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〈研究ノート〉消費者製品システム観の構造 : 製品・要素技術と消費者問題解決様式の相互作用

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く研究ノー ト>

消費者製品システム観の構造

一製品 ・要素技術 と消費者問題解決様式の相互作用

竹 村 正 明

は じ め に 本稿 は,製 品 とそれ を利用す る使用者あ 間に成立する製品機能 について検討 す ることが 目的である。 ご く一般的には製品には機能があつて,そ れは消費者 の直面する問題 を解決す る,と い う理解がある。すなわち,た とえば自転車を 与 えられることでわれわれは歩 くよ りも広い行動範囲を手 に入れることが で き る,と い うわけである?製 品を使 うことによつて,わ れわれはい くつかの直面 す る問題 を解決で きることになるのだ。 そ こで通常のマーケテイングのテキス トの理解は次のように展開されること になる。す なわち,そ の問題 を発見せよ,と い うわけである。この問題は,も ちろん顕在化 されてい る場合 もあれば,消 費者 自身 もまだ理解 していない潜在 的な場合 とが考 えられる。そ こで語られるマーケテ イングの役害Jは後者の問題 を発見することである。 さ比をよ花看号櫓活≧盆岳を【各&予 蟹ご ま 岳密呂暑 格種を稔盈寄啓牲揚侶名 供 した製品が,事 前 に想定 した通 りには使 われない ことが多い,こ とが指摘さ れてい るのである (藤川=竹 内 (1996))。すなわち,消 費者の二‐ズを優れた マーケテ イング ・リサーチ技術 を用いて発見 したと思つていても,そ れが思 う 1)こ こでは,特 に個別の消費者を想定 している。以下では特に断りのない限りこの消費者

2'言

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1 6 0 彦 根論叢 第 3 2 0 号 ようには成果に結びつかないのである。もうすこしマーケテイングの製品開発 と消費の関係で理解すれば,製 品開発者が事前に想定 した以上の機能を消費者 が勝手に発見することがい くらで もあ りうる, というわけだ (Abernathy et al。(1985))。 この問題 は,い くつかの議論 を提供 した。典型的 には製品開発 にお けるマー ケテ ィング機 能やその情報 の役害Jを批判 的 に検討す る こ とになった (Workman (1993),小 ナ││(1996))。つ ま り,消 費者 が製 品 を使 用 してか らは じめて新 しい 機能 を発見す るのであれば,そ れを手 にとっていない段階でそれを発見するこ とはい くら詳細 な質問表調査 をして も理解で きない, とい うわけである。 ここか らい くつかの研究が進んだ。ひとつは,新 しい機能の発見 (消費者の 製品へ の意味 の付与 とい う研究者 もいる)を ,ど の ように製品開発 に貢献す る のか理解 しようとす るス タイルである (石井 =石 原 (1997))。もうひとつは, 新 しい機能の発見 メカニズムを記号論や言語学,社 会学 を用いて理解 しようと す るス タイルである (石井 =石 原 (1996))。 本稿 は, しか し,そ れ らとは少 し異なるアプローチをとっている。それは, 第1には もう少 しビジネスの実践 に貢献す ることを目指 していることである。 具体 的には,理 論的にではな く一般的な認識を前提 に議論 を考える,と いうこ とである。 しか し,第 2に は多少理論的であるが,条 件 を考察する点 にある。 つ ま り,消 費者は新 しい製品を手 にしたとき,新 しい機能を発見するときも, そ うでない ときもあるが,そ れはなぜか, とい うことを探 ろうとする点である。 もう少 しマーケテ イング活動の文脈で説明すれば,次 の ようになるだろう。 す なわち,企 業のマーケテイングで予測 される以外の事態が市場で起 こるこ ともあれば,予 測 どお りにお さまることもあ りえる, とい うわけである。これ は,ひ とえに製品 と消費者の相互作用 によって決 まって くるとさしあたって考 えているが,本 稿では特 に消費者側でおこるメカニズムを検討する。消費者は, 製品の新 しい機能 を独 自の意味 を付与することで発見するが, しか し,そ の発 見 は 「社会的 レベル」で共通性が高 くなることが多いのである。この問題 を理 解す るために参考 になる既存研究がある。それはイノベーシ ョン論であるが,

