貨 幣 の 流 動 性 と 交 換 方 程 式
Ⅰ
問題 の所 在 と分析視 角 Ⅰ- 1 フィッシ ャーの交換方程式の限界 第2
次世界大戦後,先進国経済 に指針を与 えた ケインズ主義が凋落す ると共 に, マネタ リズムが 急速に浸透 して きた。 マネタ リス トは経済政策 に おいて貨幣供給量 を極端 に重視す るが,その思考 の基礎 には Ⅰ.フ ィッシ ャーの交換方程式 が存 在 す る。 周知の よ うに, フィッシャーの交換方程式 は, M・Ⅴ-P・
Q
(1-1) で表わ され る。 ここでMは貨幣量,Ⅴはその流通 速度,P
は一般的物価水準,Q
はそれに対応す る 数量である。 この式を一国の最終生産物の価値 に 適用すれば,交換方程式の所得形式 M -k・Y (k-1/V) (1-2) が得 られ る。 kはマーシ ャル (ない しケンブ リッ ジのk)と呼ばれている。 また,Yは国民所得で あ る。 フィッシ ャーの交換方程式およびその所得形式 は,定義式 ない し恒等式である。そのため,大 き な限界が存在す る。す なわち, ケインズが指摘 し た よ うに,P
やQ
は様 々な財 の暖味な混合物であ り,それぞれ独立 に求め られ るものではない.(al) この意味で,P
とQ
は仮想的経済変数であ る。は2) マーシャルのk
に して も,定義 として〔貨幣量/国 民所得〕 とい う次元の量 として求め られ るにす ぎ ない。交換方程式 の有す るこの弱点は,前稿 に示 した △法に よってあ る程度回避で きるに して も, 交換方程式を基点 とす る限 り,その弱点を完全 に 克服す ることは不可能である。(注3) それにもかかわ らず, マネタ リス トが交換方程 式か ら出発す るのは,それが貨幣量 と物価 なし,_し 国民所得 との関係を示す唯一の確定的関係だか ら である。問題 は,それ らの経済変数が有す る具体山 崎
匡 毅
的意味である。特 に,貨幣 (通貨) とは何か, と い う問題である。 ′ 貨幣を最 も狭義 に とれば,現金通貨であるが, これがすべてではない。貨幣形態 としては, よく 知 られ るよ うに,その他 に当座預金,普通 ・通知 ・ 別段預金,定期預金,CD
,郵便預金等がある。通 常,Moは流通現金 と当座預金 との和,M.はM。と 普通 ・通知 ・別段預金 との和,M
2はM
lと定期性 預金 とCD
と-の和,
M
3はM
2に郵便預金等の和,と して用 い られている。 マネタ リス トは,貨幣量の指標 としてM
2を用 いて, その物価 との関係を議論す る。 しか し, こ の考 え方 には,大 きな落 し穴が存在す る。 それは 定期性預金 を多 く含むM2を貨幣の指標 とす る必 然性である。定期性預金は,大衆が使わ ないで保 蔵す る貨幣形態であ り,交換方程式 を通 じて物価 へ影響 を及 ぼす と短絡的に考 えることには疑問が ある。保蔵貨幣が増加す るだけでは,M
2の指標が い くら増加 して も, マネタ リス トのい うよ うには 物価上昇は生 じないか もしれない。 明 らかに,貨幣は どこまで貨幣的か とい う問題 であ り,それは通常考 えられ るよ りも厄介な問題 である。貨幣の最 も基本的機能を交換機能である とすれば,最 も貨幣的な形態は現金通貨であ り, 逆 にそ うでない形態は定期性貯蓄である。換言す れば,現金通貨が最 も流動性の高い貨幣形態であ り,逆 に定期性貯蓄は最 も退蔵性の高い貨幣形態 である。 従来の分析 においては,貨幣形態 における流動 性 と退蔵性 との間の相互関連性を酸味に して議論 して きた。 マネタ リス トは貨幣供給量 と物価水準 を極度 に重視す る反面,通貨の回転率の変動を軽 視 して きた。(臥)す なわ ち,貨幣の流通速度 の変動 と、い う面倒 な問題 を回避 し,その問題を単 にマー シャルのkの変動 とい う形式論に摩 り替 えて しま った。 この方法 によれば,貨幣の流動性の高 ま り - 13-ほ,単 にマーシ ャルのkが低下す るだけの形式論 に還元 されて しま うのである。
Ⅰ- 2
貨幣の流動性 ・退蔵性 とその可能性 か くして, マネタ リス トの方法の弱点は明 らか である。 マネタ リス トの見解 によれば,貨幣供給 量が一定に保持 され るとき,物価はほぼ一定 に維 持 され る。 とい うことは,貨幣の流通速度Ⅴを一 定 とみな し,その変化率を無視 している。流通速 度Ⅴはマネタ リス トのい うよ うに大 きく変化 しな いものであろ うか。 この点は後に論及す るが,実 は経済社会の激変期 において,流通速度はかな り 変動 し,物価水準-の影響 もかな り大 きい。 さら にはi金融革命 と呼ばれ る現象が進み,貨幣M
の 概念が混乱す るにつれて, ますます大 きな問題 と なって くるであろ う。(注4) 流通速度Ⅴの変化は,具体的には貨幣の流動性 の変化 とな って現われ る。た とえM
2が一定であ るに して も,その一部が流動化 して,物 (財) と 交換 されれば,物価水準は上昇す る。逆 に,退蔵 性向が強 まれば,物価水準は下落す る。 この際, 問題を面倒 にしていることは,ある貨幣形態がい つまで もその貨幣形態に とどまっていない ことで ある。た とえば,流動性の低 い定期性預金が現金 化 し,流動性が高 まれば,た とえM2が一定であ っ ても物価水準は上昇す るであろ う。 もちろん,礼 会全体 として流動性や退蔵性が一定 に保たれ ると すれば,そのよ うな問題 は発生せず,マネタ リス トの見解は妥当す る。 しか し,現実には後述す る よ うに,一国における現金貨幣や定期預金な どの 比率は傾 向的に推移す るだけでな く,社会の激動 期には大 きく変動 し,流動性や退蔵性の変化 も顕 著に現われ る。 昭和4
