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(1)

統計力学特論

(

学部

)

・統計力学

I(

大学院

)

宮下 精二

TA:

鳩村 拓矢

(

宮下研

M2)

(2)

2 このノートは, 平成27年度夏学期の「統計力学特論(学部)・統計力学I(大学院)」の講義ノートです. 表紙の日付は 最終更新日を表します. 講義は宮下先生により行われてますが, このノートは宮下研M2の鳩村が作成してます. 誤植 等を見つけたら鳩村([email protected])まで連絡お願いします. なお,板書に追記や省略を行って いるので,実際の講義の板書とは異なる部分が存在します. 初回のスライドによる導入を以下に簡単にまとめておきます. Keywords:

1. 気相・液相相転移(gas-liquid phase transition) 2. 臨界点(critical point)

3. 格子気体模型(lattice gas model)イジング模型(Ising model) H =−ϕ0 ∑ ⟨i,j⟩ ninj− µi

ni, n = 0 (for vacancy), n = 1 (for occupation). (1)

↓ σi=±1, ni= σi+ 1 2 . (2) H =−J⟨i,j⟩ σiσj−hi

σi, σi = 0 (for vacancy), σi= 1 (for occupation), (J = ϕ0/4, h = (zϕ0+2µ)/4)

(3)

4. 統計力学は相転移を記述できるか?→L. Onsager (1944), C. N. Yang (1952)

5. モンテカルロシミュレーション(Monte Carlo simulation)

6. XY模型, Potts模型

また,全体を通しての注意点として, 格子系を考えるときは, 特に記載がない限りは正方格子を仮定しています. ただ

(3)

3

目次

第1章 平均場近似 5

1.1 平均場近似 . . . 5

1.2 平均場近似の自由エネルギー . . . 7

1.3 現象論的自由エネルギー(phenomenological free energy, Ginzburg-Landau (GL)の自由エネルギー) f (m, T, H) . . . 7 1.4 Bragg-Williams近似 . . . 8 1.5 磁場中での相転移 . . . 9 1.6 空間依存性がある場合の平均場近似 . . . 10 第2章 ゆらぎ 15 2.1 ゆらぎ . . . 15 2.2 平均場近似でのゆらぎ . . . 16 2.3 低次元でのゆらぎ . . . 17 2.4 くりこみ群の考え方 . . . 20 2.5 波数空間くりこみ群 . . . 22 2.6 Berezinskii-Kosterlitz-Thouless転移[3] . . . 24 第3章 転送行列法 27 3.1 経路積分と転送行列 . . . 27 第4章 フラストレーション 31 4.1 フラストレーション . . . 31 第5章 Monte Carlo法 33 5.1 Monte Carlo法 . . . 33 5.2 マルコフ鎖,確率過程, マスター方程式 . . . 33 5.3 量子系の統計力学,量子モンテカルロ法 . . . 35 第6章 レポート課題 37 6.1 中間レポート(2015/06/01締切) . . . 37 参考文献 39

(4)
(5)

5

1

平均場近似

1.1

平均場近似

まず,以下のようなIsing Hamiltonianとその分配関数を考えます: Z = Tre−βH, (1.1) H = −J⟨i,j⟩ σiσj− Hσi, σi=±1, (1.2) ∑ σi= M. (1.3) J = 0, すなわち,独立なスピンの集まりを考えた場合,分配関数と自由エネルギーは以下のようになります: Z =σi=±1 eβHσi=i ( ∑ σi=±1 eβHσi ) = (2 cosh(βH))N, (1.4) F =−kBT N ln[2 cosh(βH)]. (1.5) J ̸= 0の場合の分配関数は, Z =σ1=±1 · · ·σN=±1 eβJ⟨i,j⟩σiσj+βHσi, (1.6) となり,一般には解くことができません. そこで,これを解析するために用いる手法の一つが平均場近似です. 平均場近 似では, 図1.1のように, i番目のスピンに注目したときに, その最近接のスピンσjを平均値⟨σj⟩ = mで置き換える 近似です. すなわち,式(1.2)は,−J⟨i,j⟩σiσj− Hσi→ −(Jzm + H)σi≡ H (1) MFのようになります. ただし, ここでzは最近接のスピンの数を表します. 例えば, 2次元正方格子を考えた場合にはz = 4のようになります. この 図1.1 平均場近似のイメージ

(6)

6 第1章 平均場近似 図1.2 自己無撞着方程式の解 平均場近似の下では,分配関数の計算を実行できます. また,磁化も計算することができて, m =⟨σi⟩ = TrσieβH (1) MF Tre−βH(1)MF = ∑ σσe β(J zm+H)σσeβ(J zm+H)σ = tanh(βJ zm + βH), (1.7) となります. この式を自己無撞着方程式と言います: m = tanh(βJ zm + βH). (1.8) 自己無撞着方程式の解は, H = 0のときには図1.2のようになっていて, βJ z < 1 (高温)のときにはm = 0のみで自 発磁化は存在せず, βJ z > 1 (低温)のときにm = 0,±msとなり自発磁化が生じます. 次に,この模型の臨界指数について見ていきます. 式(1.8)をH = 0のときにテイラー展開すると, m = tanh(βJ zm) = βJ zm−1 3(βJ zm) 3+· · · , (1.9) となるので, ms∝ (Tc− T )1/2= (Tc− T )β, (1.10) であることがわかります. すなわち,自発磁化の臨界指数は β = 1/2, (1.11) となります. 帯磁率については, m = ms+ χHとして式(1.8)をH について展開すれば, ms+ χH = tanh(βJ zms) + β(J zχ + 1)H cosh2(βJ zms) +· · · , (1.12) となるので, χ∝ (T − Tc)−1= (T− Tc)−γ, (1.13) となることがわかります. すなわち,帯磁率の臨界指数は γ = 1, (1.14) です. 比熱の臨界指数は後で定義する自由エネルギーの微分から計算できます.

(7)

1.2 平均場近似の自由エネルギー 7

1.2

平均場近似の自由エネルギー

簡単のためH = 0の場合を考えます. σi = (σi− m) + mとして, ゆらぎ(σi− m)が微小量であることを仮定す れば, H = −J⟨i,j⟩ σiσj=−J⟨i,j⟩ (σi− m + m)(σj− m + m) =−J⟨i,j⟩ [(σi− m)(σj− m) + m(σj− m) + m(σi− m) + m2] ≈ −J⟨i,j⟩ [m(σi+ σj)− m2] =−Jzm Ni=1 σi+ J zN 2 m 2≡ H MF, (1.15) となります. このとき, 分配関数と自由エネルギー(ただし,自由エネルギーはH ̸= 0の表式)は ZMF= Tre−βHMF = TreβJ zmσi−βJ zN2 m 2 = [2 cosh(βJ zm)]Ne−βJ zN2 m 2 = e−{βJ z2 m 2−ln[2 cosh(βJzm)]}N , (1.16) F (m, T, H) = F (m) =−kBT ln ZMF= J z 2 m 2− k BT ln[2 cosh(βJ zm + βH)], (1.17) となります. この自由エネルギーF (m, T, H)は秩序変数に関するポテンシャルのようなものを表しており, 通常の熱 力学的な自由エネルギーF (T, H)との違いに注意が必要です. この自由エネルギーが秩序変数mについて極小をとる ことを課せば, ∂F (m) ∂m = 0→ Jzm − kBT tanh(βJ zm + βH)βJ z = 0, (1.18) すなわち, m = tanh(βJ zm + βH), (1.19) となり,自己無撞着方程式が得られます.