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<研 究ノート>消費者製品システム観の構造 161 それ を援用す ることで消費者が製品に意味 を「連続的」に付与す る場合 と,「不 連続」 に付与する場合 を考察す ることがで きそ うである。 本稿 の構成 は次の ようになる。まず,「 I.製 品の機能についての代表的見解」 では製品の機能についてマーケテイング論の代表的な理解 を簡単 に考察 しよう。 そ こでは,製 品ライフサイクル論が製品機能の変容 を説明 して きたことを理解 で きるだろう。 しか し,製 品ライフサイクル論では,な ぜある製品の機能が特 に選択 されるのか,と い う問題 を解決で きない。そこで 「工.製 品技術 と消費 者問題解決」 で,製 品を構成す る2つの知識 と消費者の製品経験 とい うコンセ プ トを使 って,社 会 レベルである種の製品機能が選択 される可能性 を議論で き るだろ う。 この社会 レベルでの製品機能の選択 を 「Ⅲ.消 費者製品システム観 の構造」で検討す る。消費者の付与す る製品への意味は,こ の消費者製品シス テム観の安走度 によって測定可能 となるだろう。おわ りに,こ の議論によるマー ケテ ィング戦略論へのインプリケーシ ヨンを検討 しよう。 I 製 品の機能についての代表的見解 製品 とは,物 体 としての製品その ものだけではない,と いう主張はマーケテイ ングの コンセプ トとして非常 に強力であった。た とえば,わ れわれが1/4イン チの ドリル を買 った としよう。 Levitt(1969,邦訳 3ペ ージ)に よれば,そ れ はわれわれが ドリルその ものを欲 したわけではな く,そ れその ものが必要だっ たわけで もない となる。われわれには,1/4イ ンチの ドリルが提供する 「1/4イ ンチの穴」が必要だつたのである。消費者は,そ の製品が提供する問題解決機 能 を買 っているとい うのが,そ こでの主張である。われわれは製品がある一定 の機能 を持 っていると考 えがちである。た とえば,車 は移動手段であ り,冷 蔵 庫 は食料 を冷や した り,冷 凍 した りする機能 を提供する。洗濯機は衣類や身の 回 りの繊維類 の汚れを落 とす ものであ り,ビ ールはの どの渇 きと仕事の疲れ を 癒す潤滑剤 である,な どと。 この議論 を,理 論的に定式化す ると次の ように読 み替 え可能である。すなわち,問 題解決手段 として提供 された製品 (機能,技

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162 彦 根論叢 第 320号 術 )が 消費者の使用段階での問題解決手段 と一対一の対応関係 をつけることが で きる, とい うことである。以下ではまず,こ の議論 を簡単 に紹介 し,そ の議 論 を支 える製品ライフサイクル論 を検討する。その後で,こ の議論の問題点 を 検討 しよう。 1.製 品の中心機能 と周辺機能 この議論 に したがえば,消 費者の求める機能を理解すること,こ れがマーケ テ イングのひとつの重要な機能 となるのである。これまでのマーケティング論 は,結 局,こ の議論 を前提 に構成 されていた。Kotler(1980,邦訳305ページ) は製品コンセプ トについて次の ように定義する。製品 とは,注 目,取 得,使 用, 消費 を目的 として市場 に提供 されるものであ り,物 的対象,サ ービス,パ ーソ ナ リテ イ,場 所,組 織,そ してアイディアを含む ものである。 このことか ら, 製品は構造物 として設計 された機能 を持 った 「物体」 だけでな く,3つ の レベ ルで考 えることを提案する。それは図 1の ように示 される。 拡大 された製品 正式な製品 申核製品 図 1 製 品の 3レ ベ ル メンテナンス システム パ ッケージング ブラン ドん ,ま、ハ乙A 機 能 品質 ス タイ リンダ 中心の便益 または サービス (出典 :Kotler(1980),邦 訳306ページ)

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< 研 究ノー ト>消 費者製品システム観の構造 163 この図で は,製 品 は中核 製 品か ら拡大 された製品 とい うレベ ルが ある ことを 示 してい る。彼 に よれ ば,製 品の もっ とも基本 的 な レベル は中核 製 品 (コア ・ プ ロ ダク ト)と 呼 ばれ る。 これ は消費者 が何 を求 めて製 品 を買 うのか とい う根 本 的な問い に答 える ものである。た とえば,女 性が口紅 を買 うのは,そ の科学 的 ・物理的属性 を買 っているというより 「希望」 を買っているわけである。マー ケティングの役害Jは,ま さにこの中核製品のベネフイッ トを売 ることである, とい うのである。 この中核製品に,物 理的対象物の場合,機 能,品 質,ス タイル,ブ ラン ドネー ム,パ ッケージといった 5つ の特性が加わって,実 体 を伴 った正式な製品 とな る。日紅や コンピュータは,正 式 な製品である。サービスの場合で も,無 料で あるとか待 ち時間を必要 とするといったようにある特性 をもって提供 されると き 「正式 な製品」 となる。 さらに正式 な製品を獲得することにおいて受容 され 経験 される便益 の総体 を 「拡大 された製品」 とよぶ。この議論 は,き わめて影 響力 を持 っている。今 日われわれが手にすることので きるオーソ ドックスなマー ケテ ィングのテキス トにおけるProduct ManagementやProduct Policyの解説 ではほ とん どが この議論 を前提 に していることがわかる (Boyd et al。(1990); Buell(1984);Chee=Harris(1993);Dalrymple et al。(1983);Henry(1985); Lamb et al。(1996);Peter et al。(1986);Rachman(1994))。以下では,特 に

