Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
味噌に関する研究(承前)―白味噌熟成中の有機酸組成―
Studies on "Miso".
Author(s)
豊島 治男(Haruo Teshima)
鹿児島 八代子(Yayoko Kagoshima)
Citation
研究紀要(SHOIN REVIEW)
,第 3 号:57-60
Issue Date
1962
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
URL
Right
緒
啄 噌 に 関 す る 研 究(承
前)
白味噌熟成中の有機酸組成
言
豊 島 治 男 ・鹿 子 島 八 代 子 味噌 の有 機酸 は 味 と香 に 重 要 な る影 響 を与 え,そ の 品質 を決 定 す る重 要 な 因 子 と な っ て い る。 著 者 はす で に市 販 味噌,1)各 種 味噌2)に つ い て その 有 機 酸 組 成 を検 討 し報 告 した が ,そ の 結 果 仕 込 型式 に よっ て有 機 酸 が 相 当 こ とな るこ とを認 め た。 この こ と は 原 料 及 び 熟 成 過 程 に よ る差 に よ る もの であ ろ う。 こ れ らの 関係 を 知 る 目的 で 本 報 に お い て は短 期 間 に 熟 成 が 完 了す る 特 徴 的 熟 成 過 程 を もつ 白 味噌 熟成 中 に お け る 有 機 酸 組 成 の 変 化 を確 か め た の で 報 告 す る 。 実 験 の 部 (1)仕 込 方 法 原 料 の 配 合 割 合 は 第1表 の通 りで,こ れ を直 径33cm,高 さ50cmの 樽 に 仕 込 む 。第1表
大 豆 米1食 塩 100回200紺20鯵 熟 成 中 の 温 度経 過 は 第2表 の通 りで あ っ た 。 第2表 熟成 日数ll 2 3 4 6 7819
10 品 温 ゜Cl27・ ・i24・0】24・0【25・Ol26.Oi25.025.5126.0」26.5 ② 有 機 酸 試 料 調 製 法 及 び 分 析 法 醸 造 会 社 よ り得 た 原 料 を 仕 込 み,そ の 樽 の 表 層 部 を 取 除 き,な る べ く中 央 部 を 選 ん で 試 料 を 採 取 す る 。 毎 日9時 に509を 採 取 し,直 に 水150m8を 加 え て 泥 状 と な し,ミ キ サ ー に て 摩 砕 し,こ れ を50m$の 水 で 洗 い 出 し,濃 硫 酸Zmeを 加 え て1時 間 浸 出 を 行 な う。 こ れ を 遠 心 分 離 し て 上 澄 液 を 集 め,有 機 酸 区 分 を 抽 出 し た 後 苛 性 ソ ー ダ に て 中 和 し,減 圧 濃 縮 しZ約70m`と な し,直 に 硫 酸 酸 性PH2.0にZエ ー テ ル 連 続 抽 出90時 間 行 っ た 。 抽 出 後 一 定 容 と な し 有 機 酸 定 量 の 試 料 と し た 。 有 機 酸 の 定 量 法 は,豊 島 ・上 田3)の 方 法 に よ っ て 行 っ た 。 即 ち 関 東 化 学 製 シ リ カ ゲ ル を 用 い,ク ロ ロ ホ ル ム ー ブ タ ノ ー ル 混 液 を ソル ベ ン トと し たPartitionChromatographyに よ っ た 。 尚 次 の 区 分 は 分 離 定 量 が 困 難 で あ っ た の で 各 々 次 の 様 に 表 し た 。 プ ロ ピ オ ン酸,レ ヴ ュ リ ン 酸 区 分 は プ ロ ピ オ ン 酸 と し て, ピ ル ビ ン酸 フ マ ル 酸,蟻 酸 区 分 は ピ ル ビ ン 酸 と し て, マ ロ ン 酸 ,ピ ロ グ ル タ ミ ン酸,ア コ ニ ッ ト酸 区 分 は ピ ログ ル タ ミ ン酸 と し て 表 す 。 (31一 般 分 析 法 試 料 の 一 般 分 析 は 固 体 試 料 と 浸 出 液 試 料 と に 分 け て 実 験 に 供 し た 。 即 ち 分 析 法4)に よ り 前 一57一者 は 全 窒 素(Kjeldah1法),水 分(空 気 浴 内 の 乾 燥 法),後 者 は ア ミノ態 窒 素(Formo1滴 定 法),還 元 糖(ベ ル トラ ン法),総 酸(苛 性 ソー ダ に て滴 定 し乳 酸 と して表 す),食 塩(ク ロ ム酸 液 指 示 薬 の 硝 酸 銀 滴 定)に つい ーて定 量 した。 2.実 験 結 果 及 び 考 察 f1)試 料 の一 般 分 析 結 果 は 第3表 に 示 す 通 りで あ っ た 。 第3表 一 般 分 析(%)
鞠如 数
1全 窒 素 ア ・ノ態窒素 遷 元 副 総 白 味 噌1 2 3 4, 6 7 8 9 10 酸i食 塩[水 分 1.85 1,83 1.82 1,82 1.83 i,82 1.82 is3 1,82 0.10 0.11 0.11 0.13 0.13 0.14 0.15 0.15 0.is 23.$0 23.82 24.23 25.26 25.26 25.28 2fi.32 28.40 28.44 0.51 a.52 0.G5 0.64 0.63 0.64 0.G3 0.62 0.63 5,91 5.93 6.04 6.05 6.12 G.19 6.27 6.32 6.32 41.75 ×1.72 41.66 ×1.18 40.70 40.75 ×0.72 40.65 40.51 ② 結 果 及 び 考 察 分 析結 果 よ り算 出 し た有 機 酸 組 成 は 第4表,第5表 の 通 りで あ っ た 。 第4表 味 噌 有 機 酸 組 成(mg/100g) 白 味 噌1 2 3 4 6 7 8 9 io カ プ ロ ン 酸 a.a O.3 i.o o.s 1.8 1.0 1.4 0.7 0.9 酪 酸 0.5 a.z a.7 Q.7 i.s 1.1 1.2 0.7 ro プ ロ ピ オ ン 酸 9 3 1 4 1 8 5 1 4 1 1 2 2 2 1 3 1 1 酢 酸 36.5 71.5 59.0 50.7 46.1 63.4 38.5 34.8 is.Z ピ ル ビ ン 酸 23.1 aa.3 25.8 31.7 30.0 39.3 22.9 io.s 9.8 ル タ ル 酸 α ケ ト グ 7 3 6 3 3 8 0 5 7 3 6 5 5 3 5 5 3 2 號 珀 酸 24.5 20.z 33.4 25.3 2Z.8 29.2 21.2 17.1 17.2 乳 酸 24.8 32.1 57.6 45.6 41.9 54.2 38.3 31.6 si.a ピ ロ グ ル タ ミ ン 酸 ai.8 21.4 38.8 26.5 29.2 36.5 29.6 25.1 29.8 グ ラ イ コ ー ル 酸 is.s 18.3 32.6 26.6 17.6 Z3.5 20.7 9.3 9.8 リ ン ゴ 酸 14.1 6.7 14.9 7.9 7.5 9.5 6.2 4.8 7.0 ク エ ン 酸 35.4 28.9 32.5 32.2 29.0 31.8 29.2 20.7 25.0 合 計 203.3 237.4 304.1 255.4 233.0 297.1 217.8 164.0 153.5 白 味 噌 中 に 含 ま れ る 主 要 な る 有 機 酸 と し て 酢 酸,號 珀 酸,乳 酸,ク エ ン酸 が あ げ ら れ,こ の ほ か 量 的 に 多 い も の と し て ピ ル ビ ン 酸 区 分,ピ ロ グ ル タ ミ ン 酸 区 分 が 考 え ら れ,前 報 の 白 味 噌 の 結 果 と 近 似 し た 値 を 示 し た 。 