教員養成課程「数学科教育」の授業における図形の論証指導の扱いについて : 教員養成系大学・学部学生への調査をもとに-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川大学教育実践総合研究(B1411.Edu£.JRa.712a一.£)glノgl叩.瓦昭aw乙a加幻,15: 7 −17, 2007

教員養成課程「数学科教育」の授業における

   図形の論証指導の扱いについて

一敦員養成系大学・学部学生への調査をもとにー

 金光 三男・長谷川 順一* 仲部犬学工学部理学敦室)(数学教育講座) 487-8501 春日井市桧本町1200 中部大学工学耶理学教室 *760-8522 高松市幸町1−1 香川大学教育学部

On the lnstruction of Proof Problems

of Geometric

Figures in the

 Classof Mathematics

Education for College Students: Results of

the lnquiry of the Proof Problems

to College Students in Teacher

         Training Course of Mathematics

        KANEMITSUMitsuo and HASEGAwA

Junichi*

Cowse in En固neering,Ch油u university, 1200,Matsumolo-cho,Kasugai 487-8501  ゛Fac 「tyof Education, K昭awa Lノn加eys時,1-j,Saiwai-cho,Tilkamalsu 760-8522

要 旨 数学科敦育関達の授業で図形の証明問題の指導法を扱う際の素材を検討するため

に大学生を対象とした調査を実施した。基本的な証明問題を用いたが,時間的な制約下で

は半数ほどのものしか証明を完成させることができない問題もあった。また,典型的な誤答

と考えられる記述もみられた。このような問題は,大学生が中学生のつまずきを追体験し,

それをもとに図形の証明指導の方法を様々な観点から検討する素材となり得るものであると

考えられる。また,数学科敦育関連の授業でこれらの問題を取り上げる際の留意点にも言及

した。

キーワード 証明間題 図形 中学校数学 数学科教育 敦員養成系大学・学部 1 はじめに

 筋道を立てて考えることは小学校算数でも強

調されているが,体系的な論証指導が始まるの

は中学校数学においてである。特に第2学年の

図形領域では,「平面図形の性質を三角形の合

同条件などを基にして確かめ,論理的に考察す

る能力を養う。ア証明の意義と方法について

理解すること。イ三角形の合同条件を理解し,

それに基づいて三角形や平行四辺形の性質を 論理的に確かめることができること」などとさ れており(現行の学習指導要領(文部科学省, 2004)),図形の性質とともに証明の什組みなど を学習することになっている。  一方,図形の証明は中学生の多くが困難を感 じる箇所としてよく知られている。例えば平成 13年度敦育課程実施状況調査・中学校数学,第 2学年の図形の論証に関する問題の結果をみる −7−

(2)

