2005
年度卒業論文
ミューオンのβ崩壊を用いたニュートリノの質量測定
望月恵一
2005
年
3
月
23
日
目次
目次
1 目的・概要 2 2 理論 2 2.1 Muonについて . . . 2 2.2 Muonのβ崩壊による電子の運動エネルギー . . . 2 2.3 β崩壊での電子のエネルギー分布 . . . 32.4 Muonのlife time . . . 4
3 装置 5 3.1 装置全体 . . . 5 3.2 カロリーメータ . . . 7 4 予備実験 8 4.1 PMTのHVの決定 . . . 8 4.2 NIM回路 . . . 11 4.3 ADC、TDCの校正 . . . 14 5 測定 17 5.1 Muonのlife time . . . 17
5.2 電子のエネルギー分布 . . . 18 6 結果 21 7 まとめ 21 8 謝辞 23 9 付録 24 9.1 カロリーメータの作成 . . . 24 9.2 VETOの作成 . . . 27
1
目的・概要
Muonは質量約106MeVの荷電粒子で弱い相互作用により2.2μsの平均寿命で以下のように三体崩壊 する。 µ−→ ¯ν e+ e−+ νµ (1) µ+→ νe+ e++ ¯νµ (2) このβ崩壊での電子のエネルギー分布を測定しニュートリノの質量=0とした時の電子のエネルギー分布と 比較をし、そのずれからニュートリノの質量を測定する。 また、測定機器の使用方法、回路の組み立て方、解析方法について学ぶ。2
理論
2.1 Muon
について
Muon(μ)は、1937年宇宙線の中に発見された。Muonは電子の次に重い荷電レプトンであり、スピン1/2のフェルミ粒子、静止質量はmµ = 105M eV /c2(電子の質量は0.5MeV)、life timeは2.2μsで電荷が正と
負のものがある。 高エネルギーの一次宇宙線(約90%がproton)が大気と相互作用し、そのエネルギーでµ+、µ−、e+、 e−、γの二次宇宙線となる。 地上に届く宇宙線の約70%がミューオンで残りのほとんどが電子と陽子である。また、ミューオンは地上 では一分間、1cm2あたり一個の割合で観測される。
2.2 Muon
のβ崩壊による電子の運動エネルギー
Muonは1、2のように三体崩壊する。このとき電子の運動エネルギーの最大値を考える。 電子の運動エネルギーは以下の図のように崩壊した時に最大となる。 図1 ミューオンの崩壊 これは、二つのニュートリノが同じ方向に進み、電子の運動量と、二つのニュートリノの運動量の和が同じ 大きさで反対向きになるようなβ崩壊のときである。但し、電子ニュートリノとミューニュートリノの運動量 が同じである必要はない。崩壊後· · ·Pe− Pν = Pµ= 0 よってPe= Pν = P MµC2= p M2 eC4+ Pe2C2+ p M2 νC4+ Pν2C2 (3) ここでPe= Pν= P を用いると MµC2= p M2 eC4+ P2C2+ p M2 νC4+ P2C2 (4) この式を P について解くと P2= C2 4M2 µ ¡ M4 µ+ Me4+ Mν4− 2Mµ2Me2− 2Mν2Me2− 2Mν2Mµ2 ¢ (5) よって電子の運動エネルギーの最大値Tmaxは Tmax= Ee− MeC2= p M2 eC4+ P2C2− MeC2 (6) ここでMµÀ Me, Mνより5式からP2≈ 14C2Mµ2として代入すると Tmax≈ MµC 2 2 = 52.5M eV (7) と近似することができる。但し、ここでは電子の質量(0.5MeV)も無視しているためこの程度しかもとまら ない。 もし、ニュートリノに質量があるときは7式は Tmax= s M2 eC4+ C4 4M2 µ ¡ M4 µ+ Me4+ Mν4− 2Mµ2Me2− 2Mν2Me2− 2Mν2Mµ2 ¢ − MeC2 (8) 大小関係を比べるために式7と式8をそれぞれ二乗して差を取ると (7)2−(8)2= −2M2 eC4− C4 4M2 µ ¡ M4 e + Mν4− 2Mµ2Me2− 2Mν2Me2− 2Mν2Mµ2 ¢ +2MeC2 s M2 eC4+ C2 4M2 µ P2 (9) 式9は正であるのでニュートリノに質量があるとエンドポイントは小さくなる。 これがどのくらいあるのか測定することがこの実験の目的である。
