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IS・LM,ストック・フロー,および流動性

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Academic year: 2021

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(1)Title. IS・LM,ストック・フロー,および流動性. Author(s). 久保田, 義弘. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 36(1): 79-88. Issue Date. 1985-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4471. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . IS◎ LM, ス ト ッ ク ◎ フ ロ ー お よ び 流 動 性. 義. 久 保 田. 目. 弘. 次. は じ め に 第 1節. ヒ ッ ク ス のISoLM の発展. 第2節 フロー均衡としてのIS 曲線 第3節 流動性, 期待およびLM 曲線 むすびにかえて. は. じ. め. に. マクロ分析の1つの理論として広汎に受 け入れられてきた 罵りLM 体系 が経済学者の批判の的に なってし・る。 彼らによるとその体系が論理的矛盾を内包している ことになる, その矛盾とはその体 系 で はフ ロ ー とス ト ッ ク が 混 同 さ れ て い る と い う こ と で あ る.IS 曲 線 はフ ロ ー の次 元 で 描 か れ て い. るのに対 し,LM 曲線 はストックの次元で描かれている.このように次元の相異なる経済変量を同一 の2次元平面に描くことは可能であろう か. 我々 は本稿でこの問題について思察を加 えてみよう, もしそれらの曲線 が同一平面上 に描 ける としたならば, フロー均衡 とストック均衡とを どのように 整 合 さ せ る とよ い の で あ ろ う か. 我々 はヒ ッ ク ス の ISoLM 体 系 の 変 遷 を 辿 り な が ら そ の 問 題 を 考 えて い こ う. そ の 体 系 は ヒ ッ ク. ス〔 3 〕 によって一般均衡の枠組をもつ体系として定式化された, 彼は暗黙に『価値と資本』 の動学 、週″ の連続として時間の流れ 分析の手法で 『一般理論』 を解釈しようとした. つまり, 彼は彼の 、 ″ 、 、 を捉 え, その期首 ( 月 曜日 ) にすべての経済変量の市場価格 が決定される と想定している. そこ で決定されるすべての市場価格 はその週を通 して一定不変である. これらの価格のもとで各主体間 の取引きが実行される, その週で取引きされるすべての経済変量はフローである, ヒックスの動学 分析は伸縮価格を想定している, しかしながら, ケインズの体系では少なくとも貨幣賃金率は固定 的である. 彼の動学分析を使用 するためには, 固定的な貨幣賃金率のもとでワルラス法則 が成立す ることを明らかにし, さらに, 生産物の市場価格も固定的である ならば, その価格および貨幣賃金 率 が固定的である ときにワルラス法則 が成立するかどうかを明らかにしなけれ ばならない. こ れ ら の固 定 性 の も と で, ヒ ッ ク ス の ”週″ を 仮 定 し て, ケ イ ン ズ の 『一 般 理 論』 を 説 明 して い. るのがヒックスのISoLM 体系である. 我々 は本来伸縮価格体系の理論である 『価値と資本』 で固 定価格体系の理論を説明で きるかどうかについて検討 しなけれ ばならない. 我々 は依 然 と して ヒ ッ ク ス の方 法 が誤 り で は な い で あ ろ う と 確 信 して い る, そ の 理 由 の 1 つ と し. て私 はケインズも期間分析によって彼の理論体 系を構築していることをあげたい. 期間分析の難点 はストック均衡をいかに定式化 (あるいは理論化) するかに関係している. ストック はある時点に 79.