こ とわ りの ない限 り中心 の便益 を 「中心機能」,そ れ以外 の 2つ の レベルは 「周辺機能」 と呼が ことに しよう。 この議論 をベースに,今 日の競争は中心の便益 ・サービスか ら 「正式 な製品」 を経て 「拡大 された製品」の レベルで行 われていることを主張する。それは製 品の ライフサ イクル論 によって根拠 を与 えられる。 2.製 品ライフサイクル論 製品 を,そ の誕生か ら 「死亡」 (製品の場合 は需要がな くなることを意味 し ていることが多い)ま でを生物 になぞ らえ検討 しようとする議論が製品ライフ サイクル論である。 この議論が有力 になったのは,ラ イフサイクルをい くつか

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1 6 4 彦 根論叢 第 320号 のステージに分 け (もっとも代表的なそれは,導 入,成 長,安 定,成 熟の 4ス テージである),そ れごとに最適 となるマーケテ イング ・ミックスを提供 した ことである。 しか も,こ の議論 は きわめて重要な成功例 によって強化 されたのである。そ れはL e v i t t もK o t l e r もそれ以外 にもマーケテ イングテキス トを書 く研究者のほ とんどが引用するデュポ ンのナイロンの成功である。Hounshell(1996)は, デ ュ ポ ンがナイロンを発 明 し,そ れが250億 ドル以上 も稼 ぎ出 した とい う。そ して それは,あ る種の成功のプロ トタイプとなって製品開発のモデルになっていっ た ことを示 している。典型的なマーケテイングテキス トの示す製品ライフサイ クル論 に基づ くその戦略は,表 1通 りである。 表 1 製 品ライフサイクルステージ

(Sources:Lamb et al.(1996),p.297,Exhibit 9,6;Chee=Harris(1993),p.113,Table 5.2; Peter=Donnelly(1989),p.120,Highlight 6-5よりお善成) 製品の 3 レ ベル論 に関連付 けて議論すれば,導 入期 には製品モデルを限走 し, 中心 的な機能 を理解で きる革新的な消費者 に限定的に販売する。衰退期 には市 場 にあ まね く普及 したのであるか ら,更 なる販売の増加 を見込 むことは難 しい が,サ ー ビスな どの周辺機能で差別化 を実現することになる, と考 えられる。 3 . 新 しい製品の考 え一製品ライフサイクル論の問題点 ― 製品を 3 つ の レベルで理解 し,中 心機能か ら周辺機能へ競争の焦点が移動す 製品 ライフサ イクルステージ 導 入期 成 長 期 成熟期 表退期 売 上 4氏い 急 成 長 低成長 衰 退 利 益 マイナス ピー ク 減 退 低 / ゼ ロ キ ヤ ツンユ フ ロー マイナス 普 通 高 ぐずつ く 競合数 少 数 増 大 多 数 減 少 戦略課題 市場拡大 市場浸透 シェア防御 コス ト最小化 製品戦略 モ デル数 限定 モ デル数拡 大 大量のモデル モデル削減 流通戦略 限定流通 デイーラーの拡大 広いデ イー ラー網 ア ウ トレ ッ ト 販促戦略 サ ンプ リングな ど ブラン ド認知の向上 顧客維持の広告 販促終了 価格戦略 高価格 価格低下 価格低下 叩 き売 り

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< 研究ノート>消費者製品システム観の構造 165 るのは,製 品のライフサイクルによって論理 を与えられる。このライフサイク ルのマネジメン トが製品戦略 にとってはきわめて重要であることが示唆 される ( B a g o z z i ( 1 9 8 6 ) , p p . 1 4 5 - 1 5 2 ) 。それだけではない。競争の方法が さらにライ フサイクルを加速す る。技術 的に提供 される中核製品の便益 は,現 代 の リバー スエ ンジエア リング技術 の レベルではかな り短時 間で模倣す ることがで きる

