公立高校学校管理職の登用システムに関する検討 : 「見定め」に着目して
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第64巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.64,No.2. 平成26年2 月 February,2014. 校管理職の登用システムに関する検討. 公立高校学. −「見定め」に着目して−. 木村 育恵・河野 銀子*・杉山 二季**・村上 郷子*** 池上 徹****・高野 良子*****・. 田口久美子******. 北海道教育大学函館枚数青学研究室 *山形大学地域教育文化学部 **駒沢大学総合教育研究部. ***法政大学キャリアデザイン学部 ****関西福祉科学大学健康福祉学部 *****植草学園人学発達教育学部 ***軸一和洋女子大学人文学群. AnExaminationConcerningAppointmentSystemof SchooIDirectorsinPublicHighSchool −FocuslngOn“Ascertainment”−. KIMURAIkue,KAWANOGinko*,SUGIYAMAFutaki**,MURAKAMIKyoko***, IKEGAMIToru****.TAKANOYoshiko***** andTAGUCHIKumiko******. DepartmentofEducation,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *FacultyofEducationArtandScience,YamagataUniversity **. FacultyofArtsandScience,KomazawaUniversity. ***. FacultyofLifelongLearningandCareerStudies,HoseiUniversity. ****. FacultyofHealthWelfare,KansaiUniversityofWelfareScience. *****. FacultyofChildDevelopmentandEducation,UekusaGakuenUniversity. ***林*. schoolofHumanities,WayoWomen,sUniversity. 概 要 本研究は,学校管理職をめぐる議論が展開されていることを踏まえ,公立高校学校管理職の 登用システムがいかなるものかを検討する。我々はこれまでに,校長たちが管理職になるまで の道のりにおいて、校務分掌や異動・登用を「一任」していたことを明らかにし、それを「一. 211.
(3) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. 任システム」と呼んできた。. 本稿では,「一任」される側,すなわち見定める側に注目し,どのようにして管理職として の適任者を見定めているのか,15県36名の公立高校の校長経験者および8県教育委員会の人事 等担当者へのインタビュー調査に基づきながら分析した。. インタビュー調査から,枚長のキャリア形成においても,その根底を支えているのは,教員 に新たな経験の広がりを与える日々の「乗り切り」の積み重ねであり,要素化できない日々の 営みの連続性があることが明らかになった。それは,現在議論されている学校管理職登用の制 度化の方向性とは異なっているとみられる。. キーワード:一任システム,公立高校,学校管理職,キャリア形成,登用システム. ABSTRACT Thispaperexaminedtheappointmentofpublichighschooldirectorsrespondingtothe progressofschoolleadershipdiscussions.Ourstudyfoundthatdirectorjobsseemtode− pendonthe“ichinin’’entrustingsystem,thatschoolleadershipcandidateshaveentrusted theirschooljob−SpeCification,reShufneandappointmenttotheirsuperiors.. Thisstudyexaminedhowschoolleadershipcandidateswereselectedfocusingonen− trustedortheirsuperiorsinthis“ichinin’’system.Thisstudywasbasedoninterviewswith. 36principalsatpublichighschooIsin15prefecturesaswellaseightpersonswhowerein Chargeofpersonnelmattersatprefectures’BoardofEducation. Ourresearchresultsdisclosedthatthefoundationoftheprincipal’scareerformation WaSbasedondaily“gettingover’’thatgaveteachersnewcha11engesandexperiences.Con−. tinuingsuchdailypracticescouldnotbemadeanelementascurrentdirectionofschool leadership.Thusourresearchiscontrarytothepresentdirectionofschooldirectorappoint− ments.. Keywords:entruStingsystem,publichighschool,SChoolleadership,Careerformation,appOint− ment system. 1.本研究の目的と意義. 職登用の制度化の方向性とは異なっているとみら れる。「一任システム」とは,後に詳述するように,. 本研究は,学校管理職をめぐる議論が展開され. 人事異動希望を「一任」する中で管理職となって. ていることを踏まえ,公立高校学校管理職の登用. いくような様式のことである。このように希望が. システムがいかなるものかを検討することを目的. 表明されなくても管理職が登用されていくシステ. としている。我々はこれまでに,公立高校長や行. ムの諸相について,これまで,「一任」する側の. 政へのインタビュー調査から,校長たちが管理職. 分析を通して明らかにしてきたが,本稿では,「一. となる道のりの背景に「一任システム」と呼べる. 任」される側,すなわち見定める側に注目して分. ような様式が存在することを指摘してきたところ. 析する。いったい,どのようにして管理職として. であるが,それは,現在議論されている学校管理. の適任者を見定めているのか,インタビュー調査. 212.
