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現代天文学史

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Academic year: 2021

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226 天文月報 20163月 書評      

読み物

お 薦め度

201512月初旬に刊行された本書を手にして まず驚いた.総計634頁プラス付図2葉という大 冊なのである.ここ200年にわたる天体物理学の 発展が詳しく述べられている.もともと「天文教 育」20091月号から20129月号まで23回を かけて連載された「恒星天文学の源流」という記 事が基になっていて,大幅に拡張されている.内 容は第1部天体分光学,第2部星の構造と進化 論,第3部銀河天文学と宇宙論,そして第4部現 代天文学へでは可視光以外の観測結果,高エネル ギー天文学の序論が述べられている.難解な数式 はほとんどなく非常に読みやすい.扱われた天文 学的な内容は通常の教科書に載っている事項が多 いが,構成が人物中心になっているという点が大 きな特徴である.その点が読者を楽しませてくれ る一冊になっている大きな要因である.

例えば,19世紀末から20世紀初頭にハーバー ド大学天文台長であったピッカリングは多くの女 性を助手として雇い,後にその中から天文学史上 に名を残した女性天文学者を何人も輩出したこと は広く知られている(本書にも4人登場する).

ところが,ピッカリングが女性を多く雇った理由 の一部は,当時の賃金の男女格差が大きかったこ とにあった.このような社会の歴史の一面が普通 の天文学教科書に書かれることはまずない.天文 学史上に重要な業績をあげた人物(フラウンホー ファーから始まって90人以上)を取り上げ,ま ずその人の生い立ち,受けた教育,研究や社会的 活動などが簡潔にまとめられている.しかも人物 ごとに肖像画(または肖像写真)が載せてある.

この部分から時代と人物像が鮮明に浮かび上がっ

てくる.

次に主な研究の内容が解説されているが,前段 の内容と合わせるとその研究の歴史的な意義がお のずと理解できるように書かれている.人物ごと の評伝や主たる論文の文献表が巻末にあって,こ れが何と! 全42ページにもわたっている.そ の中には19世紀の出版物多数も含まれ,ネット 上で検索して読める物が多い.初めて目にする文 献が多く,これにはまると横道にそれてしまう が,これぞ正に読書の醍醐味と感じるのはおそら く筆者らだけではなかろう.文献情報と合わせて 資料蒐集と原稿作成に費やした労力,さらには校 正の作業をやり遂げた精神の集中力を考えると驚 きを禁じえない.著者の年齢(1926年生れ)を 思うとなおさらである.

この本は教科書で得た知識をより深く理解する うえで役立つ.例えばHR図(ヘルツシュプルン グ‒ラッセル図)は天文学を学ぶうえで必須の項 目であるが,本書を読み進めると19世紀後半に 恒星スペクトルの物理的理解が進み,多数の恒星 の距離を測定する努力が積み重なって,20世紀 初頭にそれらの成果を組み合わせたHR図が歴史 的な必然として登場したことが理解できる.

天文学研究者や一般の愛好家はもちろん,高校 生や大学生に薦めたい.高校や中学校の理科の先 生には授業のネタ本としてお薦めである.シニア の人には学生時代に学んだ(そして長らく忘れて いた)断片的な知識が本書によってよみがえって くることを保証します.

定金晃三(大阪教育大学)

作花一志(京都情報大学院大学)

現代天文学史

小暮智一 著

京都大学学術出版会 4,900円+税 A5判 642頁

☆☆☆☆☆

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参照

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