小学校社会科学習における調査活動と概念形成
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(2) 目次 1. 序一. 第1章 小学校社会科学習における調査活動の現状と問題点一・. 3. 第1節 社会科学習における調査活動の現状一……………一…. 3. (1)社会科学習における調査活動の方法……一一…………一一・. 3. 〔2)社会科学習における調査活動の内容…一………一……一. 8. 〔3)社会科学習における調査活動の意義…一…………一一一. 10. 第2節 社会科学習における調査活動の問題点・……一一……一一. 15 15 16 16. 〔1)調査活動の方法に関する問題点…一一一………一…一一一…… (2)調査内容と問いに関する問題点…一…一・一………一一…一…一 (3)調査活動に関するその他の問題点…一一一一…………一一…一一. 第2章 調査活動によって概念形成を 図るための社会科授業構成理論一一. 第1節 概念形成を図るための問い…………… (1)社会科学習における問い・…一一……一……一一一一. ② 問いと学習過程………一……一…一’一一……一 〔3)関係追求のための問い……………一一…一一一…. 第2節 概念形成を図るための調査方法一…一…… 〔1)調査方法と思考・一………一一一……一……一一…… ② 調査過程………一一………一…・一……一一一一…一一一一一. 第3節 概念形成を図るための調査内容…一一…… (1)知識の構造………一一…一…一一一一一…一…一一……一一一. (2)問いの構造一一一………t−t一一一……………一…一. 18 18 18 23 26 29 29 33 41 41 44.
(3) (3)調査内容・一……一一………一一…一一…一一一一…一…一一…一. 46. 第4節 調査活動によって概念形成を 図るための社会科学習過程モデルー. 第3章 社会科授業実践における調査活動の分析…一………一・一一 第1節 研究仮説……一一………一一一一……一一一一一一一……一一……一……一一. 第2節 授業分析の方法・一一…一…………一一一一…………一一一一一一一一. (1)授業分析の視点……………一一一一一一一…一……………一…一…一 ② 授業分析の方法一一……一…一…一一・・一一一…一t一一t一一一……一一……. ② 授業分析の対象…一…一…一一……一一……一一一……一…一一……… 第3節 授業分析一一一…………一…一一一一一一一一一………一…『一…………一一. (1)視点1についての分析結果と考察……一……一……一一一一… ② 視点皿についての分析結果と考察一一一一……一…一…一一一. {3)視点皿についての分析結果と考察………………一一一…… (4)授業分析のまとめ一……一一一一………一……一一一…一一一一…一一……. 49 52 52 53 53 53 56 58 58 67 70 75. 第4章 調査活動によって概念形成を 図るための社会科授業設計……一……一一 第1回忌社会科授業設計の手順……一………一一…一……………一一 (1)知識の構造化……………一…一一…一……一…一…一一一一…一一…一一t一 ② 問いの構造化と授業モデル…一…一一一………一一一一一一一一…一一…一一t. 76 76 76 77. 第2節調査活動によって概念形成を 図るための社会科授業モデル……一一一… {1)題材(小単元)について一…一…一…一……一一一…一……一…… ② 知識の構造…一……一…一一一一…一一一……一一…一…一…一一一一…一. 78 78 82.
(4) 〔3)問いの構造…一一一一一一…一…一t一一一…………一……一一一…一…一t一. 93. (4)授業モデルー一………一一一・…一…………一…一…一一………. 95. 第3節 授業モデルの成果……一………一…一一………一……一一一一一. 〔1)調査活動の位置付けと予想。仮説…一一……一一……一一一一 (2)調査活動で習得される知識の質・…一………一…一一一一一…. (3)関係認識過程における仮説とそれに含まれる要因一一 tw ttt−tttt一一mT一一一一一一一一.t一一一一T一一一一一一一一一tTt一一“一Lt−tt−t.L−TF一一t一一一一一...t一一m一一一一一tt. 122 122 123 124 126.
(5) 序. 1.研究の視点 平成元年度版小学校学習指導要領(以後「新学習指導要領」)社会で は, 「今回の改訂では,知識中心の学習に偏らないようにすることに配. 慮し,児童に調べる学習を奨励し,観察・資料活用の活動などが積極的 に行われるようにしている」ことを述べ,各学年の内容に「∼調べて∼ 理解する」 「∼調べて∼気付く」ことを明示している。このことは「調. べる学習」が社会科創設時から学習における中心的活動になるべきであ ったにもかかわらず,受験社会科の台頭によって暗記中心の学習になり がちであったことへの反省に立っている。これまでにも多くの研究者や 実践家が「調べる学習==調査活動」についていろいろな論を展開してき た。それにもかかわらず,今回のような内容が明示されるということは,. 調査活動が充分な成果を上げていないことを物語っている。. 社会科の目的は社会認識形成であると言われている。社会認識形成を 図るためには.小単元の学習においてより質の高い概念的知識を習得す. る必要があるbつまり.各小単元においていかなる概念形成を図るかが 社会科学習の大きなポイントである。これまでの調査活動は,概念形成 との関連で論じられてきたであろうか。学習の楽しさ・追求のしゃすさ を実現する一つの方法としての捉え方に焦点が集まっていなかったであ ろうか。. そこで.本研究では,概念形成との関連で調査活動のあり方を論じて いく。. 一1一.
(6) 2.研究の目的 本研究の目的は以下の通りである。. 社会科学習における調査活動の役割を概念形成の立場から捉え 直し,より有効な調査活動のあり方を提案する。. 3.研究方法 上記の研究目的を達成するために,以下の方法で研究を進める。 (1)小学校社会科学習における調査活動の現状を分析し,その成果と 問題点を明らかにする。. {2)概念形成を図るための調査活動のあり方を,問い・方法・内容の 観点から検討する。そして,調査活動によって概念形成を図るため の学習過程モデルを示す。. (3)②の成果を基に,本研究についての仮説を設定する。そして,研 究仮説を検証する方法を示し.授業を分析・考察する。 〔4)以上の研究成果を踏まえ,調査活動によって概念形成を図るため の社会科授業モデルを設計する。. 一2一.
(7) 第1章 小学校社会科学習における調査活動の現状と問題点. 序において.調査活動が社会科学習の中心的活動になるべきものであ ることを述べた。調査活動を実際の学習に取り入れる場合に問題となる のは.その内容と方法である。また,活動自体の意義や目的も考慮しな ければならない。. 本章では.まず,小学校社会科学習において調査活動がどのように捉 えられ.どのような方法によって行われているかを明らかにする。次に 新学習指導要領に示された調査内容を分析してその特性を示すとともに,. 調査活動の意義を明らかにする。最後に,社会科学習の目的である概念 形成の立場から調査活動の方法と内容を捉え直し,その問題点を指摘す る。. 第1節 社会科学習における調査活動の現状. 本節では,小学校社会科学習における調査活動の捉え方,調査内容. 社会科の目的からみた調査活動の意義を明らかにする。. {1)社会科学習における調査活動の方法 新学習指導要領では,小学校に「観察」.中学校に「調査と観察」.. 高校に「調査」という活動を位置付けている。位野木寿一氏は観察と調 査について以下のように述べている。. 「もともと.地域を研究対象とする地理学では,野外における観察や 調査を基本的な研究技術としているので.多くの論文にはr野外観察』. 一3一.