(3) . 久保田 義 弘. おける経済変 量であるのに対 し, フロー は期間当りの経済変量である 経済が期間を通 してフロー . 均衡 にあるために は, 少 なくとも期 間のそれぞれの時点 においてストック均衡が達成されているこ とが必要である. 時間の経過 につれてス トック水準が変 化するとき 経済主体 の期待値もそれとと , も に変化するかも しれない. たとえば 期首において期待される期 末の生産物価格と期間内の任意 , の時 点にお ける期待価格が爺離 しているならば 期首にお ける期待と期間内 における期 待が整合し , なし・ことになる. ス トック=フロー均衡の体系を考察する場合 に 期待形成 についても熟慮が必要 , で あ る.. 第1節. ヒ ッ ク ス の IS・LM の 発 展. ISoLM 体系 は財貨oサー ヴィ ス市場 の均衡を示す方程式と資産市場の均衡を示す方程式の連立. 方 程式体系 によっ て示され, その未知数 は市場利子率と国民所得である 多くの経済学者 はその体系 , において財政および金融政策 の効果, 政策の相対的優位性 について議論 し IS 曲線あるい は(お , , よ び) LM 曲線の傾 きのいかんによっ てそれぞれの政策の有効性が異なることを確認 した . ヒックスによって確立されたISoLM 体系を修正 する動 きはピグーの理論を批判的 に継承 し発展 させたパ ティ ソキソの 「実質貨幣残高効果」 をいか にしてISoLM 体系 に包含するかを考察すると きにおこっ た. その効果 は実質貨幣残高 の変化が直接的 に消費水準 (あるい は貯蓄水準) に影響す ることを意味して いる. ヒックスの体系 において実質貨幣残高が貯蓄水準に影響するならば 実質 , 残高効果 は 薦 曲線 のシフトによっ て示される さ らに 経済学者 はその残高が資産需要 にも影響す . , ることを示した. 資産価値 の増加 は家計を恒常的 に裕福 にするので その増加 は貯蓄水準および資 , 産需要を大きくする. このとき 資産価値 の増加が実質所 得を大きくするかどうかについて経済学 , 者 は論争 に陥っ た. その論争を通 して経済学者 は 「クラウディ ソ・アウト」 が完全 に (あるいは部 分的に) 作用することを確認 してきた, 資産効果をめぐる理論展開 においてス トックがフロー およびス トックに与 える効果 の分析が明 ら かにされた, つまり, 資産価値 の変化が貯蓄水準および資産 需要 に与える効果が明らか にされた . 今日では資産価値 (あるいは数量) の変化を政府の予算制約式と関係 づ けて議論する経 済学者が増 えている. この方向 での発展 は経済全体の資産価値 の変化を政府支 出の変化と連動させ この増加 , によっ てIS 曲線がシフトする短期効果 と資産価値 の増加 によっ てその曲 線がさらにシフトする効 果を明らかにし, 他方, 資産価値 の増加 はLM 曲線もシフトさせる 政府支出 の増加が貨幣 によ , っ て フ ァ イ ナ ン ス さ れ る な ら ば LM 曲 線 は右 下 に シ フ トす る そ れ が 国 債 に よ て フ イ ナ ン ス さ れ , っ ァ ,. ているならば,LM 曲線 は短期的には右下 にシフトするであろうが しかし 資産構成 の変化のため , , に そ の 曲 線 は徐々 に左 上 に シフ ト して い く こ の と き 「ク ラ ウ ディ ン ・ ア ウ ト」 が お こ る . ,. 多くの経済学者 はISoLM 体系 に基 づ いて政策提言を おこない さらにそれ に基づ いてそれぞれ , の政策の有効性を論議 した. しかし 彼らはその体 系の基本的な前提条件 につし、て殆 ど議論してい , ない. つまり,IS 曲線がフロー均衡を示 し LM 曲線がス トック均衡を示 していて 両曲線が同一 , , 平面上 に描かれる根拠を彼 らは充分に考察していない ,. 80.

(4) . ISoLM, ス トッ ク o フロー およ び流動 性. 第2節. フロー均衡としてのIS 曲線. IS◎LM 体 系 に お ける フ ロ ー と ス ト ッ ク の 問 題 を 体 系 的 に示 唆 し て い る の が トー ビ ソ 〔7〕 で あ る,. 彼は資本勘定の分析上の意義を LM 曲線に関連させて説明し, ストックとフローの関係をトー ビソ の いq″ によ っ て指 摘 し た, こ の こ と はマ ク ロ 分 析 がス ト ッ ク と フ ロ ー の 関 係 を 重 視 す る 方 向 に進. 〕 は期間分析 によってマクロ分析の再構を試みて 8 んだことを意味するが, しかし, 近年 トー ビソ〔 いる. そ こ で トー ビ ソ は期 首 に お ける ス ト ッ ク 均 衡 を 仮 定 し, 期 末 に お ける ス ト ッ ク 均 衡 が フ ロ ー. 均衡と同時に達成されることを示 した.彼 は期首から期末に流れる時間を全 く考慮に入れていない, 私には彼の試み がヒックスの週 に関する概念を充分に考慮しているとは思えない. 我々 は, ヒックスの週を前提 にして, 伸縮価格体系におけるIS◎LM 曲線 に注目する. ここで取 り上げられる市場 は, 財貨◎サーヴィ ス市場, 貨幣市場, 証券市場およ び労働市場である, この4 つ の市場の間にはワルラス法則 が成立するとしよう, 労働 がニュメ レールとして選 ばれる. 労働市場 以外の3市場において均衡 が達成されているならば, 労働市場においても均衡 が達成されることを その法則 は意味 している. 