複雑ネットワークの可視化におけるクラスタ分析を支援する対話機能
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(2) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 機械が協力し合うようなグラフクラスタリングの研究はほ. められる [4].. とんど存在しない.既存研究ではクラスタリングは機械の. グラフクラスタリングの可視化に関する研究は,クラス. みが行い,それを人間が理解することを目的とするような. タ構造の理解と考察を支援するシステムが多い.Abello ら. 非探索的な可視化が多い [5].一方で多次元データのクラ. の ASK-GraphView [12] は自動的に生成された階層的クラ. スタリングに関する研究では,クラスタリングにおけるパ. スタ構造をノードリンク図やデンドログラムを用いて可視. ラメータ調整の難しさや有効な手法が一意ではないといっ. 化する他に,頂点ラベルや注釈といった意味的な情報も提. た問題から,対話的な可視化システムを用いた探索的なク. 示することで対話的な分析を支援している.Zinsmaier ら. ラスタリングが研究されている [6], [7], [8].それらの研究. の Large Graph Observer (LaGO) [13] は事前にグラフの. では人間と機械が協力する探索的な取り組みが重視されて. 階層的なクラスタ構造を計算しておき,クラスタの頂点集. おり,グラフクラスタリングの探索的な分析を考える上で. 合を一つのメタノードとして扱い,展開と畳み込みを用い. 助けになると考えられる.. た意味的な拡大と縮小を提供しており,対話的なグラフの. 本研究の貢献は以下の三つである.一つ目に,探索的. 可視化分析を可能にしている.これらの可視化システムは. なグラフクラスタリングの可視化システムを実現させた.. 人間がクラスタ構造の複雑さを理解するためには有用であ. 複雑ネットワーク可視化システムである Social Viewpoint. るが,探索的な分析の観点から考えると人間が機械の分析. Finder [9] を基に,ユーザの探索行動を支援するように機. を助ける仕組みが欠けているという問題点がある.. 能を追加した上で調整を行った.二つ目に,クラスタ構造. 既存のグラフクラスタリング可視化の研究において,探. を発見する段階で人間と機械が協力して,より良いクラス. 索的にクラスタ分析を行う研究は殆どない.Wang らの. タリングを模索できるような対話機能の提案と実装を行っ. ClusterViz [14] は CytoScape*1 の拡張機能として生体ネッ. た.提案した対話機能では機械的なクラスタリングに対し. トワークのクラスタ分析を支援しており,複数のグラフク. て人間が介入し,相互にフィードバックを伝え合うような. ラスタリングの結果を可視化や統計量を用いて比較する事. 探索的な枠組みを構成した.三つ目に,ユーザが取り得る. ができるが,意味的な観点からクラスタ構造を探索する枠. クラスタ分析のタスクを想定して包括的なクラスタ分析を. 組みは存在せず,クラスタ分析のタスクを十分に達成でき. 支援するための作業空間を提案した.提案するアプリケー. ない.. ション上の作業空間では,クラスタ構造やデータのラベル. 本研究では探索的にクラスタ分析のタスクを達成できる. といった有用な情報を蓄え,それらの情報への対話操作を. 対話的な可視化システムを提案し,機械が人間の理解を助. 可能にすることでクラスタに関する情報をまとめることを. けるための視覚的な支援と同時に,人間が意味的な情報を. 目的としている.. システムに還元することで人間と機械の協力的な分析の達. 本論文の構成は以下の通りである.2節ではグラフクラ. 成することを目標とする.本研究の可視化システムは,高. スタリングの対話的な可視化に関する研究と,多次元デー. 見らの対話的な複雑ネットワーク可視化システムである. タの探索的なクラスタ分析に関する研究についてまとめた.. Social Viewpoint Finder (SVF ) [9] を基にして,新しい対. 3節では Social Viewpoint Finder の概要を説明し,4節. 話機能を付け加える形で提案する.SVF の概要は 3 節で,. で提案する対話機能の解説を行う.5節では実データを用. 本研究の提案する対話機能は 4 節で述べる.. いた分析例を通して考察を行い,6節で論文のまとめと今 後の課題を述べる.. 2.2 多次元データの探索的なクラスタ分析を支援する対 話的な可視化. 2. 関連研究 2.1 グラフクラスタリングの対話的な可視化分析. 多次元データのクラスタリングに関する可視化の研究で は,クラスタリング結果の視覚的な比較を対話的に行うこ. ネットワークの可視化分析には様々なタスクがあ. とで,より良いクラスタリング結果を得るための試みがな. り [10], [11],その中でもクラスタ分析は二つの課題を. されてきた.Lex らの Matchmaker [15] は Seo らの HCE. 有するタスクである.