2011 年度 卒 業 論 文
プロジェクトイテレーション型教育が
学生の認識するゲーム制作工程に与える影響の測定
指導教員:三上 浩司 講師 渡辺 大地 講師メディア学部 ゲームサイエンスプロジェクト
学籍番号
M0108451
薬師寺 悟
2011 年度 卒 業 論 文 概 要 論文題目
プロジェクトイテレーション型教育が
学生の認識するゲーム制作工程に与える影響の測定
メディア学部 氏 指導 三上 浩司 講師 学籍番号 : M0108451 名 薬師寺 悟 教員 渡辺 大地 講師 キーワード ゲーム教育、教育効果、マイルストーン、ゲーム制作工程 Game Jam、KIGGJ、プロジェクトイテレーション型教育 近年デジタルゲームの制作に関する関連技術や知識領域といった分野は、高度かつ広 範になってきた。そのため、各教育機関は優秀なゲーム制作者を輩出すべく、新たなカリ キュラムの構築を模索している。そんな中、Game Jam という取り組みが注目されている。Game Jam では、参加者は 企画から完成、評価までのゲーム制作の一連のプロセスを短時間で経験することが可能で ある。これを受けて大学等の教育機関では、Game Jam を応用したより実践的な教育ス タイルを模索している。Game Jam を応用した教育スタイルの詳細な影響が明らかにな れば、従来の教育スタイルの長所に Game Jam を応用した教育スタイルの長所を組み合 わせるといった指針を得ることが可能となり、今後のゲーム教育において有意義である。 そこで本研究では、Game Jam の特徴の 1 つである企画から完成、評価までのゲーム制作 の一連のプロセスを短時間で経験できる点に着目した。 本研究は、Game Jam を応用した教育スタイルが、受講者の認識するゲーム制作工程に どの様な影響を与え得るかを測定した。そして、測定の結果に対して分析を行うことで、 その効果の詳細を明らかにした。まず、Game Jam を応用した教育を受講する 45 名の学 生に対して、認識の変化を測る調査を継続的に行った。次に、Game Jam を応用した教 育が、学生の認識するゲーム制作工程に対してどの様な影響を与え得るか、また受講者の ゲーム制作工程に対する認識が変化し得るかについて分析を行った。 その結果、Game Jam を応用した教育スタイルが、エフェクトや効果音といった主に ゲームにおける演出に関わる工程や、ゲームデザインやプロトタイピングといったユー ザーのゲームプレイの仕組みに関わる工程において、学生に強い影響を与え得ることが明 らかになった。具体的には、比較的多くの学生が、それらの工程に対する重要性の認識を 強め、理解が進むという傾向を持つことが明らかになった。そして、Game Jam を応用し た教育を受けた学生が、ゲーム制作工程に対する重要性の認識を、より全般の工程に対し て持つ様になる可能性があり、またゲーム制作に対する自身の能力を、より理解を広めた と考える様になる可能性を持つことが明らかになった。
目 次
第 1 章 はじめに 1 1.1 本研究の背景 . . . . 1 1.2 ゲーム教育のスタイル . . . . 4 1.3 本研究の目的と結果 . . . . 5 1.4 本論文の構成 . . . . 6 第 2 章 PI 型教育について 7 2.1 PI 型教育と従来型の教育の相違点 . . . . 7 2.2 PI 型教育の例 . . . . 8 第 3 章 ゲームの制作とその工程について 11 3.1 一般的なゲーム制作のプロセスと制作者の役割 . . . 11 3.2 ゲーム制作に用いる関連技術と知識領域 . . . 15 第 4 章 継続的な影響の測定による影響分析手法について 17 4.1 継続的な意識調査による影響分析手法の概要 . . . 17 4.2 分析に用いるゲーム工程のリストアップ . . . 19 4.3 各工程の認識の変化を評価するための指標の設定 . . . 22 4.4 2 つの測定データを比較した変化の意味 . . . . 23 4.5 2 つの測定データを比較した変化の分析方法 . . . . 24 4.6 重要度と理解度の分散値の変化の意味と集計方法 . . . 25 第 5 章 PI 型教育の影響の測定と分析による考察 27 5.1 KIGGJ で実施した意識調査の概要 . . . . 27 5.2 1 度目の比較データにおける傾向の分析 . . . . 29 5.2.1 1 度目の比較データにおける重要度の変化の傾向 . . . . 30 5.2.2 1 度目の比較データにおける理解度の変化の傾向 . . . . 33 5.2.3 1 度目の比較データのまとめ . . . . 35 5.3 2 度目の比較データにおける傾向の分析 . . . . 36 5.3.1 2 度目の比較データにおける重要度の変化の傾向 . . . . 37 5.3.2 2 度目の比較データにおける理解度の変化の傾向 . . . . 39 5.3.3 2 度目の比較データのまとめ . . . . 425.4 2 度の比較データによる傾向の変化の分析 . . . . 42 5.5 分散値の変化による傾向の分析 . . . 45 5.6 各分析を考察した結論 . . . 47 5.6.1 各分析結果のまとめ . . . 47 5.6.2 結論 . . . 48 5.6.3 本手法による学生への影響についての補足 . . . 50 5.6.4 PI 型教育を受けた学生の GGJ における調査とまとめ . . . . 51 第 6 章 まとめ 54 謝辞 57 参考文献 58 付録 A 章GGJ の測定データによる PI 型教育の影響の分析と考察 61 A.1 GGJ で実施した意識調査の概要と留意点 . . . . 61 A.2 第 3 回と GGJ の比較データにおける傾向の分析 . . . . 62 A.2.1 第 3 回と GGJ の比較データにおける重要度の変化の傾向 . . 63 A.2.2 第 3 回と GGJ の比較データにおける理解度の変化の傾向 . . 66 A.3 第 3 回と GGJ の比較データのまとめ . . . . 67
第
1
章
はじめに
1.1
本研究の背景
1983 年に任天堂がファミリー・コンピュータを発売してから 28 年、日本におい てデジタルゲーム産業はエンターテイメント産業の重要な一端を担うまでに成長 した [1]。ゲームを制作する技術も大きく進化を遂げており、多くのゲームが高性 能な 3D グラフィクスやリアルタイムでの物理シミュレーションなどを標準的に扱 うようになった [2][3]。また、一方でゲーム産業を取り巻く環境は変化した。その 最たるものが、スマートフォン等のモバイル機器の普及による、モバイルゲーム、 ソーシャルゲーム等のビジネスモデルの出現である。これらの流れを受け、ゲー ム制作に関する技術分野と知識領域は年々高度かつ広範なものになってきている [4]。 ゲーム制作に関する技術分野と知識領域が高度かつ広範になったことで、現在 のゲーム制作は専門的な能力を持った制作者を多く要するものとなっている [5]。 その結果、分業化の弊害とも言える制作チームの大人数化、及び専門分化による 連携の弱化という問題を抱えている。これは、制作チーム内の各制作者が分野ご との役割に分かれて個々にゲームの部品を制作するため、そのゲームの全体像を 把握する事が困難になっているという問題である。この問題はプロのゲーム制作 企業でも起こり得る深刻な問題である [6]。また、ゲーム制作に関する技術と知識 の複雑化への対応は、人材の育成の面でも不可避の問題である。ゲーム制作に関する技術分野と知識領域の複雑化に対し、国際的なゲーム開発者 団体である Internatinal Game Deveropers Association(通称 IGDA) が、情報整備の 取り組みを行っている。