労働の価格を1とする, これで測られた財貨◎サーヴィ スの価格を P。 , および , 貨幣の価格を Pm S 財貨◎サー ヴィ スに対 L この供給を 証券価格をP, とそれぞれする. 労働 に対する需要を LD , , S 貨幣に対する需要を Dm この供給を Sm とそれぞれするなら S この供給を する需要を DS , , , , , LD=PCDC十PmDm十PSDS およ び LS=Pcsc十Pmsm十PSSS. という関係が各市場間において成立する. ワルラス法則より, 労働市場以外の3つの市場 において 均衡状態 にあれ ば, その市場も均衡状態 にあると言 えるので,3つの市場価格 は3つの市場における 需給方程式の解 として決定される, ここで, 財貨◎サーヴィ ス市場, 貨幣市場および証券市場 にお ける超過需要をそれぞれ ×。 , Xm およ び X とおくならば,. (2-2). ×ザニf 。 > ぼ りP ,王 》』 =gGt,Pm ,P). (2-3). Xに=h(Pc ,Pm ,P ). (2-1). f l<○. く0 <0 f 3く. g1〈0 g2<0 g3>0 hl〈0 h2>0 h3く く0. という関係が得 られる, それぞれの超過需要関数 はそれぞれの市場価格に依存している. 各価格 が 各需要量にいかなる影響を与 えるかはそれぞれの商品間に存在する代替性あるいは補完性に依存す る. 一般 に貨幣と証券は代替的であり, 貨幣と財貨oサー ヴィ ス は補完的である. ただし, 財貨が 在庫として保有されている場合 には, 貨幣と財貨 は代替的であろう. 財貨6サーヴィ スと証券の関 係 が補完的であるのか代替的であるのかは不確定である. ここで はこの関係 が補完的であると仮定 される. それらの関係 が確定すると, 超過需要関数の偏微係数 が決定される. つまり,f i 1 ,g , およ i が びh ( 3 ) の符号 決定される = 1 2 , , , , )において労働市場がいつも均衡状態にある と仮定しよう, この仮定のもとで各市 ( )から( 2-3 2-1 場を均衡させる市場価格の組み合 せを図示 してみよう, 縦軸に証券価格, 横軸に財貨◎ サ ー ヴィ ス 81.

(5) . 久保田 義. 弘. の価格をそれぞれとる. 財貨oサー ヴィ ス市場の均衡 は CC 曲線によって表わされ, 貨幣市場の均衡 は MM 曲線によっ て表わされる, すでに述べたよう な関係が商品間にあるな ら ば CC 曲線 は右下 , りになり, MM 曲線 は右上 りになる. このとき, 証券市場を均衡させる曲線 はSS 曲線で示され , この曲線 は右上り になる. ただし, その曲線の傾き は CC 曲線のこれよりも ・さ く は な い. そ れ ら の 曲線 は(図-1 )のように表わされる. P 図 のe(Pき ) 点 は4つの市場を同時 に均衡させる点で S , Pさ. . 変であると仮定される. ケインズの世界では証券価格 は上 限価格以下で伸縮 的である. この価格 は需要と供給によっ て 決 定 さ れ る.. (図‐1). ケインズの世界 においてフローのワルラス法則が成り立つかどうかを探り ながら その世界 を , ヒックス流のISeLM 曲線で表わすことの含意を明らかにしてみよう. ケインズの世界 では固定価 格および固定貨幣賃金率であるので, 財貨・サー ビス市場および労働市場 において需給が一致する 必然性はない. そこでは両市場 は超過供給状態 にあると考 えられる, この状態で は取引きされる量 が調整されるので, それらが固定的である経済では 経済変数として証券価格 ばかりではなく 取 , , 引数量も取り上げられる. 故 に, 労働 に対する需要も証券価格ばかりでなく 財貨oサーヴィ スの , 需要量にも依存することになる. また, 財貨・サー ビスに対する需要 は証券価格および労働に対す る需要量に依存する. これよりそれぞれの需要関数 は, ( 2-4 ) ( 2-5 ). LD=1(P,Dc ) Dc=d(P,LD). 1 1<0 1 2>0 d,<o d2>0. と表わされる, これらの関係において財貨oサーヴィ スに対する需要の増加 は労働需要にどのよう に影響するのであろうか. また, 労働需要の増加 は財貨・サー ヴィ スに対する需要 にいかなる影響 を与 えるのであろうか. も し労働に対する需要が派生需要であるならば 財貨oサー ヴィ スに対す , る需要の増加 は労働需要を大きくする. 固定的な価格のもとで は 労働需要と財貨oサー ヴィ スに , 対する需要 は比例的に変化すると言 えよう. ( 2-4 )および( 2-5 )の関数 から労働需要と財貨oサー ヴィ スに対する需要 の関係を導出することが できる. それぞれの関係を縦軸 に労働需要をとり横軸 に財貨o サ ー ヴィ ス に対 す る 需 要 を と っ て 図 示 してみよう. ( 2-4 )は右上り の曲線 LL によっ て表わされ, ( 2-5 )は右上りの曲線 DD で表わされ る. その2 つの曲線でいずれが きつい勾配をも つかは不確定である. ここで は LL曲線の方がDD 曲 線よりも急勾配であると仮定される. この仮定 のもとでそれぞれの関係 は (図冊2 )のように描かれ , る。 両曲線が交わるe 点は証券価格を一 定不変 にして求められる。 故に その価格が変 化するなら , ば, 両曲線はシフトするであろう。 それが上昇するなら ば LL 曲線は右下 にシフトし DD 曲線は 、 , 82.