(4) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. に基づきながら探っていく。その前に,学校管理. 形成のために,教職大学院や教員研修センターな. 職をめぐる議論や先行研究について述べておきた. どを管理職養成プロセスに組み込んで,そこで用. い。. 意されたマネジメントを中心とするプログラムを 学習させることが企図されている。そして,それ らを管理職選考の要件として設定しようとしてい. 2.学校管理職に関する議論と「一任システム」 2−1.学校管理職の登用に関する今日的議論. 校長や教頭の選考や人事のあり方の見直しにつ. る。すなわち,学校管理職に関する今日的議論に は,く良い校長〉 になるための見えやすい要素を. マイルストーンとして設定し,それをこなすロー. いては,1998年の中教審答申『今後の地方教育行. ドマップを示す方向で制度化する傾向がみられ. 政の在り方について』において,「校長・教頭の. る。. 選考と人事の在り方等」を見直すこと(第3章). 以上のように,答申では,従来の管理職が十分. が明記され,「校長,教頭としてふさわしい資質. なマネジメントカをもっていたとはみなされてお. と意欲をもった若手教職員や学校外の人材の積極. らず,また,それらの能力開発がシステム化され. 的登用」や「経営者に求められる専門知識や教養. ていなかったとの見方がなされている。. を身につけるとともに,学校事務を含め創造的な マネジメント能力を高めることができるよう,研 修の内容・方法を見直す」こと等が具体的改善策. 2−2.「一任システム」とはいかなるものか では,これまでの日本の校長は,どのように育. として示された。この後,校長として必要な力量. 成され,どのように登用されてきたのだろうか。. の内容やその養成方法にかんする明確化の議論が. こうした問題関心から,我々の研究グループでは,. 進められるようになり,さらに2012年8月28日の. 公立高校長の初任から校長までの異動経験や勤務. 中教審答申『教職生活の全体を通じた教員の資質. 校での校務分掌などを尋ねるインタビュー調査,. 能力の総合的な向上方策について』を機に,管理. および教員の人事に関する担当者に対するインタ. 職とその育成プロセスの制度化にむけて検討が始. ビュー調査を実施してきた。. まった。. 2012年の答申のうち,管理職に関する記述内容. その結果,調査対象者の中には,校長を目指し. ていたとか,なりたいと思っていたと明言する校. を大まかにまとめると次の3点である。第一に,. 長はひとりもおらず,異動対象となっても希望票. 改革の方向性は「生涯にわたり教員の資質能力向. に希望を書かず,管理職登用試験や公募制にも自. 上を可視化する仕組みを構築する」ことにあり,. ら手を挙げたわけではないことが明らかになっ. 修士レベルでの教員養成・体制を充実させるため. た。かれらは,希望票に「一任します」と書いた. に大学院を活用することが強調されている。とり. り,「試験を受けるように」薦められたりしながら,. わけ,「将来の教育界を担うリーダーを」大学院. 管理職となっていた。また,校務分掌の決定や研. 等へ「積極的に派遣すること」が求められている。. 修機会についても,自ら積極的に名乗りを上げた. 第二に,管理職に「マネジメントカ」を身につけ. というより,依頼されたり勧められたりしながら,. させることが重視され,そのために,「教職大学院,. それらの経験を積み,この過程を通じて学校経営. 国や都道府県の教員研修センター等の連携・協働. や組織運営等の多様な力量と管理職への見通しを. による管理職」等を育成するシステムを構築する. 得ていた。このように,当事者が「一任」の繰り. とされている。第三に,管理職選考に,これらの. 返しと認識しているような管理職のキャリア形成. 管理職育成プログラムの成果を用いる方向性が示. 過程を,われわれは「一任システム」と呼び,こ. され,専門免許状(仮称)の新設等も構想された。. の中で外形上結果的に校長に選ばれていくような. このように,「トップリーダー」としての力量. キャリア形成の実態を捉えてきた(高野ほか2013,. 213.
(5) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. 河野ほか2013)。. 自分の教育観がより上位の理念として教職員から. しかしながら,「一任」すればだれもが管理職. 理解され,共有される必要があることを前提に,. になっていくわけではない。「一任」して管理職. そのために情報をしっかりと持ちながら直感力を. になる人もいれば,そうでない人もいるのが現状. もって学校内外の変化を見抜き,原因を察知して. である。では,それはどのように選別されている. 方向や目標を立てる等,その核となる発想を「教. のであろうか。また,「一任システム」がうまく. 育観」と定義づけている。そして,こうした「教. 機能するためには,登用側が複数の候補者の中か. 育観」の形成は,今日的な学校の多忙化からの脱. ら校長としてふさわしい人材を正しく選ぶ必要が. 却と学校に活気を与えるためにも,取り組むべき. あり,しかも,その登用は,周囲にも受け入れら. 事項の集中と選択及び統一性の保持にとって核に. れるものでなければならない。つまり,登用側の. なることから,教育観育成のために,学校におい. 適切な見定めなくして「一任システム」は成立し. て日常的にどのようなことを意識すべきかを指摘. ないのだが,そうした見定めは,いったいどのよ. する。この議論は,管理職の複雑な「教育観」の. うにして行われているのだろうか。本発表は,こ. ようなものに着目しつつも,それらを「意識化」「項. の点を掘り下げようとするものである。そうする. 目化」していく方向性で扱おうとするものである。. ことで,今日的な管理職登用システムの改革動向 を検討できると思われる。. 以上はいずれも,新たな時代の管理職養成を踏 まえ,校長としての教育観及び力量の育成の要素 や要件の具現化に立脚する議論である。. 3.先行研究の整理と本研究の分析枠組み ここでは校長へのキャリア形成に関する先行研 究をみておくことにする。. 現在,学校管理職に期待される力量の形成に関. しかし,こうした議論では,要素化によって管. 理職の育成や登用から外れる教員がいるというこ とは考慮されていない。現実の校長のキャリアパ スは「行政系」「非行政系」のように多様であり,. 一律の経験を積んできたわけではなかったが,そ. しては,「学校の自主性・自律性の拡大」に伴う. れぞれの多様な経験は,いずれも一任の連鎖に. 校長の裁量権の変容に関連させて,学校管理職が. よって形成されていた(高野ほか2013)。そして. 今後リーダーシップを発揮し果たしていくための. その一任は,家庭責任等に対する折り合い(調整). すぐれた資質要求を担保する資格や任用制度が必. の可否に多大な影響を受ける(河野ほか2013)こ. 要であり,一連の枚長人事施策の体系化や,今日. となどが明らかになっている。また,学枚管理職. 的な要請課題に合わせたプログラム開発が求めら. が個人的な「つながり」を介してフォーマルには. れることや,これらに関して大学(院)が果たす. 保証されていないルートで学校経営に関する相談. 役割を検討する議論がある(元兼2001,2002,2003,. や情報収集を行なっている面もあるなど,登用プ. 小島編2004など)。ここでは,学校現場のニーズ. ロセスが制度化されにくいものであるという指摘. に対応した学校管理職のための教育プログラム開. もある(川上2005)。. 発や,学校管理職の力量形成のための研修ニーズ などに焦点を当てた議論が行われている。 他方,いわゆる力量向上の具体的方法として,. 学校管理職に期待される資質や力量の前提となる 「教育観」を日常的志向や行動様式として意識化. 以上を踏まえ,本研究では,校長(管理職)と しての適任者の見定めのメカニズムを明らかにす るために,その基礎的研究として,いかなるもの. が「見定め」として教員それぞれのキャリアに関 わるのかを,教育行政と校長それぞれのインタ. させることを説く議論(押野2011)もある。ここ. ビューをもとに探っていく。特に今回は,どのよ. では,教職員が持っているさまざまな教育観に対. うな場面や機会が,管理職の適任者として見定め. して,校長がより広い視野で教職員に語りかけ,. られるポイントであったのかに焦点を当てていく. 214.
