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ベテラン教員の支援に基づく 総合的な学習の時間における若手教員による 授業づくりの一考察

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ベテラン教員の支援に基づく

総合的な学習の時間における若手教員による

授業づくりの一考察

1 はじめに

1)研究の動機 大量の退職者によって、新規採用の教員が急増している。文部科学省(2015)は、教員の実 践的指導力形成について、次のように述べている(1) 「かつては、教員に採用された後、学校現場における実践の中で、先輩教員から若手教員へと知 識・技能が伝承されることで資質能力の向上が図られるという側面も強かった。しかしながら、 近年の教員の大量退職、大量採用の影響により、必ずしもかつてのような先輩教員から若手教員 への知識・技能の伝承がうまく図られていない状況があるといった指摘もある」 この指摘からも考えられるように、学校現場では若手教員の成長が喫緊の課題であると言え る。文部科学省における学校教員統計調査(2018)(2)では、全国の公立小学校における 30 歳未 満の教員の割合は 17.3% と前回調査時よりも増加しており、35 歳未満で見ると 29.8% と全体 の約 3 分の 1 を占める割合である。一方、50 歳以上の教員の割合は 36.2% であり、50 歳以上 の教員が退職する時期が近づいていることを考えると、ベテラン教員から若手教員への教員とし ての資質・能力の継承が学校現場にとって非常に重要な問題であると考えられる。 そのような状況の中、各教育現場では校内研修やそれに基づく研究授業等が行われるなど、教 員としての資質・能力を高めようと様々なアプローチが行われている。しかし、それらの取り組 みの中で、教員がどのような資質・能力を獲得したかということについて十分に検証されないま ま校内研修等を進めていては、上記に述べたようなベテラン教員から若手教員への資質・能力の 継承、すなわち若手教員の育成に向けて着実なアプローチとはいえないであろう。そこで、そこ で本研究では若手教員による研究授業に向けた企画・準備・実践にベテラン教員が関わり、授業 実践の支援していくことを通して、実践的指導力の形成過程を明らかにしたいと考えた。 (2)研究の目的 本研究では、ベテラン教員の支援によって、若手教員が「総合的な学習の時間」の授業づくり (69)

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において、「①カリキュラムづくり②授業構成③評価と指導」を内容とする「実践的指導力」を どのように育んで行くかについてその様相を明らかにすることを目的とする。 (3)研究の方法 ① 3 人の若手教員が各学校で「総合的な学習の時間」の学習を展開する。 ②それぞれの実践を若手教員とベテラン教員で構成する「チーム会議」で支援しながら、その学 習展開の中で若手教員が気づきを収集する。 ③収集された気づきを整理・分析し、その内容や要因を明らかにする。そこから教師の実践的指 導力の成長について考察する。

2 「総合的な学習の時間」における実践的指導力

総合的な学習の時間は、平成 14 年に全面実施されるようになったが、その成果とともに様々 な次のような課題が示されている(3) ◇各学校において目標や内容を明確に設定していない。 ◇必要な力が児童に身についたかについて検証・評価を十分に行っていない。 ◇教科との関連に十分は配慮されていない。 ◇適切な指導が行われず教育効果が十分に上がっていない。 また、平成 20 年 1 月の中央教育審議会の答申においては、総合的な学習の時間の課題とし て、次のように指摘している(4) ◇総合的な学習の時間の実施状況を見ると、大きな成果を上げている学校がある一方、当初の 趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。 ◇総合的な学習の時間においては、補充学習のような専ら特定の教科の知識・技能の習得が図 る教育が行われたり、運動会の準備などと混同された実践が行われたりしている例も見られ る。 これらをふまえ、令和 2 年度より小学校において完全実施された学習指導要領(2018)(5) は、「総合的な学習の時間においては、探究的な学習の過程を一層重視し、各教科等で育成する 資質・能力を相互に関連付け、実社会・実生活において活用できるものとするとともに、各教科 等を越えた学習の基盤となる資質・能力を育成する」という基本的な考え方のもと教育現場での 総合的な学習の時間の重要性を示唆している(6) また、平成 27 年度全国学力・学習状況調査の結果より、「総合的な学習の時間において自分 (70)