8ohansson=Nonaka(1996),pp.103-125)。

さらに言えば,こ れらの製品では,

周辺機能による差別化競争が支配的であることをいくつかの調査が示 している

(川上 (1998),社

会経済生産性本部(1999))。

こういつた認識 は決 して少 な くない。Levitt(1983,邦訳98-125ページ)は, 拡大 された製品 とい う言葉 は使 いこそ しないが,製 品だけでな くある種の周辺 的な機能やサー ビスによって差別化可能だ,と い う認識 をしている。彼 は,何 らかのサービスを付加 した り,提 供 した りすることですべての製品が差別化で きると考 えている。それは本稿での言葉でいえば,す なわち,周 辺的な機能に よって差別化すると考 えている, と言 って よい。 このような事態の背景 には, 現代 の技術があ きれるほ どにまで,わ れわれの問題解決に適 した技術 を提供で きるようになっていることが指摘で きるだろう。 しか し,実 はある製品が製品ライフサイクルの どのステージなのかを理論的 に特定することはきわめて難 しいのである(Dhalla=Yuspeh(1976);Day(1981))。 Abernathy et al。(1985)は,日 米 自動車会社 の製品 ライフサ イクルの定義の違 いがその後の成果 を分 けたことを強調す る。それだけではない。導入期 には中 心的な機能が焦点 にな り,ラ イフサイクルの進展 と共 にそれが周辺機能へ移動 す るのはなぜ なのか, とい うことにも明確 な答 えがない。製品の3レベル論 に 対 す る問題 として指摘すれば,中 心機能か ら周辺機能へ,な ぜ競争の焦点が移 るのか を説明 しないことである。それは,あ る時にある製品機能が社会的に選 択 されあるのか,具 体的には,ラ イフサ イクル前期 には中心機能が,ラ イフサ イクル後期 には周辺機能が選択 される傾向がある,と い うことを理論的に説明 3 ) しないのである。 3)こ の問題提起 については,イ ノベーシ ョン論の知見 を参考 に している (Dosi(1984);/

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166 彦 根論叢 第 320号 もちろん,わ れわれ は現在 あ る製 品が世 の 中で支配 的 に どの ような使 われ方 を してい るの か を観察す る こ とがで きる。そ して,そ れ をその製品の中心 的機 能 と して理解 す る こ と も可 能 で あ る。実 際 問題 と して, 現 在 の製品 と機能 の均 衡状 態 を仮 定 す れ ば, 製 品 はその製 品が消費者 の求め る問題解決機 能 と して開 発 され てお り, わ れわれ はそれ を問題解 決 のため に買 つてい る。その とき, テ レビの 中心機 能 はテ レビ局 が送信 す る電波 を受信 して映像 をつ くりだす こ とで あ ろ う。 ご く一般 的 なわれわれの理解 で は,映 像 の映 らないテ レビを購 買す る 4 ) 消費者 は少 ない。 もし,消 費者が よい製品を選択 して購買するとなれば,こ の ときの顧客満足 を提供する製品コンセプ トは,映 像の美 しさを提供する技術 を 中心 に構成 されることになる。 ところが,テ レビの近年の製品ラインは,画 面 の大型化,16対 9の ワイ ド画面,が 支配的であった (社会経済生産性本部 (1999))。 ここで想定 しているテ レビの中心的な機能である画像の美 しさを強調する技術 は,デ ジタル画像処理であつた リハ イビジ ヨンだった りした。 ところが,ハ イ ビジ ョンが世の中で定着 しているとは言い難い し,デ ジタル技術 の優位性 を実 動 現するにはまだ放送環境が整っているわけではない。競争は確かに周辺機能で おこなわれている。 しか しそれが製品ライフサイクルにしたがっているかどうか,そ の機能が中 心かどうかは,経 験的に観察されていることを説明 してるのであって,な ぜな のかを理論的に定義 していない し,で きてもいないのである。 \Mowery=Rosenberg(1982))。 4)わ れわれは決 して映像の映らないテレビを購買する人がいないとも,そ れは間違ってい るとも考えていない。確かに,あ る人は映 らないテレビを,あ る理由で購買することがあ るだろう。たとえば,そ れはキャビネットが美 しいからとか,ジ ョン ・レノンが使ってい たからだとかである。 しか し,何 度 も強調 しているように, きわめて常識的な一般論では, われわれがテレビを買うのは 「映像 を観るため」であると考えてそれほど間違いではない, という理解をここでは優先 している。 5)こ れはメーカーの技術が想定 よりも劣っているということであるとか,消 費者が劣つた 製品を買つている,買 わされている,と いうことではない。理論的最高性能を実現するた めのさまざまな要素が理論的に最適な組み合わせになっていないということである。

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<研 究 ノー ト>消 費者製品システム観の構造 167 H 製 品技術 と消費者問題解決 ここまで,製 品の中心 ―周辺機能について検討 して きた。そこで強調 したこ とは,製 品の中心機能 (あるいは,そ の差 としての周辺機能)は 理論的に特定 で きないこと,そ れを支持する製品ライスサイクル論 も明確 な理論 を欠いてい ることであった。 そ こで,こ こでは技術生産管理論か らの知見 を参考 にこの問題 にアプローチ しよう。そこでは,製 品をつ くるためには, 2つ の知識が必要であることを理 解 される。ひとつは,製 品の特有の知識であ り,も うひとつは製品の もたらす 機能や問題解決能力 についての知識である。前者は製品の技術的な知識であ り, 製品 レベルでは技術的な機能が もたらす消費者の問題解決を提供する。後者は, 製品の使 い方 についての知識 と考 えられ,技 術が提供する機能 と一対一で対応 す るわけではな く,使 用段階で変容することもあ りそうだ。それが消費者問題 解決における 2つ の知識である。 これ ら製品 と消費者問題解決のそれぞれの知 識 について理解することで,次 のことが期待 されるだろう。製品の中心 ―周辺 機能が企業側 と消費者側 とでの相互作用 によって もっぱ ら決定 されていること が推察 されることである。 1.製 品を構成する 2つ の知識 製品 とはそれをつ くる組織が獲得 した知識 を体現化する。つまり,製 品 とは 技術的出発点,特 定的エ ンジエアリング分野,マ ネジリアルプロセス,生 産環 境 の詳細,ユ ーザー,チ ャネル,市 場か ら吸収 した知識で構成 されている。た とえば,わ れわれが座 って心地好 さを感 じるアームチェアは,エ ルゴノミック スの知識 を反映 している し,パ ーソナルコンピュータは回路設計やその生産の 知識を反映 しているという意味である。かように,製 品をデザインして,設 計 して製造するというプロセスの有効性はいろいろな知識をベースにして,そ れ らの進化によっている。この知識ベースは異なる多 くの要素から構成されるが, さしあたつて2つ のタイプの知識を区別することができそうである。ひとつは,

