睡眠の意義と睡眠障害 講演要旨 愛知県立城山病院 副院長 粉川 進 平均的な睡眠時間は約8時間なので、ヒトは人生の3分の1もの長い時間を眠って過ごす。 人生を 80 年とすれば 26.7 年、日数にすれば 9862 日間も眠らねばならない。なんとも膨大 な時間を、意識をなくして何もせずに過ごしているものである。時間がもったいないとしか いいようがない。 何故こんなにも眠らないといけないのだろうか。大きな謎である。睡眠の目的については 諸説あるが、今なお決定的なものはない。 ヒトは何故呼吸するのか、何故食べるのか、何故生殖行為をするのか、これらの行動の目 的は明らかである。生命の維持、種の保存に必要不可欠のものであり疑問の余地はない。言 うまでもなく、呼吸しなければすぐに死が訪れ、食べ物を摂らなければ衰弱して死んでしま う。生殖行為がなければ絶滅してしまう。 一方、眠らないでいればどうなるであろう。不快になり、眠くなり、疲労感が強くなり、 活動性が落ち、とても健康感が損なわれてしまう。不眠のつらさは耐え難いものであり、だ からこそ不眠症は一つの病気と考えられ、膨大な量の睡眠薬が処方されている。このような 事実は睡眠がヒトにとって必要な行動であることを明らかに示しているが,しかしいったい 何のために私たちは毎晩毎晩眠って過ごすのであろうか。 本講演では、ヒトをはじめとする動物の睡眠の目的について概説する。誰でも思いつく睡 眠の目的は、疲労回復、快楽などであろう。また、覚醒時に学習した内容についての記憶を 強化固定するということも睡眠の機能として喧伝されたこと時期もあった。本講演では、こ れらの目的について述べると同時に、睡眠の不動化説(不動化仮説とも言う)について詳し く述べる。 睡眠の不動化説とは、まとめて言えば,「ヒトをはじめとする動物は生命の維持や種の保 存に必要な行動を毎日覚醒時に行うが、それには必ずしも一日 24 時間は必要とせず、24 時 間のうち多少時間が余ってしまう。その余った時間を、積極的に意識を失ってじっとして過 ごすことが、生命の維持や種の保存にとってもっとも安全で効率的であり、のために睡眠と いう行動が進化した。」というものであり、1980 年代にオーストラリアの睡眠学者である、 レイ・メディスが発表したものである。これだけの説明では何のことか分かりにくいかと思 われるが、講演では様々な事実を挙げてわかりやすく不動化説について説明したい。 ひとたび不動化説を理解し、その意味を受け入れることができると、睡眠についての見方 が相当に変化するとおもわれる。不動化説を十分に理解していただいた上で、代表的な睡眠 障害について概説する。代表的な睡眠障害として、ナルコレプシー、睡眠呼吸障害、レム睡 眠関連行動障害などを取り上げ、不眠症と睡眠薬についても述べたい。
睡眠の意義と睡眠障害
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