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外来で放射線療法を受けているがん患者のQOLに影響する要因

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外来で放射線療法を受けている

がん患者の QOL に影響する要因

瀬 沼 麻衣子, 武 居 明 美, 神 田 清 子

瀬 山 留 加, 篠 田 静 代, 北 田 陽 子

五十嵐 玲 子

要 旨 【目 的】 外来で放射線療法を受けているがん患者の QOL に影響する要因を明らかにする. 【対象と方法】 外来で放射線療法を受けているがん患者 73名 (平 年齢 64.2歳, SD12.2歳) を対象とし, QOL 評価尺度 FACT-G を用いて質問紙調査を行った. 【結 果】 QOL 得点の平 は 74.8 (SD17.1) 点であり, 影響する 要因について検討した結果, 25項目について有意差が認められた. さらにステップワイズ法で重回帰 析を 行った結果, QOL に影響する要因は影響の大きい順に, 原疾患による手術の有無,ソーシャルサポート (家族 以外), 疲労感, 再発・転移の不安, PS, つらさの 6項目であった. 【結 語】 QOL 得点には心理・社会的要 因が大きく影響していることが明らかとなった.看護支援としては,影響要因をスクリーニングし,QOL 低下 の早期発見と,低下している患者へ対し早期に支援を開始することが必要である.(Kitakanto Med J 2011; 61:51∼58) キーワード:放射線療法, がん, 外来, QOL .は じ め に 放射線療法は, 手術や化学療法と並ぶ, がんの 3大治 療の一つである. 他の治療法と比較して身体的な負担が 少ないことから, 合併症を持つ患者や高齢者にも実施す ることができる.また,化学療法との併用や術前・術後の 補助療法としても用いられている.さらに大多数の患者は, 外来で治療を行うことが可能であるという特徴を持つ. 外来での治療は, 生活の場を変えることなく仕事や趣 味を継続することができるという利点があり,QOL を高 く維持できることから, 治療の外来化は急速に進んでい る. 一方で, 外来で治療することは入院よりも医療者が 関わる時間が少なくなるため, 副作用症状やストレス等, 患者自ら管理・対処していくことが求められる.また,外 来通院しているがん患者は, 家族の理解や協力など周囲 の人々との関係に起因するニードがある と報告されて おり,家族や周囲の人からのサポートも重要になってくる. これらのことから, 外来で放射線療法を行う患者の QOL には,どのような要因が影響を与えているのか明ら かにする必要がある. 放射線療法における研究は, 味覚や食に関する研究 や, 患者の気持ちや思いに対する研究 などが行われて いるが, その数は他のがん治療法における研究数と比較 すると圧倒的に少ない. さらに, 外来で放射線療法を受 ける患者についての研究はごくわずかであり, 研究の蓄 積がなされていない状況である. その中で, 放射線療法を受ける患者の QOL が報告さ れている. 対象が外来患者に限定されてはいないが, QOL は治療の中間期に最も低くなる ことが明らかに されている. そこで, 本研究では QOL が最も低くなる治 療の中間期において, 外来で放射線療法を受けるがん患 者の QOL に影響する要因を明らかにすることで, 患者 のニーズに った情報提供や,QOL を高める看護支援を 検討することを目的とした. 1 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 3 群馬県高崎市中尾町886 日高病院 平成22年11月29日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 神田清子

