57 第20巻第1号(1968) 蒸発散量の決定
Ⅰ 拡大自動記録ライシメータ
上 原 勝 樹・松 田 桧 ニ 工 は し が き 莱散作用は植物が行なう最も基本的な生理現象の一つであって,これを定性的に,あるいは走塁的に把握しようと する試みは古くから行なわれて−おり,その方法もWaterbalancemethod,Standarddevices,Empiricalequations, Vapor−flowmethods,Surfaceenergybalancemethod等と極めて櫨雑多岐にわたっている..しかしながらわが国に おいて要水盛または用水鼻の明らかにされている作物は水稲を初めとするわずか数秤類に過ぎない.にもかかわらず, 畑地かんがいによる増収効果の顕著さは−・般に.認識されつつあり,適正なかんがい水鼠の合理的決定に対し,1つの 根拠を与える必要に迫られている.さらに,諸技術の発達に伴なう傾斜地利用の急増は合理的かんがい施設の完備を 前提とさえんている. 以上の諸状況からしても,作物用水星の適確なる決定は目下の急務である. 現在わが国で栽培されている作物の種類はおよそ400種類と推定されているい この1つ1つについて用水鼠を適確 に決定してゆくことば不可能ではないけれども,時間的制約と,それに要する労作からして極めて困難である申 しか し,合理的利水計画の樹立のためにも,これら用水鼻の決定は急がれなければならないい とすればいきおい省力測 定,すなわち自動記録ライシメ一夕の開発が期待されるわけである.従来この目的にかなったライシメータとしては Large weighinglysimeteIやFIoatinglysimeterがあり,その威力を発揮してきた… しかし,これらを完備するた めにはかなりの経費を要し,時下これらを完備することのできる機関はとなると極めて限られてくるい そこでわれわれは≠簡易さ〝をも考慮した拡大自動記録ライシメ・一夕の開発を試みた.これによる二三の用水藍測 定もすでに行なっており,さらに今後とも400種類にのぼる作物の用水鼻を1つ1つ気長に決定してゆく予定である. 今回は,そのよりどころとなる試作ライシメ一夕の構造およびその性能等について報告する, Ⅱ ライシメータの構造 このライシメータは原理的には地下給水法を採用している1地下給水法は−・般に土層深を限界毛管上昇高以上にと ると不正確になり,また毛管上昇による給水に相当の時間を要するので,測定された消費水盈に時間的な遅れが現わ れる等の欠点があるしかし,この方法では土湿は常にはぼ圃場容水盈付近の水分状態であって,未発散位の決定に は好都合である小 またこの方法はかん水の必要もなく,労力を要せず簡便であり,かつ安定性を有する.さらに地上 部において加わるカ(風,蛙の昼寝)には無関係である等の利点も有する. 試作ライシメ一夕の構造はFigり1に示す通りであるい 数字は今回の試作品の大きさを示す\.今その原理をFig…1により説明すると,(Al)はライシメ一夕の本体であっ て,(A2)は減水深拡大装置とその記録装置よりなっているい ライシメータ本体Alの底面には,すみやかに給水を 行なうために給水管Pが設けられてあるこの給水管より約3cm上まで礫を充填し,さらにその上に5cm厚さに 粗砂を充填してフィルターとし,その上に砂壌土をつめてある,この中で任意高度に地下水位Gvを決定するのが走 水位水槽Bである定水位水槽内のbl管の上端がGwを決定するい なおこの玉水槽は上下可動であってAl内の地 下水位を自在に変えることができる‖Cは貯水槽であって,ここに一足魔の水が入れてある‖ この水を定水位水槽へ 揚水するのがポンプEである(このポンプは長期間の連続運転に耐え,かつ発熱盈が最小限にとどまるものでなけれ ばならない本試作品ではOsci11atingPump400cc/minを使用してはぼ満足な結果を得ている).かくてAlより 蒸発によって失われる水鼠を補うために,b2管から給水管Pへと移動する水晶(点線矢印)を除けば,はとんどの水 温はポンプEによって,貯水槽c・+e管→定水位水槽B→bl管→貯水槽Cと循環していることになる。DはC水槽 内の水位長富己録するようになっている自記水位計である。またf管は地下水位の標識管である.OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