(8) とかt野外調査sとよばれることばが使用されている。……略……。 青野寿郎はr野外調査』について,『研究者が研究地域へ出かけ.直 接研究資料を蒐集する調査をいい,机上研究に対する語』とし.山本. 正三はr野外観察』とはr小地域の精密調査や統計,地図その他の関 係文献資料を欠く地域に関する研究において,そのもっとも基本的 な有効な研究技術』としており,両者にニュアンスの違いはあるが, これらの用語をほとんど同義に解している。」(①p.2). 「高等学校のr野外調査(地域調査)』は,この中学校の基礎能力の 上に立って.地域調査法の大要を理解させ,身近な地域や特定の地域 を選んで,直接観察および調査あるいは諸資料を利用した調査を計画 し.実践させるものと考えたい。」(①p.3). 堀内一男氏は調査の対象や方法によって「文献調査・観察調査・聞き 取り調査」という分け方をしながらも「小学校での“観察”はある事象 をねらいを定めて注意深くみることであるが,・…・・略……数えたり,聞. き取ったり,観察と平行した調査活動が含まれると解釈してよいだろう」 (②p.260)と述べている。これらのことから.社会科学習における「観. 察・調査」に科学的手法の程度の違いはあるものの,小学校・中学校・ 高等学校の各学校において明確に区別することなく,相補する形で学習 に取り入れられていることが分かる。日台利夫氏は「社会科学習におい て観察活動という場合には,一般に直接的な観察,調査,面接活動を指 していることが多く,間接的な書かれた資料や数字,映像による資料等 の観察は,普通,資料活用と呼ばれている」(②P.254)と述べている。. つまり.社会科学習における調査活動の方法は「観察」・「調査」とい う捉え方でなく, 「観察」・「資料活用」という捉え方である。. これまで述べてきた調査活動の類型をまとめると以下の通りとなる。. 一4一.
(9) 位野木氏. 堀内氏. 日台氏. 地域観察 観察調査 ]一)(. 〕一観察. 地域調査 聞き取り調査 文献調査. → 資料活用. 〔図1−1〕調査活動の類型 日台氏は観察の手順や方法として,(1)計画つくり,②観察前の準備. (3)観察,(4)記録の整理・分類.(5)記録の解釈・まとめ,の5段階をあげ,. それぞれの段階における指導上の留意点を説明している(③pp.57−64)。. 位野木氏溝上泰氏をはじめ多くの研究者が観察指導のあり方について 言及している。 「観察」についての研究の焦点は,子どもに「何を,ど. のように見せ,どのようにまとめるか」という各段階における指導内容 や観察態度の指導に集中している。. 以上,観察についての現状を述べてきたが,もう一方の資料活用はど のように捉えられているであろうか。. 大森照夫氏は,資料活用における「資料」について以下のように述べ ている。. 「資料という漢語は,rもととなるもの』または『助けとなるもの』. の2っの意味をもち,資料学習における『資料』の概念は,前者の意 味からくる『学習することがらを立証する根拠となるデーター』と,. 後者の意味からくる『ワキ役として学習を助け効果をあげる役割を果 たすもの』とを内包することになる。」(④p.129). つまり,資料とは社会認識を深めるための根拠となるデーターであり, また,社会事象の見えにくい部分を見やすく捉えやすくするたあに加工 されたものである。. 一5一.
(10) 広岡亮蔵氏は,資料を,社会科学習で子どもたちが直接に経験できる 生の資料(第一次資料)と作成者によってっくられた事実(第二次資料) に区別し,以下のように具体化している(⑤p.5)。 i. 第一次資料一→現実資料(現地,現物.遺物.遺跡). 五. 剃灘輪驚11:. 〔図1−2〕資料の類型1 昭和52年度版小学校学習指導要領(以後「前学習指導要領」)社会で も,ほぼ同様の分類が成されている(⑥p.70)。広岡氏と前学習指導要 領の分類を示すと以下の通りとなる。. 前学習指導要領. 広岡新. 現実資料一一→現物,標本.模型. 警三面]→視聴覚資料 図式資料一一一一今統計的資料 文書資料一一一一→文書資料. 〔図1−3〕資料の類型2 これまで述べたことから,資料がその対象および表現の方法によって 分類されていることが分かる。. 調査活動に関する能力に資料活用能力がある。羽豆成二氏は,資料活 用能力を以下の5っの要素を内包しているものと捉えている。 (@p. 7). これらの中で,iv・vの能力は小単元の評価や次単元との関連を考慮. 一6一.
(11) i. 資料を選択し.収集する力. li. 資料を作成する力. 茄. 資料を読みとり.問題解決に役立てる力. iv. 資料を保存し,再生する力. v. 資料の活用のしかたを評価する力. した場合に必要な能力であり,問題解決に直接かかわるものはi・h・ 茄の能力である。これらを問題解決の過程に当てはめると以下の通りと なる。. i’問題解決に役立っ資料は何かを明らかにし(選択し),実際 に収集する。. ii’収集した資料を問題解決に役立っように作成・加工する。. 溝’収集した資料および作成・加工した資料を読み取り,問題解 決に役立てる。. ii”問題解決の結果を,他人に説明するための資料に再作成・再 加工する。. したがって,資料を作成する力はli’li”のような2段階を考えるこ とができる。. 前学習指導要領社会では「学習指導のねらいを効果的に達成させるた めの適切な資料を精選して活用することが大切になる」(⑥p. 71)と述. べている。つまり.教師が学習指導のねらいを効果的に達成するための 適切な「資料を選択し,収集する」とともに「資料を作成する」のであ る。子どもに求められる能力は,教師が収集・作成して提示した資料の 中から資料を選択・収集して, 「資料を読みとり.問題解決に役立てる. 力」および「資料を保存し,再生する力」と,学習のまとめとして「資 料の活用のしかたを評価する力」である。これらの中で直接問題解決に. 一7一.
(12) かかわる能力は「資料を読みとり,問題解決に役立てる力」および「問 題解決の結果を.他人に説明するための資料に再作成・再加工するカ」 ということになる。. したがって,「資料活用」についての研究は.教師自身の問題として. の「よい資料の条件や提示。発問の仕方Jと,子どもに関する問題とし ての「資料の読みとらせ方や再生力の育成」に集中している。いずれも,. 教師が収集。作成した資料をいかに活用させるかという点に焦点が置か れている。. ② 社会科学習における調査活動の内容 新学習指導要領社会では, 「∼調べて∼理解する」 「∼調べて∼気付. く」内容が明示された。各学年における内容記述の例は以下の通りであ る。なお,下線は筆者が加筆した。. 「i 第3学年 自分たちの市(区,町,村)を中心にした地域の商店や商店街の様 子について調べて,地域の人々は品質や価格などを考えて購入してい ることや商店や商店街などでは販売について工夫していることを理解 できるようにするとともに,自分たちの地域は消費生活を通して広く 国内の他地域などとかかわりがあることに気付くようにする。. ii 第4学年 地域社会において.火災,交通事故.盗難などの災害や事故から人 々の安全を守るため,関係の諸機関が相互に連絡を取り合いながら緊 急に対処する体制をとっていることを見学したり調べたりして,人々 の安全を守るための関係機関の働きとそこに従事している人々の工夫 や努力について理解できるようにする。. 一8一.
