特集・都市と公共の OR
都市と公共の OR の展開
一一一最適都市論を中心として一一
伊賀 隆1
.
都市の特性 多くのメンパーから成る集合であって,各メン バーの役割が固定され,それによって全体として のまとまった機能が発揮で、きるようなものは,す べて集団とよぶことができる.都 r \lもまたひとつ の集団であり,住民・企業・行政などがそのメン バーである.しかし都市は企業や組合や家族とい った集団に比べると,はるかにルーズな集団とい わなければならない.ルーズというのは,つぎの ような意味である.1
)
メンバー加入の条件が緩い.2
)
集団的意思決定のルールが明確でない. このようなルーズな集団を分析するためには, それに適合した理論を必要とする.いまのとこ ろ,都市問題をあっかうための理論体系が整備さ れているとはいえないけれども,最近の諸論文の 慣益・費用 C,
B,
/ C.r
s
S, 都市規模 図 1 中からそうした方向を暗示すると思われるものを 取り上げ,若干の展望を試みてみよう.紙幅の関 係で,諸論文の内容を忠実に紹介することは不可 能であるから,かなり簡略化して紹介せざるを得 ない.2
.
最適規模論の類型 産業や人口などが都市に集中する現象は,すべ ての都市問題をひき起こす元凶とみなされてい る.そして集中を抑制することが,都市問題を解 決するための必要条件であるかのように考えられ ている.最適規模論は,そのための論拠を与える ものとして,しばしば用いられてきた.都市活動 にともなう便益 B と費用 C とを,都市規模 S の関 数と考え,便益と費用との差,すなわち純便益が 最大となる点で,都I! i の最適規模がきまるという のである.図 1 のふ点がそれである. しかしこの議論は,あまりにも静学的でありす ぎる.都市の規模が大きくなれば,便益曲線も費 用曲線も上方ヘシフトするであろう.たとえばB
2 • C2のように.そうすると,最適規模は S2 点 に移る.実際の都市では,このような移動がつぎ つぎと起こって,その結果都市の成長が日J能とな るのであろう.したがって動学的な意味では,最 適規模は存在しないといわなければならない. このことを考慮するならば,最適規模論はむし ろ最適制御論として理ー解したほうがよし、かもしれ ない.極端なし、し、方をすれば,便益曲線や費用曲線を適当に操作することによって,都市規模を思 いのままに変化させることができる.そこで問題 は,便益曲線や費用曲線に影響を与えるような因 子を見つけることであり,最適規模論はそのため に役立つであろう.そこで 3 つのタイプの最適規 模論を取り上げて,この点を検討してみよう. もっとも単純なタイプは参考文献の(
1
)・(2)・ (3)・ (4) などであり,代表的なものとして (4) を取り上げよう. Q: 都市サービスの供給量 C: 都市サー ビスの費用 r 都心からの距離 として,つぎのような問題を考える.min
~:
C(r)dr
s
.
t
.
Q( γ) ミ Qo この問題の解として得られる r によって,都市規 模が定まるというわけである . Qo はたとえばシ ビル・ミニマムのようなものとでも思えばよい. そうすると制約条件は,便益一定という意味に解 することができょう. (4) では Q( γ) と C(r) をつ ぎのように特定して,問題を解いている.Q(r) =AK(r)aL(r)l-a
(0< α< 1)C(r) =pKK(r)
+ ρLL(r) 十 tr(Q(r)/q) K: 都市施設量 L: 土地量 A 技術 進歩率, ρK 施設単価 PL 上地単価,t
:距離あたり輸送単価,q:
1 人あたりサ ービス消費量 そして,dr /
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dA
,~, dpK'~'dpL
,~,d
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という結論をみちびいている. しかし都市というルーズな集団が,こうして決 定された最適規模を実現するために必要な手段を もっ,とは考えられない.その点ではむしろ,企 業などのほうがはるかに実行力に富むであろう. こうした立場から,企業の立地行動に重点を置い た最適規模論を展開するのが, (ラ〕である. v 資本コスト w 賃金コスト , Q: 産 出量 K: 資本量 N: 雇用量 ll: 利*
s 図 2 潤額 p: 産出物価格 とすると,問題は,max
ll=pQ 一 (vK+wN)s
.
t
.
