123 出来る.1977年頃からこの手法によりソマトスタチン やインスリンの製造が可能となり,ヒト成長ホルモン も1979年にその作成に成功した.臨床治験は米国にひ きつづき英国で開始され,我が国でも1981年4月に健 康男子に投与してその安全性を確かめた上で全国的治 験を開始した.(治験責任者:鎮目和夫教授). 現在までに全国21施設で計62名の下垂体性小人症の 患者が時期を異にして純度の異なる三種の製品により 治療を受けているのでその結果について報告する.治 験に使用した薬剤は従来の下垂体から抽出した成長ホ ルモン(P−hGH)より1つメチオニンのついた192個の アミノ酸よりなる物質でソマトノルムと呼ばれてい る.その製品の中に含まれる大腸菌由来の蛋白:量によ り1,II, IIIと呼ばれる.ソマトノルム1は1982年10月 置り10人の下垂体性小人症に投与して身長促進効果を 認めた.ソマトノルムIIは1983年12月より15人の患者 に投与して,又,ソマトノルムIIIは1984年11月より37 人の患者に投与して身長促進効果を認めた,1,II, IIIによる身長促進効果には差がなく,平均すると治療 前の身長の伸びが3.5±0.9cmであったものが,1年 の治療で8.2±1.7cmの伸びとなった.この効果はP・ hGHのそれに匹敵するものであった. P−hGHと異な ることはGHの抗体出現率が高いことで一番純度の 高い製品でも1年間の治療で76%の患者に認められ, P・hGHでは10∼20%なのでそれに比し著しく高率で あると言える.しかしこの抗体は特に抗体価が高くな け’れぽ身長促進効果に影響を与えず,又,治療を中止 すれば抗体が消失することを認めた.以上ソマトノル ムはP−hGHと同様な身長促進効果があり,特に大き い副作用がないので臨床上有用な薬剤と結論された. 16.現代の駆梅療法 (皮膚科) ○新井 洋子・岡村理栄子・肥田野 信 現在,欧米,東南アジアでは米国CDC(Center For Disease Contro1)の駆梅療法指針が用いられている. この指針によると第1,II期の早期梅毒ではバイシリ ン240万単位を1回筋注か水性プロカインPCG 60万 単位を8回筋注が主流でPCにアレルギーのある場合 はテトラサイクリン又はエリスロマイシン1日2915 日間内服を推奨している.しかし我が国においては ショックの危険性が少なく,また各種抗生剤が手に入 りやすい面もあり,脚下ペニシリン剤を第一選択とし て使用している. 今回我々は感染後1年以内の顕症梅毒12例(1期疹 2例,2期疹10例)をセファクロル群とベンザチンペ ニシリン群に分け’,臨床症状ならびに血清反応を経時 的に追跡した.セファクロルは1日750mg,ベンザキン ペニシリンは1日120万単位として投与日数は約30日 間で,場合によって延長した.治療開始後,両群とも 皮疹は急速に消失し,血清抗体価の下降速度にも差は 認められない.分画TPHA法を行なうと治療開始後
TPHA−lgMとIgGはほぼ平行して低下している
TPHA・lgGは消失しないが, TPHA・lgMは治療開始 後1∼2年で消失するので,TPHA−lgM検出は,治癒 判定の指標となりうると考えられる.いいかえれば TPHA・IgM陰性の潜伏梅毒には,駆梅療法を行なう 必要がないと考えられる. 「感染症と免疫不全」 1.伝染性単核症の5症例 (耳鼻科) ○佐々木佳子・鍋島みどり・後藤田陽子・ 高山 幹子・石井 哲夫 伝染性単核症の症状は,発熱,リンパ節腫脹,咽頭 炎であるが,咽頭痛として耳鼻咽喉科を受診する症例 もある.咽頭の所見は,口蓋扁桃の発赤,腫脹に加え, 白苔の付着が認められ,種々な扁桃疾患との鑑別を要 する, 昭和57年から60年までに,当科を受診した伝染性単 核症5症例の臨床症状および諸検査結果について比較 検討し報告する. 5症例の年齢は,20歳代3例,10歳代2例であり, 性別では男性1例,女性4例であった. 5症例のうち4症例は,当科入院・精査治療を施行 したが,他の1例は,アデノイド切除術と口蓋扁桃摘 出術後に続いて罹患したもので,当院小児科にて,精 査治療を施行した, 4症例の当科初診時の主訴は,全て咽頭痛,発熱で あり,うち2症例は,食事摂取が不可能な症例であっ た, 症例は,全ての症例に,37∼38℃前後の発熱と,扁 桃,上咽頭,下咽頭にわたる白苔が認められた.この 白苔の培養にて,5症例中3症例が正常菌叢,1例はStaphylococcus aureus 30%, Haemophilus in且u・ enzae 20%, Coryuebacterium 50%,1例はHaemo− phzlus inHuenzaeであった.