と,図1の(1),(2)の問題の通過率は,それ ぞれ44.2%,37.0%であったという(公立校に限 れば,正答率はそれぞれ42.4%と34.9‰なお, 図1では問題文は簡略化して示している:国立 教育政策研究所教育諜程研究センター(2003))。  四角形ABCDとA'BてDjよともに正方形で ある。このとき,  ①図①で,BIダ=Dびを示すには△BCy≡   △DC江を示せばいいが,そのとき使われ   る三角形の合同条件を書きなさい。  ②図②でもBB'=Dlyが成立する理由を書 B きなさい。 D C ②ハ D 教育課程実施状況謂査の問題  難解な問題であるとは決していえないが,こ れらの通過率が4割前後であることから,中学 校第2学年において図形の論証指導を行う際に は生徒の状況に十分配慮する必要があることが 窺える。  ところで,Schoenfeld(1985)は,数学の問 題解決を特徴づけるカテゴリーとして,「資源 (Resources)」,「発見法(Heuristics)」,「制御 (Control)」,「信念体系(Belief systems)]の 4つをあげている。ここで[資源]とは,問題 を解決しようとする個人が保持している問題解 決に用いることができる数学的知識やアルゴリ ズムなどを意昧する(アルゴリズムの典型例と して,割り算の筆算(「立てるーかける一引く ーおろす」を繰り返すことで商が得られる)や, ユークリッドの互除法(Euclidean algorithm) があげられる)。「発見法」とは,「図をかく」 や「問題を再定式化する」「結論から後ろ向き に考える,つまりその結論を得るには何が分か ればいいかをたどって考える」など経験的によ −8 く知られた方法をいう。数学教育の分野でよく 知られているポリヤ(1954)の「問題解決の4 段階」で特に「計面すること」としてあげられ ている事項などは,発見法に相当する。「制御」 は,問題解決に際しての大局的な計㈲を立てる こと,ある試みを行うかやめるかの決定,目標 や下位目標の設定,メタ認知やモニタリングな どが含まれる。「信念体系」は,問題解決を行 うものが保持している数学や白己,問題に対す る「観」(world view)を指す。  Schoenfeldの表現に従えば,図1に示した2 つの問題は,主として調査対象者の資源の様相 を問う問題であろう。また,図1の②に無回 答であったものは全体では43.1%(公立校では 44.9%)であったという。理由の記述が求めら れているために回答を放棄したものがいたとす れば,それは信念体系に基づく判断がなされた とも考えられる。  我々が数学の授業を行う際には資源の豊富化 のみを授業の目標や内容とするのではなく,そ れを大切にしつつも,他のカテゴリーである発 見法や制御などを意図的に取り上げたり,生徒 が保持している信念体系が数学学習にとって好 ましいものになるように働きかけたりすること が重要になる。数学科敦員の養成を行う際も同 様であり,そのような4つのカテゴリーをもと に素材を検討し授業を構想するなどが求められ る。あるいは,学生が自分自身の数学学習のあ りようを4つのカテゴリーにそくして検討した り,生徒のつまずきを追体験し,それを4つの カテゴリーの観点から検討したりするなども, 数学科教育関連の授業科目の内容となってこよ う。  このようなことを念頭におきつつ,敦員養成 系大学・学部の数学科敦育関連の授業で大学生 が中学生のつまずきを体験でき,それをもとに 図形に関する論証指導のあり方を考えることが できる,そのような問題例についての基礎資料 を得ることを目的として調査を実施した。本稿 では,調査とその結果を報告し考察を加える。 また,調査問題の授業での活用方法に言及す る。

(3)

2 調査とその結果

2.1 目的と方法

 調査目的は先に述べたように教員養成系犬

学・学部での数学科教育関連の授業で図形に関

する証明問題の指導法を扱うのに適した証明問

題例を検討することである。そのために,ここ

では図2に示す3題の証明問題及び証明の意昧

を問う問題1題を扱った。

[1]AB=ACである二等辺三角形ABCの辺  AB,ACの中点をそれぞれD,Eとし,線  分CDとBEの交点をFとする。このとき,  △FBCは二等辺三角形であることを証明  しなさい。  (証明が思いつかないときは,途中でやめ  て,次の問題に取り組んで構いません。)       A

     B        C

[2]平行四辺形ABCDで,辺CDの中点Eと

 点Aを結び,辺BCの延長線との交点をF

 とする。このとき,BC=CFであることを

 証明しなさい。

 (証明が思いつかないときは,途中でやめ

 て,次の問題に取り組んで構いません。)

     A        D

B C F [3]右の図(注:ここでは下の図)の△ABC   について,∠ACBの二等分線と辺ABとの   交点をD,辺BCに平行で点Dを通る直線と   辺ACとの交点をEとする。また,直線BC   の点Cの方への延長線上に点Fをとり,直   線DEと∠ACFの二等分線との交点をGと   する。このとき,DE=EGであることを証   明しなさい。   (証明が思いつかないときは,途中でやめ   て,次の問題に取り組んで構いません。)     A B C G F [4]前の[2]の証明問題を,もう一度,考  えます。問題は,次のようでした。 i 平行四辺形ABCDで,辺CDの中点Eと点Ai i       i lを結び,辺Bcの延長線との交点をFとするy l       i lこのとき,BC=CFであることを証明しなさ| l       i iいc       i 先ほどの問題とは異なる図をかきました (右の図を参照(注:ここでは下の図))。 L2]で証明を考えましたが,右の図のよ 引こ図をかき直したとき,もう一度,証明 をし直す必要があるでしょうか。「証明を し直す必要がある」,「証明をし直す必要は ない」のどちらかを答え,その理由を記 述しなさい。    A  D

   B C

図2 調査問題

F −9−

宍、

(4)