(6) . ISoLM, ス トッ ク ・ フ ロ ー およ び流 動 性. 左上にシフトする。それ が上昇したときの両曲線 は(図. D L. -2) に お い て 点 線 によ っ て 描 か れ て い る。 そ の 交 点 は 己 で あ る。 ど 点 で は証 券 価 格 が e 点 に お ける よ り も 高. い ばかりでなく, 労働需要およ び財貨6 サ ー ヴィ ス に 対する需要もより大きい。 このことから証券価格と労 働需要 および財貨◎サー ヴィ スに対する需要 は比例的 に変化することが明らかにされる。 証券価格が市場利 子率の逆数 と近似されるならば, 市場利子率と財貨◎ サーヴィ スおよ び労 働こ対する需要 は負の関係で示 さ れ る。 こ の 関 係 を 縦 軸 に市 場 利 子 率 を と り 横 軸 に 財. 十. . / 〆D′ 』〆′ . 彩〆 〆 ご 院 ‐p』--こ 灘多 『 十 ジライ D〆 #ク /シ/ 1 / 上/ ; o. Ds. 貨 ◎ サ ー ヴィ ス に対 す る 需 要 を と っ て 図 示 す る こ と が. び. ) (図-2. )のIS曲 線 によっ て示 され できる。 その関係 は(図-3 る。 こ の 曲 線 上 のe お よ び ど 点 は(図-2)の e お よ び ご 点に対応している。 その I S 曲 線 はヒ ッ ク ス のIS 曲. r 1. \ 纏喜 憂 滋 蓋 凝 議 書 内において期待値 が変えられるかも しれない。 期間内 において期待値の変化も考慮 されるならば, 労働需要. 3 (図- ). は同一期間内における財貨◎ サー ヴィ スに対する需要 ばかりではなく, 後の期間のその需要予想に も影響されることになろう。 期待の影響が流動性選好 において さらに重要となろう。 流動性選好 は 一時点 における決定であり, フローの決定ではない。 流動性をフローの次元 に変換するならば, 貨 幣数量方程式のマーシャ ルの k のようにス トック からフローに変換する変数を見付 けなけれ ばな らない。 このことが可能であるためには一時点 における関係 が期間全体 にわたって変化 しないとい うことを認めなけれ ばならない。 しかしながら, ある一時点における流動性選好 が期間を通して観 察される保証 があるだろうか。 時間が経過する につれて流動性選好 は変化 し, 初期時点 における選 好 はその経過 ととも に変更されていくであろう。 ただ し, 完全予見 が仮定されるならば, 期首にお ける流動性選好 は期間を通して適宜性を保つであろ う。. 第3節. 流動性, 期待および LM 曲線. ケイン ズの世界 において理解 しづ らい概念の1つとして流動性およ び流動性選好を取り上げるこ とができる。 この概念が何故理解されにくいのであろうか。 流動性という言葉 が人々 に連想させる 像と経済学者 が描く像とが必ずしも一致していないからである。 人々 は流動性を一 定期間内に損失 なしに現金化される程度として理解するのではなく, それを単 に現金化することと理解する。 故に, 流動性選好を現金需要と考 えがちである。 流動性選好について考察してみこう。 経済主体 は流動性を何故保有 しようとするのであろ うか。 83.

