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アーユルヴェーダ医療薬・アサナ(Pterocarpus marsupium)心材のアンチエイジング素材としての機能性に関する研究

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アーユルヴェーダ医療薬・

アサナ(

Pterocarpus marsupium)心材の

アンチエイジング素材としての機能性に関する研究

令和

2 年 3 月

出 口 貴 浩

(2)

目 次

緒論 ・・・・・ 1 第1 章 アサナ心材の血液流動性低下抑制作用 第1 節 アサナ心材の播種性血管内凝固症候群モデルラットにおける 血液流動性低下抑制作用およびその作用機序の解明 ・・・・・ 4 第2 節 アサナ心材の血小板凝集抑制作用の有効成分の探索 ・・・・・13 第3 節 血小板凝集抑制作用の作用機序解明 ・・・・・18 第2 章 アサナ心材の皮膚老化抑制作用 第1 節 アサナ心材の tyrosinase 阻害作用とその有効成分の探索 ・・・・・24 第2 節 アサナ心材および oxyresveratrol の melanin 生成抑制作用 および抗酸化作用 ・・・・・32 第3 節 アサナ心材のラジカル捕捉作用の有効成分の探索 およびその各種抗酸化作用 ・・・・・42 第3 章 アサナ心材の高尿酸血症に対する有効性 ・・・・・51 総括 ・・・・・60 引用文献 ・・・・・65 略語一覧表 ・・・・・71 謝辞 ・・・・・73

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緒 論

我が国では高齢化が急速に進行している.このため病気および介護に掛かる社会的 負担を軽減するために,第2 次健康日本 21 の政策(2012 年)において厚生労働省よ り健康増進が掲げられた.その中で,「日常生活に制限のない期間の平均」を健康寿命 の主指標として制定し,その期間延伸が推進されている.また,健康の定義は「健康 とは単に病気でない,虚弱でないというのみならず,身体的,精神的そして社会的に 完全に良好な状態を指す」と1946 年に世界保健機関(World Health Organization, WHO)が提唱し,完全な健康状態の指標を“HALE”(health-adjusted life expectancy) として健康増進が推進されている 1).このように健康寿命の延伸は,国内のみならず 国際的な課題である.「健康的に年齢を重ねる」ためのアンチエイジングおよび抗加齢 という概念が注目されている. 老化とは加齢現象に伴う身体の構造や機能の衰えとされ,老化を背景に様々な疾病 が増加する.これに対抗するため,老化の速度を少しでもゆるやかにすることで,疾 病の罹患を減らそうとする試みがアンチエイジングである 2).しかしながら,多数の 細胞が複雑に作用しあった生体の老化メカニズムは,解明されていない部分が多い. そこで,著者は多面的なメカニズムに基づいて,多彩な薬理作用を示す伝統薬から, アンチエイジングに有用な素材を探索することに着目した. 世界各地の伝統医学の中でもインド伝統医学のアーユルヴェーダは「生命の医学」 や「寿命の医学」とも言われ,「高いQOL(quolity of life)を維持しながら健康寿命 を延ばす知識」をまとめた伝統医学である 3, 4).まさに,アンチエイジングを実現す る伝統医学である.アーユルヴェーダの医学書には,「アサナ」と呼ばれる植物の心材 が若返りや糖尿病の治療を目的に薬として利用されることが記されている5).そこで, 著者はアサナに着目し,アンチエイジング素材としての機能性を探索することとした. アサナはデカン半島高原地帯全域に見られるマメ科(Fabaceae)植物 Pterocarpus marsupium Roxb. を基原とし,その心材から作られたタンブラーに一晩張った水が “prameha”と呼ばれる, 糖尿病を含む多尿症の治療に用いられる.すでに,糖尿病 に対するアサナの有効性については報告があり,アサナのethanol(EtOH)エキスか ら得たethyl acetate(AcOEt)可溶性画分は,alloxan 誘発糖尿病モデルラットの血

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中insulin 増加作用に基づいて,血糖降下作用を有すると報告されている6). 他の報告 においては,アサナのstreptozotocin 誘発糖尿病モデルラットにおける血糖降下作用 の有効成分の一部がmarsupin および pterostilbene として報告されている7).このよ うにアサナの糖尿病に対する効果はすでに現代科学的手法によって証明されているた め,著者は糖尿病がその一因となる血液流動性の低下に着目した.血液流動性の低下 は血栓の形成が主要因である.血栓は心血管疾患や脳梗塞などの致命的な疾患の危険 要因として認識されている.そこで,アサナの抗血栓作用を汎用病態モデルである lipopolysaccharide(LPS)誘発播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome,DIC)モデルラットを用いたin vivo 試験にて評価した8, 9)

抗血栓作用のin vitro 試験では collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用,線溶系活性 化作用および抗thrombin 作用試験を実施した. さらに,糖尿病など慢性腎疾患における高尿酸血症の併発は,血管内皮障害,insulin 抵抗性や血圧上昇などの要因とは無関係に心血管障害を引き起こす危険性が報告され ている10)高尿酸血症の病態は, 血中尿酸値の上昇を呈する.尿酸は xanthine oxidase (XOD)による酸化によって,hypoxanthine や xanthine を介して生成する 11).そ こで,著者はアサナの高尿酸血症に対する有効性について XOD 阻害作用を指標に評 価した. 一方,アサナはアーユルヴェーダ医学においては難治な皮膚病にも用いられること が記載されている 5).しかしながら,皮膚への適応は現代科学的手法を用いて検証さ れた報告がほとんどない.老化に伴う皮膚の形態変化のひとつはmelanin の生成と色 素沈着による「しみ・そばかす」の形成であり,melanin 合成酵素 tyrosinase によっ て制御されている.よって,著者は「しみ・そばかす」の原因となるmelanin の生成 を抑える効果を期待して,tyrosinase 阻害作用を検証することとした.また,melanin の生合成において自動酸化は主要因のひとつである.さらに,終末糖化産物(advanced glycation endproducts,AGEs)は活性酸素種の生成に寄与することで自動酸化を促 すことが知られている.AGEs は活性酸素種の生成だけでなく,AGEs 受容体(RAGE) に 結 合 す る こ と で melanin の 生 合 成 を 促 進 す る 12). こ れ ら の こ と か ら ,