一つの課題は,グラフのクラスタ構. [6] と類似した可視化システムであり,複数のクラスタリ. 造の構造的な複雑さを人間だけでは理解が困難であるとい. ング手法によって得たクラスタ構造を Parallel Coordinate. う問題であり,機械は人間の理解を助けるための視覚的な. Plot (PCP) で可視化し,クラスタリング手法や PCP の. 支援を行う必要がある.もう一つの課題は,データの持つ. 軸を対話的に入れ替えることで探索的に良いクラスタリン. 意味的な情報を機械が理解できないという問題であり,人. グ結果を得る事ができる.Bruneau らの Cluster Sculptor. 間は機械の分析に介入して意味的な分析を付け加える必要. [16] は,高次元データを t-SNE によって可視化し,データ. がある.この二つの課題に対処するために,探索的な可視. のラベルを可視化に反映させてクラスタリングを半自動化. 化システムは人間の認知機能を強化する外付けの頭脳とし て,機械と人間が密接に助け合うような分析を行う事が求. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. *1. https://cytoscape.org/. 2.
(3) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 1: Social Viewpoint Finder の画面.Wikipedia の数学に関する記事の引用ネットワークを可視化した.クラスタ係数中心性のス コアが低い頂点をフィルタリングにより除去し,スコアの高い頂点のみを分析すると5つのクラスタが見つかった.. する試みを行った.これらはクラスタリング結果に対して. は SVF でネットワークを分析した画面であり,例として. のみに人間が介入できるシステムであり,意味的な面を考. Wikipedia の数学に関する記事の引用ネットワークを可視. 慮したクラスタ構造の構築が達成できていない.. 化している.画面上の点は記事を,線は記事間にリンクが. 近年では高次元データのクラスタリングを行う上で最適. 貼られていることを意味しており,記事数は 3,608,リン. な手法が一意に定まらない問題を受け [17],クラスタ分析. ク数は 48,315 である.図 1 では,5つのクラスタを見つ. のあらゆる工程において人間と機械が協力を行うような可. ける事ができた.. 視化システムが研究されている.Streit らの Furby [7] は,. SVF の頂点配置は,高次元可視化手法である細部の Ac-. データの各項目に対して各クラスタに所属する確率的な重. tive Graph Interface (AGI ) [20] を使用している.AGI は. みを与え,対話的に閾値を与える事でユーザがクラスタ構造. ネットワークの位相的な構造を C-MDS により 500 次元以. の探索を行う支援を提供している.Sacha らの SOMFlow. 上の高次元ユークリッド空間へ静的に埋め込み,それを画. [18] は時系列データのクラスタリングを行い,そのクラス. 面上の 2 次元ユークリッド空間へ射影することによって可. タ構造を自己組織化写像を用いて繰り返し修正する多段. 視化結果を得る.また AGI のアルゴリズムを用いること. 階のクラスタ分析の枠組みを提供している.Cavallo らの. で,SVF は 2 次元上の頂点をドラッグ操作で動かし,高. Clustrophile 2 [8] は,種々のクラスタリング手法の比較や. 次元空間での回転を引き起こす対話操作を提供している.. パラメータ調整を対話的に実行できる他にも,ユーザの探. このドラッグ操作による高次元空間での回転を理解する. 索的なクラスタ分析をガイドする Cluster Tour を提供し. ために,森と影のメタファーを用いて説明を行う (図 2).. ている.. ある高次元空間に森が存在し,その森を照らす太陽によっ. 3. Social Viewpoint Finder の概要. て2次元の影が地面に射影されている様子を想像する.こ こで私達は一本の木を選び,その影を指で引っ張ることで. 高見らの Social Viewpoint Finder (SVF) [9] は対話的. 影の位置を変えたいとする (図 2. a).普通は影に触って. なグラフ可視化分析システムであり,社会ネットワークや. も影を動かすことは出来ないが,SVF のコンセプトを使え. 複雑ネットワークの探索的なクラスタ分析を支援してい. ば影を指で動かすことが可能である.指が影を引っ張る動. る.SVF は古典的多次元尺度構成法(C-MDS) [19] を元. 作に合わせ,影を射影している太陽の位置が動いてくれれ. にした高次元可視化を用いており,また独特な UI による. ば,あたかも指の動きに追従して影が引っ張られるように. クラスタ構造の発見を支援する機能が特徴である.図 1. 見える (図 2. b).すると太陽自体が回転しているので,一. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. 3.