(7) . 久保田 義. 弘. 彼 にはその保有自体が目的で はない。 それを保有することによって彼は予期せざる事態 に対応でき る よ う に なり, ま た そ れ に よ っ て 財 貨 o サー ヴィ スの購入および生産のため の諸要素の購入を可能 にする。 このことはヨリ流動的な資産を保有することによっ て確実 になる。 流動性は経済主体にあ る程度の自由度つまり事態 に対する弾力的対応の自由度を与 える。 このように経済主体 に自由度を 与 える流動性 はどのように測定あるいは評価されるのであろうか。 それは 実物資産であろうが金 , 融資産であろうが, それぞれの資産 の市場価格の変動の程度 によっ て測定される。 何故市場性のな い資産を排除するのかといえば, そのような資産を現金化するために経済主体 は取引 き相手を見付 けさらに取引き交渉するのに相 当の費用 (取引き費用) を必要とする。 経済主体が資産を現金化す る以前 に破産するという不幸な事態 に陥るかも しれない。 故 に, 本稿ではすべて の資産 が市場性を もっと想定するか, 市場性のない資産 は完全 に非流動的であると想定する。 したがっ て, 市場性のある諸資産間で流動性 がどのように測定あるいは評価されるのかを説明す るだ けで充分であろう。 市場性のある資産 の価格 (価値) は不定であるよりも変動するのが一般的 であろう。 もしその価格が激 しく変動するならば, その資産 は完全 には流動的ではない。 というの は, 資産が売却されるときの価格が異常に低いという危険 のためである。 この異常事態のとき経済 主体 はその保有 している資産をすばやく売却するのではなくそれを引き延すことによって利益を得 る。 このように, 市場性があるが価格変動のある資産 は損失を伴うかもしれない。 損失の危険があ る市場性のある資産の流動性 はその損失のない市場性のある資産の流動性より小さい。 より流動的 であるとかより流動的でないとかは損失なしにより確実 に現金化されるかどうかに依存 してし・る 。 流動性および流動性 の程度が上のよ, うに説明されるとき, そのような流動性が社会的 にどのよう な働きをして いるかについて説明しよう。 流動性の社会的役割を説明するとき 我々 は経済主体の , 貸借対照表 に注目しなければならない。 彼の資産項目および負債項目 が金融 資産から構成されてい る経済主体 は金融機関である。 この機関の流動性選好 は金融資産 間でおこなわれる。 非金融機関の 流動性選好 は市場性のある実物資産の間でおこ なわれる。 これらの経済主体 のいずれにとって流動 性がより必要 とされるであろうか。 金融機関が貨幣を手離 し他の金融資産を獲得 したのち に その , 機関 はその金融資産の価格が異常 に低くなることによって損失をこうむるかもしれないという危険 に直面 しているが, しかし, その損失が生 じるとは限らない。 その機関は保有 している全資産構成 の流動性を極端 に低くしたりあるいは極端に高くしたりするのではなく それは流動性の状態を連 , 続的に (徐々 に) 変えるのみである。 これ に対 し非金融機関にとって流動性は決定的な意味をもっ ている。 生産者が惰性的な活動をおこなっているときには, 流動性 は彼にとっ て重要でないかもし れないが, しかし, 彼が惰性的な活動を超越しようとするならば, 流動性が彼には必要となる。 彼 の手許に流動性がな けれ ば, 彼 は生産を拡張できない。 彼が投資支出をおこなうということは彼の 流動性を急激に低くすることを意味する。 その投資が自己資金あるいは金融機関の信用 によっ て融 資されるとしても, 彼の流動性は急激に変化すると考 えられる。 経済主体が将来における不慮の出来事に柔軟に対応するために保有 している流動資産をそれぞれ いかなる比率にするかは彼の選好に依存している。 つまり, 流動性選好が流動資産の保有比率を決 定する。 貨幣も流動資産 の1つであるので, 貨幣保有需要 の一部も流動性選好 によって決定される 。 流動性選好 はある時点における最適な資産選択 ではなく, それは将来についての漠然 (不確実の) とした期待 に依存 している。 故 に, 流動性選好と最適資産選択 を同一視することは流動性の重要 な 性質を見失うことになろう。 その選好 は少なくとも意志決定をおこなう時点とそれ以後に経済主体 がおかれる境遇に関する判断 (あるいはなんらかの期待) に依存 している 。 上述の流動性に関する説明を踏えて, 流動性の理論と LM 曲線との対応 について考 えてみよう 。 84.