その取り組みが、教育機関に対して編纂している「IGDA カリキュラムフレームワーク」[7] である。IGDA カリキュラムフレームワークは、 高度かつ広範に及ぶゲーム制作に関する技術や知識を網羅的に取り上げたもので ある。IGDA は、IGDA カリキュラムフレームにてゲーム制作に関する技術や知識 を大きくわけて 9 つの分野に分類し整理している。そして、IGDA は教育機関に対 しこのようなドキュメントを用意することで、カリキュラム構築の際の指針とし て利用できるようにし、ゲーム教育の高度化を支援している。 一方で、ゲーム制作者に対する取り組みとして挙げられるのが、Game Jam と いう取り組みである。Game Jam とは、ミュージシャン達が集まって即興的に演 奏するという音楽の Jam Session と同じような考え方で、「ゲーム制作の技術と知 識を有する数名がその場限りで集まり、短い時間でゲームを 1 本作る」というもの である。Game Jam は元々、ゲーム制作者が業務上の役割に囚われず、自由な発想 でゲーム制作を行うというイベントとして始まったものである。その他の特徴と して、ある程度の失敗やミスを許容した上で制作を行い、その中で多くの人と評 価し合う点が挙げられる。これをワールドワイドに展開できるようにしたものが、 IGDA が主催する Global Game Jam(以下 GGJ)[8] であり、この開催通じて Game Jam という考え方が広く周知されることとなった。GGJ では企画から完成、評価 までの一連のプロセスを経験できる。そのため参加者は、細分化され全体像が見 えにくくなった現代のゲーム制作の全体像を、実体験をもって知ることができる。 このことから、分業化の弊害といった問題を打破する可能性があるとして期待さ れている [9]。Game Jam は 2009 年より毎年開催されており、その規模は年々拡大 している。このように、Game Jam という取り組みは業界内で 1 つの潮流となっ ている。 現在、大学や専門学校といった各教育機関は、より専門的かつ実践的なゲーム 制作者を輩出すべくゲーム教育に関するカリキュラムを模索している [10][11]。そ
の教育機関においても、Game Jam はその教育的側面に高い関心を集めている。 Game Jam の教育的側面とは、ゲーム制作の一連のプロセスが体験できることや、 状況に応じたコミュニケーション能力を身につけられること等である。Game Jam のように短時間で行うゲーム制作は、そのマネジメントや高いスキルと経験を要 求するものである。その結果、参加者は自らの持つゲーム制作の技術や知識の活か し方に気づくことができるといったことも教育的側面の 1 つとして挙げられる。関 心の高さを示す具体的な例として、文部科学省が、東京工科大学の実施する Game Jam スタイルの教育である「産学連携による実践型人材育成事業 −専門人材の基 盤的教育推進プログラム− ゲーム産業における実践的 OJT/OFF-JT 体感型教育 プログラム」[12] を、現代的教育ニーズ取組支援プログラム (通称現代 GP)[13] と して採択していることが挙げられる。また、Game Jam では無いが、類似する取 り組みを企業が行っていることからも、短期間でのゲーム制作の関心の高さが伺 える [14]。 Game Jam を応用した教育スタイルは、長期間の制作期間を必要とする従来の 教育スタイルと比べて短期間の制作演習を行うものである。また、専門的な知識 を深めることよりも、ゲーム制作のプロセスの全体像、及び短期制作に必要とさ れる能力を学生に知ってもらうことを目的としている。現在明らかになっている Game Jam を応用した教育スタイルの効果は、ゲーム制作における「様々なゲー ム制作能力を持った制作者との連携」「コミュニケーション能力」「スケジュール意 識」といったチーム制作における個人能力の向上が挙げられる [12]。しかし、「ど の様な技術分野や知識領域においてその影響を発揮するのか」「プログラマーやグ ラフィッカーなどの役割の違いで影響に差はあるのか」といった具体的な評価につ いては不明な点が多い。そのため、Game Jam を応用した教育スタイルは、導入 を検討する際に従来の教育スタイルと比べての向き・不向きの判断が困難である。 これらの具体的な評価が明らかになれば、従来の講義や演習といった教育スタ イルと比べての Game Jam を応用した教育スタイルの向き・不向きを判断するこ とが容易となる。つまり、従来の教育スタイルの長所に、Game Jam を応用した
教育スタイルの長所を組み合わせるといった指針を得ることが可能となり、今後 のゲーム教育において有意義である。
1.2
ゲーム教育のスタイル
本研究を述べる上で、ゲーム教育のスタイルについて明確に分ける必要がある ため、本節で定義する。現在ゲーム教育を行う際の基本的なスタイルは座学スタイ ルと演習スタイルの 2 つがある。ゲーム教育のカリキュラムを構築する際は、これ らのどちらか、あるいは両方を組み合わせた上で行うことが一般的である。ゲー ム教育における座学スタイルは講義形式の教育であり、主にゲーム制作に関する 教養を身につけさせる際に用いるものである。ゲーム教育における演習スタイル は実技形式の教育であり、主に実際の制作技術を身につけさせる際に用いるもの である。 Game Jam を応用した教育スタイルは演習スタイルの一種である。演習スタイ ルの教育は異なる例がいくつかあるため、座学スタイルを含め、これらの分類に ついては次に示す。 1. 座学スタイル 教員が技術・知識について説明し、それを受講者が聞く形をとるものである。 2. 演習スタイル-個人課題型 課題型は、出された課題を受講者が個人で解いていく形をとるものである。 3. 演習スタイル-グループワーク型 グループワーク型は、出された課題を受講者がグループで解いていく形をと るものである。 4. 演習スタイル-Game Jam を応用した教育スタイル Game Jam スタイルは、比較的短期間でゲーム制作グループワークを完了 し、チーム間による相互評価を行うものである。Game Jam スタイルの教育は、演習スタイルの内のグループワーク型に近いも のであるが、比較的短期間で 1 つのゲーム制作グループワークを完了し、それを 繰り返す点で、従来のグループワーク型と異なる。また、Game Jam そのものと 相違する点として、毎回の制作の結果を学生にフィードバックし、その評価を踏 まえたうえで次のゲーム制作グループワークを行うという点が挙げられる。以降 は、Game Jam を応用した教育スタイルをその特徴を踏まえ「プロジェクトイテ レーション型」、または「PI 型」と呼称する。なお、イテレーションとは反復の意 であるが、プロジェクトにおける反復とは一般的にはプロジェクト内で反復する ことを指すものである。そのため、プロジェクトそのものを繰り返すプロジェク トイテレーション型教育とは反復の意味合いが異なる。本研究では差別化の意味 をこめてイテレーションという言葉を用いる。
1.3
本研究の目的と結果
