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介護通所施設利用者における口腔機能低下予防体操の効果(4) ― 介入プログラム終了後の利用者と職員への意識調査から ―

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介護通所施設利用者における口腔機能低下予防体操の効果⑷

介入プログラム終了後の利用者と職員への意識調査から

高 橋 美砂子, 橋 本 由利子

要 旨 【目 的】 介入プログラム終了後に行った利用者と職員からの意識調査から集団的アプローチによる口腔体 操の継続とその支援のあり方を検討する. 【対象と方法】 介護通所施設において集団的アプローチとして の口腔体操を 6ヵ月間介入した後に, 利用者 (n=15) と指導した職員 (n=22) に調査を行った.利用者には口 腔体操の感想と今後の継続意向に関する聞き取り調査を, 職員には体操内容や利用者の変化等について無記 名のアンケート調査を行った. 調査期間は 2009 年 9 月である. 【結 果】 利用者の多くは口腔体操につい て「ふつうだった」と答え, 自ら取り組むのは難しいが, 通所施設の仲間と一緒なら続けたいと答えた. 口腔 体操を指導した職員の約半数は楽しかったと答え, そう回答した職員は利用者も楽しそうだったと捉え, 利 用者の変化について多くの気づきが認められた. 【結 論】 利用者が口腔体操を継続するためには, 職員の モチベーションを高めることが不可欠であり, 職員が置かれている現状を 慮し, 現場に即したプログラム 作りが大切である.(Kitakanto Med J 2011;61:543∼548) キーワード:集団的アプローチ, 介護通所施設, 口腔体操, モチベーション は じ め に わが国の高齢人口の急激な増加に伴い, 介護保険制度 が 2000年からスタートした. その 5年後の改正時には, 予防」を重視する内容の見直しが行われ,さまざまな介 護予防サービスが導入された. 介護予防の目的は自立高 齢者が要介護状態になることを防ぐことと, 要介護者が それ以上状態を悪化させないことである. 口腔に関して も, その機能を維持向上させることが, 介護予防の目的 達成に効果があると認められ, 口腔機能の向上が介護予 防サービスのひとつとして加えられた. こういった社会 的背景を受けて, 多くの高齢者施設等で口腔ケアに対す る関心が高まり, 口腔清掃はもとより, 口腔体操が始め られるようになった. 口腔清掃 (特に専門的口腔ケア) に関しては, 入所施設での高齢者を対象とした研究報告 が多数あり, その効果が明らかにされている. また,口 腔体操においてもさまざまなプログラムが 案され, 実 施されているが, 介護通所施設での集団的アプローチの 口腔体操に関しては, その効果を明らかにした研究報告 は極少である. 筆者らがかつて行った調査結果 からも 「実施しているもののどういった効果があるのかわから ない」「効果について知りたい」といった現場で取り組ん でいる職員からの声があり, 口腔体操の取り組みを継続 させるためにも, 口腔体操の効果を明らかにする必要性 があると感じた. そこで介護通所施設利用者の協力のも と, 6ヵ月間, 集団的アプローチとしての口腔体操の介入 を実施した結果, 口腔機能と QOL の向上に一定の効果 があることが明らかになった. 本研究は, 上記介入研究の介入群に振り けられた 2 施設の利用者と職員を対象に, 介入プログラム終了後に 行った「口腔体操に関する意識調査」の結果を踏まえ,集 団的アプローチによる口腔体操の継続支援のあり方につ いて検討することが目的である. 【介入研究結果の概要】 2008年 2∼ 9 月にかけて, 群馬県内で研究協力の同意 1 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学医療保 学部 2 群馬県伊勢崎市山王町2020-1 東京福祉大学社会福祉学部 平成23年8月24日 受付 論文別刷請求先 〒379-2392 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学医療保 学部看護学科 高橋美砂子

