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現職教員が改めて「授業の見取り」を学ぶことの意義と
その方法について
The significance and how of learning how to analysis of teachers is again lesson
猪 股 真 弥* INOMATA Shinya 要約:平成 30 年3月に新しい学習指導要領が告示され,新たな方向性が示された.そ の中で,「授業改善」が一つのテーマとなっている.授業改善の視点として,「主体的・ 対話的で深い学び」が取り入れられ,授業の見直しが喫緊の課題となっていることは 間違いない.そこで,山梨大学教職大学院の少人数での授業の特徴を生かし,現職教 員とストレートマスターが検討・協議し,改めて授業の見方を学習することで,自分 自身の授業改善につなげていこうとする意欲が高まった. キーワード:教職 主体的・対話的で深い学び 授業の見取り グループワーク
Ⅰ はじめに
山梨大学教職大学院では,1学年,現職教員8名,ストレートマスター6名の計 14 名で学年を形 成している.また,現職教員は,小・中・高といった様々な校種から集まっており,とかく他校種 との交流が少ない教育現場の教員にとっては,とても意味深い交流の場でもある.さらには,現職 教員とストレートマスターがともに交流するため,お互いの持ち合わせていない感性で話ができる ため,お互いが様々な経験をすることができる.こうした利点を生かして,授業を進めていきたい と考えている.Ⅱ 「授業の見取り」を行った背景
平成 30 年度からそれぞれの校種で順次,新しい学習指導要領が実施される.文部科学省(以降 文科省)から提示されている「幼稚園教育要領,小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」の 「1.今回の改訂の基本的な考え方」の二つ目に「知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等 の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の 質をさらに高め,確かな学力を育成.」と書かれている.その一つの方向性として,新学習指導要領 の第1章総則第3の1として,「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」が示されてい ると考えられ,ますます,授業の見直しが重要となってきていると感じる. 日本では,古くは明治から授業研究を繰り返し,児童生徒にとってよりよい授業の創造を目指し て,教員が研修に取り組んできている.今では,「Lesson Study」として,世界にも認められている 日本の誇れる教員研修のスタイルの一つである.しかしながら,本教職大学院の院生の中には,「授 業研究が活性化していない」という実感をもっている学生も少なくない.例えば,「校内研究会で発 言しにくい(教科間・年齢・勤務経験)」,「授業者の満足感につながらない」,「研究テーマが現実か * 教育実践創成講座・教育実践総合センターら乖離している」,「汎用性がない」,「校内研究会への参加意欲が低い(成果が見えにくい)」,「時間 の確保の困難さ,多忙化」などの意見を聞くことができた.「授業改善」が叫ばれている昨今,各学 校での校内研究会の活性化が,大きな意味をもつと考えている. そこで,実務家教員としては,授業づくりを支えることができる授業の見取りについて,学生と 一緒に考えることができないかと考え,新しい学習指導要領の基本的な考え方や方向性を一緒に学 ぶとともに,「授業改善を図る」,すなわち,「授業研究の活性化」について,一緒に考えていくこと の必要性を感じた.特に,「校内研で発言しにくい」という部分には,教科の専門性や年齢,勤務経 験などが影響していると考えられる.教科の専門性に特化しない,汎用性のある授業のチェック項 目があれば,だれであっても意見を言えるのではないかと考え,授業をいかに見ていくのかという 視点の大切さを改めて考えていきたい.