(4) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 直感的なドラッグの機能に加え,ネットワーク中心性に基 づいた頂点のフィルタリングや頂点ラベル表示の機能を提 供しており,複雑ネットワークや社会ネットワークのクラ スタ分析を支援している. ここで SVF を用いたクラスタ分析では,クラスタの発 見を人間が担うという特徴がある.SVF においてシステ ムはグラフ構造を反映させた対話的な可視化を行い,クラ スタ構造を見つけるためのインターフェースを提供してお (a) ユーザは一つの木の影を (b) ユーザの影を引っ張る動作 引っ張ろうとしている. に合わせて太陽が動く. 図 2: SVF のドラッグ操作を説明する森と影のメタファー. り,それを人間が使用することで視覚的な効果からクラス タ構造を直感的に理解している.ユーザは頂点のラベルや 辺の繋がりを観察しながらクラスタ構造を探索するため, 意味的な情報を取り込んだクラスタリングが可能になって いる.しかし SVF ではクラスタ構造を理解しているのは 人間だけであり,機械の方はクラスタ構造を理解できてい ないという問題がある.この問題によって,人間の探索的 なクラスタ分析を適切に支援するための枠組みを機械が提 供することが出来なくなってしまう.本研究では機械が人 間の発見したクラスタを理解すると同時に,クラスタ発見. (a) 適当な頂点をクリック. (b) ドラッグで全頂点が移動. に関する理解を促進する機能を実装し,人間と機械が健全 に協力し合う探索的なクラスタ発見の支援を提案する.こ のクラスタ発見を支援するための対話機能は 4.1 項で解説 する. また SVF が支援するタスクは主にクラスタ構造の発見 であるが,クラスタ分析の文脈においては発見したクラス. (c) 隣接頂点をクリック. (d) ドラッグでクラスタを発見. 図 3: SVF におけるドラッグ操作のスナップショット. タの名前付けや複数クラスタ間の比較,クラスタ構造の階 層化などといった様々なタスクが考えられる.これらの 様々なタスクはクラスタ構造へのより深い理解へとつなが. つの影を引っ張る動作によって森全体の影が別の形に変化. り,深い理解はより正確なクラスタ構造の構築に還元する. する.. 事ができる.本研究では,クラスタの名前付けや複数クラ. ここでメタファーを SVF に還元させると,森は高次元 空間の頂点に,影は画面上の頂点に相当する.SVF 上での 操作においてユーザは画面上の任意の頂点を選び,自由な 方向にドラッグする.すると高次元空間の頂点を射影する. スタ間の操作を包括的に行うための作業空間を提案する. この包括的なクラスタ分析の支援は 4.2 項で解説する.. 4. SVF を用いたクラスタ分析の支援機能. 太陽が回転し,画面上の頂点配置が変化する.このような. SVF においてシステムが視覚化するクラスタ構造は曖昧. 操作によってユーザは高次元空間に配置された頂点を多角. であり,クラスタかどうかを明確に決める尺度は存在しな. 的に分析することができる.. い.ユーザは対話的な操作によってクラスタと思われる部. この高次元空間の回転を促すドラッグ操作はクラスタ構. 分を見て,ユーザ自身がクラスタを表す頂点集合を決定す. 造の発見に大きく役立つ.図 3 は Wikipedia の数学に関. る.このクラスタと思われる朧げな頂点集合を雲に例え,. する記事の引用ネットワークを SVF で可視化した図であ. 本研究ではクラスタ雲 (Cluster Cloud ) と呼ぶ.曖昧な状. り,ドラッグ操作の様子を示している.ユーザが適当な頂. 態であるクラスタ雲を用いる事で,人間による意味的な解. 点をクリックで選択し(図 3. a),それをドラッグするこ. 釈を考慮したクラスタリングが可能になる.4.1 項でクラ. とにより画面上の全頂点が移動する様子が見て取れる(図. スタ雲にユーザが手を加え,具体的なクラスタとしての頂. 3. b).その様子を見て,今度は先ほど選択した頂点の隣接. 点集合に絞り込む手法を提案する.. 頂点を選択し(図 3. c),それをドラッグする事によって. またクラスタの発見について支援を行うだけではなく,. 一つのクラスタを発見する事ができた(図 3. d).ドラッ. 種々のクラスタ分析への支援を行うことも重要である.. グした頂点のラベルを見ると「大切頂立方八面体」であり,. 様々なクラスタ分析のタスクはデータに対する深い理解へ. その周りの頂点のラベルも鑑みると発見したクラスタは立. と繋がり,深い理解はより正確なクラスタ構造の構築に還. 体図形に関する記事のクラスタであった.SVF では,この. 元できる.4.2 項では,SVF で新しく対応する3つのタス. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. 4.
