創 的
。
両電極角度ぐ) 160
140
図
120
12
第
1刷3 80 4白 60
2()
。
62
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
9巻 第 ト
2号
ガスライ}印画紙 (F‑3)d=15mm 7KV 1.<l‑1.8mA 8 K V 2.2‑2.4 m A
2.2‑24 m A
勺以内
J h‑
FE E)
制QもきQ
浸盟 副官 官い
﹂
180
水平面より
ω
傾 斜 角 度 ド )第
13図
以】
、 、 ¥
¥1 " "ー一一ち 11111\ )~一
tfスライト印画紙 (F‑4) 5 KV const 2 m A d=IOmm
印画紙軸に直角方向に傾斜
き
線 4() 拡り (mm)
30
10
什叶 司副 圃剛 筒票 前
δ
都 品 川 博W S附 ハ
M甘 } A E a a T
。
。
l伺 1初印画紙傾斜角度ぐ〕
第
14図
63 (第2報)
有機質面に沿っての線条図形並びにその性質
d=15mm 30 7KV1.8mA ガスライト司1酒 紙 (F‑3)
3D
20
FA2H
﹃ = ‑
10 20
(E EV
﹄l司
。
市
a︐目 ︑ 町
.8
4 数
(本〉
20
10 30
図
ガスヲイ F紙(F‑2)
れ
16
d=lOrnrn
節
o 2020 伸 び (mm)
2
。
。
180 10n 沼 14¥) 160
官量僑咽!げIJI.旦 ぐJ
17
図 第
80 40 政}
20
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第 ト2
号
64
d=lOmm 6.=a‑b
d=15mm d‑‑20mm 7KV d=lOmm 7KV
7KV
O
メ
•
Hス ラ イ ト 紙 (F‑4) l¥ ¥11 ({fI 皐
i i
,
j( jlll)t叶a '1 (11' ¥ ~i I T 伸び 門
a s v
x
20 24 16
休止時間(sec)
図
12
18
第
。
8ガ ス ラ イ ト 紙 (F‑4)
d=10mm
l~
u v vh
o i
‑ →
hl10 9KV
v
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小﹄
tt 1I EE 10 30
線 条 の 仲 び
F、園
ヨ
ヨ
'‑"
241
10
s
休止時間〈隅〉
4‑
19 図
第
o 2有機質面に沿っての線条図形並びにその性質
(第2報) 65/
ガスライト紙4 (F‑4)伸 の ひ
d:==20mm 7KV
F
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糠 20 条
。〉
数 [本〕
̲ ‑ 官 司 、 。 0 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 0 、 、 、 、
210
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hu︑ ︑︑ ︑︑ ︑
。
2 3 4 5 6 印加回数(n)第
20・1図ガステイ}紙(F‑4) d= 20mm 7 K V
‑( l
O 4 5
印加回数 (n)
第
20・2図
66
線条の巾
¥mm)
加
仲 ひ (mm)
20
10
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第 卜2号
ガ ス ラ イ ト 紙(F‑4)
d=20mm 7 K V
。
4印加回数 (n)
第
20・3図3
ガスライ F紙 (F‑4)
d=lOm m 3回
。
!o 20電IF (K¥')
第
21図
40
伸 び (mm)
却
2(1
10
()
線数条
: w
Emfz
仲EbJF》10
10
。
有機質面に沿っての線条図形並びにその性質
(第2報)ロ
。
ガスライト紙 (F‑4)
d=lOm m
10
第
22図d / J
: t I i
品
? ぷ ぴ
応 d
第 2 3 図
20 電 圧 (KV)
10
ガ ス ラ イ │ 紙(f‑4) d=!Omm tt止i時間If:!s叫
メイ 7
電 圧 (KVl
67
6 8
線$:
(')旬、
伸 v' (mm)
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第 卜2号
4(}
20
れグ γ1 j~?jr降下
ガスライトf:J1[占IjKJ'.(1'‑4) d=lOm m
10
7‑.'i‑7 KV ....