Ⅲ 「授業の見取り」の授業の実際
1.授業について 授業は,2コマ続きで行った.1コマ目では,次期学習指導要領の改訂の趣旨を勉強し,2 コマ目で,授業の見取りについて学ぶよう設定した. また,授業のスタイルは,前半をレクチャー,後半をグループ学習という形を取り,知識を 活用して,お互いにその知識を深めていかせたいという目的があった. グループは,現職とストレートマスター,また校種も混ぜる形で行った.様々な視点が期待 できると考えたからだ. 2.授業の実際 (1) 1コマ目「新学習指導要領の基本的な考え方や方向性について」の授業について ①授業の流れ まずは,校内研究会の必要性の一つの指標として,平成 22 年度から平成 29 年度にかけて の山梨県の児童生徒数や教職員数の現状を把握した.そこでは,児童生徒数の減少と合わせ て,教職員数の減少がみられることを理解した.そのことから考えられることは,「やまなし 教員等育成指標(山梨県教育委員会 H29.11)」の第1章2-(2)「学校を取り巻く環境の変化」 に書かれている「今後 10 年以内には全体の半数近くのベテラン教員が退職していくことにな る.」ということから,今までは自然に学校組織で行われてきた経験豊富なベテラン教員から 若手教員への知識や技術等の伝達が,教員の大量退職・大量採用等の影響から,年齢構成の 不均衡が生じるなどの影響で,困難になってくるということである.つまり,教員の資質向 上に不安が付きまとうことになる.したがって,すべての教職員で,校内研究会等を中心に, 授業研究をしていく必要があるということではないだろうかということを確認した. 次に,「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ ( 報告 )(中央教育審議会初 等中等教育分科会教育課程部会 H28.8.26)」を使って,「改定の基本方針」,「改定の方向性」, 「カリキュラムマネジメント」や「主体的・対話的で深い学び」について学ぶとともに,特に 授業改善の視点ともいえる「主体的・対話的で深い学び」のうち,「主体的な学び」と「対話 的な学び」について,その学びを引き出すためにできる授業の工夫について,議論・検討を 行った.これは,「主体的・対話的で深い学び」とキーワードでいわれても,具体的なイメー ジがわかないことや,独りよがりの解釈になってしまう危険性等が考えられるからである. そこで,個々のイメージを多くの学生と交流することで,よりイメージを広め,より具体的- 167 - - 166 - につかめるようにグループ討議を取り入れた.こうして,具体的なイメージができることで, 実際に授業で使えるキーワードになると考えた.方法は,個人で考える時間を 10 分.次に, 4人ほどのグループ(3つのグループ)で意見の共有を図る時間を 20 分.最後に全体発表し ながら 20 分ほどさらに議論と検討を重ねた. ②学生の反応 各グループでは活発な議論が行われた.全体発表された各グループの内容を以下に記し, 発表された内容をまとめた. 【主体的な学びにつながる工夫】 Aグループ ・ゴールが見える Ex.日常に活かせる(具体性) ・生徒の興味,関心を高める(積極性) Ex.魅力ある学習課題 役に立つ,大事だ=必然性 発達段階に合わせた教材 触れる,本物 = 実物教材 ・実感できる振り返り Ex.OPP などを活用して自分で評価する (達成感) Bグループ ・「できる(効力感)」,「できた(効能感)」 と感じられる. ・誉め言葉,認められる言葉がある.(支持 的な言葉) ・スモールステップが仕組まれ,目標が達 成できる授業 ・生徒にとって興味関心のある教材を使う (Authenticなもの) ・実用的志向性のあるもの(つまり役に立 つと思える瞬間のある授業) Cグループ ・児童が知りたい,やりたいと思っている ことを扱っている.あるいは思わせる仕 掛けや問い ・教材 Ex.実生活に活かせる素朴な疑問 既習事項を生かす(心が動く) 自分事としてとらえる ・見通しと振り返り Ex. ちょっと頑張ればできそう(最近接 領域) 全体像が見える 図 1 グループAのまとめ 図2 グループBのまとめ 図3 グループCのまとめ