1.3

現象論的自由エネルギー

(phenomenological free energy, Ginzburg-Landau

(GL)

の自由エネルギー

) f (m, T, H)

次に,現象論的な自由エネルギーを考えます. 対称性の議論などから,自由エネルギーが秩序変数mの冪, f (m) = am2+ bm4+ cm6+· · · − hm, (1.20) で与えられると仮定します. このとき,状態方程式は ∂f (m) ∂m = 2am + 4bm 3− h + o(m3), (1.21) となります. 物理的な要請より, b > 0なので, a > 0では自発磁化は生じず, a < 0のときに自発磁化が存在します (図1.3). つまり, a(T− Tc)の奇数次であることがわかります. さらに, 式(1.13)との整合性から1次, すなわち,

(8)

8 第1章 平均場近似 図1.3 現象論的自由エネルギーによる自発磁化 図1.4 Bragg-Williams近似のイメージ a = a0(T− Tc)と書けることがわかります: a > 0, 2am− h = 0, m = h 2a = χh, χ = 1 2a = 1 2a0(T− Tc) , (1.22) a < 0, 2|a| = 4bm2, m =|a| 2b ∼ |T − Tc| 1 2. (1.23) T = Tcでは, 4bm3= hとなるので, m∝ h 1 3 = h 1 δ よりδ = 3が得られます.

1.4

Bragg-Williams

近似

この節では別のタイプの平均場近似であるBragg-Williams近似(図1.4)を取り扱います. 自由エネルギーは, F = E− T S, (1.24) で与えられます. ここで, Eはエネルギー E =−NJ z 2 m 2− HNm, (1.25) であり, Sは情報論的エントロピー S =−kBs:all states p(s) ln p(s), (1.26) です. p(s)p(s)→ Ni=1 pi(σi), (1.27) pi(σi) = { pi(+) pi(−) , (1.28)

(9)

1.5 磁場中での相転移 9 とすれば, S =−kB{σi=±1} p1p2· · · pNln p1· · · pN =−kBN [p(+) ln p(+) + p(−) ln p(−)] =−kBN { 1 + m 2 ln 1 + m 2 + 1− m 2 ln 1− m 2 } , (1.29) F =−NJ z 2 m 2− HNm + k BT N { 1 + m 2 ln 1 + m 2 + 1− m 2 ln 1− m 2 } , (1.30) となります. ここで { pi(+) + pi(−) = 1 pi(+)− pi(−) = m , (1.31) すなわち,     pi(+) = 1 + m 2 pi(−) = 1− m 2 , (1.32) を用いました. 続いて,ここで得られた自由エネルギーが1.1,1.2節で得られた結果とコンシステントかどうかみていきます. 状態 方程式 ∂F (m) ∂m = 0, (1.33) を課すと, f = F/Nとして ∂f ∂m =−Jzm − H + kBT { 1 2ln 1 + m 2 + 1 + m 2 1 1 + m− 1 2ln 1− m 2 + 1− m 2 −1 1− m } =−Jzm − H +1 2kBT ln 1 + m 1− m = 0, (1.34) となります. これは m = tanh(βJ zm + βH), (1.35) と等しいので, Bragg-Williams近似は今までの平均場近似とコンシステントであることがわかりました. ただし,ここ で関係式 tanh−1X = 1 2ln 1 + X 1− X, (1.36) を用いました.

1.5

磁場中での相転移

1.3節の図1.3は,外場が0であるときの概略図でした. この節では,外場が有限の場合を考えたいと思います. 外場が有限のときには,図1.5のように, 二つの縮退した基底状態にエネルギー差が生じます. すなわち,真の平衡状 態である基底状態と, 局所的には安定性をもつが平衡状態ではない準安定状態(metastable state)の二つが現れます. また, さらに強い外場を加えると,準安定状態は消滅します. このような点をスピノーダル点(spinodal point)といい ます. 続いて, 磁化過程(magnetization process) m(H)を通して, 準安定状態とスピノーダル点を理解していきます. 図 1.6は自己無撞着方程式の解の概略図になってますが, s.p.がスピノーダル点,ヒステリシスを形成している部分で基底 状態でない部分が準安定状態になっています. ここで, m(H)H について多価関数であるが, Hmについてそう

(10)

10 第1章 平均場近似 図1.5 準安定状態とスピノーダル点 図1.6 磁化過程と準安定状態およびスピノーダル点 図1.7 空間依存性がある場合の平均場近似のイメージ ではないので,容易に扱うことができます. すなわち, m = tanh(βJ zm + βH), (1.37) をHについて解けば H(m) = kBT 2 ln 1 + m 1− m − Jzm, (1.38) となるので,これをmで微分して整理すればスピノーダル点やそこでの磁化の値などを得ることができます.

1.6

空間依存性がある場合の平均場近似

今までの平均場近似では,注目している格子点のまわりはすべて同じとして取り扱ってきましたが, この節ではまわ りの格子点の磁化を区別した場合を考えます(図1.7). 格子点iの磁化は mi=⟨σi⟩ = TrσieβJ (mj1+···+mjz)σi+βHiσi TreβJ (··· )σi+βHiσi , (1.39) で与えられます. すなわち, mi= tanh[βJ (mj1+· · · + mjz) + βHi], (1.40)

(11)

1.6 空間依存性がある場合の平均場近似 11 となります. T > Tc, mi≪ 1のときには, mi≈ βJ(mj1+· · · + mjz) + βHi, (1.41) とすることができますが, Fourier変換           ⟨σ⃗k⟩ = 1 N Nj=1 ⟨σj⟩ei⃗k·⃗rj ⟨σj⟩ = k ⟨σ⃗k⟩e−i⃗k·⃗rj , (1.42) を用いると, k ⟨σ⃗k⟩e−i⃗k·⃗ri = βJ k

⟨σ⃗k⟩(e−i⃗k·⃗rj1 +· · · + e−i⃗k·⃗rjz) + βHi, (1.43)

となります. さらに,両辺にei⃗k′·⃗riをかけてiについて和をとれば, ⟨σ⃗k⟩ = 1 Ni

βHiei⃗k·⃗ri+ βJ (e−i⃗k·⃗δ1+· · · + e−i⃗k·⃗δz)⟨σ⃗k⟩, (1.44)

を得ます. すなわち, ⟨σ⃗k⟩ = 1 NiβHie i⃗k·⃗ri 1− βJme−i⃗k·⃗δm , (1.45) となります. ここで, 1− βJm e−i⃗k·⃗δm = 1− βJ z/2m=1 2 cos(⃗k· ⃗δm) = 1− βJz + βJ(k2x+ ky2+· · · ) + · · · = 1− βJz + βJk2+· · · , (1.46) となるので,十分小さいk =|⃗k|に対して ⟨σ⃗k⟩ ≈ β H⃗k 1− βJz + βJk2, (1.47) を得ます. ここで, H⃗k 1 Ni Hiei⃗k·⃗ri, (1.48) としました. 相関関数を Gij =⟨σiσj⟩ − ⟨σi⟩⟨σj⟩, (1.49) で定義します. 式(1.39)より ∂⟨σj⟩ ∂Hi = βTrσjσie [··· ] Tr· · · βTrσje[··· ]Trσie[··· ] (Tr· · · )2 = β[⟨σiσj⟩ − ⟨σi⟩⟨σj⟩], (1.50) が得られるので,原点を基準とした相関関数は G(⃗rj)≡ G0j=⟨σ0σj⟩ − ⟨σ0⟩⟨σj⟩ = ∂⟨σj⟩ ∂H0 1 β, (1.51)

(12)

12 第1章 平均場近似 で与えられます. これをFourier変換すると G(⃗k) = 1 Nj G(⃗rj)ei⃗k·⃗rj = 1 β ∂H0⟨σ k⟩, (1.52) となるので,式(1.47)を用いれば G(⃗k) = 1 Ne i⃗k·⃗0 1− βJz + βJk2 = 1 N 1 1− βJz + βJk2, (1.53) を得ます. これをさらにFourier逆変換することによって,もとの相関関数の表式 G(⃗r) =k e−i⃗k·⃗rG(⃗k) = 1 (2π)dd⃗k e −i⃗k·⃗r 1− βJz + βJk2, (1.54) を得ることができます. ここで ∑ k = N (2π)dd⃗k, (1.55) を用いました. また,関係式 1 (2π)de−i⃗k·⃗r a2+ k2d⃗k = 1 re −ar, r =|⃗r|, (1.56) を用いれば積分を評価することができます. 相関長(correlation length) ξξ = a−1= 1− βJz βJ , (1.57) で与えられ, r≫ ξではOrnstein-Zernike型 G(⃗r)∝ 1 rd−12 e−r/ξ, (1.58) r≪ ξでは G(⃗r)∝ 1 rd−2 1 rd−2e−r/ξ, (1.59) のように振る舞う. 相関長の臨界指数は, ξ−2= 1− βJz βJ ∼ T − Tc, (1.60) であることから, ξ∝ (T − Tc) 1 2 = (T− Tc)−ν, ν = 1 2, (1.61) であることがわかる. また,異常次元ηG(⃗r)∼ 1 rd−2+η, η = 0 (1.62) で定義されます. 臨界指数をまとめると,比熱 C∝ (T − Tc)−α, α = 0, (1.63) 磁化 m∝ (T − Tc)β, β = 1 2, (1.64) m∝ H1δ, δ = 3, T = Tc, (1.65)