(5)

第1 章第 1 節では,アサナの抗血栓作用を評価する目的で,アサナ心材の 50% EtOH エキス(PM-ext)を LPS 誘発 DIC モデルラットに経口投与し,micro channel array flow analyzer(MC-FAN)を用いて血液の全血通過時間を測定した.さらに,作用機 序解明のために,in vitro試験にてPM-ext の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作 用,線溶系活性化作用および抗thrombin 作用を検証した.第 2 節では collagen 誘発 ウサギ血小板凝集抑制作用を指標に有効成分の探索を実施した.血小板凝集はカス ケ ー ド 反 応 で あ る こ と か ら , 第 3 節では,その下流の因子である adenosine 5’-diphosphate(ADP)および arachidonic acid(AA)を凝集剤として,ウサギ血小 板凝集抑制作用を評価し,cyclooxygenase(COX)阻害作用についてもまた評価した. 第2 章第 1 節では,PM-ext の tyrosinase 阻害作用を検証し,その作用を指標に有 効成分の探索を実施した.PM-ext の tyrosinase 阻害作用が確認され,その有効成分 の一部が同定されたことから,第2 節では,PM-ext およびその tyrosinase 阻害作用 成分について,B16 メラノーマ細胞におけるmelanin産生抑制作用を検証した.また, PM-ext およびその tyrosinase 阻害作用成分の抗酸化作用については,DPPH ラジカ ル捕捉作用およびAGEs 生成抑制作用を指標に評価した. Tyrosinase 阻害作用成分の DPPH ラジカル捕捉作用は,PM-ext の DPPH ラジカ ル捕捉作用を説明するのに不十分であるため,第3 節では DPPH ラジカル捕捉作用を 指標にさらなる有効成分の探索を実施した.さらに,superoxide dismutase(SOD) は酸化ストレスに対する防御因子で,活性酸素種を除去する生体内因子として知られ ている13).よって,同定されたDPPH ラジカル捕捉作用成分は AGEs 生成抑制作用 およびSOD 様作用についても検証した. 第3 章では,PM-ext の XOD 阻害作用を検証し,その作用を指標に有効成分の探索 を実施した. 以下,本研究の内容を詳述する.

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1 章 アサナ心材の血液流動性低下抑制作用

1 節 アサナ心材の播種性血管内凝固症候群モデルラットにおける

血液流動性低下抑制作用およびその作用機序の解明

I.緒 言

アサナ(P. marsupium )はマメ科(Fabaceae)の植物でデカン半島高原部に自生 する植物である.アーユルヴェーダでは,その心材で作ったタンブラーに一晩張った 水の飲用が,糖尿病様症状に効果があるとされている.糖尿病に伴う高血糖状態は血 管の細胞や組織の糖化によって,血管内皮障害を引き起こし,血液循環系において血 栓傾向や血流の停滞につながる.このように,糖尿病は血液の流動性に密接に関連し ている.アサナの糖尿病に対する効果はすでに現代科学的手法によって証明されてい る 6, 7).よって,抗糖尿病作用をもち,血流を改善する素材はアンチエイジング素材 として有望であると考え,アサナの血液流動性低下抑制作用を検討することとした. LPS はヒト腸内常在細菌内毒素で健常時でも少量産生されているが,肝クッパー細 胞で完全に捕捉処理されている.しかしながら,慢性炎症性疾患,ガンなどに罹患し ている時には免疫系機能が低下しており,処理しきれなかったLPS によって血液凝固 機能の亢進,線溶系機能の低下および赤血球変形能の低下によって血行動態が悪化し, DIC が誘発されるといわれている9).その結果,血液凝固カスケードが活性化され,

血小板およびfibrinogen が消費されて fibrinogen から fibrin へと変換され,血液流動 性は低下する.その後,fibrin は線溶系によって分解され,fibrin 分解産物(fibrin deradation product,FDP)が増加する.

以上のことから,アサナ心材の血流に対する有効性は,抗血栓作用の汎用病態モデ ルである LPS 誘発 DIC 病態モデルラットにおけるアサナ心材エキスの影響を MC-FAN を用いて評価した8, 9).さらに,血流に対する有効性の作用機序をスクリー

ニングするため,PM-ext の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用,fibrin 平板法 による線溶系活性化作用および抗thrombin 作用を検証した14, 15)

(7)

II.実験方法

1.実験材料および被検体の調製 アサナ心材は,2014 年 4 月にインドのケララ州にて採取されたアサナの心材乾燥粉 末を,稲畑香料より提供を受けた.アサナ心材乾燥粉末 400 g を 50% EtOH 4 L で熱 時還流下2 hr 抽出した.抽出液をろ過後,ろ液について減圧下で EtOH を溜去し, 凍結乾燥して,褐色粉末(心材乾燥粉末からの収率:11.6%,PM-ext)を得た. 2.試薬

Lipopolysaccharide(from Escherichia coli 055:B5,LPS),heparin,arachidonic acid および fibrinogen(from bovine plasma,Type I-S)はシグマアルドリッチジャ パンから購入した.Collagen(from house cord)はエム・シー・メディカルから購入 した.別途記載した以外の試薬は,富士フイルム和光純薬またはナカライテスクから 購入した試薬特級品あるいは試薬一級品を用いた. 3.実験動物 実験動物として 7 週令の雄性 Wistar 系ラットおよび 13 週令の雄性 JW/CSK 系ウ サギを日本 SLC より購入した.飼育環境は恒湿(約 60%),恒温(約 23ºC),12 hr 明/12 hr 暗サイクルの実験動物飼育室で,市販の固形飼料(ラット:ラボ MR ストッ ク,日本農産工業,ウサギ:RC-4,オリエンタル酵母)と水道水を自由に摂取させた. 購入後実験に供するまで1 週間予備飼育し,健常な動物で実験を実施した.なお,本 論文に含まれるすべての動物実験は,「近畿大学動物実験規程」に準拠して実施した(実 施計画書番号:KAPS-20-015 および KAPS-20-016). 4.LPS 誘発 DIC 病態モデルラットにおける血液流動性試験 LPS 誘発 DIC モデルラットにおける血液流動性試験は Schoendorf らの方法に準じ て実施した 8).被検体群は PM-ext をそれぞれ 50,200 および 500 mg/kg の用量で