(6) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. ことにする。その際,教員人事の多様な実態には. ここでの分析対象は,8県の教育行政の,県立高. 教員人事行政の運用方針や戦略が絡み,それが教. 校の教員人事関連部署の担当者である。教育行政. 師たちのキャリアを左右するだけでなく,各学校. の県立学校人事に関する部署(課)は,県によっ. での自律的運営のあり方にも影響を及ぼしうる. て構成員が異なっている。行政畑の人員のみの県. (川上2013)「教育行政」の関わりについても焦. もあれば,教職畑と行政畑が混在している県,全. 点を当てることにする。. 員が教職畑(学校教員)で構成されている場合も. インタビュー調査については,WEB上の各学 校のHPや学校一覧等によって校長を調べ,事前. ある。今回のインタビュー対象8県についても, このような状況にある。. に教職経験年数等を尋ねる質問紙への記入を依頼 した。それをもとに,対象者1名あたり1時間半. 4−1−1.校長としての資質や力量とそれらの育. から3時間程度で,1∼2名のインタビュアによ. 成に関して. る半構造化インタビューを実施した。教育行政に. 教育行政のインタビューから,校長としての資. ついては,主に県立学校人事関連部署に調査を依 頼した。インタビュー調査の概要及び対象者の概. 質や力量の育成について分析する。 まずは2012年の答申でも重視されている「マネ. ジメントカ」に注目すると,主任職期等のミドル. 要は,【表1】,【表2】の通りである。. リーダー的な役割の噴から特に求められる重要な. 要素と位置づけつつ,主に2つの観点から,それ. 4.分析及び結果. らの資質・能力を育成することに対する考え方が. 管理職への適任者が見定められていく場面や機. 示された。第一は,マネジメントカに関する考え. 会について,インタビューをもとに分析していく。. 方であり,第二は,マネジメントカの育成を時期. 4−1では教育行政のインタビューを,4−2では. 区分ごとに設定するという考え方である。. 校長のインタビューを参照する。. 第一の点については,「学年主任であるとか,. 4−1.教育行政のインタビューから. それから,いわゆる教務主任であるとか,生徒指. ここでは,管理職への見定めの場面や契機にか. 導部長であるとか,そういったミドルマネージメ. かわるものとして,教育行政の語りに注目する。. ントの方たちが,あの−,やはりそういった組織. 管理職の道を歩むことになった校長たちが,適任. マネージメントみたいな,あるいは学校マネージ. 者として見定められる場面ヤプロセスとはどうで. メントみたいな考え方を,まあ,その取り入れて. あったのか。教育行政の立場から検討していく。. もらいたいという」というように校務分掌と関連. 【表1】インタビュー調査の概要. 215.
(7) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. 【表2】インタビュー対象者の概要 先生名(1) 性別. 主 な 異 動 歴. 担当教科 出身大学. 教職年数等(2) 配偶者(及び子)の 有無等. A先生 女性 教諭→行政→校長→行政→校長. 家庭科. 国立大学 38年(退職) 離婚(子ども2人). B先生 女性 教諭→行政→教頭→校長. 理科. 国立大学 37年(退職) 有(子ども2人). C先生 女性 教諭→行政→教諭→行政→教頭→校長. 家庭科 不明. D先生 女性 教諭→行政→教頭→行政→校長. 英語科. 国立大学 36年(現職) 右(子ども2人). E先生 女性 教諭→行政→教頭→校長. 家庭科. 私立女子大学 35年(現職) 有(子ども2人). F先生 女性 教諭→行政→教諭→教頭→行政→校長. 数学科. 国立大学 33年(現職) 有(子どもなし). G先生 女性 教諭→行政→教諭→行政→教頭→校長. 家庭科. 国立大学 35年(現職) 無. H先生 女性 教諭→行政→教諭→教頭→行政→校長. 家庭科. 国立大学 35年(現職) 無. Ⅰ先生 女性 教諭→行政→教頭→行政→校長. 保健体育科 国立大学 34年(現職) 有(子ども2人). J先生 女性 教諭→行政→教頭→校長. 家庭科. 私立女子大学 30年(現職) 無. K先生 女性 教諭→行政→教頭→校長. 家庭科. 私立女子大学 31年(現職) 有(子ども2人). L先生 女性 教諭→教頭→行政→校長. 社会科. 国立大学 36年(退職) 有(不明). M先生 女性 教諭→退職→教諭→行政→教諭→行政→校長 家庭科 N先生 男性 教諭→教頭→行政→校長→行政→校長. 37年(現職) 有(子ども2人). 国立大学 34年(現職) 死別(不明). 理科. 0先生 男性 教諭→行政→教諭→行政→校長→行政→校長 国語科. 国立大学 35年(現職) 有(子ども2人) 国立大学 36年(現職) 有(子ども2人). P先生 男性 教諭→行政→校長→行政→校長. 理科. 国立大学 34年(現職) 有(子ども3人). Q先生 男性 教諭→行政→教頭→校長→行政→校長. 理科. 国立人学 31年(現職) 有(子ども2人). R先生 男性 教諭→行政→教頭→校長. 商業科. 私立大学 35年(現職) 有(子ども2人). S先生 男性 教諭→行政→校長→行政→校長. 国語科. 私立大学 37年(現職) 有(不明). T先生 男性 教諭→教頭→行政→校長→行政→校長. 理科. 公立大学 33年(現職) 有(不明). U先生 男性 教諭→行政→教頭→行政→校長. 国語科. 私立大学 37年(現職) 有(不明). Ⅴ先生 男性 教諭→行政→教頭→行政→校長→行政→校長 数学科. 国立大学 36年(現職) 有(子どもあり). W先生 男性 教諭→教頭→校長→行政→校長. 数学科. 国立大学 36年(現職) 有(不明). Ⅹ先生 女性 教諭→行政→教諭→教頭→校長. 理科. 国立大学 36年(現職) 有(子ども1人). Y先生 男性 教諭→教頭→行政→校長. 理科. 国立大学 37年(現職) 有(子ども3人). Z先生 男性 教諭→行政→副校長→校長. 数学科. 国立大学 33年(現職) 右. a先生 女性 教諭→教頭→校長. 家庭科. 国立大学 37年(退職) 有(子ども1人). b先生 女性 教諭→教頭→校長. 家庭科. 私立女子大学 35年(現職) 有(子ども2人). c先生 女性 教諭→教頭→校長. 保健体育科 国立大学 34年(現職) 有(子ども1人). d先生 女性 教諭→教頭→校長. 国語科 不明. e先生 女性 教諭→教頭→校長. 保健体育科 国立大学 34年(現職) 無. f先生 女性 教諭→教頭→副校長→校長. 理科. 国立大学 34年(現職) 有(子ども2人). g先生 女性 教諭→教頭→校長. 理科. 国立大学院 33年(現職) 有(子ども4人). h先生 女性 教諭→教頭→校長. 社会科. 国立大学 32年(現職) 有(子ども3人). i先生 男性 教諭→教頭→校長. 数学科. 国立大学 36年(現職) 有(子ども3人). j先生 女性 教諭→教頭→校長. 国語科. 私立女子大学 30年(現職) 離婚(子ども1人). 35年(現職) 有(子ども2人). 注(1)先生名が大文字の場合は「行政系」,小文字の場合は「非行政系」。(2)インタビュー時点の状況である。. ?16.