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.研 究 目 的 外来で放射線療法を受けているがん患者の QOL に影 響する要因を明らかにし, 患者のニーズに った情報提 供や, QOL を高める看護支援を検討する. .概念枠組みと定義 1.概念枠組み (図 1) 外来で放射線療法を受ける患者の QOL に影響する要 因として挙げた 34項目を一般的背景, 治療・疾患要因, 心理・社会的要因の 3つに 類し,それぞれが QOL に影 響を与えているとした. 2.言葉の定義 QOL とは, 身体面, 機能面, 心理面, 社会面からみた患 者の主観的な生活の質とする. .研 究 方 法 1.対象者 A 病院放射線科外来と, B病院腫瘍センターにおいて 放射線療法を受けている通院患者で, ①がん告知がされ ている ②化学療法を同時に併用していない ③外来で の治療期間が 1か月以上経過している ④研究目的と研 究方法を説明し, 研究参加の同意が得られた方を対象と した. 2.調査方法 対象者による自己記述, または家族, 研究者の代理記 述による質問紙調査, 及びカルテからのデータ収集, 看 護師からの情報収集. 3.調査内容 質問紙の主な内容は, 一般的背景 (同居家族の有無, 職 業, 社会活動, 通院時間, 通院手段), QOL, 認知, つらさ, 日常生活への支障,気 ・感情,ソーシャルサポートとした. カルテによる情報収集は, 年齢, 性別, 疾患, 照射部位, 照射目的,PS (Performance Status),再発・転移の有無,原 疾患による入院の有無, 原疾患による手術の有無, 治療 日数, 治療回数, 照射線量等である. 4.測定尺度 1) FACT-G:Cella らによって開発された, がん患者 を対象とした臨床試験用の自己記入式 QOL 質問紙で ある. 身体面 7項目, 社会・家族面 7項目, 心理面 6項 目, 機能面 7項目の 4つの下位尺度, 計 27項目から構 成される. 得点が高いほど QOL が高いことを示す. な お, FACT-G の 用に際しては, インターネット の ホームページより所定の 用登録の手続きを行い, 用の許可を得た. 2) つらさと支障の寒暖計(DIT):秋月ら によって作 成されたがん患者の適応障害, うつ病のスクリーニン グのための自記式質問表である. つらさ, 支障それぞ れの点数をそのまま記載する. 点数は 0-10である. 数 字が大きいほどつらさや支障が大きいことを表す. 心 理的要因のつらさと日常生活への支障を把握する指標 とした. 3) POMS 短縮版:Douglas M.らが開発し,横山らに より翻訳された尺度であり, 緊張, 抑うつ, 怒り, 活気, 疲労, 混乱の 6つの下位尺度から気 や感情の状態を 測定することができる. 心理的要因の気 ・感情を把 握する指標とした. 4) 情緒的支援ネットワーク尺度:宗像 により開発さ れた尺度であり, 自 の周りに情緒的・心理的に支え になっている人が存在していると本人がどれくらい認 知しているのかを測定するものである. 10項目からな り, 家族の中で」「家族以外で」を 10点満点で別々に みる. 1. いる」を選択した場合は 1点, 2. いない」 を選択した場合は 0点である. 8点以上は関係が良好, 7∼ 6点は普通, 5点以下は不良を表す. 社会的要因の ソーシャルサポートを把握する指標とした. 図1 外来で放射線療法を受けている患者の QOL に関する概念枠組