2.3
β崩壊での電子のエネルギー分布
電弱理論により電子のエネルギースペクトルは dΓ dx = G2 µm5µ 96π3 x 2(3 − 2x) 但しx = 2E mµ (10) ∴ dΓdE = G 2 µm5µ4E2 µ 3 − 4E ¶ (11)図2 ベータ崩壊での電子のエネルギー分布 参考文献:素粒子物理学の基礎
このエンドポイントをフィッティングで求めることが今回の目的となる。
2.4 Muon
の
life time
Muonは不安定であり、平均寿命τをもち、崩壊をする。 単位時間当たりに壊れる粒子の割合は等しく微 少時間 dt の間に崩壊する確率をλとすると dN = −λN dt (13) この微分方程式は簡単に解くことができ、初めの粒子数とN (0)とすれば N (t) = N (0)exp(−λt) (14) つまり、t = λ1 のとき粒子の数はもともとの数N (0)の1eに減少する。また、平均寿命(mean life)は平均値 の定理により τ = R0 N (0)R tdN dN = Z ∞ 0 λtexp (−λt) dt = 1 λ (15) となる。 また、Muonは、平均寿命は2000年時点で、τ=2.19703±0.00004(μs)と、測定されて いる。
3
装置
3.1
装置全体
降って来るミューオン、崩壊後の電子ともに電荷と運動エネルギーを持っている。その運動エネルギーを光 に変える物質であるシンチレーターを使いミューオンの崩壊を観測する。 装置は、ミューオンのカロリーメータへの入射及び停止の確認のためのミューオントリガーにシンチレータ 6枚、崩壊させるためのカロリーメータがある。それぞれの、シンチレーターは反応速度の速いプラスチック シンチレーターを使用して作った。 実験装置は以下のものを使って作られている。 • 光電子増倍管(PMT). . .光電効果を用いて、入ってきた光を電子にし、増幅して、光量に比例した電荷 量の出力パルスを出す。 • シンチレータ. . .荷電粒子が通過した際に光を発する物質。今回用いたものは反応時間の早いプラス ティックシンチレータ(波長420nm) • ウェイブレングスシフター(WLS). . .シンチレータからの光(∼420ns)を吸収してPMTに感度がいい 波長(∼500ns)を出す。 • ライトガイド. . .シンチレータ、WLSからの光を出来るだけPMTに導くため光が外に漏れ出さないよ うに屈折率が大きいもので出来ている。 • Petフィルム. . .装置から外に出る光を反射させるために、反射率の高いフィルム。実験装置の外周に 巻いてある。 • 遮光シート. . .装置以外からの外からの光を遮断するためPetフィルムの外側に巻いてある。 • グリス. . .それぞれの部品の接合面に塗られている。空気より屈折率が高いためそれぞれの部品間での 光の移動を助ける。 これらを用いミューオントリガー、カロリーメータ、VETOカウンターを作った。今回用いた実験装置は6枚のシンチレーションカウンターとカロリーメータからなっている。シンチレー ションカウンター2枚のcoincidenceを取ることによりミューオンが来たことを知らせるミューオントリガー を作っている。ミューオントリガーは上からA,B,Cとなっている。そしてカロリーメータからのアナログ 信号をADCに入れることによりカロリーメータで落としたエネルギーを計ることができる。 また、シンチレーションカウンターは以下の図4のようになっている。 図4 シンチレーションカウンター 実際にミューオンが来たか確かめるミューオントリガーは2枚のシンチレーションカウンターを用い、and を取り、2枚の重なった所を同時に通ったときに反応するものを作った。
3.2
カロリーメータ
今回の実験で作ったカロリーメータは厚さ1cmのシンチレータ10層からなっている(図5)。また、両サ イドにはウェイブレングスシフター(WLS)とライトガイドを通してPMTにシンチレータからの光を読ん でいる。 図5 カロリーメータ また、今回作成したカロリーメータの一層一層に釣り糸を下の図6のように張ることによってシンチレータ の間に0.15mmの空気の層を作ることができた。このことによって集光率を上げることが期待される。 図6 シンチレータに張った釣り糸4