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168 彦 根論叢 第 320号 消費者の問題 を特定的に解決するための技術その ものをつ くりだす知識である。 た とえば,穴 をあける技術の中で も 「刃 と回転」 をつかって実現する知識であ る。 これを ドメイ ン特定的知識 (これは一般化可能な知識である)と 呼ぼう。 もうひとつは,製 品を使 うコンテクス トに特定的な知識である。ある問題 を解 決す るために消費者は製品を購買することがあるが,そ の問題 を解決するのが その製品であるとリンクすることので きる知識である。製品が投入 (問題 と技 術)に 対する産出 (技術サービス と結果)の システムであるとするならば,製 品 システム知識 と呼んで もよい。 さらに,こ れ らの知識が消費者の問題解決知 識 と結合することで,わ れわれはその特定の製品が 自分の抱 えていた問題 を解 決す ることを知 るのであるが,そ の構造 を消費者製品システム観 と呼ぼ う。以 下でそれぞれを簡単 に考察 しよう。 (1)ド メイン特定的知識 新製品 を概念化するために必要な知識のある部分は,そ の特定領域 (ドメイ ン)か ら獲得 される。それ らは,た とえば,抵 抗増幅装置の物理学やエルゴノ ミックスの ように,製 品が使用 されるコンテクス トか らは完全 に独立 した自己 充足的で基礎的学問領域である。 ドメイン特定的知識 は,相 対的に理路整然 と してお り,一 般化 しやすい。人間の内部 に構造化 された知識のある種の外部化 である。抵抗装置の物理学は,半 導体材料の一般的財産 に基づいた分析モデル に立脚 している。エルゴノミックスは人間の解剖学的な研究 に基づいているこ とが,多 くのテキス トには記述 されている。 これまでの議論の中心機能は,多 くの場合 この知識 に基づいているだろう。 この議論 に したがえば,製 品を開発することは多 くの ドメインに頼 つている ことを意味する。ハイパ フォーマ ンスなワークステーシ ョンをデザインするた め に必要な知識 は,集 積 回路のデザインか らそれを実験するツールやテクニ ッ クにまで及ぶ ことになる。新薬の開発 は,先 進的生化学 と人間の器官の機能 を 理解することに基づいている。 となると,製 品開発 を有効 にするためには, ド メイン特定的知識の機能的な卓越性 に立脚するので, ドメイン特定的な専門性

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< 研 究ノー ト>消 費者製品システム観の構造 169 にお ける強力 な基礎 が必 要であ る。特 に競争環境 の下で はなお さらであろ う。 とはい うものの,ビ ジネスにおける競争ではこの レベルにおける強 さだけで は充分ではない。多様 な ドメイン特定的知識 は互いに統合 される必要がある。 この知識か ら産出物 は,消 費者の特定的な問題 を解決するために開発 されるわ けではないか らである。 しか も,こ の知識か ら前例のないほど技術が産出 され ているために,特 定の問題解決 をするための特定的な技術手段 を選択すること 6 ) は別の基準 を持 って こなければで きないか らである (Iansiti(1997),pp.1-2)。 ワークステーシ ョンをつ くる例 でいえば,集 積回路 は回路基盤 と一緒 に動作 し なければならない し,そ の全体 は顧客の応用 ソフ トウェアにおける信頼性 に基 づいて機能 しなければならない。 こういった問題解決 とリンクするような別の 知識が,そ こで必要になって くる。 (2)ヨ ンテクス ト特定的 (製品システム)知 識 傑 出 した製品 となるには,い くつ もの知識ベース を,使 用段 階の問題解決 (以下では,ア プリケーシ ョンとする)と マ ッチするように,一 貫 した全体が つ くられなければならない。それ らを統合するために必要な知識は, ドメイン 特定的知識か らだけでは普通獲得 されない。 ド メイ ン特定的知識か ら産出され る成果 を実現す るために求め られる知識は,技 術的知識だけでな くむ しろ,統 合的 ・システム知識でつ くられる。それは技術 ドメインとそれ らのアプリケー シ ョンの文脈の間に発生する相互作用 によって記述で きる。これまでの議論の 周辺機能は,こ の知識 によって提供 されていると考 えられる。 コンテクス ト特定的知識は,製 品を使用する文脈 に特定的に定義 されるが, 6)こ こでは, ドメイ ン特定的知識が産出す る技術 が製品 とい うかたちになって消費で実用 化 され る困難 さを,技 術 の応用範囲の広 さに求めている。た とえば, トランジス タはシリ コン精製技術,フ ォ トエ ッチ ング技術,微 細加工技術 などで構成 された産出物である (相 田 (1991(上),1991(下))。その最初 の用途 は電気 を増幅す るため に用 い られた。それだけ で な く,電 気 を一方向に しか流 さない,と い う性質のためにコンデ ンサー とともに電気の 貯蔵 に用 い られる ようになった。 ト ランジス タはその ようにい くつ もの問題 を解決で きる のである。米山 ・加藤 (1999)はこれを技術 の実用化問題 と呼 び,技 術の本来的な特性 に求 めている。