6
年 旧I
MF
の崩壊後 の約2
年間,局知 の よ うに,過剰流動性が生 じた。 マネタ リス トの見 解によれば, この過剰流動性によって昭和4
8
年後 半か らの物価騰貴が生起 した。すなわち, この物 価騰貴は,単に石油危機 とい う外生的要因だけで な く,む しろ2年前か らの貨幣供給量 の増大に要 因を求めるべ きであるとの見解がなされた。貨幣 供給量の増大が時間の遅れを伴い物価上昇に結 び つ くとい う現象は, アメ リカな どほ とん どの国に み られ ることか ら,マネタ リス トはそれを普遍的 経済現象であると主張 し,経済政策 に応用 しよ う とす る。 確かに, マネタ リス トの主張 には,傾聴 に値す る多 くの点があるとして も,それが唯一の正当な 見解であるとは限 らない。高度 に複雑化 している 現代資本主義経済にあ っては, マネタ リス トのい うよ うな単純 な経済原則では不十分である。また, マネタ リス ト的 な経済政策に よって, スタグフレ ーシ ョンに代表 され る経済問題 を有効的に解決で きるわけで もない。この点を明確 にす るためには, マネタ リス トが基礎 とす る貨幣の交換方程式 の意 義 と限界を十分に論及 しなければな らない。 本稿 における問題意識 と分析視角は明 らかであ る。第一 に,貨幣供給量 と物価 の変動 において, 交換方程式の意義を再評価 し, マーシャルのkの 形式性を暴震す ることである。それは,前稿 にお ける交換方程式の再評価をマーシャルのkまで含 めて敷術す ることであ る。(&3)第二 に, マネタ リス トが軽視 した貨幣の流通速度の変動 に関 し,貨幣 の流動性 と退蔵性を考察す ることであ り,その中 で貨幣形態の可換性 と物価変動 の問題 を分析す る ことである。第三 に,1
9
7
0-8
0
年の約10年間に焦 点をあて,貨幣供給量,物価,国民総生産 な どの 相関を実証的に分析 し, この過程 において, マネ タ リス トとわれわれの考 え方の相違 を明確 にす る ことである。最後 に, このよ うな実証的分析を踏 壷え, マネタ リス トの経済政策 の有効性 と限界, さらには狭義の経済政策の限界 について論述す る ことである。Ⅰ
Ⅰ
若 干 の理 論的展 開 II- 1 △法 による変換方程式の変形は3) 経済変数の変動を考察す るためには,△法を援 用す ることが便利である。 ある時点の経済変数の 増加 (減少)分を △ とし,それを交換方程式 に適 用すれば,M
・△Ⅴ+
Ⅴ・△M-P
・△Q+P
・△Q
(
2
-
1) となる。 この式を変形す ると,S
-# ・% -% (2-2) となる。すなわち,物価 の上昇率は貨幣供給の増加率 と流通速度 の上昇率 との和か ら総生産量 の増 加率を差 し引いた ものに等 しい。 マーシャルのk を用 いると,k-1/Vであ るか ら,(2-3)式 は,
S
-#-祭
%
(2-3) と表わ され る。 いま,一国における貨幣の使用形 態 が不変であるとすれば, kは不変に とどまるか ら,(2-3)式転壁 _仝担
_仝QP
ー
M
Q
(2-4) と簡単化 され る。 ここで,貨幣の供給弾力性を 8-
管/筈
(
2
-5
)
と表わす とすれば,貨幣供給量の増加 による物価 の変動 は,供給弾力性の大小に依存す る。 もし,£-1であれば,貨幣供給量の増加 に対 し て△P/
p-
0となるか ら,物価は不変に とどまる。 この状態は不完全雇用化 におけるケインズ的世界 に相応す る。8-0であれば,貨幣供給 の経済効果 はすべて物価 の変動 に還元 され る。 この場合 は, マネタ リス ト的世界に近 い もの といえる。現実 に は,多 くの場合 eは 0と1との間になる.わが国 では大雑把 にいえば,高度成長期 においては 8-0.6-0.7であ ったが,70年代の後半の低成長期 に おいては8-0.3-0.5であ る。この数字か らも,め が国で も多少 ケインズ的世界か らマネタ リス ト的 世界へ シフ トした ことが うかがえる。 一国における貨幣の使用形態が不変ではない と き- 多 くの場合社会の激変期 に生ず る- にお いては,(2-4)式は妥当 しな くなる。事実,1973 年 の石油危機時においては,(2-4)式の妥当性は 失われてい る。 この よ うな場合は,(2-2)式 ない し (2-3)式を用 いる必要 がある。 この点 におけ る先進 国の実証分析は後 に述べ るとす る。Ⅰ
Ⅰ
-2
流動性 と退蔵性 との可換性 これ までわれわれは フィッシャーの交換方程式 を基点 として話 を進めて きたが,すでに指摘 した よ うに, この よ うな思考方法には大 きな限界が存 在す る。 ケインズは交換方程式 に関す る無味乾燥 な議論か らの脱却を 目指 し, もっと実 り多い形式 を採用 している。 ケインズは,貨幣需要 の役割 として取 り引 き動 鶴 (ここでは予備的動機 も含め る) と投機 的動機 に区別す る。貨幣需要をMとすれば,M-M′
.
