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お問合せ先

茨城大学学術企画部学術情報課( 図書館)  情報支援係

http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

ROSEリ ポジト リ いばら き  ( 茨城大学学術情報リ ポジト リ )

(2)

科学的探究におけるデータ解釈時の推論による表象プロセス

宮本直樹* (2017 年 8 月 31 日受理)

The Representation Process of Reasoning at the Time of Interpreting Data

in Scientiic Inquiry

Naoki MiyaMoto* (Accepted August 31, 2017)

1 はじめに

 PISA (Programme for International Student Assessment) 2015の科学的リテラシーの必要なコンピ テンシーの1つとして「データの証拠を科学的に解釈する」(国立教育政策研究所 2016)が取り上 げられている。また,中学校学習指導要領理科の第1・2分野の目標には,「…その結果を分析し て解釈し表現するなど,科学的に探究する活動を通して…」(文部科学省 2017a:63,73)と明記 されている。中学校学習指導要領解説理科編においても,各所に「…結果を分析して解釈し…」(例 えば,文部科学省 2017b:68)と明記されている。一方,小学校学習指導要領算数の内容「D デー タの活用」では,第4~6学年において「…データの特徴や傾向に着目し…」(文部科学省 2017c:

64,69,73)という表現がなされ,さらに,中学校学習指導要領数学の内容「D データの活用」 でも,第1~2学年において「…データの分布の傾向を読み取り…」(文部科学省 2017a:53,56) という表現がなされている。このように,理科教育だけではなく,算数・数学の統計教育において もデータ解釈は重視されている。

 ところが,国内の各種調査で明らかとなったように,データ解釈に係る課題が指摘されている。 具体的には,平成27年度 全国学力・学習状況調査(中学校理科)において,「実験結果を数値で 示した表から分析して解釈し,規則性を見いだすことには課題がある」と指摘されている(文部科 学省・国立教育政策研究所 2015)。このような指摘からか,データ解釈は,新中学校学習指導要領 においても,引き続き,キーポイントとなっている。小学校理科においても同様である。調査結果 からの指摘ではないが,周知のように,「データからの読み取りが苦手である」「データから規則性 を見いださせることが困難である」といった教師による意見がある。

 先述した課題を克服するために,データ解釈能力育成に関する研究がいくつか存在する。例え

       

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ば,宮本(2015)は,サイエンスプロセス・スキルの利用によるデータ解釈能力育成法に関して 論じている。しかし,この研究では,データ解釈を手続き的なスキルと捉えている旨がある。デー タ解釈能力の育成は,言うまでもなくデータ解釈時に,認知的な推論が必要となる。この点に関し ては,宮本(2017)が,データ解釈時の推論のメカニズムの解明の重要性を指摘している。また, データ解釈時の推論のメカニズムの解明の重要性については,次に示す研究からも垣間見ることが できる。Shahら(2005: 454)は,グラフ表示の質的情報の理解研究において「グラフ理解やデータ解 釈に関する知識,知識内容,空間把握能力,ワーキングメモリは,見る人のデータ解釈に影響を与 える」と述べている。また,グラフからのデータの読み取りに関する知見ではあるものの,データ 解釈時の推論には,事前の信念(prior beliefs)が作用する(Shah, P. et al. 2005: 458-461)。換言す れば,先行知識やプレコンセプションの影響があるということである。このように,データ解釈時 の推論は認知的な側面がある。

 以上のような点を鑑みれば,データ解釈に関する具体的な認知的方略についての基礎的知見を得 る必要がある。この基礎的知見が得られれば,サイエンスプロセス・スキルの使用も踏まえ,児童・ 生徒のデータ解釈能力を育成することができる。ただし,断っておくが,データ解釈を認知的と捉 えるか,手続き的なスキルと捉えるか,といった二者択一の問題としてデータ解釈能力を扱うので はなく,この両者が折り合ってデータ解釈が遂行され,データ解釈能力が育成される。

