「うらほろスタイル」から学ぶ地域教育開発専攻・地域教育分野の「地域創造型」教師養成の取り組み
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第45号(平成25年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.45(2013):1-8. 「うらほろスタイル」から学ぶ 地域教育開発専攻・地域教育分野の「地域創造型」教師養成の取り組み 宮 前 耕 史・小 林 可 奈・栗 本 友 佳 北海道教育大学釧路校・地域教育開発専攻・地域教育分野. Learning from “Urahoro Style Community-Creation Plan” Program Development for Training “Community-Creation Teachers” Yasufumi MIYAMAE, Kana KOBAYASHI, Yuka KURIMOTO Department of Community Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 北海道教育大学釧路校/地域教育開発専攻/地域教育分野では、「うらほろスタイル推進地域協議会」(浦幌町)と連 携し、体験学習の機会を数多く設けることにより、これからの地域社会、とりわけ農山漁村における学校と地域の関係の あり方や、教師・学校の役割を問い直していく「地域創造型」教師養成に向けた授業改善に取り組んでいる。平成24年度 (2012年度)にあっては、浦幌町で開催された「うらほろフォーラム2013」に授業の一環として参加し、教員および学生 が取り組みの紹介と成果発表を行う機会を得た。本稿は、当日の口頭発表を文字化したものである。. 修科目)の一環として、平成25年(2013)2月11日(土). はじめに. 浦幌町・浦幌町コスミックホールで開催された「うらほろ 「うらほろスタイル」 (正式名称「うらほろスタイルふる. フォーラム2013」に参加し(教員4名および学生25名)、. さとづくり計画」)とは、北海道十勝郡浦幌町において地. 取り組みの紹介・成果発表を行う機会を得た1。ここでは、. 域社会の持続可能性の実現を目指して文字通り「町ぐる. 教員(宮前)が取り組みの目的と全体像について紹介を行. み」で推進される教師・学校から始まる地域づくり・地域. なった上で、代表学生2名(小林可奈・栗本友佳)が1年. 教育計画の総称で、町内に5つある小・中学校とその教員. 間を通じた取り組みから得た自身の学びについて口頭発表. を中心に、保護者・町・町教委、農協・漁協・森林組合・. を行った。本稿は、これを文字化したものである。また、. 商工会等の各種団体、町内有志らにより「うらほろスタイ. その他の学生も、一年間を通じた「うらほろスタイル」か. ル推進地域協議会」を組織して、これを推進主体として. らの学びについて、「浦幌民泊体験実習」(本文参照)のグ. 「地域への愛着を育む事業」 (うらほろふるさと教育推進. ループごとにAゼロ版模造紙に図式化して示したものを作. 会議)、「子どもの想い実現事業」 (子どもの想い実現ワー. 成し、「フォーラム」会場に掲示した。以下、当日の発表. クショップ)、「農村つながり体験事業」 (うらほろ食のプ. の順に、その内容について記述していく。. ロジェクト)といった事業を展開するものである。 北海道教育大学釧路校/地域教育開発専攻/地域教育分. 1. 「うらほろスタイル」から学ぶ地域の再生と学校・教. 野では、分野所属教員5名(北澤一利・平岡亮・諫山邦子・. 師の役割. 宮前耕史・添田祥史)全員の協同により、 「うらほろスタ イル推進地域協議会」と連携し、体験学習の機会を数多く. (1)はじめに. 設けて地域教育に関する理論と実践とを学生自身が統合す ることにより、これからの地域社会、とりわけ農山漁村に. 北海道教育大学釧路校・地域教育開発専攻・地域教育分. おける学校と地域の関係のあり方や、教師・学校の役割を. 野には5人の専任教員と、1学年に25名ほどの学生がおり. 問い直していく「地域創造型」教師養成に向けた授業改善. ます。そして1年半ほど前から「うらほろスタイル」 の様々. に取り組んでいる〔宮前・添田2012〕 〔添田・近江・中村・. な取り組みに関わり、体験させていただきながら、これか. 宮前・高木・今泉2013〕 〔宮前2013〕 。. らの地域社会、とりわけ農山漁村・地方地域社会で「地域. 取り組みの全体像については本文中に触れるので重複を. に根ざした教師」としてあるとはどのようなことなのか、. 避けるが、平成24年度(2012年度)の場合には、分野所属. そして、そのためにはどのような資質や能力が必要なのだ. 2年生を対象とした授業( 「地域教育活動Ⅱ」 、分野選択必. ろうかといったようなことを、学生ともども、学び、考え. -1-.