+M′
2
(
2
-6
)
と表わ され る。 ここでM
′1は取 り引 きに利用 され る貨幣需要であ り,主 として国民所得 に関係 して いる。M
′2
は投機的利益 のための貨幣需要 であ り, これは主 として市場 の利子率に関係 してい る。 も ちろん, この区分は多分に便宜的な ものであ り, 現 実 にM
′1とM
′2
を 区別 す る こ とは不 可 能 で あ る。 ケインズは 『一般理論』 において交換方程式 に 関与す る貨幣形態はM
′.であることを示唆 してい るが, それ以上 の深入 りは避 けてい る。(注5)この点 さらに敷術すれば,次の よ うになるだろ う。 いま, ケインズの区分法を援用 して,貨幣形態 MをM-My
+ML
(2-7) と表わす。M
,は交換 に供 せ られ る貨幣形 態 であ り,ここでは流動貨幣 と呼ぶ。MLは退蔵性 の貨幣 形態であ り,退蔵貨幣 と呼ぶ ことにす る。 問題 は,M
,とML
が不変ではな く,互 に可変性 を有す るごとであ る。すなわ ち,流動貨幣か ら退 蔵貨幣へ変換 し,逆 に退蔵貨幣か ら流動貨幣へ変 換 し, この過程 の中で国民所得や物価水準が複雑 に変動す る。流動貨幣 と退蔵貨幣の変換 について 形式的に分析す ると次の よ うにな る。 (2-7)式 に △法を援用す ると,△M-△My
+△ML
(2-8) ここで,
My
は交換方程式 に現われ る貨幣形態であ り,My
-k
′
・
P・
Q
となるか ら, (2-8)式 は,△M-A(
k
′
・
P・
Q)
+△ML
(
2
-9
)
になる。k′はマーシ ャルのkに対応す るが,流動性 の貨幣に対 してのみ適用 され る。(
2
-9
)
式 は△M-k
′
・
P・
△Q+k
′
・
Q・
AP+P・
Q・
△k
′
+△ML (2-10) であるが,両辺 をk
′
・
P・
Q
で険 し整理す る と,些 =
些 _
.
旦担
_也 .
仝
姓_些L 仝虹
P
My M MyM LQ
k′ (2- ll) が得 られ る。 この式 はさらに半
LTI
L 豊
実
1
5
'
一
骨 晋
一豊
・
(2-12) - 15-と変形 され る。k′を一定 と仮定すれば,上式 は,
S
# -針
% (
# -# )
(2- 13) になる。 (2-12)式 と (2-3)式 を比較すれば, その意味は明 らかになって くる。もし,△M/ M-△ML/MLであれば,すなわ ち,全貨幣量の増加率 が退蔵貨幣の増加率に等 しいな らば, (2- 12)式 の第 4項 は消去 され,それは (2-3)式 に一致す る。 この場合, 明 らかに流動貨幣の増加率 も一致 す るか ら,全体 の比率 としては流動性 と退蔵性が 不変であ ることを意味す る。つ ま り,全体 として 流動貨幣 と退蔵 貨幣 の相対的 変化 が生 じなけれ ば, (2-3)式 と (2- 12)式 は一致す るとい う当 然の帰結 を得 る。 さらに, (2- 3)式 と (2- 12)式 との比較 か ら, 次の ことがわか る。両式の相違 は, % (# -
# ) (2-14) であ る。 もし△M/M >△ML/MLで あれ は, ( 2-14)は正 とな り,物価 を押 し上げる力が働 く。逆 の場合は (2-14)は負 とな り,物価を押 し下げる 力が働 く。すなわち,貨幣全体 に比較 して相対的 に退蔵貨幣が減少す る (つ ま り流動貨幣が増加す る)場合,物価 は上昇 し,逆 の場合は下落す る。 もちろん,全貨 幣量Mが一定 で あ って も (△M/ M-0),流動性 と退蔵性の変化 に よって物価 は変動す る。 また, (2 - 14)の大 きさの評価であるが, こ の 項 はML/M,お よ び△M/ M-△ML/MLが大 きい ほ ど大 き くなる。換言すれば,流動貨幣に 比 して退蔵貨幣が大 きいほ ど, 普 た流動貨幣 と退蔵貨幣の変換幅が 大 きいほ ど,それに よる物価-の 影響は大 きくな る。 従来の分析 と本稿 における分析 方 法 の相 違 が こ こで 明 らか に な る。従来 の方法では,貨幣の流動 性 や退蔵 性 の変化 に関す る問題 は,すべてマーシャルのkの変動 とい う形式論で処理 して しま う。 われわれは,マーシ ャルのkの変 動だけでな く,貨幣形態を流動貨幣 と退蔵貨幣に 区分 し,その可換性を通 じて物価-の影響 を明確 にす る。 ⅠⅠⅠ 方程 式 の実証 お よび考 察 ⅡⅠ- 1 貨幣供給量,物価 および マーシャルのk 前述 した方程式を現実の経済 浸適用 し,それが どの程度妥当す るかを検討す る。 この際,貨幣供 給の変化率△M/M,総数量 の変化率△Q/Qに対 して, いかなる経済変数を対応 させ るか とい う問 題がある。 この点 は,近似式 にな らざるをえない が,当面Mに対応す る貨幣形態 としてM2を,△Q/Q
として実質GNP