(8) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. 付けた語られ方をしており,第二の点については,. 求していくような組織であってはならない。(中. それらを体系的,可視的にこなすロードマップと. 略)底辺彷捏っている子どもたちを助ける先生も. して,次のように,経験年数と照らし合わせた研. 必要なんですよ」。. 修の設定等を実施している場合が多い。「5年目。. また,第二の点である育成の時期区分について. 10年目…。その次ですね,こういうふうなこのあ. も,経験年数に即して単純に要素的に描けるもの. たりから主幹・指導教諭研修,これからマネージ. ではない,という認識が示された。例えば,新卒. メントですかね。特にこの主幹教諭研修はマネー. 者だけでなく,社会人経験や「子育て経験された. ジメント学校の経営にも入っていくような研修,. 方」等の多様な背景をもつ者が教職の世界に入っ. この辺りぐらいから入ってくると。(中略)ここ. てきていること,あるいは,今後入れざるを得な. に学校リーダー研修というんで教頭研修,校長研. い状況となることを想定し,経験年数別に機械的. 修と。ですから,このあたりから研修体系的には. に区分する研修の設定については「これからどう. マネージメント論とか学校でどうふるまうべきか. なるのかまだ分かりません」という県もみられた。. とか,そういう意識付け的な研修がここでなされ. それだけでなく,そもそも管理職として育成され. ます」。. るべきマネジメントカについては「当然OJTも. こうした管理職に求められる能力や育成される. ありますので学校内での体系の中で学ぶというの. べき時期の可視化については,利点として認識さ. は当然あると思いますけれどもね」「やっぱり学. れている面もある。「ライフワークというかね,. 校の中で鍛えられていくということ」というよう. この教員のずっと長いスパンでの,徐々にステッ. に,学校の中で獲得される面が大きいということ. プアップしていくというようなライフステージの. が述べられている。つまり,取り立てて時期区分. キャリアのイメージを持ってなかったですね,昔. を設定することが必要だとは認識されていない。. はね」などと語られる。 しかしながら,次に挙げるように,「マネジメ. 教育行政におけるインタビューでは,「マネジ メントカ」以外にも「校長に求められる資質・力. ントカ」の具体的な内容や育成のあり方について. 量」として学校経営力,人材育成力,生徒・保護. は,第一の点についても第二の点についても,す. 者・地域との信頼構築,高い見識などは,必ず言. べてが要素的に示されるようなものでは決してな. 及されるものであった。例えば,様々な学校課題. く,複雑なものであるという認識も垣間みられた。. に応じた高校の学校運営の力が校長に求められる. 例えば,第一の点である,いわゆる育成される. ということ,「県が進めている教育の方針に則っ. べき「マネジメントカ」は,00力等のように単. て,それを具現化してくださる方」「強いリーダー. 純に要素化して描けるものに限定されるものとは. シップを持って,その個性的な学校で,且つあの,. 認識されてはいない。例えば,次のように語られ. あー,生徒保護者,それから地域から,あの−,. た。「個々の資質を高めるというその延長線で当. 信頼される学校を創って頂ける方」「当然外部と. 然経営があるんですけどね」「その辺は,やはり. の関係も出てきますので」「職員をしっかり管理. それは学校の難しさだと思うんですね。会社であ. できるっていう事と,あと,まあ,その行政との. れば,例えば営業は営業だけやってればいいん. 対応とかも」というものがある。これらについて. だっていう」「いわゆる,あの−,会社なんかの. も,要素的に可視化して捉えることができる面は. 経営の組織マネージメントというのと,また. ありつつも,すべてが要素として可視化できるも. ちょっと別個だと思うんですね。(中略)先生方. のではなく,学校での日々の教育経験や実践と切. と一人ひとりが,その,エキスパートでもあると. り離せない営みの中にあるものという認識がうか. 同時にゼネラリストになってもらわないと困ると. がえた。. いう」「通常の企業と同じように,単に利益を追. 上記のような資質・能力は,校長に必要なもの. 217.
