• 検索結果がありません。

マクロ経済学講義ノートpp36 44

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "マクロ経済学講義ノートpp36 44"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2017 マクロ経済学I

8

資本市場と民間部門の関わり

経済学で資本市場を話題にする場合、通常はそれがどのように資源配分に役立っているのか (いないのか)、さらに効率的にするにはどうしたらよいのかを考える。しかしここでは・・・。

資本市場 ✓

今手元にある資源を利用すれば、直ちに便益を得ることが出来るが、 そうしないで将来の別の便益のためにその資源を利用したいと考える経済主体 が、将来において便益(配当や利息)を受けるすることを条件に資源を提供し、

☛ ✡

✟ ✠

今 手元に資源がないが、すぐに資源を利用したいと考える経済主体 が、将来において便益を支払うことを条件にその資源を借り入れる場

貯蓄 経済主体が、資源(お金)を将来使うためにとっておくこと。貯蓄されたお金は資本市 場で運用されるものとする。

投資 企業の設備投資や家計の住宅投資。これらの投資が行われる多くの場合、資本市場でお 金を借りて投資支出がなされる。

金融投資 株式市場や先物市場などでの売買を通して利益をあげようとする経済活動は、世間 一般では投資と呼ばれる。しかし、本講義ではこのような経済活動は貯蓄と捉えるべきである。 この活動を他の貯蓄と特に区別して呼びたいときには、金融投資と呼ぶことにする。

8.1

家計と銀行

金利(利子率) 利息÷元本

ローン金利(借りるときの金利)> 預金金利(貸す(預ける)ときの金利)

預金金利 ガマンに対する見返り。(今すぐ消費することをガマン、リスクをガマン)

ローン金利 ガマンしないことを許してくれることに対する謝礼。(今すぐ消費できないこと

(2)

銀行の役割 直近の消費をガマンできる主体から資金を集め、今すぐお金を使いたい人に貸す。 (ローン金利−預金金利)が銀行の利益になる。正の利益を出すためには、十分な預金を集 め、お金を貸す相手を選別しなければならない。十分な預金を集めるためには、お金を貸す相 手を正しく選別する能力があることを示さなければならない。(だれでも銀行業を営めるわけ ではない。)

インフレリスク インフレ下では、箪笥預金はリスクを伴う。

例 8.1 今、米の価格が10Kg当たり5000円であるとする。1万円で買うことができる米の 量は20Kgである。1万円を1年間金庫にしまっておくとする。もし1年後に米の値段が10%上 昇し、10Kg当たり5500円になったとすると、1万円で買える米は約18Kg。

預金することによってインフレリスクを軽減できる。

実質金利 インフレーションを考慮に入れた金利

名目金利 − インフレ率

あなたの信用とローン金利 貸し倒れリスクがより低いと判断されるとローン金利は低くなる。

貸し手の判断基準 3C =Character(人格)、 Capacity(返済能力)、 Collateral(担保)

8.2

企業、起業と資本市場

:

資金集めの方法

知人、友人、親戚から借りる

銀行から借りる 銀行は企業の将来性を審査。企業の信用、将来性、担保に応じて、貸付額、

金利が決まる。

債券(社債) 借金の借用書。つまり借金。借金なので企業は期限がきたら償還(返済)しな

ければならない。市場で取引される。

株式 企業の将来の利益を分け与えられる権利のついた券。これを多くの人に買ってもらって 多額の資金を集める。多額の資金を集めるために、少額ずつ多くの人に出資してもらうための 工夫。例えば、1株500円で2000株売れば100万円集められる。未公開株と公開株。

(3)

2017 マクロ経済学I

クラウド・ファンディング

間接金融と直接金融

出資者の立場から見た株式と社債の違い

株式 経営に参加できる。(持ち株数に応じた株主総会での議決権)有限責任(limited liability)。 会社が倒産したとき、出資額分だけの責任を負う。つまり出資額は返ってこない。 社債 経営に参加できない。会社が倒産したとき、出資額に応じて出資額の一部が返ってくる可

能性がある。

8.3

単利と複利

資産の運用の仕方には単利運用と呼ばれるものと複利運用と呼ばれるものがある。みなさん も資産を運用したり、異時点間の資源配分を考える場合にはこの運用の仕方の違いに気を付け て下さい。

単利運用 当初の元本を基準に利子が計算される。元本は不変。 例えば元本A円を年利iでt年間単利運用することを考える。

1年後、元本はA円、利息はAi円、元利合計はA+Ai=A(1 +i)円。

2年後、元本はA円、利息はAi円、元利合計はA(1 +i) +Ai=A(1 + 2i)円。 3年後、元本はA円、利息はAi円、元利合計はA(1 + 2i) +Ai =A(1 + 3i)円。