(5) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. クについて述べ,それらを支援するための機能を提案する.. 4.1 クラスタ雲を調整する対話機能 本項ではクラスタ雲を調整するための対話機能について 説明を行う.先ずクラスタ雲をパラメトリックに表現する 定義を与え,定義されたクラスタ雲に対して人間が行う対 話的な操作を述べる.本項において,グラフの全頂点の集 合を V で表す.. SVF におけるクラスタの発見は,頂点のドラッグ操作 による視覚的な効果を人間が見て判断することで実現して いる.初めは毛玉状に絡まっている頂点集合から適当な頂. (a) 頂点の cloudity を可視化.(b) 頂点のラベルを観察しなが 頂点色が赤いほどクラスタ. ら閾値を調整し,クラスタ. に含まれる可能性が高い. 雲を探索する. 図 4: クラスタ雲に介入する UI. 点をドラッグして動かしていく中で,ドラッグした頂点に くっついて同じ方向へ動こうとする頂点集合を得るときが. (図 4. b) .閾値の操作はスライダーによって行い,閾値の. ある.ドラッグ後に,この頂点集合は他の頂点と比べて互. 変化に応じてリアルタイムに画面上の雲がフィルタリング. いに近くに配置されており,ユーザはこの頂点集合を見て. されていく.閾値から外れた頂点は半透明に描画される.. クラスタであると見做す.. ユーザは画面上の頂点のラベルや辺の構造,ドラッグ操作. ここで,ユーザが頂点集合をクラスタかどうか判断する. を行った時の記憶などから適切なクラスタ構造が選択され. 基準は感覚的であるため,クラスタと思われる頂点集合の. るまで閾値の調整を行う.最終的に適切なクラスタを選べ. 輪郭は曖昧である.この曖昧な状態のクラスタがクラスタ. た時,4.2 項で述べる履歴機能の中へ出力を行い保存する.. 雲であり,各頂点がクラスタに属するかどうかを決める重 みを設定することで曖昧さを表現する.本論文では頂点 v が持つクラスタに属する可能性を表す重みを cloudity と. 4.2 3つの機能を持つクラスタマップ 4.1 項のクラスタ発見を支援するための対話機能に加え,. 呼び,その値を cl(v) で表すことにする.この重みがある. SVF のクラスタ分析の文脈を考慮すると次の3つのタスク. 閾値 t を超えている頂点をユーザが認識するクラスタ C. に対応した機能が必要であると考えられる.本論文では,. と考え,そのクラスタはクラスタ雲 CC の閾値付きの関. 以下について提案を行う.. 数 C = CC(t) = {cl(v) > t s.t. v ∈ V } として定義でき. ( 1 ) 履歴:発見したクラスタの保持と再分析. る.ユーザは閾値を調整し,望ましいクラスタ構造を探し. ( 2 ) フィルタリング:クラスタ構造を対象とした分析. ていく.. ( 3 ) プロファイル:クラスタ構造の要約. cloudity はある頂点がクラスタに属しているかどうかを. 一つ目のタスクについては,発見した幾つものクラスタ. 決める感覚を表した尺度であり,その感覚を定量化できれ. をいつでも簡単に振り返る事ができる事を要求しており,. ばクラスタ雲に属する頂点集合をパラメトリックに表現. 履歴的な役割を持った機能によって対応する.二つ目のタ. する事ができる.本論文では,ユーザが SVF を用いてク. スクについては,見つかったクラスタの中で更にクラスタ. ラスタを発見した時の感覚を「ドラッグ操作前後の頂点移. 構造を探索したり,また複数のクラスタを並べてそれらの. 動ベクトルに関して,ドラッグした頂点と同じ方向に同. リンク関係を観察したりといった事を要求しており,フィ. じ長さで動く頂点ほどクラスタに属しているように見え. ルタリングの機能によって対応する.三つ目のタスクにつ. る」と仮定する.したがってある頂点 v の cloudity は,. いては,様々なクラスタ分析によって得た情報をまとめる. cl(v) = pv · q で定義できる.ただし,pv は頂点 v の移動. 事を要求しており,クラスタ情報の提示とクラスタの階層. ベクトルであり,q はドラッグした頂点の移動ベクトル,·. 化によって対応する.これらのタスクと対応する機能を備. はベクトルの内積を表す.. えたクラスタ分析の作業スペースをクラスタマップ(図 5). ここで上記のクラスタ雲の定義に則り,ユーザのクラス タ発見を支援する対話機能の説明を行う(図 4).