予備実験
4.1 PMT
の
HV
の決定
PMTのHVの決定は今回の実験で2枚のシンチレータを同時に通った時の信号を用いるので、片方のHV を固定しもう一方のHVを変化させその二つのcoincidenceをカウントするという方法で行った。 測定はスレッショルドホールドを50mV にして、測定時間100秒で測定を行った。 まず、CH2を2.0KVに固定してCH1のHVを変化させることによって二つのコインシデンスのカウン ト数を記録した。このグラフからCH1のプラトーを2.3KVとした。次にCH1のHVを2.3KVに固定して CH2のHVを変化させ同様に測定した。この二つの測定結果が以下の図8である。 図7 ミューオントリガーAのHVの決定 上の図8からCH1を2.3KV、CH2を2.2KVと決定した。また、同様にしてミューオントリガーのBとCについてもPMTのHVを決定していった。その、結果を以 下の図9と図10に描いた。 ミューオントリガーBの測定では、CH4を2.0KVに固定してCH3のプラトーを2.4KVとした。次にC H3のHVを2.4KVに固定してCH4のプラトーを2.3KVとした。最後にCH4のHVを2.3KVに固定し て測定してCH3のプラトーを2.2KVとした。 図8 ミューオントリガーBのHVの決定 この結果よりCH3を2.2KV、CH4を2.3KVと決定した。
ミューオントリガーCの測定では、CH6を2.0KVに固定してCH5のプラトーを2.4KVとした。次にC H5のHVを2.4KVに固定してCH6のプラトーを2.3KVとした。最後にCH6のHVを2.3KVに固定し て測定してCH5のプラトーを2.2KVとした。 この測定結果から期待されるミューオンの数と異なったためサイドスレッショルドをCH5、6ともに 30mVにし、CH6のHVを2.3KVに固定してCH5のHVカーブを測定した。この結果CH5のプラトー は2.3KVとなった。また、期待される宇宙線の数とも一致した。その測定の結果は以下の図10である。 図9 ミューオントリガーCのHVの決定 この測定の結果よりCH5を2.3KV、CH6を2.3KVと決定した。 また、この測定結果が期待される宇宙線と矛盾しないことをプラトーでのカウント数で確かめた。 それぞれのプラトーでのカウント数は A 1664[count/100sec] B 1679[count/100sec] C 1262[count/100sec] であった。 ミューオントリガーの面積はそれぞれA:1000cm2、B:1000cm2、C:750cm2でHVを決定した。 この面積から100sあたり期待されるカウント数は一分間に期待されるミューオンの数は1個/cm2である ので面積と掛けることで、A:1666個/100secB:1666個/100secC:1240個/100secが期待され、しっかりと宇 宙線が観測されていると判断できる。
4.2 NIM
回路
NIM回路とは、回路設計の規格で、測定器から来るアナログ信号をデジタル信号に変換したり、AND回路 やOR回路のようなモジュールを使い、変換したデジタル信号を処理したりすることが出来る機械である。 4.2.1 スレッショルドカーブ まず、アナログ信号が決めた一定電圧以上(スレッショルドホールド)になった時に決めた幅のデジタル信 号を出力するDISCRIMINATORについて予備実験を行った。 行った予備実験はスレッショルドホールドを変えて行きそのときのカウント数を記録していくというもので ある。これによって描かれるグラフをスレッショルドカーブと言いその結果を以下に描く。 図10 スレッショルドカーブ この結果よりスレッショルドホールドは初め50mVとして校正を行っていった。 このスレッショルドはPMTから来る雑音を取り除き、ミューオンが来たときのみにデジタル信号を出すよ うにすることができる。 スレッショルドホールドについては最終的には通過ミューオンの数が合うか考えて決めた。