(13)

1.6 空間依存性がある場合の平均場近似 13 帯磁率 χ∝ (T − Tc)−γ, γ = 1, (1.66) となります. 次に, GL自由エネルギーに空間依存性を導入します. すなわち, f (m) = am2+ bm4+· · · − hm, (1.67) において, m→ m(⃗r)とすることを考えます. このとき, GL自由エネルギーはいわゆるϕ4模型 f (m)→ F [{m(⃗r)}] =d⃗r[(∇m)2+ am2+ bm4− hm], m(⃗r), (1.68) となります. ここで,第1項は強磁性相互作用を表します. これに対して δF δm = 0, (1.69) を課せば, − 2∇2m + 2am + 4bm3− h = 0, (1.70) を得ます. h = 0のとき, − 2∇2m + 2am + 4bm3= 0, (1.71) の解を, a < 0, T < Tc, (a∝ |T − Tc|)かつ一次元として考えると,例えば m(x) = A tanh(x/ξ), ξ =|a| 2 , A =|a| 2b, ξ∝|a| ∝ (T − Tc) 1 2, ν = 1/2, (1.72) が得られると思います.

(14)
(15)

15

2

ゆらぎ

2.1

ゆらぎ

物理量Aに対して, 平均値⟨A⟩,ゆらぎ(分散)⟨A2⟩ − ⟨A⟩2を考えます. ここで,平均は

⟨· · · ⟩ = Tr· · · e−βH

Tre−βH , (2.1)

で定義されます. さらに,H = H0− aA, aAに共役な力(外場)とすれば,分配関数およびAの平均値は

Z(a) = Tre−βH0+βaA, (2.2)

⟨A⟩ = TrAe−βH Z(a) =

∂(βa)ln Z(a), (2.3)

となります. また,ゆらぎは

⟨A2⟩ − ⟨A⟩2=TrA2e−βH

Z ( TrAe−βH Z )2 = ∂(βa)2ln Z, (2.4) です. ゆらぎと応答の関係は χAA= ∂a⟨A⟩ = β ∂(βa) ∂(βa)ln Z(a) = ⟨A2⟩ − ⟨A⟩2 kBT , (2.5) で与えられ, Kirkwoodの関係と呼ばれています. また,高次の応答は χ(m)= m ∂am⟨A⟩ = β m m+1 ∂(βa)m+1ln Z(a) = β m⟨Am+1 c, (2.6) のように与えられます. ここで,⟨Am+1⟩c(m + 1)次のキュムラント(cumulant)と言います. 例えば, ⟨A3

c=⟨A3⟩ − 3⟨A2⟩⟨A⟩ + 2⟨A⟩3, (2.7)

のようになります. なお,自由エネルギーがln Z(a) =−βF で与えられるので応答関数はすべてO(N )となります. 続いて,応答と相関の関係について見ていきます. 具体的に, A = M = Ni=1 σi, a = H, (2.8)

(16)

16 第2章 ゆらぎ とおくと, χM M = ⟨M2⟩ − ⟨M⟩2 kBT = 1 kBT    ⟨ Ni=1 σi Nj=1 σjNi=1 σi ⟩ ⟨Nj=1 σj ⟩  = 1 kBT    Ni=1 Nj=1 ⟨(σi− ⟨σi⟩)(σj− ⟨σj⟩)⟩   , (2.9) さらに並進対称性があると = 1 kBT   N Nj=1 1− ⟨σ1⟩)(σj− ⟨σj⟩)   = 1 kBT   N Nj=1 C(1, j)   , (2.10) と変形することができます. ここで,サイト1とjの距離r1j = rとするとC(1, j)∼rd−2+η1 e−r/ξとなるので, = N kBTV dd⃗r e −r/ξ rd−2+η N kBT ξ2−ηV′ dd⃗x e −x xd−2+η, (2.11) となります. すなわち, 1スピン当たりの帯磁率χ0, χM M = N χ0は χ0∝ ξ2−η, (2.12) という振る舞いをすることがわかります.

2.2

平均場近似でのゆらぎ

長距離相互作用(無限レンジ)模型(Husimi-Temperley模型)を考えます: H = −J z 2N (Ni=1 σi )2 − H ( Ni=1 σi ) . (2.13) このとき,分配関数は Z =σ1=±1 · · ·σN=±1 e−βH = NM =−N NCN+e βJ z 2NM 2+βHM = ∫ 1 −1 dmeβ2NJ zN 2m2+βHN m−N[1+m 2 ln 1+m 2 + 1−m 2 ln 1−m 2 ], (2.14) で与えられます. ただし,ここで {N ++ N= N N+− N−= M , N±= N± M 2 , N !≈ N Ne−N, m = M/N, (2.15) などを用いました. また, N 体のときの磁化の二乗の平均は ⟨M2 N =      T > Tc O(N ) T = Tc O(N3/2) T < Tc O(N2) , (2.16)

(17)

2.3 低次元でのゆらぎ 17 で与えられます. これはレポート課題になっているので導出してみてください. 以下では,別の方法を用いた計算を紹介します. 分配関数の計算において, Z = Treβ2NJ z( ∑ σi)2+βHσi = Tr1 −∞ dxe−x22 +x ( βJ z NN i=1σi ) +βHNi=1σi =1 −∞ dxe−x22 2NcoshN ( xβJ z N + βH ) , (2.17) x =√N yとおいて, = √ N −∞ dye−N y22 +N ln(2 cosh[y βJ z+βH]), (2.18) を得ます. ここで 1 −∞ dxe−x22+ax = e 1 2a 2 , (2.19) を用いました. このとき, K = βJ zとして ⟨M2⟩ = 2N Z ∂Z ∂K, (2.20) ∂Z ∂K = √ N −∞ N tanh(√Ky) y 2√Ke −N(y2 2 −ln 2 cosh( Ky) ) dy, H = 0, (2.21) となります. この場合も,式(6.2)と同じ結果を得ることができます. また,この模型の臨界指数は,以前求めた平均場近似の臨界指数とは異なります.