...

t年後、元本はA円、利息はAi円、元利合計はA(1 +ti)円。

複利運用(1年複利) 元本に利子が追加される。

例えば元本A円を年利iでt年間、1年複利運用することを考える。 1年後、元本はA円、利息はAi円、元利合計はA(1 +i)円。

2年後、元本はA(1 +i)円、利息はA(1 +i)i円、元利合計はA(1 +i)

2

円。 3年後、元本はA(1 +i)

2

円、利息はA(1 +i)

2

i円、元利合計はA(1 +i)

3

円。 ...

t年後、元本はA(1 +i)

t1

円、利息はA(1 +i)

t1

i円、元利合計はA(1 +i)

t

円。

(4)

例題 8.1 A= 10,000円、i= 4%(年利)とする。1年間運用するとして、単利運用する場合、 1年複利で運用する場合、半年複利で運用する場合、3ヶ月複利で運用する場合の元利合計金額 をそれぞれ求めよ。さらに10年間運用する場合、30年間運用する場合についても同様に求め よ。ただし計算には以下の値を用いて下さい。

1.0410

= 1.4802,1.0430

= 3.2434 1.022

= 1.0404,1.0220

= 1.4859,1.0260

= 3.2810 1.014

= 1.0406,1.0140

= 1.4889,1.02120

= 3.3004

例題 8.2 10,000円をトイチで1年間借りると元利合計はいくらになるか。10,000 ∗1.1 36.5

= 324,215

8.4

資産管理

(有価)証券 財産に関する権利が記載された文書やデータ。債券、株式、投資信託の受益証

券、全国共通図書カード、アマゾン商品券、当たり馬券。不動産の証券化。

金融商品 法的には金融商品取引法で定められている。(有価証券は商法、金融商品取引法、刑 法。)金融機関や証券会社で売られている有価証券、通貨(外貨取引、CD)、デリバティブ商品。

インカムゲインとキャピタルゲイン

投資における4つのリスク 価格変動リスク、信用リスク、インフレリスク、流動性リスク

“確実にローリスク・ハイリターンな投資”なんてない

分散投資

例 8.2 (収益が独立な投資) トヨタの株が1株1000円で今期末の配当は50%の確率で100

円、50%の確率で0円。楽天の株も1株1000円で今期末の配当は50%の確率で100円、50%の 確率で0円。トヨタと楽天の業績は独立であるとする。2000円の資金でトヨタ(楽天)株のみ を購入すると、期待収益率は5%、元本に対する標準偏差の比は 5%。2000円の資金でトヨタ 株1株、楽天株1株を購入すると、期待収益率は5% 、元本に対する標準偏差の比は2.5%。

例 8.3 (負の相関) トヨタの株が1株1000円で今期末の配当は50%の確率で100円、50%の

(5)

2017 マクロ経済学I

ローリスク・ローリターン ハイリスク・ハイリターン

普通預金、定期預金、国債、現金通貨 投資信託

株式、社債 不動産 オプション取引

先物取引 貴金属

絵画

図 8.1: リスクピラミッド

デリバティブ 金融派生商品。リスクを取引する商品。少額の元手で多額の投資ができる(レ

バレッジ)。レバレッジを使って投資して失敗すると大損することになる。以下は、「やさしい デリバティブ」より引用。

先物取引 先物取引とは将来の売買についてあらかじめ現時点で約束をする取引。現時点では売買 の価格や数量などを約束だけしておいて、将来の約束の日が来た時点で、売買を行う。 オプション 「将来の一定の期間に、一定の価格で商品を取引する権利」を売買する。ストックオプ

ションなど。権利は行使しなくても良い。

スワップ 将来のある期間または時期に発生する利息や損失を交換する取引。円建て日本国債の利息 とドル建て米国債の利息を交換する、“お金を貸している会社が倒産したときに倒産した 会社の代わりにお金を支払ってもらう権利”とお金を交換する(CDS,クレジットデフォ ルトスワップ)など。

生活に使う資金は低リスクの運用。数年使わない余剰資金は中リスクの運用。高リスクの運 用はそれでもまだあり余る資金が人だけにした方がよい。先物やオプション取引は元本割れで は済まないこともある。(追い証[おいしょう]、委託追加証拠金)

金融工学 80年代アメリカ、財政赤字→NASA、リストラ→金融工学の誕生。Ito’s Lemma(確 率微分方程式に関する定理、伊藤清)

(6)

2%(貸すときも借りるときも同じとする)のときあなたはこの株を買いますか。

2. 株式市場への参加者全員が、企業Aが今期末に1株当たり20円の配当があると予想し、 また来期には2020円になると確信しているとする。利子率が2%のとき、企業Aの株価 はいくらになるでしょうか。