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5.データ収集期間 平成 20年 7月∼10月 6. 析方法 データの 析には, 統計ソフト SPSS17.0 for Windows を 用し, 基本集計を行なった後に患者の一般的背景, 治療・疾患要因,心理・社会的要因と QOL 合得点との 関係を 析した. 平 値の差の検定では, 2項間の比較は t検定, 3項間の比較は一元配置 散 析 (F 検定) を 行った. また, 年齢, 治療日数, 治療回数, 照射線量, つら さ, 日常生活への支障, 気 ・感情, ソーシャルサポート については相関 析を行った. さらに, 有意差 (p<0.05) のみられた変数についてス テップワイズ法で重回帰 析を行い,QOL 合得点に影 響する要因を明らかにした. 7.倫理的配慮 本研究は, 研究施設の倫理委員会の承認を得て行った. 研究の参加についてはプライバシーの保護, データの管 理・ 用, 研究への参加は自由意思であることについて 説明を行い, 同意書による文章での同意を得た. また質 問紙への記入はいつでも中止することができること, そ れによる治療への影響はないことを説明した. .結 果 同意の得られた患者 73名に調査用紙を配布し, その う ち 記 入 漏 れ の な い 69 名 を 有 効 回 答 (有 効 回 答 率 94.5%) とした. 1.対象者の属性 対象者の平 年齢は 64.2 (SD12.2) 歳であった. 性別 は, 男性 44名, 女性 25名であった. 対象者の 8割以上が 家族と同居しており, また, 3割が仕事に従事していた. 通院時間は 30 以内が 6割を占めていた. 2.QOL得点 対象者の QOL 合得点は 43点から 104点に 布し, 平 74.8(SD17.1)点であった.下位尺度ごとの得点につ いて,身体面の平 は 21.7(SD5.4)点,社会面は平 16.7 (SD5.4) 点,精神面は平 16.8 (SD4.9) 点,活動面は平 18.9 (SD6.7) 点であった. 表1 一般的背景と QOL 得点の関係 n=69 項目 平 値 相関係数 有意確率 年 齢 64.2 0.290 項目 n (%) QOL 得点 SD 有意確率 性 別 男性 44 (63.8) 80.3 16.3 女性 25 (36.2) 65.0 14.0 同居家族 有 61 (88.4) 76.0 16.9 n.s. 無 8 (11.6) 65.4 16.6 職 業 既に退職 31 (44.9) 76.1 18.0 現在も働いている 20 (29.0) 85.3 11.2 専業主婦 10 (14.5) 61.2 10.2 休職中 6 ( 8.7) 54.7 6.0 その他 2 ( 2.9) 77.5 10.6 社会活動 特に行っていない 51 (73.9) 73.4 18.0 その他 8 (11.6) 81.8 10.9 n.s. ボランティア 5 ( 7.2) 77.2 23.8 老人会 5 ( 7.2) 75.6 4.8 通院時間 30 以内 43 (62.3) 74.9 16.9 30 から 1時間 22 (31.9) 74.3 17.4 n.s. 1時間以上 4 ( 5.8) 76.0 23.3 通院手段 車 (自 で運転) 49 (71.0) 74.9 17.0 車 (自 以外の運転) 9 (13.0) 69.8 16.5 自転車 4 ( 5.8) 65.5 20.1 n.s. 共 通機関 3 ( 4.3) 88.3 12.7 その他 4 ( 5.8) 83.3 17.1 n.s.有意差なし p<0.05 p<0.01 p<0.001 a : 年齢の 析には相関 析を用いた b : 2項目間 (性別, 同居家族)の比較には t検定を用いた c : 3項目間 (職業, 社会活動, 通院時間, 通院手段)の比較には一元配置 散 析用いた