(9) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. として「実務的に管理職としてはこうあらねばな. 教育行政インタビューで共通して語られていた. らぬっていう,いわゆる一般的な」資質や力量を. のは,校長として適任者を見定める際に,主任職. あえて言語化したものとして捉えられており,県. 等のミドルリーダー的役割の経験を重視している. によっては,学校管理職の育成や養成に関する指. という点である。そしてここに,先に見たマネジ. 針にこれらを明文化している。また,これら資質・. メント力も含め,学枚でのさまざまな「経験」で. 力量についての業績及び能力評価制度がある場. 培われるような,単純には要素化できないものが. 合,昇任の選考時に利用する県もあった。ゆえに,. あらわれる。. マネジメント力も含めて明示的に要素として資質. 「現場で言えば(中略)経験年数積んだ方で,. や力量を示し,評価していくシステムの構築につ. まあ校長とか教頭が,その,いて,この方大丈夫. いては,「この取組みが始まってからは,いろん. だろうという事で例えば学年主任とかにしますで. な課題が見えるようになったのかなという気はし. すよね。そうしますと,今まで授業だけやったの. ますね。今まで,それぞれやっていたことは一緒. が,いわゆる学校の経営という事をやっていくと」. なんですけども,(中略)感覚的にやってきた部. 「職員をしっかり管理できるっていう事と,(中略). 分を,(中略)常にこう検証,改善ツールにして. あの,どっしりしているっていうんですかね?」. いくっていう風に」と利点として語られることも ある。 しかし,可視化のメリットが語られる一方で,. 「意欲だけでもだめなんですよね」。 また,次のように部下(後輩)を育てられる力 があるかどうか,という点も登場する。「人間関. 「システムにあてはめることが目的化して行くと,. 係が学校のほうがあるよ。ここ(行政)に来たら. まあ,本当に,こう,学校がよくなっているのか. 知識はいろいろと教えてもらえるけど,学校の中. というところが,疎かになりがちかな,という気. で育ててもろうたというのがありますね。こうい. がしますね」という危惧も同時に語られた。「い. う調整力とか,見渡す力っていうのはね」「ミド. くらシステムがしっかりしていても,結局やるの. ルリーダーの育成とか,あなた方がミドルリー. は人間ですので。うん,あの,それまでの一個人. ダーで…つて,. としての教育経験とか教育実践とかそういうもの. だから,次は管理職の補佐をしてくださいとか,. を全部背負って,このツールを使って,うまく学. (中略)あなた方はこの位置なん. (中略)管理職になったら,次はあの−,ミドル. 校経営するかしないかは,もうその人次第だと思. リーダーを育成して,で,ミドルリーダーはあの,. いますね。資質やと思いますので」。. 若手を鍛え上げてくださいっていう,そういうお. このように,教育人事行政の立場からは,資質. 願いの研修してますね」。. や力量が必ずしも明示化できるものばかりではな. このように,校長の適任者が見定められていく. いこと,そして管理職に求められるマネジメント. 場面やポイントをみると,主任職を含めた学校で. 力もまた,研修をこなせば得られるというもので. の多様な経験や人間関係などの資源がさまざまに. はなく,学校の日常的な営みの中で伸長されるも. 絡み合う中で,適任者がキャリアを形成している. のである,ということが示唆された。. ことがうかがえる。ここでは,主任職等のミドル. リーダー経験は,決して校長適任者となるための 4−1−2.校長として見定められるポイントに関. 一要素をこなすことで達成できるものとしては見. して. なされていない。あくまで,多様な経験や資源が. 校長としての資質や力量が必ずしも要素化でき. 絡み合う日々の「乗り切り」,すなわち要素化で. るものではないということに関して,適任者とし. きない日常に埋め込まれた営みの中で,かれらが. て見定められる場面やポイントにも注目して,教. ミドルリーダーとして力量を形成していくという. 育行政のインタビューをさらにみていく。. こと,そしてこの流れが将来的に後輩の育成にも. 218.
(10) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. 繋がっていくという連続したようすが浮かび上. のがあるんですね。論文も作って,あのプレゼン. がってくる。. もして,そして討議もしてっていう中で,教職員. 以上,教育人事に関係する行政の立場からは,. 課が,えー. ,見て判断をする。(他に)女性の幹. 確かに校長に求められる資質や力量を要素として. 部候補生を見定めるっていうそういうセミナーが. 明示化できる面はあるものの,学枚教育に関わる. あって,その両方に推薦していただいて,そこで. 中でさまざまに形づくられていくものと捉えてい. 見ていただいたっていう感じですかね」と語る。. ることも分かる。「最近の基準,標準,面接の(評. また,教科の研究員を経験した男性校長は,「い. 価基準)って言われるけれども,それは経験値は. ろんなの見てて,ああ,あれだったらやれそうだ. 大きい」「文言で書いてしまうと縛られるから」. なあとかいずれ管理職に引っ張っちゃおうかなっ. というように,校長としての適任者を見定めるも. ていう人間を,ある程度声かけているように思い. のはきわめて複雑であること,そしてそれらが学. ます。(中略)だからそういうので,そういう網. 校において経験を通して形成されることが,重視. にね,かけていただいたっていうか,目をかけて. されているのである。. いただいたんじゃないですかね?」と語る。これ らの機会はかれらを育てると同時に,見定めの大. 4−2.校長のインタビューから. きな契機ともなっていた。しかしその機会そのも. 次に,一任しているうちに見定められた側であ. のも主に推薦によって与えられていることや,校. る校長たちの語りに視点を移してみよう。かれら. 長たちのなかには教諭時代に官制の研修会や,県. は自らのキャリアの中での見定めについて,さら. の研究や開発,発表などを経験しなかった人もい. に自ら管理職として教員たちを見定めることにつ. ることを考慮すると,見定めが行われる場面はよ. いて,どのように語っているのだろうか。ここで. り日常的な業務の中にも埋め込まれていることが. は15県の男女校長36名のインタビューを分析対象. 見えてくる。. とする。. 4−2−1.自らが見定められた場面について 前述したように,かれらの管理職試験や行政職. そこで,勤務校におけるかれらのミドルリー ダー経験に注目してみると,学校が直面する課題 への取り組みの中で継続的に行われる見定めが浮. への異動は,自らの積極的な働きかけによるより. かび上がる。ある校長は,自らの教頭試験への推. も,受験を勧めたり,推薦を行ったりする人物に. 薦の契機を「新校準備委員会が(中略)もう頭脳. 見定められたことが大きな契機となっていた。直. のマッサージじゃないですけど,すごい会で,あ. 接声をかけたのは勤務校の校長であることがほと. の−,高校って,学校づくりっていうのをイロハ. んどだったが,前の勤務校の管理職や,教科部会. から教えてもらったような,そういう勉強の場で. の先輩教員などのつながりがある人物からの働き. したね。で,必ず宿題が出て,次までにやって来. かけがあったと語った者もいた。一方,誰かが働. いっていうね。そういう大変な道場みたいな委員. きかけてくれたと推測しながらも,「その辺のい. 会で,そこで鍛えてもらったっていうのが大きい. きさつは全くわかりません」など推薦の詳細はわ. ですね。(中略)で,そんな感じであの,えと,. からないとする言葉もしばしば聞かれた。. 推薦していただきましたね。まあ,とにかく,新. 一部の校長たちは,管理職試験や行政職への異. 校準備委員会で一生懸命やっている奴がいるな. 動に先立って,県や中央の研修会への参加,県の. あっていう風には思われたんだと思います」と語. 教科研究や教材開発,研究発表を行った経験など. る。「宿題」がこなせず脱落した者も何人も出た. を見定めに関わるものとして挙げる。たとえば,. という。この委員会は明らかに見定めの機能を持. ある女性校長は「中堅教員研修会(中略)に幹部. ちながら,「勉強の場」「道場」という育成の場で. 候補生が行くんです。で,見定められるっていう. もあった。ここからは見定めが,校内における中. 219.
