消化器がんにおける看護支援の構造化を目指して
堀越 政孝
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科看護学講座 私は本学医学部保 学科看護学専攻を卒業した後, 同医 学部附属病院の消化器外科病棟と消化器呼吸器内科病棟に 配属され, 多くのがんサバイバーと向き合って看護を行っ てきました. また, 入職と同時に本学大学院博士前期課程 に進み, 研究について学びました. その後, 本学保 学研究 科看護学講座に着任し, もう 10年が過ぎようとしており ます. 教員になってからは, 附属病院での看護専門外来の ひとつであるがん相談を担当し, 貴重な体験を積んでいま す.外来で患者・家族の力になれるというのは,願ってもな いことだと思っています. このようにがん看護に慣れ親し んで, ここまで来ました. これまでの研究 博士前期課程では, 電子カルテ導入前後の看護記録にお ける情報量と内容を比較し, 電子カルテ導入による看護情 報への影響を明らかにしました. 属性をマッチングさせた 胃切除術後患者の SOAP形式看護記録の電子カルテ導入 前後それぞれ 13名の術後データを比較した結果, 導入前 後の Sデータ・Oデータ・看護診断・関連因子・看護計画 の量的比較において有意差はありませんでした. 導入によ る診断のワンパターン化が懸念されましたが, 候補リスト の表示や判断を伴う選択により, むしろ論理的な思 を広 げていました. また, 胃全摘術を受けたがん患者の退院後の QOL を向 上させる看護支援を探ろうと, 退院後の活動量と栄養状態, 及び心理的変化を明らかにしました. 結果として, 退院後 1ヶ月間, 全対象者の体重・体脂肪率は減少しましたが, 消費量・運動量は, 数値が安定してからは大きな変化はあ りませんでした. また, 心理的変化については, 退院時は不 安定な状況でしたが, 日が経つにつれ, 体重が減少してい く中でも自 なりの対処行動がとれるようになり, 前向き な えが芽生え始めていました. ただ, 食事に対する不 安」や「再発への不安」「体力低下への危惧」といった負の 要素は, ずっと持ち続けていました. 以上のことから, 現れ る症状への対処やリハビリなど具体的な教育的支援を強化 していければ, 退院後の QOL 向上が図れ, 合併症の発症を も減らしていけることが示唆されました. このように, 入 院中から退院後の生活を見据えた看護が大変重要であり, 継続性を持たせるためには, 外来看護の発展も欠かすこと のできない重要なピースだということがわかりました. 現在は, 直腸がん術後患者の 3大機能障害に対するアセ スメントツール及びケアモデルの開発を目指し, まずは, 生活上の問題を解明しているところです. 直腸がん患者が 術後の機能障害を自覚し, 適切な対処が必要と真に え始 めるのは, 退院後です. 退院後の生活に適応していくには, かな在院期間や外来受診時に, セルフケア確立に向けた 適切な支援を提供する必要があります. そのニーズを充塡 するために, 直腸がん術後患者が 3大機能障害への対処だ けでなく, 生活の中で発症する頻度の高い合併症の予防や, ― 65― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成28年12月5日 修正 平成28年12月8日 採択 平成28年12月8日 論文別刷請求先: 堀越政孝 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科看護学講座 電話:027-220-8803 E-mail:masataka@gunma-u.ac.jp流 れ
2017;67:65∼66QOL を向上できるようにケアモデルを開発し,セルフケア 支援を充実させていきたいと えております. 今後の展望 我が国は少子超高齢社会となり, いわゆる 2025年問題 が間近に控えています. 団塊の世代が給付を受ける側とな ることで医療への需要が高まり, これまでの入院中心の医 療では, 医療費がこれまで以上に 迫する状況です. 今後 は, 益々入院期間が短縮される事が確実視されており, 入 院中に提供されていた医療を在宅で提供できるような体制 を整えておかなくてはなりません. 難病や小児医療, 介護 保険の適応例やがん末期など, 現在までに実績のある 野 では, 十 とは言えずとも基盤はできています. しかし, 今 後必要なのは, 術後回復期など, 入院中に行われるのが当 然と思われている医療です. そこで, 3つのアプローチが必 要となります. ①退院後の生活を意識した入院中および外 来での医療の拡充, ②新たな人材育成や現在活躍中の医療 職の意識改革といった在宅医療拡大のための体制整備, ③ 在宅医療が必要な対象の低減です. このアプローチに貢献 する研究課題として, 先に述べましたように, 私は直腸が ん術後患者の 3大機能障害に対するアセスメントツール及 びケアモデルの開発を挙げております. この研究課題を達 成する為には, 4段階のプロセスがあると えております. まず 1段階目は, 直腸がん術後患者が抱える問題状況の 明確化」, 2段階目は, 患者が問題に対処していくプロセ ス」です.そのプロセスが明確になると,どの時点での介入 が必要かの見当がつきます. ただ, 介入するにあたり, 問題 の程度を測る必要があります. また, 有効かつ標準的なケ アモデルが必要です. そこで 3段階目の「アセスメント ツール及びケアモデルの開発」です.そして,最後にケアモ デルを った「介入研究」を行い, ケアの標準化・普及を 図っていきたいと えております. 現在, 第 2段階のプロ セスの明確化を試みて, 論文を投稿中です. この研究を礎 にして, 様々な消化器がんに対する看護支援の構造化を 図っていけるのが理想です. 当然のことながら, がんはそ の種類により病状が様々であるため, 個別性を重視した オーダーメイド型看護が必要不可欠です. ただ, オーダー メイドには, 基本形が必ず存在します. 私の取り組みによ り基本形が明確になっていくことで, がん看護の てん化 が少しでも進み, より適切なオーダーメイド型看護の提供 につながることを夢見ています. 最後になりましたが, これまでご指導, ご支援いただき ました関係各所の皆様には, 言葉に表せないほどに感謝し ております. 今後ともご指導ご鞭撻のほど, よろしくお願 い申し上げます. 文献 1. 堀越政孝, 杉本厚子, 齋藤やよい. 電子カルテ導入前後にお ける看護情報の評価. The Kitakanto Med J 2005; 55(2): 115-122.
2. Horikoshi M, Sugimoto A, Futawatari T. Changes in nutrition, metabolism, and psychology in total gastrectomy patients after discharge. The Kitakanto Med J 2010;60(4): 321-328.
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