2.3

低次元でのゆらぎ

この節では,低次元系におけるゆらぎを考えます. まずは1次元Ising模型を取り扱います: H = −J N−1 i=1 σiσi+1− H Ni=1 σi. (2.22) 以下ではH = 0の場合を考えます. 分配関数は Z = Tre−βH = ∑ σ1=±1 · · ·σN=±1 eβJ (σ1σ2+···+σN−1σN) = 2 ∑ {τi=±1} eβJ (τ1+···+τN−1) = 2[2 cosh βJ ]N−1, (2.23) となります. ここで,デュアル変換 σiσi+1= τi=±1, (2.24)

(18)

18 第2章 ゆらぎ を用いました. この表式は明らかに特異性をもたないので有限温度に相転移は現れません. 次に, この系における相関 関数を計算します: ⟨σiσj⟩ = ⟨τiτi+1· · · τj−1⟩ = 2 ∑ {τi=±1} eβJ τ1· · · eβJ τi−1τ ieβJ τi· · · τj−1eβJ τj−1eβJ τj· · · eβJ τN−1/Z = 2[2 cosh βJ ]

N−1−(j−i)[2 sinh βJ ](j−i)

2[2 cosh βJ ]N−1 = (tanh βJ )j−i = eln[tanh βJ ](j−i) = e−(j−i)/ξ. (2.25) ここで,相関長ξξ =− ln tanh βJ, (2.26) で定義されます. 次に, 1次元XY模型を考えます: H = −J N−1 i=1 cos(θi− θj)− H Ni=1 cos θi. (2.27) XY模型とIsing模型では,ドメインウォールを作るときに必要とするエネルギーが異なります. (この部分について はそのうち加筆します) 次に, XY模型における調和近似(変異に関して2次)を考えます: H = −J⟨i,j⟩ cos(θi− θj)− H Ni=1 cos θi ≈ E0+ J 2 ∑ ⟨i,j⟩ (θi− θj)2+ H 2 Ni=1 θ2i = E0+ ∑ k J 2 [ 2− cos kx− cos ky+ H 2 ] θ⃗kθ−⃗k, (2.28) ただし,ここでは2次元の場合を考えました. また, E0= J z 2 N− NH, θ⃗k = 1 Nj θjei⃗k⃗rj, θj= 1 N k θ⃗ke−i⃗k⃗rj, (2.29) などを用いました. ここで変数範囲は−π < θi< πから−∞ < θi<∞とすることができ,このとき,

⟨cos θj⟩ = ⟨eiθj⟩ = e−

1 2⟨θ

2

(19)

2.3 低次元でのゆらぎ 19 が成り立ちます. また, ⟨θ2 j⟩ = 1 N Nj=1 ⟨θ2 j⟩ = 1 N Nj=1 ⟨ 1 Nk θ⃗ke i⃗k·⃗rjk θ⃗k′e i⃗k′·⃗rj ⟩ = 1 N Nj=1 1 N k,⃗k′ ei(⃗k+⃗k′)·⃗rj⟨θ kθ⃗k′⟩ = 1 Nk ⟨θ⃗kθ−⃗k⟩, (2.31) であり, ⟨θkθ−k⟩ = 1 J 2(2− cos kx− cos ky) + H/2 , (2.32) より ⟨θ2 j⟩ = 1 (2π)2 ∫ d⃗kJ kBT 2(2− cos kx− cos ky) + H/2 2πkBT (2π)2 ∫ 0 4k J k2+ 2H → ∞, (2.33) となるから, ⟨cos θj⟩ = e− 1 2⟨θ 2 j⟩→ 0 (H → 0), (2.34) となります. このとき, ∫ Λ 0 dd⃗k k2 , (2.35) は1,2次元で赤外発散(infrared divergence)と呼ばれる発散をもつ. 3次元の場合には, ⟨⃗Sk· ⃗S−k⟩ < kBT

J (3− cos kx− cos ky− cos kz)

< 1kBT 2J k2 , (2.36) が成り立ち, 1 = 1 N Nj=1 Sj2= 1 N k S⃗k· ⃗S−⃗k = m2+ 1 (2π)2 ∫ k̸=0 d⃗k S⃗k· ⃗S−⃗k, (2.37) であることから m2> 1− kBT (2π)3 ∫ d⃗k 1 k2, (2.38) を得ます. この積分は有限なので十分小さなT で必ずm > 0となり,低温で長距離秩序があることがわかります. 詳し くは,参考文献[1,2]などを読んでみてください.

(20)

20 第2章 ゆらぎ

2.4

くりこみ群の考え方

この節からは,くりこみ群の考え方を見ていきます. 2次相転移における相関長の発散の様子, T → Tc, ξ→ ∞t = T− Tc Tc , ξ∝ t−ν (2.39) とする. ここでν は相関長の臨界指数である. このとき, 距離のスケールをb倍したとき、実効的温度(相互作用の強 さ)(βJ )がどのように変わるか考えます. スケールをb倍したとき,相関長は ξ→ ξ/b (2.40) となります. このとき, ξ(T )に対して, ξ(T′) = ξ(T )/bとなる実効温度T′を考えると, ξ′ = ξ/b =1 b|t| −ν =|t|−ν, (2.41) すなわち, |t|−ν |t′|−ν = b, (2.42) となります. あるいは, 変形して ν = ln b ln t′ t , (2.43) となります. 次に,スケール変換の下でのIsing模型: e−βH= eβJσiσj+βHσi, (2.44) の振る舞いをみていきます. すなわち, K = βJ の変化を調べます. スケール変換に関するパラメータの変化を K′= Rb(K) =    K1 .. . KM    =    R1 b(K1,· · · , KM) .. . RM b (K1,· · · , KM)    , (2.45) とします. ここでハミルトニアン中のパラメータK1= βJ , K2= βH,· · · , KM =· · · などとしました. 固定点(fixed point)KK∗= Rb(K∗), (2.46) により定義されます. これはつまり, ξ = 0,∞(臨界点)であることを意味します. 次に, 固定点からのずれ δK = K− K∗, (2.47) を考えます. このとき, スケール変換は δK′= Rb(δK) = K− K∗, (2.48) となります. Kのまわりで線形化することを考えると, δK= T δK, (2.49) Tij = ∂Rib(K1,· · · , KM) ∂Kj K=K , (2.50) となります. さらに, Tの固有値問題を考え, T ui = λiui, i = 1,· · · , M, (2.51)

(21)

2.4 くりこみ群の考え方 21 とします. uiをスケーリング変数といい, λi> 1なら有意な(relevant)変数, λi< 1なら有意でない(irrelevant)変数, λi = 1ならmarginalな変数といいます. marginalな変数の場合には, さらに高次を調べなければなりません. また, λi= byi と書いた場合には, yi=ln λln bi > 0なら有意, yi< 0なら有意でないとなります. 次に,無限小のスケール変換 b→ eδl, δl≪ 1, (2.52) を考えます. このとき, u′= Rb(u) = T u =    by1 . .. byM    u ≈    1 + y1δl . .. 1 + yMδl    u, (2.53) となるので,一回のスケール変換における変化は δu = u− u =    y1 . .. yM    uδl, (2.54) すなわち, δu δl =    y1 . .. yM    u, (2.55) となります. 次に,粗視化の考え方をみていきます. 例として周期的境界条件下での一次元Ising模型を考えます: Z =σ1=±1 · · ·σN=±1 eK(σ1σ22σ3+···+σNσ1). (2.56) ここでK = βJ としました. このとき,偶数番目のスピンについて和を取ることを考えます: Z = ( ∑ σ1=±1 · · · ) ( ∑ σ2=±1 · · · ) eK(··· ) (2.57) = Tr′2 cosh[K(σ1+ σ3)]· · · (2.58) = Tr′Ae˜ K′(σ1σ3+··· ). (2.59) ただし, Trは奇数番目のスピンについての和を表し, ˜AK′は変換されたパラメータを表します. このとき, K′= 1 2ln cosh(2K), b = 2 (2.60) となります. 低温および高温極限では K′=    K2, K≪ 1 (T → ∞) K−1 2ln 2 1 2e −4K, K≫ 1 (T → 0), (2.61) となります. このときには,有限のKに固定点をもたず, 任意の有限なKK = 0にくりこまれることがわかります. すなわち,この模型は有限温度で相転移をもちません. 次に,二次元での粗視化を考えます. 粗視化の方法としては,副格子をトレースアウトすることを考えます. まず, あ る一つのスピンσ0の和を取ることを考えます: ∑ σ0=±1 eKσ01234)= AeK11σ22σ33σ44σ1)+K21σ32σ4)+K4σ1σ2σ3σ4. (2.62)

(22)

22 第2章 ゆらぎ このとき, σi (i = 1,· · · , 4)σ0の最近接のスピンであり, K1, K2, K4は変換されたパラメータである. 変換前と比 べると,                   K→ K1= 1 8ln cosh(4K) 0→ K2= 1 8ln cosh(4K) 0→ K4= 1 8ln cosh(4K)− 1 2ln cosh(2K) 0→ A = 2 cosh1/8(4K) cosh1/2(2K) , (2.63) という対応関係があることがわかります. すなわち,くりこむたびにパラメータの数が増えてしまいます. そこで,近似 を用いることを考えます. まわりの余計な相互作用を取り込むため, factor 4をかけると K→ K′= 4×1 8ln cosh(4K), (2.64) となり,有限のKに固定点が現れます. すなわち,有限温度において相転移が現れます. 以上で用いたような, 実空間において粗視化をおこなうくりこみ群を実空間くりこみ群の方法といいます.