≪まとめると≫ 〇児童生徒の興味関心を高める ・課題や発問:魅力がある,必然性がある,役に立つ,発達段階に合わせる,実物を用意す る,など ・授業中:誉め言葉,認められる言葉がけ ・授業構成:目標が達成できる授業 〇児童生徒に見通しをもたせる ・内容:日常に活かすことができる,ちょっと頑張ればできる ・概要:全体像を見せる・知らせる 〇振り返りをさせる ・評価:自己評価(OPP,「できた」という実感 など) ・見通しとの比較 【対話的な学びにつながる工夫】 Aグループ ・一人一人が考えをもっていること ・何について話すか(話す目的)が明確(生徒にも指導者にも意図がある) ・ちょっと難しい課題の設定 Ex.一人で考えるには少し難しい課題 答えが一つにならない課題 多様な価値判断ができる課題 ・グループワークのルールの徹底 ・安心できる人間関係 Bグループ ・ペアワークやグループワークが機能する授業 ・先生と生徒,生徒同士の考えや思いを交流できる雰囲気がある. ・意味のあるやり取りがある Ex.場面設定 必然性 実用性 ・1人で解決できないような探求的な発問の工夫 ・ロールプレイ,ディスカッションがプロジェクトなどできる ※良好な生徒同士,教師と生徒の人間関係,温かい学級の雰囲気 Cグループ ・人の意見を聞く ・交流する ・自分の考えをもつ時間 ・形態の工夫(ペア,グループなど,教師が必要性を考える) ≪まとめると≫ 〇一人一人に考えをもたせる 〇課題の工夫
- 169 - ・明確 ・答えが一つにならない ・多様な価値判断ができる ・探求的で 1 人では解決できない 〇グループワークのルールの徹底 〇安心できる人間関係 〇形態の工夫(ペア・グループ・全体) 〇時間の確保 ③考察 今回の授業では,新しい学習指導要領の基本的な考え方や方向性について,理解できるよ うに講義を行い,実際にどのような取組や工夫が考えられるのかを中心にグループワークを 行った.これは,ストレートマスターと現職が混ざってのグループワークということもあり, ストレートマスターにとっては,現職のもつ豊富な経験を垣間見ることができ,知識の広 がりが実感できたと思われる.また,現職同士でも校種が違ったり,経験年数が違ったりと 様々な視点からの意見が,お互いの考えを広く,深くするものになったと考えている. 学生のOPPシートから以下のようなコメントが見られた.(下線は筆者) ・個の時間をしっかり確保することが特に大切であると思います.自分の中でどう考えて いるのかをしっかりと整理することで他人との意見交換にも生きてくると思います.今 後,自分自身も良い問いについて考えたり,実際に授業で使ってみたりすることで,よ り良いものを作っていきたいです.(ストレートマスター) ・主体的な学び,対話的な学びどちらにおいても,教師の仕掛けがもたらす影響がとても 大きいと感じた.また,対話的な学びについて考えたとき,その根底には,子どもの主 体性が必要不可欠であり,双方についてつながりをもって考えていく必要があると思っ た.(ストレートマスター) ・次期学習指導要領で求められる指導力を振り返り,主体的・対話的な学びになるための 授業の工夫について,考え討論した.話し合いの中で,児童の興味関心を高める課題設 定やちょっと頑張ればできそう(これをどのくらいに設定するのか)という見通しをも つことが出ており,動機付けや最近接領域と関連して,授業の工夫について考えられた. (ストレートマスター) ・老いも若きもみんなで研修!は大切だと思います.今日のようなグループ活動を行うだ けでも,主体的,対話的な学びについて考えを広めることができたと思うからです.校 内研であれば,このグループ活動の後に教科でどう主体的,対話的な授業を仕組むのか という事を考える機会があれば,充実した校内研になると思いました.(現職・中) ・主体的と対話的を別個のものと考えるべきでないだろう.主体的な学びを行う中で,必 要であるから対話活動を行うであろうし,意味のある対話が行われるからこそ主体的 (性)が高まっていくと考える.大切なのは,教師が,明確な意図をもって授業を行うこ とではないだろうか.(現職・小) ・「主体的な学び」「対話的な学び」になるための工夫を考えた.効力感や効能感が感じら れること,役に立つ!と感じられるなど,意味のあるやり取りができる課題の設定や発 問が重要になってくると思う.(現職・高) ・主体的,対話的で,深い学びの理念は理解しているつもりです.でも,実際の授業の中 で落とし込むことは,やはり明確になっていないとできないことだと感じた.理念は確 実に実現してこそ意味があり,価値が出てくると考えた.具体的にはどのようにするこ