2 「表象」を基にした推論に関する先行研究及びデータ解釈時の推論による表象プロセスの検討

 認知的方略に関する理科教育の先行研究に目を転じれば,「表象」を基にした推論に着目し,論 及している研究がある。例えば,和田・森本(2006)は,ブルーナーの知的飛躍理論を援用し,「活 動的表象→映像的表象→記号的表象」といった表象の変換過程を軸とし理科学習プログラム構築の 視点を指摘している。さらに,和田・森本(2010)は,化学学習において表象に関わる視覚化の 諸要素,すなわち動作過程(反応機構や反応過程の表象),変換過程(エネルギーの変換過程など の表象),分類過程(内容を整理,分類して表象),分析過程(反応を時系列で分析して総合的に表象), 精緻化過程(自律的な表象操作)の5つを同定し,高校化学の「化学反応と熱」単元を事例にして 科学概念構築における表象の分析を行っている。その結果,子どもの表象内容を教師が適切に視覚 化し,ディジタル化を施すことによって,子どもの様々な形式やレベルの表象の結合および表象の 相互変換が円滑になることを明らかにしている。また,和田ら(2013)は,メタ認知と表象機能 の関係の研究から,メタ認知的モニタリングとコントロールの往復運動の活性化と,その質的向上 を経る中で,表象の高次化との相互結合を達成したことを論じ,「結果の分析・解釈方略の再点検」 が表象ネットワークと結合していることを指摘している。具体的には,授業実践を通して,メタ認 知的モニタリングとコントロールによって,表象ネットワークは検索と表現,再点検,再構成と自 律的な活用,体制化・精緻化といったように高次化し,「結果の分析・解釈方略の再点検」と結合 したと述べている。しかし,これらの研究は,勿論データ解釈時の推論による表象プロセスに特化 して言及しているわけではない。

 そこで,「表象」を基にした推論に関する先行研究を踏まえて,データ解釈時の推論による表象 プロセスを明らかにし,データ解釈を促進,あるいはデータ解釈能力を育成する具体的な認知的方

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略に関する基礎的知見を得ることが必要となる。なお,本研究においては,「表象」を「心の中に 表現された情報やその表現形式」とする(都築 2013)。

 次に示す表象に関する先行研究のどの部分にデータ解釈が該当するのか,は不明瞭であるものの, 上羽ら(2015)は,Tytlerら(2013a)が示した「表象を通した推論過程」のモデルに和田・森本(2010) の「表象の変換過程」を対応付け,科学的な推論の成立過程に関する優れた研究を行っている。こ の研究は,データ解釈促進,あるいはデータ解釈能力育成に一脈通じるところがある。この研究で は,第一に,A事象の調査(実験・観察),つまり,「見通しをもつ」を,①「<パターンや特徴の 発見>データを記録すること。スケッチを取ることにより情報の整理・抽出を行う」,②「実験結 果から得た情報に対する分析を行う」としている。この際,表象が3D(活動的表象)から2D(映 像的表象)と移行されていくと述べている。第二に,B表象の構築(パターン解釈),つまり,「表 象の変容・論理構築」を①「質問や議論を介し,その中で表象と言葉を対応付けすることにより可 視化されたものを抽象化する」,②「自らの考えを統合し,そこから新たに考えを導く」,③「表象 を通じ,事象に関する視覚的で首尾一貫している自分なりの物語を作る」,④「〈メタ表象的判断〉