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で課題を充てて情報を集め整理して、調べたことを発表するなどの学習活動に取り組んでいる児 童生徒ほど各教科の正答率が高い」とされている(7)。さらには、平成 27 年の文部科学省・教育 課程企画部会の論点整理では、「総合的な学習の時間の役割は、クロスカリキュラムによる子供 主体の活動を中心とした学習により、PISA における好成績につながったのみならず、学習に対 する姿勢の改善に大きく貢献するものとして、OECD をはじめ国際的にも高く評価されている」 としている(8) これらより、総合的な学習の時間は、その時間の意義が当該学校において十分に理解され、学 習展開について教員による創意工夫に基づくものであるならば、高い成果を挙げられるものであ ると推察される。 そもそも総合的な学習の時間には、教科書等が存在せず、小学校学習指導要領には、学習活動 の例として、「例えば、国際理解、情報、環境、福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横 断的・総合的な課題、地域の人々の暮らし、伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題、児 童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること」(9)と示されているだけで、具体的な 学習展開は各学校に委ねられている。 これらより、総合的な学習の時間について、その実践を行う教員にとって、他教科・領域と比 較して、そのカリキュラム開発について非常に異なる側面を持つものであると考えられる。特 に、若手教員にとって、総合的な学習の時間に教科書等がなく、決められた学習内容もないとい うことは、そのカリキュラム開発を難しいものにしていると推察される。 教員の指導力向上については、様々な先行研究が見られる。秋田・佐藤・岩川(1991)は、 教師の授業に関する知識の成長について、熟練教師と初任教師を比較し、次のように述べてい る(10) 初任教師は「授業の事実を表層的に捉えるのみで、子どもの理解状態を推論したり、発言を授 業の場の関連性の中で捉えることが、ほとんどでできなかった」という一方、熟練教師は「授業 の課題構造や教材に関する実践的知識を持っているだけでなく、それらの知識を状況の手がかり を利用して柔軟に適用しながら、授業という問題状況の各事象を関連づけて捉え、ただちに対応 すべき教授を考えたり、後の後の展開を予測できる」 高詰・瀬戸(2014)は若手教員の授業形態について、「①演繹的・単線型の教師主導型授業で あること、②『オールマイティーな教育方法』があるという誤解があること」という指摘をして いる。そして、若手教員の「実践的指導力」の向上の条件については、次のように示されてい る(11) ①若手教員が『実践的指導力』の向上が為されるには、まず実際の授業における課題を認識す る必要がある。 ②若手教員が『実践的指導力』の向上が為されるには、授業の成功体験が必要である。 ③手教員の『実践的指導力』の向上の前兆として、『教材研究』中に具体的な子どもの名前と 課題に対応する反応が多様化する。 ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (71)

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④『教材研究』によって授業中の子どもの反応や発言を予測でき、それに対応する手立てをあ らかじめもつという「待ち受け」の状態が、若手教員の「実践的指導力」の向上に有効に働 く。 また、勝見(2015)(12)は、若手教員が熟達教員とポートフォリオを介在しながら自覚的に 「鑑識眼」を洗練させていくことの必要性を指摘している。「鑑識眼(Educational Connoisseur-ship)」は、Eisner, E. W.(1976)によって提唱されたものであり、児童が見せる複雑で偶然性 を潜めた活動の意味や価値を解釈し、臨機応変に適切な指導を行う教員に不可欠な能力であ る(13) 先にも示したように、小学校学習指導要領には、総合的な学習の時間の学習活動の例として、 「児童の興味・関心に基づく課題についての学習活動」(14)と示されている。これは、高詰・瀬戸 (2014)や勝見(2015)が指摘する、若手教員が成長するために必要な視点である、「実際の授 業における課題を認識する必要があること」や「鑑識眼」を養うことの必要性にアプローチをす ることにつながるものであると考える。 そこで、本研究においては、若手教員が、総合的な学習の時間のカリキュラム開発の過程で、 「児童の興味・関心に基づく課題」をどのように把握し、その中でどのような視点を獲得してい ったのか、また、若手教員が熟達教員とともに、総合的な学習の時間のカリキュラム開発をする 中で得ることができた視点について分析するとともに、そこから見えてくることについて考察す る。

3 授業実践の概要と分析

3 つの実践について、単元目標、学習展開、総合的学習の時間を通じた各担任の気づきの比較 による分析を行うことにする。 1.若手教員と授業実践1)大阪府内の A 小学校 A 教諭の実践(以下、実践 A とする) ①学年 4 年生 36 名 ②時期 平成 25 年 4 月∼平成 26 年 3 月 ③単元名「探検!粟ヶ池調査団!∼自分のくらしと水のつながり∼」 (2)大阪府内の A 小学校 B 教諭の実践(以下、実践 B とする) ①学年 6 年生 34 名 ②時期 平成 25 年 4 月∼平成 26 年 3 月 ③単元名「みんなのために」「ひとりのために」創造し発信しよう。 (72)

