Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№5:ラット顎下腺の外科的創傷治癒モデルにおける創
傷治癒細胞に対するコラーゲンゲルおよびEGF の影響
Author(s)
小林, 史卓; 阿部, ヒロ; 笠原, 正貴; 松坂, 賢一; 井
上, 孝
Journal
歯科学報, 115(3): 274-274
URL
http://hdl.handle.net/10130/3697
Right
目的:大唾液腺は唾液腺腫瘍や唾石症などの唾液腺 疾患が原因で,切除や摘出といった外科的手術が治 療法として選択されることがある。外科的に傷害を 受けた唾液腺は通常萎縮もしくは消失する過程をた どり,手術側の唾液分泌能は低下する。今回われわ れは,顎下腺の欠損に対してコラーゲンゲルおよび コラーゲンゲルに EGF を付与し創傷治癒時に発現 する細胞への影響を検討するために,ラット顎下腺 に円形の欠損を与え,欠損部にコラーゲンゲルもし くは EGF を含んだコラーゲンゲルを補填し,ゲル 内の修復過程における組織反応,遺伝子発現を検討 したので報告する。 方法:実験動物には200g の SD 系雄性ラット30匹 を用いた。麻酔下にてラット顎下腺を剖出し,直径 3mm の欠損を生検パンチにて付与した。同部に同 径に作製したコラーゲンゲルおよび EGF を含んだ コラーゲンゲルを補填した。その後の経時的変化お よび組織反応を HE 染色,vimentin(線維 芽 細 胞 マーカー),α-SMA(筋上皮細胞マーカー),PCK (導管上皮細胞マーカー),CD49f,c-kit(幹細胞 マーカー),AQP5(腺房細胞マーカー)を一次抗 体とし た 免 疫 組 織 化 学 染 色 に て 観 察 し た。ま た vimentin,α-SMA, keratin13, keratin19, CD49f お よ び AQP5の mRNA の発現を解析した。 結果および考察:HE 染色にて創傷後5日目よりコ ラーゲンゲル内へ炎症性細胞侵入が著明に観察さ れ,類円形細胞および紡錘状細胞が認められた。7 日目では,侵入する細胞の増加がみられた。14日目 で明らかなゲルの縮小がみられ,21日後には,創傷 の治癒およびコラーゲンゲルの消失が確認された。 このことからコラーゲンゲルが創面保護に有用であ る こ と が 示 唆 さ れ た。EGF を 添 加 し た 群 で は, 14日ではコラーゲンゲルがほぼ消失し,迅速な治 癒が観察された。また,免疫組織化学染色および mRNA の発現の結果において,7日目に発現した 細胞では,EGF 添加した群において,ゲル内へ侵 入 す るα-SMA,vimentin,keratin13,kerain19, AQP5に陽性を示す細胞すべてにおいて EGF を添 加してない群と比較して増加し,CD49f の発現の減 少がみられたことから EGF が唾液腺の外科的創傷 時に発現する幹細胞の分化を促進させることが示唆 された。 目的:薬物性口腔乾燥症の原因となる薬物は多く知 られているが,それぞれの発症メカニズムについて は明らかにされていない。これまでに我々は,薬物 性口腔乾燥症の発現メカニズムを探索したところ, 中枢型ベンゾジアゼピン受容体と末梢型ベンゾジア ゼピン受容体(PBR)が,唾液の分泌を抑制的に調 節する因子として唾液腺に存在すること,そしてこ れら受容体に対する内因性リガンドであるジアゼパ ムバインディングインヒビター(DBI)が唾液腺に 存在することを明らかにした。中枢神経系において は,DBI は星状細胞で下垂体アデニル酸シクラー ゼ活性化ポリペプチド受容体(PAC1-R)を介し て放出され,ミトコンドリアにある PBR に作用す る こ と が 知 ら れ て い る。ま た,PBR は コ レ ス テ ロールの輸送タンパク質(StAR)とステロイドの 合成酵素(CYP11A1)の産生に関与しており,プ レグネノロンの産生を促進することが報告されてい る。本研究の目的は,DBI の唾液腺での作用経路 と唾液分泌との関係を決定するために,DBI に関連 した遺伝子 PAC1-R,StAR,CYP11A1の mRNA の発現を調べることである。 方法:Wistar 系雄性ラット(7週齢)を用いた。 ラッ ト に ジ ア ゼ パ ム を 投 与 し た 時 の PAC1-R, StAR,CYP11A1の遺伝子発現と変動を調べた。 ジアゼパムの投与方法は,1回投与する単回投与群 と,14日間にわたって投与する継続投与群とに分け た。ジアゼパムの濃度は,1回投与ではラットの唾 液分泌抑制が生じない用量(ヒト治療量の最大量: 0.4mg/kg)を使用した。ジアゼパム最終投与の2 時間後と16時間後にラットの大脳皮質,耳下腺,顎 下腺,舌下腺を摘出し,遺伝子の変動を見るため RT-PCR 法による定量をおこなった。 結果および考察:単回投与群では,投与の2時間後 と16時間後ともに全ての唾液腺において遺伝子量に 変化は見られなかった。継続投与群では,最終投与 の2時 間 後 に 全 て の 唾 液 腺 に お い て PAC1-R, StAR,CYP11A1の遺伝子量が有意に増加した。 これらの結果により,DBI の関連遺伝子の唾液腺 での存在が証明された。ジアゼパムによりプレグネ ノロンの産生が促進され,ベンゾジアゼピン受容体 の感受性および機能が修飾され,唾液分泌の抑制 (ベンゾジアゼピン誘発性の口腔乾燥の発現)が起 こることが示唆された。