本研究の目的は、PI 型教育の効果の詳細を明らかにすることである。具体的に は、PI 型教育がゲーム制作の一連のプロセスにおいて、「受講者の認識するゲーム 制作工程に対してどの様な影響を与え得るか」、また「受講者のゲーム制作工程に 対する認識のバランスがどの様に変化するか」について明らかにする。本研究では、PI 型教育の効果の詳細を明らかにするにあたり、Game Jam の特 徴の 1 つである企画から完成、評価までのゲーム制作の一連のプロセスを短時間 で経験できる点に着目した。そして、「PI 型教育を受ける受講者が認識するゲーム 制作工程」への影響を測定し、分析することで明らかにすることが可能であると 仮定した。PI 型教育による影響の測定については、PI 型教育を受ける学生に対し 継続的な意識調査を行う手法をとった。まず、工程ごとの影響を測るため、一般的 なゲーム制作のプロセスを例にゲーム制作工程をいくつかに分割した。次に、各 工程に対する認識の変化を測る調査を、PI 型教育を受ける東京工科大学と日本工 学院八王子専門学校、日本工学院専門学校の計 45 名の学生に対して継続的に行っ た。最後に、調査により得られたデータを基に、PI 型教育の効果の詳細について
分析と考察を行った。 その結果、PI 型教育が、エフェクトや効果音といったゲームにおける演出に関 する工程や、ゲームデザインやプロトタイピングといったユーザーのゲームプレ イの仕組みに関わる工程において、学生に強い影響を与え得ることが明らかになっ た。そして、PI 型教育を受けた学生が、多くの場合において、ゲーム制作工程に 対する重要性の認識をより全般に対して持つ様になる可能性があり、またゲーム 制作に対する自身の能力をより理解を広めたと考える様になる可能性を持つとい うことが明らかになった。
1.4
本論文の構成
本論文の構成は全 6 章からなる。まず本章で研究の概要と結果について簡単に 述べる。次に第 2 章で PI 型教育の詳細と事例について述べ、第 3 章で本研究で扱 うゲーム制作工程と、関連技術と知識領域の概要について述べる。続く第 4 章は PI 型教育が学生に与える影響の測定手法について述べ、第 5 章では計 3 回の制作 分の測定データを用いた分析の結果と考察について述べる。最後に第 6 章で、本 研究の成果をまとめ、本研究を振り返っての反省点を述べる。また、巻末に付録 として、PI 型教育を受けた学生における、本研究の手法を用いた GGJ の影響につ いての分析と考察を添付する。第
2
章
PI
型教育について
本研究は、ゲーム教育における PI 型教育の影響の測定を研究対象に選んだ。本 章では、まず PI 型教育の従来型教育との相違点について述べ、次に PI 型教育の 具体例とその影響について述べる。2.1
PI
型教育と従来型の教育の相違点
本研究で研究対象としている PI 型教育は、実技形式で行うグループワークの一 種である。PI 型が従来のグループワーク型と最も異なる点は、想定する学生の成 長タイミングである。従来のグループワーク型が、授業期間の 1 ターム中を通し て 1 度の制作を行うものであるのに対して、PI 型は 1 ターム中に複数の制作を繰 り返し行うものである。これは、制作中の成長よりも、制作の完了や評価、反省に よる成長を重視するものである。その成長タイミングのイメージを図 2.1 と図 2.2 に示す。 図 2.1: 従来のグループワーク型教育における学生の成長タイミング図 2.2: PI 型教育における学生の成長タイミング ゲーム制作は、初学者であってもコンピューターの知識や素材制作用のソフト ウェアの扱いを必要とするため、教育に多くの時間を要する。制作期間が長い従 来型の演習は、受講者に専門的な能力を時間をかけて教えること等を目的とした 教育スタイルである。受講者は、制作手法の 1 つ 1 つを学びながらゲーム制作の 完了という目的に向かう過程で自身の能力を高めて行くことになる。しかし、制 作中に失敗した点や改良の余地のある点などは、制作途中では判断が困難であり、 極端な場合間違ったまま長期間の制作を続けなくてはならないことがある。こう した点の多くは、制作を完了し、振り返ることで初めて理解される可能性が高い。 そのような点に着目した結果、PI 型教育は、従来型の教育と比べてイテレーショ ンを重視するものとなっている。
2.2
PI
型教育の例
現在、東京工科大学 [15] が正式なゲーム教育カリキュラムとして PI 型教育を行っ ている。これは Katayanagi Institute Global Game Jam(以下 KIGGJ)[16] という 名前で行われており、東京工科大学メディア学部の学生のほか、日本工学院専門 学校の学生が参加するものである。 KIGGJ は、GGJ を想定したトレーニングとして行い、実制作時間も GGJ に倣 い 48 時間を想定している。更に、各制作回で特徴的なテーマ、いわゆるお題に沿っ てゲーム制作を行う点も GGJ を想定している。実際には、制作期間として制作ご とに約 1ヶ月の期間を設け、3ヶ月で 3 回のゲーム制作を行う。KIGGJ では、ゲーム制作と評価を短期間で繰り返すことによる自発的な成長に主眼を置く。その詳 細な内容については、東京工科大学が「産業における実践的 OJT/OFF-JT 体感型 教育プログラム 報告書」[12] にまとめている。東京工科大学は、KIGGJ の教育効 果を測るため、2010 年 9 月∼2011 年 1 月までに受講した学生に対し、GGJ に関す る学生の意識調査をアンケート形式で学生に実施した。アンケートは第 1 回制作 と GGJ 直前である第 3 回制作、及び GGJ 終了時に行った。アンケートの質問項 目は次の 4 点である。 • 自身の力を 100%発揮できたか • 48 時間は長いと思うか (長かったか)
• Global Game Jam でどんなゲームが作れると思うか (作れたか) • Global Game Jam で重視することは何か (何だったか)
このアンケートの結果については「産業における実践的 OJT/OFF-JT 体感型 教育プログラム 報告書」[12] より引用し、次の図 2.3 に示す。
今までのチーム制作で自身の力を 今までのチーム制作で自身の力を 今までのチーム制作で自身の力を 今までのチーム制作で自身の力を100%発揮でき発揮でき発揮でき発揮でき たか たかたか たか できた まあまあできた あまりできなかった まったくできなかった チーム制作で自身の力を チーム制作で自身の力を チーム制作で自身の力を チーム制作で自身の力を100%発揮できたか発揮できたか発揮できたか発揮できたか できた まあまあできた あまりできなかった まったくできなかった 制作時間 制作時間 制作時間 制作時間48時間は長いと思いますか時間は長いと思いますか時間は長いと思いますか時間は長いと思いますか かなり長い 長い 短い かなり短い 制作時間 制作時間 制作時間 制作時間48時間は長かったか時間は長かったか時間は長かったか時間は長かったか かなり長い 長い 短い かなり短い 本番でどんなゲームが作れると思いますか 本番でどんなゲームが作れると思いますか 本番でどんなゲームが作れると思いますか 本番でどんなゲームが作れると思いますか 素晴らしいゲーム 普通のゲーム 何かが足りないゲーム 時間が足りず完成しな い 本番でどんなゲームが作れたか 本番でどんなゲームが作れたか 本番でどんなゲームが作れたか 本番でどんなゲームが作れたか 素晴らしいゲーム 普通のゲーム 何かが足りないゲーム 時間が足りず完成しな い 本番で重視することは何ですか 本番で重視することは何ですか本番で重視することは何ですか 本番で重視することは何ですか ゲームの質 内容と質のバランス チームワーク 自分の力を100%発揮 する 斬新さ・メッセージ性 本番で何が最も重要だと感じたか 本番で何が最も重要だと感じたか 本番で何が最も重要だと感じたか 本番で何が最も重要だと感じたか ゲームの質 内容と質のバランス チームワーク 自分の力を100%発揮 する 斬新さ・メッセージ性 図 2.3: PI 型教育の教育効果に関する図 「産業における実践的 OJT/OFF-JT 体感 型教育プログラム 報告書」における教育効果のアンケートデータ この図は、左のグラフが KIGGJ 第 1 回目の制作後の受講者の回答であり、右の グラフが GGJ の制作後の回答である。東京工科大学は、このアンケートの結果か ら KIGGJ に参加した学生の多くが、スケジューリング能力の向上と、高度なコ ミュニケーションスキルを獲得した効果があったと報告している。