2D・3Dを介し表象された自分なりの物語をメタレベルで捉え直す」としている。この際,表象を 俯瞰的に捉えながら,3D,2D,1D(記号的表象),または,1D,2D,3Dと順に移行されていく と述べている。第三に,C「正当化を伝え合う」,つまり,「概念の共有」を①「効果的に理解し合 うための方法決定」,②「社会的に説明できるよう正当化する」,③「<問題解決>関連した状況や 他の事象に今までの考えを広げられるかどうか」,④「さらに広い意味について推論する」として いる。この際,表象が,3D,2D,1D,または,1D,2D,3Dと循環的に移行されていくと述べて いる。また,AとBの間には「(観察・実験の)指示対象についての表象を捉えなおす」,BとCの間 には「概念を発展させる説明を明確にするために表象を調整する」ことが示されている。しかしな がら,本研究のデータ解釈時の推論による表象プロセスは,差向き社会的構成主義に立脚しておら ず,個の構成主義を想定しているので,第三の①~④は,言うまでもないが,第二の①については, 「個で表象と言葉を対応付けすることにより可視化されたものを抽象化する」と捉えることにする。 したがって,第一の事象の調査(実験・観察),つまり,「見通しをもつ」や第二の表象の「構築(パ ターン解釈),つまり,『表象の変容・論理構築』」の認知的方略に関して,「<パターンや特徴の発 見>データを記録すること。スケッチを取ることにより情報の整理・抽出を行う」→「実験結果か ら得た情報に対する分析を行う」→「個で表象と言葉を対応付けすることにより可視化されたもの を抽象化」→「自らの考えを統合し,そこから新たに考えを導く」→「表象を通じ,事象に関する 視覚的で首尾一貫している自分なりの解釈をつくる」→「〈メタ表象的判断〉2D・3Dを介し表象 された自分なりの解釈をメタレベルで捉え直す」といった順が,本研究においては考えられる。  一方で,上羽ら(2015)が依拠したTytlerらの研究(2013a)では,表象変化活動内における推 論過程を図1のようにムカデ類の観察を通した事例で提示している。この研究では,表象によるモ デル化の実践が報告されているが,本研究のデータ解釈に係る内容に鑑みれば,図1の「表象の構築」 の「パターン解釈:表象を表現するためのムカデ類の特徴の分析と選択」「象徴記号を使った抽象 化プロセス(表象を表現するために何を,どのように可視化するか)」「視覚的で首尾一貫している

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 これらを踏まえ,上述した,認知的指導方略を,第二の表象の「構築(パターン解釈),つまり,『表 象の変容・論理構築』」に関して,「パターン解釈:表象を表現するために特徴の分析と選択」→「象 徴記号を使った抽象化プロセス(表象を表現するために何を,どのように可視化するか)」→「個 で表象と言葉を対応付ける」→「表象の首尾一貫性,明確さ,単純さの判断」→「表象を通じ,事 象に関する視覚的で首尾一貫している自分なりの解釈をつくる」→「〈メタ表象的判断〉2D・3D

を介し表象された自分なりの解釈をメタレベルで捉え直す」と修正することとする。

 さらに,一方で,鈴木ら(2016)は,物理領域における教授方略構想の視点を明らかにするために,

Tytlerら(2013b)の「表象構築の基盤原理」,すなわち,表象を創り上げていく1)表象リソース の明確化,2)表象の創造,3)表象の統合,4)表象の調整,という4つの学習過程と,a)選択目的,

b)合意・批判,c)型と機能,d)妥当性の吟味,という4つの教授の視点(表1),及び和田・森 本(2010)の「表象ネットワーク」を援用した優れた研究を行なっている。この研究では,「表象 を通じた物理的領域における概念構築を促す教授学習モデル」を提案している。この教授学習モデ

現 象 の 探 究:観察,非 公式に実験 ・ムカデ類の 動 き に 焦 点 化した観察 ・パターンを 見 当 付 け る ことと,動き に 関 連 し て い る 主 要 な 特 徴 を 解 釈・分析する こ と 。 例 え ば,足の動き の パ タ ー ン の特質や,体 節 の 動 き と 関 連 し て い る 足 の パ タ ーンなど

表象の構築 ・パターン解

釈:表象を表

現するための ムカデ類の特 徴の分析と選 択

・象徴記号を 使った抽象化 プロセス(表 象を表現する ために何を, どのように可 視化するか) ・視覚的で首 尾一貫してい る2D,3Dの

物語を作り出 すための総合 化 / 統合化

・表象の首尾 一貫性,明確 さ,単純さの 判断(メタ表 象的判断)

正 当 化 / 伝

・説明的物語 を効果的に伝 達することに ついて決定 ・解釈 / 説明

を公に正当化 ・さらに関連 した状況への 問題解決(そ れらの考えを 他の動物に拡 張 で き る の か)

・考えのより 広い意味につ いての推論 説明の指針

対象(ムカ デ類)の表 象を調整

概念的考え の発展 説明や解明 するために 表象を調整

図1 Tytlerらの表象変化活動内における推論過程

(出典:Tytler, R., Hubber, P., Prain, V., and Haslam, F. 2013a Reasoning in Science through Representation. In Tytler, R., Prain, V., Hubber, P., and Waidrip, B. (Eds), Constructing Representations to Learn in Science, Sense Publishers, Rotterdam, 94より転記)