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が得られた 3ヵ所の介護通所施設の利用者のうち, 2ヵ所 を介入群 (15名), 1ヵ所を非介入群 (10名) に割付, 両群 とも同じ調査項目で 2008年 2月に事前調 査 を 行った (表 1). その後介入群には, 6ヵ月間集団的アプローチと しての口腔体操「みんなのお口の体操」を実施してもら い, 事後調査を行った. 事後調査項目は, 事前調査と同じ で, 加えて口腔体操後の感想を利用者と職員から聞いた. 非介入群は事前調査をしてから 6ヵ月後に事後調査を行 い,その後に「みんなのお口の体操」の指導を行った.調 査項目ごとに対象者個人の介入前後の変化量を求め, 介 入群と非介入群間を t検定 (対応のない) で比較検討し た. その結果は,口腔機能面の「唾液湿潤度」「頰の膨ら まし」「舌の動き」の項目と,QOL 面では「毎日誰かと話 す」において有意の差が認められた.その他,統計的な差 こそなかったものの QOL 面全体的に, 介入群は向上傾 向があり, 非介入群は低下傾向があった. (表 2, 表 3) 【介入プログラム「みんなのお口の体操」の内容】 「みんなのお口の体操」とは,介入研究のために作成し た集団的アプローチとしての口腔体操のことで, 内容は 以下のとおりである. モーツアルトのきらきら星変奏曲 をピアノで標準の速さよりもゆっくり弾き, それに合わ せて, 1) はじめの歌 2) 深呼吸 3) 肩の体操 4) 首の体操 5) 目と口の開閉 6) 口 (アイウエオ) の運 動 7) パタカラで歌う 8) 頰の運動 (膨らませ, へこ ませる) 9 ) 舌の運動 (上下左右) 10) かみかみ運動 (臼歯の咬合) 11) 3ヵ所の唾液腺マッサージ 12) 深呼 吸 を約 10 間で行う. みんなのお口の体操」のプロ グラムに則った CD と大型ポスターを製作し, これらを 利用しながら, 職員が利用者の見えるところに立って指 導する. 方 法 1.調査対象 介入プログラムに参加した 15名の利用者と口腔体操 の指導に関わった施設職員 22名を調査対象とした. 2.調査方法 6ヵ月間の介入プログラム終了後の事後調査時に, 利 用者には個別の聞き取りによって行った. 利用者それぞ れのデイサービス利用日に合わせて出向き, 調査した. 職員には無記名のアンケート調査用紙を配布し, 記入後 の用紙は専用封筒に入れてもらい, 用紙配布後 12日目 に施設に出向き回収した. 調査期間は 2008年 9 月. 3.調査内容 利用者に対しては, 口腔体操を実施した際の率直な感 想と, 内容で難しいところがあったか, 音楽や速さはど うだったか,通所施設以外 (自宅等)でも行ったことがあ るか, 今後も続けたいか,等を聞いた.職員には,性別,職 種, 業務経験年数, 口腔体操を指導しての感想, 体操内容 について, 音楽や速さについて, 職員からみた利用者の 反応や変化についての質問項目と自由記載欄を設けた. 4. 析方法 利用者, 職員の調査結果はそれぞれに単純集計を行っ 表1 介入研究の結果 (1) 対象者の基本属性 介入群* n=15 (%) 非介入群 n=10 (%) 性 別 女性 11 (73.3) 6 (60) 男性 4 (26.7) 4 (40) 年齢 (歳) 82.3 (SD±7.7) 76.3 (SD±9.5) 服薬中 14 (93.3) 9 (90) 家族 あり 11 (73.3) 7 (70) なし 4 (26.7) 3 (30) 残存歯数 9.2 (SD±9.48) 12.9 (SD±8.78) 義歯 あり 12 (80) 8 (80) なし 3 (20) 2 (20) *本調査は介入群の利用者に実施した. 表2 介入研究の結果 (2) 介入前後の口腔機能の変化量 介入群 (平 値) 非介入群 (平 値) t 検定 唾液湿潤度 (mm) 1.1 −2.8 p<0.05 開口量 (mm) 4.2 1.1 n.s. 口唇閉鎖力 (kg) 0.28 0.18 n.s. 両頰膨らまし良好度 0.8 0.1 p<0.05 舌の動き (下方) 良好度 0.9 −0.1 p<0.01 咬合力 (kgf) 0.9 0.8 n.s. むせ自覚なし 0 −0.1 n.s. *はい : 3点 ふつう : 2点 いいえ : 1点 n.s. not significant 表3 介入研究の結果 (3) 介入前後の ADL, QOL 関連項目スコアの変化量 介入群 (平 値) 非介入群 (平 値) t 検定 ADL 0 0.5 n.s. GOHAI 0.07 −3 n.s. うつ傾向 −0.1 −0.1 n.s. 関連質問 歌が好き −0.33 −0.2 n.s. 話をするのが好き 0.77 −0.3 n.s. 毎日誰かと話す 0.33 −0.2 p<0.01 食事が楽しい 0.07 −0.2 n.s. 食欲がある 0.13 −0.2 n.s. ADL : Barthel Indexを 用し,階段昇降の項目を除いた 9 項 目の合計 90点満点