(11) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. 長期的なプロジェクトの遂行の中で,育成を伴い. の遂行の中で教員たちを見定めていた。例えばあ. ながら行われてもいることが示される。学科改編. る校長は,後輩の教員の見定めについて,「例え. の準備で校長とともに県や国の行政に何度も出向. ば学年主任であれ,あるいは部長やってても,そ. いたことや,進路指導主任として県内の学校間の. ういう与えられた部の中の任命なりね,あの一仕. 主任会議での役割を任されたことなどミドルリー. 事の運び方とか,あるいはその−いろんな会議で. ダーの役割が対外的な経験に結びついていた人も. の発言とかですよね。そういうのを見たり聞いた. いたが,校内のみで進められる業務の遂行もかれ. りしながらこう判断するっていうかな。その人の. らを成長させ,のちの見定めへとつなげる機能を. こうキャラクタ一つてか持ち味っていうんですか. 持っている。「校内的なあの動きとかは当然その. ね,あるいはその,基本的なその考え方っていう. 自分の自校のですね,校長先生に(が),見てお. こと」と語った。このような校内での見定めは,. られますよね。まして分掌の部長だとかやってる. 育成と切り離せない形で時間をかけて行われてい. と,当然校長先生方とお話しする機会っていうの. ることも語られる。「能力のある人には主任をど. も,(中略)やはりその立場になれば,多くなり. んどんさせて,視野を広げて,もっといろんなポ. ますよね。そういう話をしているうちに(中略). ストができる人に育ってほしいという気がありま. 評価をしていただいた」,「仕事の本質は何かで,. すから,どんどんさせますよね」「やっぱり経験. そこに一生懸命やってれば,ステップは次々進ん. でしょうね。ただ過ぎたんじゃなくて,やっぱり. でくでしょ,と思います。だから校内的に一生懸. やってきたというかその経験が生きてくる。だか. 命やっていれば,じゃあ分掌の部長やってくれ. らどんなことでもまあ無駄なことはないし,なん. よってなって,そこでやってくると,管理職の道. でもチャレンジして一生懸命やってみることだよ. は開けてくるかもしれない。(中略)そうやって. なっていう」。さらに興味深いことに,それは「(失. きてるとこう色々転がって,(管理職まで)来た. 敗を)経験して次の時に同じことやんないで,う. のかなって思う」,「よくだから本当に会議をしま. まく対応できるように育ってくれたらOK」と語. したし,遅くまでみんなで話をしたり(中略),. る校長がいるように,失敗が許容される場でも. そういう風に育ててもらって,で,その次(の学. あった。校長から何度も繰り返し叱られながら管. 校に)行ったときにそういう芽が,芽を,見つけ. 理職としての細やかな目配りを身につけたとの語. てもらった」などの語りが聞かれた。このような. りもあり,学校において日々学ばれている資質や. 日常の業務に埋め込まれた見定めは,人事や改革,. 能力は大きいと考えられる。外部の研修に出て忙. 業務の状況など,当該校のさまざまな事情のなか. しい学校の日常から切り離されることで管理職に. で決定される。かれらの抜擢は,学校として日々. 必要な視座を獲得したと語る校長がいる一方で,. の業務を遂行していくため,課題を乗り切ってい. 研修のために学校を離れるよりも校内での研修を. くために必要な措置でもあった。. 充実させるほうが重要だと語る校長もいた。. 次に,管理職の資質をどのようにとらえている 4−2−2.後輩教員たちの見定めと管理職の資質. か,みていく。管理職に求められる資質や能力に. について. ついて問われたとき,校長たちの多くはそれを言. では,校長としてかれらは後輩教員たちをどの. 語化することに迷いを見せ,何度も異なる表現に. ように見定め,管理職の資質をどのように捉えて. 言い換えながら語った。そこには様々な内容が含. いるのだろうか。. まれていたが,あえて挙げるなら,信頼できる人. まず,後輩教員たちをどう見定めているかにつ. 間性を持つこと,状況を見きわめ実現すべき教育. いてみていく。校長たちは,かれら自身がキャリ. のビジョンを描くための力,変化し挑戦する態度. アの中で経験した見定めと同様に,日常的な業務. などにまとめられる。. 220.