(3) 宮 前 耕 史・小 林 可 奈・栗 本 友 佳 させていただいております。. の考え方に基づいたものではなかったか、 ということです。. 本日は、私どものそのような取り組みについて、では、. これに対して、 「うらほろスタイル」の先生方の「地域. そのようなことについて考え、学んでいくに当たり、①な. に対する向き合い方」はまったく逆です。子どもを中心に. ぜ「うらほろスタイル」なのか、 なぜ「うらほろスタイル」. し、地域の方々との「協働」のもとで地域課題を発見し、. に注目するのかということと、②「うらほろスタイル」か. 学校の取り組み・子どもの学習活動をそうした課題の解決. ら学ばせていただくにあたっての取り組みの全体像、理論. に向けて編み上げ、地域人材の育成を行っていく。地域と. 的なことも含めた大枠について、私の方からご説明させて. の「協働」により、地域の持続可能性、地域の創造を探求. いただきます。. していく。一言で申し上げますと、「地域のために」 、そし. その上で、そこから、実際、学生たちがどのようなこと. てそのために「地域とともに」 。こうした姿勢を貫いてい. を学ばせていただいているのか、2名の学生からお話をさ. らっしゃるように思えます。. せていただきます。. こうした「うらほろスタイル」の先生方の「地域への向 き合い方」は、農山漁村においてではだけでなく、全国ど こにあっても必要とされるものと考えます。このような 「地. (2)なぜ「うらほろスタイル」に注目するのか. 域に対する向き合い方」を、私どもは実地に学ばせていた まず、「なぜ『うらほろスタイル』に注目するのか」と. だき、そうあるためにはどのような資質や能力が必要とさ. いうことについてですが、北海道教育大学釧路校、とりわ. れるのか考えさせていただいている、 といったところです。. け私どもの専攻では「地域に根ざした教師」の養成を目指 (3) 「うらほろスタイル」から学ぶ釧路校・地域教育分. しております。. 野の取り組み. 「地域に根ざした」という教師のあり方は、実はこれま でも目指され、主張されてきたところではあります。が、 しかし「うらほろスタイル」を深く知れば 知るほど、 「う. さて、ではそのための具体的な取り組みはどうなって. らほろスタイル」での学校・先生方の「地域に根ざした」. いるのかということですが、この表は、2年生から4年. あり方は、どうも従来のそれとはちょっと違うのではない. 生までの取り組みの全体像をまとめてみたものです(【表. か。より根本的で、かつ、かなり先進的なものなのではな. 1-2】)。. いか、と考えるにいたりました。. 2年生前期には、まずは浦幌と「うらほろスタイルを知. この表は、このような考えを理論的に整理してみたもの. る」ということで、町内バスツアーと「民泊体験」を中心. です( 【表1-1】 ) 。従来目指され、主張されてきた「地域に. に取り組ませていただいています。どちらもすでに浦幌の. 根ざした教師」のあり方とは、第一には、地域資源の発掘. 小・中学校で行われているものですが、その追体験、「ま. やその教材化であれ、あるいは地域人材の活用ということ. ずは子どもの立場から『うらほろスタイル』を体験してみ. であれ、学校のために地域を「活用する」という意識が強. よう」という趣旨です。すでに昨年度の2年生と、今(平. かったのではないか。そして第二には、それは「地域の教. 成24年度(2012) )の2年生、合わせて50名ほどを対象に. 育力」が衰退した場所、すなわち主として「都市部」を想. 実施させていただいております。. 定し、学校教育の維持・再生をめざしたものではなかった. 2年生後期は、中学校での「総合的な学習の時間」にお. か、ということです。要は、従来の「教師の地域に向き合. ける「町おこし発表会」の見学を軸に、 「地域教育」に関. う姿勢」というものは、 「地域は学校のためにあるのだ、. する理論学習をふまえ、理論と実践の統合を目指していま. 地域は学校に協力をしなさい」という、非常に上から目線. す。. 【表1-1】 「地域に根ざした教師」像のこれまでとこれから. -2-. 【表1-2】取り組みの全体像.