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3)大阪府内の B 小学校 C 教諭の実践(以下、実践 C とする) ①学年 6 年生 27 名 ②時期 平成 25 年 4 月∼平成 26 年 3 月 ③単元名 外国とのつながりを知ろう 2.チーム会議 3 つの実践を進めるにあたり、若手教員 3 人が熟練教員のコーディネートで、チーム会議を行 い、学習展開について検討を行った。若手教員 3 人とコーディネータでチーム会議を 5 回行っ た。5 回のチーム会議の概要を以下に示す。 平成 25 年 7 月 26 日:単元構成を考える 平成 25 年 8 月 2 日:指導案を考える 平成 25 年 8 月 28 日:45 分の授業作りを考える 平成 25 年 11 月 11 日:授業研究・公開 平成 25 年 12 月 26 日:実践の振り返り その他、授業の進捗状況や子どもたちの様子、支援のあり方等について適時検討を行った。若 手教員と共に総合的な学習の時間の授業をつくることによって、授業作りを行うために必要な以 下の点が浮かび上がってきた。 ①単元のゴールを明確にすること。ゴール時の子どもの姿を思い描くこと。 ②長時間の単元構想を練るにあたっては、枠組みが必要なこと。(今回は、「ふれる」「つかむ」 「ふかめる」「いかす」という大枠に、探究活動を組み込んだ。) ③体験活動、言語活動、コーディネータとの出会い、他教科との連携、多様な学習形態、振り返 りなど、総合的な学習で大事にすべきことを明確にすること。 ④振り返りや作品から、子どもの実態を見取り、必要な支援や手立て、環境設定を考えること。 ⑤指導案はあくまでも案であり、子どもの様子によっては、時には変更や調整が必要なこと。 ⑥子どもの変容や成長を見出し、総合的な学習の良さを実感できること。そのために、日々授業 や子どもたちについて語り合えること。 3.各実践の単元目標の分析 以前の小学校学習指導要領解説総合的な学習の時間編(15)には、総合的な学習の時間において 育てようとする資質や能力及び態度の視点として、「学習方法に関すること、自分自身に関する ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (73)

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こと、他者や社会とのかかわりに関することなど」と例示されていた。 本研究で紹介する 3 つの実践においても、「学習方法に関すること」「自分自身に関すること」 「他者や社会とのかかわりに関すること」の 3 つの視点について、目標を設定している(表 1 参 照)。 「学習方法に関すること」については、「粟ヶ池の探検を通して課題に気づき、学習の計画をた てる。」(実践 A)、「目的に応じて手段を選択し、情報を収集する。」(実践 B)、「学んだこと、 考えたこと、自分なりの方法で人に伝えることができる、」(実践 C)などの記述からもわかる ように、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」として示されている総合的 な学習の時間における「探究的な学習」の過程をふまえた目標であることがわかる。 「自分自身に関すること」については、「粟ヶ池の学習を通して、自らの生活のあり方を見直 す。」(実践 A)、「自己の成長を振り返り、これからの自分を見つめ、自己を高めようとする。」 (実践 B)、「在日外国人の文化を知ることを通して、自分の生活を見つめ直すことができる。」 (実践 C)などの記述からもわかるように、主にそれぞれの活動を通じて、「自己成長」につな 表1 各実践の目標 実践A 実践B 実践C 学年 4 年 2 組 6 年 2 組 6 年 2 組 単元名 探検!粟ヶ池調査団!∼自分のく らしと水のつながり∼ 「みんなのために」「ひとりのため に」創造し発信しよう。 在日外国人の文化を知り、自分と のつながりをみつけることによっ て、自己の生き方を考える。 学習方法に関 すること ・粟ヶ池の探検を通して課題に気 づき、学習の計画をたてる。 ・自分の課題にあった情報に気づ き、見つける。 ・粟ヶ池を調べて学んだことを自 分の生活の中に生かすことができ る。 ・対象と積極的にかかわるなか で、課題を設定する。 ・解決の方法や手順を考えて、計 画をたて実行する。 ・目的に応じて手段を選択し、情 報を収集する。 ・相手や目的・場面に応じて効果 的に表現する。 ・自分なりの課題を持ち、意欲的 に追求することができる。 ・めあてと見通しを持って活動す ることができる。 ・必要なことを収集、選択し、活 動に活かすことができる。 ・学んだこと、考えたことを、自 分なりの方法で人に伝えることが できる。 自分自身に関 すること ・自分の考えを持ち、自分の言葉 で相手に伝えることができる。 ・粟ヶ池と自分との関わりについ て目標を設定し、課題の解決に向 けて行動する。 ・粟ヶ池の学習を通して、自らの 生活のあり方を見直す。 ・自らの行為について責任をもっ て意思決定をする。 ・自己の成長を振り返り、これか らの自分を見つめ、自己を高めよ うとする。 ・目標を明確にし、課題の解決に 向けて、計画的に行動する。 ・在日外国人との出会いを通し て、アジアや日本に目を向け、ア ジアと日本・自分との相違点、共 通点、結びつきを考えることがで きる。 ・在日外国人の文化を知ることを 通して、自分の生活を見つめ直す ことができる。 他者や社会と のかかわりに 関すること ・話し合いの中で異なる意見や他 者の考えを受け入れる。 ・探検やインタビューの時など、 他者と協同して課題に取り組む。 ・粟が池の学習を通して自分と地 域のつながりに気づく。 ・異なる意見や他者の考えを受け 入れ尊重する。 ・協同して課題に取り組む。 ・人とのつながりをよりよく広げ る。 ・異なる文化を持つ人々に関心を 持ち、その人たちの想いを尊重す ることができる。 ・様々な国の人と交流し、その人 の想いを理解することができる。 ・様々な国の文化や特色を知り、 互いに尊敬し合い、共生していこ うとする。 (74)