(12) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. 多くの校長が共通して挙げたのは,子どもや教 員や保護者に信頼される「人間性」「人としての 魅力」を備えていることだった。そしてその人間. どういうことをやるんだって」。というような語 りである。. 上記と関連するが,変化し挑戦をしていく態度. 性は,子どものことを第一に考えること,子ども. を挙げる校長もいた。「変えていこうっていう風. や教員や保護者などのさまざまな人の思いを受け. に挑戦するっていうかな,そういう資質」「常に. 止めることと関係が深いようだ。「根底には基盤. 変わること。(中略)やっぱり常に変わらないと. には,人間性がなければ,人としての部分がなけ. いけない。生徒も変わってくし」。かれらの語る. れば,先生方も動いてくれない」「子どものこと. 資質や能力はある程度共通性がみられるものの,. がまず視野に入るような,そういう資質を持って. その内容は言語化すらしにくい複合的な能力でも. いないと,(中略)やっぱり,子どもが第一で,. あり,その要素を項目化することには大きな困難. この子たちがどうなるかっていう風に考えていく. がある。. ような人でないと」「やっぱり,人格ですよね。. 管理職のあり方が多様であることに触れ,一般. 人望ですかね。事務能力だけでは駄目ですね。(中. 的な資質や能力を抽出することの難しさを語る校. 略)子どもの(を)やっぱり許容して受容してやっ. 長もいた。「資質と能力って言っちゃうと,その. て指導していく丸みっていうんかな」「情の部分。. 校長先生一人一人の個性との関係がなかなか難し. 目配り,気配りっていうかね,その人のことを思. いですよね。だからその校長先生っていうのは,. いながらしゃべるとかね」「誠心誠意人と接する. やっぱり,それまでキャリアも全然違うし,能力. こと」「ベースになるにはね,人間的な魅力やと. も個性も違いますよね,だから,教育学的な言葉. 思いますね。(中略)その人間的な魅力はじゃあ. で資質とか能力っていうのを『これです』つてい. どっから出てくるんか言うたら,うーん,たとえ. うのはなかなか難しいんだけれども」。先の引用. ば聴く力というかね」「必ず先生方の意見だとか. でも校内での見定めのポイントを「その人のキャ. それから気持ちだとか,それをしっかりと聴きと. ラクター」「持ち味」と表現する語りがあった。「い. るっていうことじゃないですかね。聴いたうえで. ろんなタイプがあっていいと思うとるんですよ. 自分の意見を述べる」。. ね。校長でも,その教員も,いろんなタイプがあ. さらに,現在の教育の大局や学校の状況を踏ま. るわけですから,管理職であっても,このタイプ. えて,実現させたい教育のビジョンを描き,具体. でないと困るっていうのはないかと思うんですよ. 化する方法を考えるための視野,考え方や能力を. ね」などの語りにうかがえるように,見定められ. 挙げる校長も多かった。「教育に対するビジョンっ. る資質や能力も多様であり,規格化できるような. ていうんですかね。(中略)やっぱりその方向性. ものではないようだ。. を見定めるだけの,教育に対するものの考え方が. 以上,校長たちの語りを通してみえてきた見定. しっかり育った人でないと」「何が動いているか,. めについてまとめる。それは,一方で官制研修会. どういう風にやったらいいのか,先見性とか視野」. や研究発表のような場において比較的短期間で行. 「課題を見抜く力ね。それから,その課題をどう. われるものもあったが,他方で日常的な校務の遂. したらいいかっていうのを,企画できる力と実行. 行を通して育成の性格を持ちながら時間をかけて. できる力。で,その時に忘れたらアカンのは,バ. 行われるものもあった。むしろ「一任システム」. ランス感覚っていうか,全体を常にこう,見なが. の存在を考慮すると,見定めにおける後者の機能. ら」「デザインカっていうかね,要するにね,学. は大きいと言えよう。校内の業務の中に埋め込ま. 校をね,こういう学校をつくるっていう明快なね,. れている見定めは,学校が直面する課題への対応. こういう学校をつくってこういう生徒を育てるっ. のためのきわめて個別具体的な状況の中で行われ. ていうそういうものがあって,それをするために. ているために,そこではかられている資質や能力. 221.
(13) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子. について一般的な共通の要素を見出すことは難し. は日々の仕事の積み重ねの中で教員世界において. い。校長たちが管理職に必要なものとして挙げた. 継承されているものでもあった。そして,見定め. 資質や能力も,単純に言語化,項目化できない複. る側も,見定められる側も,単純に要素や項目と. 合的なものであったし,さらに候補者ごとの多様. しては明示できない,こうした多様な力量を重視. 性が認められるものであることも見えてきた。こ. していることがうかがえた。. れらのことから,見定めのポイントを要素化して. 以上のように,「一任システム」で行われる学. 項目化することや,管理職への育成の機能を外部. 校管理職適任者の見定めについては,教員に多様. 化して官制の研修にゆだね,それらを要件化して. な経験の広がりを与えながら日常的業務の遂行を. 扱うような管理職登用システムを考えることの困. 通して力量形成を促そうとする機能面で,大きな. 難性が浮かび上がる。. 意味を有していることが示唆される。教師の成長 やキャリア形成の根底にあるのは,日々の難しい. 5.まとめ 5−1.「一任システム」における見定め. これまでみてきたことをまとめると,次のこと が指摘できる。. 第一に,一任しているうちに校長になるという 「一任システム」は,誰を管理職にしていくのか. 仕事の「乗り切り」という肯定的体験の積み重ね であるが(久冨2008),このたびのインタビュー 調査からは,校長のキャリア形成においても,そ. の根底を支えているのは日々の「乗り切り」の積 み重ねであり,教員に新たな経験の広がりを与え る日々の「乗り切り」は学校が直面する課題への. 対応のための個別具体的なさまざまな状況の中で. の見定めの流れを伴ってもいた。適任者として見. 行われるということ,つまり,要素化できない日々. 定められる教員たちは,教員世界の中で日々の「乗. の営みの連続性があることが明らかになった。. り切り」を積み重ね,校長になるのに必要な力量 を形成,発揮し,キャリア形成していることがう かがえた。つまり,一任システムが機能する背景. 5−2.要素化することの問題点. 最後に,「一任システム」における見定めを踏. には,一任された側が候補者の中から適任者を見. まえて,管理職の登用システムについて検討して. 定めるしくみがあるということが指摘できる。. いく。. 第二に,教育行政の立場であれ,校長の立場で. 仮に,上記のような,「一任システム」におけ. あれ,枚長(管理職)適任者としての資質能力に. る見定めを「従前のシステム」と呼ぶならば,従. ついては,学校でのさまざまな経験の積み重ねを. 前のシステムは,個々の能力を教員集団内での日. 通じて培われる複雑なものとして捉えられている. 常的業務の積み重ねによって形成・発揮させ,そ. ということである。適任者として見定められる力. の中から適任者を見定めていくシステムといえ. 量や資質能力は,校内外の日常的な業務の遂行に. る。他方,校長になるための各種ポイントの要素. よって中長期的に行われるものを基盤にしつつ,. 化や要件化によって希望者を登用していこうとす. 官制研修会や研究発表等の経験も得ながら,個別. る今日的な改革の動向を「新たなシステム」とす. 具体的な状況や課題への対応の中で形成されるも. るならば,このシステムは,「従前のシステム」. のであることがうかがえた。. に不可欠な「教員集団内での多様な経験の積み重. 第三に,上記と関わるが,校長としての資質能. ね」といった教員世界での力量形成,人材育成機. 力や力量を,はっきりと明文化することが難しい. 能に重点を置かないシステムといえる。「新たな. ということである。インタビューでも明らかだっ. システム」は,すなわち,く良い校長〉 となる要. たように,学校管理職としてふさわしい何らの資. 素や要件を設定,可視化し,それをこなすことで,. 質能力や力量が,確実に「ある」のであり,それ. 希望者が管理職候補者となり得るシステムであ. 222.