第
3
章
ゲームの制作とその工程について
本章では、一般的なゲーム制作のプロセスとゲーム制作者の役割とについて述 べる。次にゲーム制作に用いる関連技術と知識領域の概要について述べる。3.1
一般的なゲーム制作のプロセスと制作者の役割
現在のゲーム制作は段階的に行われることが一般的である。ただし実際のプロ セスについては、制作するゲームの内容や制作する組織などのチームに応じて異 なるため、一様ではない。ただし大枠に限っていえばゲーム制作のプロセスはあ る程度共通している。一般的なゲーム制作のプロセスを、CESA[17] は次の表 3.1 と図 3.1 にように示している。 表 3.1: 「CESA ゲーム白書 2005 年度版」におけるゲーム制作工程のプロセス 1. 企画書を作成し、企画会議で承認をうける 2. 仕様書を作成し、基本的なゲームシステムを設計する 3. メインプログラム・原画・音楽・シナリオなど、各パートの作成を開始 4. 各パートのデータを組み合わせて、α版を作成する 5. 作業をさらに進め、β版を完成させる 6-1. デバッグ作業を開始する 6-2. CERO とハードウェア会社によるレーティングと審査を受ける 7. マスターアップし、ハードウェア会社へ納品する図 3.1: 一般的なゲーム制作のプロセスの図「CESA ゲーム白書 2005 年度版」にお けるゲーム制作工程のプロセス
ゲーム制作を行う際の最初の段階は、多くの場合そのアイデアやコンセプトを まとめた企画書を作成することである。企画書の内容は、企画の概要を説明する 文章だけでなく、キャラクターのデザインや画面のイメージなど、そのゲームの 内容を分かりやすく説明するための情報を記述する。場合によっては、企画書の 前段階としてアイデアだけをまとめた簡易版である A4 用紙 1 枚から 3 枚程度のコ ンセプトシートを作成することもある。企画書は企画会議でゲームとして制作す るかどうか検討される。そのプロセス承認を得たものが次の段階である仕様書の 作成に進む。 仕様書は、ゲームの操作方法やルールなど、そのゲームを制作するプロセス必 要な要素を記述するものである。これは外部仕様書とも呼ばれるほか、海外では 企画書と併せて Game Design Document(通称 GDD) と呼ぶこともある。一方でシ ステム設計は、仕様書で定めた内容をプログラム上で実装するための設計作業で ある。システム設計書の内容は、プログラムを書くファイルの構成やプログラム の処理のプロセスなどの設計を含む。これは内部仕様書とも呼ばれるほか、海外 では GDD と対になる書類として Technical Design Document(通称 TDD) と呼ぶ こともある。実際の仕様決定のプロセスは、仕様が決定した部分の制作と同時進 行で行われることが多い。またシステムとして完成した部分が後から変更される こともある。 表 3.1 や図 3.1 が示すのプロセスでの、3 に入る前後のタイミングで、アクショ ンゲームであればキャラクターの挙動だけを実装する等の簡易なデモプログラム を制作することがある。これはプロトタイピングと呼び、その成果物をプロトタ イプと呼ぶ。プロトタイプは最終的な成果物とは別に制作するものである。主に 重要な仕様に関する事前検証や、実際にプレイしないと評価が不可能な部分の確 認用に制作するものであり、場合によってはコンセプトシートの代わりに用いる こともある。 各パートの構築は各種素材を制作していく段階である。CESA による分類を参 考に、各パートを大別してプログラム、シナリオ、グラフィクス、音楽の 4 つに分
類する。原画をグラフィクスとしたのは、近年はゲーム中に 3D グラフィクスを用 いるため、原画という呼称が適当ではないからである。各パートのおおまかな内 訳の通りである。また、その制作を担当する制作者の呼称を述べる。 プログラム 主にゲームの動きを作るパートである。また、他のパートで制作された素材 のゲームプログラム中への実装や、画面効果や物理演算などのプログラムを 行うパートでもある。このほか、制作に使うツールの制作を行うこともある。 このパートを主に担当する制作者の呼称がプログラマーである。 シナリオ 主に物語に基づき詳細なシナリオやゲーム中の演出であるイベントを制作 するパートである。このパートを主に担当する制作者の呼称がシナリオライ ターである。 グラフィクス (原画) 主に 2D のイラストやインターフェースなどの画像素材や、3D のキャラク ターモデルなどの素材を制作するパートである。また、3D キャラクターの モーションを制作するパートでもある。このパートを主に担当する制作者の 呼称がグラフィッカーである。 音楽 主にゲーム中の音楽である BGM や、効果音である SE の制作を行うパートで ある。このパートを主に担当する制作者の呼称がサウンドデザイナーである。 この他に、ゲームの仕様の決定やパート間での素材の受け渡しなどを担当する パートがあり、そのパートを担当する制作者の呼称がプランナーである。軽度の 作業については、プランナーが行う場合が一般的である。プランナーが行う具体 的な作業は、仕様に関する具体的なアイデアの提示、及びイベントシーンの実装 などの軽度のプログラムやグラフィクス素材の調整等である。
ゲーム制作は成果物を段階的に制作することで進行するものであり、その最初 の段階はα版の作成を行うことである。α版とは、ゲームとして成り立つ必要最 低限の素材などを備えたプログラムである。α版における各素材は必ずしも完成 品である必要はなく、多くの場合が未完成である。 次の制作の段階がβ版制作である。β版とは、完成予定のゲームに必要な要素 をすべて含んでいる内部評価用のプログラムである。しかしデバッグやテストプ レイが不十分であり、バグが残っている可能性を有するものである。 デバッグはプログラムのバグを修正する段階である。またゲーム制作では、問題 のある表現面の最終的な修正もここで行う。ゲームのバランス調整や内容のチュー ニングはデバッグで行われることもあるが、近年ではレベルデザインと呼び比較 的に制作の早期から行われることが増えてきている。 マスターアップは最終的な段階であり、完成版としてゲーム制作を完了するこ とを指す。 ゲーム制作工程のプロセスは、このように段階的に行うことが一般的である。
3.2
ゲーム制作に用いる関連技術と知識領域