(8) . ISoLM, ス ト ッ ク o フロ ー およ び流動 性. 流動性の理論を考察するときに厄介な問題 は時間である。 この問題をいかに処遇するかが重要であ る。 ここでは上述の流動性選好 と LM 曲線との関係を示すことにしよう。 LM 曲 線 はバ ラ ン ス シ ー トの 均 衡 を表 わ して い る。 つ ま り, そ れ はス ト ッ ク 均 衡 を表 わ し て い る。. この均衡とフロー均衡を整合させることが必要となる。 フロー均衡 は一定期間で定義されるのに対 し, ストック均衡 は一時点で定義される。 この次元の相違を矛盾なく解消 する最も簡単 な方法は, 平 均 的 なバ ラ ンス シ ー ト の 関 係 を 一 時 的 な バ ラ ン ス シ ー トの 関 係 と 見 倣 し, 期 間 全 体 にわ た っ て そ. の関係 が維持されると仮定することによっ て, ストック均衡とフロー均衡を整合的に取り扱う方法 である。 両均衡の間には注意すべき関係が存在する。 フロー均衡 として示さるIS 曲線とストック均 衡として示される LM 曲線の関係に着目すると, 平均的なバ ランスシートの均衡 (ストック均衡) が成立しているとき, 期間を通 してフロー均衡が達成されていなけれ ばならない。 故 に, 期首およ び期末だ けではなく, 期間全体を通 してス トック均衡にあれ ば, 期間を通 してストック=フロー均 衡が達成される。 期間全体を通 してス トック均衡 が達成されているときには, フロー均衡 が達成さ れる こ と に なる。. ストック均衡 は期待に依存しているので, 期間全体を通 してストック均衡 が維持されるか どうか は不確定である。 期首に期待される期末におけるス トック均衡 が実 現されるかどうかは期待の整合 性に依存する。 時間の経過 ととも に期首 に期待 される任意の時点のストック均衡 が変更されうるの で, 期間分析におけるストック均衡 (任意の時点においての賦存 量が所望された水準 に一致してい る状態) が連続分析のス トック均衡に一致する保証 はない。 期間分析 と連続分析を整合的に捉 える のも重要な問題 であろうが, ここでは期間分析に限定 しておこう。 期待値 が一価で, これが不確実 であるならば, 期首における期待値が実現される蓋然性 は低いであろうから, フロー均衡とストッ ク均衡 が同時 に達 成されないかも しれない。 故に, フロー均衡である が, ストック不均衡であるか もしれない。 この不均衡 はつぎの期の 生産計画および消費計画 に影響する であろう。 期待の働きを考慮 に入れて, 財貨◎サーヴィ ス市場, 貨幣市場 およ び証券会社から構成される経 済において LM 曲線を導出してみよ う。 財貨 は物理的 に一定期間以上 にわたって保有 され ないと し, 貨幣およ び証券のみ が多数期間にわたって保有され, 経済主体 は期首 において計画を立てると しよう。 経済主体 は家計およ び企業からなる民間部門と非民間部門で, 前者 は貨幣需要主体で, 後 者 はその供給主体である。 証券の供給主体 は企業およ び非民間部門である。 その需要主体 は家計で BSとする。 B ある。 貨幣に対する需要を L , その供給を M とする。 証券需要を とし, その供給を 経済主体 が期首 (T 時点) にいる ときに(T+1時点) における所望資産 量を計画する。 T 時点にお T , いて T十1時点のための所 望貨幣保有量(貨幣需要)を L(T十1 , T) , 同様 に証券需要を B( +1 S T をそれぞれ M(T十1 T) , T)とす , B(T+1 , T) , とそれぞれする。 +1時点に賦存する資産価値 る。 それぞれの資産市場におけるストック均衡 は T M T , T) L(T十1 , )= ( +1 B T +1 B(T +1 , T) , T)=. となる。 T+1時点におい て経済に賦存する資産の価値が T 時点 において T+1時点のため に計画 された資産価値に等しい ならば, T B T+1 B T , T)= M(T十1 L(T 十1 , T) , )+ , T)十 ( +1. 85.