(4) 「うらほろスタイル」から学ぶ地域教育開発専攻・地域教育分野の「地域創造型」教師養成の取り組み 3年生前期には、 「子どもの想い実現プロジェクト」や「う. 2. 「地域の教育力」とは―1年間の取り組みを通して考 えたこと. らほろ食のプロジェクト」へ参加させていただくことを考 えさせていただいております。具体的にはプロジェクト関 係者のみなさまとのご相談ということになりますが、たと. 私はこの1年間、大学の講義を通して「地域の教育力」. えば「子どもの想い実現プロジェクト」の中学生により提. とは何かについて考えてきました。考える過程において大. 案された町おこし企画の実施や、ここへのお手伝いとして. きかったのは、浦幌町の取り組みに実際に参加させていた. の参加ということを考えさせていただいております。ここ. だいたことです。今日は、浦幌町の取り組みを通して私が. ではいわば、今度は「地域の大人の立場」から、 「うらほ. 感じた「地域の教育力」とは何かについてお話しさせてい. ろスタイル」を体験させていただくことが目指されるわけ. ただきたいと思います。. です。 そして3年生の後期になりますと、釧路校では3年生の. (1)「浦幌民泊体験実習」. 夏休み、8月後半から9月後半にかけて教育実習が行なわ れます。実はこの時期の浦幌小学校での教育実習というこ. 私たちは昨年(平成24年(2012))の6月9~10日に浦. とをお願いし、来年度(平成25年度(2013) )には、なん. 幌町での民泊体験に参加させていただきました。. と浦幌小学校の方で2名の教育実習生を受け入れていただ. まず、バスツアーでは浦幌町ゆかりの場所をたくさん見. けるとのご了解をいただいております。. 学させていただきました(【図2-1】)。左の写真は、浦幌発. もちろんここでは、一学年25名いる学生の全員がお世話. 祥の地での石碑の写真です。市街地から離れた、アオサギ. になれるというわけではありませんが、実は、今年度の場. をモチーフにした看板が目印の場所に発祥の地がありまし. 合には「うらほろスタイル教育推進会議(うらほろふるさ. た。続いて右上の写真は地元浦幌町の中学生発案の「浦. と教育推進会議)」座長の浦幌小学校・中村校長先生に大. 弁」。浦幌の特産物を使用したお弁当は初めて食べる味で、. 学までお越しいただき、 「うらほろスタイル」の学校での. すごくおいしかったです。最後の写真は旧浦幌炭鉱の写真. 取り組みと、そこで必要とされる教員の資質や能力といっ. です。こちらも市街地とは離れた場所にありました。後ろ. たことについてお話をいただきました。来年度には、実際. に見えるのは昔住宅だったものだと聞き、驚きました。立. に教壇に立たれていらっしゃる先生方にも、たとえば非常. ち入る機会のない場所に入れるという貴重な経験をさせて. 勤講師というような形で大学においでいただき、あるいは. いただきました。. 私どもの方で学校にお邪魔して、 ぜひ「授業づくり」といっ た面でもご指導をいただけましたらと考えているところで ございます。 ここではいわば、教師として「学校の中」から「うらほ ろスタイル」を体験させていただくということになるかと 思います。また、昨年度以来、 「通楽(学)合宿」にもお 手伝いとして参加させていただいておりますので、地域の 方々が学校へどのような期待を持たれているのかといった こと等についても、考えさせていただけましたらとも考え ているところです。 これらの取り組みを踏まえ、4年生ではその集大成とし て、教員採用試験、卒業論文の作成に挑んでいくというこ とになります。 (4)小括. 【図2-1】浦幌バスツアー. 以上が、全体の大枠のご説明ということになります。そ. 民泊は、ラズベリー農家の高橋徹さん宅にお世話になり. れでは、このような取り組みから学生たちがどのようなこ. ました(【図2-2】)。ラズベリーの収穫時期ではなかったの. とを学ばせていただいているのか、学生自身の学びについ. で、私たちはラズベリークッキー作りをさせていただきま. て、2名の学生の生の声を、お聞きいただけましたらと思. した。右の写真は夕食後に出していただいたラズベリー. います。. トーストです。高橋さんはラズベリーを使った加工食品を (宮前耕史). たくさん製造していらっしゃり、そのひとつのラズベリー ソースをかけたデザートを食べさせていただきました。本 当においしかったです!! 民泊を実際に体験することで、浦幌町という地域の良さ. -3-.