GOHAI : General Oral Health Assessment Index 日本語版 Vol. 1.0を 用し, 12項目の合計 60点満点

*藤澤らのアセスメントツールを 用し, うつ 5項目の合計 (はい : 1点 いいえ : 0点)

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た.さらに職員の調査結果からは,職員の「みんなのお口 の体操」に対する評価と職員がみた利用者の反応と変化 について, χ 検定および Fisherの正確確率検定によっ て比較検討した. 5.倫理的配慮 東京福祉大学倫理審査委員会 (承認番号 19-01 2007. 5.17)および協力施設の倫理委員会の審査を受け,承認さ れた内容を遵守した. 施設長, デイサービス担当職員, 利 用者および家族に文書と口頭で説明し, 署名で同意を得 た. 途中で協力をやめても不利益にならないこと, プラ イバシーの配慮 (話の内容が他人に聞こえない工夫), 得 られたデータは ID 番号で管理し研究以外の目的で 用 しないこと等を約束した. 結 果 1.利用者からの聞き取り調査の結果 6ヵ月間, みんなのお口の体操」に参加した 15名の利 用者全員から聞き取りを行った. お口の体操はどうだっ たかの問いには, 9 名 (60%) が特別な感想はなく「ふつ うだった」と答え,積極的に「面白かった」と答えた人は 3名 (20%) のみであった.その他,飽きてしまった,よく できなかった, と回答した人が 1名ずついた. 体操の内 容が難しかったかどうかの問いには, 特にない」が 10 名 (67%), 調度よい」が 1名で, 約 7割の人には問題な かった. 難しかったと答えた人 3名からは, 難しかった 内容として, 音楽についていけなかった 1名, 頰の膨ら ましが 2名であった.介護通所施設以外 (自宅等で)でも 実施したかの問いには,10名 (67%)が「しなかった」と 答え,2名が「時々 (10回以上/6カ月)した」,2名が「た ま (1∼ 2回/6ヵ月)にした」と答えた.今後も続けたい かの問いには,13名 (87%)が「みんなと一緒にここ (通 所施設) でならしたい」と答え, そうしたいと思ってい る」と答えた 1名を加えると,9 割の人がみんなと一緒な ら続けたいと答えた (表 4). 2.職員からのアンケート調査の結果 介護通所施設で利用者に「みんなのお口の体操」を指 導した職員は, 女性 20名, 男性 2名の 22名で, 全員から 回答を得た.職種の内訳は,介護職 16名 (73%),看護職 2 名 (9%), その他 (介護支援専門員, 事務) 4名 (18%) で あった. 年齢構成では, 30歳台が最も多く 10名 (46%), 次いで 50歳台 7名 (32%), 40歳台 4名 (18%), 20歳台 は 1名で, 業務経験年数は 5年以上が 16名 (72%), 5年 未満 6名 (27%) で, 介護経験豊富な職員が多かった (表 5). 口腔体操を指導した率直な感想として, 楽しかった」 13名 (59%), まあまあふつうだった」4名 (18%), 面 倒くさかった」5名 (23%) であった. 体操の内容につい ての問いは, 調度よかった」7名 (32%), 内容が多すぎ た」5名 (23%), やさしかった」2名 (9%), 難しかっ た」2名 (9%), その他が 5名であった. その他の内容と しては, (利用者の) 前に出るのが嫌だった, 順番を間違 えてしまった (自由記載欄から)等であった.速さについ ては「調度よかった」が 17名 (77%), 速すぎた」といっ た回答も 5名 (23%)あった.音楽についてはモーッアル トのきらきら星変奏曲をピアノで比較的ゆっくり弾いて もらったものであるが,全員が「音楽があってよかった」 と答え, このままでよい」16名 (72%) と大半の職員か 表4 利用者からの聞き取り調査結果 (n=15) 調査項目 回答数(人) (%) 1) 口腔体操の感想 おもしろかった 3 20.0 ふつうだった 9 60.0 少し飽きてしまった 1 6.7 よく出来なかった 1 6.7 その他 (曲がよかった) 1 6.7 2) 口腔体操の内容について 特に難しいところはなかった 10 66.7 調度よい内容だった 1 6.7 少し長すぎた 1 6.7 難しいところがあった 3 20.0 (難しかった内訳) 音楽についていけない (1) 頰の膨らまし (2) 3) 通所施設以外 (自宅など) でも行ったか しなかった 10 66.7 時 々 (10回以上/6ヵ月) 2 13.3 たまに (1∼2回/6ヵ月) 2 13.3 その他 (回答なし) 1 6.7 4) 今後も続けたいか 仲間となら続けたい 13 86.7 したいと思っている 1 6.7 特に思わない 1 6.7 表5 職員の基本属性 (n=22) (人) (%) 性別 女 性 20 91 男 性 2 9 年齢 20歳台 1 4.5 30歳台 10 45.5 40歳台 4 18.2 50歳台 7 31.8 職種 介護職 16 72.7 看護職 2 9 その他 4 18.2 (その他の内訳) 介護支援専門員 (2) 事務職 (2) 業務経験年数 5年未満 6 27.3 5∼ 9 年 9 40.9 10年以上 7 31.8 記載なし 1