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ルでは,構築した表象を操作し,知識の結びつきや表象の関連付けが強化され,一連の表象プロセ スを経て物理概念の獲得が可能となることが示されている。

 表1より,本研究に鑑み,データ解釈に係る主な要素を抜き取れば,学習過程では,1)リソー スの明確化と2)表象の創造,さらに,教授の視点では,a)選択目的,c)型と機能が狭義的に該 当すると考えられる。学習過程の3)表象の統合,4)表象の調整,教授の視点のb)合意・批判,d) 妥当性の吟味は,考えを班やクラスで共有化するなど社会的構成主義に立脚していると考えたため 除外した。それでは,具体的に鈴木ら(2016)の教授学習モデルの原型となったTytlerら(2013b) の「教授学習への表象構成アプローチに根拠を与える原理」を見てみると,「1.教授順序と表象 変換の順序の対応」「2.表象の共有化」「3.表象による推論」「4.表象の評価」の4つを示している (表2)。このTytlerら(2013b)の教授学習への表象構成アプローチに根拠を与える原理と本研究を 対応させれば,「1.教授順序と表象変換の順序の対応」の「a.教師は,主要概念を支えるリソー スを明確にする。つまり,表象活動の洗練化を導くためにトピックを計画する段階において,教師 は,ビッグアイデア(big idea),主要な概念,表象を明確に同定する必要がある」「b.表徴の必要 性を確立させる。つまり,規範的な形式を導入する前に,探究を通して説明する表象に対し,解決 困難な現象の性質や解決の必要性の確認が生徒に与えられる」,「2.表象の共有化」の「a.全表象 の選択目的:多様な表象は概念のある見方と共に働く必要があるということを,生徒は理解するこ とが必要である」が主に該当する。 

 これらを踏まえ,児童にとって困難されている「梃子の釣り合いの等式導出」に着目して,次節

表1 表象構築の基盤原理の概要

学習 過程

1)リソースの

明確化

学習を行って行く際に,どのような視点から考察を行うことが望ましいかを表象を創 造する前に明確化しておく。

2)表象の創造 子ども自身が考察するための表象を自分なりに作り出す。リソースを明確化しておく

ことで,目的をもって創造することができる。

3)表象の統合 教師や他の子ども,教材などと関わる中で新たな視点から創造された表象と,もとも

と創造していた表象とを統合する。

4)表象の調整 子どもの構築した表象を自分なりに操作することで,自分の理解に磨きをかけたり,

広げたりする。そうすることで,より一層,事象に対する理解が強固なものとなる。

教授 の視 点

a)選択目的 事象把握や考察には,どんな視点からアプローチすればよいかを与えたり,表象形態

の有効性を振り返らせたりする。

b)合意・批判 表象やその説明についてクラス班で共有し,正確さや有効性を検討する。

c)型と機能 言語や図,シミュレーション,数式など単元や分野の内容によって表象の形態はさま

ざまである。それらの機能を伝える。物理では特に多様な表象が予想される。

d)妥当性の吟

子どもの有する表象が妥当であるかを捉えるために,生徒の表象を把握する。つまり, 生徒の表象の中身を捉え,その表彰されたものを通じてどのようなものが彼らの中で できつつあるかを教師が捉える。

意味付け・論理立て 子どもは実験・観察や先行経験,感覚や知識を,それまでに構築してきた表象や考察

内容と対応付けたり推論を行ったりして,有意味な学習へと伝える。

(出典:鈴木ら(2016)「物理的領域における科学概念構築を促す教授学習モデルに関する研究─中学校第1学

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にて,データ解釈時の推論による表象プロセスを検討することにする。

3 データ解釈時の推論による表象プロセスの認知的方略の提案

 小学校理科「梃子の釣り合いの等式導出」について論じることにする。梃子の釣り合いの等式導 出は,児童にとって困難とされている理由は,鈴木ら(2016)の表象構築の基盤原理の概要にお ける学習過程の1)リソースの明確化と2)表象の創造にあるのではないかと考えられる。つまり, 学習過程の1)リソースの明確化として,表の提示(例えば,有馬 2016)はあるものの,2)表象 の創造の段階において,梃子の釣り合いの実験から得られる表象を形成させることを行っていない のではないだろうか。つまり,リソースを表としてしまい,リソースをイメージ図といった表象と いった学習過程を踏んでいないのではないだろうか。これによって,表象が創造されずに学習が進