2.5

波数空間くりこみ群

φ4モデル: H = −Jijmimj− λi (m2i − 1)2, (2.65) を考える. 連続空間で考えると, m(r) = m(r) + (r− r)∇m(r) +1 2|r − r |22m(r) +· · · , (2.66) として, H = ∫ [ 1 2J a 2R2(∇m(r))2− (2λ + J)m(r)2+ λm(r)4+· · · ] dr, (2.67) が得られる. ここでaは格子間隔であり,変数変換: m(r)2 a d−2 J R2ϕ(r) 2, (2.68) を行えば, H = ∫ [ 1 2(∇ϕ) 2+1 2ta −2ϕ(r)2+ uad−4ϕ(r)4 ] dr, (2.69) を得る. ここでt = 2λ+J J R2 , u = λ J R2 とした. Fourier変換: ϕk= ∫ drϕ(r)e−ik·r, ϕ(r) = 1 (2π)ddkϕkeik·r, (2.70) を用いると, H = 1 (2π)ddk1 2k 2 ϕkϕ−k+ 1 2 ta−2 (2π)ddkϕkϕ−k+ uad−4 (2π)3 ∫ dk1 ∫ dk2 ∫ dk3ϕk1ϕk2ϕk3ϕ−k1−k2−k3, (2.71) と書くことができる. ここで, 1項目の係数を保存するために, ϕk→ ζϕkと波動関数を変換する: ϕkϕ−k→ ζ2ϕkϕ−k. (2.72)

(23)

2.5 波数空間くりこみ群 23 0≤ k ≤ Λとし,スケールをb倍することを考える. すなわち, Λ/b≤ k ≤ Λの範囲を積分し, Λ/b→ Λと再スケール することを考える. 一般に,ハミルトニアンを H = H0+ ∑ i=1 giHi (2.73) とおくと,

Tre−H= Tre−H0Tre

−H0igiHi Tre−H0 = Tre −H0⟨e−giHi⟩ 0 = Tre−H0egi⟨Hi⟩0+12 ∑ gigj⟨HiHj⟩c+··· (2.74) が成り立つ. ここで,H0= 12k2ϕkϕ−kとする. このとき,第2項は 1 2 ta−2 (2π)d ⟨∫ Λ 0 dkϕkϕ−k ⟩ 0 = 1 2 tb2(a)−2 (2π)d ( 1 Z0(a′) ∫ Dϕ< ke−H(a )< k′ dkϕ<kϕ<−k+ const. ) (2.75) となり,変換a−1→ b(a′)−1によりt→ tb2と変換されるようにみえる. 次に, uについての項 uad−4⟨ ∫ Λ 0 dk1 ∫ Λ 0 dk2 ∫ Λ 0 dk3ϕk1ϕk2ϕk3ϕ−k1−k2−k30 (2.76) の変換は, k1, k2, k3< Λ/bのときu→ ub4−d, k1> Λ/b(ひとつだけ)のときu→ 0, k1, k2> Λ/bのとき ∫ −∞ ϕk1ϕk2e− 1 2k 2ϕ kϕ−k/Z 0= (2π)d |k1|2 δ(k1+ k), (2.77) となる. この寄与は無視することができないので,取り入れなければならない. すなわち, 6uad−4 ( 1 Z0(a′) ∫ Dϕ< ke−H0 (a′) ∫ Λ/b 0 ϕ<k1ϕ<−k1> k 1 |k|2 ) , (2.78) をtの項への寄与とする. ここで, ∫ Λ Λ/b dk 1 |k|2 = a−(d−2) ∫ 1 1−1/b dx 1 |x|2 ≡ a−(d−2)Ab, (2.79) とする. ただし,ここでk = Λx, Λ = 1/aとした. 以上をまとめると, { t→ t′= b2t + 12uAbb2+· · · u→ u′= ub4−d , (2.80) となる. さらに, ϕ→ ζϕ, ζ2= b−ηを考えれば { t′ = b2−η(t + 12uAb) u′ = b4−d−2ηu , (2.81) となる. 固定点は明らかにt∗= u∗= 0 (Gauss固定点)のみである. t = t∗+ δt, u = u∗+ δuとすると ( δt′ δu′ ) = ( b2 b2uAb 0 b4−d ) ( δt δu ) , (2.82) を得る. このとき { yt= 2 yu= 4− d , (2.83) であるから, 4 > dで負となる. このような場合,臨界指数などにずれが出てくるため, uは危険な変数と呼ばれる. そ

こで,O(u)ではGauss fixed point (平均場)しか得られなかったため,O(u2)を考え,高次の項からのくりこみを取り

(24)

24 第2章 ゆらぎ

2.6

Berezinskii-Kosterlitz-Thouless

転移

[

3

]

n = 2, d = 2の場合を考える(2次元XY模型). すなわち,ハミルトニアンは H = −J⟨i,j⟩ cos(θi− θj)− H Ni=1 cos θi (2.84) で与えられる. 低温ならθi− θj ≪ 1であるから, H ≈ J 2 ∑ (θi− θj)2+ H 2 ∑ θi2 (2.85) となる. Fourier変換 θ⃗k = 1 Nj θjei⃗k·⃗ri, θj = 1 Nk θ⃗ke−i⃗k·⃗rj (2.86) を導入すれば,ハミルトニアンは H ≈ Eg+ J 2 ∑ k (4− 2 cos(kxax)− 2 cos(kyay))θ⃗kθ−⃗k ≈ Eg+ J 2 ∑ k2θkθ−k, (2.87) となる. a→ baで不変,すなわち, くりこみ不変なのですべての点が臨界点であり,前回の結果からゆらぎが発散する. つまり,長距離秩序がない. また,

⟨cos(θi− θj)⟩ = ⟨Si· Sj⟩ = ⟨ei(θi−θj)⟩ = e−

1 2⟨(θi−θj)2, (2.88) であり,並進対称性を利用すると ⟨(θj− θ0)2⟩ = 1 N ⟨ ∑ n (θj(n)− θn)2 ⟩ = 2kBT J2π/a 0 d⃗k (2π)2 1− e−i⃗k⃗r k2 = kBT πJ ln r a, (r≫ a), ⃗r = ⃗rj− ⃗r0, (2.89) が得られるので,相関関数は ⟨S0Sr⟩ = e− 1 2 kB T πJ ln r a = (r a )−kB T 2πJ , (2.90) と与えられる. ただしここで, g(r) =2π/a 0 d2k (2π)2 1− ei⃗k⃗r k2 = 1 ln r a+ const., r≫ a, (2.91) を用いた. これでは任意の温度で冪型の減衰となってしまうので,高温でexp型の減衰を出すために周期性を考慮する 必要がある. また,相転移の特徴づけとして渦(vortex)を考える. すなわち, 渦がない低温と渦が効いてくる高温を考えることに する. 渦度nを以下の表式で定義する: ∆θi= 2πn. (2.92)

(25)

2.6 Berezinskii-Kosterlitz-Thouless転移[3] 25 このとき, θ(r)− θ(r + 1) ∼ 1 r, (2.93) であり,渦が一つあるとエネルギーは EV = ∫ L2 0 (∇θ)2d⃗r = 2πL 0 1 r2rdr∼ A ln L, (2.94) だけ増加する. エントロピーは S = kBln L2= 2kBln L, (2.95) であるから, E− T S = A ln L − 2kBT ln L = (A− 2kBT ) ln L, (2.96) となる. つまり, T > A/2kBなら渦が発生した方が得であり, T < A/2kB なら渦が発生しない方が得である. より詳 細に調べるため, ∇θ(⃗r) = ∇θSW(⃗r) +∇θV(⃗r), (2.97)