0.2% w/v carboxymethylcellulose sodium salt 水溶液(CMC)に懸濁した液を被検液 とした.Control 群および Vehicle control 群は CMC を被検液とした.1 週間予備飼

(8)

育したWistar 系雄性ラット(8 週令,各群 7 匹)に所定の濃度に調製した被検液をラッ ト体重100 g あたり 0.2 mL の用量で 1 日 1 回 7 日間の連日経口投与を施した(Day 1-7).Heparin 群は陽性対照群として 500 U/kg heparin(生理食塩水に溶解)を Day 7 の LPS 投与の 1 hr 前に静脈内投与(i.v.)した.Day 7 の被検液投与から 1 hr 後に LPS(1 mg/kg,生理食塩水に溶解,i.v.)を軽度なpentobarbital 麻酔下(18 mg/kg, 生理食塩水に溶解して腹腔内投与,i.p.),Vehicle control 群,被検体群および Heparin 投与群のラットに投与した.LPS の投与から 4 hr 後に pentobarbital 麻酔下(35 mg/kg,

i.p.),腹部大静脈から採血した.

採取した血液の一部は血液中の血小板数,血漿中のfibrinogen 量および FDP 量の 測定を大阪血清に依頼した.

Control 群,Vehicle control 群,被検体群および Heparin 群のラットから採取した それぞれの血液 1.8 mL と 3.8% w/v sodium citrate 溶液 0.2 mL を混合した溶液 50 µL をマイクロチャネルアレイ Bloody 6-5(幅 4.5 µm,長さ 30 µm,深さ 4.5 µm, 8736 本並列)を装填した MC-FAN(日立原町電子工業)に付し,20 cm 水柱圧下で 全血 50 µL の通過時間を測定した.全血通過時間の測定値はマイクロチャネルアレイ の偏りを避けるために直前に測定した生理食塩水 100 µL の通過時間を標準通過時 間として,以下の式により生理食塩水の通過時間が14 sec の場合に換算して示した. [全血通過時間 sec]

= [血液通過時間の測定値 sec] × 14 sec / [生理食塩水通過時間 sec]

5.Collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用試験

血小板凝集抑制作用試験に用いる血液は雄性JW/ CSK 系ウサギ(14 週令)の心臓 から採取し,血液 9 mL および 3.8% w/v sodium citrate 水溶液 1 mL をプラスティッ クチューブにて混合した.この混合液を170 × g,10 min,25ºC の条件で遠心分離し, 上層の多血小板血漿(platelet rich plasma,PRP)を得た.PRP は別のプラスティッ クチューブに移して,キャップをして室温にて静置した.さらに下層を1,520 × g,15 min,25ºC の条件で遠心分離し,その上層の乏血小板血漿(platelet poor plasma, PPP)を得た.PRP は血小板数が 2.5-3.5 × 105 /µL となるように,PPP で希釈し,

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度0%の標準液に設定した.

ウサギ血小板凝集抑制作用試験は Born らの方法に準じた 14).被検体は dimethyl

sulfoxide (DMSO)で溶解し,DMSO の最終濃度が 0.5% v/v となるように 50 mM Tris-HCl 緩衝液(50 mM tris (hydroxymethyl) aminomethane,37.6 mM sodium chloride 水溶液,1 M hydrochloride を用いて pH 7.4 に調製)で所定の濃度に希釈し た溶液を被検液とした.Control 群には 0.5% v/v DMSO/Tris-HCl 緩衝液を用い,陽 性対照薬にはindomethacin を用いた. PRP 200 µL をキュベットに添加し,アグリゴメータ―(PRP 313M, エム・シー・ メディカル)にて1,000 rpm,3 min,37ºC で撹拌し,被検液 11 µL をマイクロシリ ンジにて添加後,さらに3 min 撹拌した.次に,凝集剤として 100 µg/mL collagen(製 品に添付の希釈液で調製)溶液 11 µL を添加した.血小板凝集によって生じる PRP 懸濁液の透過度の変化は凝集剤添加後 10 min,アグリゴメータ―を用いて測定した. 血小板凝集率(%)は最大透過率(%)の増加量として評価した.透過率は PRP 懸濁 液を0%として,PPP を 100%として設定した.被検体の血小板凝集率は control 群の 最大透過率(%)に対する被検体の最大透過率(%)の減少率とした. 6.Fibrin 平板法による線溶系活性化作用試験 Fibrin 平板法による線溶系活性化作用試験は Murata らの方法に準じた15).被検体

は DMSO に溶解し,DMSO の最終濃度が 1% v/v となるように 0.01 M sodium dihydrogenphosphate 緩衝液(0.01 M sodium dihydrogenphosphate 水溶液, 0.15 M sodium chloride 水溶液, pH 7.8 に調製)で所定の濃度に希釈した溶液を被検液とした. Control 群には DMSO 最終濃度が 1% v/v となるように調製した 0.01 M sodium dihydrogenphosphate 緩衝液を添加した.陽性対照薬には dextran sulphate sodium salt を用いた.Agarose 1 g を 100 mL の沸騰した蒸留水に溶解し,50ºC の水浴で冷 却した.Fibrinogen 400 mg を 100 mL の 0.02 M sodium dihydrogenphosphate 緩 衝液に37ºC で溶解した.Agarose 溶液 5 mL に fibrinogen 溶液 5 mL を混合し,本 混合液 10 mL をそれぞれ共栓付き試験管に分注した.ただちに,100 U/mL thrombin 溶液(0.01 M sodium dihydrogenphosphate 緩衝液に溶解)0.1 mL を添加し,共栓 付き試験管中で転倒混和後,シャーレ(90 × 15 mm)に注ぎ,撹拌して均一な厚みに

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なるように静置した.30 min の静置後,作製した fibrin 平板はストローを用いて 6 個の穴(直径約6 mm,深さ 7-8 mm)を作製した.