 問題冊子の表紙には,本調査の目的(論証指 導のあり方を検討するための基礎資料を得る) や,調査結果は全体的統計的に処理すること, 個別の回答例を示すことがあるがその場合は個 人が特定されないようにすること,授業の評定 とは無関係であることなどを記していた。ま た,問題は4題あることや,ボールベンで記人 し間違えたときは線を引いて消して書き直すな どの注意事項を記載した。  さらに[1]∼[3]の問題について,図2 に示した順に問題を提示した問題冊子と,逆に [3]→[2]→[1]→[4]の順に問題を 提示した問題冊子(問題番号は1から4へとふ り直してある)の2種類の問題冊子を作成し, 調査実施時にはこれら2種類の問題冊子をラン ダムに配布した。前者の問題冊子に回答したも のを(三角形の)「合同条件先行群」,後者の問 題冊子に回答したものを「平行線の性質先行群」 ということにする。このような2種類の問題冊 子を作成したのは,問題の配列によって回答に 差異が生じることが想定されたからである。す なわち,合同条件先行群では1,2番目の問題 では三角形の合同条件を用いて結論を導き出 す。そのため,第3番目の問題でも三角形の合 同条件を用いようとし,その結果,この問題を 解決するに至らないケースの多いことが推測さ れる。なお,以下では図2の[11,[21,[3] の問題をそれぞれ「二等辺三角形問題」,「平行 四辺形問題」,「角の二等分問題」,[4]の問題 を「図形変形問題」ということにする。なお図 形変形問題は,麻柄(1994)による。  調査時間は25分間とした。また,本調査の対 象者は,国立の敦員養成系大学・学部で数学を 専攻している2年次生45名であった。調査は 2006年1月に大学の授業時間を利用して実施し た。 2.2 謂査の結果  ここでは先ず問題[1]∼[3]の3題につ いての回答傾向を概観する。次に問題[4] も含め個々の問題への回答を検討する。 10

2.2.1 全体の傾向

 合同条件先行群,平行線の性質先行群の人数

は,それぞれ23名,22名であった。調査問題

[1]∼[3]の3題の証明問題について,適

切な記述ににに点,不適切と判断された記述及

び白紙の回答にはO点を与え3題の合計値を

各学生の点数とした上で,群別に平均値(SD)

を算出した。表1は,その結果を表したもので

ある。なお,「適切な記述」とは,論理的な矛

盾や不整合,飛躍なく結論に至る過程が記述さ

れているものをいう。

表1 訓査結果(平均値(SD)) 合同条件先行群 平行線の性質先行群 2.00(0.83) 2.32(0.70)

 この結果についてt検定を行ったが,有意

差はみられなかった(t(43)=1.35)。図3は,

1点を与えた回答を正答としたときの各問題の

群別正答率を表したものである。

100% 80% 60% 40% 20%  O% 二等辺三角形問題      角の二等分問題        平行四辺形問題 図合同条件先行群回平行維の性質先行群 図3 各問題の正答率  3題ともに平行線の性質先行群の方が正答率 が若干高いが,有意な差はない。また,群(合 同条件先行群,平行線の性質先行群)×問題(二 等辺三角形問題,平行四辺形問題,角の二等分 線問題)×回答(正答者,非正答者)としてでき る2×3×2の人数分布を示す分割表に対して 情報量分析に基づく尤度比検定を行った。その 結果,群間には有意差はみられなかった(尤度 比1.89(実行区分1)が,問題間には有意差が みられ(尤度比17.19(実行区分2),p<。01),

(5)

さらに合同条件先行群(尤度比8.47(実行区分 2),p<.05),平行線の性質先行群(尤度比9.26 (実行区分2),p<.01)ともに問題間に有意差 がみられた.残差分析の結果,何れも平行四辺 形問題で正答者が多く,角の二等分問題で正答 者が少なかった(p<.05).