(5) 宮 前 耕 史・小 林 可 奈・栗 本 友 佳. 【図2-2】民泊体験学習. 【図2-3】「民泊体験」を通して考えたこと. 【図2-4】浦幌中学校「浦幌活性化案発表会」参観. 【図2-5】地域教育のこれまでとこれから. を知ることができました。また、農業について知識の甘さ. 町の活性化に取り入れようとしている姿勢が私にも分か. を痛感しました。私は十勝出身ですが、農業体験などほと. り、中学生の意見としてではなく、一個人の意見として受. んどしたことがなかったので、今回少しでも知ることがで. け取っているのだというのが伝わりました。. きてよかったです。. 発表は、どのグループも完成度が高く、中学生とは思え. そして、学生と社会人の意識の差を実感しました( 【図. ないものでした。そして、どのグループも、浦幌町につい. 2-3】 )。まだまだ甘い考えの私たちに高橋さんがお話しし. て真剣に考え、取り組んでいることが伝わってくる発表で. てくれたことは、ラズベリー農家になるまでに就いてい. した。それは浦幌町を好きでなければとできないことだと. た仕事の話や、なぜ改めて農家をめざそうと思ったのかな. 思うので、これが「地域教育」の目指すところだと感じま. ど、具体的なお話を聞かせていただきました。夢を持つこ. した。. との大切さや、それを叶えるためには並大抵の努力ではだ. . めなのだな、と感じました。. (3)「地域教育」のこれまでとこれから. (2) 「うらほろ活性化案発表会」見学. 浦幌の教育活動を見て、私は私が今まで受けてきた教育 との違いを考えました(【図2-5】)。. また、私たちは、11月21日に浦幌中学校で行われた「う. 私が受けてきた教育は、 「教室の中」での座学中心のも. らほろ活性化案発表会」の見学もさせていただきました. のでした。町のパンフレットや社会科の副読本などを読む. (【図2-4】 ) 。会場に入る前に、名前を記入し、アンケート. 地域学習もありました。実際に地域に詳しい方が外部講師. 用紙を受け取り、会場に入りました。会場に入った途端、. として来てくれる授業もありました。けれども、これは一. 中学生の緊張がひしひしと伝わってきました。本気でつ. 度きりのものでした。. くったポスターが貼ってあったり、至るところで打ち合わ. それに対して浦幌町の教育は、 「教室の外」での体験中. せをしていたりと、本当に「大人」に見えました。. 心のものだと感じました。実際に教室の外に出て、様々な. 対する大人も、中学生の発表をメモを取りながら聞き、. ものを見たり触れたりできる体験学習が多く、外部講師の. -4-.
(6) 「うらほろスタイル」から学ぶ地域教育開発専攻・地域教育分野の「地域創造型」教師養成の取り組み. 【図2-6】浦幌の教育 【図2-7】中村吉昭氏(浦幌小学校長)による教師に必要な資質・能力 (5)まとめ これらのことを考えた今、私たち、これから教師を目指 す学生が何をすべきなのか、考えてみました(【図2-8】 ) 。 教師になれたとしたら、私たちはいろいろな地域に赴任 します。なじみのある町もあれば、初めて住む町もありま す。そういった様々な場所で、子どもと同じ目線で一から 地域について学べる教師が必要です。 そういった学ぶ場を作るためには、教師間の連携から一 学校としての連携、そしてさらに学校間の連携をとり、地 域に根付くような関係性を築く必要があります。そのス 【図2-8】教師を目指す学生のすべきこと. テップは一つでも飛ばしたり、なかったことにはできませ ん。そのため、いくら一教師が地域教育の必要性を叫んだ. 方も、一度ではなく、ゆっくりお話ししたりする中で気に. としても、その教育を行うことは不可能です。. なることを見つけて、その都度質問したりできる、関わり. ですが、不可能だからとなにも行動を起こさなければ何. が深いものだと思いました。具体的には、小学5年生で行. も始まりません。今必要とされている教師とは、行動力を. われる浦幌町バスツアーや民泊体験、修学旅行での他の町. 持った教師だと思います。 「はじめの一歩」を踏み出す一. への浦幌町のアピールなど、他の町では行われていない内. 人目にならなければならないのだと、1年間の取り組みを. 容がたくさんあります( 【図2-6】 ) 。. 通して感じました。. そして、その体験をもとに中学校での町おこし企画、プ. 私も行動力のある教師になれるよう、これからの大学生. レゼンを行っています。そういった連続的な教育活動は、. 活をもっと大事に過ごしたいと考えています。 (小林可奈). 子どもにとってプラスに働くに違いないと思うのです。 (4)教師に必要な資質・能力. 3.私が目指す教師像―1年間で考えたこと. また、昨年(平成24年(2013) )10月27日(土)に教育. 「うらほろスタイル」と大学での一年間の活動を通して. 大釧路校で行われたシンポジウムで、浦幌小学校の中村校. 考えた、 「私が目指す教師像」について、お話ししたいと. 