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女子大学生における援助要請スタイル別の心理的特性

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-91 478

-女子大学生における援助要請スタイル別の心理的特性

○石村 彩佳1)、石原 金由2)、東條 光彦1) 1 )岡山大学大学院社会文化科学研究科、 2 )ノートルダム清心女子大学人間生活学部 目的 悩みを相談できない人を援助するためには、身近な 人が悩みを相談できない人を見つけ出し、その人の相 談できない理由を理解することが必要である。永井 (2013)は、困難を抱えても自身での問題解決を試み、 どうしても解決が困難な場合に援助要請を行う「援助 要請自立型」、困難を抱えた際に、十分な自助努力を 行わずに安易に援助要請を行う「援助要請過剰型」、 困難な問題を抱えても、一貫して援助要請を回避する 「援助要請回避型」、という 3 つの援助要請スタイルを 測定する尺度を作成している。この尺度から測定され た「援助要請回避型」の中に、「相談意図のない者」 と「相談意図はあるがしない者」の 2 群が混在してい ると考えられる。 本研究は、女子大学生の援助要請スタイル別に、家 族や友人へ悩みを相談することの利益やコストの予測 に違いが見られるか、また家族や友人への自己表明に 違いが見られるかについて検討する。さらに、「相談 意図のない者」と「相談意図はあるがしない者」とを 区別できるか検討する。 方法 【対象】女子大学生211名(平均年齢18.97歳、SD= 1.08) 【質問紙の構成】 1 . 永井(2013)による援助要請スタイル尺度( 3 因子16項目 7 件法) 2 . 永井・新井(2008)による相談行動の利益とコ スト尺度改訂版( 6 因子26項目 5 件法) 3 . 柴橋(2001)による友人関係における自己表明 尺度( 4 因子12項目 4 件法)※本研究の目的に合 うように、必要に応じて質問項目を抜粋・変更し た。 【倫理的配慮】 質問紙調査の実施前に調査対象者に対して、 1 )調 査への協力は回答者の自由意思であり、同意が得られ なくても何ら不利益を受ける事はないこと、 2 )得ら れた情報は、今回の調査目的以外には使用しないこ と、 3 )個人が特定されることはなく、データ入力の 際はコード化し、匿名性の確保に十分注意すること、 の 3 つを説明し、質問紙への回答をもって調査協力へ の同意が得られたと判断した。 結果 援助要請スタイル尺度の因子得点を用いてクラス ター分析を行い、援助要請スタイルを援助要請を過剰 に行う「援助要請過剰群」(以下過剰群)、援助要請を 回避する「援助要請回避群」(以下回避群)、援助要請 を自立的に行う「援助要請自立群」(以下自立群)、援 助要請を過剰にも自立的にも回避的にも行わず最も人 数が多い「援助要請標準群」(以下標準群)の 4 つに 分類した。そして 4 つの援助要請スタイル別に家族や 友人へ悩みを相談することの利益・コストの予測また は自己表明に違いが見られるか検討した(Table 1, 2)。その結果、過剰群は、相談実行の利益や相談回避 のコストを予測する傾向が高く、相談実行のコストや 相談回避の利益を予測する傾向が低く、不満・要求、 断りの表明をする傾向が高かった。自立群は、相談実 行の利益、相談回避のコスト、相談実行のコスト、相 談回避の利益のいずれも予測する傾向が高く、意見や 不満・要求の表明をする傾向は中程度であり、断りの 表明をする傾向は低かった。回避群は、相談実行の利 益や相談回避のコストを予測する傾向が低く、相談実 行のコストや相談回避の利益を予測する傾向は高く、 意見や不満・要求、断りの表明をする傾向は低かっ た。標準群は、相談実行の利益や相談回避のコスト、 相談回避の利益を予測する傾向がやや高く、相談実行 のコストを予測する傾向は低く、不満・要求、断りの 表明をする傾向が高かった。次に、相談行動の利益・ コストと自己表明から、回避群を「相談意図のない者」 と「相談意図はあるがしない者」の 2 群に分類できる かを検討するため、回避群が他の群との有意差が認め られなかった 2 因子を除いた相談行動の利益・コスト と自己表明の計 8 つの下位尺度の因子得点を用いてク ラスター分析を行い 2 群に分類した。ポジティブな結 果因子においてはクラスター 1 の方が傾向が高く、自 己評価の低下と自助努力による充実感においてはクラ スター 2 の方が傾向が高かった。したがってクラス ター 1 を「相談意図はあるがしない群」、クラスター 2 を「相談意図のない群」とした。 考察 各援助要請スタイルの特性 過剰群は家族や友人に何でも自身のことを表明し、 悩んだ時には「一人で悩んでいても悩みを引きずって しまう」「相談することによって悩みの解決法がわ かったり良い意見やアドバイスがもらえたりする」と 予測したりすることによって、家族や友人に過剰に援 助要請する傾向にあると考えられる。回避群は家族や

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-91 479 -友人にあまり自身のことを表明せず、悩んだ時には 「相談すると、相談相手から嫌なこと言われたり真剣 に話を聞いてもらえなかったりする」「相談すると、 自分を弱い人間のように感じてしまうし自分の弱い面 を相手に知られてしまう」と予測すると同時に、「相 談するよりも自分一人で解決する方が自分のためにな る」と予測することによって、家族や友人への援助要 請を回避する傾向にあると考えられる。自立群は家族 や友人に自身のことを表明したりしなかったりし、悩 んだ時には、まず回避群と同様に家族や友人に援助要 請をすることを回避する。しかしどうしても自力で悩 みを解決することができなかった場合には、過剰群と 同様に家族や友人に援助要請する傾向にあると考えら れる。標準群は家族や友人に何でも自身のことを表明 し、悩んだ時にも家族や友人に援助要請しやすいと思 われる。悩んだ時には「相談するよりも自分一人で解 決する方が自分のためになる」と予測する一方で、「一 人で悩んでいても悩みを引きずってしまうし余計悪く なってしまう」「相談することによって悩みの解決法 がわかったり良い意見やアドバイスがもらえたりす る」と予測する。よって今後妥当性の検討が必要であ るが、標準群は、“抱えた悩みの程度や悩みの種類、 あるいは相談相手等によって、臨機応変に家族や友人 に援助要請を行うことができる一般的な群”と考える ことができるだろう。 「相談意図のない者」と「相談意図はあるがしない 者」の分類 「相談意図のない群」は、相談するとポジティブな 結果が得られるとは思っておらず、相談すると自分の 評価が下がってしまうと思っている。また自分一人で 頑張ることに意味があると思っているため、援助要請 を回避すると考えられる。しかし「相談意図はあるが しない群」は、相談するとポジティブな結果が得られ、 相談しないと悩みが未解決のまま維持されてしまうと 思っている。また相談することは自分の価値を下げて しまうことであり、自分の弱い面を相談相手に知られ てしまうと思ったり、相談せずに自分一人で解決する 方が自分のためになると思ったりしているわけではな い。よって「相談意図はあるがしない群」は、相談す ることで利益を得ることができると思っている上に、 相談することで不利益を被るとは思っていないながら も、援助要請を回避してしまうと考えられる。しかし 本研究だけでは言い切れないため、今後妥当性の検討 が必要である。

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