4.2.2 ディレイカーブ 次に、デジタル信号のCOINCIDENCE回路を理解するために予備実験を行った。 COINCIDENCE回路は二つ以上のアナログ信号が1を出力したときに1を出力するAND回路である。 予備実験で行ったことはスレッショルドホールドを50mV、パルスの幅を20nsとして片方の信号を遅らせ て行きそのときのカウント数を調べた。そのときの結果を以下の図12に示す。 図11 ディレイカーブ この結果より10nsほど重なっていればしっかりとCOINCIDENCEを取れるということが確認できた。回 路を組む際はこの事に注意して作成を行った。
4.2.3 アクシデンタルコインシデンス
次にAccidental Coincidence(偶発同時計数)について考えた。
Accidental CoincidenceとはANDを取る際、偶然に起きた相互に関係の無い信号が同時に計測され、間
違った信号として出力されるときを言う。 CH1∼CH6までのシングル計測数は CH1: 35980[count/100sec] CH2: 10322[count/100sec] CH3: 19586[count/100sec] CH4: 20314[count/100sec] CH5: 19790[count/100sec] CH6: 3059[count/100sec] であった。 パルスの幅は CH1:35ns CH2:45ns CH3:25ns CH4:25ns CH5:33ns CH6:46ns にした。 単位時間当たりのシングル計測数をN1、N2、パルスの幅をW1、W2としたときのAccidental CoincidenceN は N = N1× N2× (W1+ W2) (16) となる。この式よりそれぞれのAccidental Coincidenceは A:NA= 0.0029[count/sec] B:NB = 0.0012[count/sec] C:NC= 0.0048[count/sec] と計算できる。
単位時間に計測された宇宙線は12∼16countであるのでAccidental Coincidenceは非常に小さい。このこ
4.3 ADC
、
TDC
の校正
4.3.1 通過ミューオンのエネルギー分布
ADCとはgate信号とアナログ信号を入れるとgate信号の間に入ったアナログ信号の面積を積分し、その 大きさに比例した整数値を出すというものである。以下の図12に実際用いたgateパルスとアナログ信号を 描く。 図12 通過ミューオンのエネルギー分布測定用パルス このgateパルスは3枚のミューオントリガーに反応があり、かつカロリーメータにも反応があった場合に gateが立つようになっている。 また、実際の測定ではpedestalが見えるように1Hzのクロックパルスとのorを取った。
次に下の図13に実際測定した結果を示す。 tuukamu Entries 20000 Mean 99.93 RMS 61.3 / ndf 2 χ 487.1 / 79 Constant 4657 ± 70.0 MPV 110.9 ± 0.3 Sigma 11.46 ± 0.14 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 0 200 400 600 800 1000 1200 tuukamu Entries 20000 Mean 99.93 RMS 61.3 / ndf 2 χ 487.1 / 79 Constant 4657 ± 70.0 MPV 110.9 ± 0.3 Sigma 11.46 ± 0.14 tuukamu tuukamu Entries 10000 Mean 99.93 RMS 61.3 / ndf 2 χ 1.498e-09 / -1 Constant 3440 ± 472.9 Mean 48.53 ± 0.57 Sigma 2.409 ± 0.467 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 tuukamu Entries 10000 Mean 99.93 RMS 61.3 / ndf 2 χ 1.498e-09 / -1 Constant 3440 ± 472.9 Mean 48.53 ± 0.57 Sigma 2.409 ± 0.467 tuukamu 図13 通過ミューオンのエネルギー分布 通過ミューオンはプラスチックシンチレータ1cmあたり2M eV のエネルギーを落とすので、今回用いたカ ロリーメータでは20M eV のエネルギーを落とす。 