長先生(「うらほろスタイル教育プロジェクト」座長)が. 思います。. お話してくださった、教師に必要な資質・能力についての 話がすごく心に残っています( 【図2-7】 ) 〔添田・近江・中. (1)大学の講義から. 村・宮前・高木・今泉2013〕 。特に、 「地域の自然・歴史の. . 理解と愛情」 「地域住民と交流できる人間性と情熱」とい. まず、私が心を動かされた文章を二つご紹介したいと思. うのは浦幌町特有の教育活動で、自然と教師自身も成長で. います。一つ目は、授業の中で読んだ宮原誠一の「教育の. きるようになっていると感じ、授業で行う地域教育は、子. 本質」という論文の一節です。 「いかなる優れた素質も、. どもの教育というだけではなく、教師の成長にもつながっ. 一定の環境に支えられなければじゅうぶんに発現すること. ているのだということが分かりました。. はできない」〔宮原1976、p.12〕。けれども、環境がよけれ. -5-.
(7) 宮 前 耕 史・小 林 可 奈・栗 本 友 佳 ば、所要の活動にじゅうぶん堪えうるものとなる〔同上〕。. になるなら、小学生や中学生なら、もっと不安に思ったり. この文章を読んで、教育には子どもを取り巻く地域のあり. するのではないでしょうか。. 方が関係してくるのではないかと感じました。. 優しくてフレンドリーな農家さんのあたたかさに触れる. 二つ目は、「うらほろスタイル」のパンフレットです。. ことで、不安と緊張は楽しさや喜びに変わっていきまし. 裏表紙に文章が書いてあります( 【図3-1】 ) 。. た。人のあたたかさに触れることってこんなに心地よくて. . 素敵なものなんだなと感じました。また、学校の授業だけ. ひとりひとりが、社会に、未来に、誰かに、必ずつながっ. では知ることのできなかった農家の方々実態を目の当たり. ていきます。つながりは、絆を育み、支えあいと思いやり. にして、毎日食べている肉や野菜、魚など、私たちが口に. の気持ちを生み出します。この取り組みが、地域・人・食. するすべてのものに、農家さんの思いが詰まっていること. の絆を創り、夢と希望を抱ける社会を子どもたちにバトン. を身をもって感じました。. タッチする そんなきっかけになりますように!〔うらほ. たった二日間の体験で疲れてしまった私の想像を、はる. ろスタイル推進地域協議会2011〕. かに超える苦労があると思います。命から命へとつないで. . いくことに感謝して、これからは食べ物を食べようと思い. みなさんも一度は目にしたことがあると思います。私は. ました。. これを見たときに、浦幌の方々の子どもたちへの熱い思い が伝わってきて、浦幌の子どもたちは幸せだなと思いまし. (3)学びの発信と共有―「民泊体験交流会」と「学びの ノート」. た。. さらに後日、 「民泊体験交流会」という形でそれぞれ違. (2) 「浦幌民泊体験実習」. う農家さんのお宅で体験してきたことや感じたこと、学ん 次に、私たちが民泊体験で感じたことをお話ししたいと. だことを発表し、お互いの意見を交換し合いました( 【図. 思います( 【図3-2】 ) 。私は、肉牛農家の谷田さんのお宅に. 3-3】)。他の人の発表を聞くことで、自分とは違う視点か. お世話になりました。牛小屋の掃除や、子牛へのミルクや. らとらえた民泊体験を知ることができました。お互いを刺. りなどのお手伝いをしていく中で、一番驚いたのは、体中. 激し合えた充実した交流会となりました。. に白い斑点ができた子牛に谷田さんが油を塗っているとこ. また、授業で取り扱った内容や、感じたこと・学んだこ. ろでした。油を塗ることでそれが膜となり、ばい菌や乾燥. とをまとめた「学びのノート」を作りました(【図3-4】 ) 。. から子牛を守ります。また、市場に出す子牛をブラッシン. 一人ひとりA3の紙に作成しました。これを用いて交流会. グして、ただ毛並みをそろえるだけでなく、しっぽに絡み. を行いました。このようにして、自分が一年間で学んだこ. ついた糞を痛くないように優しくとってあげるなど、きめ. とをまとめ、誰かに発信し、共有することで、自分が吸収. 細やかなケアが必要であることが分かりました。. したことを深めることができました。. この民泊体験は、普段の生活では体験することのできな. . い、とても貴重な二日間でした。 この体験で感じたことは、. (4)私の目指す「大人」像―「子どもの想い実現」WSへ の参加から. 協力してくださった農家さんのあたたかさと、命をいただ くことの尊さです。知らない人、初めての環境、慣れない. . 農作業、初めは不安と緊張でいっぱいでしたが、ドキドキ. また、私は「子どもの想い実現プロジェクト」のワーク. よりワクワクが勝ちました。大学生の私でもこんな気持ち. ショップにも参加させていただきました(【図3-5】)。グ. 【図3-1】「うらほろスタイルふるさとづくり計画」パンフレット. 【図3-2】「浦幌民泊体験実習」. -6-.