の変化率を適用す る。また,現 実の物価水準には,消費者物価指数,卸売物価指 数,輸 出入物価指数な どの指標があるけれ ども, ここで〇号国内の総合的物価指数であ るGNP
デ フ I/一夕ーを用いる。 もちろん,消費者物価指数を 用いて も,経済の激変期を除いてはそれほ ど大差 はないであろ う。 したが って, ここで用いる理論計算式は,(
2
-3)式を援用 して,些
_壁 _
垂旦_坐
P
M
Q
k
但 し,△M/MとしてM2の変化率 表 1 国民総生産,マネーサプライ,マーシャルのk 昭和年 . 国民総生産 日 銀 券 M M ・.__■ヽ、 名 目 実 質 (末残高) (末残高)1 (末残高2 ) マ シルのk′OヤO 42 44463 84567 34115 133688 340977 76.69 4台 52703 95319 40419 151550 391538 74.29 44 62018 107035 48113 182825 463998 74.82 45- 73128 117591 55560 213595 542373 74.17 46 80522 123104 64077 276931 673982 83_.70 47 92313 134147 83107 345261 840405 91.04 48 112441 145977 100991 403115 981885 87.32 49 133922 144167 116678 449512 1094943 81.76 50 147874 147655 126171 499487 1253304_ 84.75 51 165695 155502 140200 561791 1422487 85ー85 52 184368 163752 154380 607867 1580331 85.72 53 202708 172133 177093 689289 1789201 88.17 54 219336 181741 190686 710201 1937203 88.32 55 235734 189431 193472 695727 2069873 87.81 (症) 単位 :国民総生産 10億円 日銀券・
Ml
・
M
2 1億円 (備考) 経済企画庁,日本銀行の資料による表2 わが国の物価計算値 と実測値 昭和年 の変M化率 の 変 化2 実質GNP率 kマーシャルの 物価上昇の 変 化 率 理 論 値 GNPレーク-の 値 と実測値デ フ物価の理論 (△M/M) (AQ/Q) (△k/k) (△P/P)実 測 値 の 誤 差 43 14.8% 12.7% -3.1% 5.2% 5.2% 0.0% :=44 18.5 12.3 0.7 5.5 4.8 0.7 -45 16.9 9.9 -0.9 7.9 7.3 0.6 46 24.3 4.7 12.8 6.8 5.2 1.6 47 24.7 9.0 8.8 6.9 5.2 1.7 48 16.8 8.8 -4.1 12.1 ll.9 0.2 49 ll.5 -1.2 -6.4 19.1 20.6 1.5 50 14.5 2.4 3.7 8.4 7,8 0.6 51 13.5 5.3 1.3 6.9 6.4 0.5 52 ll.1 5.3 -0.2 6.0 5.7 0.3 53 13.1 5.1 2.9 5.1 4.6 0.5 54 -8.4 5.6 0.2 2.6 2.5 0.1 (備考) 経 済企 画庁, 日本銀行 の資料 よ り作成 表3 主要3カ国の物価計算値 と実測値 国名 西暦年 の変化率 の 変 化M
2
実質GNP率 kマ-シ′の 変 化 率 理 論 値ヤノレの 物価上昇 GNPレーク-の 値 と実測値デ フ物価の理論 (AM/
M) (△Q/Q) (△k/k) (△P/P)実 測 値 の 誤 差 ア 1973 ll.1% 5.8% -0.4% 5.7% 5.7% 0.0% 1974 9.2 -0.6 1.2 8.6 8.8 0.2 1975 6.1 -1.1 -2.1 9.3 9.2 0.1 メ 1976 8.1 5,4 -2.5 5.2 5.2 0.0 リ 1977 10.4 5.4 -1.1 6.1 5.8 0.3 カ 1978 10.2 -4.8 -1.7 7.1 7.3 0.2 1979 7.2 3.2 -4.0 8.0 8.5 0.5 1980 10.9 -0.2 2.1 9.0 9.0 0.0 イ 1973 27.5 8.3 10.1 9.1 7.2 1.9 1974 12.9 -1.6 -0.7 15.2 15.4 0.2 1975 7.1 -1.5 -14.2 22.8 26.7 3.9 ギ 1976 ll.6 4.2 -6.6 14.0 14.7 0.7 リ 1977 9.8 0.0 -1.3 ll,1 13.9 2.8 ス 1978 14,6 3.9 -0.3 ll.0 10.6 0.4 1979 12.5 1.1 -3.2 14.6 14.8 0.2 1980 18.2 -1.8 1.5 18.5 18.9 0.4 西 1973 ll.9 4.9 0.2 6.8 6.1 0.7 1974 9.5 0.4 2.1 7.0 6.9 0.1 1975 -2.0 -1.8 -6,6 6.4 6.7 0.3 ド 1976 7.5 5.3 -1.1 3.3 3.2 0.1 イ 1977 10.5 2.8 3.5 4.2 3.8 0._4 ツ 1978 10.2 3.6 2.5 4.1 3.9. 0.2 1979 4.8 4.5 T3.3 3.6 3.8 0.2 1980 4.6 1.8 -2.1 4.9 5.1 0.2 (備考) 『国際比較統 計』 (日本銀行調査統 計局) の資料 よ り作成 - 17-△Q/