今 前 記 主 要 有 機 酸 に つ い て 考 察 す る と 酢 酸 は2日 目 に 味 噌 試 料 ユ009,中71,5mgに 達 し 前 日 の 約2倍 に 増 加 し,そ の 後 漸 減 し て8日 目 に は1日 目 と 略 同 量 の38.5mgと な っ た 。 乳 酸 は 漸 増 す る 傾 向 に あ っ て7日 目 を ピ ー ク と し て 減 少 し た 。 即1日 目 の24.8mgよ り漸 増 し て7日 目 に54.2mgに 達 し,8日 目 に38.3mgと な っ た 。 更 に10日 目 に お い て は31.Omgと な り,一 方 酢 酸 は18,0mgと な っ た 。 こ の 両 酸 の 割 合 は2日 目 に 酢 酸1乳 酸 の 比 は2:1で そ の第5表 味 噌 有 機 酸 組 成 比(%) 熟
嚢 \
屯
プ ロ ン 酸 酪 酸 プ ロ ピ オ議
酢 酸 ピ ル ビ ン 酸 1夢 あ レ 1L 酸 現1乳 冒 グ1珀
多
5
酸 酸 酸 グヲ
1 ル 酸 白 味 噌10.080260.91 20.140.080.55 310.3410.2110.72 40.230.280.92 60.770.780.91 710.3.10.3710.61 80.660.541.60 90.410.440.71 100.590.660.89 17.9邑11.鼻51.84 30.101]2.?712.64 19.4118.4711.83 19.85112.X312.09 19.78112.8711.39 2].35]3.3君1.94 17.7010.502.27 21.7:116.G212.1G 11.旺}窪6.351.76 12.{出[12。1710.7耳1 8,5013.549隔O呂 10.曾 呂18.9512.7" 9.暫217.84]0.3呂 9.8017.9Gl2.54 9曜8318,診 昌12.詫 鼎 9 10:lllll:6°`137Gl5:616G l1・1al20・1呂19・38 8.2G 7.ss JO.73 10.4 7.57 7.9D 9.51 5.E:` 6.諮 リ ン ゴ 酸 6.92 z.si 4.90 1' 3.21 3.20 2.87 3.03 4,5G ク 工 ン 酸 17.3 12.15 io.70 12.59 12.2 io.ss 13.42 ユ2.94 16.26 後 も酢 酸 の 割 合 が 高 く,8日 目に い た っ て1二1と な っ た。 そ れ 以 後 の 割 合 は 乳 酸 が 多 くな っ た 。 白味 噌 製 品 の 品 質 か ら して こ の酢 酸 と乳 酸 の 量 的割 合 は 白 味噌 熟 成 と密 接 な関 係 が あ る 様 で あ り,酢 酸:乳 酸 の比 が1:1と な っ た時 が 最 も良い 熟 成 時 期 で あ る と思 わ れ る。 ビル ビ ン酸,グ ラ イ コー ル 酸 も酢 酸 ,乳 酸 と略同 じ経 過を示 した。 號 珀 酸 は24.5mgよ り3日 目に33.4mgと な り,や や増 加 した が,あ ま り大 きな動 きは 見 ら れ な か っ た。 ク エ ン酸 は35.4mgよ り減 少す る傾 向 を示 し,8日 目に は29.2mgと な っ た。 こ の 様 な傾 向 は 他 の 白味 噌 仕 込 試 験 に おい て も認 め られ た。5)し たが っ て 白味噌 熟 成 過 程 中 の 有 機 酸 の 変 化 は,上 述 の 様 な傾 向 を示 す もの と推 察 され る。 