(13) 面 第5学年 我が国の陸上.海上,航空などの運輸業や主な貿易相手国と輸出入. の品目などについて,地図や地球儀資料などで調べて,我が国の運 二業の働きや貿易の特色について理解す一る一とともに.これらの産業に. 従事している人々の工夫や努力に気位丈こと。. iv 第6学年 大陸文化の摂取や大化の改新,大仏造営などの様子について調べて,. 天皇を中心とした政治が確立していったことを理解すること。」 (⑧pp.99−104より筆者抜粋). 新学習指導要領社会に記載された調べる内容を学年ごとに分類すると 以下の通りとなる。. 〔表1−1〕新学習指導要領社会における調べる内容の分類 学年項目. 様子 資料 地図 分布 具体的事例 現状 地形 産業 交通網 工業 特色 働き. 戦い 始まり. 6 4 5 3 *1項目ずつあったもの 計 1 3 5 〔第3学年〕. 9. 営み,工夫.生活移り変わり 7 7. 1. 1. 〔第4学年〕 6 6 対策.事業,体制,都市 4 5 〔第5学年〕 1 3 4 概要,漁場,漁獲高,地域, 3 3 生産物,品目,運輸業,農業, 1 2 漁港.農産物,貿易相手国, 1 1 2 水産業,土地利用,自然災害, 1 1 2. 地球儀 2. 2. 〔第6学年〕 2 2 遺産.文化財,遺跡,遺物. 2 2 神話,浮世絵.伝承,建造物, 2 2 蘭学,寝殿造り.絵画.伝来, 2 2 天下統一,大名行列,鎖国,. 歌舞伎.国学,黒船来航,文明開化.明治維新.大日本帝国憲法発布,. 条約改正,日清・日露戦争,日華事変,日本国憲法制定,第二次世界大 戦,建設.取組み.規定,つながり. 一9一.
(14) 本分類では,以下のようにして調査内容の項目を抽出した。第6学年 を例に述べる。. i 大陸文化の摂取や大化の改新,大仏造営などの様子について 調べて →」董丑_ ii 鉄砲やキリスト教の伝来,織田・豊臣の天下統一などについ て調べて →_耳塞一天]三統二_. 壷 源平の戦い,鎌倉幕府の始まり,元との戦いなどについて調 べて → …い,始まり,NV”い. 〔表1−1〕から,調べる内容が様子や現状というきわめてマクロで抽 象的なものから,品目や漁獲高というミクロで具体的なものにまでわた っていることが分かる。全体としてはマクロな内容が多い。. マクロな内容については具体的に調べる観点が示されていないし,ミ クロな内容についても.たとえば,源平の戦いについて何を,どう調べ るのかという点は明らかでない。調べる内容の質的な違いおよび調べる 内容の不明確さはあるが,調べることによって「社会生活についての理 解を深める」という新学習指導要領のねらいは終始一貫している。. ㈲ 社会科学習における調査活動の意義. i 観察・資料活用の特性 溝上氏は観察・資料活用の意義について以下のように述べている。 「社会科の学習では,社会事象についての正しい認識を深めることを. ねらうものであるので社会事象をありのままに見るための観察活動 及び社会事象の意味を考えるための表現活動のほか,資料の活用また は観察や資料の活用を伴う調査活動などを展開する必要がある。…… 略……。. 一10一.
(15) 学習の対象としての社会事象のすべてを観察することはとうていで きないので,学習のねらいに即し,かっ社会事象の実態に応じて可能. な範囲で観察を実施することが大切である。そのような理由で第3・ 4学年では社会事象の観察とともに資料の活用をねらうことを明記し ているのである。」(⑨p.11−12). 社会事象についての正しい認識を深めるために観察・表現・調査活動 が必要である。時間的にも空間的にも広範囲にわたる社会事象を明らか にするためには,観察などの直接経験だけでなく,間接経験としての各 種の資料の活用を図る必要がある。. 溝上氏は低学年の観察を例にして,その意義について以下のようにも 述べている(⑩p.36)。. ア 観察して調べることの楽しさを体験を通して感得することがで きる。. イ 断片的な観察の結果を,絵図,言語,文章,動作などで表現で きる。. ウ 観察の結果からもう一度観察したいという意欲を持たせる。 工 観察学習を通して人々の努力や工夫,願いなどに気付かせる。. また,池田正光氏は「観察・調査・表現などの体験的活動は子どもの 追求を持続させる」(⑪p.26)と述べている。つまり,観察などの体験 活動には楽しさがあり,子どもたちが意欲的に取り組む中で,人々の努 力や社会事象の意味を捉えることができるというものである。したがっ て,調査活動は子どもたちの追求を持続させ,社会事象の意味を捉えさ せる優れた方法ということができる。. ti 調査活動と社会科の目的. 一1i一.
(16) 「社会科の目的は社会認識を通して公民的資質を育成することである」. と言われている。したがって,「社会科の第一の目的は社会認識形成で ある」と考えることができる。伊東亮三氏は社会認識における認識につ いて以下のように述べている。. 「認識は,感覚や知覚によって事象の特性を知るはたらきと,それら の事象問の関係を推論によって論理的に追求し,一般化や法則や理論 仮説を構成するはたらきからなり,それは自然認識と同じく普遍性の ある知識を追求する。」(②p.48). この認識論を社会認識にあてはめると, 「社会認識とは感覚や知覚に. よって社会事象の特性を知る働きと,社会事象間の関係を推論によって 論理的に追求し.一般化や法則や理論仮説を構成する働きである」と考 えることができる。そこで,筆者は,社会事象の特性を知る働きを「事 実認識」,社会事象間の関係を知る働きを「関係認識」と捉えることに する。. 伊東氏は,認識における2つの側面を判断・推理の関係にあてはめて 以下のように述べている。. 「ほんらい『考える』『思考するSというはたらきは2っの意味をも っている。第一の意味は.事実,事象を見たり聞いたりしたことから 簡単なことを知ること,すなわち簡単な知識をうることで,それを知 覚による『判断』といい,その判断の結果を命題とか情報という。… …略……。. r考える』ことの第二の意味は,いろいろな知識や情報の間にどんな 関係が成り立つかを見つけることであって,これを『推理』という。. それはいろいろな判断を前提として,それから新しい判断を結論とし て導き出す思考の形式である。」(⑫pp.35−36). 一12一.
(17) 以上のことから社会についての判断と推理あるいは事実認識と関係 認識によって社会認識は形成されるということができる。社会認識形成 を図るために,各国単元および各時間における社会科学習では,具体的 な社会事象についての概念形成を目指すことになる。. 概念を形成することについて宇佐美寛氏は,パースのプラグマティズ ム格言を引用して次のように述べている。. 「(概念を持っているということは)ある具体的な条件の下で,ある 行動が,ある結果をもたらすことが予測されるということである」 (@p. 40). つまり, 「AならばBである」とか「AはBが原因である」のように ある事象についての原因と結果の関係を予測できるということがその事 象についての概念をもっているという状態である。それは,経験を伴わ ない観念的な思考では形成されず,具体的な経験との対応によってのみ 形成される。したがって,事象(対象)に何らかの形ではたらきかける 行為がなければ.概念は形成されない。. 先に述べた判断と推理は,事象に対する思考としてのはたらきかけで ある。事象への方法としてのはたらきかけに観察や調査などの調査活動 がある。調査活動は事象に直接はたらきかける活動であるとともに判断 や推理の思考を含む活動である。したがって,調査活動は社会科の目的 である概念形成に有効な活動であるということができる。. 〔引用・参考文献〕. ① 位野木寿一・沢田清編著『指導のための野外観察』中教出版 S47.. IL ②木森照夫他編『社会科教育指導用語辞、典』教育出版 1986.10. ③ 日台利夫r社会科指導技術の理論』明治図書 1981.3.. 一13一.