というように, 無回転成分(irrotional part) ∇ × (∇θSW(⃗r)) = 0と無発散成分(Sourse-free) ∇ · (∇θV(⃗r)) = 0にわ

けて d⃗r∇θ⃗r= 2πn, (2.98) より ∇ × ∇θV(⃗r) = 2πδ(⃗r− ⃗r0)n⃗ez, (2.99) を得る. 簡単な計算から − ∇2(∇θ V(⃗r)) =∇ × (2πρ(⃗r)⃗ez), (2.100) のように書くことができて,その解は ∇θ(⃗r) = ∇ ×V d⃗r a2g(⃗r− ⃗r )2πρ(⃗r)⃗e z, (2.101) で与えられる. ここで 2g = δ(⃗r), (2.102) および g(r) = 1 ln r a, (2.103) である. ゆえに, βH =K 2 ∫ d⃗r(∇θ)2 = K 2 ∫ d⃗r(∇θSW)2+ (2π)2 K 2 ∫ d⃗rd⃗r1 a2 ∫ d⃗r2 a2 ρ(⃗r1)ρ(⃗r2)(∇g(⃗r − ⃗r1))(∇g(⃗r − ⃗r2)) = K 2 ∫ d⃗r(∇θSW)2− πK|r−r′|>a d⃗rd⃗r′ a4 ρ(⃗r)ρ(⃗r ) ln|⃗r − ⃗r′| a + πK ˜C|r−r′|<a d⃗rd⃗r′ a4 ρ(⃗r)ρ(⃗r )− 2π2CK {∫ d⃗r aρ(⃗r) }2 (2.104) ただし, r≥ aでは上で定義したg(⃗r), r < aではC˜ と置くものとする. あるいは, βH = K 2 ∫ d⃗r(∇θSW)2− πKi̸=j ninjln|⃗r i− ⃗rj| a + πK ˜Ci n2i − 2π2CK{i ni}2, (2.105)

(26)

26 第2章 ゆらぎ と書くことができる. ここで, ni =±1とする. このとき, 最終項を除いたものを2次元Coulomb gas模型という (πK = J , πK ˜C = µとすればよい). 次に,この模型をくりこみ群の方法で解析することを考える. すなわち,渦のコア(Coulomb gas模型の電荷)の半径 ττ→ τ + dτ, τ = aとすることを考える. e−βπK ˜C≡ ˆKとすると,分配関数は Z ={ni} 1 (ni!)2 ˆ K2nD2n d⃗r2n· · ·D1 d⃗r1exp ( βpipjln ⃗ri− ⃗rj τ ), (2.106) となる. ただし,ここでpi= πJ niである. Kosterlitzの論文[3]によると,くりこみの操作により βp2→ βp2 ( 1− (2π)2(βp2)( ˆ2)2 τ ) , (2.107) ˆ 2→ ˆKτ2 ( 1− (βp2− 2)dτ τ ) , (2.108) と変換される. 変数変換 x = βp2− 2, (2.109) y = 2π ˆKτ2, (2.110) を行うと dx d ln τ =−(2π) 2(βp)2( y )2 = ( βp2 2 )2 y2≃ −y2 (2.111) dy2 d ln τ =−2xy 2 (2.112) ここでx≈ 0, βp2≃ 2を用いた. これより, x2− y2= const.であることがわかる. また, ln τ = lとして dl dx = 1 y2 = 1 x2+ Ct, −Ct = x 2− y2, (2.113) つまり, l(x) =−√1 Cttan −1x Ct+ const., (2.114) であり, lnτ0 τ =−l(x) + l(0) = 1 Cttan −1(x Ct ) , (2.115) となる. すなわち τ τi = el(x)−l(xi)= exp ( 1 Ct ( tan−1√xi Ct− tan −1x Ct )) , (2.116) が成り立ち, x = 0, τ → ξξ τi = e√1Ct ( tan−1 xi√ Ct ) ∼ e π 2√Ct = e α t, (2.117) となる. ただしここでtan−1 ( xi Ct ) = tan−1 ( Ct ) = π2 とした. ここで, ξ∝ t−ν であるから, ν =∞である. すな わち, KT転移をこえると冪減衰がexp減衰に変化する. 特に,臨界点直上では⟨S0· Sr⟩ ∼ r−1/4となる.

(27)

27

3

転送行列法

助教の森さんによる代講です。

3.1

経路積分と転送行列

経路積分法と転送行列法は, d次元量子系とd + 1次元古典系の対応関係として理解することができます. まずは,経 路積分からみていきます. d次元量子系を考え, 分配関数において, 指数関数部分をM 分割し, 間に完全系の条件式を はさむことを考えます: Z = Tre−β ˆH =∑ φ0 ⟨φ0|e−β ˆH|φ0 =∑ {φ} ⟨φ0|e−∆β ˆH|φM−1⟩⟨φM−1|e−∆β ˆH|φM−2⟩⟨φM−2| · · · |φ1⟩⟨φ1|e−∆β ˆH|φ0⟩. (3.1) ここで, β = M ∆β, (3.2) としました. さらに, ⟨φi|e−∆β ˆH|φi−1⟩ ≡ e−W (φi,φi−1), (3.3) と定義すると, Z ={φ} e−M−1i=0 W (φi+1,φi), (3.4) と書くことができる. このとき, eの肩に乗っているのをd + 1次元の古典ハミルトニアンとしてみなすことができ, W (φi+1, φi)は古典変数φi+1, φiの間の相互作用とみなせる. これが経路積分法の概要です. これの逆の発想が転送行列法になります. 具体例として, 1次元Ising模型での転送行列法を考えます: H = −J N−1 i=1 σiσi+1− h Ni=1 σi. (3.5) このスピン鎖を, 1個の量子スピンの虚時間発展とみなすことを考えます. すなわち, Z ={σj=±1} e−βH = ∑ {σj=±1} eβh2σ1e βh 2 σ1+βJ σ1σ2+ βh 2σ2e βh 2 σ2+βJ σ2σ3+ βh 2 σ3· · · e βh 2 σN−1+βJ σN−1σN+ βh 2 σNe βh 2 σN, (3.6)

(28)

28 第3章 転送行列法 としたときに, eβh2σi+βJ σiσi+1+βh2σi+1 ≡ ⟨σ i| ˆT|σi+1⟩, (3.7) と定義すると, Z ={σj=±1} eβh2σ1⟨σ 1| ˆT|σ2⟩⟨σ2| ˆT|σ3⟩ · · · ⟨σN−1| ˆT|σN⟩e βh 2σN, (3.8) と書けます. このTˆ,虚時間発展の演算子として理解できると思います. さらに,完全系の条件を用いると Z =σ1,σN eβh2 σ1⟨σ 1| ˆTN−1|σN⟩e βh 2 σN, (3.9) となります. また,周期的境界条件を課した場合には, ZPBC= ∑ σ1=±1 ⟨σ1| ˆTN|σ1⟩ = Tr ˆTN, (3.10) という形で与えられます. 基底を |σ = +1⟩ = ( 1 0 ) , |σ = −1⟩ = ( 0 1 ) , (3.11) とすると, ˆ T = ( eβ(J +h) e−βJ e−βJ eβ(J +h) ) , (3.12) となります. 適当なユニタリ変換を用いて ˆ T = U ( λ1 0 0 λ2 ) U†, 1> λ2), (3.13) のように対角化すると, Z =σ,σ′=±1 eβh2(σ+σ′)⟨σ|U ( λN1−1 0 0 λN2−1 ) U†|σ′⟩, (3.14) となります. このとき, N → ∞ではλN1−1 ≫ λ2N−1であるから, cを定数としてZ ∼ cλN1−1 とみなすことができま す. したがって,例えば単位スピン当たりの自由エネルギーは f =−kBT N ln Z ≈ −kBT ln λ1, (3.15) のようになります. すなわち, 2N 個の和の問題が2× 2の行列の最大固有値問題とすることができました. 次に, Pauli行列を用いる方法を考えます: σx= ( 0 1 1 0 ) , σy= ( 0 −i i 0 ) , σz = ( 1 0 0 −1 ) . (3.16) これらを用いると, ⟨σ| ˆT|σ′⟩ = eβh2 σeβJ σσ′e βh 2σ′ ≡ ⟨σ| ˆT1Tˆ2Tˆ3|σ′⟩, (3.17) を得ます. ここで ˆ T1= ˆT3= e βh 2 σ z , Tˆ2= ( eβJ e−βJ e−βJ eβJ ) , (3.18) としました. このとき tanh ˜K = e−2βJ, (3.19) とすれば, ˆ T2= 1 √ sinh ˜K cosh ˜K eKσ˜ x, (3.20)