7‑5‑7 KV
40
線 条
gm
の (mm)z o
向リー
o 2 4 10
H‑;l:11守l詰J(珂c)
第
24・1図11
→ l ‑
5KV 回。
第
24・2図
5 10 KV
続 条 の 延 び
40
(mm) 30
20
10
。
30
伸 ひ (mm)
20
10
。
有機質面
iこ沿っての線条図形並びにその性質 ( 第
2報)可 変 休 止 時 間
a d
‑5‑7‑5‑7
ー /
4
2 3
6 s 10 12
休止時間(secI
~5 25・1図
Hス ラ イ ト 紙 (F‑4) d=lO m m
5 6
第
25・2図休止時間atrandom 7 KV const
8 10 休止時間(5ec)
69
70
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
g巻 第 卜 2 号
について少し定量的に調べて見た。この場合の休止時間と図形の延び等との関係を描くと,第18図 のよ
5
になる。これは又印加電圧及び間隙長にても影響を受け,第四図のように表わされる。次に 繰返し回数を増加させると諸性質は第20図等のようにかわる。印加回数を増大する時順次電圧を種 々変更した時,線条の諸性質がどう変るかを示すと,第21図のよ5
に延びの尖端は略々直線的に増ガAライ}紙 (Fーの
7KV
1 ペオんぺー
40
@‑=
品戸@
d=lOmm
10
。
10 ]2休止時間(sec}
第
26図
大する事がわかった。(但し本図の場合は繰返し回毎の印加電圧波高値は大になるよ
5
にとったo小なるよ
5
にとった時の一例は第2 2
図の如くであるo)更に上昇,下降の繰返しを行わなくて上昇 のみの場合であるが,途中僅かの休止時聞を取る場合について測定した。この時は空白部を生じな かったが休止時聞を1jg秒にとり印加電圧を一方的に上昇させた時は,印加電圧値に対する線条諸 性質との関係は第23図のようになる。各回毎の電圧値を変化させて上昇,下降上昇……を繰返した 時の諸性質は,第24.1・2図の如くなるo休止時聞を変えて求めた時の関係もここに示す(第25.1・2)。更に印加電圧及び休止時聞を共に変化させた時の関係を表わすと,第26図等のようになる c
(3
・
6) 膜面上に於ける液滴及び液膜の影響KCl等の電解液を印画紙面上に薄く塗布した場合は, (D.C 印加)娘条図形の生成と共に大体 高圧側が焼け始めやすく,黒い樹枝状のやけとなる。後者は電解液の影響によるものと考えられ るo然して線条図形を挟んで,焼損が起りやすい。それよりさき,線条図形が明瞭に現れる前に‑
E
電圧を切断した場合は,液の下部にうすく線条図形の初期のものを認める事が出来るが,これは 液と印画紙表面の境界に沿って出来ているよ5
である。再びそれに電圧をかけると,それが増大し て進展するo電極聞にメチーノレオレンヂの薄膜を作り電圧を印加する時は, (Fe電 極 使 用 ) 汽 泡 が 陽極より発し陰極に到達し,陰極には,かすのよ5
なものが周囲へ付着するo メチーノレオレシヂと71 (第2報)
有機質面に沿っての線条図形並びにその性質
ブエノーノレブタレンとの混合液を膜面に付着する時は,陰極では周囲は少し赤色になり焦げやす い。陽極は赤変する。プエノーノレブタt/yのみを陽極付近に塗付する時は変色は起らず,一きょに 弧光状火花に進展するo(変色するよりも早く,線条図形は生成されている
J
両電極聞にブエノー ノレプタレシの液滴をおく時は,線条図形は水滴の時と同様に二分されるが,液滴の周辺には変色は 起らない。更にD.C.又 はA.C.印加の場合,下部支持ガラス板は,殆んど電極軸上中央部付近に 於て,日各t等電位線方向に割れるo これは線条図形の温度上昇と関係があるものと考えられる。こ れに関しては前報告(1)に述べた湿潤紙面上の焼けの場合のようにイオンの分布に関係する温度分布 又は本号別稿(2)の如き温度分布が原因しているよ5