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3.QOLに影響する要因 1) 一般的背景と QOL 合得点 (表 1) 一般的背景では, 年齢, 性別, 職業において, QOL 合 得点に有意差がみられた. 年齢は相関係数 0.290 (p< 0.05)で弱い正の相関がみられ,年齢が若いほど,QOL 得 点が低い傾向にある. また, 性別では女性より男性が QOL 得点が高く,職業においては「現在も働いている」 が QOL 得点が高かった. 特に, 現在も働いている」と 「休職中」の間で有意差がみられた.同居家族,社会活動, 通院時間, 通院手段において QOL 合得点に有意差は みられなかった. 2)治療・疾患要因と QOL 合得点 (表 2・表 3) 疾患では, 泌尿器の QOL 得点が高く, 泌尿器と乳腺の 間で QOL 合得点に有意差がみられた. 照射部位にお いても前立腺の QOL 得点が高く, 前立腺と乳房, 前立腺 と肺の間でそれぞれ QOL 合得点に有意差がみられた. 照射目的では, 根治的が最も QOL 得点が高く, 根治的と 症状緩和的の間で QOL 合得点に有意差がみられた. PS では, 0と 1の間で QOL 合得点に有意差がみられ た.再発・転移のない患者はある患者より QOL 得点が高 く, QOL 合得点に有意差がみられた. 原疾患での入院 や手術の経験のない患者の QOL 得点は, 入院や手術の 経験がある患者よりも高く,QOL 合得点に有意差がみ られた. さらに, 照射回数と QOL 合得点の相関係数 は−0.495 (p<0.001) で負の相関がみられた. つまり, 照 射回数が多くなるほど QOL 得点は低かった. 表2 治療・疾患要因と QOL の関係 n=69 項目 n (%) QOL 得点 SD 有意確率 疾 患 泌 尿 器 36 (52.2) 81.8 15.7 乳 腺 18 (26.1) 65.4 15.6 呼 吸 器 4 ( 5.8) 70.3 10.2 消 化 器 2 ( 2.9) 80.0 33.9 そ の 他 9 (13.0) 66.2 14.0 照射部位 前 立 腺 33 (47.8) 83.5 15.0 乳 房 18 (26.1) 65.4 15.6 肺 7 (10.1) 65.6 12.0 そ の 他 11 (15.9) 69.8 16.6 照射目的 根 治 的 52 (75.4) 77.4 17.7 準根治的 10 (14.5) 71.0 11.2 症状緩和的 7 (10.1) 60.6 11.6 PS 0 49 (71.0) 80.4 16.2 1 18 (26.1) 59.5 9.3 2 2 ( 2.9) 74.0 4.2 再発・転移 無 51 (73.9) 77.8 17.6 有 18 (26.1) 66.1 12.2 入院 無 27 (39.1) 83.5 15.5 有 42 (60.9) 69.1 15.8 手術 無 36 (52.2) 82.7 16.4 有 33 (47.8) 66.2 13.5 n.s.有意差なし p<0.05 p<0.01 p<0.001 a : 2項目間 (再発・転移, 入院, 手術)の比較には t検定を用いた b : 3項目間 (疾患, 照射部位, 照射目的, PS)の比較には一元配置 散 析用いた 表3 治療疾患・心理・社会的要因と QOL の関係 n=69 項目 平 値 相関係数 有意確率 項目 平 値 相関係数 有意確率 治療日数 35.7 −0.050 n.s. 気 ・感情 治療回数 19.9 −0.495 緊 張 5.2 −0.506 照射線量 48.2 −0.151 n. s. 抑うつ 2.9 −0.513 つらさと支障 怒 り 3.4 −0.186 n.s. つらさ 3.2 −0.515 活 気 6.3 0.473 生活への支障 2.7 −0.529 疲 労 4.8 −0.538 ソーシャルサポート 混 乱 5.5 −0.436 家 族 内 9.3 0.299 家族以外 7.0 0.404 n.s.有意差なし p<0.05 p<0.01 p<0.001 a : 析には相関 析を用いた

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3)心理・社会的要因と QOL 合得点 (表 3・表 4) 心理・社会的要因では,自 らしさの保持,治療による 外見の変化, 食事を楽しむことができているか, 治療部 位の皮膚が不快か,再発・転移の不安の有無,つらさと日 常生活への支障,気 ・感情,ソーシャルサポートの項目 において,QOL 合得点に有意差が認められた.『自 ら しさが保てない』と感じているほど,さらに『治療による 外見の変化』があると感じているほど QOL 得点が低 かった. また,『食事を楽しむこと』ができるほど,QOL 得点は高かった.『放射線治療の恐いイメージ』,『治療費 などの経済的な心配』では有意差はみられなかったが, 『治療部位の皮膚が不快』,『再発・転移の不安』では, 不 快感や不安が強いほど QOL 得点は低かった. つらさは, 相関係数−0.515 (p<0.001), 日常生活への 支障は−0.529 (p<0.001)で負の相関がみられ,つらさや 日常生活への支障を感じているほど QOL 得点は低下し た. また, 気 ・感情では, 緊張で相関係数−0.506 (p< 0.001), 抑うつで−0.513 (p<0.001), 疲労で−0.538 (p< 0.001),混乱で−0.436(p<0.001)と負の相関がみられ,い ずれも, それらの症状を感じているほど, QOL 得点は低 下した. 活気は相関係数 0.473 (p<0.001) と正の相関が みられ, 活気があるほど QOL 得点が高くなった. ソーシャルサポートでは, 家族内でのサポートは相関 係数 0.299 (p<0.05), 家族以外のサポートは 0.404 (p< 表4 心理・社会的要因と QOL の関係 n=69 項目 n (%) QOL 得点 SD 有意確率 自 らしさが保てない なし (自 らしさを保っている) 54 (78.3) 79.0 15.6 あり (自 らしさが保てない) 14 (20.3) 57.6 11.6 非常にあり 1 ( 1.4) 85.0 治療による外見の変化 な し 46 (66.7) 77.9 17.2 あ り 23 (33.3) 68.5 15.4 非常にあり 0 ( 0.0) 食事を楽しむこと で き る 56 (81.2) 77.7 16.6 できない 10 (14.5) 65.6 13.1 非常に難しい 3 ( 4.3) 50.3 7.6 放射線治療の恐いイメージ な し 47 (68.1) 75.7 18.5 n.s. あ り 22 (31.9) 72.7 13.8 非常にあり 0 ( 0.0) 治療部位の皮膚が不快 な し 50 (72.5) 79.4 16.0 あ り 18 (26.1) 63.7 13.3 非常にあり 1 ( 1.4) 43.0 再発・転移の不安 な し 21 (30.4) 90.1 12.1 あ り 42 (60.9) 68.7 14.4 非常にあり 6 ( 8.7) 63.5 15.8 経済的な心配 な し 39 (56.5) 78.5 18.3 あ り 29 (42.0) 69.4 14.3 n.s. 非常にあり 1 ( 1.4) 86.0 n.s.有意差なし p<0.05 p<0.01 p<0.001 a : 3項目間の検定には一元配置 散 析用いた 図2 QOL に関する重回帰 析結果 (ステップワイズ法)