(18) ④ 大森照夫『社会科 基本用語辞典』明治図書 1973.4.. ⑤広岡亮蔵「資料批判を裏打ちとして」『教育科学社会科教育s Na163 1977.7.. ⑥ 文部省『小学校指導書社会繍大阪書i籍 S53.5.. ⑦佐島群巳・次山信男編『資料の収集・活用と授業』教育出版 1983. 11.. ⑧ 文部省『小学校指導書社会編g学校図書 H1.6. ⑨ 溝上泰編『社会科能力の育成と教材化』明治図書 1980.3. ⑩ 溝上泰編r新しい地域学習の指導』明治図書 1978.10.. ⑪池田正光編著r子どもを生かす社会科学習活動の工夫』明治図書 1984. 4.. ⑫ 伊東亮三編r達成目標を明確にした社会科授業改造入門』明治図書 1982. 2.. ⑬ 宇佐美寛r思考指導の論理』明治図書 1973.2.. 一14一.
(19) 第2節 社会科学習における調査活動の問題点. 前節では.調査活動が社会事象についての概念形成を図るための優れ た方法であることを述べた。本節では,概念形成の立場から社会科学習 における調査活動の問題点を指摘する。. (1)調査活動の方法に関する問題点. 広辞苑によると,観察とは「事物の実態を理解すべくよく注意して見 ること。見極めること」であり,調査とは「ある事項を明確にするため に調べること」(①p.535,・p.1570)である。観察では主に目の働きによ. って事象を判断するのに対し,調査では五感を総動員して事象を判断す るとともに事実間の関係を推理する。調査は,観察よりも高度で抽象的 な思考を必要とする。. 社会科学習における調査活動には「観察」と「調査」があるが.これ らは明確に区別されていないことを前述した。確かに,地域調査と地域 観察は,方法的にはわずかな程度の差であるかもしれないが,思考的に. は大きな違いを含んでいる。従来の社会科学習では,質的に異なる2っ の活動を区別することなく学習の一方法として同義的に活用してきた。 ここに調査活動の大きな問題点がある。また,調査活動が学習を意欲的 にする一方法として捉えられ,概念形成を図ることと直接結びついてい ないことが多い。. したがって, 「観察」と「調査」の特性を明らかにし,それぞれの方. 法を学習過程に効果的に位置付けた社会科学習のあり方を明らかにする 必要がある。. 一15一.
(20) (2)調査内容と問いに関する問題点 これまでにも調査活動についての多くの研究がなされてきた。しかし,. その内容は,観察の各段階における指導内容や観察態度の指導の仕方で あったり,よい資料の条件や提示・発問の仕方および資料の読みとらせ 方であったりした。つまり,研究の視点は,教師自身の指導技術と子ど もにどのように観察・資料活用をさせるかという教師側の問題に置かれ ている。. 例えば,観察カードや見学カードに予め調べる内容が記入されている とする。その内容は十分に研究されたものであるから,カードに記入す ることによって.教師の予定した知識が習得され,見学後のまとめもス ムーズになされる。しかし,それらのカードの内容は子どもたちの問題 意識に支えられた調査内容でなく,小単元の学習で必要な内容を総花的 に盛り込んだものである場合が多い。そのため,子どもたちは見学その もののねらいや見学項目相互の関係に気付かず,ただ事実認識をしてい るにすぎない。また,調査内容自体が概念形成に生かされず,再び授業 において知識が注入されることになりかねない。. したがって,子どもの問題意識や認識過程という子どもの側の問題と の関連で調査活動を捉えていく必要がある。小単元の学習で子どもたち が興味をもつ内容と小単元のねらいを結び付ける問いのあり方,問題意 識に支えられた調査活動を展開するたあの学習過程のあり方を今後明ら かにしていかなければならない。. 〔3)調査活動に関するその他の問題点. 社会科の学習指導では「調べる」という表現がよく使われている。し かし, 「調べる」学習には2つの意味が含まれている。第1の意味は,. 一16一.
(21) 「子どもが問いをもって自ら主体的に調べる」ということである。これ. は,問題解決学習の基本であり,第1次資料による調査を含むので,比 較的時間のかかる学習となる。. 第2の意味は「教師が問いと資料を与えて調べさせる」ということで ある。これは,ワークシートで作業したり,教師の発問に答えるために 手持ちの資料を調べたりする活動であるので,比較的短;期間でできる学 習である。. 前者と後者は,能動と受動という全く反対の側面を持ちながら,指導 案等の上ではほとんど区別することができない。後者はいわゆる「資料 活用」という捉え方である。本研究では.前者すなわち,子どもが問い をもって自ら主体的に調べる場合のみを取り上げて,概念形成に有効な 調査活動のあり方を明らかにする。ここで.事象に直接接し.主に目の 働きによってその特性を知覚し判断することを「観察」,事象間の関係 を明らかにするために人に聞いたり,文献を調べたりすることを「調査」 と定義する。また.観察・調査を特に区別しないで述べるときには「調 査活動」 「調査内容」等と呼ぶことにする。. 子どもが問いをもって自ら主体的に調べる学習は.時間がかかりすぎ るという指摘がある。本研究では.調査方法・内容・問いとの関連で調 査活動を効率的に,しかも,有効に位置付ける学習を提案する。. 〔引用・参考文献〕. ①新村出編r広辞苑第3版』岩波書店S58.12.. 一17一.
(22) 第2章 調査活動によって概念形成を図るための社会科授業構成理論. 前章では,社会科学習における調査活動の研究がよく行われているこ とを述べた。しかし,観察・調査という方法的特性を生かして活用され ていないことや具体的な調査内容が示されていないこと.子どもの認識 過程を考慮した調査活動のあり方が明かにされていないことを指摘した。. また,社会科学習の目的が概念形成であることを述べた。それらを受け て,本章では.問い・方法・内容の観点から概念形成を図るための調査 活動のあり方を検討する。. 問いは習得される知識に対応する学習の重要な要素であり,学習の展 開を左右するものである。そこで,まず,学習過程との関連で問いのあ り方を明らかにする。次に,観察・調査をその思考的な特性に着目して 学習過程に有効に位置付ける。また,調査内容を知識の構造および問い の構造との関連で明らかにする。最:後に,問い・方法・内容の観点から. 検討した結果を集約して「調査活動によって概念形成を図るための学習 過程モデル」として提示する。. 第1節 概念形成を図るための問い. 本節では,調査活動によって概念形成を図るための問いのあり方を学 習過程との関連で明らかにする。. (1)社会科学習における問い. 学習において子どもたちは様々な疑問を持つ。高橋則行氏は「子ども. 一18一.
(23) の持つ多様な疑問を合目的な方向で集約化して設定され,小単元を通し て基本的に追求されて行くべき一つの課題を学習課題という。」(①p.. 11)と述べている。問いにはこのような小単元を貫く問いの他に毎時の 学習のねらいに迫るための問いがある。小学校における社会科学習は基 本的に問題解決学習であるので,筆者はこれらの問いを総合して「学習 問題」と捉えることにする。. では,どのような学習問題が望ましいのだろうか。高橋則行氏は.望 ましい学習問題の条件として以下の五つを挙げている(①p.12)。 i. 事実に基づいて設定した学習問題. 五. 子どもが興味や関心を持つ学習問題. 茄. 解決への見通しがある程度立っ学習問題. iv. 合目的性を備えた学習問題. v. 社会認識の深化が図れる学習問題. iについて好ましくない例として.「一日に七億円にもなる大量の水 を,製鉄所ではどのようにして確保しているのだろうか」を挙げること ができる。これは,製鉄所が一日に使用する水の量を調べ,それを家庭 用水の金額で換算したものである。現在の製鉄所が90%以上の水を循環 利用しており,しかも工業用水は家庭用水よりはるかに安価であること から,明らかな間違いである。. iiについて好ましい例として,「大工場の数は少ないのに,生産額が 多いのはなぜだろう」を挙げることができる。子どもの既習事項や先行 経験では.工場の数に比例して生産額も多くなると予想されるが,生産 規模と生産内容に影響されて工場数の少ない大工場の生産額が圧倒的に 多い。このように既習の知識では解決できないような事態に当面したと き驚きや疑問を持ち,それを解決したいという意欲に誘われるのである。. 一19一.