Q=F{K
,
N)
で与えられる.ただし, v= α'g(S),
w=゚h(S)
一一一一一-s(α , ß>O ,
g'<O
,
h'>O)
と仮定する .S が都市規模である.関数 g は S の 減少関数 , h は増加関数と想定されているが,こ れは (6) ・(7Jの結論を援用したものである. すなわち (6) では,都市規模が大きくなるほど 金融市場も大きくなり,情報量も多くなるから, リスク・プレミアムが小さく,そのため資本コス トが低くなるという.また(7)では,大都市ほど 生計費が高くなるため,賃金コストも高くなると いう.こうした想定のもとで上の問題を解けば, 利潤最大の必要条件から, ωN
__g'(S)
vK
h
'
(
S
)
が得られる.所得分配率をえとすると,上の比率は 空 に等しいから,これを u(S) とあらわすと
1-,1 図 2 のような曲線となる.現状の分配率を基準に してがを計算すると,それに対応して最適規模 P が定まる.労働者のシェアが増大すると u は 小さくなるから,規模が拡大する.反対に企業の シェアが増大すると,規模は縮小する.この結論 の是非は別に検討されなければならないが,いわ ゆる所得革命と巨大都市の出現が,ほぽ時期を同
じくすることを考えるならば,あり得ベきひとつ の仮説として認めることができるのではないだろ うか. すで喝に述べたように,部 ltí はルーズな集団であ り,集団がひとつの最適化行動を行なうとは考え られない.むしろそのメンバーが個別に最適化行 動を行なう結果が合成されて,都市規模も決定さ れるのであろう.したがって最適規模が実現され るかどうかは疑問である.この疑問に対して,宵 定的に答えようとするのが (8) ・ (9) である. (8) は厚生経済学における周知の議論を応用し, 競争均衡解が最適解と一致することを証明する. B: 便益 C 消費量 a 資産量 r 都 心からの距離, f(r): 距離 r の人口密度,
p(r)
:距離 r の資産価格 N: 都市人民 Y: 都市消費量 , M: 個人購買力 として,都市の最適問題は,max
~
B(c
,
a
,
r)rf(r)dr
s
.
t
.
~ヴ(r)dr=N, ~ c(r)ザ(r)dr=Y
とかける.他方で個人の最適問題は,max
Bi(Ci
,
ai
,
r
)
s
.
t
.
C
i
+
p
(
r
)
a
i
-
:
:
;
'
M
とかける.後者の問題を解いてその解を合成すれ ば,前者の解と一致する.そのことの保証は,前 者の問題の制約条件が与えている.人口にしろ消 費にしろ,その総量が一定であるというかぎり, 個人がどのような最適化行動をとろうとも,結果 は全体としての最適に向かわざるを得ない.(8)
の議論そのものには修正を要する点もあるが,こ うした形で個人の行動と集団の行動との聞のギャ ップを架橋する試みが,今後ますます必要となっ てくるにちがし、ない.3
.
スト "1 ク最適とフロー最適 これまでの最適規模論の多くは,ストック問題 に傾きがちであった.都市施設や E場・住宅など のストックを中心にして,都市の最適規模を決定 しようとしている.しかし最適問題はフローの面 からも接近できるのであって,効率的なネットワ ークが整備されているならば,都市問題もいまの ような深刻な姿をとらないで、すんだかもしれな い.こうした角度からネットワーク問題を取り上 げてみる必要があろう.しかしここではネットワ ーク論そのものよりも,ネットワーク問題を解く ための各種の手法について,その相互の連関につ いての議論を紹介してみたい. ネットワーク問題を解くための手法は多いが, LP モデル・エントロビーモデ、ル・グラビティモ デルの 3 つにしぼって,相互の関係を考えてみる. これらを簡単化のために L モデル・ E モデル・ G モデルとよぼう.fij:
(i-
j) 聞の流量, Xi けからの流出量 釣 :j への流入量 , Cij: (i-j) 聞の抵抗係数 とする.抵抗はコストであったり時間であった り,あるいはまた匝離であったりする.ネットワ ーク問題については,つねに,(
1
)
L.J!ij= 仇(
2
)
L.;fij= νj(
3
)
fij ミ O という制約条件が課せられている. さて L モデルは,min
c= L. 包 L. jC
i
j
f
i
j
s
.
t
.
(1) ・ (2) ・ (3) とかけるし, E モデルは,max
S=
-
L
.
iL
.
ilogf
l,i!s
.
t
.
(1) ・ (2) ・ L. i L. jCり fij=C とかける. さて(1 0) ・(11)は, L モデルが E モデ、ルの極限 の場合であると解釈する.そのことは 2 つのモデ ルを比べた時 L モデルの目的関数が E モデルの 制約条件となっていることからも,直観的に理解 できる. (11)はそれに加えて, dual-E モデルが 比較優位の最大化を求める問題として解釈できる ことを示している.ここから差額地代論におもむ くことは容易であり,したがってこれを起点とし5
3
3
て地価決定問題からひいては都市規模論へと展開 集団的 決定
N
N
N
Y
Y
多次元N
N
N
Y
Y
危険を 含むN
N
Y
Y
Y
非線形N
Y
Y
Y
Y
していくこともできょう. しかし(1 2J は,これとはちがった解釈が可能で、 あることを示す .E モデルをつぎのようにかこう. \\評価手法| タイプ ¥ ¥ ¥ l 費用便益分析! 消費者余剰論 決定分析 多元分析 集団的決定論max
S=F!/
J
f
Jljfij!