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0.01) で, ともに正の相関がみられた. 各々サポートを受 けていると感じているほど,QOL 得点が高いことを示し ている. 4.QOL 合得点に関する重回帰 析結果 (図 2) QOL 合得点に影響する要因のうち, 有意差 (p< 0.05) がみられた 25項目について, ステップワイズ法に よる重回帰 析を行ったところ,QOL に影響する要因と して PS,手術の有無,再発・転移の不安,つらさ,疲労感, ソーシャルサポート (家族以外) の 6項目で QOL の 69%を占めていることが明らかとなった. 6項目全てに おいて有意差がみられたが, 中でも特に QOL に影響し ている項目は, 手術の有無と家族以外のソーシャルサ ポートであった. また, これらの 6項目のうち 4項目が 心理・社会的要因に属していた. . 察 外来で放射線療法を受ける患者の QOL の特徴と, 重 回帰 析より QOL 合得点に影響する要因として明ら かになった治療・疾患要因 (PS, 手術の有無), 心理・社 会的要因 (再発・転移の不安, つらさ, 疲労感, 家族以外 のソーシャルサポート), 及び看護支援について 察を行 う. 1.外来で放射線療法を受ける患者の QOLの特徴 本研究と同様の FACT-G を用いて, 外来で化学療法 患者を対象として行った研究 によると, QOL 合得点 は平 70.0(SD15.5)点であったと報告されている.今回 の研究では, QOL 合得点は平 74.8 (SD17.1) 点であ り, 外来で放射線療法を受けるがん患者の QOL は, 外来 で化学療法を受ける患者よりも高いことが明らかとなっ た. 放射線療法は, 放射線宿酔などの全身性の一時的な 副作用があるものの, 一般に局所療法である. そのため, 全身療法であり, 副作用が多様に出現する化学療法と比 較し, 身体への侵襲が少ないことから, 放射線療法を受 ける患者の QOL は高めであったと推測する. 2.QOL 合得点に影響する要因と看護支援について 1)治療・疾患要因 肺がん患者を対象とした QOL 調査では, PSが高いと 身体症状や精神状態に関連した QOL が悪化する傾向を 認めた ことが報告されており, この結果は本研究の結 果と一致している. 全身状態が悪化すると, 今まででき ていたことができなくなったり, それにより他者からの 支援が必要になったりするために, これまでの生活や役 割に変化が生じることが,QOL に影響を及ぼしていると えられる. また, 手術の有無について, 下妻によると, 乳房温存手 術を行った患者は術後早期に心理面の QOL の低下がみ られ, その原因として術後の残存乳腺に対する放射線照 射の影響と, 局所再発の不安があると述べている. ま た, 乳がん手術後の患者を対象に QOL の経時的変化に 関する研究において, 術後補助療法の副作用や治療効果 への不安が生じる時期である手術後 3か月に最も QOL が低かったと報告している. 今回の研究において,手術 の既往が最も多かった疾患は乳がんであり, そのために, 手術の有無が QOL に大きく影響する要因になったので はないかと える. 手術の既往がある患者は, それだけ 療養期間が長いということが えられ, 身体的・精神的 な負担に加え, 仕事や趣味など社会生活においても大き な影響を及ぼすと える. これらのことから, 看護支援としては, QOL を低下さ せる恐れのある項目のスクリーニングを徹底し, 早くか ら疾患や治療による症状や副作用に関する情報を提供す ることや, 異常や悪化の早期発見, 早期対処をしていく ことが求められる. さらに, 身体機能は治療が進むにつ れて低下し, 治療終了後も多くの症状が持続している ため, 治療終了後も継続的に支援していくことの重要性 が示唆された. 2)心理・社会的要因 放射線療法を受ける患者だけでなく, 一般に多くの患 者が, がんと診断され告知された場合, 死への不安や恐 怖を抱きうつ状態に陥りやすい ことが報告されてお り, 患者は死への不安や病状の悪化, 再発や転移の不安 を抱いている. 外来に通院するがん患者に関する研究で は, 診断が確定する前から, そして治療を終えてもなお, 常にがんの脅威にさらされる患者の姿が示されている. これらのことから, がん患者は常にがんの脅威や再発・ 転移といったがん特有の不安にさらされており, その不 安は治療が終了してからも継続することから, 再発や転 移の不安が QOL に大きな影響を与える要因の一つであ ることが説明できる. つらさには, 精神的なもの, 疾患によるもの, 治療によ るもの, 通院によるもの, 日常生活によるものなど様々 な要因が えられる. つらさの大きさは患者の主観であ り, 医療者が客観的に判断することは難しい. しかしな がら, 看護師は, 患者にとって最も身近な存在であり, 患 者を見守りサポートできる立場にある ことから, つら さと支障の寒暖計など, 簡 につらさが把握できるよう な指標を活用しながら患者の思いや不安を傾聴し, 支援 していくことが重要であると える. また, 患者会など を紹介し, 同じような疾患の人たちと関わる機会を持つ ことで, 悩みやつらい気持ちを かち合い, 励ましあう ことでつらさが軽減されると える.