クラス タを見つけるようなドラッグ操作を行った後,提案する対. と呼び,個別の詳細は以下の条で述べる.. 4.2.1 履歴:クラスタの保持と再分析 分析の最中に得た有益な情報を保持し,再びアクセスで. 話機能が提供する支援は二段階に分かれる.一段階目に,. きるように管理するような履歴を提供する事は重要であ. 各頂点の持つ cloudity の値を画面上の頂点に可視化を行う. る.例えば,あるクラスタ雲を分析しているうちに別のク. (図 4. a).頂点につけられた色が青に近いほど cloudity. ラスタ雲が正しいか疑問が湧いたとする.ここで素早く過. は低く,赤に近いほど高い. 二段階目に,ユーザが対話的に cloudity の閾値を調整 し,ユーザが想像しているクラスタ雲の形を探っていく. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. 去に発見したクラスタ雲にアクセスでき,パラメータの調 整が可能であることが望ましい.この時に重要な要請は, ユーザが容易に過去に発見したクラスタ雲にアクセスでき. 5.
(6) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 6: Wikipedia のリンクネットワークを分析した例 図 5: クラスタ分析を統括するクラスタマップ. タがどのような意味で類似しているのかを観察する事がで る UI を提供することである. 本研究では,発見したクラスタ雲を地図のような形で保. きる.. 4.2.3 プロファイル:クラスタ構造の要約. 存する UI を実装した.ユーザがある時点で見つけたクラ. クラスタ構造の統計量を表示する事は,人間がクラスタ. スタ雲に対し,画面上の座標に紐づけてシンボルとして要. 構造を考察する上での一助となる.発見したクラスタの直. 約した図に配置する.これはクラスタ雲の発見に関する. 径やクラスタリング係数といった種々の情報は,クラスタ. ユーザの記憶が,画面上のどこで見つけたかに依存してい. を一つのグラフとして観察する上で役に立つ.また,ペー. るという仮定に基づく配置である.クラスタ雲のシンボル. ジランクや次数中心性といったネットワーク中心性の高い. は各頂点の cloudity とクラスタを決める閾値,最終的に. 頂点を表示する事も分析の役に立つと考えられる.. 出力されたクラスタやクラスタ雲の名前といった情報を保. この節で述べた様々な分析行動を実行した結果としてク. 持している.クラスタ雲の名前の初期状態は,発見時にド. ラスタの包含関係や類似関係といった構造が見えた時,そ. ラッグした頂点のラベルを与え,後から自由に編集可能に. の知見もまとめる機能が必要である.例えばフィルタリン. する.シンボルを選択することで再びクラスタ雲を調整す. グの結果,一つのクラスタが二つに細分化できたり,もし. る機能が起動し,画面上の対応する頂点集合に色を付けた. くは二つのクラスタを一つに統合できる事がわかったと. 上で再分析が可能になる.. する.この情報を元に階層的なクラスタ構造を構築できれ. 4.2.2 フィルタリング:クラスタの構造分析. ば,ユーザはグラフへのより深い理解が得られる.. クラスタ発見を保持し,それにアクセスできるように なった時,そのクラスタに関して注目できるフィルタリン. 5. SVF を用いた分析例. グ機能は重要である.クラスタ雲の調整によって得たクラ. 4 節で提案した SVF の追加機能の効果を検証するため. スタ構造のみに注目する事で,そのグラフ構造や頂点のラ. に,実データの分析例を二つ提示する.但し 4.2.2 条と. ベルを観察して発見したクラスタへの理解を深める事がで. 4.2.3 条で述べた機能は未実装であるため,それらに対応. きる.単一のクラスタをフィルタリングによって表示した. するタスクについては考察のみ行う. また発見したクラスタ雲のシンボルを色に対応させて記. 時は,そのクラスタが更に細かいクラスタに分割できるか どうかといった分析にも対応可能である. 複数のクラスタについてフィルタリングを行う際,クラ スタを集合として見做し,和集合と積集合のフィルターが. 号で表す.本節において,赤のクラスタ雲は Cred ,青は. Cblue ,黄は Cyellow ,緑は Cgreen ,水色は Ccyan で表す事 にする.. 考えられる.クラスタの和集合を取る場合は,例えば無作 為な探索が目的である.適当な二つのクラスタを並べて眺. 