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げることができるかどうかについての視点で、目標設定していることがわかる。 4.各実践の学習展開の分析(表 2 参照) 平成 29 年に告示された小学校学習指導要領(16)では、「総合的な学習の時間」の「目標」とし て、以下のように示されている。 表2 各実践の学習展開 A 実践 B 実践 C 実践 学年 4 年 2 組 6 年 2 組 6 年 2 組 単元名 探検!粟ヶ池調査団!∼自分のくら しと水のつながり∼(全 21 時間) 「みんなのために」「ひとりのため に」創 造 し 発 信 し よ う。(全 60 時 間) 在日外国人の文化を知り、自分との つながりをみつけることによって、 自己の生き方を考える。(全 20 時 間) ふれる ◎粟ヶ池を探検しよう(2 時間) ・粟ケ池を散策し、「とっておきの 発見」をし、写真をとる。 ・見つけたこと、気づいたことを出 し合う。 ◎ミュージカルのイメージをもとう (13 時間) 1 卒業生から、ミュージカルにつ いての話を聞く。 2 賢治の作品と賢治の生き方につ いて知る。 3 被災地の状況を知る。 ◎日本に多く住んでいる外国人につ いての事実を知ろう。(3 時間) 1.日本に多く住んでいる外国人の 国について話し合う。 2.富田林在住の外国人と出会う。 つかむ ◎粟ヶ池について調べたいことを決 めよう。(3 時間) ・自分の目的をもって粟ケ池を探検 する。 ・気づいたこと、疑問に思ったこと を出し合う。 ・粟ケ池についての学習課題を決め る。 ◎ミュージカルで伝えたいことを考 えよう。(7 時間) 1 発声方法について学ぶ。 2 ミュージカルのテーマについて 考える。 3 夏休みの課題で自分の課題(生 き方、考え方、被災地)について調 べる。 ◎日本とつながりが深い外国につい て、調べたい課題を決めよう。(3 時間) 1.富田林在住の外国人から聞いた 話を、学級で交流する。 2.自分の課題を決め、課題を追及 するための方法、計画を考える。 3.決めたテーマを交流する。 ふかめる ◎粟ヶ池について調べよう。(7 時 間) ・池探検で発見したことを頼りに、 話を聞きたい人たちを探す。 ・粟ケ池を大切にしている人々の思 い を 知 る。(役 割・環 境 問 題・自 然・歴史・問題) ・地域に根差した公園にするために 自分ができること・学年でできるこ とを考える。 ◎ミュージカルをつくろう∼台本を つくろう∼(15 時間) 1 調べたことを報告しあう。 2 再度自分 の 課 題 に つ い て 調 べ る。 3 「自 分 が 宮 沢 賢 治 だ っ た ら」 「今、宮沢賢治が生きていたら」ど うするか考える。 4 調べたことをまとめる。 5 台本をつくる。 ◎自分の課題を追求しよう。(6 時 間) 1.自分の課題を、計画に基づいて 調べる。 2.富田林在 住 の 外 国 人 と 交 流 す る。 3.交流会の様子やインタビュー内 容、調べ学習の進捗状況についての プレゼンテーションを行う。 いかす ◎粟ヶ池について発信しよう(7 時 間) ・子どもたちが考えた活動を実際に 行う。 ・分かったことや地域に根差した公 園の提案を伝える。(新聞)(国 2) ・新聞を展示して校区の人に広く知 らせる。 ・お世話になった方々に、お礼の手 紙を書く。 ◎自分たちの思いをミュージカルで 発信しよう。(23 時間) 伝えたいテーマをミュージカルで表 現できるよう練習する。 ・役割分担を決める。 ・ダンスを考える。ダンスを学ぶ。 ・表現方法を学ぶ。 ・練習する。 ◎調べたことをまとめ卒業論文に書 こう。(7 時間) 1.論文の書き方を学ぶ。 ・初めに→方法→調べた内容→まと め 2.調べたことを、卒業論文にまと める。 ・個々が書いた論文をまとめ 1 つ の冊子にする。 3.最後の交流を す る。(交 流 3 回 目) ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (75)