(
1) ・ (2) ・ L; i L; jCiJf包j ニ C 費用使益分析 C 14J ,消費者余剰論 (15J ,決定分析 (1 6J ,多元分析(17],集団的決定論C1 8J ・(1 9J. (1 3J によれば,今後の方向は集団的決定論を導 入するという形で聞かれていくと考えられる.個 人の効用または便益というものが非線形で非加法 つぎのよ それぞれのタイプの代表的な例として, うなものをあげている. この目的関数は, システムにおけるマクロ的状態が,すべて等しい 確率で実現するとしづ想定にもとづいてつくられ たものである.これを対数変換してスターリンクs
.
t
.
ただし F= L; i L;J/りである. の公式を用いると,max log
S=
-L
;i
L
;j
(f
i
j
logfij-fij)
となり,解は, fij=exp( ーん一 μj-ßCり) となる.ん・ μj • ß は 3 つの制約条件に対する 的な関数であることをはっきりと認め,問題ごと に個人の効用を測定するというプロセスを踏まな ければならないであろう.そしてその後に集団的 合意形成のプロセスがつづくであろう. こうした というのが 献 文 三号 参 ラグランジ乗数であり,経済学的にはシャドウ・ プライスと考えられるものである.そして,
ai=exp( んJ/山 , bj=exp( μjJ/Yj とすると,最適フローの分布は,
fij=aibjXi νj
exp
(-゚CijJ
これが G モデ、ルである.つまり E モデル
側面に分析の比重が移されるべきだ, (1 3J の主張である.
となる.
が G モデルの理論的根拠を与えているのである.
乱1 il1 s ,
E
.
S
.
and de Ferrant
,
D. M.
,
Market
Choices And Optimum C
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Sizes
,
AER
,
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,
R ぶ1.and Vickery
,
W.S.
,
Land Use
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A Long Narrow City
,
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,
7
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J Fisch
,
O.
,
Impact A
nalysis On Optimal
Urban Density And Optimal C
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Size
,
JRS
,
7
4
.
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J Swanson
,
J
.
A.
,
Smith
,
K. R. and
Williamson
,
J.G.
,
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.
S.
,
Urban Density Function
,
US
,
( 1
J
7
0
.
[ 2J
なお(1 2J は fij の代わりに hij=fη/F を用いることによって,
primal E model=dual geometric model
dual E model = primal geometric model
( 3J
という関係が成立し,したがって E モデルを geometric
programming のアルゴリズムを利用し て解けると述べている. 最適都市問題の今後4
.
乱1arket;
1
8
7
0
1914
,
EH
,
6
5
.
(
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J Fuchs
,
V.
,
The S
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Economy
,
National
Bureau Of Economic Research
,
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.
Mirrlees
,
J
.
A.
,
The Optimum Town
,
SJE
,
Davis
, L.,
The Investment
(6
J
都市の最適問題を作成する場合, び方が焦点となる.都市というルーズな集団で は,明確な目的関数を選定しがたいのが実情であ る.こうした点をふまえて, (1 3J が目的関数につ いてつぎの衰のような整理を試みている.やや類 目的関数の選C
8
J
72. 型化しすぎているきらいはあるが,最適問題の流Spa-t
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S
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r
e
Of Production With A L
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Technology
,
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,
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6
.
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Evans
,
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P.
,
A Relationship Between The
Gravity 乱ifodel
For Trip D
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n
And The
Transportation Problem 1
n
Linear Programming
,
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,
73.
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]
Wilson,
A. G. and Senior,
M.
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Between Entropy Maximizing
Models
,
Mathematical Programming Models
And Their Duals
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JRS
,
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4
.
C
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2
J
Nijkamp
,
P.
,
Reflect卲ns On Gravity And
Entropy Models
,
RSUE
,
7
5
.
(
1
3
J
De Neufville,
R
.
and Marks,
D. H. (ed)
,Systems Planning And Design
,
Prentice-Hall
,
7
4
.
C1
4
J
De Garmo,
E.
,Engineering Economy,
Macmillan
,
6
7
.
(
15
J
Beesley,
M. E.
,Urban Transport,
SEP,
7
3
.
(
16
J
Raiffa
,
H.
,
Decision Analysis; I
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L
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s
On Choices
Under Uncertainty
,
Addison-Wesley
,
6
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1
7
]
Keeney,
R. L.,
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Independence And
P
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For 恥1ultiattributedConsequences
,
OR
,
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J
Water Resources Council
,
Proposed
Princiーp
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And Standards For Planning Water And
Related Land Resources
,
FR
,
7
1
.
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1
9
J
Howard
,
N.
,
Paradoxes Of R
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y
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Theory Metagames And Po
1
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Behavior
,
MIT
Press
,
7
1.(略記号)
AER
American Economic Review
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Economic History
FR
Federal R
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JET
Journal o
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Economic Theory
JRS
Journal o
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Regional Science
JUE
Journal o
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Urban Economics
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Operations Research
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Regional Science and Urban
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