近年、コンピューターの性能やソフトウェア技術の向上により、ゲーム制作に 用いる関連技術と知識領域は広範になってきている。これらについて、IGDA が 「IGDA カリキュラムフレームワーク」[7] をまとめている。これは、広範にわたる ゲーム制作に必要な関連技術と知識領域を網羅的に扱ったものである。また、教 育機関などがゲーム教育のカリキュラムを構築する際の指針として活用できるこ とを目的として編纂しているものである。IGDA はゲーム制作に用いる関連技術 や知識領域を、次の 9 つの分野にまとめている。 1. 批評的なゲーム研究 2. ゲームと社会 3. ゲームデザイン4. ゲーム・プログラミング 5. ビジュアル・デザイン 6. オーディオ・デザイン 7. インタラクティブ・ストーリーテリング 8. ゲーム・プロダクション 9. ゲームのビジネス 9 つの分野の内訳について簡単に説明する。批判的なゲーム研究とは、デジタル ゲームとアナログゲームの批評と歴史などを扱う分野である。ゲームと社会とは、 ゲームが個人あるいは集団とどのように関わっているかを扱う分野である。ゲー ムデザインとは、ゲームのルールや遊びの背景にある原則や方法論を扱う分野で ある。ゲームプログラミングとは、ゲームを構築する際に扱われるコンピューター 技術を扱う分野である。ビジュアルデザインとは、ゲームのグラフィクス要素の デザインや制作、分析を扱う分野である。サウンドデザインとは、サウンドに関 連するもののデザインと制作を扱う分野である。インタラクティブストーリーテ リングとは、伝統的なストーリー制作とインタラクティブなストーリー制作を扱 う分野である。ゲーム制作とは、ゲーム制作のマネジメントなどを扱う分野であ る。ゲームビジネスとは、ゲームの経済的側面などを扱う分野である。 これらの関連技術や知識領域は、ゲーム制作そのものに用いられるものだけで なく、その研究や、運用と販売に関するものを含む。そのため、ゲーム制作する 際にそのすべてが必要となるわけではない。ただし、直接的に制作に関係しない 技術と知識も、制作の前後を俯瞰した場合には考慮することが多い。
第
4
章
継続的な影響の測定による影響分析手
法について
本研究の目的は、PI 型教育がゲーム制作の一連のプロセスにおいて、受講者の 認識するゲーム制作工程に対してどの様な影響を与え得るか、また受講者のゲー ム制作工程に対する認識のバランスがどの様に変化するかについて分析すること である。本研究では、PI 型教育の効果の詳細を、PI 型教育を受ける受講者が認識 するゲーム制作工程への影響を測定・分析し、その結果を考察することで明らか にできると仮定する。その上で、PI 型教育を受講する受講者に対し、「継続的な意 識調査による認識の変化の測定」を行う。測定を行う上で必要となることは、変 化の測定を行う各工程として、一連のプロセスをいくつかの工程に分割すること と、全ての工程を継続的に評価することである。これを、本研究における「影響 分析手法」として定める。本章では、影響分析手法についての概要を述べる。次 に、手順に沿って影響分析手法の詳細について述べる。4.1
継続的な意識調査による影響分析手法の概要
本手法は、受講者に対して各工程の認識に関する質問を行い、その認識の変化 から影響の有無を測定する。本手法で用いるアンケートの例を次の図 4.1 に示す。図中の重要度と理解度は、受講者のゲーム制作工程への認識の変化を継続的に 測定するために、本研究が定めた指標である。この指標についての詳細な説明は、 4.3 節と 4.4 節にて行う。アンケートは必ず個別のシートで行い、2 回目以降は前 回の数値をフィードバックした上で回答して貰うようにする。2 回目以降で用いる アンケートの回答イメージを次の図 4.2 に示す。 図 4.2: 2 回目以降のアンケートの回答イメージ なお、本研究で用いる影響の測定のためのアンケートの質問項目や、影響分析 手法については次の手順で定めた。 1. 分析に用いる工程のリストアップ 2. 各工程の認識の変化を評価するための指標の設定 3. アンケートによるデータ収集と集計 4. 継続的な測定による変化の分析、分類別で分散値を分析 次節からは順を追って影響分析手法の詳細について述べる。
4.2
分析に用いるゲーム工程のリストアップ
測定で用いるゲーム制作工程を細分化したリストは、図 4.3 のように定義した。 また、リストアップにあたり 3.1 節や 3.2 節で挙げた資料といくつかの資料 [2][3][18] を参考にした。ゲーム制作の一連のプロセスについては、図 4.3 の様に大きく 5 つの段階に分割 し、細分化した 28 つの工程に分類した。まず「企画・仕様」段階は企画の大枠を 決める段階としてまとめた。次に「デザイン」段階は企画書や仕様書で定めた内 容を、具体的な形にしていく段階としてまとめた。「素材作成」段階はゲームに用 いられる各種素材を作成する段階としてまとめ、プログラム素材については別途 「プログラム」段階としてまとめた。最後に実際に成果物であるゲームを形にする 段階として「完成に向けた作業」段階をまとめた。 いくつかの項目については先に 3.1 節で述べたものを細分化したため補足的に説 明する。仕様書については、多方面の内容を含むため幾つかに分割する。まず設定 は、作家性が求められるキャラクター設定や世界観設定を扱う工程とする。また、 仕様書はゲームプレイに関する要素を記述するものとする。各パートの構築段階 については、実際に制作する工程と事前にデザインする工程で分割する。演出プ ランは、楽曲の方向性やイベントシーン、声優や俳優を用いる際の演技などを扱 う工程とする。シナリオについては、設定と関連して行うものであるため、この 位置に記す。 プログラムについては、制作工程上の作業内容で分割する。ベース系プログラ ムは、プログラムの構造などを構築する全体設計のプログラム工程とする。ゲー ムコア系プログラムは、物理演算や描画関係のプログラムなどのコンポーネント を扱うプログラム工程とする。支援系プログラムは、各種素材を扱うためのプラ グインや制作用のツールなどのプログラム工程とする。アプリケーション系プロ グラムは、最終的な実行ファイルとスクリプティングと呼ぶイベントシーンなど の構築を行う部分のプログラム工程とする。アプリケーション系プログラムにつ いては、以降の図中での読みやすさのため、「アプリ系プログラム」と省略して表 記する。なお、工程の並びについては、ある程度制作の時系列に沿う形とした。
4.3
各工程の認識の変化を評価するための指標の設定
先に 4.2 節で述べた細分化したゲーム制作工程への評価は、「ゲームの完成を目 指す」上での「重要度」と「理解度」とという評価を用いる。これは、全ての工 程を同じ評価軸で評価するためのものであり、毎回の制作ごとに安定して回答を 得るためのものである。ゲームの完成を目指す上での重要度と理解度がそれぞれ 意味するものは次の通りである。 • 重要度 重要度は、受講者にとっての「この工程は完成を目指す上で重要な工程で ある」といった、自身の一般的なゲーム制作を想起した上での重要性の認識 の度合いである。 • 理解度 理解度は、受講者にとっての「各工程の全体像と比較して、この工程はこ の程度理解している」といった、各工程に対する自身の理解の度合いである。 重要度の高低が意味するものは、すでに受講者が既存の教育の効果などにより その工程を重要視しているか、あるいは他の工程と比較してその工程を重要視し ていないかということである。ただし、自身の能力が不十分であると認識している 場合、理解できない工程や難解な工程を重要視する可能性がある。そのため、重要 度だけでは PI 型教育の影響は正しく判断できない。よって、重要度の補足として 理解度という指標を定める。理解度の高低が意味するものは、受講者がその工程の 全体像に対して自身の理解度が足りていると感じているか、あるいは不足してい ると感じているかということである。重要度と理解度については、すでに受講者 が既存の教育を受けていて、ゲーム制作に関する知識や経験がある場合は、学習 済みの工程への重要度と理解度が『高い』と考えるという仮説に基づいて定める。4.4
2
つの測定データを比較した変化の意味