(24) 茄について好ましくない例として, 「日本の工業にはどんな特色があ. るのだろう」や「天皇中心の世の中をつくるために,聖徳太子はどのよ うな政治を行ったのだろう」を挙げることができる。前者は単元のねら いを裏返したような抽象的な学習問題であり,漠然と意味は理解できて も,どんなことを具体的に明らかにしてよいかは子どもにとって:不明確. である。後者については,小単元の導入段階で.子どもが「天皇中心の 世の中を作った」という概念をもっことができるとは考えられない。こ れは,教師の恣意的な働きかけによって設定されたものであると考える ことができる。. ivについて好ましくない例として, 「このお菓子工場では,一日に何. 個のお菓子をつくっているでしょう」や「(6年半の学習において)人 人は公民館をどgように利用しているでしょう」を挙げることができる。 前者は一つの事実を問うているだけであるので.発問の一つとしては必. 要であるかもしれないが,それ自体が小単元のねらいに迫っていくもの. ではない。後者は3年生の学習としては適当だが,6年生では小単元の ねらいから外れてしまう。. vについての好ましい例として,高橋則行氏は「消防のおじさんは, 夜も消防服を着て寝ているのだろうか」を挙げている。その理由として 「これは調べれば容易に解決することではあるが,夜でも緊急時には出. 動しなくてはならない消防士の仕事の一つの本質にスポットを当ててい る。こうした学習課題を追求させていけば,働く人間の営みや苦労.喜 びといったことを子どもなりにっかんでいくことができる。」(①pp. 12−14)と述べている。しかし.これは本人も指摘の通り,調べれば容. 易に解決できる問いであるので学習問題としては不適当であり.補助の 問いが必要となる。消防署員の待機時の様子や工夫をとらえさせるので. 一20一.
(25) あれば修辞的工夫が必要である。. 社会認識の深化=概念形成は社会科学習の目的そのものであるので,. i∼ivの条件とVの条件は質的に異なっている。つまりVを満たすため の条件がi∼ivである。したがって貝体的な条件としてi∼ivを満たす 学習問題がよい学習問題ということができる。. では,学習問題は表現上どのように類型化できるのだろうか。これに ついて高橋貞夫氏は以下の5つの類型を示している(②pp.21−22)。 i. 論理追求型. 「どうして∼なのか」 「なぜ∼なのか」など. 五. 事実追求型一. 「何か」 「どんな」 「どのように」など. 孟. 作業型. 「∼を作ってみよう」「∼に表そう」など. iv. 探検型. 「∼へ行って∼を探してみよう」 「∼を見つ. けよう」など. v. 意思決定型. 「∼ならどうする」「∼のどちらをとるか」 など. 「これらの類型の中で,作業型はやや異質であり.論理追求型.事実. 追求型,探検型,意思決定型を作業型にすることは可能である。…… 略……作業型にすると学習問題が明確になるとともに,追求の方法が 分かりやすくなり,学習課題解決の見通しが立てやすくなることが多 い。」(②P.22). 「論理追求型は.目標の裏返しの学習問題となったり,子どもにとっ. て難しすぎる学習問題となることが多い。例えば,『江戸幕府はなぜ 長く続いたか』というような学習問題では,難しくて追求することは 困難であろう。……略……具体化して『江戸幕府が諸大名をおさえる ためにしたことをさがしてみよう』というようにすれば,追求しやす くなる。」(②p.22). 一21一.
(26) 「社会科では,もっと事実をたんねんに追う学習問題(事実追求型,. 探検型)を大切にし,そのことを中心にねらいに迫る工夫をする必要 がある。」(②P. 22). 高橋貞夫氏は,論理追求型よりも事実追求型や探検型の方が追求しや すいので,大切にすべきだと述べている。同じように.白鳥晃司氏も 「なぜ」より「どのように」の方が「子どもがのってくる」「具体的に 考えられる」「すべての子どもが夢中になり,わかる」(③pp.60−67) という点でよいと述べている。. 確かに. 「どのようにしたか」「さがしてみよう」の方が具体的で追. 求しやすいという面はある。しかし,「江戸幕府はなぜ長く続いたか」 という問題が難しくて追求できないのは,前述の学習問題の条件壷「解 決の見通しがある程度立つ学習問題」を満たしていないからであり,一. 概に「なぜ」という問いであるからだとは言い切れない6問いの問題に 関して,平分孝治氏は以下のように述べている。. 「(『いかに』の問いに答える事実的記述新知識は)特定の事象・出 来事を理解し.説明するのに役立っだけであり,子どものもつ社会的 『理論』,み方考え方にかかわっていかない。……略……。. 『いかに』という問いは『なぜ』という問いに比べるとき.より科. 学的でない問いである。それは,科学的探求ではrなぜ』という問い へのサブの問いである。」(④p。128). この主張の背景には,社会科授業は科学的社会認識形成をめざすもの であり,転移する知識を習得させるべきであるという森田氏の基本的考 え方がある。高橋貞夫氏や白鳥氏は追求のしゃすさを問題にしているの に対して,町分氏は習得される知識の質を問題にしている。社会認識形. 成=概念形成が社会科の目的であることは第1章第1節で明らかにした。. 一22一.
(27) したがって.社会科学習における問いの中心は「なぜ」であり,サブの 問いとして「どのように(いかに)」が位置付くということができる。 以上. 「なぜ」が学習における問いの中心であることが分かったが,. 「難しくて追求しにくい」という点は解消されていない。そこで,問い の構造を学習過程の面から見ることにする。. ② 問いと学習過程. 家光大蔵氏は5年小単元「備前焼(10時間)」で以下のような学習過 程を構成している。(⑤p.31). i 目標 備前焼の実物,VTR,資料などを調べることを通して備 前焼に携わる人々が備前の風土や千年の歴史の中で育まれた 技術を生かして,人々の生活にうるおいを与える製品作りに 努力していることをとらえさせる。. h 計画 第1次備前焼とはどんなものかを調べ.学習問題をつかむ。 第1時 備前焼の製品の種類や特色について調べる。 ア「備前焼にはどんな特色があるのだろうか」. 第2時備前焼の作り方について調べる。 イ「備前焼はどんなにしてできるのだろうか」. 第3時 備前焼の歴史について調べる。 ウ「備前焼はいっごろから作られてきたのだろうか」. 第4時 千年も作り続けられてきたわけを考える。 エ「備前焼が千年も作り続けられてきたのはどうして だろう」. 第2次 備前焼が千年も続いたわけについて調べる。 オ「備前の自然や土について調べてみよう」. カ「一つのかまから,ちがった物ができるひみつを調. 一23一.