実験結果をrootで通過ミューオンをランダウフィッテング、pedestalをガウスフィッテングした結果 pedestalは48.53、通過ミューオンのエネルギーは110.9となったので結果は以下のようになった。 110.9−48.53=62.37· · · 20M eV つまりこの結果より20M eV がADCの値で62に対応することが分かった。 この結果を用いて電子のエネルギー分布のADCの整数値をエネルギーに変える。
4.3.2 TDCの校正
今回ではTDC(Time to Digital Converter)も用いるので、TDCの出す数値と、時間との対応関係を調べ
るため2つの同時出力のパルスを用い片側のパルスを0.5µsづつ遅らせていき、出力がどのように変わってい くのか確認していった。
以下の図14にその結果を描く。
図14 TDCの校正
5
測定
5.1 Muon
の
life time
装置が正常に動いているか確かめるためにミューオンの寿命を測定した。以下の図15にそのとき用いた
stertパルスとstopパルスを描く。このパルスによってカロリーメータ内でミューオンがとまりその後上方の
ミューオントリガー以外に電子が出たときにストップがかかるようになっている。
図15 寿命測定用パルス
5.2
電子のエネルギー分布
以下の図18は実際にオシロスコープを用い電子の崩壊の様子を見たものである。 図17 オシロスコープで見た電子の崩壊 この電子のパルスの大きさをADCで測り、エネルギーの分布を測定する。 ここではgateの幅はミューオンの寿命の長さを考慮に入れ5nsとして測定を行った。 5.2.1 VETOが無い場合 上の図18のgateで電子のエネルギー分布をADCに入れ測定した。以下図18にその測定結果を描く。 elevetonasi Entries 10000 Mean 13.79 RMS 11.32 / ndf 2 χ 40.79 / 25 p0 8.309 ± 1.606 p1 -0.1437 ± 0.0425 0 10 20 30 40 50 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 elevetonasi Entries 10000 Mean 13.79 RMS 11.32 / ndf 2 χ 40.79 / 25 p0 8.309 ± 1.606 p1 -0.1437 ± 0.0425 elevetonasi 図18 電子のエネルギー分布測定結果(VETO無し)5.2.2 VETOがある場合 前ページのグラフ18は期待したエネルギー分布の形にはならなかった。この理由として電子がカロリー メータの外に出たことにより電子の全エネルギーをカロリーメータ内で落とさなかったためであると考えた。 電子が外に出た場合にそのイベントを外すためにカロリーメータ外に以下の図19のようにVETOカウン ターを設置した。横4面とミューオントリガーとして用いていた二枚を入れてカロリーメータの6面を覆うよ うに作った。
電子がカロリーメータ外に出たという判断は6枚のVETOからの信号をTDCに入れgateから5µs(gate の長さ)以内に反応があったかどうかで判断をする。
図19 VETO設置図
以下のグラフ19は先ほどの測定結果からVETOを用いて電子がカロリーメータの外に電子が出た場合の イベントを除いた結果である。
論のような形にはならなかった。 このグラフよりフィッティングの結果グラフのエンドポイントは56.7 ± 4.2[M eV ]となった。 ニュートリノの質量をゼロとしたときのエンドポイントは52.5であるので1σの範囲でニュートリノの質 量は4.2M eV 以下であるということがこの実験から分かった。 また、VETOの効果を見るためにVETO無しの結果からどのくらい値が減ったかを見るために横軸をエネ ルギー縦軸を減った割合にとってグラフ20を描いた。 図21 VETOの効果 このグラフからも低エネルギーが多くVETOで除くことができた事がわかる。