(9) . 久保田 義 弘. とし・う関係が得られ る。 この関係よ り , S {L(T 十1 , T)- M(T十1 , T)}+ {B(T+1 , T)-B (T十1 , T)}=0. が得られる。 T +1 時 点 に お ける ス ト ッ ク 均 衡 と フ ロ ー 均 衡 を 整 合 的 に示 して み よ う パ ティ ソ キ ソ〔5〕によ っ 。. て採択された仮定に従っ てみよう。 彼 は期首におし・てストック均衡 にある経済を仮定 している そ 。 の仮定は (3-l a) (3-l b). L(T T)= M(T T)… M(T) , , B(T T)=BS(T T)… B T) , ,. と表わされる。 上 の関係式を使うと , {L(T十1 , T).L(T, T)}-{M(T+1 , T)-M(T)}+{B(T十1 , T)-B(T, T)}-}B T +. S 1 , T)-B (T)}=0. が 得 られ る。 こ こ で{L(T十1 T)-L(T T)}-{M(T+1 T)- M(T)}=Dm-Sm {B T , , , , ( 十1 , T)- B(T, T)}-{B T 十1 T)-BS(T)}=DS-SS で あ る 経 済 が 期 首 に お い て ス ト ク 均 衡 に あ る な , ッ , 。 ら ば, (3-2). L(T十1 T)- M(T 十1 T)十B(T +1 T)-BS(T 十1 T)=0 , , , ,. と い う 関 係 が 成 立 す る。 こ の 場 合 に は フ ロ ー 均 衡 と ス ト ッ ク 均 衡 は表 裏 一 体 に な る Dm=Sm(フ ー ロ 。. 均衡)であるならば, L(T+1 , T)=M(T+1 , T)となり, ス トック均衡が成立 する。 逆に, L(T+. 1 , T)= M(T +1 , T)(ス ト ッ ク 均 衡)で あ る な ら ば, Dm=Sm と な り, フ ロ ー 均 衡 が 成 立 す る。 パ テ ィ. ソキソのように期首 におけるストック均衡を仮定するならば フロー均衡とス ト ク均衡 は整合的 ッ , に なる。. 期首におけるス トック均衡を仮定することはやや厳 しい仮定 であるので フロー均衡とスト ク ッ 、 均衡を整合させる条件を求めてみよう。 この条件 はフォーレ〔 1 〕の完全予見の仮定に相 等するもの である。 T傭1時点において期待される T 時点の資産需要(および供給)が T 時点において期待され る T 時点の資産 需要 (および供給) に等しいという条件である その条件 は 。 , (3-3a) (3-3b). L(T, T-1)=L(T T) お よ び B(T T-1)=B(T T) , , , M(T, T-1)= M(T T) お よ び BS(T T-1)=BS(T T) , , ,. である。この条件が おかれるならば T-1期の均衡 は T 期の期首 におけるス ト ク均衡を意味する , ッ 。 その条件から L(T, T-1)- M(T T-1)=L(T T)- M(T T) , , ,. 86.

(10) . ISoLM, ス トッ ク ・ フロー およ び流 動 性. が得られ, T-1期 における均衡 は L(T, T)=M(T, T) を意味する。 この関係式 は T 期の期首におけるストック均衡を示している。 それは静学分析におい て パ ティ ソ キ ソ が 仮定 し たも の で あ る。 故 に, (3-3)の 条 件 が お か れ る な ら ば, フ ロ ー 均 衡 とス ト ッ. ク均衡が同時に達成されることになる。 したがって, 静学分析においては期首 におけるストック均 衡を仮定することができよう。 LM 曲線 は静学分析のストッ ク均衡から導出される。期首におけるストック均衡が仮定されると, (3-4a) (3-4b). m m L(T+1 , T)- M(T +1 , T)=D -S B(T+ 1, T)-BS(T+ 1, T)=DS-SS. S S と い う 関 係 が 得 られる。 こ こ に お い て ス ト ッ ク 均 衡 が 成 立 して い る な ら ば, Dm=Sm , お よ び D =S が 得 られ る。 も し財 貨oサ ー ヴィ ス 市 場 に お い て フ ロ ー 均 衡 が 成 立 す る な ら ば, ワ ル ラ ス 法 則 によ っ. )はLM 曲線に対応している。 貨幣市 3-4a て, 残りの労働市場 においてもフロー均衡 が成立する。( -2 3 )よ り, 証券市 場 のス トック 均衡(つま り B(T+1, 場 においてス トック均衡 が成立 する と, ( T)=BS (T+1, T))が成立する。 故に, 貨幣市場のストック均衡を示す LM 曲線上では証券市場の その均衡も達成されている。 