シェアする暮らしのデザイン
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(2) 各部屋は狭く、リビングがなく、トイレや浴室以外に、5.4. についてルールが必要になり、居住者たちが後からルールを設. 畳のダイニングキッチンがシェアできる空間です。実際に昔の. けました。一緒にシェア生活をするためには、小さな共通認識. 住宅は、個室間の仕切りは襖の場合が多く、音が響くために、. が必要になるとのことです。入居前に専門家たちがルールを決. 特に日本の住宅はシェアハウスに向いていないと言われていま. めて指示することではなく、住人たちの意思を尊重し、自らで. す。この事例の場合も、二つの部屋が襖で仕切られていたため、. 決めていくことが、とても大事です。. 音は課題でした。また、使用後に大家さんとは現状復帰が条件. 各部屋への評価では、入居前に一番入りたい人が多かった玄. だったので、大家側と LLP 側が負担するリフォームの内容を分. 関横の部屋について、3人の方の満足度が「満足」 、 「不満足」 、. 離して、それぞれ行いました。シェア住戸はリフォームしてか ら、このように生まれ変わりました(図3) 。. 「とても満足」とそれぞれ異なって、私もこれはびっくりでし た。不満足と答えた人からは、 「以前の部屋は、台所も近くふ. この事例は、日本での最初の試みだったので、社会的に大変. れあいがあったのが、この部屋は個室で独立しているので、皆. 注目を集めました。シェアする住まいが団地の中で普及できる. さんと顔合わせる事もできなくなった。自分がすごく孤立して. か、まず始めに、女子学生3人を選びシェアをスタートし、家. いるような感じがする。 」と語りました。暮らしに対する評価. 賃は市場より安くしました。その代わりに、毎月研究室で行わ. は、データなどの数値や推測だけではなく、実体験も重要で、. れる居住者ミーティングに参加し、夏祭りなどの団地活動には. これはデザインをする際に、考慮しなければいけないところだ. 必ず参加し協力することを義務付けました。また、4ヶ月毎に. なと思います。. 部屋のローテーションを行い、各居住者の同部屋に対する使わ れ方や満足度などの調査に協力してもらいました。 例えば玄関周りでは、女性3人で靴を何足も持っているので、. ここの部屋は、実は北側の部屋とふすま1枚で隔てています。 居住者から、最初の1ヶ月は音と光が気になるという話を聞か れました。この写真ですが、ここにクローゼットを置いただけ. 一緒に使うのには狭いとの意見が多くでました(図4) 。次に. で、音などの問題もなくなり、さらに収納が増えて大満足とい. シェアのルールについては、ほぼない状況でスタートしました。. うことになりました。この部屋は満足の方が多かったですが、. 実際に生活しているうちに、台所や水回りのハウスキーピング. 台所に面しているので、他居住者の気配や物音に慣れるまで大 変だったとの意見もありました。プライバシーを保てるために、 各室の入口に鍵を設置しました。しかしこの部屋は、独立性は 確かに他の2部屋と比較すると低いですが、寝ている時以外は 大体開けっ放し状態でした。台所が目の前にあったので、自炊 をする回数が増えたと評価し、逆に自分の部屋の延長として使 うということでした(図5) 。 各部屋における暮らし易さの評価は、居住者全員が共通して その部屋ごとに生活スタイルが異なっていることがわかりまし た。またシェアでの暮らしに慣れてきた頃には、居住者に安心 感を与えてくれて、気になるどころか共用空間で同居人と話す. 図3 シェア住戸のリフォーム前・後. 図4 共用空間への評価. 図5 各部屋への評価. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 13.