5.1 例1:Wikipedia のリンクネットワーク 一つ目の例として,Wikipedia*2 の数学の記事に関する. めた時,それらが類似した意味を持つクラスタである可能 性や,相対的な意味を持つクラスタである可能性がある.. リンクネットワークの可視化分析を行った(図 6) .ネット. 無作為に選んだクラスタを比較する事で新しい発見を促す. ワークの頂点は記事を表し,辺は記事間にリンクが貼られ. 事が期待できる.クラスタの積集合を取る場合は,例えば. ている事を表す.分析により発見したクラスタ雲について,. 類似したクラスタを統合した時の名前付けが目的である.. 含まれる頂点集合のラベルを観察して得たキーワードを述. 同じ意味を持つクラスタを一つのクラスタにまとめる時,. べると, Cred は「図形」 , Cblue は「確率分布」 , Cyellow. その新しいクラスタにどのような名前を与える必要があ. は「ライフゲーム」, Cgreen は「数学者」, Ccyan は「ア. る.この時,共通するラベルを観察する事によってクラス. *2. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. https://ja.wikipedia.org/wiki/. 6.
(7) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 規模が原因で生じた画面上の頂点の重なりは分析を妨げる 一因であった.分析中でも,ドラッグ操作をした時にどこ までがクラスタなのかが,他の頂点で隠れてしまって見え 辛いという問題が生じていた.しかし,本研究で提案した クラスタ雲の機能によって,クラスタとして集まろうとす る頂点集合を対話的に探索する事ができ,図 7 のようなク ラスタ構造を発見する事ができた. クラスタ内のラベルを観察すると,量子に関するキー ワードが Cred と Ccyan で多く見られた.これらのクラス 図 7: 論文の引用ネットワークを分析した例. タは頂点集合の重なりが殆どないために一つのクラスタに まとめる可能性は低いが,両者が重なる部分の頂点集合を 分析する事で量子に関する新しいグループの発見が期待. ルゴリズム」であった.. できる.また Cyellow の持つキーワードである Yang-Mills. SVF ではドラッグ操作によってクラスタ構造を発見で. の理論は Cgreen のキーワードであるゲージ理論の一種で. きるが,その都度画面上の頂点配置も変化する.クラスタ. あり,Cyellow と Cgreen にはクラスタ間の類似関係が見出. として見つかった頂点集合は互いに近くに配置されたまま. せた.. であるが,ドラッグ操作が続くにつれて他の頂点との交わ. 他にも,場の量子論に関する論文のクラスタである Cgreen. りが大きくなってしまった.画面上でのみ頂点の様子を観. とタキオンに関する論文のクラスタである Ccyan のクラ. 察する事は難しかったが,クラスタマップを用いてクラス. スタのラベルを調べていると,ラベルの意味的な相反関係. タ構造の要約を確認し,画面に色を反映させる機能によっ. を発見した.タキオンと場の量子論は意味的に相反する. て簡単に発見したクラスタを振り返る事ができた.. キーワードであり,その関係性が可視化画面上の Cgreen. また,分析の最中に様々な頂点をドラッグしていると,. と Ccyan の位置関係に現れている可能性がある.その画面. 図形に関する記事のクラスタである Cred に属する頂点の. 上の位置関係が偶然のものであるか,もしくは分析してい. 動きが一様でない様子が観測できた.ラベルを細かく確認. るデータセットの構造的に理由付けができるものであるか. していくと,Cred は平面図形のクラスタと立体図形のクラ. は定かではなく,この点は分析の余地が残っている.. スタの二つで構成されている事がわかった.フィルタリン グの機能により Cred を分析できれば,階層的なクラスタ 構造を詳細に構築することができると考えられる.. 6. 結論 本研究では,複雑ネットワーク可視化システムである. 確率分布のクラスタと数学者が重なっている頂点を眺め. Social Viewpoint Finder を基に,探索的なグラフクラスタ. ると,確率分布に関係のある数学者が何人か見られた.図. リングの可視化システムを実現させた.ユーザの探索的な. 形と数学者,ライフゲームと数学者といった組み合わせを. クラスタ分析の支援のために,機械と人間が健全に協力し. 