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ら支持された (表 6). また, 職員からみた利用者の反応については, 14名 (64%)が「楽しそうだった」と回答しているが, つまら なそうだった」との回答も 8名 (36%)あった.利用者の 変化については, 食欲がでたようだ」「表情がよくなっ た」などと答えた人が 2∼ 3割程度いたが, 特に変化は ない」との回答も半数程度あった (表 7). 職員自身が口腔体操の取り組みを「楽しかった」, ま あまあふつう」, 面倒くさかった」と評価したそれぞれ の群に け, 利用者の反応や変化についてどのように捉 えているか検討したところ,職員が「楽しかった」と答え た群では,利用者も「楽しそうだった」と捉え,反対に「面 倒くさかった」と答えた群では,利用者も「つまらなそう だった」と回答する傾向であった (p<0.01) (表 8). また,利用者の日常的な変化についても,職員が「楽し かった」と答えた群では「食欲が出たようだ」「会話が増 えたようだ」「表情がよくなった」「よく嚙むようになっ た」「むせが少なくなった」といった多くの変化に気づき があり (複数回答可), 反対に「面倒くさかった」と答え た群では,利用者の変化は「特にない」と全員が答えてい た. 職員の評価別に, 利用者の変化が 1つでもあったと 答えた人数と特に変化なしと答えた人数を比較してみる と, 有意の差が認められた (p<0.01) (表 9). 察 集団的アプローチによる「みんなのお口の体操」の介 入により, 口腔機能の一部と, QOL 面での向上が認めら れたものの高齢者自身が効果を自覚するまでには, さら に長い月日の取り組みが必要ある. 今回行った調査から 表6 職員のアンケート調査結果 (n=22) 調査項目 回答数(人) (%) 1) 口腔体操指導の感想 楽しかった 13 59.0 まあまあふつうだった 4 18.2 面倒くさかった 5 22.7 2) 口腔体操の内容について 調度よかった 7 31.8 やさしすぎた 2 9.0 難しかった 2 9.0 内容が多すぎた 5 22.7 その他 5 22.7 3) 速度について 調度よかった 17 77.3 速すぎた 5 22.7 4) 音楽 (曲) について (複数回答可) 音楽があってよかった 22 100.0 このままでよい 16 72.7 違う曲でもいいのでは 1 4.5 表7 職員からみた利用者の反応と変化 (n=22) 回答者数 (人) (%) 利用者の反応 楽しそうだった 14 63.6 つまらなそうだった 8 36.4 利用者の変化 (複数回答) 食欲がでた 6 27.3 会話が増えた 3 13.6 表情がよくなった 5 22.7 よく嚙むようになった 5 22.7 食べこぼしが少なくなった 5 22.7 むせが少なくなった 3 13.6 特に変化は感じられない 10 45.5 表8 職員の感想と職員からみた利用者の反応との関係 (n=22) 職員の感想 (人) 楽しかった (13) ふつう (4) 面倒くさかった (5) 利用者の反応 楽しそうだった 12 1 1 * つまらなそうだった 1 3 4 * : p<0.01 χ 検定, Fisherの正確確率検定 表9 職員の感想と職員からみた利用者の変化との関係 (n=22) 職員の感想 (人) 楽しかった (13) ふつう (4) 面倒くさかった (5) 利用者の変化 (複数回答可) 食欲がでた 5 1 0 会話が増えた 3 0 0 表情がよくなった 5 0 0 よく嚙むようになった 4 1 0 食べこぼしが少なくなった 5 0 0 むせが少なくなった 3 0 0 (再掲) 1つ以上よい変化あり 11 1 0 * 特に変化なし 2 3 5 * : p<0.01 χ 検定, Fisherの正確確率検定