6
結果
今回のVETOを用いた測定結果より、電子のエネルギー分布のエンドポイントは56.7 ± 4.2M eV と測定 することが出来た。 ニュートリノの質量をゼロとしたときの電子のエネルギー分布のエンドポイントは52.5M eV であることか ら、ニュートリノの質量の和は1σ範囲で mµ= 4.2M eV 以下 と測定できた。 また、VETOを使うことにより、電子がカロリーメータ外に出たと考えられるエネルギーの低いイベント をより多く除くことができた。7
まとめ
今回の測定はミューオンのベータ崩壊後の電子を捉えそのエネルギー分布のエンドポイントを測定すること であった。測定の結果から • ミューオンをカロリーメータで停止させ、その後の電子を捉えることが出来た。 • 崩壊後の電子のエネルギー分布をVETOを用いて測定することが出来た。 • その結果ニュートリノの質量の和は1σ範囲でmµ= 4.2M eV 以下と測定できた。 • 電子がカロリーメータ外に出たと思われる低エネルギーのイベントをより多く除くことが出来た。 問題点としてエネルギー分布の形が期待した図4のような形になっていなかったことが上げられる。 この問題を考えるために以下のようにシミュレーションを行っていただいた。 1m×1m×10cmのシンチレータの真ん中に0 GeVのµを置く。その後三体崩壊した後の電子のエネ ルギーを測定した。また、崩壊後の電子のエネルギーをすべて測定するためにシンチレータの両側に 10cm×10cm×1m×の鉛をはさんである。 そのときシンチレータに落ちたエネルギーの分布はシンチレータと鉛に落ちた全エネルギー分布は 図23 すべてに落ちたエネルギー となった。 図22はVETOを入れなかった結果と一致し、図23は理論値に一致する。 このことから、今回用いたカロリーメータでは小さすぎて、高エネルギーの電子はすべてのエネルギーを落 とせずカロリーメータ外に出てしまうということが分かった。 崩壊後の電子のエネルギー分布の形を見るにはもっと大きなカロリーメータが必要だと思われます。 そのほかに • 今回はgateにA ∩ B ∩ ¯C ∩ Dを用いたが、ここにVETOに用いたPMTからの信号も入れる。この 事によってカロリーメータをかすめてA ∩ B ∩ ¯C ∩ Dとなったものを除き、完璧にカロリーメータで 止まったミューオンでgateを作ることが出来る。 • 今回用いたVETOはカロリーメータを覆うように配置したが、覆いきれていない部分があった。崩壊 後の電子がその部分を通過して外に出てしまった場合VETOに引っかからないので完璧に覆うように 工夫する。 今回の実験ではカロリーメータ、VETOの作成で時間がかかってしまい、電子のエネルギー分布の測定を する時間が少なかったが、以上のことに注意して測定すればよい測定が出来たと思う。
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謝辞
卒業研究にあたって、多くのご指導をいただきました竹下徹教授に深く感謝いたします。また、実験の解析 方法等さまざまなご指導をいただきました長谷川庸司助手深く感謝いたします。また、測定器の操作方法など ご指導いただきました先輩の方々、さまざまな協力をしていただいた高エネルギー研究室、テラヘルツ研究室 の皆様に感謝します。
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付録
9.1
カロリーメータの作成
シンチレータの間に隙間を作るため釣り糸を渦巻状に張った。
外に光が出ないように周りをPETフィルムで覆った。このとき接合面でグリスの層を薄くして光を通しや すくするためきつく巻いた。
ライトガイドとウェイブレングスシフターをグリスでくっつける。最後にミューオントリガーの間に設置し て完成!!
9.2 VETO
の作成
VETOカウンター用いるシンチレータ
VETOカウンターに用いるライトガイド