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「探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題 を解決し、自己の生き方を変えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)探究的な学習の過程において、課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わ る概念を形成し、探究的な学習のよさを理解するようにする。(2)実社会や実生活の中から問 いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができ るようにする。(3)探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かし ながら、積極的に社会に参画しようとする態度を養う。」 この「目標」においては、総合的な学習の時間における探究的な活動は、「課題の設定」「情報 の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の活動が発展的に繰り返されていく学習活動であるとし ている。本研究は熟達教員を中心としたチーム会議により、その学習展開を事前に話し合うこと で進めたが、「探究的な学習」の過程については、「ふれる」「つかむ」「ふかめる」「いかす」と いう 4 つのステップを踏んでいくこととしている。 (1)「ふれる」段階 「ふれる」の段階では、どの実践においても児童が今度の活動の見通しを持つことができるよ うに、興味関心のきっかけとなる場の設定をしている。実践 A では、「粟ヶ池を散策」し、「見 つけたことを、気付いたことを出し合う」という場を設定し、校区の身近な池である「粟ヶ池」 を注目させることで、児童の興味関心を惹く場としている。実践 B では、「ミュージカルをつい て話を聞く」「宮澤賢治の作品と生き方について知る」「被災地の状況を知る」と、一見別々のテ ーマであると思われる 3 つのものに触れされることで、今度それらを融合した取り組みをして いくことの想起をさせる場を設定している。実践 C では、「日本に多く住んでいる外国人の国に ついて話し合う」「富田林市在住の外国人と出会う」のように、テーマ設定につながる内容につ いて話し合う機会や、外国人の方々に実際に会うなどの場を設定し、その後の学習展開を想起さ せている。 (2)「つかむ」段階 「つかむ」の段階では、どの実践においても「ふれる」の段階でイメージしたことをもとに、 自分たちがどのような活動をしたいかについて考えさせる場を設定している。実践 A では、「自 分の目的をもって粟ヶ池を探検する」「粟ヶ池についての学習課題を決める。」のように、一回目 に粟ヶ池を訪れたときとは違って課題意識をもって探検することで自分がさらに調べたいことは 何なのかという視点をもつことができる場を設定している。実践 B では、「自分の課題(生き 方、考え方、被災地)について調べる」など、「ミュージカル」「宮沢賢治」「東日本大震災の被 災地」という一見関わりのないように思われるテーマの主軸として「自分の生き方や考え方」を 考えていくということにせまることができる場を設定している。実践 C においては、「日本とつ ながりが深い外国について調べたい課題を決めよう」という大きな主題に基づき、「外国につい て考えること」を自分の課題設定とし、自分とのかかわりの視点で学習していくことへの見通し を持つ場としている。 (76)