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170 彦 根論叢 第 320号 そ こには暗黙的な部分が残 るので,理 路整然 と明示化 させるのは難 しいだろう。 たとえば,特 定の製造設備 について詳細 に記述 したテキス トはない。マニュア ルでは新製品をデザインす るために必要な情報 を部分的にしか獲得で きない。 製造では30年の経験 を持 った従業員は,た ぶん,製 品のある部分 について詳細 な知識 をもっているが,彼 女/彼 は正確 に 「なぜ」 かを理路整然 と説明はで き 7 ) ないだろう。 研究 と開発活動か ら生み出される製品 とは,こ の ようによく定義 された 2つ の領域 における特別の専 門性の蓄積 とそれがアプリケーシ ヨンとなる文脈 にお いて一貫 したまとま りとい うシステムに統合することに他 ならないのである。 そ こで,製 品を構成する基本的な知識 と,製 品 となった後の製品システムの知 識 をどの ように統合するのか,を 考 える枠組みが重要 となるだろう。 これ ら2つ の知識の関係 を概念的に示せば図 2の ようになるだろう。 図 2 ド メイン特定的知識 とコンテクス ト特定知識の製品開発での関係 7)中 岡 (1971)は,工 場 における熟練の知識 と技術者の原理技術 的知識の違いを説明 してい る。熟練 は,「現象の観察 (兆候 で もよい)→ とるべ き行動」 とい うパ ター ンによって行 動 してお り,そ こには思考めいたプロセスが介在 していないことを強調する。 利用可能 な技術 ユ 利用可能 な技術 2 製品化 の可能性 利用可能 な技術 3 利用可能 な技術 4 開発段 階 設計 一試作 一テス ト 設計 一試作 一テス ト 設計 一試作 一テス ト

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< 研究ノート>消費者製品システム観の構造 171 この図では,利 用可能な技術がそれぞれ ドメイン特定的知識から生み出され る。開発段 階での設計 一試作 一テス トが コンテクス ト特定的知識 によって評価 される。 この ように研究段階での一連の活動 と開発段階での活動が,う まく統 合することが優れた問題解決機能 としての製品を開発する要点であると考 えら れる (Iansiti(1997))。 3.消 費者の問題解決知識 このように考 えると,製 品をつ くる際には 2種 類の知識が必要になって くる ことがわかるだろう。ひとつは,消 費者の問題 を解決するための中心的な技術 を提供する ドメイン知識である。 もうひとつは,そ の技術 を製品 というひとつ の まとま りに仕立て上げる製品システム知識である。 製品はこれ ら2つ の知識 によってつ くられ,あ る機能 をもった 「物体」 とし て消費者 に認識 されるだろう。 しか し,こ れだけではその製品が特走的な問題 解決技術 をもった 「製品」 として社会的に定着するわけではない。そのために は,消 費者がその 「物体」 に問題解決の手段 としての製品 とい う,あ る種の定 義 を与 える必要がある。そ こで,一 般的に消費者がある技術 をもった 「物体」 を問題解決手段 である製品 とするプロセスを検討 してみよう。 製品技術 とそれを構成する要素技術 の関係 と同 じように,消 費者 にも製品の 定義 に始 まる製品システム観 とそれ を用いる問題解決様式がある。「製品」 を 開発す る知識 に対応 して 2つ のそれ らがあると考 えられる。すなわち,ひ とつ は ドメイン特定的知識 (これはえて して製品の要素技術 という形 をとるだろう) が もた らす機能的 ・技術的な問題解決である。 もうひとつは,物 体 としての製 品が もた らす問題解決である。前者 を問題解決知識,後 者 を製品知識 と呼ぼう。 それぞれを簡単 に考察 しよう。 (1)問 題解決知識 われわれはある製品 を,そ の時に直面 している問題 を解決するために購買 し た り使用 した りす る。その ときには,Levitt(1969)が指摘 するように,そ の製