リンパ節腫脹は,3症例に認められ,肝脾腫に関し ては不明である.
血液検査では,白血球増加は2例であったが,全四
124 例にリンパ球増加が認められ,うち3症例に異型リン パ球が認められた.また肝機能については,極軽度の ものから,重症までの種々な程度のGOT, GPT, LDH の上昇が認められた. また血清生化学的には,Paul Bunnell反応は全症例 に施行されているが,14倍から896倍であった,さらに EBウイルス抗体価について検索しているものは,5 症例のうち3症例であったが,そのうち1症例は,抗 体価上昇は認められなかった.5症例のうち4症例は, 2∼3週の経過にて軽快したが,術直後より発熱が続 いた1症例は4週と経過は長かった. 2.アトピー性皮膚炎にみられる細胞性免疫異常 (皮膚科) ○檜垣 祐子・川上 理子・肥田野 信 末梢血中リンパ球サブセットが異常で単純ヘルペス や黄色ブドウ球菌などによる感染症を反復したアト ピー性皮膚炎の2例を経験した.マイトジェンによる リンパ球幼若化試験では,Con A, PHAとも低下はみ られなかった.T細胞, B細胞百分率では, B細胞が やや低下の傾向を示した例があった.モノクローナル 抗体によるリンパ球サブセットの解析では,アトピー 性皮膚炎患者における従来の報告とは異なり,OKT4 の低下,OKT8の上昇がみられ,従ってOKT4/OKT8 比は著明に低下していた。一般に細菌感染症では OKT4/OKT8比は上昇,ウイルス感染症では低下する という報告があり,アトピー性皮膚炎においても感染 症を合併することに伴ってこれらの値に変勤がみられ ると思われた.OKT4/OKT8比の低下が,一次的なも のか,反復する感染の結果であるかは不明である。 3.外陰herpes慢性化のrisk要因 (産婦人科) ○滝沢 憲・横尾 郁子・磯野 聡子・ 稲生由紀子・井口登美子・武田 佳彦
1985年5月より1986年4月までに,当科のSTD
(Sexually Transmitted Disease)専門外来に登録され
たVirus感染症は93症例である,内訳は, Human Papilloma Virus(HPV)又1まその類縁Virusによる 感染症,Condyloma Acuminatum及び小陰唇内側乳 頭腫が59例であり,Herpes Simplex Virus(HSV) Type 1又はType 2による感染症,外陰Herpesは34 例であった.外陰Herpesは,発症機転,臨床症候,血 清抗体価等から急性初発型,慢性再発型,妊娠・放射 線治療等に伴なう誘発型及び無症候型に分類されてい る.当科の34例中,初診時に病型分類できたものは30 例で,急性初発型21例,慢性再発型8例及び誘発型1 例であった.急性型21例中の3例は6ヵ月以内に再発 しており,慢性型8例中5例も再発前半年以内に急性 外陰ヘルペスの既往があった.急性型21例のHerpes 病変占拠部位であるが,高熱を伴なう広汎な外陰炎, 膣炎,子宮頸管炎及びソ径リンパ節炎は,各々11例 (52%),13例(62%),10例(48%)及び20例(95%) であった.慢性型11例では,片側ないし両側に単発又 は数個の水庖びらん葡を認めるのみであるが,リンパ 節炎は5例(45%)に認めた.なお,抗Herpes CF抗 体の陽性率は,急性型の初診時は0であるのに対し, 慢性型では7/11(64%)で陽性であった. 細胞性:免疫能の指標として検討したOKT4/T8値, それが1.0未満の頻度,NK細胞活性は,急性型では, 1.78±0.68,1/13(8%),24±18であったのに対し, 慢性型ではし23±0.83,4/7(57%),15±9と,慢性 型でT4/T8の低値を示すものが多かった.急性型とし て初発し後に慢性再発型に移行した3例で特徴的なこ とは,2例が神経症状(髄膜炎1例,末梢神経炎1例) を伴なっており,抗Herpes CF抗体価の上昇不良で あったことである.慢性型では,HSVは末梢神経節に