例題 8.4 1. 利子率が10%であるとする。(貸すときも借りるときも同じとする)企業Bの 株は現在1株1000円。この株は1年後に2000円になるか500円になるかのいずれかであ る。(確率は分からない。)さらに、この株を1年後に1340円で買うことができるオプショ ンが300円で売買されているとする。利子率が10%(貸すときも借りるときも同じとす る)のときあなたはこのオプションを買いますか、それとも売りますか。

2. 適正なオプション価格はいくらですか。

9

資本市場の役割

金融投資の収益率 金融投資を行って得られるであろう利益はそれを行った時点より遅れてやっ

てくる。投資する時点ではこの利益の大きさは確定していない。つまり金融投資にはリスクが 存在する。(これについては企業の設備投資も同様である。)予想される最良の利益と最悪の利 益の乖離が大きいとき「リスクが高い」とか「リスクが 大きい」といわれる

7

。リスクの大 きさは売買する金融商品の種類や、利益が得られるまでの時間により異なる。

例題 9.1 リスクがある状況はどちらか。

1. 雨が降りそうだが降っていない。傘を持たずに出かける。 2. 土砂降りの中、傘を持たずに出かける。

遅れて得られる収益 金融商品の購入額

を「○○の 収益率」あるいは単に収益率と呼ぶことにする。

9.1

異時点間資源配分の調整

より高く評価される用途により多くの資源が使われるよう誘導する 例えば、多くの人がIT関

連企業が生産する財を欲しがっていて、それらの財への需要が高まっているとする。→ 人々は 企業の利潤が増え、その企業の株式の配当も大きくなると予想=株の収益率が高くなると予想 → この企業の株式に対する需要増→株価上昇→増資などを通じて投資→ 将来において財の供 給量増。

7

(7)

2017 マクロ経済学I

価格が同時点の資源配分を調整するのに対し、収益率は異時点間 の資源配分を調整する。 高い収益率を期待させる投資のアイディアと実行力さえあれば、自分が資産を持っていなく ても(特別な家系に生まれなくても)、そのアイディアを実行し、将来は大きな資産を手にす ることが可能。

収益に対する誤解 金融投資後に遅れて受け取る所得は「不労所得」と呼ばれ、不当なもの

とみなされ、非難の対象となる場合がある。この考えによれば、本当に富を作り出せるのは労 働者だけで、投資家は富の生成には何も貢献せず、不正に分け前を取っていることになる。

しかしこの議論は、投資家の過去の努力を無視している。投資するための資金は労働して稼 いだものかもしれない。投資するためにその時点の便益を我慢している。投資してから収益を 得るまでの間に多くの努力をしたかもしれない。相応のリスクを負っていることにも注意すべ きである。

また投資の成功、つまり投資収益率が結果的に高くなったということは、本人の成功である と同時に社会全体も投資からの便益を受けていることを表している。

貸金業に対しても同様の誤解がある。ただお金を貸し、何もせずに待っていて、返済期限が 来れば貸した以上のお金を受け取るのは、不当だという考えである。しかしこの議論もお金を 貸すための資金をどう手当てしたのか、貸す相手を選別する過程、貸し倒れリスクに耐えるこ と、取り立ての努力といった貸金業者の努力を無視している。また、貸金業が社会全体におけ る異時点間の資源配分を調整する機能を有していることも忘れてはならない。

例 9.1 1300年頃のキリスト教国、イスラム教のヒヤル

8

9.2

リスク

多くの人は、一つの財を集中的に消費するより、幾つかの財を満遍なく消費することを好む と考えられる。(これを消費の 平準化という。)同様に、ある時点に集中的に消費するよりも、 全ての時間にわたって平均的に消費することを好むと考えられる。このため人々はなるべくリ スクを回避したいと考えると思われる。このようにリスクを負うことは、個人差はあるが誰に とっても嫌なものである。これに対してリスクを請け負うことを生業とする経済主体がいる。 銀行、保険会社、投機家である。彼らは、リスクを軽減するのが得意であったり、リスクに対 する恐怖に比較的強い。そして、リスクを負うことが嫌い、あるいは苦手な人のリスクを代わ りに負う。さらに、社会全体のリスクを軽減する働きもある。

9.2.1 リスクの移動: 先物市場と投機家∗

リスク: 大豆市場の場合 大豆を栽培する農家は、種をまく時点で収穫時の大豆の価格を知ら

ない。大豆の価格は、自分自身の作況だけでなく、世界中の大豆農家の作況や需要の状況に影

8

(8)