(28) べてみよう」. キ「備前焼が生活にどんなに役立ってきたのか調べて みよう」. ク「備前焼を売るためにどんな工夫をしてきたのか調 べてみよう」. ケ「備前焼をどんな気持ちで作ってきたのか調べてみ よう」. 第3次備前焼が千年も続いたわけをまとめる。 コ「千年も続いてきたわけをイラストにまとめよう」. この単元で学習問題は全部で10ある。ア.イ,ウは事実追求型,エは 論理追求型,オ,カ.キ,ク,ケはエの学習問題の予想が事実追求型の 学習問題として位置ついてきたものである。コはエが作業型に変形した ものである。この単元の学習過程は以下のように表すことができる。. 第1次. 塵]⇒. 第2次 論理追求. 第3次. 。[Ilaj. i. 事実追求. lHヨ. 工・…. コ. オ カ キ ク ケ. 〔図2−1〕小単元「備前焼」の学習過程 第1次は単元の学習問題工の把握の段階,第2次は学習問題工の追求 の段階第3次がまとめの段階である。この学習過程について家光氏は 以下のように述べている。. 「ア,イ,ウは事実追求型の学習問題であり,比較的短い時間で調べ ることのできる学習問題である。それに対してエはオ,カ.キ,ク,. 一24一.
(29) ケの視点から調べて,コで自分の考えをまとめていく,比較的時間の かかる論理追求型の学習問題である。事実追求型は未知の事実を知る ことはできても.自分の考えを構築していくことにつながっていきに くい。自分の考えを再点検したり.構築したりしていくためには,論 理追求型の学習問題が必要になってくる。ア,イ,ウのような事実追 求型の学習問題は論理追求型を生み出すきっかけをつくるだけでなく.. 論理追求のための共通の基盤をつくる学習問題である。」 (⑤p.32より筆者要約). 家光氏は.社会科学習における問いを論理追求型の「なぜ」と事実追 求型の「いかに,何」に分け, 「事実追求から論理追求へ」という学習. の流れを提案している。論理追求とは「なぜ」の問いに基づいて事実問 の因果関係を求めることであるので,これを「関係追求」と捉えると, 「事実追求から関係追求へ」,つまり, 「事実認識から関係認識へ」と いう学習過程が導き出される。. 学習問題工に対しては「備前の土がよかったのだろう」「備前の気候 が焼物づくりに適していたのだろう」「備前焼の需要が高く,高価で取 引されたからだろう」「たくさん売るために全国を売り歩いたのだろう」 などのたくさんの予想を出すことができる。これらは,学習問題ア,イ,. ウによって事実認識がなされた後の予想であるから,ある程度の根拠を もつ「仮説」とよぶこともできる。これらの仮説は「備前の土はどのよ うな土か」 「備前焼はどのように売られたか」などの事実追求型の学習 問題に質的に転化され,検証されることになる。 ここで, 「いかに,何」の問いによって事実追求をする過程は,事実. 認識をするとともに関係追求過程の基盤をつくるので「学習基盤形成過 程」と呼び, 「なぜ」の問いによって関係追求をする過程は因果関係の. 一25一.
(30) 解明という課題解決をするので「学習課題解決過程」と呼ぶことにする。 学習問題でなく学習課題としたのは,毎時の学習問題と区別するためで ある。. 前項において関係追求型の「なぜ」が難しくて追求しにくいという指 摘がなされたが, 「学習基盤形成過程から学習課題解決過程へ」という 学習過程を組むことによって解決することができる。 これまで述べてきたことを整理すると,.以下のように表すことができ る。. 学習過程. 学習基盤形成過程. 認識内容. 事実認識. 問い. いかに,何. 学習課題解決過程 ⇒. 関係認識 なぜ. 〔図2−2〕概念形成を図るための学習過程モデル1. 〔3)関係追求のための問い. 事実追求型の問いが追求しやすいことは前に述べた。関係追求におい ても, 「なぜ(Why)」の問いから多様な仮説が生み出され.それらが子. どもの力で事実追求の問いに質的に転化されるならば,容易に追求でき る。つまり,調査しやすい。子どもたちの調査活動を生かした学習を展 開するためには,関係追求の問いが質的に転化可能な問いである必要が ある。. 鈴木康夫氏は地域現象を規定する要因として「自然的要因(気候,水,. 土,地形など)と.社会・経済的要因(市場,労働力,資本,交通,歴 史的条件など)」(⑥p.34)の2側面を挙げている。また.新学習指導 要領社会では社会生活の理解について以下のように述べている。. 「社会生活は.身近な地域における自然環境や人々の生活及び組織的. 一26一.
(31) な諸活動の様子などとともに.広く国土における自然環境や人々の生 活,産業等の様子及び我が国における人々の生活の歴史的背景などを. 含んだものであり,小学校の社会科は4年間を通して,社会生活にっ いての総合的な理解を図るものである。」(⑦p.5). 新学習指導要領が目指している「社会生活の理解」の内容は,鈴木氏 が述べている自然的要因と社会・経済的要因(以後「社会的要因」)と ほぼ一致している。即ち,社会事象に関する自然的要因と社会的要因の. 2側面から社会生活についての総合的な理解を図ると考えることができ る。また, 「身近な地域における人々の生活及び組織的な活動」につい. ては.単に社会集団としての働きだけでなく,特定の個人に着目してそ の働きを理解する必要がある。むしろ,個人に着目しなければ社会生活 の理解そのものができない。つまり.社会的要因の中から特に人的要因 を抽出する必要がある。したがって,小学校の社会科は社会生活につい. て自然的要因・社会的要因・人的要因の3側面から総合的な理解を図る ものであると捉えることができる。. 前述の「備前焼」の実践における「備前の土がよかったのだろう」 「備前の気候が焼物づくりに適していたのだろう」などの仮説は自然的 要因に関するものであり,「備前焼の需要が高く,高価で取引されたか らだろう」という仮説は社会的要因に関するもの, 「たくさん売るため. に全国を売り歩いたのだろう」という仮説は人的要因に関するものであ る。多様な要因に関する仮説を出すことができる問い(関係追求型の問 い)ほど事実追求型へ質的に転化可能な問いであり,社会事象を総合的. に追求できる。したがって,自然的要因・社会的要因・人的要因の3側 面から関係追求をすることができる「なぜ」の問いが,調査活動によっ て概念形成を図るために有効な問いであるということができる。. 一27一.
(32) 〔引用・参考文献〕. ① 高橋則行「学習課題づくり・その基本手順と留意点」 『教育科学社 会科教育』No.2531984.3.. ②木原健太郎・高橋貞夫編『子どもの側に立つ授業2社会科の学習課 題づくりと授業展開』明治図書 1983.6.. ③白鳥晃司「rなぜ』より『どのように』すべての子どもがイメージ 豊かに学びとる社会科」『歴史地理教育』No.315 1980.12.. ④ 森分孝治r社会科授業構成の理論と方法S明治図書 1978.9. ⑤ 家光大蔵「学習問題にはどんな類型があるか」 r教育科学社会科教 育』No.3091988.4.. ⑥鈴木康夫「『仮説化→検証』の過程から地域現象を構造化する」 『教育科学社会科教育』No.3271989.8.. ⑦文部省『小学校指導書社会編』学校図書H1.6e. 一28一.