試して見た時,その分野に関係のない数学者が現れた.こ. 合う UI を提供し,人間の実行する感覚的なグラフクラス. れは本論文で設定した cloudity を表す数式が不完全であ. タリングをパラメトリックに表現したクラスタ雲を提案し. り,他にもクラスタを決定する要因があることが原因の. た.またクラスタ雲を用いた探索的な分析行動を多角的に. 一つであると考えられる.クラスタ雲を表現するための. 支援するためにクラスタマップを提案し,分析例によって. cloudity の定義を,よりユーザの感覚に近づけるべく改善. 必要性を確かめた.. を行う事は今後の課題になり得る.. 今後の課題は以下の三つである.一つ目は,本研究で提 案した対話機能の実装を完了する事である.その際に SVF. 5.2 例2:論文の引用ネットワーク. のスケーラビリティを考慮して実装を行う必要がある.人. 二つ目の例として,高エネルギー物理理論の論文に関する. 間と機械が健全な協力を達成するような設計を行っても,. 引用ネットワーク [21], [22] の可視化分析を行った(図 7) .. 機械のタスク実行に大きな時間が掛かると快適な分析行. グラフの頂点は論文を,辺は論文間の引用関係を表す.分. 動が阻害されてしまう.すでに高速化が施されている既存. 析により発見したクラスタについて,含まれる頂点集合の. の SVF が提供する機能に加え [23],今後は本研究で提案. ラベルを観察して得たキーワードを述べると, Cred は「単. した機能もまた高速化を行う.二つ目は,本研究で提案し. 極子」, Cblue は「超弦理論」, Cyellow は「超対称理論」. た SVF の拡張機能がユーザの探索的なクラスタ分析を支. と 「Yang-Mills」 , Cgreen は「量子重力理論」と「ゲージ. 援できるかどうかを定性的に評価する事である.思考発話. 理論」, Ccyan は「タキオン」であった. このネットワークの頂点数は 27,700 であり,その頂点. c 2018 Information Processing Society of Japan ⃝. 法などの内省的な評価方法 [24] を用いながら,テストデー タを分析してもらうユーザテストを予定している.三つ目. 7.
(8) Vol.2018-HCI-180 No.8 Vol.2018-UBI-60 No.8 2018/12/4. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. は,探索的な分析を可能にする枠組みを破壊しない程度に. SVF の機能の一部を自動化する事である.例えば事前に 簡単なクラスタリング手法を適用して荒いクラスタ構造を 初期状態として提供するなど,適度にユーザの手間を省く 努力が必要である.. [15]. 参考文献 [1]. [2]. [3]. [4]. [5]. [6]. [7]. [8]. [9]. [10]. [11]. [12]. [13]. [14]. Xu, R. and Wunsch, D.: Survey of clustering algorithms, IEEE Transactions on Neural Networks, Vol. 16, No. 3, pp. 645–678 (online), DOI: 10.1109/TNN.2005.845141 (2005). Zhou, Y., Cheng, H. and Yu, J. X.: Graph Clustering Based on Structural/Attribute Similarities, Proc. VLDB Endow., Vol. 2, No. 1, pp. 718–729 (online), DOI: 10.14778/1687627.1687709 (2009). Liu, Y., Safavi, T., Dighe, A. and Koutra, D.: Graph Summarization Methods and Applications: A Survey, ACM Comput. Surv., Vol. 51, No. 3, pp. 62:1–62:34 (online), DOI: 10.1145/3186727 (2018). White, R. W. and Roth, R. 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