Q
として実質GNPの変化率(
3
-
1) となるC この近似式で導かれ る物価の変化率 と現 実のGNPデ フレーターを比較 して,交換方程式 の妥当性を検討す る。 まず,わが国において計算の基礎 となる若干の 統計数値 を表 1に示す。 また, この統計数値を近 似的 な理論式 (3-1)に適用 して算出された物価 上昇率 と,現実 に計測 されたGNPデ フレーター と比較 して表2に示す。 第2
蓑 か らわ か るよ うに,理論式(
3
-
1) は近 似式であるにもかかわ らず,実測値 とかな りよ く 一致す る。理論的に導かれた物価 の変化率 と現実 のGNPデ フレーターの絶対誤差 は, 2%以内 と なっている。 この誤差は経済が順調 に推移 してい る時期 に とくに小 さ くなるが,昭和46-49年 の よ うな変動期 には若干大 きくなる傾 向がみ られ る。 次 に近似的な理論式 (3-1)が他の先進国で ど の程度妥当す るかを調べてみ よ う。第一次石油危 機以後 について, アメ リカ, イギ リス,西 ドイツ の3
カ国の結果を表3
に示す。この裏 か らもわかる よ うに,理論式 はかな りよ く妥当す る。物価変動 率の激 しいイギ リスにおける誤差 は若干大 きくな ってい るものの, アメ リカや西 ドイツでは理論式 は驚 くほ ど妥当す る。 この結果 は,われわれの方 法の妥当性を示す と共に, フィッシャーの交換方 程式の実証で もある。 ⅠⅠⅠ- 2貨幣の流動化 と物価変動 すでに述べた よ うに,た とえ全 貨幣量が不変であ って も,貨幣の 流動性 と退蔵性 の変化は物価水準 を変動 させ る。貨幣の流動性,過 蔵性お よび物価水準 の関連 は重要 であるが, この よ うな分析はかな りの困難 に直面す る。なぜ な らば, 現実の経済 においては流動貨幣 と 退蔵貨幣が明確 に区別で きず,公 式統計 もその よ うな観点か ら作 ら れていないか らである。 したが って,流動性や退蔵性 に 関 しては,定性的な議論 とな らざ るをえない。 ここでは,公式統計 を参照 しなが ら若干の考察を行 う。貨幣の流動性 や退蔵性に関 して援用すべ き方程式 は,(2-12) 式 ない し (2-13)式であ り,物価への影響 は (2 -14)で表わ され る項で与 えられ る. この際すで に指摘 した よ うに,貨幣の流動性が大 きくなれば 物価 は上昇 し,逆 に退蔵性が大 きくなれば物価 は 下落す る傾 向が生ず る。 この点は,全貨幣供給量 さえ適正 に管理すれば,物価 は適正 に操作 し うる とい うマネタ リス トの主張 とは必ず しも一致 しな い。換言すれば, マネタ リス トの主張 は,貨幣供 給量の適正管理が物価安定の条件であるとい う点 では正 しいが,貨幣供給量の操作すべてが物価問 題を解決す ることはな らない。すなわち, マネタ リス トの主張は必要条件 は与 えるが十分条件 まで は与 えないのである。 この よ うな点 に留意 しなが ら,昭和46-50年 に おけるわが国の物価変動を流動性に関連 して定性 的に論ず ると次の よ うになる。 流動貨幣 と退蔵貨幣の区分は不可能であるが, 流動貨幣に最 も近 い形態は現金通貨であ り,その 大部分は 日銀券である。そ こで, ここでは流動貨 幣の指標 として 日銀券の発行状況 (残高) を考 え る。退蔵性の最 も大 きい形態は定期貯蓄であるか ら,退蔵貨幣の指標 として便宜的にM2-Mlを対 応 させ る。なお,わが国においてはM2の約2/3が 定期性貯蓄であ り,
M
2は退蔵貨幣に近 い指標 であ ることに注意すべ きである。日銀券,M2,M2-Ml 表4 マネー・サプライの変化 とその流動・退蔵性 昭和年 日銀券変化 M2変化率 M2-Ml 流動.退蔵性 GNPデフ 率(平均比) (平均比) (末残比) ㊨ .- ㊨ レ ー ク -43 16.2% 15.6% 15.8% 5.2% 44 18.0 17.3 17.2 4.8 45 18.6 18.3 16.9 7.3 46 15.9 20.5 20.8 → 5.2 47 18.2 26.5 24ー7 )→ 5.2 48 26.9 22.7 16.9 I ll.9 49 20.3 ll.9 ll.5 一一 20.6 50 13.6 13.1 16.8 7.8 51 ll.1 15.1 14.2 → 6.4 52 9.1 ll.4 13.0 5.7 53 - 9.8 ll.7 12.9 4_6 54 ll.7 ll.5 ll.8 2.5 (注) 流動 ・退蔵性の目安 :0-3%の差 ≒,3-6%-,6%∼ =‡ (備考) 日本銀行の資料によるの変化 と