被検液 0.1 mL および最終濃度 2.5 U/mL urokinase 溶液 0.1 mL を混合し,fibrin 平板の穴に20 µL ずつ分注し,37ºC,14 hr インキュベートした.その後,fibrin 平 板穴の周囲に出現した透明な円の直径をmicro meter ruler(ミツトヨ)を用いて測定 し,fibrin 溶解面積(mm2)を算出した.線溶系活性化作用は,被検液のfibrin 溶解

面積を Control 群のそれと比較して増大した割合を線溶系活性化率(%)として算出 した.

7.抗 thrombin 作用試験

抗thrombin 作用試験は Matsuda らの方法に準じた13)被検体はDMSO に溶解し,

DMSO の最終濃度が 5% v/v となるように Tris-acetate 緩衝液(50 mM tris (hydroxymethyl) aminomethane 水溶液,0.15 M sodium chloride 水溶液,acetic acid を用いて pH 7.4 に調製)で所定の濃度に希釈した溶液を被検液とした.陽性対照薬 にはheparin を用いた.Fibrinogen 500 mg は Tris-acetate 緩衝液に溶解した.被検 液 0.1 mL に fibrinogen 溶液 1.8 mL を添加して 1 分後,0.2 U/mL thrombin 溶液 0.1 mL を添加した.この混合液を fibrin 凝固物が表れるまで穏やかに撹拌し,凝固する までの時間を測定した. 8.統計処理 LPS 誘発 DIC 病態モデルラットにおける血液流動性試験の結果は平均値 ± 標準誤 差(S.E.)で表した.Collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用試験の結果は平均値 ± 標準偏差(S.D.)で表した.統計学的な有意差検定には Statcel 3(出版社 OMS)を 使用し,有意水準をp < 0.01 およびp < 0.05 として Bonferroni/Dunn の多重比較検 定を実施した.

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III.実験結果

1.LPS 誘発 DIC モデルラットにおける血液流動性低下抑制作用

PM-ext を 7 日間連日経口投与後,LPS を投与し,その 4 hr 後に腹部大静脈から採 血した血液の一部を用いて,PM-ext の血液流動性への影響を MC-FAN による血液の 全血通過時間を指標に評価した.その結果,Table 1 に示したごとく,LPS を投与し たVehicle control 群のラット血液の全血通過時間は Control 群のラット血液の全血通 過時間と比べて88 倍に延長した.PM-ext の 200 および 500 mg/kg の用量でそれぞ れ 1 日 1 回,連日経口投与した結果,PM-ext は LPS 投与により延長した 1406 sec の全血通過時間をそれぞれの用量で,1092 および 626 sec と用量依存的に短縮させた. 陽性対照薬として用いた heparin は LPS 投与による全血通過時間の延長を顕著に短 縮させた. さらに,MC-FAN による全血通過時間の測定用に採血した上記血液の一部を用いて, 血液中の血小板数,血漿中のfibrinogen 量および FDP 量について検査した結果,Table 1 に示したごとく,PM-ext の 200 および 500 mg/kg の用量で 31 × 104 /µL からそれ ぞれ40 および 60 × 104 /µL へ LPS による血小板数の減少を用量依存的に抑制した一 方で,LPS および PM-ext の投与は白血球数および赤血球数に有意な影響を与えな かった.

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Table 1 Effects of PM-ext on Blood Passage Time, Platelets, Fibrinogen, FDP, White Blood Cells and Red Blood Cells in DIC Model Rats.

Treatment Dose blood passage Fifty µL time (sec.) Platelets (× 104 /µL) Fibrinogen (mg/dL) (µg/mL) FDP White blood cells (× 103 /µL) Red blood cells (× 104 /µL) Control (p.o.) - 16 ± 1.1 70 ± 1.9 207 ± 3.5 0.40 ± 0.049 2.3 ± 0.11 790 ± 8.1 Vehicle control - 1406 ± 72## 31 ± 2.6## 99 ± 1.9## 2.27 ± 0.099## 1.9 ± 0.13 810 ± 13.5 PM-ext 50 mg/kg 1378 ± 60 32 ± 1.8 104 ± 5.8 2.31 ± 0.070 2.4 ± 0.15 813 ± 13.5 200 1092 ± 51** 40 ± 2.0* 94 ± 1.9 2.36 ± 0.092 1.9 ± 0.065 809 ± 16.6 500 626 ± 41** 60 ± 2.0** 92 ± 2.0 2.12 ± 0.054 2.2 ± 0.14 820 ± 15.8 Control (i.v.) - 14 ± 0.38 75 ± 1.0 206 ± 7.4 0.39 ± 0.080 2.0 ± 0.17 798 ± 7.9 Vehicle control - 1797 ± 37## 28 ± 0.63## 92 ± 2.2## 1.51 ± 0.096## 2.1 ± 0.16 798 ± 10.6 Heparin 500 U/kg 26 ± 0.41** 46 ± 0.95** 188 ± 7.0** 0.37 ± 0.057** 2.0 ± 0.28 814 ± 4.1

Male Std-Wistar/ST rats (7 weeks of age) were used for experiment. Significantly different from the vehicle control group, *: p < 0.05, **: p < 0.01 and from the control group, ##: p < 0.01 (n = 6-7). FDP: fibrin deradation product, DIC: disseminated intravascular coagulation syndrome, p.o.: oral administration, i.v.: intravenous administration.

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2.Collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用

PM-ext の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を検証した結果,Table 2 に示し たごとく,200 および 500 µg/mL でそれぞれ 5.6 および 22%の阻害作用を示した.こ れは PM-ext の血流改善作用の作用機序の一部が,血小板凝集抑制作用であることを 示唆している.

Table 2 Inhibitory Effects of PM-ext on Collagen-induced Platelet Aggregation. Samples Concentration (µg/mL or µM) aggregation (%) Platelet Inhibition (%)

Control - 60 ± 3.1 -

PM-ext 50 µg/mL 60 ± 2.0 -0.56

200 56 ± 2.1 5.6 500 47 ± 2.0** 21

Indomethacin 5.0 µM 16 ± 2.5** 73

Male Std-JW/CSK rabbits (14 weeks of age) were used for experiment. Platelet aggregation was induced by 5 µg/mL collagen. Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01.