本手法では、2 つの測定データの比較によって求められる重要度と理解度の増減 を基に分析を行うことで、PI 型教育の影響を明らかにする。本手法における、2 つの測定を比較にした際に得ることが可能な、数値の増減が示す意味については、 次の通りである。 • 重要度の増加 重要度の増加が意味するものは、PI 型教育により、「受講者が、この工程 に対する重要性の認識を強めた」ということである。従って、この工程に対 して、PI 型教育の影響があったということである。 • 重要度の減少 重要度の減少が意味するものは、PI 型教育により、「受講者が、この工程 に対する重要性の認識を弱めた」ということである。重要性の認識が弱まる ということは、「受講者が、この工程に対する自身の重要性の認識が強すぎ たということに気づいた」ということである。従って、この工程に対して、 PI 型教育の影響があったということである。 • 理解度の増加 理解度の増加が意味するものは、PI 型教育により、「受講者が、すでに既 存の教育の影響などで学習していることの理解が進んだ」、「受講者が、これ まで触れてこなかった工程に触れたことで理解が進んだ」ということである。 従って、この工程に対して、PI 型教育の影響があったということである。 • 理解度の減少 理解度の減少が意味するものは、PI 型教育により、「受講者が、この工程 に対する自身の理解が不足していたということに気づいた」ということであ る。従って、この工程に対して、PI 型教育の影響があったということである。4.5
2
つの測定データを比較した変化の分析方法
本手法における 2 つの測定を比較した変化については、いずれの場合も「変化が あった場合は影響がある」、「変化がない場合は影響がない」と仮定する。4.3 節で 述べた重要度と理解度を用いた変化の分析方法を、具体例を交えて説明する。次 の図 4.4 は、各工程について重要度と理解度を回答した架空の受講者 A のデータ である。 図 4.4: 架空の受講者 A のデータ 図 4.4 の様なデータは、数値の変化から「増加」「減少」「無変化」の 3 パターン に変換する。変換したデータについては、次の図 4.5 に例を示す。 図 4.5: 集計用に変換した受講者 A のデータ 本研究の分析を行う上で重要なことは、変化した工程はどの工程であるかとい うことである。従って、各受講者が回答した数値の増減については、基本的に全 て同列に数えることとし、前回との比較で 1 増加したと回答した受講者と、3 増加 したと回答した受講者は、同様に「増加と回答した 1 人」として数える。また、減 少した工程についても同様に「減少と回答した 1 人」として数える。これは受講者間で数値の基準値が異なるためでもある。本手法による PI 型教育の効果の詳細 についての考察は、この様な形にデータを変換し集計した上で行う。
4.6
重要度と理解度の分散値の変化の意味と集計方法
本手法では、学生のゲーム制作工程に対する認識のバランスの変化を、重要度 と理解度の分散値の変化によって求められると仮定する。ここで述べる重要度と 理解度の分散値とは、受講者ごとに回答した 28 工程の分散を取った値であり、受 講者のゲーム制作工程に関する認識の散らばり具合を意味する。分散値は重要度 と理解度のそれぞれに対して求める。分散値が高いことは、「工程ごとの認識の差 にバラつきがあり、認識の強い工程と弱い工程の差が大きい」ことを意味する。分 散値が低いことは、「工程ごとの認識の差にバラつきがなく、認識の強い工程と弱 い工程の差が小さい」ことを意味する。重要度と理解度のそれぞれの分散値の変 化の意味は次の通りである。 • 重要度の分散値の増加 重要度の分散値の増加が意味するものは、PI 型教育を受けた結果、「受講 者が、ゲーム制作工程に対する重要性の認識を、より一部の工程に対して持 つ様になった」ということである。 • 重要度の分散値の減少 重要度の分散値の減少が意味するものは、PI 型教育を受けた結果、「受講 者が、ゲーム制作工程に対する重要性の認識を、より全般の工程に対して持 つ様になった」ということである。 • 理解度の分散値の増加 理解度の分散値の増加が意味するものは、PI 型教育を受けた結果、「受講 者が、ゲーム制作に対する自身の能力を、より専門的なものと考えた」とい うことである。• 理解度の分散値の減少 理解度の分散値の減少が意味するものは、PI 型教育を受けた結果、「受講 者が、ゲーム制作に対する自身の能力を、より理解を広めたと考えた」とい うことである。 分散値とは、各測定値の平均からのずれの総量を示す値であり、ずれの総量が 0 にならない様にするため平均値からの変位の二乗和をとるものである。仮に重要 度の分散値を求める場合、ある受講者の各工程の重要度を Xi ( i = 1,2,…,n ) と し、その平均を ¯X とした時の分散値 V を求める式は次の通りである。 V = ∑n i=1(Xi− ¯X)2 n
第
5
章
PI
型教育の影響の測定と分析による
考察
本研究は、PI 型教育を受講する学生に対して継続的な意識調査を行う。その上 で PI 型教育が、受講者の認識するゲーム制作工程に対しどの様な影響を与え得る か、また受講者のゲーム制作工程に対する認識のバランスがどの様に変化するか について分析と考察を行い明らかにするものである。4 章で述べた影響分析手法を 用いて、実際に PI 型教育に参加する学生に対し、継続的な意識調査を行った。本 章では、まずアンケートによる意識調査の概要について述べる。次に継続的に収 集した測定データによる比較ごとの傾向の分析と考察を行う。続いて分散値の変 化による傾向の分析と考察を行う。最後にそれらをまとめた上で、本研究により 明らかになった PI 型教育の効果の詳細について結論を述べる。また補足として、 本調査に協力した学生に対して行った GGJ 後のアンケート調査の結果についても 述べる。5.1
KIGGJ
で実施した意識調査の概要
本研究で行う PI 型教育の影響の測定は、先の 4.3 節で述べた指標を用いて、PI 型教育に参加する学生に対し、継続的な意識調査を行うものである。この継続的な意識調査により収集したデータを基に分析を行うことで、PI 型教育の効果の詳 細を明らかにする。 本研究の対象となる学生は、東京工科大学と日本工学院八王子専門学校 (以下日 本工学院八王子校)、日本工学院専門学校 (以下日本工学院蒲田校) が実施する PI 型教育である 2011 年度の KIGGJ に参加する学生である。結果的には、56 個の質 問項目を持つアンケート形式の調査を、74 名に対して行うことができた。その内 訳は次の表 5.1 の通りである。また、計 3 回の制作にわたり継続してデータ収集が 可能だった学生の内訳は次の表 5.2 の通りである。本章では、表 5.2 で示す 45 名 の学生を分析の対象とする。 表 5.1: 実験協力者の合計数と内訳 役割 東京工科大学 日本工学院八王子校 日本工学院蒲田校 小計 プログラマー 9(4) 31(22) 5(2) 45(28) プランナー 6(4) 5(3) 3(2) 14(9) グラフィッカー 10(7) 1(0) 0(0) 11(7) サウンド 2(0) 1(0) 1(1) 4(1) 小計 27(15) 38(25) 9(5) 合計 74(45) 表 5.2: 分析の対象となった学生の所属別の内訳 学年 東京工科大学 日本工学院八王子校 日本工学院蒲田校 小計 1 0 7 0 7 2 0 13 2 15 3 15 3 0 18 4 0 2 3 5 小計 15 25 5 合計 45 本調査の実施は KIGGJ の進行に合わせて行うものとする。2011 年度の KIGGJ は 10 月から 12 月にかけて行われる。その中でのゲーム制作演習は 1ヶ月に 1 本の
ペースで行われ、計 3 回の制作が行われる。本研究の測定の実施は制作終了直後 に行う。従って、計 3 回の制作におけるデータが収集可能であり、これらを比較 して分析することが可能である。比較を行う測定データの組み合わせは、第 1 回 の制作後の測定データと第 2 回の制作後の測定データの比較と、第 2 回の制作後 の測定データと第 3 回の制作後の測定データを比較の 2 つである。なお、これら 2 度の比較については、以降それぞれを「1 度目の比較」、「2 度目の比較」と呼ぶ。 本手法を用いた測定の実施における重要事項は、4.2 節で述べた工程の意味と 4.3 節で述べた指標の意味を参加者に周知した上で行うことと、第 2 回の制作後と第 3 回の制作後の測定は前回の測定結果を踏まえて個別に作成した回答用紙を用いて 行うことである。