教授・学習における表象構築アプローチを支持する原理

1. 教授順序は,表象変換の順序に基づいている。つまり,生徒は,現象についての活動的な探究や主張を形

成するために表象を構築する。

a. 教師は,主要概念を支えるリソースを明確にする。つまり,表象活動の洗練化を導くためにトピックを計

画する段階において,教師は,ビッグアイデア(big idea),主要な概念,表象を明確に同定する必要がある。

b. 表象の必要性を確立させる。つまり,規範的な形式を導入する前に,探究を通して説明する表象に対し,

解決困難な現象の性質や解決の必要性の確認が生徒に与えられる。

c. 生徒は,表象を調和させることを支援される。つまり,生徒は,説明を発展させ,問題解決のいたるところで,

表象を調和させることに挑戦し,支援される。

d. 生徒によって構築された表象や規範的な表象には調節プロセスがある。つまり,生徒は洗練化するために

挑戦し,支援され,そして生徒の理解を拡張し調節するように教師が導入した表象と生徒が構築した表象 間には相互作用がある。

2. 表象は明確に話し合われる。つまり,教師は,共有化された教室の一連の行為において,生徒の表象の構

築を批評し,支援するための話し合いにおいて足場掛けを行い,多様な役割を担う。このメタ表象の話し 合いの特徴は,次のことを含んでいる。

a. 全表象の選択目的:多様な表象は概念のある見方と共に働く必要があるということを,生徒は理解するこ

とが必要である。

b. 生成表象のグループでの合意:導かれたプロセスにおいて,生徒は,解決目的への明確化,包括性,説得

力(explanatory persuasiveness)に対し表象を批評する。

c. 型と機能:時宜を得た一部の明確化及び目標と共に,表象機能と型に関する明確な焦点がある。

d. 表象の適切性:生徒と教師は,生徒の表象の一貫性や説得力に関して進行中の評価のプロセスに参加して

いる。

3. 意味のある学習は,表象/知覚写像(mapping)に関わる。つまり,生徒は,物体の観察特徴,可能な推論

と表象間の繰り返される二つの方法,知覚写像/推論に働きかけている時,強固な知覚/経験の文脈を体験す

る。

4. 形成的,累積的評価は進行している。つまり,説明の中で,生徒と教師は,表象の適切性を評価するプロ

セスに組み込まれ,連続的に,表象の調節に関わる。

( 出 典:Tytler, R., Hubber, P., Prain, V., and Haslam, F. 2013b Reasoning in Science through Representation. In Tytler, R., Prain, V., Hubber, P., and Waidrip, B. (Eds), Constructing Representations to Learn in Science, Sense Publishers, Rotterdam, 34-35より転記)

表2 Tytlerらの教授学習への表象構成アプローチに根拠を与える原理

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んでいってしまい,梃子の釣り合いの等式が導出できないと考えられる。上羽ら(2015)の研究 に即して,「3D:梃子の釣り合いの実験」「2D:表作成」「1D:釣り合いの等式導出」と捉えれば,「2D: 表作成」と「1D:釣り合いの等式導出」を架橋する学習過程の「リソースの選択」がまず必要となる。 このリソースとしてのイメージ図によって,表象が創造されると考えられる。その上で,Tytlerら (2013b)に依拠し「1.教授順序と表象変換の順序の対応」の「a.教師は,主要概念(梃子の釣り合 い)を支えるリソースを明確にする」「b.表象の必要性を確立させる。梃子の釣り合いの等式の困難 さを感じさせる」と,「2.表象の共有化」の「a.全表象の選択目的:多様な表象は,概念(梃子の釣 り合い)と連動することを児童は理解することが必要である」と捉えれば,学習過程や教授の視点を, 教師が明確にイメージ図の使用,表の使用といった順にすることによって,表象が創造され,さら に,教師が「ブロック表現」などを提示することによって,児童にとって梃子の釣り合いの等式導 出が児童にとって容易になるのではないだろうか。