2,2.2 各問題について

 ここでは問題ごとに回答状況などを紹介す

る。なお,全体的には2群間に有意差はみられ

なかったので,以下では群を区別せずに検討す

る。

 (1)二等辺三角形問題

 この問題に対しては,先ず△DCBと△EBC,

あるいは△ABEと△ACDがそれぞれ合同であ

ることを示すことによって結論を得ようとした

回答が多くみられた。表2は,どの部分から証

明に取りかかったかを示したものである。両者

を混在させた記述もみられたが,証明の記述の

最初の部分で分類した。表中の「正答者」は,

そのようにして取りかかった中で証明の記述が

適切であると判断されたものをいう。

表2 二等辺三角形問題への取りかかり   取りかかり 乙XDCB≡△EBC △ABE≡△ACD その他 白 紙 人数(%値) 21名(46.7%) 17名(37.8%) 3名(6.7%) 4名(8.9%) 正答者  15名  17名  O名  一  全体の正答率は71.1%であった。本問題では, △DCB≡△EBCを示すのが最も簡単であると 思われる。 しかし,△ABE≡△ACDを示そう としたものが4割弱みられることは興昧深い。  △DCB≡△EBCを示すことから出発したが, 適切な証明が記述できなかった例を以下に示す (図4)。 11 (例1) (−靭   lf乙kりtz5.1FIニふ11.jみ    k。Q9−(!)    lpゝc.l −Q   乙dp=L£昨Eヽa  4.S,必り    6§kQ・4dEgj泰・7!1    j.19c=ぶCa一匈  J!http://www.1=4目戈践    丿匈・A(−(が    AEs’ fW −1に   召弓E ・ zcAp ’ダ  ど.Q≒ざわ    ーM!9 ーAcO ・9μ?1   1S−cフー@ れl.9.む,印−ごE り。   £暇FΞJCF.F xiりet    t4=cF れ1,4φ・心Flyいま一哨一包z哨柘7141ろ ぐ肪哨芦タ (例2) (篁明) C 乙畝pt△C咳にっ1Lて, 乙t)Qc−乙gcl い索lΞR1・M島周J 卵 − e(.  μミ幻 t なt = n  りむ1) J以、ユー巡tyの91・哨?゛`かぞtヽjkぃこーりヽg   乙恥ひΞaCS・ a呼Dt aCI=9 tt. 嶮いμ。 乙icp`raC3F カヽ、らやり¥ 乙晦cなど/M゛ぃ7刻μ緊?ぶ4吋`, 4吠りミ 4CFいい`U・・ Jこって,託こしr示`田uめど  乙りい袈こ写以Ξ順恥,り収, 図4 二等辺三角形問題の証明記述例  例1は,先ず△BCD≡△CBEを示している。 このことから直接的に結論を得ることもできた だろうが,次に△ABE≡△ACDを示している (そこから導き出しているBE=CDは,△BCD

(6)

≡△CBEからも得られる)。その上で,結論を

得るために△BDF≡△CEFをいうのであるが,

それには条件が不足している。但し,回答者は

おそらく適切に証明を遂行したと判断している

と思われる。なお,証明の記述が適切であると

判断されたものの中に伝本事例と同様に複雑

な過程を経て結論を得ているものがある。

 例2は,合同な図形から共通部分を取り去っ

た残りの部分は合同であるとしたものであり,

他に同様の記述例が2つみられた。

 これらのつまずきは異なっているが,ともに

辺長が等しいことを示そうとしていること,証

明の過程が正しく記述されている箇所から適切

に結論を得るように軌道修正することが可能で

あるという点で共通している。

 (2)平行四辺形問題  本問題については,△AED≡△FECをもと に結論を得ようとした記述が多くみられたが, 相似を用いたものもあった。表3は,どの部 分から本問題に取りかかったかを示したもの である。なお,「相似を示す」には,△ABF7) △ECF,△AED(ンご)△FECがある。「その他」は, AB//DCよりCF : CE=BF:BAなどを示したも のや「中点連結定理を用いる」としたものであ る。 表3 平行四辺形問題への取りかかり   取りかかり △AED≡△FEC 相似を示す その他 人数(%値) 34名(75.6%) 8名(17.8%) 3名(6.7%) 正答者 33名 7名 1名

 全体の正答率は91.1%であった。図5は,適

切な証明とは判断されなかった記述例である。

- 12− (例3) (駈明) 馴i田ざいMcり・4い、M 知ドリE{cλk こ寧杓`k同’Dμニヘーの こ p ( こ

j緋卜珪U匹、の杵鮭、あj忿腫聊回

    巨ぺF     げリハ祠

(例4) 証明)  ゜4へtaヽ,6F乙Er・II'・7-   AM・kp/   乙陪tレ=-2SRべ哺ll〕・-1〕   £ArE−2ひ1ぼ9)-4)   Z Mit・=∠妬.C鰐4恥べ1   r!).・S3.Si=・1    3)・iil喇゛¥1・,t`恥嘱:しai az・1    jM)EE6FCE ヽrtiヽ1     外DこF(.   lk【勁・匈Pり§・ldり刊i'C!む!.,l・,↑J。?,・      4D・●M!    -'. 13ど= C.F