3.Fibrin 平板法による線溶系活性化作用および抗 thrombin 作用

PM-ext の fibrin 平板法による線溶系活性化作用および抗 thrombin 作用を検証した 結果,200 および 500 µg/mL の濃度ではいずれの作用も認められなかった(データは 省略).

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IV.考察および小括

本節では,アサナの心材がアンチエイジング素材として有用な素材であることに期 待して,血液流動性の低下抑制作用を示すことを見出すために,PM-ext のin vivo LPS 誘発DIC モデルラットにおける血液流動性低下抑制作用,in vitro collagen 誘発ウサ ギ血小板凝集抑制作用,fibrin 平板法による線溶系活性化作用および抗 thrombin 作 用を検証した.In vivo 試験のDIC モデルラットの誘発剤として用いた LPS はグラ ム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であり,ヒトや動物の血管内皮細胞に作用すると血管 内皮細胞が損傷を受けて出血を起こす.出血により血液凝固系が活性化され血小板と fibrinogen が消費される.Fibrinogen と thrombin によって fibrin が形成され,微小 血栓が多発し,その結果,止血を行うために血液中の血小板およびfibrinogen が減少 する.血管内に形成された多量のfibrin 塊は plasmin によって溶解され fibrin の分解 産物であるFDP が増加する. 血液流動性の評価はその方法のひとつとして,MC-FAN における全血通過時間を測 定することにより評価した.MC-FAN は毛細血管とほぼ同一の断面積を有する微小流 路を通過する血液の流動性を視覚的かつ定量的にとらえることのできる細胞マイクロ レオロジー測定装置である 16).MC-FAN を用いて測定した血液の流動性には赤血球 の変形能,白血球の粘着能および血小板の凝集能が影響するとされている16, 17) LPS 誘発 DIC モデルラットに PM-ext を 7 日間連日経口投与したところ,全血通 過時間の延長は短縮された.さらに,血小板数の減少が抑制されたことから,血小板 の消費を抑制した可能性が考えられる.これらのLPS 誘発 DIC モデルラットにおけ るPM-ext の経口投与の影響を明らかにしたのは本研究が初めてである.

一方で,PM-ext の血液流動性の低下抑制作用を,in vitro collagen 誘発ウサギ血小 板凝集抑制,fibrin 平板法による線溶系活性化および抗トロンビン作用を指標に評価 した結果,試験した濃度においてcollagen誘発血小板凝集抑制作用のみが認められた. 血小板凝集の過剰亢進は血小板を血管壁に付着させ,血栓症に関与する最も重要な因 子のひとつであることが報告されている 18).よって,PM-ext の LPS 誘発 DIC モデ

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2 節 アサナ心材の血小板凝集抑制作用の有効成分の探索

I.緒 言

本章第 1 節において,PM-ext に LPS 誘発 DIC 病態モデルラットにおける血液流 動性低下抑制作用を確認し,ウサギ血小板を用いたcollagen 誘発血小板凝集抑制作用 を確認した.そこで本章では,collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を指標に PM-ext の有効成分を探索した.

II.実験方法

1.実験材料および被検体の調製 本章第1 節にて記した PM-ext を被検体に用いた. 2.試薬 本章第 1 節に記したものを用いた.標準品として用いた pterostilbene は東京化成 工業より購入した. 3.ウサギ血小板凝集抑制作用試験 本章第1 節に記した方法で実施した. 4.統計処理 試験結果は平均値 ± 標準偏差(S.D.)で表した.統計学的な有意差検定には Statcel 3 を使用し,有意水準をp < 0.01 およびp < 0.05 として Bonferroni/Dunn の多重比較 検定を実施した.

(16)

5.PM-ext の分画,精製および有効成分の同定 5-1) PM-ext の分画および精製

PM-ext の分画および精製は Figure 1 に示したごとく実施した.すなわち,PM-ext 8 g を蒸留水 48 mL に懸濁し,AcOEt 24 mL にて抽出する操作を 2 回実施した.次 に,n -butanol(BuOH)24 mL にて抽出する操作を 2 回実施した.それぞれのろ液 を合わせて,溶媒を溜去し,凍結乾燥したところ,AcOEt 可溶画分(AcOEt fr.-1), BuOH 可溶画分(BuOH fr.-1)および水可溶画分(H2O fr.-1)をそれぞれ 3.0 g,1.7

g および 3.3 g 得た.AcOEt fr.-1 2.95 g をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(280 g,2.3 i.d. × 40 cm, No.1.07734 silica gel 60,Merck)に付し,次に示す展開溶媒に て薄層クロマトグラフィー(TLC,No. 1.05735 silica gel 60 F254,Merck)でモニ ターしながら,溶液A:n -hexane(Hex)および溶液 B:AcOEt の混液(A:B=5:1, 3:1,1:1 および 1:3)および methanol(MeOH)で溶出した:TLC 展開溶媒:Hex/AcOEt (1:1 v/v),紫外可視吸光(UV)および 10% H2SO4にて検出. それぞれの溶出液はTLC の分析結果に基づき,Fr. A1,B1,C1,D1 および E1 の 5 つの画分に分画した. 5-2) Pterostilbene の同定 Fr. B1 は次に示す条件において高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析 を行い,標準品との比較から,pterostilbene(1)であると同定した:HPLC 条件; カラム,TSKgel ODS-120T(5 µm,4.6 i.d. × 250 mm,東ソー);カラム温度,40ºC; 移動相,超純水を溶液A および acetonitrile(MeCN)を溶液 B としてグラジエント システムを利用した混液(A:B = 0 min,10:0;30 min,0:10);流速,1.0 mL/min; 検出,280 nm における UV;注入量,30 µL(Figure 2).

(17)

Figure 1 Fractionation Procedure of PM-ext for Identification of Pterostilbene (1).

PM-ext: 50% Ethanolic extract obtained from P. marsupium heartwood., EtOH: ethanol, H2O: water, AcOEt: ethyl acetate, BuOH: n -butanol, Hex: n -hexane, HPLC:

high-performance liquid chromatography, a): Yield ratio from pulverized P. marsupium

heartwood., b): Anti-platelet activity at 500 µg/mL., c): Yield ratio from PM-ext., d): Anti-platelet activity at 200 µg/mL., e): Yield ratio from AcOEt fr.-1., f ): Anti-platelet activity at 50 µg/mL.