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3)「ふかめる」段階 「ふかめる」の場面においては、3 つの実践のそれぞれが「ふれる」「つかむ」それぞれの過程 を経て、それぞれが創意工夫された学習展開を行っている。実践 A においては、粟ヶ池につい て専門家の方々にアプローチをしたり、粟ヶ池を管理している人たちの思いを知ったりすること で、自分たちには今後どのようなことができるのかについて考えている。実践 B においては、 「宮沢賢治」「東日本大震災の被災地」から考えたことをミュージカルとして表すという展開をし ている。実践 C では、これまでの活動をふまえて、実際に富田林市在住の外国人と出会ったり、 調べてきたことをプレゼンテーションしたりという展開をしている。 (4)「いかす」段階 「いかす」の場面においては、どの実践においても、これまで行ってきた活動をアウトプット する場を設定していた。実践 A においては、粟ヶ池の活動からわかったことや考えたことを、 新聞としてまとめるとともに、お世話になった方々にお礼の手紙を書くことで活動をしめくくっ ている。実践 B においては、これまでの活動をふまえて、自分たちが伝えたいことをミュージ カルという形で表している。実践 C においては、身近な外国人についてこれまで調べてきたこ とをもとにして、自分たちが気づいたことや考えたこと、「卒業論文」という形でまとめている。 5.各実践を通じた担任の気づき(表 3 参照)1)子どもの変容について 3 つの実践を進める中で、担任が見取った子どもの変容について示すことにする。実践 A で は、「粟ヶ池について調べたことについて、ゲストティーチャーから聞いたことをふまえて、よ り具体的な部分について気づくことができるようになっていた。」としている。活動を進めてい く中で、最初は漠然としていたテーマについて、次第にそれぞれの視点を持ち、具体的な気づき へとつながっていったことを担任が見取っていることがわかる。実践 B では、「話す力」「聞く 力」「書く力」の 3 つの力の視点で変容を捉えており、それぞれ、「自分の発言に根拠を持つこ とができるようになった。」、「友だちの意見を自分の意見と比べながら聞くようになった。」、「効 果的に伝えられるように、書く事柄を整理し、新聞の構成を考えるようになった。」のように具 体的な見取りが行われている。実践 C においても、「伝え合うこと」「書くこと」の二つの視点 で、児童の変容を捉えており、それぞれ「充実した調べ学習をもとに子どもたち一人一人が伝え たい内容をもつことができた。」「論文を書くための材料を十分に蓄え、意欲的に書くことが出来 るようになった。」と、具体的な見取りを行っている。 実践 B と実践 C においては、各担任は、以前の小学校学習指導要領解説・総合的な学習の時 間編に示されていた、育てようとする資質や能力及び態度の視点である、「学習方法に関するこ と」や「自分自身に関すること」について児童の変容を見取っていることが推察される。また、 実践 A においては、児童が「より具体的な視点」を持つことができたことに言及をしており、 こちらも「学習方法に関すること」「自分自身に関すること」の視点で児童の変容を見取ってい ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (77)