58 香川大学農学部学術報告
卜26.0−」ト31.0−」
−−−・… 105.0 T〇・∞∽⊥ Fig。1.PlansofthesensitiverecordinglyslmeteI 以上が静的な各部分の説明であるが,次に水循環に着目して順を追って説明してみよう. ① Alの地表面Sから未発散として単位時間に△Ⅴの水盈が消散する. ⑧ 地下水位Gwより上にある土壌の水分盈は△Ⅴだけ減少するこの減少盈はGwから捕われる. ⑨ Owは低下するはずであるが,定水位水槽Bより△Ⅴの水がb2→P一斗Gwと送られるので,Gwの低下は起ら ず,Gwの劇定水位は保証される. ④ Bカゝらb2を通ってGwへ送られた水盈△VはポンプEによって常時CL・e・→B・−>bl→Cと循環(実線矢印)し ている水量Ⅴの一・部分である(Ⅴ>△Ⅴ)(つまりCからeを通してBへ単位時間に送られる水盛ほVであるあが, この内b2へは先述の通り,Alにおける地表面SからのE・Tを補う水星△Ⅴ■だけ送られるしたがってⅤ−△Ⅴが blを通してCへ帰環することになる)い ⑤ そこでCの水位は△Ⅴ/β(βはCの断面積とフロ・−ト部分の断面積の和である)だけ低下すすことになるこ の水位が自記水位計によって記録される. さて,Alにおける減水深をhl,Cにおける低下水深をh2とすると次式を得る. △Ⅴ=αbl=βh2 ∴h2=hl このα/βがライシメー一夕の倍率である.本試作品においてはα/β幸10であった‖OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
59 節20巻軍1号(1968) ∬ 性 試作ライシメ−タが,どの程度の性能を有するかを検討するため,これを実際の団場に設置.して一遍の実測を行な ってみた実測地は本学部周属農場であって,設置した状態はFigけ2に示す通りである Fig…2.Viewof’thelysimeter 土壌の充填方法は先述の通りであつて,地下水位は地表面下15cmに保たれた本ライシメー・タの性能は,充填土 壌が植物の要求水星を地下水面から板群域まで充分にしかも瞬間的に給水するだけの能力を備えているかどうかにか かっている蒸発散の大小によりニヒ壌水分プロフィルに変化を生ずれば,これがすなわち≠おくれ”の原因をなすの である.木器は原理的には高拡大が可億であるが,≠おくれ〝が大きく現われるようであれば,未発散の連続記録よ り補正なしで傲小時間内のそれを推定することは困難である1そこで,この≠おくれ〝の大体のオ■−ダを実験的に把 え,かつ補正へ.の指針を得るために簡単な実験を行なった一遍の実測記録の一例を示せばFig‖3の通りであるり Time 9 0〇 一′ 6 5 4 3 2 1 0 ︻︻︻︻u
Fig小3.FxamplesofdailyevaporationrecordsmeasuIedwiththely$imeter,1967
ライシメ一夕本体にフタ(実験用として専用のフタを作成)をして未発を零にし,この状態で平衡を保たせてから フタを取り去って未発を行なわしめた時の記録がFigい3のa曲線である.この図から解るように,フタを開放してか ら約10分後に記録紙上にも蒸発毘が現われてくる(.July31∼Aug−1,196‘7).これとは逆に,未発が行なわれている状 態でフタを閉じ,急に蒸発鼠を零にした時の記録がFigり3のb曲線である‖ この図から解るように,ブタを閉じてか ら約1時間40分経過した後にはじめて記録紙上で蒸発盈は零となる.そしてフタを閉じた後,見紛上0・3mmの未発 が行なわれたことになる(Aug.21∼22,1967)Fig.3のC曲線は自然降雨による影響を示すものである(Nov・28∼ 29,1967).以上のことがらを考え合わせるとき,本曇引こよっていきなり生理学的なアブロ、−チの様に蒸発散の徽小な 経時変化を解析することは極めて困難であるが,日蒸発散鼠など,用水計画のためにの基磯資料を得るためには充分OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
60 香川大学農学部学術報告 な性能を有するのではないかと思われるちなみに1週間巻きの記録紙の−・部を示せばFig.4のようになり,未発鼻 の日変化特性もほぼ明らかである. Date 0 Sepし5 \