(18)

Figure 2 HPLC Chromatograms Obtained from Fr. B1 (upper) as Described in Figure 1 and Pterostilbene (lower).

HPLC conditions: Column, TSKgel ODS-120T (5 µm, 4.6 i.d. × 250 mm, Tosoh); Column temperature, 40ºC; Mobile phase, gradient system with solution A as distilled water and solution B as MeCN (A:B = 0 min, 10:0; 30 min, 0:10); Flow rate, 1.0 mL/min; Detection wave length, UV 280 nm; Injection volume, 30 µL.

(19)

III.実験結果

1.活性を指標とした PM-ext の分画,精製および有効成分の同定

Collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を指標に PM-ext の分画および精製を実施 した.初めに,PM-ext は溶液分配により,AcOEt fr.-1,BuOH fr.-1 および H2O fr.-1

に分画した.これらの画分について,200 µg/mL で血小板凝集抑制作用を検証した結 果,AcOEt fr.-1 および BuOH fr.-1 にそれぞれ 53 および 20%の抑制作用が認められ, AcOEt fr.-1 が最も高い作用を示した.次に,AcOEt fr.-1 はシリカゲルカラムクロマ トグラフィーを用いて,Fr. A1,B1,C1,D1 および E1 の 5 つの画分に分画した. これらの画分について,50 µg/mL で血小板凝集抑制作用を検証した結果,Fr. B1 に 54%と最も高い作用が認められた.Fr. B1 を HPLC により分析した結果,ほとんど単 一の主要ピークが認められ,その保持時間が標準品の pterostilbene と一致したこと から,AcOEt fr.-1 から pterostilbene を単離同定したことを確認した.よって,PM-ext の血小板凝集抑制作用の有効成分のひとつは pterostilbene であることを明らかにし た.

IV.考察および小括

本第2 節では,第 1 節において PM-ext の血液流動性低下抑制作用が血小板凝集抑 制作用に基づくことを確認したことから,collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を 指標に有効成分を探索した.その結果,PM-ext の溶液分配によって得た AcOEt fr.-1 から各種クロマトグラフィーによって1 を単離同定した. よって,本章次節では1 の血小板凝集抑制作用について,さらなる作用機序の解明 を検証することとした.また,その比較対象としてすでにアンチエイジング素材とし て知られるresveratrol(2)を用いた.

(20)

3 節 血小板凝集抑制作用の作用機序解明

I.緒 言

本章第2 節において,PM-ext の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用の有効成 分として stilbenoid の 1 を同定した.Stilbenoid のアンチエイジング素材としては resveratrol(2)が知られ,2 は 1 のメトキシ基が水酸基に置換された化学構造である. 化合物2 の血小板凝集抑制作用はすでに報告されている19).このことから,1 のアン チエイジング素材としての有用性を確認するために,1 および 2 の血小板凝集抑制作 用を比較検証することとした. Collagen により誘発された血小板の凝集機序はカスケード反応であり,その下流の 因子として知られるADP および AA は血小板内に存在する顆粒の一部である20) AA による血小板凝集反応においてはCOX が律速酵素となることが知られている. COX には 3 つの isoform が存在し,COX-1 および COX-2 は主要な isoform である

21).特に,COX-1 は血小板凝集に関与する多くの細胞で発現している22, 23) よって本節では,1 の有用性を確認するために 2 を比較対象として用いるとともに, 1 の血小板凝集抑制作用の作用機序解明のため,collagen,ADP および AA を誘発剤 としてウサギ血小板凝集抑制作用を比較検証した.さらに,AA 誘発血小板凝集抑制 作用の作用機序の一つとして,COX-1 および-2 の阻害作用を PM-ext,1 および 2 に ついて比較検証した.

II.実験方法

1.実験材料および被検体の調製 PM-ext は本章第 1 節にて記したものを用いた.1 および比較対象として用いた 2 は東京化成工業より購入したものを用いた.

(21)

2.試薬

本章第 1 節に記したものを用いた.COX 阻害作用試験に用いた COX Activity Assay Kit は Cayman Chemical より購入した.

3.血小板凝集抑制作用試験

本章第1 節に記した方法で実施した.凝集剤溶液は collagen(100 µg/mL,製品に 添付の希釈液で調製),ADP(100 µM,製品に添付の希釈液で調製)または AA(10 µg/mL,30% DMSO/Tris-HCl 緩衝液で調製)を用いた.Indomethacin は collagen およびAA が凝集剤の場合に陽性対照薬として用いた.一方,adenosine は ADP が凝 集剤の場合に陽性対照薬として用いた.

4.COX 阻害作用試験

COX 阻害作用は,N, N, N, N-tetramethyl-p-phenylenediamine(TMPD)の酸化 反応を,590 nm における比色法によって評価した.被検体は DMSO で所定の濃度に 調整した溶液を被検液とした.陽性対照薬はそれぞれCOX-1 に対して SC-560 を用い, COX-2 に対して DuP-697 を用いた.COX 溶液は Assay buffer(100 mM Tris-HCl 緩 衝液,pH 8.0)を用いて 1:3 の割合で希釈混合した.Assay buffer 150 µL を添加した プレート(96 wells)に,被検液 10 µL,100 µM hemin 溶液 10 µL および COX 溶 液 20 µL を添加し,5 min,25ºC で静置した.その後,TMPD 溶液 20 µL および AA 溶液 20 µL を添加して 2 min,25ºC で反応させた.生成した TMPD 酸化物の量 を590 nm における吸光度(OD)をマイクロプレートリーダー(サンライズレインボー サーモ RC-R,富士フイルム和光純薬)にて測定し,阻害率(%)を下記の式から算 出した. [阻害率 %] = [ (A-B) - (C-D) ] / (A-B) × 100 A:酵素添加,被検液非添加群の 590 nm における OD,B:酵素および被検液非添 加群の590 nm における OD,C:酵素および被検液添加群の 590 nm における OD, D:酵素非添加,被検液添加群の 590 nm における OD. 5.統計処理

(22)

本章第2 節に記した方法で実施した.