 図1を修正し,「現象の探究:実験」と「表象の構築」,「説明の指針」に焦点化して示せば,梃 子の釣り合いの等式導出のデータ解釈時の推論による表象プロセスは図2のようになる。本研究 における,「梃子の釣り合いの等式導出のデータ解釈時の推論による表象プロセス」の認知的方略 は,具体的に,まず,「現象の探究:実験」では,梃子の釣り合いの実験において,梃子の釣り合 いに関連しているパターンを見当付けることや,主要な特徴を解釈・分析として,左腕の目盛とお もりの重さは一定にした場合,右腕の目盛の数が増えると,右腕のおもりの重さが減るといった反 比例関係に気づかせる。次に,「現象の探究:実験」と「表象の構築」の架橋としての「説明の指針」 を導入する。ここでは,梃子の釣り合いの表象を調整するために,表象の表現としてのイメージ図 を導入する。さらに,「表象の構築」では,パターン解釈として,児童に表象を表現するための特 徴の分析と選択をさせる。そして,釣り合いを可視化する表象の表現方法として,例えば「ブロッ

現象の探究:実験 ・ 梃子の釣り合いの

実験

・ 梃子の釣り合いの パターンを見当付 けることや,釣り 合いに関連してい る主要な特徴を解 釈・分析すること。 例えば,左腕の目 盛とおもりの重さ は一定の場合,右 腕の目盛の数が増 えると,右腕のお もりの重さが減る

表象の構築

・ パターン解釈:表象を表現するための釣り合 いの特徴の分析と選択

・ イメージ図を使って抽象化(釣り合いを可視 化する表象の表現方法として,例えば「ブロ ック表現」など)

・ 表象と言葉(釣り合い)の対応付け

・ イメージ図(「ブロック表現」)による表象の 首尾一貫性,明確さ,単純さの判断

・ 表象を通じ,梃子の釣り合いに関する首尾一 貫している自分なりの解釈づくり

・ 表,梃子の釣り合いの実験と表象との対応判 断(メタ表象的判断)

・ 梃子の釣り合いの等式導出 説明の指針

(リソースの 明確化) 梃子の釣り合 いの表象を調 整(表象を表 現するために イメージ図を 導入)

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ク表現」(毛利 2011)などでイメージ図を使用した抽象化を行う。そして,児童が創造した表象と「釣 り合い」という言葉を対応付ける。加えて,イメージ図による表象の首尾一貫性,明確さ,単純さ を判断する。最後に,表象を通じ,事象に関する視覚的で首尾一貫している自分なりの解釈をつく り,表や梃子の釣り合いの実験と表象との対応判断をメタ表象的判断として行い,梃子の釣り合い の等式を導出する。

4 おわりに

 本研究では,「表象」を基にした推論に関する先行研究を精査,そして,データ解釈時の推論に よる表象プロセスを明らかにし,データ解釈を促進,あるいはデータ解釈能力を育成する具体的 な認知的方略に関する基礎的知見を得ることを目的とした。その結果,上羽ら(2015)の研究や, 上羽ら(2015)が依拠しTytlerら(2013a)が示した「表象変化活動内における推論過程」のモデ ルを参照,さらに,鈴木ら(2016)の研究やTytlerら(2013b)が示した「教授学習への表象構成 アプローチに根拠を与える原理」を踏まえて,小学校理科「梃子の釣り合いの等式導出」において, データ解釈を促進,あるいはデータ解釈能力を育成する図2のような認知的方略「データ解釈時の 推論による表象プロセス」を提案した。

 今後の課題として,この認知的方略「梃子の釣り合いの等式導出のデータ解釈時の推論による表 象プロセス」を踏まえた,授業実践を行うことは勿論のこと,科学的探究の文脈において,「問い の設定」時や「仮設設定」時の表象と,それらと「データ解釈」時の表象との関連も精査する必要 がある。他方で,中学校理科「オームの法則の等式導出」は,生徒にとって困難とされている,「オー ムの法則の等式導出」に関しても,「データ解釈時の推論による表象プロセス」を提案したい。

謝辞

 本研究はJSPS科研費 17K04813の助成を受けたものです。

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和田一郎・森本信也.2006.「理科学習における『経験』の意味に関する考察」『教育開発』第2号,27-37.

和田一郎・森本信也.2010.「子どもの科学概念構築における表象の変換過程の分析とその教授論的展開に関

する研究 ─高等学校化学『化学反応と熱』の単元を事例に─」『理科教育学研究』第51巻,第1号,

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