GNP
デ フ レー タ ーの関係 を表4
に示 す。この裏 において, 日銀券,M
2の平均残高比 を 示 したのは,平均残高比 は末残高比 に比較 して平 均的かつ安定的 な,物価変動 とい う平均的指標 と 合致す るか らである。衰 4
か らみてわか るよ うに,昭和4
6
年 と4
7
年 にM
2は2
0
%
以上増加 している。しか し,
GNP
デフレ ーターは5%
台であ り,それほ どの物価上昇は生 じていない。 ここで注意すべ きことは,流動貨幣 の指標 とした 日銀券 の平均残高比 は1
0
%
台に とど まってお り,4
3-4
5
年 の水準 にほぼ等 しい。一方, M2-Mlで示 され る退 蔵 貨 幣 の指 標 やM2は,4
6-4
7
年 に2
0
%
以上 増加 して い る。す なわ ち,4
6-4
7
年 にM
2が大 幅 に増 加 した に もか かわ ら ず,それほ どの物価上昇が生 じなか った理 由は, 貨幣の退蔵性向が強 まった ことにあ り,その行動 の背景 として, ニク ソンシ ョック と呼ばれ る旧I
MF
の崩壊 とい う経済の混迷があ った。 ところが,当時の政策当局が積極的財政通宮を 展開 し,経済 に過熱感 が出は じめているところに, 突然石油危機 が襲 った。物不足が生ず るとい う状 況の中で,貯蓄 よ り物- とい う流動化が生 じ,物 価 は急激に騰貴 した。事実,48年か ら49年 にかけ て,日銀券の年前度平均残高比は2
0
%
台に上昇 し, 流動性の高 ま りを示 している。 この ことをわか り やす く表わすために,蓑 3にわが国に生 じた流動 性 と退蔵性 の方 向を矢 印で示 した。≒は流動性 と 退蔵性の差が対前年度比3%以内,-が3-6%, コが6%
以上 に対応 している。 ⅠⅠⅠ- 3 貨幣形態の変化 と物価変動の時間的 ずれ 流動性 と退蔵性お よび物価水準の時間的相関を 知 るために,時間的経過 における 日銀券,M
2の対 前年平均残高比 とGNP
デ フレーターの推移 を図 1に示す。この図か ら,大雑把 にいってM2の増加 の約1年後 に 日銀券が増加 し, さらにその1年後 に物価 が上昇 していることがわかる。マネタ リス トは この時間的ずれを普遍化 して,
M
2の増加は時 間的遅れを伴 って必ず物価上昇につなが ると主張 す るが,それは片手落ちの見解である。すでに強 調 した よ うに,M2が増加 して もそれが流動化せ 図1
日銀券,M2,GNP
デフレーターの時間的ずれ4
0
4
5
5
0
5
5
(昭和年) (備考)経済企画庁, 日本銀行の資料 よ り作成。 なお, 日銀券,M2は平均残高比である。 - 19-ず,生産活動に向 って実質
GNP
を押 し上げれば, それほ どの物価騰貴は生 じない。事実,昭和3
5-3
7
年においては,M
2が2
0
%
以上増加 したにもかかわ らず, さほ どの物価騰貴が生 じなか った。 それでは,今 日なぜ マネタ リス ト的考 え方が強 くなったのであろ うか。 この答を一 口で言 えば, 戦後四半世紀にわた って先進経済 に指針を与 えた ケインズ主義の凋落にあ り,その反作用 としての 大 きな潮流である。その背景には,現実の経済が ケインズ的世界か らマネタ リス ト的世界へ と変質 して きた ことにある。 時間的遅れに関す るマネタ リス トの主張は,結 局の ところ,流動性や退蔵性に関連 して貨幣 とは 何か, とい う問題 に帰着す る。 この点に関 し,赤 羽隆夫氏の見解が明快である。(&6)赤羽氏は貨幣は どこまで貨幣的 か とい う問題 に正面か ら取 り組. み,貨幣量 と物価変動の相関を明 らかに している。 それによると,M。(現金 +当座預金)を貨幣形態 として交換方程式 に適用 し,物価 として株や土地 な どのすべての取 り引 き価格 を含 めて計算す れ ば,物価は時間の遅れをほ とん ど伴わず に貨幣量 と比例的に変動す る。すなわち,流動貨幣を中心 に考 えれば,交換方程式は自明の理 として成 り立 ち, この意味で, マネタ リス トが主張す る以上 に 貨幣的世界であるこ もし,何 らかの時間的遅れが 確認で きるとすれば,それはマネタ リス トが主張 す るよ うな要因ではな く,貨幣供給の際に生ず る 金融 (資本)市場 と実物市場 における時間的ずれ であるとしている。 結局の ところ,時間の遅れか与関す るマネタ リス トの見解は不十分であ り,不確実な関係にす ぎな い。 マネタ リス トの見解の欠陥は,貨幣の流通速 度の変動,流動性 と退蔵性 との互換性を軽視 して いる。流動性 と退蔵性の問題は,単 にマーシャル のkの変動 とい う形式論に埋没 され ると共 に,貨 幣供給 と物価変動の時間のずれ, とい う表面的現 象に帰着 される。経済政策 に新たな展開を