III.実験結果

1.化合物 1 および 2 の各種誘発剤における血小板凝集抑制作用 化合物1 および 2 の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を比較検証した結果, 1 は 5.0,20 および 50 µM でそれぞれ 31,56 および 91%の抑制作用を示し,2 は 50 µM で 84%の抑制作用を示した(Table 3).

Table 3 Inhibitory Effects of Pterostilbene (1) and Resveratrol (2) on Collagen-induced Platelet Aggregation.

Samples Concentration (µM) aggregation (%) Platelet Inhibition (%)

Control - 53.3 ± 2.9 - 1 5.0 36.7 ± 4.7* 31 20 23.7 ± 5.5** 56 50 4.7 ± 1.2** 91 2 5.0 51.7 ± 5.1 3.1 20 39.3 ± 6.4 26 50 8.7 ± 2.9** 84 Indomethacin 5.0 14.7 ± 8.1** 73

Male Std-JW/CSK rabbits (14 weeks of age) were used for experiment. Platelet aggregation was induced by 5 µg/mL collagen. Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01.

(23)

次に,1 および 2 の AA 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を検証した結果,1 は 50 µM で57%の抑制作用を示し,2 は同濃度で 67%の抑制作用を示した(Table 4).

しかしながら,1 および 2 の ADP 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を検証した結果, 試験した5.0,20 および 50 µM でいずれも作用を示さなかった(データは省略).

Table 4 Inhibitory Effects of Pterostilbene (1) and Resveratrol (2) on AA- induced Platelet Aggregation.

Samples Concentration (µM) aggregation (%) Platelet Inhibition (%)

Control - 51 ± 1.2 - 1 5.0 39 ± 8.1 22 10 24 ± 8.3 53 20 22 ± 0.58* 57 2 5.0 45 ± 14.2 12 10 28 ± 17.2 45 20 17 ± 13.1** 67 Indomethacin 5.0 36 ± 1.5 30

Male Std-JW/CSK rabbits (14 weeks of age) were used for experiment. Platelet aggregation was induced by 10 µg/mL arachidonic acid. Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, *: p < 0.05, **: p < 0.01. AA: arachidonic acid.

2.PM-ext,1 および 2 の COX 阻害作用 PM-ext の COX-1 阻害作用を検証した結果,50 および 100 µg/mL で 83 および 94% の阻害作用を示し,COX-2 阻害作用を検証した結果,10,50 および 100 µg/mL で 15, 65 および 85%を示した(Table 5 および 6). 化合物1 および 2 の COX-1 阻害作用を検証した結果,20 および 50 µM でそれぞれ 1 は 29 および 59%,2 は 79 および 100%の阻害作用を示した.一方,COX-2 に対す る阻害作用は,1 は 50 µM で 24%,2 は 20 および 50 µM で 42 および 68%の阻害作 用を示した(Table 5 および 6).

(24)

Table 5 Inhibitory Activities of PM-ext, Pterostilbene (1) and Resveratrol (2) against COX-1.

Samples Concentration (µg/mL or µM) OD (× 103) Inhibition (%) Run 1 Control - 176.3 ± 5.1 - PM-ext 10 µg/mL 169.2 ± 7.0 3.9 50 30.7 ± 2.3** 83 100 9.8 ± 1.5** 94 SC-560 50 µM 80.7 ± 4.0** 54 (COX-1 inhibitor) 100 60.2 ± 5.0** 66 Run 2 Control - 225.83 ± 4.0 - 1 5.0 µM 222.00 ± 7.0 1.7 20 159.83 ± 3.8** 29 50 94.17 ± 1.2** 59 2 5.0 224.83 ± 20.5 0.44 20 47.00 ± 4.0** 79 50 0.17 ± 1.2** 100 SC-560 50 127.17 ± 4.0** 44 (COX-1 inhibitor) 100 92.17 ± 8.0** 59

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from control group, **: p < 0.01. OD: Optical density at 590 nm.

Table 6 Inhibitory Activities of PM-ext, Pterostilbene (1) and Resveratrol (2) against COX-2.

Samples Concentration (µg/mL or µM) OD (× 103) Inhibition (%) Run 1 Control - 348 ± 15.6 - PM-ext 10 µg/mL 295 ± 8.0** 15 50 123 ± 4.2** 65 100 53 ± 1.2** 85 DUP-697 50 µM 295 ± 15.6** 15 (COX-2 inhibitor) 100 230 ± 19.5** 34 Run 2 Control - 344 ± 9.3 - 1 5.0 µM 332 ± 33.3 3.4 20 302 ± 18.8 12 50 269 ± 18.1** 24 2 5.0 325 ± 11.0 5.6 20 199 ± 17.9** 42 50 108 ± 20.1** 68 DUP-697 50 290 ± 9.3** 16 (COX-2 inhibitor) 100 227 ± 29.0 34

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from control group, **: p < 0.01. OD: Optical density at 590 nm.

(25)

IV.考察および小括

本第3 節では,第 2 節において PM-ext の collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用 を指標に1 を有効成分のひとつとして同定したことから,collagen および血小板内の 顆粒の一部である ADP および AA を用いて 1 および 2 のウサギ血小板凝集抑制作用 を比較検証した20).Collagen 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用試験の結果,1 および 2 は50 µM で同程度の抑制作用が認められたが,より低い濃度域である 5.0 および 20 µM においては 1 がより高い作用を示した.これは collagen 誘発ウサギ血小板凝集に おいて,2 と比較して 1 の有効性が高いことを示唆している.次に,1 および 2 の AA 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を検証した結果,50 µM で 2 がわずかに高い抑制作用 を示した.しかしながら,1 および 2 の ADP 誘発ウサギ血小板凝集抑制作用を検証し た結果,50 µM の濃度でいずれも作用を示さなかった. AA による血小板凝集反応においては COX が律速酵素であり,prostaglandin の生 成に関与することで重要な要因である21, 23).よって,COX-1 および COX-2 に対する