(14) 公立高校学校管理職の登用システムに関する検討. る。両者の違いは次の点であろう。つまり,従前. な業務の遂行を教員集団の中で互いに積み重ねな. の「一任システム」と,今日的な改革動向が整備. がら「乗り切る」,という教員文化における資質. しようとしている「新たなシステム」は,教員が. 能力の伸長や人材育成機能そのものが喪失する危. 学内外の多様な人々と関わりながら多様な経験を. うさもある。もし,外部の要請や基準で設定され. 積むということをどう評価するか,また,そうし. た要素を外部の目で評価するシステムとして機能. た多様な経験と個々人のキャリア形成との関わり. するようなことになれば,教員たちのアイデン. をどう評価するか,という点で大きく異なるもの. ティティややりがいは損なわれるだろう。. であるといえる。. 以上のように,「従前のシステム」にせよ,要. これまでみてきたように,「一任システム」に. 素化と可視化による「新たなシステム」にせよ,. おける適任者の見定めにおいては,学校管理職に. それぞれに課題はある。また,例えば,長時間労. 相応しい資質能力が,明示的には要素化しにくい. 働や激務による家庭責任等のさまざまなしわ寄せ. 部分を持ちながら,教員集団の中で形成,発揮さ. を個別に調整できない教員がキャリア形成過程か. れている。つまり,多様な人々と関わりながら多. らこぼれやすい(河野ほか2013)という問題にど. 様な経験を積むという校長のキャリア形成を評価. ちらも有効な解を示せていないように,共通する. するものといえる。とはいえ,こうした「一任シ. 課題もある。. ステム」での従前のキャリア形成は,人的資源や. しかし,校長適任者としての資質能力及びキャ. 多様な環境要因の網の目の中で,管理職としての. リア形成のあり方の根底が,多様なつながりや資. 適任者が適切に見定められた場合にのみ有効,と. 源をもとにした,要素化できない日々の複雑な営. いう点で限界をもつ。. みの積み重ねによって支えられているという実態. では,校長になるための資質能力の要素化とそ. を明らかにしてきた現状を踏まえれば,「従前の. れらの可視化を目指す「新たなシステム」の構築. システム」には評価できる側面も多いと考えられ. によって,従前の「一任システム」の限界は乗り. る。多様にキャリア形成し,能力を獲得・発揮し,. 越えられるだろうか。おそらく,そうはならない. そうしたあり方が継承され,また工夫されていく. だろう。先にみたように,「新たなシステム」に. 可能性があるからである。ただし,少子化による. おいては,学校での経験において多様に形作られ. 学校の小規模化や教員年齢構成の偏り,教師の多. るキャリアのあり方が損なわれるという問題点が. 忙化・私事化によって,「従前のシステム」がう. ある。つまり,項目や要素には還元しきれないが. まく機能する前碇がゆらいでいるのも事実であ. 確かに存在する「何らか」の力量が見定められな. る。. くなる。また,「従前のシステム」では,学内外. こうした側面も考慮しながら,今後もインタ. で多様な人的つながりや経験を積み重ね,資質能. ビュー調査を続け,教員が豊かなキャリア形成を. 力を獲得・発揮していく者が適任者として見定め. 展望できるような管理職登用システムの在り方に. られていくため,本人の希望の有無にかかわらず,. ついて探っていきたい。. 能力があるとみなされた者が適任者として見定め られていた。しかし,「新たなシステム」では,く良. い校長〉 の要素をこなせば,明文化できないそれ 以外の多様な資質能力がなくても学校管理職候補 者になることが可能となる。逆に言えば,能力が. あっても学校管理職を希望しない教員は,「新た なシステム」においては見定められることがない。 さらに,「新たなシステム」によって,日常的. 6.参考文献 川上泰彦2005「学校管理職による情報交換と相談一校長・ 教頭のネットワークに着目して−」『日本教育経営学会 紀要』47,80−95. 川上泰彦2013『公立学校の教員人事システム』学術出版社, 238.. 河野銀子・木村育恵・杉山二季・池上徹・村上郷子・高. 223.
(15) 木村 育恵・河野 銀子・杉山 二季・村上 郷子・池上 徹・高野 良子・田口久美子 野良子・田口久美子2013「ジェンダーの視点からみた 学校管理職養成システムの課題」『国際ジェンダー学会. 誌』11,75−93. 久富善之2008「『改革』時代における教師の専門性とアイ. デンティティ」久冨善之編著『教師の専門性とアイデ ンティティ』勤草書房,15−29. 元兼正浩2001「校長・教頭任用制度の今口的状況と課題 −2000年度全国調査の結果から−」『福岡教育大学紀要』 50(4),81−90. 元兼正浩2002「校長人事プログラム開発のための予備調 査」『福岡教育大学紀要』51(4),61−70. 元兼正浩2003「学校管理職の力量形成のための人事行政. 研究一教育系大学院での研修ニーズに関する調査結果 報告−」『福岡教育大学紀要』53(4),85−94. 小島弘道編著2004『校長の資格・養成と大学院の役割』. 東信堂 押野清治2011「学校の管理職養成に関する一考察一日常 における意識化を通して−」『中国四国教育学会教育学 研究紀要』57,263−268.. 高野良子・河野銀子・木村育恵・杉山二季・池上徹・田 口久美子・村上郷子2013「公立高校学校管理職のキャ リア形成に関する予備的考察−「一任システム」に着 目して−」『植草学園人学研究紀要』5,25−34.. 224. (木村 育恵. 函館校准教授). (河野 銀子. 山形大学准教授). (杉山 二季. 駒澤大学非常勤講師). (村上 郷子. 法政大学非常勤講師). (池上 徹. 関西福祉科学大学准教授). (高野 良子. 植草学園大学教授). (田口久美子. 和洋女子大学教授).
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編﹁新しき命﹂の最後の一節である︒この作品は弥生子が次男︵茂吉
参加メンバー 子ども記者 1班 吉本 瀧侍 丸本 琴子 上村 莉美 武藤 煌飛 水沼茜里子 2班 星野 友花 森 春樹 橋口 清花 山川 凜 石井 瑛一 3班 井手口 海
SOS子どもの村JAPAN 松﨑 佳子 (理事、臨床心理士) 杉村 洋美
和田 智恵 松岡 淳子 塙 友美子 山口 良子 菊地めぐみ 斉藤 敦子.