  図5 平行四辺形問題の証明記述例

 例3は,問題文にある「中点」の語から「中

点連結定理」を想起し,何とかそれを適用しよ

うと試みたのかもしれない。例4では,「3つ

の角がそれぞれ等しいので合同」としている。

図5には示していないが,例4の回答者は問題

に付された図では点Eが中点であることを示す

マークを記入していることから,合同と相似の

混同も推測される。なお/これらはともに条件

を確認したり記述を精緻化したりすれば,適切

な証明へと転換を図ることが可能である。

(7)

 (3)角の二等分問題  本問題では,平行線の性質から分かる角の関 係からそれらの角を含む三角形が二等辺三角形 であることを示せばよい。なお,中学校数学で は,「平行線の性質」は「三角形の合同粂件」 の前に「二等辺三角形の性質」は「三角形の 合同条件」の後で,それぞれ扱われる。表4は, 回答欄への記述の完成の程度を示したものであ る。 表4 角の二等分問題への取りかかり   取りかかり 不適切でない証明 途中放棄 自紙 人数(%値) 24名(53,3%) 10名(22.2%) n名(24.4%) 正答者 24名 表5 等しい角の記号表現 前提のみ  5名 錯角が等しい 一方 10名 両方 6名

 どの程度,角の関係を意識化していたかは明

らかではないが,少なくとも調査対象者全体の

9割弱のものが錯角が等しいことに留意してい

る。また,問題の前提である角の二等分のみを

図に記号で記入していた5名の内の4名の回答

欄は白紙であった。図6は,本問題への記述例

である。

(例5)  表4の「途中放棄」した10名の中で△ADE と△CGEに着目していると思われるもの,つ まりそれらの合同を示そうとしたと思われるも のは,記述内容を見る限り4名であった。世 し,問題に添えられた図に様々な記号を記入し (証明〉 たが時間がなく回答欄は白紙としたものの中に は,三角形の合同を示そうとしていたものもい ると思われる。また,途中放棄及び白紙であっ たものの数は,合同条件先行群12名,平行線の 性質先行群9名であり,明らかに2群間に有意 差はみられない。  また,証明の記述を途中放棄したものや回答 欄が白紙であったものについて,問題に添えら れた図への記入を点検した。その結果,全てに ついて何らかの記号が記人されていた。表5 は,途中放棄,あるいは白紙であったもの21名 について,問題の前提である角の二等分に該当 する記号のみを図に記人したもの(前提のみ), 前提と平行線の性質から生成される情報であ る錯角が等しい(∠BCD=∠CDG,∠FCG= ∠CGE)ことのいずれか一方(錯角が等しい・ 一方),あるいはその両方(錯角が等しい・両方) を示す記号を吉き入れたと判断されるものの数 を表したものである。 −13 B A C F i41' 1 2‘qCp °∠pC6・ 1絹211∠1・C6・ZCpExjリ, 乙辰pぺeDcヽt お゜?11がEpC 4 ニ1晦禎刄y約 ほ゛cEb`"・・iう,-(D  にこ?'dcD   S・、   Uj、 1"?.∠DEC ● ねqaいyzllUh. Q°FQX=lho s 9゛切3げ g屁c河心賎 りxj ゛)ぐ゜乙EG(lりjの711 4EI‘;C転恥3秘河り.りE りnll¨えむ−9 (!)(2約 ’DいEり゛I滅りおり

(8)

(例6)

(証明)

(例7) {証明} B A C F

4 ECQヒ4E`印z・・

  DQ/y gc 幻.

 乙随p゛∠こ眼こ乙ACB

 畝賢に告J

  叫が8cより、

  乙QDく:'乙Dぐ9

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  ね14M〉cミ4(kD

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  乙卯6乙討(ンペc哨.