- ま とめ をこか えて-ケインズ主義の凋落 とマネ タリズムの台頭 アメ リカを中心に台頭 しているマネタ リス トの 主張には種 々の ものが含 まれ る。その政策的骨子 は二通 りに大別 され る。一つは,物価 に関す る見 解である。物価 を規定す る因子は貨幣供給量であ り,貨幣供給量の増加によって,物価 はあ る時間 の遅れを伴 いなが ら上昇す る。他は,失業 に関す る見解である。失業はケイソズ的な有効需要 の不 足 にあるのではな く,む しろ経済社会の構造的欠 陥による失業一 自然失業- に依存す る。 この よ うなマネタ リス トの主張の是否は本稿 の 論題ではないが,物価 と貨幣供給量 との.関係 につ いて,その妥当性を経済政策 との関連で吟味す る と次の よ うになる。 物価 を規定す る主因子は,安定的な生産水準を 仮定すれば,貨幣供給量であるとい う主張は,本 稿の考察か らわかるよ うに妥当である。ただ し, この ことは何 もマネタ リス トの業績ではない。貨 幣供給量が物価を規定す る主要因であることは, 古 くか らの経験的事実であるし,素朴 な貨幣数量 説の主張で もある。 物価上昇が貨幣供給に対 してある時間の遅れを 伴 って生ず る, とい うマネタ リス トの主張は多少 暖蛙である。貨幣供給が物価 に与 える様式 は, マ ネタ リス トが考 えるよ うな-様 なものではない。 貨幣供給が実物生産 と結 びつ くか,金融 ・資本市 場へ向か うか,流動的貨幣形態 になるのか,それ とも退蔵性の強い貨幣形態 になるのか, とい うよ うな種 々の場合があ り,それ らが時間的経過 の中 で複合 し,その結果 として物価変動が生ず る。貨 幣が どのよ うな形態 とな り,それが現実経済 にい かなるイソパ ク トを与 えるかは,各国によって異 なるし, またその経済社会の段階や状況に も依存 す る。た とえは,わが国では貨幣供給が実物生産 の増加 に結 びつ きやすい。要す るに,貨幣供給量 の変動 によって生ず る物価上昇 と時間のずれ,お よび時間のずれの周期 は,マネタ リス トの主張す るよ うな確定的な関係ではな く, もっと不確実 な 関係- 確率的な関係- であ る。 この意味で, 時間的ずれに関す るマネタ リス トの主張は,確率 的意味においてのみ妥当である。 狭義 の経済政策の 目標 とマネ タ リズム 狭義 の経済政策の主要 目標 は二つある。第一は 物価 の安定であ り,貨幣価値 の維持である。第二は雇用の確保であ り,経済成長力の問題 に関係 し ている。 よく知 られてい るよ うに, この二つの 目 標 の間には, トレー ド・オフの関係があ り,理論 的 には フィリップス曲線の問題 に帰着す る。各国 において,二つの 目標を達成す るために種 々の政 策 が導入 されているが,必ず しも成功 しているわ けで もない。最近 においては,物価 も雇用 も維持 されない状態- スタグフレーシ ョンと呼ばれ る 現象- が顕著 にな り, 旧来 の経済政策は破綻 し つつある。 市場経済 を前提 に して経済政策 を考 える うえ で,重要 な ことは,操作可能 な経済変数 と不可能 な経済変数 とを峻別す ることである。 もちろん, 操作可能 な経済変数 のみ が政策 的 因子 にな りう る。 政策当局 によって操作可能 な代表的経済変数 と して,貨幣供給量,公定歩合,公共投資,租税負 担率な どがある。 これに反 して,操作不可能な経 済変数の代表例 として,消費性向,貨幣の使用形 態 (マーシャルの k),民間投資 な どがあ り,経済 計画の変動 ない し撹乱要 因になる。 ケインズは,操作可能 な変数 として,一つには 公共投資,他には市場 の利子率を重視す る。貨幣 供給は,大衆の流動性選好 と利子率 との関連で論 及 され る。 この思考的背景 には,1930年代 におけ る深刻 な不況が存在 した。当時の経済状況は, イ ンフレーシ ョンではな くデ フレーシ ョンが問題で あ り,それは金本位制度 の欠陥 に深 く関連 してい た。失業者は街 にあふれ,物価 は急速 に下落 し, 企業はバクバクと倒産 していった。 このよ うな状 況 において,公共投資を奨励 して有効需要を創 出 す ると同時に,貨幣供給量を増加 させ利子率の騰 貴 を防 ぐ, とい うケインズの主張は理 にかなった ものであった。 それか ら
5
0