5.2
1
度目の比較データにおける傾向の分析
本節では、1 度目の比較データにおける傾向の分析を行う。まず全体的な傾向に ついて述べる。次に重要度の変化、理解度の変化について個別に分析を行う。最 後に、1 度目の比較データについてのまとめを行う。 1 度目の比較データにおける重要度と理解度の増減については、回答者数を工程 別に示したものを次の図 5.1 に示す。図中の色がより濃い工程ほど、回答者数が多 い工程を示している。また、図中の太字で強調した工程は、重要度と理解度それ ぞれの変化の平均値より回答者数が多い工程を示している。図 5.1: 工程別の回答者数 (1 度目の比較) 全体的な傾向としては、重要度と理解度のどちらも、増加したと回答した学生 の方が、減少したと回答した学生より多いことがわかる。また、理解度について 増加したと回答した学生の数が、平均的に多い傾向があることがわかる。
5.2.1
1
度目の比較データにおける重要度の変化の傾向
1 度目の比較における重要度の変化の傾向については、まず重要度が増加した工 程について述べる。1 度目の比較における重要度が増加したと回答した工程ごとの 人数を、次の図 5.2 に示す。なお、以降の図中の灰色の横棒は、グラフごとの平均 値と中央値を示したものである。図 5.2: 重要度が増加したと回答した人数 (1 度目の比較) 重要度が増加した工程は、PI 型教育による「受講者が、その工程に対する重要 性の認識を強めた」という影響を示すものである。1 度目の比較において重要度が 増加したと回答があった工程の中で、回答者数が多い傾向を示した工程は、「演出 プラン」、「アニメーション作成」、「エフェクト作成」、「BGM 作成」、「SE 作成」、 「支援系プログラム」、「α版」である。その他の工程については、7∼8 名という平 均的な傾向を示した。ただし、「マスターアップ」については、重要度が増加した と回答した学生が 4 名と少なかった。 この中の演出プラン、アニメーション作成、エフェクト作成、BGM 作成、SE 作成といった工程は、ゲームにおける演出に関わる工程 [19][20] であると考えられ る。マスターアップの回答者数が少ないのは、今回対象となった学生が、元々マ スターアップを重要視しているからである。その一方で、α版・β版の重要度が 増加していることについては、これまで不足していた段階的制作の経験を得たこ とによるものであると考えられる。 次に重要度が減少した工程について述べる。1 度目の比較における重要度が減少
したと回答した工程ごとの人数を、次の図 5.3 に示す。 図 5.3: 重要度が減少したと回答した人数 (1 度目の比較) 重要度が減少した工程は、PI 型教育による「受講者が、その工程に対する重要 性の認識を弱めた」、つまり「受講者が、この工程に対する自身の重要性の認識が 強すぎたということに気づいた」という影響を示すものである。1 度目の比較に おいて重要度が減少したと回答があった工程の中で、回答者数が多い傾向を示し た工程は、「シナリオ」、「キャラクターデザイン」、「背景デザイン」、「インター フェースデザイン」、「演出プラン」、「プロトタイピング」である。その他の工程 については、5∼6 名という平均的な回答者数となった。ただし、「ゲームコア系プ ログラム」と「マスターアップ」については、重要度が減少したと回答した学生 が少なかった。 ここで減少したと回答があった工程は、実制作に入るまでの工程のうち、ゲー ムプレイに直接関係しない工程や、時間のかかる工程であると考えられる。これ は、第 1 回の制作が 48 時間を想定した初めての短期制作だった学生が多く、制作 時間の不足を感じた学生が多かったとためと考えられる。
5.2.2
1
度目の比較データにおける理解度の変化の傾向
1 度目の比較における理解度の変化の傾向については、まず理解度が増加した工 程について述べる。1 度目の比較における理解度が増加したと回答した工程ごとの 人数を、次の図 5.4 に示す。 図 5.4: 理解度が増加したと回答した人数 (1 度目の比較) 理解度が増加した工程は、PI 型教育による「受講者が、すでに既存の教育の効 果などで学習していることの理解が進んだ」、「受講者が、これまで触れてこなかっ た工程に触れたことで理解が進んだ」という影響を示すものである。1 度目の比較 において理解度が増加したと回答があった工程の中で、回答者数が多い傾向を示 した工程は、「ゲームデザイン」、「演出プラン」、「背景・マップモデル作成」、「ア ニメーション作成」、「BGM 作成」、「SE 作成」、「ベース系プログラム」、「ゲーム コア系プログラム」、「テストプレイ」、「デバッグ」である。その他の工程につい ては、11 名∼14 名という平均的な回答者数となった。ただし、「アプリ系プログ ラム」、「デバッグ」、「マスターアップ」については、理解度が増加したと回答した学生が少なかった。 理解度が増加したと回答した学生が比較的多かったことの要因として考えられ るのが、これまで触れてこなかった工程に触れたことで理解が進んだという影響 のパターンである。ゲームの完成を目指すためには、短期制作であっても全ての 素材を揃える必要がある。しかし、KIGGJ の参加者の内、グラフィックやサウン ドを担当できる学生は限られていたため、専門ではない役割の学生が担当せざる を得ない状況が多々見受けられた。その結果として、背景・マップモデル作成、ア ニメーション作成、BGM 作成、SE 作成といった工程の理解が進んだという学生 が多かったと考えられる。実際に、アニメーション作成、BGM 作成、SE 作成に ついては、重要度が増加したと回答した学生も比較的多く、その影響は信頼性が 高いと考えられる。 次に理解度が減少した工程について述べる。1 度目の比較における理解度が減少 したと回答した工程ごとの人数を、次の図 5.5 に示す。 図 5.5: 理解度が減少したと回答した人数 (1 度目の比較) 理解度が減少した工程は、PI 型教育による「受講者が、その工程に対する自身
の理解が不足していたということに気づいた」という影響を示すものである。1 度 目の比較における理解度が減少したと回答があった工程の中で、回答者数が多い 傾向を示した工程は、「仕様書」、「演出プラン」、「レベルデザイン」、「エフェクト 作成」、「インターフェース作成」、「テストプレイ」、「デバッグ」である。その他 の工程については、3 名∼5 名という平均的な回答者数の工程が多いが、全体的に 回答者数が少なかった。 各工程に対する自身の理解の不足に気づくという点では回答者数が少なかった が、その中でも仕様書やレベルデザイン、デバッグといった工程に対して、理解 度が減少したと回答した学生が数名居た。このことから、これらの工程に対して、 自身の理解の想定を超える様な経験をすることが出来た学生が居たと考えられる。
5.2.3
1
度目の比較データのまとめ