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放射線治療中のがん患者の 怠感は, 治療開始後 4週 目 (照射回数平 18回)に最も高くなる とされており, 本研究の調査対象時期と重なる. そのため, QOL に大き な影響を及ぼしていたと える. 怠感は活動量の低下, 体に力が入らないなどの身体的な影響に加え, 抑うつな どの精神的な影響もあり, さらには外出の減少や人との 関わりが希薄になるなどの社会的な影響にも関係してい ると える. また, 先行研究 では, 怠感に関する看護 援助として放射線治療に伴って起こる 怠感の知識を深 めること, 定期的にアセスメントができる能力が必要で あるとしていることから, 看護師は患者の身体面・心理 面・社会面を含めたアセスメントを行い,疲労感・ 怠感 の程度や日常生活行動に影響を与える症状を把握するこ とが必要であると える. また, 活動と休息の調整を行 うなど, 体調に合わせた生活が送れるような支援が必要 である. ソーシャルサポートでは,家族・仲間・医療従事者との 関わりが 康維持に重要な役割を果たしている ことが 報告されている. 外来治療の特徴として, 仕事や趣味な ど社会生活を継続しながら治療するということがあり, 看護師は仕事と治療の調整を行うことや, 治療によって 生活範囲が縮小をすることのないよう支援していくこと が重要である. また, 家族内よりも家族以外のサポート の方が QOL に大きな影響を与えている結果になったこ とについて, 安藤らは, 慢性期がん患者は仕事への復帰 ができるかなどの社会性の不安がある としていること から, 家族に加え, 友人や医療者, 患者同士など, より幅 広い関わりが重要であることが示唆された. そのために は, 家族以外のサポートも受けられるように, サポート グループを紹介するなど, 治療後の活動範囲を広げる支 援を行うことや, 従来の生活を縮小することなく, 継続 して友人関係を維持し, ソーシャルサポートを受けられ るように支援することが重要であり,QOL の向上につな がると える.心理・社会的要因においても,外来という 限られた時間の中で有効な看護を発揮するために, 影響 要因をスクリーニングし, 早期に対応することが求めら れる. .本研究の限界と今後の課題 本研究は横断的な研究であるため,QOL の経時的な変 化を捉えることはできない. また, 質問紙調査であるた め患者の思いを具体的に明確にすることはできない. 今 後は, QOL の経時的な変化を捉えることや, 外来で放射 線療法を受ける患者の日常生活における困難を明らかに するための質的研究を行い, 看護支援の方法や役割を検 討することが課題である. 謝 辞 研究を実施するにあたり, 質問紙に回答をいただきま した患者様, 本研究にご協力いただきました A 病院放射 線科外来, B病院腫瘍センターのスタッフの皆様に心よ り感謝申し上げます. 参 ・引用文献 1. 小西美ゆき, 佐藤まゆみ, 佐藤禮子ら. 外来に通院するが ん患者の療養生活上のニードの起因. 千葉大学看護学部 紀要 2002; 24: 41-45. 2. 水谷美之, 市来博美, 花田麻衣子ら. 放射線化学療法を受 ける食道がん患者の食に対する思い. 日本看護学会論文 集 成人看護学Ⅱ 2007; 37: 59-61. 3. 大釜徳政, 吉本喜久恵, 江川幸二ら. 口腔がん患者におけ る放射線治療に伴う味覚変化・口腔内反応と食欲特性に 関する基礎的研究. 日本がん看護学会誌 2006; 20(2): 51-60. 4. 赤石三佐代, 石田順子, 石田和子ら. 放射線治療経過に伴 う乳がん患者の気持ちの変化. THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2005; 55(2): 105-113. 5. 赤石三佐代, 布施裕子, 神田清子. 初めての放射線治療を 受けるがん患者の気持ちのストレス対処行動に関する質 的研究. 群馬保 学紀要 2005; 25: 77-84. 6. 丹下幸子, 金子昌子, 薮野かつ子ら. 放射線治療を受ける がん患者の治療過程における Quality of Lifeの変化と関 連要因.日本看護学会論文集 成人看護学Ⅱ 2001; 32: 179-181. 7. 池上直己 : 臨床のための QOL 評価ハンドブック. 医学 書院 2001: 52-61.