年,今 日の経済社会 は大 きく変質 し た。産業構造は極めて高度化 し,福祉志向が強 ま り,各種の社会制度 も充実 した。経済はかつての デ フ レーシ ョン体質 か らイ ン フ レーシ ョン体質 -, さらにはスタグフレーシ ョン体質 と変化 して きた。その過程 の中で ケインズ的政策の有効性が 失われ,それに代わ って新 自由主義が台頭 して き たのである。既述 した よ うに, マネタ リス トは ケ インジァンとは異 な り,操作可能 な変数 として貨 幣供給量を重視 しなが ら,市場原理の回復 を図か り,困難 な経済問題 に対処 しよ うとす る。 構造的 ・制度的困難- 広義の経済政策の展開 それでは, マネタ リス ト的政策は現在の資本主 義 の病状- スタグフレーシ ョン- に有効な処 方集 とな りうるだろ うか。答 えは残念なが ら「否」 である。 マネタ リス トの業績 は, ケインジ ャンが 軽視 しがちな貨幣供給量の重要性を再認識 させた ことにあるとして も,それだけでは複雑 な現在の 資本主義の病 を治す ことはで きない。 マネタ リス トの意義 は貨幣の重要性の再発見 とい うよ りは, む しろ行 き過 ぎた ケインズ主義への警鐘 ない し反 撃にあ る。 この よ うな視点か ら捉 えたほ うが,マ ネタ リズムと呼ばれ る経済思想は明確 になる。(B7) 行 き過 ぎた ケインズ主義 においては,一国の貨 幣供給量 は膨張 し,財政は構造的に硬直化 し,市 場活力は失われてい く。 ブキ ャナンらも指摘す る よ うに, とくに議会制民主国家においては財政の 構 造 的膨 張 に歯 止 め を か け る こ とはむ ず か し い。は8)その結果,ケイソズ政策は破綻 してい く。こ の よ うな状況か ら脱却す るために,貨幣供給量を 厳 しく統制す ることは理 にかなってお り, また市 場活力の回復や小 さな政府を求めることも当然で ある。 貨幣供給量の適正化は,物価の安定 とい う第一 目標 に対 しては有効である。事実,最近のアメ リ カにおけるマネタ リス ト的政策は, インフレの収 束 とい う点ではそれな りの成果をあげてい る。 と ころが,第二 目標である雇用の維持に関 しては, 惨傍た る状況であ り,失業率は10%を超 える深刻 さであ る。 ある意味で,物価を鎮静化 させ るため に,失業 の大幅増大 とい う犠牲を払 ってい るわけ であ り, マネタ リス トの主張 とは裏腹 にむ しろフ ィ リップス仮説の世界である。 失業問題 に関 しては, マネタ リス トは 「自然失 業率仮説」 を提唱す るが, これは失業問題 の解決 を回避す るものである。われわれは,
「失業率は長 期的 には 自然失業率に定 まる」 とい うよ うな見解 を求めているのではない。 アネタ リス トのい う自 然失業の概念は, ケイン.),アンのい う構造的失業 を多少拡張 したにす ぎない。問題は 自然失業率を いかに下げ るか とい うことであ り, この重要な問-2
1-題 に対 して, マネタ リス トは具体的解決策をほ と ん ど示 していない。 現在の失業問題 は,経済社会の構造的かつ制度 的問題 に深 くかかわ ってお り, ケイソズ的方法で あろ うとマネタ リス ト的方法であろ うと,狭義の 経済政策では解決不可能である。高度産業社会 と か福祉国家 とか呼ばれ る現在の資本主義にあって 紘,経済政策は社会の構造面や制度面 に整合 して はじめて有効に機能 しうるものであ り, ここに狭 義の経済政策の限界がある。 明 らかに,狭義の経済政策を超 える広 い経済政 策一一一広義 の経済政策- が要請 されている。広 義の経済政策においてほ,単にケインズ的ない し マネタ リス ト的経済政策だけでな く,経済社会の 構造的ない し制度的病理を解明 し,そ こにメスを 入れなければな らない。 しか し,広義の経済政策 が有効に機能す るためには,大衆の意識革命が必 要 にな り,その実行は多 くの困難 に直面す るであ ろ う。 注および参照文献 (I)J.M.Keynes:The General Theory of Emplom ent,InterestandMon砂,MacmillanPress
Ltd.,1936〔塩野谷九十九訳 F雇用 ・利子お よび貨幣の 一般理論j東洋経済新報社),第2編第4章,第5編第 21章。 (2)拙著 F市場価値分析の再構築- 現代市場経済の病 理- 』学文社,第4章。 (3)拙稿 「△法 に よる交換方程式の再評価- マネタ リ ス トの見解は妥当か- 」(長野大学紀要,第4巻,過 巻第17号,1983).を参照の こと。本稿 は この前稿 との 関連で論述 した ものである。 (4) マネタ リズ ムの政策的欠陥に関 しては,吉富勝 「レ ーガ ノ ミックスの総合的評価」(F週刊東洋経済』,近経 シ リーズ,No.66,1983)が的をえている。 (5) J.M .ケイソズ,前掲 F雇用 ・利子お よび貨幣の一般 理論』,第4編第15章。 (6)赤羽隆夫 F"非"常識 の 日本経済論』, 日本経済新聞 社,第4章, 昭和56年。 (7) この点に関 しては,飯 田経夫 「飯 田経夫の 自由奔放 経済入門
」
(F週刊東洋経済』,近経 シ リーズ,No.63, 1982)が面 白い。 (8)J.M.BuchananandR.E.Wagner:Demacra砂 inDejicit- ThepoliticalLegaQIOf Lwd Keynes,
AcademicPress,Incリ1977(深沢実,菊池威訳 F赤字 財政 の政治経済学』文真堂) などが代表的 な ものであ る。