(33) 第2節 概念形成を図るための調査方法. 調査方法は.具体的な調査方法とそれを活用する調査過程に大別する. ことができる。本節では具体的な方法と調査過程の2面から,概念形成 を図るための調査活動のあり方を論じる。. (1) 調査方法と思考. 社会科学習における調査方法には,観察と調査がある。本項ではこれ らの方法の特性を思考との関連で明らかにする。. i 観察と直観思考 第1章第2節において, 「観察は,物事の実態を理解すべくよく注意 してくわしく見ることである」と述べた。では.その時いかなる思考が 働くのであろうか。. 「われわれは誰でも幼児のときからの経験を蓄積して,その結果.経 験のエッセンスを頭のなかに収めている。赤いリンゴしか食べたこと のない幼児は.黄色いリンゴをみて最初はナシかと疑う。しかし黄色 いリンゴがあることを知れば,赤いリンゴも黄色いリンゴも同時に包 括する,より一般的なリンゴという概念ができ上がる。」(①pp.57− 58). 赤いリンゴしか食べたことのない幼児が黄色いリンゴをみて最初はナ シかと疑うのは,これまでの経験のエッセンスを瞬間的に集約して直観 で「ナシ」と判断するからである。観察によって新しい社会事象に接し たとき,子どもたちはこれまでの経験のエッセンスを瞬間的に集約して. 一29一.
(34) その事象が何であるか,どのようであるかを判断する。例えば,消防署 に見学に行ったとき,消防士が消防車のボンネットを開けて何かしてい る様子を観察したとしたら,「消防車の手入れをしている」と判断する であろう。間違っても,「消防車をこわして遊んでいる」とは判断しな いであろう。. このように「観察」においては「直観」の果たす役割が大きい。直観 思考について広岡亮蔵氏は以下のように述べている。. 「人々が新たなある事態に接したときに,その事態の細部はまだ不分 明でありながらも,『こうではなかろうか』の全体的関知をすること が多い。……略……。こうして,細部の不確かな場面にありながら,. それについての全体的な感知をもつのは,直観思考の働きである。… …略……直観思考は個物の奥にある構造の感知であり.本質について の感知であることが多い。たとえば,『萩の花を見て,これは豆の仲 間だろう』と直観するのは,豆科植物の一種としての萩の本質構造に ついての感知である。」(②pp.120−121). 直観思考は,これまでの経験のエッセンスによって個物の奥にある構. 造および本質を瞬間的に判断する働きであり,思考の第1歩である。し たがって.学習において重要な役割を果たす。. ブルーナーは直観思考について以下のように述べている。. 「直観というのは.結論が妥当であるかどうかがわかるような分析的 段階を経ないで,蓋然的ではあるが.暫定的な公式化に達するための 知的な技術のことである。直観的思考や.予感(hunch)の訓練は,形 式を整えたアカデミックな学問においてだけでなく,日常の生活にお ける生産的思考において,非常に無視されているが,重要な一面であ る。鋭い推察,創意豊かな仮説,暫定的な結論にむかっての勇気ある. 一30一.
(35) 飛躍. こういつたものは.思索するひとが.たとえどのような仕. 事であっても.その仕事をすすめるうえでもっとも価値のある財貨と いうべきものである。」(③p.17). ブルーナーは直観思考の重要性を強調しており.それを伸ばす方法と. して「1.教師が直観的思考をする。2.その分野で種々の経験を与え. てやる。3.知識の構造や関連性を強調する。4.発見的学習法を活用 する。」(③pp.79−80)こと等を提案している。この4っの提案の中で 「その分野で種々の経験を与えてやる」ことの一つに「観察」がある。 「観察」によって事実をよく見ると,それまで持っていた概念が修正さ. れてより一般的なものになる。これを繰り返すことによって経験のエッ センスが豊かになり,事実をより正しく認識できるようになる。つまり,. 観察を繰り返すことによって直観力が増し,社会認識の一翼を担う事実 認識力がっく。. 観察は.事実を認識するために有効な方法であり,社会科の学習にお いて重視されなければならない。. h 調査と分析思考 本項iでは.直観思考との関連で社会科学習における観察の重要性を 述べた。事象に対する第一次の接近が直観思考であるのに対して,第二 次の接近は分析思考である。. 分析とは. 「ある物事を分解して,それを成立させているもろもろの. 成分.要素,側面を明らかにすることであり,明らかにすべき命題から それを成立させる条件へっぎつぎに遡ってゆく証明のしかた」(④p.21 44)である。. プルーナーは分析思考について以下のように述べている。. 一31一.
(36) 「(直観思考によって),思考しているひとは段階をとびこえ近道を. しながら自在に進むことができるのである。だが,それには,演繹的 であろうと帰納的であろうと,もっと分析的な手段によって結論をあ とでふたたび照合する必要がある。」(③p.74). 「分析的思考は一時に一歩進むのがその特徴である。その一歩一歩は 判然としていてそれを思考しているひとが他のひとに十分報告できる. のが普通である。そのような思考は そのなかに含まれている情報や 操作を比較的十分に意識しながら進行する。」(③p. 73). 分析思考では,記憶や経験を補助的に援用しながら,また,新しい知 識を習得・活用しながら論理のつながりによって解を導いていく。この 方法は, 「明らかにすべき命題から,それを成立させる条件へっぎつぎ. に遡ってゆく証明のしかた」である。つまり.仮説の検証過程における. 方法がこれである。広岡亮蔵氏は仮説と思考について以下のように述べ ている。. 「仮説に想到する思考作用は,主として直観思考である。ここでは.. 分析思考もときどき介入するとはいえ,主役は直観思考である。これ にたいして,検証のさいに主役を演じるのは,分析思考である。」 (@ p. 120 ). 直観思考によって仮説を設定し,分析思考によってそれを検証する。 その結果によって仮説が修正され,概念が修正される。この繰り返しに よって,より一般的な概念が形成される。. ここで留意しなけむばならないことは,直観思考と分析思考は明確に 区別されるものでなく.主としてどちらかの作用が強いという程度の問 題であるということである。「直観的思考も,何ほどかの分析的要因を 含んでいるし.逆に分析的思考も(それが子どもの自主的思考である限. 一32一.
(37) り)直観的要因を含んでいる。……略……。つまり,お互いに相手の中 にあって相手を補っている」(⑤p.47)のである。. 第1章第2節において.事象問の関係を明らかにするために人に聞い たり,文献を調べたりすることを「調査」と定義した。したがって,調 査過程で作用する思考は主に分析思考である。. (2)調査過程. 一口に調査過程といっても,調査以前の準備から調査後のまとめまで. の広い範囲を含んでいる。第1章第1節において社会科学習における観 察(調査)の手順がよく研究されていることを述べたので,本項では概 念形成との関連で.予想と仮説の違いおよび仮説=検証過程としての調 査のあり方を明らかにする。. i 予想と仮説 有田和正氏は.子どもの思考を誘発する教材(ネタ)を開発して子ど もたちを追求の鬼にすることで知られている。有田氏の授業は,単にネ タが面白いだけでなく授業の終わり方に特徴がある。 「つかむ→調べる. →まとめる」という一般的な1時間完結の授業の流れでなく,「調べず にはおれない問題をもたせて」(⑥p.11)授業を終わるのである。「調 べずにはおれない問題」とは子どもの予想と異なる問題であり,子ども たちは授業と授業の間に予想を確かめる調査活動を行うのである。. 社会科学習では,予想や仮説を立てて調べることが大切だといわれる が,それはなぜだろうか。. 日台利夫氏は, 「事象の探索・観察は,普通,目のっけどころがはっ きりしていないと効果が上がらない」(⑦p.46)と述べている。また,. 一33一.