とだろうかと授業者が考えておく必要があると考えた.(現職・中) 授業としては,「具体的にはどんな工夫が考えられるか」というところまで考えが至ら なかった意見もあったが,考えていかなければいけない視点などは多く取り上げられた. OPPの記述を見ると,「主体的・対話的で深い学び」はそれぞれが独立して考えられる ものではなく,つながりがあったり,総合して考える必要があったりすることだととら える学生がいた.「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ ( 報告 )(中央 教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 H28.8.26)」では,「これら「主体的な学び」 「対話的な学び」「深い学び」の三つの視点は,子供の学びの過程としては一体として実 現されるものであり,また,それぞれ相互に影響しあうもの…」と書かれており,あえ て,具体的な姿をイメージすることで,相互の関連についても感じ取れたと考える.ま た,「教師の工夫」や「仕掛け」など,授業改善の視点として考えることができた学生 もいる.まさに,この「主体的・対話的で深い学び」は,授業を改善するための3つの 視点であることに間違いはない.その視点に注目する必要性を感じたことは,グループ ワークの成果でもあろう. (2) 2コマ目「授業の見取り」の授業について ①授業の流れ まずは,1コマ目で学習した次期学習指導要領の方向性から,「授業改善」の必要性につい て再認識するようにした.例えば,「授業改善は,授業研究によってのみ達成できる」との考 え方を一緒に考えるとともに,「いくら理屈で考えたところで,実際に授業してみないと,成 果や課題は見えてこない.授業を見たり,見せたりすることで,始めて授業改善に着手でき るのではないか」という考え方や,「授業改善」を,「必ずしも今の授業を否定するものでは ない」との考え方も理解しつつ,現在の授業を評価する材料にするためにも,授業研究が必 要であることの理解を進めた.しかしながら,前述したように現場では,「授業研究が活性化 していない」という実感をもっている学生も少なくない.例えば,「校内研究会で発言しにく い(教科間・年齢・勤務経験)」などは,特に中・高の先生方にとっては教科の専門性が壁に なっていると考えられる.そこで,教科に特化しない汎用性のある「授業の見取りチェック リスト」などの考え方ができるように,授業を進めていった.方法は,「授業の見方-「主体 的・対話的で深い学び」の授業改善」(澤井陽介 2017.7.1 東洋館出版社)を参考に,まず,研 究授業の前にチェックできること,次に,研究授業中にチェックできること,最後に,研究 授業が終わった後にチェックできることという3つの段階で考えてみた.一つ目の授業前段 階のチェックについて,「授業の見方」を参考にしながらレクチャーを行い,その考え方をも とに,授業中のチェックの内容について,1コマ目同様,グループ活動を設定した. <第1段階:研究授業の前> 研究授業の前は,指導案の見方である.「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援 学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)中央教育審議会 H28,12,21) では,「学習指導要領等の改善の方向性」にある「(1)学習指導要領等の枠組みの見直し」の 中で,「以下の6点に沿って改善すべき事項をまとめ,枠組みを考えていくことが必要となる」 と書かれており,これを,学習指導案を見取る際の視点にあてはめ考えてみた.