(8) 「うらほろスタイル」から学ぶ地域教育開発専攻・地域教育分野の「地域創造型」教師養成の取り組み. 【図3-3】民泊体験交流会. 【図3-4】「学びのノート」. 【図3-5】 「子どもの想い実現」WS. 【図3-6】私の目指す教師像. ループに分かれて子どもたちから出た提案を実際に実現可. し、教師という立場から考えると、この活動が浦幌だけで. 能か協議し、発表します。正直、参加するまでこのワーク. 行われているのはとてももったいないことだと思います。. ショップがどのようなものか私は知りませんでした。しか. 私は、この「うらほろスタイル」で吸収したことを、他の. し、実際に行ってみて、ほかの人の意見を聞いたり一緒に. 市町村へも発信することのできる教師になりたいと思いま. 話し合ったり、浦幌のため・子どもたちのために大人たち. した(【図3-6】)。 (栗本友佳). が一生懸命考えている姿に私は感動しました。私もこんな 風に、子どものために頑張ることを厭わない大人になりた いと思いました。 1. (5)私の目指す「教師」像 . 【別添図1】 【別表1】はポスターおよび当日のプログラ ムである。. たくさんの人と出会い、初めての経験ばかりだった一 年。教師という職業に対する私の価値観が大きく変わりま. 【参考文献】. した。私は、教育とは未来を創るためのものだと思ってい ます。そして、この「うらほろスタイル」がまさに、未来. ・うらほろスタイル推進地域協議会2011『うらほろスタイ. を創るためのものだと感じました。浦幌の未来を創ってい. ルふるさとづくり計画』. くのは、浦幌で生まれ育った子どもたち。たとえ、浦幌に. ・添田祥史・近江正隆・中村吉昭・宮前耕史・高木秀人・. ずっと住むことはなくても、この日本の将来を担っていく. 今泉博2013「地域教育のこれからと教師・学校の役割」. ことに変わりはありません。. 北海道教育大学釧路校ESD推進センター『ESD・環境教. 未来を創っていく上で大切なことを、たくさんの資源に 恵まれた浦幌というステージで吸収する「うらほろスタイ. 育研究』第15巻第1号、pp.1-33 ・宮原誠一1976(1949)「教育の本質」『教育と社会』(宮. ル」の活動は、とても素晴らしいものだと感じます。しか. -7-. 原誠一教育論集第1巻)国土社.
(9) 宮 前 耕 史・小 林 可 奈・栗 本 友 佳. 【別添図1】うらほろフォーラム2013」ポスター (うらほろスタイル推進地域協議会提供). ・宮前耕史2013 「 『うらほろスタイルふるさとづくり計画』. ・宮前耕史・添田祥史2012「地域に根ざした教師養成のた. の成り立ちとその現代的意義―『地域に根ざした学校』. めのプログラム開発―『地域参加型マインド』から『地. 論・『地域に根ざした教育』論の立場から」北海道教育. 域創造型マインド』へ―」北海道教育大学釧路校研究紀. 大学学校・地域教育研究支援センターへき地教育研究支. 要『釧路論集』第44号、pp.19-26. 援部門『へき地教育研究』第67号、pp.31-54. -8-.
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