1 度目の比較データのまとめを述べる。まず全体的な傾向として、重要度と理解 度のどちらも、増加したと回答した学生の方が、減少したと回答した学生より多 いことがわかった。これについては、学生が段階的なゲーム制作における制作工 程全般に対して重要性を感じる様になるという傾向があったと考えられる。また、 理解度について増加したと回答した学生の数が、平均的に多い傾向があることが わかった。これについては、これまで触れてこなかった工程に触れたことで理解 が進んだという、比較的浅い理解を工程全体に対して得る傾向があったと考えら れる。 次に、制作の時系列として見ると、重要度に関しては中盤から終盤にかけて重 要度が増加し、前半の重要度が下がる傾向があることがわかった。その理由とし て、多くの学生が第 1 回の制作で、制作時間の不足を経験していることが挙げら れる。そのため、企画段階での作業よりも、実制作での作業に重きをおいた結果 が、1 度目の比較のデータに表れていると考えられる。5.3
2
度目の比較データにおける傾向の分析
本節では、2 度目の比較データにおける傾向の分析を行う。まず全体的な傾向に ついて述べる。次に重要度の変化、理解度の変化について個別に分析を行う。続 いて、2 度目の比較データについてのまとめを行う。最後に 1 度目の比較と 2 度目 の比較の差の分析を行う。 2 度目の比較データにおける重要度と理解度の増減については、回答者数を工程 別に示したものを次の図 5.6 に示す。図中の色がより濃い工程ほど、回答者数が多 い工程を示している。また、図中の太字で強調した工程は、重要度と理解度それ ぞれの変化の平均値より回答者数が多い工程を示している。 図 5.6: 工程別の回答者数 (2 度目の比較) 全体的な傾向としては、1 度目の比較と同様に、重要度と理解度のどちらも、増 加したと回答した学生の方が、減少したと回答した学生より多いことがわかる。ま た、理解度の傾向も同様に、増加したと回答した学生の数が平均的に多いことが わかる。全体の回答者数は若干ではあるが減少している。5.3.1
2
度目の比較データにおける重要度の変化の傾向
2 度目の比較における重要度の変化の傾向については、まず重要度が増加した工 程について述べる。2 度目の比較における重要度が増加したと回答した工程ごとの 人数を、次の図 5.2 に示す。 図 5.7: 重要度が増加したと回答した人数 (2 度目の比較) 2 度目の比較において重要度が増加したと回答があった工程の中で、回答者数が 多い傾向を示した工程は、「エフェクト作成」である。次いで多い傾向を示した工 程は、「コンセプトシート」、「企画書」、「仕様書」、「背景デザイン」、「インター フェースデザイン」、「演出プラン」、「プロトタイピング」、「レベルデザイン」、 「キャラクターモデル作成」、「エフェクト作成」、「インターフェース作成」、「SE 作成」、「アプリ系プログラム」である。その他の工程については、5∼7 名という 平均的な回答者数となった。ただし、「シナリオ」、「アニメーション作成」、「ベー ス系プログラム」、「ゲームコア系プログラム」、「マスターアップ」については、 重要度が増加したと回答した学生が少なかった。全体的な特徴として挙げられる点が、1 度目の比較と比べて回答者の分布が大き く異なっている点である。1 度目の比較では平均的に回答者数が分布した上で、特 徴的な部分で回答者が増える傾向があったのに対して、2 度目の比較では明らかに 回答者数が乱高下した工程が見られる。これは、第 3 回の制作ということもあり、 学生が 48 時間という制作時間に慣れたことに起因すると考えられる。その根拠と して、アプリ系プログラム以外のプログラム関連の工程や、完成に向けた作業段 階の工程に対する重要度があまり変化していないことが挙げられる。つまり、こ の様に回答が分布したことは、第 1 回と第 2 回の制作において学生が経験したこ とのうち、時間的制約によりチャレンジできなかったことを実行した結果である と考えられる。2 度目の比較においても、演出プラン、エフェクト作成、SE 作成 については重要度が増加したと回答した学生が比較的多く、演出に関わる工程へ の重要性が増加するという影響は信頼性が高いと考えられる。 次に重要度が減少した工程について述べる。2 度目の比較における重要度が減少 したと回答した工程ごとの人数を、次の図 5.8 に示す。 図 5.8: 重要度が減少したと回答した人数 (2 度目の比較)
2 度目の比較において重要度が減少したと回答があった工程の中で、回答者数が 多い傾向を示した工程は、「シナリオ」、「設定」、「キャラクターデザイン」、「背景 デザイン」、「背景・マップモデル作成」、「アニメーション作成」である。その他 の工程については、3∼5 名という平均的な回答者数の工程が多いが、全体的に回 答者数が少なかった。 ここで減少したと回答があった工程は、1 度目の比較で時間のかかる工程をそぎ 落とした結果を更にそぎ落としたものと考えられる。例えば、アニメーション作 成は、1 度目の比較では重要度が増加したと回答した学生が多かった工程である が、2 度目の比較では重要度が減少する傾向があった。これが意味することは、ア ニメーション作成が不要になったということではなく、学生がアニメーション作 成にかけるコストを別の手段で補った方が効率が良いと考えるようになったとい うことではないかと考える。すなわち、全体的なゲームの完成度を向上させる為 に、学生が作業の比重を軽くすることを覚えた工程が、このグラフに表れている と考えられる。
5.3.2
2
度目の比較データにおける理解度の変化の傾向
2 度目の比較における変化の傾向については、まず理解度が増加した工程につい て述べる。1 度目の比較における理解度が増加したと回答した工程ごとの人数を、 次の図 5.9 に示す。図 5.9: 理解度が増加したと回答した人数 (2 度目の比較) 2 度目の比較において理解度が増加したと回答があった工程の中で、回答者数が 多い傾向を示した工程は、「背景デザイン」、「ゲームデザイン」、「演出プラン」、 「インターフェース作成」である。その他の工程については、9 名∼13 名という平 均的な回答者数となった。ただし、「シナリオ」、「ベース系プログラム」、「ゲーム コア系プログラム」、「支援系プログラム」、「マスターアップ」については、理解 度が増加したと回答した学生が少なかった。 全体的な特徴として、平均的な分布の中に特に増加した工程と、減少した工程 がいくつかあるということが挙げられる。特に増加した工程は、1 度目の比較と共 通して回答者が多かったゲームデザインと演出プランである。これらの工程の理 解度が継続して増加したということは、学生が面白いゲームを考え、それをユー ザーに伝えることを意識していることを示していると考える。一方で、シナリオ の回答者数が著しく少ないことについては、短期制作であるが故に最も敬遠され たことで理解が進まなかったと考える。また、プログラム工程全般においても理 解度が増加したと回答した学生の数は減少する傾向があった。これは、3 回のチー
ム変更を経て、開発環境がある程度最適化された結果であると考える。 次に理解度が減少した工程について述べる。2 度目の比較における理解度が減少 したと回答した工程ごとの人数を、次の図 5.10 に示す。 図 5.10: 理解度が減少したと回答した人数 (2 度目の比較) 2 度目の比較における理解度が減少したと回答があった工程の中で、回答者数が 多い傾向を示した工程は、「企画書」、「シナリオ」、「仕様書」、「レベルデザイン」、 「エフェクト作成」、「α版」、「β版」である。その他の工程については、3∼5 名と いう平均的な回答者数となったが、全体的に回答者数が少なかった。 理解度が減少したと回答した工程については、全工程が受講者の 1 割ほどの回 答者数という平均的な値を見せる形となった。特筆すべき点は、1 度目の比較では 回答者数が少なかったコンセプトシートや企画書に対して、理解度が減少したと 回答した学生が増えた点である。これは、第 2 回制作後の講評において、「制作物 のテーマ性・メッセージ性の欠如」が大きく指摘されていたことに起因している と考えられる。