- 171 - ⅰ「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力) ・単元や本時の目標→学習課題がその目標を実現するための問いになっているか? ⅱ「何を学ぶか」(教科等学ぶ意義と,教科等間,・学校段階間のつながりを踏まえた教育課 程の編成) ・単元や本時の内容→予想される児童生徒の反応例は? ⅲ「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施,学習・指導の改善・充実) ・学習活動→どのような活動を通して,目標を実現しようとしているのか? ⅳ「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子どもの発達を踏まえた指導) ・教師の指導の手だてや支援 ⅴ「何が身についたか」(学数評価の充実) ⅵ「実施するために何が必要か」(学習指導要領との理念を実現するために必要な方策) 表1,例示した指導案チェックリスト ⅰ何ができるように なるか 本時の目標 わかりやすい表現か ⅱ何を学ぶか 本時の内容 予想される子供の反応例は的確か ⅲどのように学ぶか 学習活動 学習活動(話し合い,ペア学習など)は的確か ⅳ子ども一人一人の 発達をどのように支 援するか 教師の指導 の手だてや 支援 指導の手だてが的確か ⅴ何が身についたか 学習評価 評価基準,材料は的確か(いつ,どの場面で, 何を,どのように) ⅵ実現するために何 が必要か 整えるべき 条件 TTの働きは的確か <第2段階:研究授業中> 第一段階として,研究授業の前の見取りを,指導案のチェックリスト等を参考にレク チャーしたあと,第二段階として,授業中は何を見るのかについて,協議・検討した.まず は個で考え,グループワークで意見をまとめ,全体発表で共有した.指導案の見方をならっ て,チェックリスト的なものを作成してほしかったが,指示が明確でなく,様々なイメージ が出てきてしまった. <第3段階:研究授業の後> 研究授業のあとは研究会であり,この研究会をどのように運営するかがポイントとなる. 討議の柱の立て方について,議論したかったが,時間の関係で省略した.ただし,参加者の 心構えとして「授業者の努力に応える」「授業記録をもとに話す」「代案を示す」を提示し, 授業を終えた. ②学生の反応 第2段階において,グループ活動を取り入れた.各グループ活動でまとめた意見を以下に 記した.
Aグループ 【教師について】 ・授業前の教師の様子(生徒とのやり取り) ・教師の立つ位置 ・内容(教員の教えようとしている内容の 広がり・深さ) ・指示(順番や内容,説明・発問・指示の バランスや組合せ) ・板書(筆順,レイアウト(1 時間の様子 が見えるか)) ・発問(中身,教師と生徒の発話のバラン ス,補助発問の伝え方) ・机間指導(動く道順,生徒への声掛けの内容) ・時間配分(どの活動に何分かけているか,タイムマネジメント) ・支援(生徒のつぶやきをどのように拾っているか,TTとの役割分担) 【生徒について】 ・グループワーク(隣の生徒とのやり取り,話し合っている内容,子ども同士の人間関係, 生徒のつぶやき) ・子供の学び(ワークシートやホワイトボードの内容,ワークシートへの記入状況,発言の 内容,ノートへの記述内容) ・表情(顔つきからわかる / わからない,集中している / していない,楽しそう / 楽しそうで ない) 【その他】 ・教室の状況(掲示物の状況,清掃用具入れ) Bグループ 【人(教師)】 ・適切な問いかけができているか(主発問, 表現はわかりやすいか,子供の発言の取 り上げ方,問いかけ) ・ねらいに向かえるような支援ができてい るか(机間指導の意図,手が止まる子ど もへどのように支援したか) 【人(生徒)】 ・ねらいに迫る反応があるか(意見やつぶ やき,顔の表情) ・学習活動は機能しているか(ペアやグ ループでの活動の様子・回答,子ども同 士の会話) ・考えを示すことができたか(ノートやプリントへの記入内容,問題復習時の手の動き) 【もの】 ・環境は整っているか(掲示物の様子や貼り方,学級の子どもの構成(人数や男女比など), 座席配置) 図4 グループAのまとめ 図5 グループBのまとめ