(29)

3.1 経路積分と転送行列 29 と表すことができます. すなわち ˆ T = ˆT1Tˆ2Tˆ3= 1 √ sinh ˜K cosh ˜K eβh2 σ z eKσ˜ xeβh2σ z , (3.21) となります. これは, z方向とx方向に磁場がかかった量子スピンとみなすことができます. すなわち, ˆT の最大固有値 を求めるということは, このような量子スピン系の基底状態を求めることと等価であることがわかります. 次に, h = 0のときのスピン期待値とスピン相関関数を考えます: h = 0, T =ˆ √ 1 sinh ˜K cosh ˜K eKσ˜ x. (3.22) このとき,固有値・固有関数は | ↑x⟩ = 1 2(| ↑⟩ + | ↓⟩), λ1= eK˜ √ sinh ˜K cosh ˜K , (3.23) | ↓x⟩ = 1 2(| ↑⟩ − | ↓⟩), λ2= e− ˜K √ sinh ˜K cosh ˜K , (3.24) となります. 以下,簡単のために周期的境界条件を考えると ⟨σiσj⟩ = 1 ZPBC ∑ {σ} σiσje−βH, (i < j) = 1 ZPBC Tr ˆTi−1σzTˆj−iσzTˆN−j+1 = 1 ZPBC {λN +i−j 1 ⟨↑x|σzTˆj−iσz| ↑x⟩ + λ2N +i−j⟨↓x|σzTˆj−iσz| ↓x⟩}, (3.25) となる. このとき σz| ↑x⟩ = | ↓x⟩, σz| ↓x⟩ = | ↑x⟩, (3.26) であるから, ⟨σiσj⟩ = 1 ZPBC {λN +i−j 1 λ j−i 2 + λ N +i−j 2 λ j−i 1 }, (3.27) を得る. ここでZPBC≈ λN1 であるから ⟨σiσj⟩ ≈ ( λ1 λ2 )i−j = exp(−|i − j|/ξ), ξ−1= lnλ1 λ2 , (3.28) となります. また,一つのスピンの平均も同様に考えることができます. 例えば,境界状態としてそれぞれアップとダウ ンに固定したものを考えると, ⟨σi⟩ = ( λ2 λ1 )i−1 ( λ2 λ1 )N−i = e−(i−1)/ξ− e−(N−i)/ξ, (3.29) となります. 次に梯子格子Ising模型での転送行列法を考えます. この場合には, 2個のスピンが相互作用しながら虚時間発展する とみなすことができます: H = −Jj (σ1jσ1,j+1+ σ2jσ2,j+1)− J′j σ1jσ2j. (3.30) このとき,転送行列は4× 4の行列となり ˆ T =     e2K+K′ 1 1 e−2K+K′ 1 e2K−K′ e−2K−K′ 1 1 e−2K−K′ e2K−K′ 1 e−2K+K′ 1 1 e2K+K′     , K = βJ, K′= βJ′, (3.31)

(30)

30 第3章 転送行列法 で与えられる. ただし, このとき基底は {| + 1, +1⟩, | + 1, −1⟩, | − 1, +1⟩, | − 1, −1⟩}, (3.32) で張っている. よって, 先ほどと同様にこの問題において自由エネルギーを計算することは4× 4の行列の最大固有値 を求める問題と等価になる. このとき,以下のPerron-Frobeniusの定理より必ず最大固有値が存在し, 相関長は発散し えない. これは,有限系において相転移が存在しないことと対応している. 転送行列のスピン表示を考えると, ⟨σ1σ2| ˆT|σ′1σ2′⟩ = e K′ 2 σ1σ2+K(σ1σ′12σ′2)eK′2 σ1′σ2, (3.33) より ˆ T = 1 sinh ˜K cosh ˜Ke K′ 2σ z 1σ z 2eK(σ˜ x 1 x 2)eK′2 σ z 1σ z 2 (3.34) となることがわかる. これは, z方向に相互作用があってx方向に磁場がかかった2個の量子スピンとみなすことがで きる. より一般にM × N個の梯子格子を考えても同様の結果が得られる. そのため,このような系をM 個の横磁場Ising 模型という. 定理1(Perron-Frobeniusの定理) 以下の条件を満たすd× d行列A; 1. ∀i, jについてAij ≥ 0, Aij∈ R 2. 正の実数nが存在し(An) ij > 0 において,固有値のうち一つは実数であり,対応する固有ベクトルは全ての成分が正の実数となる. この固有値をλ1と するとλ1>|λi|,∀i.

(31)

31

4

フラストレーション

4.1

フラストレーション

フラストレーションにおいては,自由エネルギー F = E− T S, (4.1) におけるエネルギーEとエントロピーSの競合が重要になってきます. 通常,絶対零度におけるエントロピー密度は熱 力学的極限で0になりますが,フラストレーションをもつ系では有限の値が残ります. これを残留エントロピーとよび ます. 例えば,三角格子の場合はS(0)/N kB = 0.3383· · · , Villain模型の場合はS(0)/N kB = 0.2916· · · ,かごめ格子 の場合はS(0)/N kB= 0.502· · · となります. また, 三角格子は辺を共有するタイプのフラストレーション系であるが, かごめ格子は点を共有するタイプのフラストレーション系であるため, かごめ格子の方がよりフラストレートした系で あり,このようなタイプの系を頂点共有格子といいます. 次に,フラストレーションをもつ系での相転移を考えます. 具体的には,三角格子反強磁性体 H = Jnn ∑ ⟨i,j⟩ σiσj− Jnnn ∑ ⟨⟨i,k⟩⟩ σiσk, (4.2)

を考えます. この模型は目方模型とよばれ, nnは最近接(nearest neighbor), nnnは次近接(next nearest neighbor)を

表し,和の記号はそれぞれ最近接および次近接の和を取ることを意味します. このハミルトニアンに対して平均場近似 を用いて各副格子の平均値を計算すると,      mA=⟨σA⟩ = tanh(−βJnn(3mB+ 3mC) + 6JnnnmA+ βH) mB =⟨σB⟩ = tanh(−βJnn(3mC+ 3mA) + 6JnnnmB+ βH) mC=⟨σC⟩ = tanh(−βJnn(3mA+ 3mB) + 6JnnnmC+ βH) , (4.3) となります. これを解析すると, 高温側からmA = mB = mCとなるdisordered phase, mA =−mB, mC = 0と

なるpartially disordered phase,それぞれ磁化の大きさが異なる3-sublattice phase,一つだけ磁化の大きさが異なる

2-sublattice phaseのように相転移が起きることがわかります. このように徐々に起きる相転移を逐次相転移とよび

(32)
(33)

33

5

Monte Carlo

5.1

Monte Carlo

分配関数 Z =

all states{i}

e−βEi, (5.1) を考え,これの各エネルギーに属する状態の重みを計算したい. このときの方法の一つは,状態iを一様に発生する方法 です. このとき, A = ∑ sample e−βEi ≃ Z, (5.2) B = ∑ sample Eie−βEi ≃ ⟨Ei⟩Z, (5.3) として,エネルギー期待値を B/A≃ ⟨E⟩, (5.4) のように計算することができます. この方法を単純サンプリングといいます. 単純サンプリングは, N が大きいと間 違った結果を出すことが知られています. これは,一様に状態を発生させた場合には,平衡状態以外の状態を多くサンプ リングしてしまうことが原因です. そこで,各状態ie−βEiに比例する確率で現れるように状態を発生させることを 考えます. すなわち,エネルギー期待値を 重みつき sampling Ei ∑ 重みつき sampling 1 =⟨Ei⟩, (5.5) と計算します. これが統計力学におけるモンテカルロ法の基本的なアイデアです. また, この乱数の発生方法としては マルコフ鎖の方法を用います.