(38) 蓮見音彦氏は.社会学における社会調査の過程について以下のように述 べている。. 「まず第1に調査されるべき問題点が明確にされる必要がある。この ことは,とくに実験に準じるような因果法則を追求しようとする研究 の一貫としての調査の場合にはとりわけ強調されねばならないのであ るが.それ以外の場合でも,問題点が明確でない場合きわあて散漫な 調査におちいり,焦点のぼけた結果を生むことになりやすい。」 (@ p. 20). 問題点が明確でなければ.調査活動の成果を十分に上げることができ ないばかりか観察・調査のしょうがないのである。予想・仮説が立てら れるということは,問題点が明確であり,調査活動のねらいが子どもた ちに理解されていることになる。教師の側から見れば子どもの意識が把 握でき.その後の指導に役立てることができる。ここに,学習指導の立 場からみた予想・仮説の意義がある。. 高根氏は「意識」について以下のように述べている。. 「人血は自己の意識に上った限りの現実に対して行為する。もしその 人間の意識が.現実の世界とズレているならば,人間は外界からの報 復を受けたとき初めて,自己の意識の誤った部分を訂正することがで きる。」①(P.56). 人間は自己の意識に上った限りの現実に対して行為するのであるから,. 問題意識もなく調査活動を行い,その場で意識に上った現実のみに対応 するよりも,問題点を明確にして自分の考えを持ち,意識的に調査活動 を行った方が.その成果を上げることができるということは容易に想像 がっく。つまり.予想。仮説に基づく調査活動が概念形成に有効である。 ここに,認識形成の立場からみた予想・仮説の意義がある。. 一34一.
(39) 予想・仮説を立てる意義が明らかになったが,両者はどのように違う のだろうか。. 広辞苑には以下のように記されている。 「予想. あらかじめ想像すること。また,その想像した内容。」. 「仮説. 自然科学その他で,一定の現象を統一的に説明しうるよ. うに設けた仮定。ここから理論的に導き出した結果が観察や実験で検 証されると,仮説の域を脱して一定の限界内で妥当する真理となるe] (@p. 2474, 4521). 両者の違いは.科学的なレベルの違いのようだが,果たしてそれだけ. だろうか。第1章第1節で.観察・調査は事象の特性や関係といういわ ば不明の点(問題点)を明らかにする方法であることを述べた。つまり, 問題解決の方法である。. 高根氏は,問題解決のための基本的な要素を「原因」と「結果」と捉 え.以下のように述べている。. 「当面解決しなければならない問題を.まず『結果』ととらえ,その r結果』を生み出す『原因Sとなるべき要素を探り出す」(①p.35) 「因果関係に関する2っの要素の論理的な関係は仮説と呼んでもよい」 (Op. 38). つまり,問題解決の基本は因果関係の解明であり,因果関係に関する 仮定が仮説である。高根氏がこのように述べている背景には,仮説は理. 論に導かれるものであるという考えがある。これは.理論とは2っの概 念が因果関係によって相互に結ばれたものであり,その概念を作業定義 のレベルで結び付けたものが仮説であるという考えである。. ここで.予想と仮説の関係を整理すると以下のようになる。. 一35一.
(40) ア 予想も仮説も:不明な事象に関する想像や仮定である。. イ 仮説は予想よりも科学的な思考を必要とする。 ウ 事象の因果関係に関する仮定が仮説である。. 以上のことから,事象間の関係を仮定することを「仮説」,事象の特 性についての想像をすることを「予想」と定義することができる。した がって,関係認識の過程における「仮説⇒調査」,事実認識の過程にお ける「予想⇒観察」という学習の流れが設定できる。. これまで.予想と仮説の違いに着目したマクロな学習の流れを明らか にしてきた。次は.仮説設定の手順というミクロな部分を明らかにする。. 高根氏は,仮説設定の手順について以下のように述べている。 ア. 問題を明確に設定する。. イ. 適切な原因を選び出す。. ウ. 原因と結果の間に論理的な関係を設定し.仮説化を図る。. エ. 複数の原因と結果を結び付け,モデル化を図る。 (①pp.48−50より筆者要約). 上記の手順に従った仮説モデルを以下に示す。. 薩雛i. 事績モ羅. 一一一一T−1. 〔図2−3〕仮説モデル 筆者は,この手順を仮説設定における基本的学習過程と捉えることに する。質的には異なるが,ほぼ同様の手順で,予想のモデル化も図るこ とができる。前節で明らかにしたように.事実認識過程における問いは. 一36一.
(41) 「いかに」であり,特定の事象・出来事を理解・説明するものである。. それに基づく予想は,それらの特性のミクロな部分について想像するこ とになる。 ア. 問題を明確に設定する。 (事象の特性). イ. 適切な特性を選び出す。 (ミクロな特性). ウ. 複数の特性を結び付け,モデル化を図る。. 心髄i灘蜘モ難 f. 〔図2−4〕予想モデル. li仮説=検証としての調査 本項iにおいて,仮説を立てて調査することの有効性が明らかになっ た。このように「ある仮説から論理的に導き出された結論を,事実の観 察や実験の結果と照らし合わせて,その仮説の真偽を確かめること」 (④p.4521)を検証という。したがって,仮説=検証過程に調査が位置 付くことになる。. では,どのように調査を行えばよいのだろうか。. ジャーナリストの立花隆氏は,よい取材(聞き取り調査)の条件を rlに準備2に想像力」(⑨p.132)と述べている。 「準備とは,自分が. 聞こうとすることに関する予備知識を得ること」であり,それに半年以 上もかけることがあるという。そして,取材開始時点で「自分が持って. いる知識を整理し,かっ,取材結果をある程度予測して,1枚の仮説的 チャートを描いてみる」(⑨p.193)。仮説的チャートとは,仮説につい. 一37一.
(42) ての知識の関連を図解したもので,高根氏の仮説モデルと同様のもので ある。取材の進行とともにチャートは修正され,取材の終了時に完成す る。. 立花氏は,想像力を事実的想像力と論理的想像力に分けている。事実 的想像力とは「自分がその場にいたと仮定したときに見えたであろうも の,聞こえたであろうものすべてを想像する力」(⑨p. 135)であり,. 「頭の中で絵を描きながら聞く」外面的想像力と, 「その時の当事者の. 気持ちなどを鋭く捉える」内面的想像力である。よい取材をするために. は,頭の中で1っの場面について近景を描いたり.遠景を描いたり,視 点を変えたりして,何枚も描いてみることが大切である。 論理的想像力とは, 「事実をつなぐ論理を発見する能力.あるいは人 の推理をきいて,そこに論理的欠落を発見する能力」(⑨p.135)である。. つまり,筋道を立てながら聞き取りを行う能力である。したがって,事 実的想像力を働かせて事実の外面や内面の聞き取り調査を行いながら,. つねに論理的想像力を働かせて事実相互の関連に矛盾がないかを確がめ ることが必要である。立花氏の調査過程を整理すると以下のようになる。. 事実認識. 問い. 予備調査. 関係認識. 仮チ. 本調査・事実的想像力・論理的想像力. チャート完成・一定の限界内で. 烽笂 I1 ト. @妥当する真理. 〔図2−5〕立花氏の調査過程 小学校の子どもに高度な事実的想像力と論理的想像力を働かせた調査 を;期待することは困難である。また,個人ないしグループによって検証. 結果に差異が生じたり,十分な成果を上げられない場合が生じる。した. 一38一.
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