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ボーダー(境界)を越えて

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム] ボーダー(境界)を越えて ▪ Leon Strous  社会はますます ICT に依存し,日常生活への ICT の影響は大きくなりつつあります.この 現状の中で,多くの挑戦が生まれています.不適切な設計や,ソフトウェアやハードウェア のエラー,天災や人災(不注意によるものや意図的なもの)は,多くの経済的および人命の 損失を引き起こします.これらを解決することはたやすいことではありません.なぜなら, システムやその基盤はどんどん複雑になり,相互依存し,国境等のボーダーを越えてしまう からです.この問題の対策として必要なことは,多様な観点で「ボーダーを越えて考える」 ことです.つまり,多様な専門性の間,異なる種類の関与者同士や異なる地域や国の間での 協力が必要なのです.実際,情報システムや基盤の開発,構築,保持,統制にかかわる組織 や人々は,システムが安全・高品質で問題が生じないようにする役割を担うのです.  オランダの金融部門を例に挙げましょう.あらゆる基盤や情報システムは国際化が進んで おり,特に金融部門についてはそうです.たとえばヨーロッパにおける銀行間の決済システ ムは,20 以上の参加国からなる欧州中央銀行制度(European System of Central Banks)によっ て運営されています.また,企業により運営されているシステムは,一国あるいは少数の国 に拠点を置きながら,多数の国で提供されています.これらのシステムはあなたの会社や国 に影響を及ぼすかもしれませんが,それらを頑健にしたり,必要な措置を講じたりするよう なことには,あなたは直接かかわることはできないのです.つまりすべての関係者の協力が システムや基盤のレジリエンス(強靭さ)を確保するためには欠かせないのです.オランダ では,そのために数々の公式・非公式なグループが作られました.これらのグループは,情 報セキュリティ,物理的なセキュリティ,事業継続性やリスク管理,決算システムの分野の. 巻頭 情報処理 Vol.57 No.5 May 2016.

(2) ■ Leon Strous 情報処理国際連合(IFIP)会長 フィリップスエレクトロニクスで 8 年 間勤務したのち,1993 年よりオラ ンダの中央銀行であるオランダ銀行 (DNB)に勤務.1988 年よりオラン ダコンピュータ協会,1994 年より IFIP で 活 動.2001 年 から 2007 年 (セキュリティ委員会) まで IFIP TC-11 の委員長,2010 年より IFIP 会長.. 専門家によって構成されています.  組織として,銀行,金融市場基盤企業に加え,さまざまな調整役が参加しています.たと えば,財務省,中央銀行とオランダ証券当局,サイバーセキュリティにかかわる政府機関な どです.金融部門と通信部門は,決算システムの通信サービスをロバスト(堅牢)にするた めの共同プロジェクトを実施しています.さまざまな国の組織からグループが構成されてお り,これらのグループがこうした協力体制が効果的であることを証明しています.では,も う十分でしょうか? いえ,まだ大いに改善の余地はあります.課題は,セキュアでロバス トな情報システムの設計と開発です.異なる領域からの見識や展望が,システムの質の向上 には欠かせません.  ICT の専門家による学会の役割は多岐にわたると考えます.情報処理学会や IFIP のような 学会は,技術開発を進めるとともに,研究やイベントを通して知識を広める必要があります. また,ICT 就業者の専門性の促進と強化を行う必要があります.このコラムで皆さんに特に お伝えしたいのは「ボーダーを越えて考える」ことの奨励と促進です.さまざまな分野の専 門家と ICT の間の異分野協力は確かに増えつつあります.しかし,さらに多くの異分野,た とえば,建設工学,心理学,法律学といった分野との協力にも目を向ける必要があります.. ICT の専門家のための学会には,さまざまなタイプの協調のためのプラットフォームを提供 するためのネットワークや活動があります.協調は大変なことであり,簡単にできるもので はありません.しかし,必要なことであり,努力に値するのです.. 情報処理 Vol.57 No.5 May 2016. 巻頭.

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