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172 彦 根論叢 第 320号 品を買 っているのではな く,そ の製品が提供する機能が実現する問題解決を買っ ているとい う議論が成立す る。 この議論の背景 には,そ の製品はある機能 を内 在す る とい う認識があるだろう。 しか し,そ の製品が提供 されなかったとして もわれわれは問題 を別の機能で 解決 しているだろう。 自動車がなかった時代 に移動するのは,お そ らく 「足で 歩いて」か 「馬 に乗 って」か 「籠 に乗 って」 な どの手段 によっていたはずであ る。問題 を解決するためには,製 品が与 えられな くて も,消 費者のイマジネー シ ョンで充分可能な手段 を発見 した り,時 には自分でつ くつた りして可能にな るのである。 このイマジネーシ ョンを問題解決知識 と呼ぶ ことに しよう。 問題解決知識 は,直 面する問題 をどのようなかたちであれ,解 決する技術や 機能や手段 を発見 した り,創 造 した り,す るだろう。 もしかすると,そ の手段 は学習や競争や知識移転が実現することで より合理的な方法へ進化 してい くか もしれない。製品が提供する機能はそ ういった方法の一つ として提供 されるこ とになる。 ‐ (2)製 品知識 消費者が問題解決知識 をつかって考 え出す解決方法は,決 してひとつではな い。 もしかするときわめて非合理 な手法 を考え出すか もしれない。そこに製品 を提供す ることで,そ の時の手法 よ りも合理的になる可能性がある。問題解決 知識 は,あ る部分 は製品が与 えられて始めて,あ る部分 はその製品を使用 して いるうちに発見的に,構 成 され蓄積 されてい く。問題解決知識 をこのように特 定の製品に直接結びつける知識 を製品知識 と呼ぼう。それは,た とえば,細 い 線 を書 くな らば筆 よ りも,先 の尖 った針の ような器具が優れている,と 理解す るプロセスで生 じるだろう。製品知識は,明 らかに,そ の製品が与 えられて初 めて発生する。 もし,そ れが以前使 っていた方法 よりも優れていると評価 され るならば,そ の製品 と問題解決機能 を くっつけることは,自 然なことである。

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< 研 究ノート>消 費者製品システム観の構造 173 田 消 費者製品 システム観 - 4 つ の知識 の構造 一 製品に内在する 2つ の知識 と消費者が もつ 2つ のそれ らを考察すれば,次 の ことが想定で きそ うである。製品の知識 と消費者のそれ らはある種の対応関係 にある, とい うことである。 ド メイ ン特定的知識の提供する要素技術 は,問 題 を解決する機能 を提供で きるが,問 題解決知識 とうま く関連づけられれば,あ る合理性 を発揮で きるだろう。製品開発では,そ ういった消費者の問題 を探索 して,か な り合理的な問題解決機能 を製品に組み込 もうとしているはずだか ら である。 一方,製 品知識はコンテクス ト特定的 (製品システム)知 識 と関連付けられ るだろ う。製品開発では,要 素技術 をある特定的なコンテクス トに結 び付 ける ことで,消 費者満足 を実現で きることになる。要素技術が含 まれる製品が特定 的な製品の使用 コンテクス トにおいて問題 を解決で きれば,消 費者の問題解決 に特定の製品 を選択する傾向は強化 されるだろう。図 3は この構造 を概念的に 示 している。 図 3 4つ の知識 の関係 この 4つ の知識が図の ように互いに結 びついている状態で製品システム観が 成立 している と考 えられる。つ ま り,あ る製品のシステム知識か ら問題知識 を 即座 に連想 で きる状態である。 これ まで も検討 して きたように,そ の製品が特 定の問題 を解決す るわけではない ことは明 らかである。それは,あ くまで も, 選択可能な問題解決技術のひとつに過 ぎないのである。 ところが,提 供 された製品が優れた問題解決 を提供で きたとき,消 費者は間 題解決 と,そ の製品を ドメイン特定的知識 に基づ く問題解決技術 を経ず に,製 製品 システム知識 ドメイ ン特定知識 問題解決知識