味 噌 熟 成 に 関 与 す る微 生 物 と し ては 好 気 性 細 菌,嫌 気 性 細 菌,酵 母,徽 等 の 関 与 が 考 え ら れ る が その 中 前 の3つ の微 生 物 が実 際 に 作 用 し てい る と 考 え ら れ る。 す で に好 井 氏6)茂 木 氏,7) 薄 田 氏8)等 も微 生 物 の動 態 に つ い て報 告 され てい るが 明確 な結 論 は 出 され てい ない 。 こ の 有 機 酸 の変 化 即 ち ク エ ン酸 リン ゴ酸 な どの 減 少 及 び 酢 酸,乳 酸 等 の 変 化 か ら考 え て細 菌 の作 用 が 味 噌 熟 成 中 に行 な わ れ てい る こ と は 明 らか で あ るが,そ の変 化 が 相 当緩 漫で あ る こ と か ら 好 気 性 細 菌 或 い は嫌 気 性 細 菌 が ど の様 に 作 用 し てい る か判 定す るこ とは む つ か しい よ う で あ る 。, 味 噌 の熟 成 過 程 は 相 当 嫌 気 状 態 に 保 た れ て い る故 微 生 物 の作 用 も抑 制 さ れ た形 と な り,有 機 酸 の 変 化 が 極 め て緩 慢 で あ る の も当 然 と 言 え よ う。 した が っ て 味 噌 製 品中 の有 機 酸 は原 料 で あ る 大 豆,米 麹 に 由来 す る仕 込 当 初 の有 機 酸 組 成 と大 き な差 が な く,し たが っ て原 料 中 に含 ま れ る 有 機 酸 が 味 噌 の 品 質 に 及 ぼ す 影 響 は 大 きい もの で あ る。 要 約 白 味 噌 は 糖 分 多 く熟 成 の 速 い 味 噌 で あ る。 特 に比 較 的 気温 の 高 い 時 期 に仕 込 後10日 間 の有 機 酸 組 成 の 変 化 を確 か め た 結 果 は 次 の 様 で あ っ た。 一59一口1白 味噌 中 に 含 まれ る主 要 な 有 磯 酸 とLて 酢酸,瑳 珀 酸.乳 酸,ク エ ン 酸 が あ げ ら れ 劇報 の紬 果 と一'致した 。
12}酢 酸 は2日 團に 最 高値 を示 した擾 滅 少 し て 呂1:1目に 乳 酸 と略 岡 量 と 毎 ウ た4乳 酸 は £ 日 目 よ り漸 増 し て301ヨ ∼7日 日1よ略 洞 じ値 を示 し,f凹 舜よ むや や 滅 少 して9口 目に 詐醗 と略 同皿 とな り.⊥O阻llに は 酢 酸 よ り多 くな 弓 たi・酢 酸 と乳 酸 の_i"GがLを 規 定 し得 る様 であ
るc 樹 クエ ン酸,リ ン ゴ酸 は 漸 減傾 向 を示 し,ビ ル ビ ン酸,グ ラ イ コー ル 酸 は 酢 酸,乳 酸 と略 同 じ経 過 を示 し た。 {4)琥珀酸 は あ まり 大 き な変 化 を 示 さな か っ た昏 151有 慨酸 の 変 化 は,味 噌 瓢誠 中 極 め て緩 慢 であ る た め,漂 料 で あ る 大 豆.米 劉 に 含 まれ る 有 槻 酸 が 脚1曽製 品 に も大 きな影 縛 を 与 え る4 御 指榔 を賜 雫 た大 阪 大 学 教 授 壽 本 四郎 先 生 に 探謝 致 し ます0 文 ln豊 島 沿 り]'_ヒ田」薯後蔵 倒yr' {31''" 固 日宗 葉学 会 ㈲ 豊 塒 治鉗 ・上 田隆 蔵 樹 好 井 久 雄 17,茂 木 正 利 ・中 島 茂 次 團 献 簸1誌 評.娼 上(【9駐9) 〃3ア,重37(ユ 甘5≡〕) 曜 銘,230(ユ 駐暗o) 衛 生il式験 法 蝕二解P君 ⊥5 大 阪 確 造 学 会 第11回 藷 演 会(1臼5臼,1i) 味1四技 術Ho.g,No,10(1954) 醸 学nを0,107,15且,2厨(1且 昭) 薄 田 旦 ・益 子 厨 之 助 ・松 旭 寅 之 助1餓 工 誌38,1(196D