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は, 通所施設以外で取り組んだ利用者は少なく, 高齢者 が自ら行うのはやや困難であるが, 仲間となら続けたい と答えた人が多かったことから, 通所施設のようなとこ ろで, 職員も一緒になって行えば, 継続した取り組みが 可能ではないかと える. 調査対象者は, 通所施設利用 者の中では比較的自立度が高く, 理解力も保たれている が, 多少なりとも介護を要する人々であり, 平 年齢も 80歳を超えていることから, このような取り組みへのモ チベーションを維持するには周囲の支援が必要である. 口腔機能向上の取り組みは, 体幹の筋力トレーニングに 比して, やや効果が見えにくい側面があることから, 利 用者本人のみならず職員も「続けていても本当に効果が あるのだろうか」と疑問や不安が生じやすい. 先の介入 研究において口腔体操を継続することの成果が客観的に 示せたことは, 本人や職員の取り組みの意欲向上の一助 になったのではないかと えている. また, 集団的アプ ローチは, 改善幅が少なくても継続して取り組むことに よってより大きな効果が期待できるといわれていること から, 途中でやめてしまわないような働きかけが必要 である. 本調査の結果から口腔体操が「楽しい」と答えた職員 からは, 利用者も「楽しそうだ」と捉えている人が多く, また, 利用者の小さな変化をよく観察し, 口腔体操の効 果を積極的に認識しようとする姿勢がみられた. 反対に 口腔体操にあまり関心を示さない職員は, 利用者の変化 にも関心が寄せられない回答だった. このことからも職 員の関心や意欲を高めることが, 口腔体操を楽しく継続 させるために重要である. 職員は利用者のよい変化を感 じることによって, やりがいや意欲が高まり, ひいては 利用者も楽しく取り組めるといった相互作用が働き, そ のことも取り組みが継続できることにつながる. 職員自 身の意欲向上については, 昨今の介護現場が置かれてい る社会的背景 (慢性的な人手不足や現任教育の問題等) が影響していることも えられ, こういった労働背景を 視野にいれた詳しい調査が必要であり, また, 楽しく取 り組めている職員やそういった職場を調査し, その要因 を明らかにすることで, 支援のあり方を具体的に示せる と える. 今後の課題とする. 一方, 口腔体操そのものの内容を取り組みやすいもの にする, すなわち していて楽しい ものにすることも 重要である.今回 用した「みんなのお口の体操」は,介 入研究のために作成したものであり, 口腔機能を評価す る内容を網羅させたために, やや内容が多すぎたことは 否めない.「内容が多すぎる」との指摘は職員 5名と利用 者 1名からあり, 難しかった, 速すぎた, 飽きてしまった 等の改善に向けた指摘を真摯に受けとめつつ, 単にプロ グラムを短く, 簡単にすれば, 解決できる問題なのかを 見極めながら, プログラムの改善に努めたい. 介護通所 施設には, 本調査の対象者だけでなくその他多くの利用 者が来所しており, みんなのお口の体操」はその日の来 所者全員で行うことから, この調査結果を参 にさらに 配慮する問題もあろう. 高齢者の場合, 職員主導型になりやすく, 職員の関心 の如何で集団の方向性が左右される可能性が大きい. 職員の置かれている現状を 慮した無理のないプログラ ム作りが大切であり, 現場と協働してその場に即したも のを一緒に作り上げていくことが望ましいといえる. また, 口腔体操を実施することによって, 何を期待し, 目標をどこに置くかであるが, あまり高い目標を最初か ら設定せず, 職員が気づいた利用者の変化としてあげら れた, 食欲がでる, よく嚙める, おしゃべりができる, む せが少なくなる等, 生活の質に関わる身近な項目に着目 し, こういったことが 1日でも長く維持できることを目 標にして, 利用者と職員が共に認識して励むことが長く 続けるために大切なことだと思う. 謝 辞 本研究に協力してくださった介護通所施設利用者の皆 様,忙しい業務の中「みんなのお口の体操」を指導してく ださった職員の皆様に心から感謝申し上げます. また, 本研究は社団法人至誠会岡本糸枝学術助成金を受けて実 施しました. 文 献 1. 植田耕一郎.口腔機能の向上マニュアル.厚生労働省口腔 機能の向上についての研究班報告書. 2006: 3 2. 高橋美砂子,橋本由利子.群馬県内の介護通所施設におけ る口腔ケア取り組みの実態調査. 桐生大学紀要 2008; 19 : 79-82. 3. 米山武義, 吉田光由, 佐々木秀忠ら. 要介護高齢者に対す る口腔衛生の誤嚥性肺炎に対する予防効果に関する研 究. 日本歯科医学会誌 2001; 20: 56-68. 4. 才藤栄一, 園田 茂, 鈴木美保ら. 康な心と身体は口腔 から―口腔の 康が高齢障害者の生活の質を高める―. 日本歯科医学会誌 2005; 24: 21-29. 5. 藤中高子. 専門的口腔ケアの導入と義歯の歯科医療介入 による要介護高齢者の QOL の改善. 日本 衆衛生雑誌 2008; 55: 381-387. 6. 高橋美砂子,橋本由利子.介護通所施設利用者における口 腔機能低下予防体操の効果 (1) ―通所施設利用者の口腔 機能と QOL―. THE KITAKANTO MED J 2009 ; 59(3) : 241-246.