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ることが推察される。 (2)教員の変容について 続いて、学習展開を進める中で、若手教員がどのような視点を得ることができたのか、どのよ うに変容したのかについて、自分自身をどのように捉えているのかについて示すことにする。 実践 A では、担任自身の変容を「①ゲストティーチャーの必要性を感じた。」「②子どもの実 態を把握することの必要性を感じた。」と捉えている。総合的な学習の時間の中で、専門的知識 が必要な局面において、やはり専門家にゲストティーチャーとして学校に来ていただく必要があ り、そのゲストティーチャーからよりよいご指導を頂くためには、児童の思いや考えを担任がし っかり把握し、それを伝えることの必要性を感じることができたと考えられる。 実践 B では、「①学習に見通しをもつことができるようになった。」、「②子どもの実態把握の 重要性」、「③外部機関とのつながりの必要性」の 3 点を担任としての変容に挙げている。こち らにおいても、やはり外部機関との連携と、その連携を円滑にするために、子どもの実態把握の 必要性について言及している。また、「学習に見通しをもつこと」の重要性も指摘しており、探 究的な学習を展開する中で、大きな枠組みの中で目標を持つことの必要性を感じたのではないだ ろうか。 表3 総合的な学習の時間を通した各担任の気づき A 実践 B 実践 C 実践 学年 4 年 2 組 6 年 2 組 6 年 2 組 単元名 探検!粟ヶ池調査団!∼自分のくら しと水のつながり∼(全 21 時間) 「みんなのために」「ひとりのため に」創 造 し 発 信 し よ う。(全 60 時 間) 在日外国人の文化を知り、自分との つながりをみつけることによって、 自己の生き方を考える。(全 20 時 間) 子どもの 変容 粟ヶ池について調べたことについ て、ゲストティーチャーから聞いた ことをふまえて、より具体的な部分 について気づくことができるように なっていた。 話す力⇒自分の発言に根拠を持つこ とができるようになった。 聞く力⇒友だちの意見を自分の意見 と比べながら聞くようになった。 書く力⇒効果的に伝えられるよう に、書く事柄を整理し、新聞の構成 を考えるようになった。 伝え合うこと⇒充実した調べ学習を もとに子どもたち一人一人が伝えた い内容をもることができた。 書くこと⇒論文を書くための材料を 十分に蓄え、意欲的に書くことがで きるようになった。 担任とし ての変容 ①ゲストティーチャーの必要性を感 じた。 ・粟ヶ池に関する資料が少ない。 ・資料から聞けないことを聞くこと ができる。 ②子どもの実態を把握することの必 要性を感じた。 ・ゲストティーチャーとの打ち合わ せの中で子どもの思いをしっかりと 伝えなければならない。 ①学習に見通しをもつことができる ようになった。 ・目指す到達点を設定し、カリキュ ラムをつくることで、より正確な進 捗状況が把握できる。 ②子どもの実態把握の重要性 ・調べた内容の確認。子どもとのや りとりを繰り返すことで、つけたい 力を把握できる。 ③外部機関とのつながりの必要性 ・専門家・実体験された方の話か ら、資料やインターネットからは得 られない情報の入手ができた。より 被災者の気持ちを感じられた。 ①先を見通しカリキュラムを構成す る力が身についた。 ・20 時間を超えるカリキュラム作 成をし、児童の実態に合わせて随時 修正をすることができた。 ②外部講師と協同的に実践を進めて いくという新たな視点を得ることが できた。 ・自分が思う活動、児童に身に付け たい力を伝え、どんな体験活動が可 能かを相談した。 (78)

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実践 C においては、「①先を見通して、カリキュラムを構成する力が身についた。」「②外部講 師と協同的に実践を進めていくという新たな視点を得ることができた。」の 2 点を担任としての 変容に挙げている。「先を見通す」という点では、実践 B と共通しており、総合的な学習の時間 の単元構成が他教科・領域と違って、十数時間などの長時間であることから、それぞれの活動が 最終的にどのような活動につながっているのか、といった視点で学習展開をすることの必要性に ついて捉えられていると推察される。また、「外部講師と協同的に実践を進めていく」というこ とについては、実践 A・実践 B と共通しており、やはり活動の中で専門家の知識を得る場が必 要だということについて、どの教員も実感していることがわかる。

4 考察−実践的指導力

1.カリキュラムづくり 以前の小学校学習指導要領解説・総合的な学習の展開に示されていた、総合的な学習の時間に おいて育てたい資質や能力及び態度の視点である「学習方法に関すること」「自分自身に関する こと」「他者や社会とのかかわりに関すること」の視点(17)を踏まえて、児童の課題や実態を把握 しようとした。どの実践においても、上記の 3 つについて目標が設定されており、活動後の担 任の気づきにおいても、これらの視点が反映されていると考えられる。 2.授業構成 どの実践においても探究的な学習の過程を設定して、学習展開が進められていた。また、どの 教員も外部協力者との連携の重要性について指摘していた。 3.評価と指導 同じくどの教員も児童の実態や重視したい学習の内容について言及していた。 これらをふまえて、若手教員が総合的な学習の時間の学習を通じて行ったカリキュラム開発モ デルについて図 1 に示す。 まず取り組みを行うまではどの教員も総合的な学習の時間について、「各学校で作成された既 存のプログラムにそって学習展開をすればよい」「総合的な学習の時間では体験学習をすればよ い」「学習の中で調べ学習を行い、発表すればよい」のようなイメージを抱いていた。しかし、 今回総合的な学習の時間のカリキュラムを開発していくにあたり、どの教員も「探究的な学習」 の過程を視点として見通しを持つことからスタートをした。この見通しには、熟練教員とのチー ム会議により長時間の枠での学習内容を考えることができたと考えられる。またそれらの中で、 専門的知識が必要だと考え、外部協力者として専門家との連携を行ったが、その際に、当該カリ キュラム内容と児童の実態について担任が十分に把握し、それについて外部協力者にしっかり伝 えることの必要性が生じた。これにより、児童の実態やカリキュラム内容についての担任の理解 ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (79)