に思われる。次に両電極聞に導体箔(アノレミニワム箔を使用〉の存在する場合は線条図形は二分されるが,
この場合は水滴等の存在する時と殆んど同様であるo又この箔を紙面の上部に貼付する時も,下部 に付着した時も差異は見られず,更に印画紙に箔を付着し,数枚重ねた時は箔の貼付個所及びそれ に対応する印画紙の個所には図形は現れず,又各段の印画紙では,線条の延びは少し相違するo こ れはさらに印画紙の配置が接地側か,或は高圧側かにより異なるo これは何れも電位分布及び電流 分布の影響であろうo
(3
・ 7 )
線条図形と印加波形以上印加波形としては直流を用いたが比較の為に印加電圧波形として衝撃波を用いて行った場
d=9‑‑
l O
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F
︐ ︐
︑ ︐
線 条 の10 f申 ひ (mm)
クロロブロマイド紙 インノ勺レス(lx40μs) タ ッ プ1/2
P; 7595mmHg T; 21 oc
R.H. : 8296 8
6
4
12 d (mm) 10
8
凶
6
第.
27 22
o
7 2
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第9巻 第1・2号
線 条 の10 仲 ひ (mm)
クロロブロマイド紙 d=5‑‑‑8mm P: 7日,OmmHg
T: 21 oc
RH. :78%
8
6
5η}/勾
'0 2 波頭長(μs)
第
28図m m 0
' '
向 司 マ ヨ
︐d
•
一二
一
'α
EL﹄F pb
︑)
線条@伸びm
︐ ︐ . ︑
ガスライト*A(F‑4)
4ト P:760mmHg
T: 200C R. H. : 78;;ぢ
3
2
。
0.25 0.5μF. c
(μF)第 m
図有機質而ri沿っての線条閣形並びにその性質 (第2報) 73
合に於てはF 図形は真直に延び 2‑‑‑3段に重畳されたような図形が生成される(第27図)。しかし 雷撃波の場合は図形は極めて
5
すく特に注意して空隙長を少くして測定しないと特性を知ることが 困難であるD このことは特異図形がエネノレギーに関係あることを明かに示しているo これに対応し て電流波形を示すと,波形に凹みを生じ,こり山の数と図形の段とが対応し,電流に関係するのが わかるo ギャップ長と線条の延びとの関係も同図の如くで,印加披の波頭長を変化した時の延びと の関係は第28図等に示される通りであるo更に電源回路の平滑用コyデyナーCを可変にした時,Cと延びとの関係は第29図等に示すよ
5
に略々直線的に増大するo交流 (60‑‑‑)印加の場合は,直 流の場合と殆んど同様であるが後者に比べて幾分不明瞭であるo7.7MCの高周波電圧も印加して 見たがこの時はその熱の為,急搬に紙面の絶穣抵抗が増大し,且つ焼損する為に図形の生成を確か めることができなかった口(しかしゼラチシ塗布のガラス板上では同様に図形の生成を認め5
る。〕 高周波パノレスについての図形の諸性質についても日下研究中である。5 . 結 言
以上,各章に於て得られたような実験結果の一部を挙げその各Eについて簡単に説明を加えた が図形生成の要因並びに機構及びその具体的経過々程については更に研究を要し次報以下に譲らざ るを得なかったoその他本稿以外の諸性質も撞々に見出されているので広範な解明はこれ等の報告 が終り次第取まとめて行う予定で,本報ではただそれらの諸性質の簡単な説明とその列挙に止まっ た。
終りに本研究に対し'市に御指導下さった名古屋大学工学部篠原卯吉教授に対し厚く御礼申上げ る次第であるo
文 献
( 1 ) 池