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174 彦 根論叢 第 320号 品 システム知識合直接 リンクさせて しまうことになる。図 4は その関係 を示 し ている。矢印は,そ の関係がほとんど思考 を経ずに結びつ くことを示 している。 この状態が,製 品 と消費者の考 える中心一周辺機能が定義 されている状態なの である。そ しておそ らく,こ れ ら4つの知識は,最 終的にはすべてに矢印がそ れぞれ示 し合 う関係 に落ち着 くことになるだろう。たとえば,あ たか も トラン ジス タに関する知識 (ドメイン特定的知識)が 「映像表示=テ レビ (製品知識)」 を作 り出 したかの ように。 図4 シ ョー トカットがおこった問題解決知識と製品システム知識のリンク Ⅳ 製 品システム観の成立 と戦略的インプ リケーション この 4つ の知識構造を考えるならば,わ れわれが,た とえば 「映像を見たい」 ときに,一 般的にはテ レビを買 うことも理解で きるだろう。映像 を見ることの で きる製品はテレビに限 らないが,こ のような構造が存在すると考えるならば, 映像 とテ レビがかな リー般的に結 びつ くことになる。おそらく,そ れには,放 送局,放 送規約,放 送技術,番 組制作,演 技者 ・出演者などという 「テレビ産 業」 宅戸立だけでな く,テ レビ開発 ・生産技術 などが同時に成立 しなければな らない。テ レビ開発 ・生産でいえば,お そらく,ブ ラウン管の生産が安価でで きることで,た とえば液晶プロジェクターょりも消費者に受け入れられやすかっ た と考 えられる。 しか し,映 像 を見 る限 りにおいて,テ レビが唯一の製品では ない。ヘ ッ ドア ップディスプレイも液晶デイスプレイパネル も,も しかすると ELDな ども長期 的 にはデ ィスプ レイ として有力 になって くるだろう。 となる 8 ) こ れは何 も時間的に同時である, ということをいっているわけではない。それぞれが相 互に役割を果たさなければならない, という意味である。 製品 システム知識 ドメイ ン特定知識 問題解決知識

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< 研 究 ノー ト> 消 費者製品システム観の構造 1 7 5 と 「テ レビ」 は今のテ レビとはい ささか異 なった ものになっているだろう。 ここで 4つ の知識の関係 を 「消費者製品システム観」 と呼がならば,要 素の 間に安定的な矢印が向 きあっている場合が,製 品機能が一般的に定義 されてい る状態である。これを援用するならば,消 費者が製品に意味 を付与するとい う ことは,製 品知識 とこれまで とは違 う製品システム知識 に結びつけた状態 を意 味 している。 これが もた らすインプリケーシ ヨンはい くつ もあるが,次 の 3つ を将来の研 究の方向性 を示唆す る意味で も特 に指摘で きるだろう。第 1に は,製 品や市場 の成熟 についてである。第 2に は,そ こか らもたらされるマーケティング戦略 についてである。第 3に は,製 品開発論 についてである。 製品 ライフサイクル論 は,そ の製品の売上 と利益 などで製品のライフサイク ル を議論す る。 しか し,製 品 ライフサイクル問題点は,そ れ らだけで定義する ことが困難だ とい うだけでな く,そ れを製品開発戦略によって変容 させ ること が,可 能になるということである。たとえば, 日本企業はライフサイクルステー ジの成熟段 階 にあ る製 品で競 争優位 を確保 してい る ことが指摘 されてい る O o h a n s s o n = N o n a k a ( 1 9 9 6 ) ) 。それは, 消 費者製品システム観を変容 させる裂 品をつ くるからである。たとえば, 日 本 自動車企業の1 9 8 0 年代のアメリカ市場 への進出の際に「品質」をコンセプ トに参入 したことは,そ れを示 している (Abernathy et al。(1985))。 この議論 を援用すれば,製 品が成熟 した段階 とは,消 費者製品システム観が 確立 した時 と考 えられる。 となると,マ ーケテイング戦略は,既 存の戦略 とは 多少異 なって くるだろ う。典型的には,ラ イフサイクル論の提案する戦略 とは 異 なるだろう。そこでは導入段階ではプロモーションを強調することになるが, 製品システム観の議論 に したがえば,導 入段階にこそ製品の改良 ・改善が重要 になって くるだろう。導入段階では,消 費者製品システム観が定 まっていない か らである。何が もっとも重要な機能かが分か らない段階で,製 品の機能 を特 定す ることは,市 場の規模 を拡大するためには,ひ どい制約 をもたらす ことに なるだろう。 どの問題解決 に適合するのかは,製 品を次々に提供 して最大の市

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F 1 7 6 彦 根論叢 第 3 2 0 号 場 を発見す ることでのみ発見で きることだろう。逆 にいえば,成 熟段階で も中 心機能 を改良することが製品システム観 を変容 させ ることにつながる可能性が ある (社会経済生産性本部 (1999))。 最後 に製品開発 については,技 術が製品コンセプ トの可能性 にもたらす影響 を指摘す ることが出来 るだろう。 これまでの製品開発論 は,製 品システム観の 安定 した状態 を専 ら得意 として きた。そ こでは,開 発速度,開 発生産性,統 合 製品品質が重要な要素であった。 しか し,製 品システム観が確立 していない場 合 には,そ れ よりもどこに消費者の問題があるのか,そ の問題 をどの技術で解 決 させれば ビジネス を支 えるマーケ ッ トが発生す るのか とい うアプローチが必 要 になって くるだろ う。Hamel=Prahalad(1991)のい う探索型マーケテイング がそれにあたるだろうが,技 術 と製品開発 と市場の関係 を指摘 しているわけで はない。その意味で,こ の研究はまだ緒 についたばか りである。 これ らの方向 が,検 討 されることで製品戦略は一層興味深いインプリケーシ ョンを提供で き ることになるだろう。 参 考 文 献

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