  乙GCE=`乙(μ.pヽz、M.ひ

      (以下白紙)

44Ξpt心cEGにみu7

夕4‘TIμ11ァJのベ乙4Ep乙乙cE(21−○        (以下白紙) 角の二等分問題の証明記述例  例5は不適切な記述ではないと判断されたも のである。最初の段階では,仮定及び平行線の 性質を用いて△EDCが二等辺三角形であるこ とを導き出している。その方法を△EGGにも 14− 適用すればいいのであるが,その方向には進ま ず他の角の関係から結論を得ている。例6は, △ECGと△EADに着目し,それらが合同であ ることを導き出そうとしている。その過程で, 本問題で前提とされていることと,図に記入さ れた「∠ADE=×,∠ADCは直角」などの推 測されたことが混乱したものと思われる。例7 も,三角形の合同条件を用いようとしたと思わ れる。但し,図を見ると,△ECGが二等辺三 角形であることを示すように記号が付されてい る。例6や7も,正しい証明へと方向修正する 手がかりが図に示されている。 (4)図形変形問題  証明を行う際には,問題に付された図に一般 的な関係を見いだしつつ記述を進めなければな らない。この問題について,「証明をし直す必 要はない」としたものは40名(88.9%),空欄で あったもの4名(8.9%)であり,1名(2.2%) が「証明をし直す必要がある」と回答した。図 7は,その1名の記述を示したものである。 馴をし置す鏝が旺

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「証明をし直す必要がある」理由

(9)

 上に示した理由の記述は数学的な観点からで はなく塾の講師として,つまり生徒に証明の指 導をする立場から述べられている。そのためこ れは「証明をし直す必要がある」理由を述べた ものではなく,「証明をし直させる必要がある」 理出を述べたものというべきであろう。

3 考察

 以下では,先ず角の二等分問題,図形変形問

題を取り上げて検討する。ついで数学科教育関

連の授業でこのような問題を活用することの意

義について検討する。

3.1 角の二等分問題について  平行線の性質先行群に比べ合同条件先行群で は角の二等分問題の正答率が低いことが予想さ れたが,本調査ではそのような傾向はみられな かった。但し,全体的な傾向をみると,角の二 等分問題の正答率が最も低かった。合同条件先 行群では本問題を3番目に回答することになっ たため,調査の制限時間に追われつつ記述を急 いだことも想定されるが,本問題について途中 放棄や白紙であったものの人数について2群問 に有意差はみられなかった。このことから,本 問題の困難さが示唆される。  また,本調査では,平行四辺形問題の正答率 が最も高かった。この問題では合同な三角形を 比較的容易に見出すことができる。これらのこ とから,中学校数学で扱われる図形の証明問題 では,「直線図形について角や線分が等しいと いう結論を得るためには,問題に付された図の 中から該当する角や線分を含む(2つの)三角 形を見出し,それらの三角形が合同であること を証明すればよい]とする考え方(*)が定着し ていることが示唆される(「直線図形」と述ベ たが,それは円が関連する問題であれば角が等 しいことを示すために円周角の定理を用いるこ とが考えられるからである)。  上記の考え方(*)と角の二等分問題につい て,Schoenfeldのあげる問題解決に関わる要因 にそくして検討する。先ず,(*)の考え方は図        一 形の証明の学習を始めたばかりの中学生にとっ ては発見法として機能するものであろうが, 「証明」に熟達するにつれて,それは,アルゴ リズムではないが数学の問題を解決する際の所 定の手続きの一つ(non-algorithmic routine) として資源に組み込まれるようになる。そのた め本調査の角の二等分問題を目にしたとき,線 分が等しいことを示すのだからそれらを含む三 角形を見出せばよいとする考え方が活性化され ることになる。証明問題としては決して困難な 問題とはいえない本問題で半数ほどのものが制 限時間内に証明を記述できなかったのは,この ような合同条件に依拠する思考の制約のためで あると考えられる。  そのような問題解決の過程に関連する重要な 要因が制御である。長谷川・三井(1997)は中 学生の図形に関する証明問題の解決過程を検討 し,数学が苦手な生徒は得意な生徒に比べ問題 文を読み直す行動が少ないことを報告してい る。一般に証明問題を解決する際には,問題文 で前提となっていること,そこから推論される こと,あるいは問題の結論などを図に記人して いく。そのとき,どこまでが証明された事項で どこが推淵によるものかが分からなくなる場合 があるが,数学が得意な生徒は問題文を読み直 すことによって問題の前提やそこから導き出さ れたこと,まだ証明していない事柄などを確認 する行動が比較的多くみられるのである。  本調査の角の二等分問題については,9割近 くのものが本問題の解決につながる角の関係 (錯角が等しい)を図に記入している。そのた め,合同な三角形を探し出すという方針を立て たとしても再度問題文と図とを見直すことで, 本問題の解決につながる方針転換を行うことが できたかもしれない。 3.2 図形変形問題について  図形変形問題の回答欄が空欄(無回答)であっ たものは,おそらく時間的制約によると思われ る。それ以外は,1名を除き「証明をし直す必 要はない」としていた。平行四辺形ABCDにつ いて点Eは辺CDの中点であることや点Fは直線 15−