- 173 - ・ねらい達成のための教材の工夫になっているか(教材教具,ICT,プリント) 【その他】 ・ねらいに沿った授業展開になっているか(授業の構成(山場,メインの活動)) ・授業の展開が板書からわかるか(子供の考えを書いて,つなげたり整理できたりするもの になっているか) ・時間の使い方は有効であったか(マネジメント,アクティビティーの時間配分,板書の時 間) Cグループ 【教師の指導技術】 ・立ち位置 ・机間巡視の仕方や様子 ・指示は適切か ・わかりやすい説明か ・声の大きさやクリアーさ ・発問の工夫 【指導の手だて】 ・活動の適切さ ・対話的か,深い学びか ・時間配分(タイムマネジメント,コント ロール) ・無理のないステップで目標に向かえているか ・授業展開 ・教師と生徒の意味のあるやり取りがある ・活動と活動のつながりがあるか 【生徒がどのように学んでいるか】 ・授業への参加姿勢や積極性,意欲的か,楽しんでいるか ・子供の表情(意欲的か,下を向いているか,寝ているか) ・子供たちのプリントやノート ・支援が必要そうな生徒の座席 【学習活動の土台】 【板書】 ・雰囲気 ・板書の見易さ ・子ども同士の人間関係 ・字が読みやすいか ・表情 ・まとめ方がわかりやすいか ・挨拶 ・制服の着こなし方 【教材】 【教師,生徒にとって両方の評価】 ・興味関心のあるものか ・目標は達成されていたか ・プリントが子どもにとってわかりやすいか ・評価はどうか 【教室環境】 ・床がきれいかどうか ・教室の掲示物 ・机の上の整理 図6 グループCのまとめ
③考察 今回の授業では,学生の興味関心が高い「授業をどのように見ていくのか」について,学 生と一緒に考えてみた.やはりグループワークを取り入れ,多くの考えが共有できるように 取り組んだ. 学生のOPPシートから以下のようなコメントが見られた. ・授業の何を見取っていくのかを考えていくことで,授業を見ていく際の自分の振る舞い が大きく変わってくるのだと思います.事前に授業の指導案を配り,読んでおいてもら うことも,本来研究授業で求められることだと思います.(実際は難しいのかもしれませ んが)→なので,端的に口頭で説明できるようにしておきたいですね.(ストレートマス ター) ・授業の見方について考えていく中で,自分の研究に絡んで,言葉というものに,強く自 分自身が着目していると感じた.それと同時に今回,グループワークの中で,自分が普 段,意識していない観点についても,知ることができた.「子どもに対して」,「ねらいに 対して」という考えを念頭におき,自分自身の授業実践につなげていきたい.(ストレー トマスター) ・授業の見方について 1 時間考えた.見方を考えるのと同時に授業の組み立て方についても 考えることとなった.何を見るかといわれると,いくつか挙げられるが,それはどうし てみるかと問われたことで,授業の見方として「ねらいに沿った授業展開になっている か」を中心として,そのための手だて・支援としてチェック項目を考えることができた. (ストレートマスター) ・授業を見てもらうチャンスがないのがとても残念ですが,たくさんの授業を見る機会に 恵まれている今年は,少しずつですが,授業を見る視点が増えていると感じています. 今日はその中でも,幹となる6つの視点を確認できてよかったです.これからも授業を 見せていただく中で,見る力を養いたいし,授業者にきちんと伝えられるように努力し たいです.そして,自分の授業を考えるときにこの6つの幹を意識したいと思います. (現職・中) ・自分自身が授業者として,児童の前に立っていた時には,考えもしなかった視点を多く 知ることができた.人に指摘されるからと捉えるのではなく,よい授業を作る視点を多 く得られた.知っていればできること,知らないが故に認識すらできていなかったこと が,きっとほかにもあるのだと思う.(現職・小) ・授業の見方についてグループワークをした.これまでに何度も授業を見せていただいて きたが,「見方」については学んだことも考えたこともあまりなかった.たくさんの視点 を得られたので,(後略)(現職・高) ・子どものための授業であるが,研究授業を見る見方から,視点を自分の授業改善のため にも見られた時の視点が重要ではないかと考えた.自分が考えた授業は,冷静に偏って いるところや課題となるところに気づきづらいと考える.だからこそ,チェックリスト のような省察する視点をもち,現場に戻っても,冷静に授業を見ていくことをしていき たい.(現職・中) これらのコメントを見ると,改めて「授業をどう見るのか」を考えることで,「授業を 見る視点が増えた」と実感する学生が多いことがわかる.またこの視点は,授業づくり の視点としても有効であるという感想も見られた.授業を見るという事と授業を作ると
- 175 - いう事は,表裏一体の関係であり,授業者の意図や工夫に着目することで,教科の専門 性に縛られることなく,授業研究に参加できるのではないかと考えられる. また,グループワークは,自分の視野を広げることにとても効果があることもわかる. さらに,このグループが様々な経歴をもつことで,さらに広がりを増すのではないかと いう事もわかる.