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Factors That Influence the QOL of Cancer Patients

Who Have Undergone Radiotherapy as Outpatients

Maiko Senuma,

Akemi Takei,

Kiyoko Kanda,

Ruka Seyama,

Shizuyo Shinoda,

Yoko Kitada

and Reiko Igarashi

1 Gunma University Hospital, 3-39-15 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, Japan

2 School of Health Sciences, Gunma University Faculty of Medicine, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, Japan

3 Hidaka Hospital, 886 Nakao-machi, Takasaki, Gunma 370-0001, Japan

Purpose: To elucidate the factors that influence the QOL of cancer patients who have undergone radiotherapy in the outpatient setting. Subjects and methods: The patients quality of life(QOL)was investigated by using the QOL evaluation standard FACT-G in 73 cancer patients(mean age 64.2±12.2 yrs SD)who had undergone radiotherapy as outpatients. Results: The mean QOL score was 74.8±17.1 pointy, and a significant difference was seen in about 25 items as a result of examining the factors that influenced the patients QOL. In addition, a stepwise multiple regression analysis revealed that the factors which influenced the QOL were the operation due to the original disease,social support (exclud-ing the family), tiredness, relapse and the metastasis, PS, uneasiness of presence in descend(exclud-ing order of influence. Conclusion : The results revealed the strong influence of psychological, mental and social factors on the QOL score. From the patient of view of nursing support for cancer patients,screening for these factors may allow earlier detection of any decrease in the QOL, or identify when the QOL has already decreased. Furthermore, support should be initiated at as early a stage as possible.(Kitakanto Med J 2011;61:51∼58)

参照

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