(10)

AEとBCの交点であることなどは,平行四辺形 問題と図形変形問題に付された図で変化はな い。そのため,図形変形問題に対して「証明を し直す必要がある」と回答する中学生に対して は,「証明の一般性を理解せずに学校で習った 方法を手続きとしてのみ学習している」(麻柄, 1994)と判断されることになる。一方,先にも 述べたように,本調査で「証明をし直す必要が ある」としたものは,教える立場からそのよう に記述していた。  ところで,最初に掲げた図1の①で△BC狸 ≡△DC江を示す際に「∠BClyと∠DC江はと もに直角だから∠BCIEy=∠DCD勺とすれば, 図1の②では証明をし直さなければならない。 逆に図1の②で△BCly≡△DC瞑を示すのに 「∠BCy=∠R+∠DCy=∠DCly(∠Rは 直角を表す)」(**)とするとき,それが図1① にも適用されることを初学者が見て取るのは困 難であろう。 2つの正方形の位置関係によっ ては,(**)の式を書き換える必要も生じる(図 8)。  右の図で,By =DDづ△BCy ≡ △DCD勺を示しな さい。 A B D C が

       図8 図形の変形

 ある証明の記述と,そこに付された図の線分

や点の相互の位置関係からその証明の記述の一

般性を読み取ることができるかどうかもまた,

証明問題に取り組む個々人の資源のありように

依拠するものである。このような観点からみる

とき,図7に示した学生の記述は興味深い。

3.3 本讃査の授某での活用

 時問的制約の中で本調査問題に答えることは

必ずしも容易でないことが見て取れた。そこで

本調査問題を教員養成系大学・学部の数学科敦

育関連の授業で実施し,その結果を受講生相互

に検討させる,それを通して図形の証明の指導

法を考えさせようとする授業が構想される。こ

4 ︶ 1 1   一

こで取り上げた各問題に対する授業での検討課

題をあげてみる。

①二等辺三角形問題

 ・いくつかの証明方法の比較検討

 ・中学生に対してより簡単な証明方法を示唆

  する際の助言のあり方

 ・図4,例2のような記述に対する指導法の

  検討

②平行四辺形問題

 ・相似を学習する前と後での指導法のあり方

③角の二等分問題

 ・証明の方針転換のための助言のあり方

 ・図を変形するなどによって,与えられた図

  では合同のように見える2つの三角形が本

  当に合同であるかを調べるなどの発見法

④図形変形問題

 ・証明をし直す必要を巡って,学生の視点か

  ら,教師の視点から,あるいは様々な問題

  例を通しての検討

 数学科教育関連の授業でこのような検討を行 うことは,受講生に学ぶ立場から教える立場ヘ と視点の転換を促すことにもなろう。本調査で 用いた問題は中学校数学で取り上げられるもの ではあるが,それを大学の授業の素材としてみ ると,様々な課題を見出すことができるのであ る。そのような大学・学部の授業での活用事例 については,稿を改めて報告したい。また,本 調査では,問題の提示順序が証明の完成・未完 成に与える影響については十分に検討すること ができなかった。この点については,本調査の ような記述を求める形式で調べるだけではなく 個別のインタビューも取り入れて検討する必要 もあろう。今回の調査のような方法をとるので あれば,調査時問をどの程度とするかや各問題 に付した注意事項「証明が思いつかないときは, 途中でやめて,次の問題に取り組んで構いませ ん」の適否も問題となろう。このような調査方 法のあり方も今後の検討課題としたい。

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      文  献 長谷川順一・三井誠弦(1997)「中学生の証明問題解   決過程の分析」全国数学教育学会誌第2巻 国立教育政策研究所教育課程研究センター(2003)   「平成13年度小 中学校教育課程実施状況調査報   告書中学校数学」ぎょうせい 麻柄啓一(1994)「『図形の証明問題』の意昧理解に   ついて」日本心理学会第36回総会発表論文集 文部科学省(2004)「中学校学習指導要領解説一数学   編−(平成16年5月一部補訂)」大阪書籍 A.ポリア(1954)「いかにして問題を解くか」(柿内   賢信訳)丸善 Schoenfeld,A.H.(1985ドIMathematical problem   solving” Academic Press

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参照

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