響されるからである。もし収穫時点で大豆価格が暴落していれば、収穫量が安定していても農 家の収入は大幅に落ち込み、生活が苦しくなるかもしれない。つまりリスクに直面している。 しかし、種をまく時点でまだ収穫していない大豆を特定の価格で売る約束をすることが出来た らどうであろう。収穫量さえ安定していれば、当初の見込みから収入が大幅に落ち込むという ことがなくなる。価格が高騰したときの恩恵には与れないが、価格が暴落するリスクを回避で き、これに対する心配がなくなる。

例題 9.2 醤油製造業者が直面する大豆市場におけるリスクについて説明せよ。

投機家へのリスクの移動 大豆の先物市場における投機家は、必ずしも大豆の専門家である必

要はない。彼らは、大豆栽培の技術はないが、

• 幾つかの先物や、他の金融商品と組み合わせることによりリスクを軽減する技術を持っ ており、

• 読みが外れたときのための蓄えがあり、 • リスクに対する恐怖に耐えうる度胸がある。

つまり、大豆栽培農家よりもリスクを負うのに適した経済主体であるといえる。大豆の先物市

場は大豆栽培や醤油製造からリスクだけを切り離し、大豆栽培農家よりもリスクを負うのに

適した投機家にそのリスクを移動させる。

投機とギャンブル(賭博)の違い ギャンブルは、本来は存在しないリスクを作り出し、それ

に対して賭けを行う。投機や先物市場は、本来あるリスクが賭けの対象になる。逆に先物市場 での取引を通してリスクを軽減する人もいる。

投機家に対する誤解 例えば大豆が世界的に不足し、ある国では飢饉が起こっているとしよう。

この場合大豆価格が高騰し、先物市場で安く大豆を仕入れていた投機家は大儲けする。これに 対し世論は、大豆が不足して餓死者が出ているのにその大豆で儲けているのは非道であるかの ようなこという場合がある。この議論も大豆価格がさらに暴落し、大損をするかもしれないと いうリスクを無視している。さらに、この議論に従って投機家の利益を没収してしまうとどうな るであろうか。もちろんだれも投機などしなくなるであろう。(そうなるとどうなるだろうか?)

先物市場と投機家の役割 先物市場において、投機家がリスクを引き受けてくれることにより、

(9)

2017 マクロ経済学I

リスクの移動 先物市場ほど極端ではなくても、資本市場における取引は、リスクを負うのが苦

手な人から得意な人にそれを移動させる。投機家や投資家はリスクを負うことで利益を得てい る。また、リスクを負うことに相当の見返りがなければリスクを負う人は減ってしまうだろう。

9.2.2 社会全体のリスク軽減: 保険会社∗

地震保険と建物の耐震性能

9.2.3 銀行の役割

貯蓄と間接金融 経済主体は、将来の消費に備えて貯蓄しようと考える。ただ手元に貨幣を置

いておいておくよりも、投資をした方が収益が得られる。しかし投資にはリスクがあり、下手 をすると元本も失いかねない。銀行は、投資先を選別する能力が一般の人より高い。また投資 をする際には少額を投資するよりも多 額の資産を運用する方が有利である。そこで一般の人 からたくさんのお金を預り、投資を行う。この際、預かったお金を返すときに利息をつけるこ とによりたくさんのお金を集めることが出来る。ただし利息は投資収益より小さい。投資収益 から利息を除いた部分が銀行の収入になる。このように、銀行は利息を見返りに人々から多く のお金を預かり、それを運用して投資収益を上げ、収入を得る。人々は銀行にお金を預けるこ とにより、ただ手元にお金を置いておくよりも高い収益を上げられ、また自分で直接投資を行 うよりもリスクを減らすことが可能となる。

9.2.4 投資収益とリスク

ハイリスク・ ハイリターン

9.3

まとめ

• 資本市場における資金取引は、利子率や投資収益を通じて効率的な異時点間の資源配分

をもたらす。

• 資本市場は、リスクを負うのが苦手な人から得意な人にリスクだけを移動させる役割を

参照

関連したドキュメント

ロボットは「心」を持つことができるのか 、 という問いに対する柴 しば 田 た 先生の考え方を

が前スライドの (i)-(iii) を満たすとする.このとき,以下の3つの公理を 満たす整数を に対する degree ( 次数 ) といい, と書く..

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

平均的な消費者像の概念について、 欧州裁判所 ( EuGH ) は、 「平均的に情報を得た、 注意力と理解力を有する平均的な消費者 ( durchschnittlich informierter,

17‑4‑672  (香法 ' 9 8 ).. 例えば︑塾は教育︑ という性格のものではなく︑ )ット ~,..

①正式の執行権限を消費者に付与することの適切性

東京は、大量のエネルギーを消費する世界有数の大都市であり、カナダ一国に匹