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がさらに促進されるようになった。またこのことにより、毎時間の探究的な活動が促進され、こ れがさらに児童実態把握の深まりへとつながっていくという、「正のスパイラル」を促進すると いう状況になったと推察される。 さらにこれらの流れは、「カリキュラム作り」「学習展開の工夫」「児童の実態把握」「他教科・ 領域との連携」等、様々な視点においての教員としての資質・能力の向上へのきっかけとなるも のと期待されるものである。また、「児童理解」「集団作り」「長期的な見通し」「チームでの対 応」など学級経営や日々の教育の在り方そのものにも、若手教員における意義のある「気づき」 とすることができるものであると考える。 勝見(2015)が指摘しているように(18)、若手教員は熟達教員とポートフォリオを介在しなが ら自覚的に「鑑識眼」を洗練させていくことが必要であるが、本研究で取り上げた 3 つの実践 はいずれも熟達教員とのチーム会議を通じて、総合的な学習の時間における学習展開を進める中 で「鑑識眼」を洗練させ、子どもたちの実態を捉えながら(評価しながら)指導を修正していっ たと考えられる。また、高詰・瀬戸(2014)は、実践的指導力の要件を、次のように指摘して いる(19) ① まず実際の授業における課題を認識する必要がある。 ② 授業の成功体験が必要である。 ③ 『教材研究』中に具体的な子どもの名前と課題に対応する反応が多様化すること」などが 必要である。 以上のように、若手教員のふりかえりより、実践的指導力の 3 つの要素が高まっていること から、チーム会議の有用性を明らかにすることができた。 今後は、本研究の成果を踏まえて若手教員が教員生活を進める中で、どのような過程で教員と 図1 3 人の実践者が共通して考えたカリキュラム開発モデル (80)

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しての視点、すなわち「鑑識眼」を洗練させていくのかについてさらなる詳細な研究を進めてい きたいと考える。 引用文献 ⑴ 文部科学省 2015 これからの学校を担う教員の資質能力の向上について(中間まとめ) 中央教育 審議会・初等中等教育分科会(第 99 回)配布資料 ⑵ 文部科学省 2018 平成 28 年度学校教員統計調査(確定値)の公表について ⑶ 文部科学省 2008 小学校学習指導要領 ⑷ 文部科学省 2008 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善に ついて (答申) 中央教育審議会 ⑸ 文部科学省 2018 小学校学習指導要領 ⑹ 文部科学省 2018 小学校学習指導要領解説・総合的な学習の時間編 ⑺ 文部科学省 2016 総合的な学習の時間について 教育課程部会 生活・総合的な学習の時間ワーキ ンググループ 資料 7 ⑻ 文部科学省 2015 教育課程企画特別部会における論点整理について(報告) ⑼ 文部科学省 2018 小学校学習指導要領 ⑽ 秋田喜代美・佐藤学・岩川直樹 1991 教師の授業に関する実践的知識の成長−熟練教師と初任教師 の比較検討− 発達心理学研究、2(2)、88-98 ⑾ 高詰淳一・瀬戸健 2014 若手教員の実践的指導力の向上に関する教授学的研究−「教材研究」を基 盤とした「待ち受け」の視点から− 上越教育大学教職大学院研究紀要、1、65-74 ⑿ 勝見健史 2015 小学校若手教員の自覚的成長を促す授業研究の方法 兵庫教育大学研究紀要、47、 119-130

⒀ Eisner, E. W. 1976 Educational Connoisseurship and Criticism : Their Form and Functions in Educational Evaluatien. Journal of Aesthetic Education, 10, 135-150

⒁ 文部科学省 2018 小学校学習指導要領 ⒂ 文部科学省 2008 小学校学習指導要領解説・総合的な学習の時間編 ⒃ 文部科学省 2018 小学校学習指導要領 ⒄ 文部科学省 2008 小学校学習指導要領解説・総合的な学習の時間編 ⒅ 勝見健史 2015 小学校若手教員の自覚的成長を促す授業研究の方法 兵庫教育大学研究紀要、47、 119-130 ⒆ 高詰淳一・瀬戸健 2014 若手教員の実践的指導力の向上に関する教授学的研究−「教材研究」を基 盤とした「待ち受け」の視点から− 上越教育大学教職大学院研究紀要、1、65-74 ベテラン教員の支援に基づく総合的な学習の時間における若手教員による授業づくりの一考察 (81)

参照

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