5.2

マルコフ鎖

,

確率過程

,

マスター方程式

状態の変化を単位時間当たりの遷移確率{wi→j}で与えるとします. また,状態iの出現する確率をpi, i = 1,· · · , M, とし,確率分布を⃗p = (p1,· · · , pM)で表すとします. 例えば,スピン1個の場合の確率分布は⃗p = (p+, p)のように表 せ,その時間発展は { p+(t + ∆t) = p+(t)(1− w+→−∆t) + p−(t)w−→+∆t p(t + ∆t) = p+(t)w+→−∆t + p(t)(1− w−→+∆t) , (5.6)

(34)

34 第5章 Monte Carlo法

によって与えられます. このような方程式をMaster equationといい, {wi→j}が過去の状態によらないときMarkov

過程といいます. また, マスター方程式を p(t + ∆t) = L(∆t)⃗p(t), (5.7) と書いたときのL(∆t)を時間発展演算子といいます. 一般の場合には, L(∆t)の行列成分は    Lij = wj→i∆t, for i̸= j Lii= 1j̸=i wi→j∆t , (5.8) と書くことができます. このとき,明らかに確率保存則∑iLij = 1が成立することはわかると思います. さらに, Lpによらないため, p(t + n∆t) = (L(∆t))n⃗p(t), p(t) =⃗ |p(t)⟩, (5.9) と書くことができます. ここで固有値問題を考えて L(∆t)|ϕi⟩ = λi|ϕi⟩, (5.10) とおけば,初期状態 |p(0)⟩ =i ci|ϕi⟩, (5.11) に対して p(n∆t) = Ln⃗p(0) = Ln Mi=1 ci|ϕi⟩ = Mi=1

ciλni|ϕi⟩ → cmaxλnmaxmax⟩, for large n, (5.12)

となります. ここでλmaxはLの最大固有値を表します. このときの相対誤差は ( λi λmax )n → 0, as n → ∞, (5.13) です. ここで重要なのは, λmaxが非縮退でないと一意的な分布に収束しないことです. これを保障するのがペロン・フ ロベニウスの定理です. ペロン・フロベニウスの定理が成り立つためには, Lij = wj→i∆t≥ 0において”=”でない必 要があるので,マルコフ仮定のエルゴード性; ”あるnがあって(Ln)ij > 0となる. すなわち,全ての状態間(i→ j)の 遷移が存在する”ことが重要になってきます. また,∑nj=1pj(t) = 1→n j=1pj(t + ∆t) = 1が成り立つので, p(0)→ ⃗p(t) = ⃗p(n∆t) = Ln⃗p(0) = ⃗pstationary, (5.14) であるためにはλmax= 1, cmax= 1でなければならないことが直ちにわかります. すなわち, Mj=1 ϕ(j)max= 1, Mj=1 ϕ(j)k̸=max= 0, (5.15) となります. つまり, p(n∆t) = ⃗pst+ Mi=1,̸=max ciλni|ϕi⟩ = ⃗pst+ Mi=1,̸=max cie−n| ln λi||ϕi⟩, ⃗pst=max⟩, (5.16) と書くことができます. これは,|ϕi⟩は定常分布をi番目のモードで変形させる分布, ciはその強度, τi = 1/| ln λi|は そのモードの緩和時間と解釈できることを示しています. 続いて,熱平衡状態の実現について考えます. すなわち, ⃗pst = ⃗peqとなるようにLを決めます. ここで, peq= L⃗peq= (p1eq,· · · , p M eq), (5.17)

(35)

5.3 量子系の統計力学,量子モンテカルロ法 35 であり, p(m)eq = p (m) eq (1l̸=m wm→l∆t) +l̸=m p(l)eqwl→m∆t, (5.18) です. 熱平衡状態実現のための条件は 0 =l̸=m (wm→l∆tp(m)eq − wl→m∆tp(l)eq), p (m) eq = 1 Ze −βEm, (5.19) であるから, detailed balance wm→lp(m)eq = wl→mp(l)eq, (5.20) を満たすようにすればよいことがわかります. これを満たすような遷移確率はいくらでも考えることができるので, 選 び方によって熱浴法(Glauber法)やMetropolis法などとよばれています. また, p(t)の時間発展は微分の形で表すことができて, ∂⃗p(t) ∂t =L⃗p(t) (5.21) と表すことができます. これもマスター方程式とよばれています.

5.3

量子系の統計力学

,

量子モンテカルロ法

量子系の場合には,分布関数

p(i)∝ ⟨i|e−βH|i⟩ =

m

⟨i|Em⟩⟨Em|i⟩e−βEm (5.22)

を直接計算することは困難な場合があるので,経路積分の方法

⟨i|e−βH|i⟩ = ⟨i|e−βH/Me−βH/M· · · e−βH/M|i⟩

= ∑ j1,··· ,jM−1 ⟨i|e−βH/M|j 1⟩⟨j1| · · · ⟨jM−1|e−βH/M|i⟩, (5.23) を用いることを考えます. M が十分大きければ e−βH/M → 1 − β MH, (5.24) とできるので,それぞれ ⟨jk|e−βH/M|jk+1⟩ ≃ ⟨jk| ( 1 β MH ) |jk+1⟩ = ( δjkjk+1− β M⟨jk|H|jk+1⟩ ) , (5.25) とすることができます. 量子モンテカルロ法とは,この虚時間方向の経路についてもモンテカルロ法を適用する手法で す. すなわち, d次元実空間の量子系を, (d + 1)次元の古典空間としてとらえてモンテカルロ法を適用します. このと き,詳細つり合いの条件式は Wjp→j′p Wj′ p→jp =⟨jp−1|e −β MH|jp′⟩⟨jp′|e− β MH|jp+1 ⟨jp−1|e− β MH|jp⟩⟨jp|e− β MH|jp+1 , (5.26) となります. 次に,スピン系での例をみていきます. 具体例として,横磁場イジング模型 H = −J Ni=1 σziσzi+1− Γσix, (5.27)

(36)

36 第5章 Monte Carlo法 を考えます. この模型は, J > Γで秩序相(T = 0⟨σz⟩ = 0), J < Γで無秩序相(T = 0⟨σz⟩ ̸= 0)となることが 知られています. このとき, e−MβH→ e β M(Jσz iσi+1z )eΓ ∑σx + o ( β M ) , (5.28) のように分解することができます. これをSuzuki-Trotter分解といいます. 一般に, eA+B = (eA/neB/n)n, as n→, (5.29) をTrotter公式といいます. ここで, ⟨σi|e βΓ x i|σ′ i⟩ = Ae KSTσiσ′i, (5.30) という形でおくことを考えると, eβΓMσ x = coshβΓ M + σ xsinhβΓ M, (5.31) より     coshβΓ M = Ae KST sinhβΓ M = Ae −KST , (5.32) となるので,     A2= coshβΓ M sinh βΓ M KST = 1 2ln tanh βΓ M , (5.33) を得ることができます. これに対してモンテカルロ法を適用すると,高温では虚時間方向に,低温では実空間方向に揃っ た状態が得られることがわかります. 次に, 1次元Heisenberg模型 H = J Ni=1 σiσi+1, (5.34) を考える. このとき, e−βH= e−βJ(σ1σ22σ3+···+σNσ1) = e−βJ[(σ1σ23σ4+··· )+(σ2σ34σ5+··· )], (5.35) のような分割をしてSuzuki-Trotter分解を行えば実際に計算を実行することができます. 以上のような量子モンテカルロ法の問題点として,例えば二次元の三角格子反強磁性体に対して適用すると, 経路の

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