むす び に か えて. ス ト ッ ク と フロ ー の 関 係 を 矛 盾 なく 説 明 し, 1 つ の マ ク ロ 体 系 を 構 築 す る こ と は難 し い こ と で あ る が, し か しマ ク ロ 体 系 が正 確 に 現実 を 描 写 す る た め に は, 我 々 はス ト ッ ク と フ ロ ー の 関 係 およ び. ストック均衡とフロー均衡 に留意 しなければならないであろう。 本 稿 で は, ヒ ッ ク ス のマ ク ロ 体 系(つ ま り ISoLM 体 系) に お い て ス ト ッ ク と フ ロ ー お よ びス ト ッ ク 均 衡 と フロ ー 均 衡 につ い て 考 察 して き た。 我 々 はヒ ッ ク ス のISoLM 体 系 が マ ク ロ 分 析 と して 有. 益であり, さらに, その体系が理論的に整合的であると確信している。 たしかに, その体系では期 待および期待形成は明示的に示されていないが, 不確実性下の経済において合理的な期待形成 が存 在すると期待できるであろうか。 期待形成において経済主体 に利用可能な資料 は過去の経験にすぎ ないのではないだろうか。 しかし期待および期待形成 がストック均衡を考察するときに重要になる ことを否定できなし・であろう。 時間の経過とともに, 期待を形成する時点 が異なるので, 期 間内の 任意の時点のための期待値 は変化すると考 えられる。 特に, 資本ストック水準が変化 している場合 には, 期間内のそれぞれの時点 においてストック均衡が維持されるためには, 資本ストック水準の 変化 に対応 して期待値が変更される必要があろう。 期待形成が必ずしも合理的になされないとき, 我々 は適応的期待形成の考 え方を使っ てその形成 を説明する必要があろう。 期待形成が過去の経験から全く隔絶されてなされるのでない限り, 我々 は適応的期待形成 仮説 に従 って現実の期待形成を説明することもできよう。 本稿 はその形成を含む マ ク ロ 硲 モ デ ル へ と 発 展 さ れ よ う。. 87.

(11) . 久保田 義 弘. 参. 考. 文. 献. “ “ l i ncat i 〔1〕 Fo l i ium in Macroeconomi ey br tEPui onof As l se l c Mode s , D. K. , ontwo Spec .83 , ノ. P. E.vo 1975) pp 3 0 3 2 4 ( - . . 〔2〕 Hi cks ”eα”〆 Gα〆ね′ .R. ,j , ”α/ ,C1arendoq London ,2ned . ,1946. ” ‘ “ i 〔 〕----一 i 3 t tat l cs’ 1937)pp ed工nt erpre on ;A Sugges , Keynesand C1ass , Mr ,5( , Eの“の塊eかたα ,vo ,147. 冊59 . “ 〔4〕一----,”IS-LM;An Exp lanat i l on f pOSZKay“鮎彰7 2 Eco〃の呪〆 s c , 鳶 好“〆 q .3 (1980‐81) pp ,vo .139‐54 . ”Li u ’ ’ inki D i d i P f t l 〔 〕 Pat 5 n o n r l i q eFunds;Stock andF1 l y eerenceand Loanab ow Ana s 2 o朔たα , ys , , , Eの7 ,vo 25 ( 1958) pp .300‐18 .. 〔6〕 一----, 脳『 o 7 2の, 肋Zの修練 αれd P“c g s , Harper & Row, New York,2ned . . ,1965 ” “/ 肌 C B vo in IEqu i l ibr i 〔7〕 Tob tary Theory ra um Approachto Mone , ,J , A Gene .1(1969)pp , , , , , l ,15‐29 , ‘De6c “in z i i 〔8〕 -----,‘ tSpend ng and Crowdi t ng outin Shor E あ erand Longer Runs 貢 げ o の c 7 20 7 吻た “ , E万化Z ld e 7 2砂,eds t i i dge l movi ch n .Green丘e s , H.1 , A. M.Levenson ,駅. Ha ,and E.Rotwe ,Cambr , M工T Pres , 1979 2 1 7 3 6 - . . ,pp ‘ ‘ fec i 〔 9 〕 Turnovsky,S.and E. Burmeister tF i I Cons i tat ores t ona s ency ght roeconomi c , Per . ,Expec ,and Mac ”ノ P E vo Equ i l ibr i 8 3 5( 1 9 7 7 7 9 9 3 um, ) - p p . . . l . . . (本 学助 手. 88. 旭川 分 校).

(12)

参照

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