(3) ことをとても楽しむ様子がうかがえました。空間をデザインす. に同行したりするなど、活発に交流が行われ、お互いに知るこ. る際には、共用空間との隣接、居住者との交流頻度、独立性な. とが、とても大切なことだとわかりました。. どの要素が重要であることがわかりました。さらに、部屋の使. 対象地を検討し、居住者ニーズなどを把握するために、ワー. 用者の心理的な状況によって入居前・後の住みたい部屋の評価. クショップを開催しました(図6) 。毎回ワークショップが始. に影響を与えることから、これらの要素も考慮すべきだと思い. まる前に、A 君が、朝起きて何をします、何ができますなど、. ます。. 一日の行動の紹介を説明しました。しかし、なかなか入居希望. 私たちは独立した部屋の家賃を高く設定しようと思いました. 者が集らず、ホームヘルパーの不足で事業所からヘルパーの派. が、今回の居住実験後、 【居住者の住まいへの価値と評価】を. 遣ができないなどのこともあって、プロジェクトは中止になり. 家賃差額に反映させました。10年前にカナダのコーポラティ. ました。. ブハウスの調査をしたときに、建物の築年数や立地条件ではな. しかし、その2年後の2012年2月に、チャンスが訪れ、佐. く、住まいのコミュニティ価値を住居費に上乗せていることを. 倉市で実現することができました。この写真は、A 君のお母さ. みて、うらやましくて、いつか日本でも実現したいと考えたこ. んがある時シェアハウスに行った時に驚いて携帯で撮って私に. とを、思い出しました。. 送った写真です。彼が今までやったこともない、みんなの真似. そ の 後、 男 子 学 生 向 け の シ ェ ア ハ ウ ス 住 戸 も 一 つ 増 え、. をしてお皿を洗っているとか、風呂に入って自分できれいにす. 2011年3月まで、約6年間この事業を続けました。男子学生. るとか、バックを準備するとか、お母さんが見たことも無い自. のシェア住戸には、個室間の音漏れ対策として、簡易の防音改. 立心が育っていました。これは施設では得られないとお母さん. 修で襖問題を解消しました。この写真のように、LLP の組合員. はおっしゃっておりました。. である NPO の方のアドバイスを基に、入居者が DIY で音の対. 本日紹介した、これらの実践事例は、様々な分野で大変注目. 策をしました。 居住者がトラブルを起こした場合は、団地住民の「家守(イ エモリ)さん」という方が入ってもらうことによって、居住者 の心強い味方であるとともに、近隣トラブルにも対処して頂き ました。団地シェアの OB・OG は毎年開かれた新旧交流会に 参加して、情報交換を行ったり、団地のお祭り等の行事に参加 したりする等、団地との繋がりが続いています。. 3.実践事例:重度の知的障がい者と健常者のシェアハウス 千葉で、重度の知的障がい者と健常者のシェアハウスを日 本で初めて実現させました。知的障がい者たちを支援してき た NPO の方が、 「様々な人々が混ざり住む暮らし」を紹介した 私の講演を聞いたことがプロジェクトの始まりです。これから 知的障がい者の暮らし方の選択肢を増やすことが主な目的でし. 図6 体験ワークショップのポスター. た。実現に向けて、NPO と大学との定期的な勉強会や会議が 行われました。入居予定の重度の知的障がい者本人と、今後 シェアを希望する他の障がい者たちも一緒に参加して勉強会を 行いましたが、会議中にいろんな症状を見せるので会議後、プ ロジェクトにかかわっている学生らから「怖い」ということを 何度も言われました。 NPO の方と話し合って知的障がいの方の暮らしを知っても らえればどうかと、お泊まり会を計画しました。その時、重度 の知的障がいを持つ A 君は、生まれて初めて同年代の若者と 一緒にお風呂に入ったそうです。会後、学生からは「普通でし た」と話してくれました。私はあとから知りましたが、お泊り 後、学生たちがボランティアで、重度の障がい者たちの買い物. 14. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 図7 様々な分野で関心が高まる実践事例.
(4) されております。6年前に山形で開かれた全国グループホーム 学会全国大会で基調講演をしたのですが、200人くらいの来場 者がありました。今年も7月に京都で基調講演を行う予定です が、もうすでに700人ぐらい参加申請があり、施設以外の新た な住まいを求めている人が多くいることがわかりました。 ご清聴ありがとうございました。 【参考文献】 1)丁 志映ほか: 「若者たちに「住まい」を!─格差社会の 住宅問題」岩波書店,岩波ブックレット No.744,2008 2)丁 志映ほか: 「現代集合住宅のリ・デザイン─事例で読 む[ひと・時間・空間]の計画」彰国社,2010 3) 丁 志 映 ほ か: 「 フ ィ ー ル ド に 出 か け よ う!」 風 響 社, 2012 4)丁 志映ほか: 「私たちの住まいと生活」彰国社,2013. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 15.
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