7. 橋本由利子,高橋美砂子.介護通所施設における口腔機能 低下予防体操効果 (2) ―通所施設利用者の口腔内状況, 口腔衛生および口腔機能―.THE KITAKANTO MED J 2010; 60(1): 9-15.

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腔機能低下予防体操の効果 (3) ― 6ヵ月間の介入による QOL, 口腔機能の変化―. THE KITAKANTO MED J 2010; 60(3) : 243-249.

9. 植田耕一郎. 介護予防施策としての口腔ケア その現状, 問題点, 今後の展望. 衆衛生 2009 ; 73(4): 272-275. 10. Rose G : The Strategy of Preventive Medicine. 予防医学

のストラテジー―生活習慣病対策と 康増進. 曽田研二, 田中平三 (監訳) 東京 : 医学書院 1998: 20-30. 11. Patricia M. Burbank, Deborah Riebe: 高齢者の運動と

行動変容. 竹中晃二 (監訳): 東京 : Book House HD, 2005: 161-178.

Effect of the Oral Functional Exercises

in Day-Care Center Users (4)

Findings Based on Questionnaire Surveys to the Users

and the Staffs after the Intervention Program

Misako Takahashi

and Yuriko Hashimoto

1 Faculty of Health Care, Kiryu University, 606-7 Azami Kasakake-cho, Midori, Gunma 379-2392, Japan

2 School of Social Welfare,Tokyo University of Social Welfare,2020-1 Sanou-machi,Isesaki, Gunma 372-0831, Japan

Objective: Effects of oral exercise as a population approach can be enhanced through regular and ongoing support. This study aimed to consider directionality required to facilitate and maintain such support. Subjects and M ethods: The subjects were day-care users (n=15) who underwent a 6-month group oral exercise intervention, and day-care staff (n=22) who instructed the exercise sessions. In post-intervention surveys, day-care users were interviewed concerning their impressions of oral exercises and (un) willingness to continue with exercise. Anonymous questionnaire surveys were performed among day-care staff regarding the contents of oral exercises and changes observed in the day-care users after intervention. An investigation period : September, 2008. Results: Most of the day-care users rated oral exercise as neither good nor poor . Although they were not self-motivated enough to do exercises voluntarily, they were willing to continue in the company of other day-care users. Approxi-mately half of the day-care staff stated that they enjoyed the exercise sessions, while perceiving that the day-care users were also enjoying them. These staff observed various changes in the day-care users after intervention. Conclusion : To maintain oral exercise sessions, it is imperative to enhance motivation among day-care staff, and develop a program based on the actual situation of these staff members.

(Kitakanto Med J 2011;61:543∼548)

参照

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