PM-ext,1 および 2 の阻害作用を検証した.その結果,PM-ext は 100 µg/mL で COX-1 およびCOX-2 のいずれの isoform に対しても阻害作用を示した.さらに,1 の COX 阻害作用を検証した結果,50 µM で COX-1 に対して 59%および COX-2 に対して 24% の阻害作用を示した.一方,2 の COX 阻害作用を検証した結果,50 µM の濃度で COX-1 に対して 100%および COX-2 に対して 68%の阻害作用を示した.これらの結果は 1 のCOX-1 に対する阻害作用の特異性が 2 の COX-1 に対する阻害作用の特異性より高 いことを示唆している. これらの結果から,PM-ext の血液流動性低下抑制作用は 1 の血小板凝集抑制作用 および COX 阻害作用に基づく作用であることを見出し,有効成分である 1 はすでに アンチエイジング素材として利用されている2 よりも高い血小板凝集抑制作用が認め られた.よって,PM-ext は 1 を含む素材であることから,抗糖尿病作用に加えて, 血流を改善するアンチエイジング素材として有望であることを示している.

(26)

2 章 アサナ心材の皮膚老化抑制作用

1 節 アサナ心材の tyrosinase 阻害作用とその有効成分の探索

I.緒 言

最近の抗老化研究では見た目年齢と長寿の関係が着目され,見た目年齢が若い人ほ ど筋力や認知機能などが維持される傾向にあると報告されている24).見た目年齢に大 きく影響するのは外部と直接的に接する組織の代表である皮膚が挙げられる.老化に 伴う皮膚の形態変化のひとつはmelanin の生成と色素沈着による「しみ・そばかす」 の形成であり,melanin 合成酵素 tyrosinase によって制御されている. 一方で,アサナ心材はアーユルヴェーダにおいては難治な皮膚病に用いられること が記載されている5, 25).しかしながら,皮膚への適応の有用性を検証した報告はほと んどない.そこで,本章では PM-ext が皮膚のアンチエイジングに適した素材である ことを期待して,melanin 色素の生成抑制作用および抗酸化作用を指標に美白作用を 評価することとした.

Tyrosinase は melanin の 生 合 成 に お い て , L-tyrosine か ら

3,4-dihydroxyphenyl-L-alanine(DOPA)へ DOPA から dopaquinone への酸化を担

う主要な酵素であり,dopaquinone は酸化的に重合して melanin が生成される.よっ て本節では,PM-ext の美白作用を検証する足掛かりとして tyrosinase 阻害作用の検 討に着手した.

II.実験方法

1.実験材料および被検体の調製 第1 章第 1 節にて記した PM-ext を被検体に用いた.

(27)

2.試薬 Tyrosinase(from mushroom)は,シグマアルドリッチジャパンから購入した.標 準 品 と し て 用 い た oxyresveratrol は 東 京 化 成 工 業 か ら , isoliquiritigenin は EXTRASYNTHESE S.A.から購入した.別途記載した以外の試薬は富士フイルム和光 純薬またはナカライテスクから購入した. 3.Tyrosinase 阻害作用試験 Tyrosinase 阻害作用試験は Matsuda らの方法に準じた26-29).すなわち,被検体は

DMSO に溶解し,DMSO の最終濃度が 5% v/v となるように,0.067 M potassium phosphate 緩 衝 液 ( 18 mM potassium dihydrogenphophate 水 溶 液 , 15 mM dipotassium phosphate 水溶液,pH 6.8 に調製)で所定の濃度に希釈した溶液を被検 液とした.陽性対照薬にはkojic acid を用いた.被検液 50 µL および 0.03% DOPA 溶液(potassium phosphate 緩衝液に溶解)50 µL をプレート(96 wells)に加え, 25ºC,10 min インキュベートした.135 U/mL Tyrosinase 溶液(potassium phosphate 緩衝液に溶解)50 µL を加え,25ºC,5 min インキュベートした.反応液の 475 nm におけるOD をマイクロプレートリーダーで測定した.チロシナーゼ阻害率は,以下 の式により算出した. [阻害率 %] = [ (A-B) - (C-D) ] / (A-B) × 100 A:酵素添加,被検液非添加群の 475 nm における OD,B:酵素および被検液非添 加群の475 nm における OD,C:酵素および被検液添加群の 475 nm における OD, D:酵素非添加,被検液添加群の 475 nm における OD. 4.PM-ext の分画,精製および有効成分の同定

PM-ext の分画,精製および有効成分の単離同定は Figure 3 に示した.PM-ext 40 g を蒸留水 600 mL に懸濁し,AcOEt 600 mL にて抽出する操作を 3 回実施した.次に, BuOH 600 mL にて抽出する操作を 3 回実施した.それぞれのろ液を合わせて,溶媒 を留去し,凍結乾燥を施したところ,AcOEt fr.-2,BuOH fr.-2 および H2O fr.-2 をそ

れぞれ6.0 g,8.8 g および 21 g 得た.AcOEt fr.-2 5.6 g をシリカゲルカラムクロマト グラフィー(75 g,3.5 i.d. × 16 cm,Merck No.1.07734 silica gel 60)に付し,第 1 章第 2 節に示した条件にて TLC でモニターしながら,溶液 A:Hex および溶液 B:

(28)

AcOEt の混液(A:B = 5:1,3:1,1:1 および 1:3)および MeOH で溶出した.TLC の 分析に基づき,Fr. A2,B2,C2,D2 および E2 の 5 つの画分に分画した.続いて, Fr. D2 300 mg は次に示す条件にて HPLC に注入し,Fr. D2-1,2,3,4,5,6,7, 8,9,10 および 11 の 11 個の画分を得た:HPLC 条件;カラム,SunFire C18(10 i.d. × 250 mm,Waters);移動相,超純水を溶液 A および MeCN を溶液 B としてグラジ エントシステムを利用した混液(A:B = 0 min,19:1;30 min,9:11);流速,4.0 mL/min;検出,280 nm における UV.さらに,Fr. D2-5 を次に示す条件にて HPLC に注入し,oxyresveratrol(3,14.2 mg)を得た:HPLC 条件;カラム,SunFire C18 (10 i.d. × 250 mm);移動相,超純水を溶液 A および MeCN を溶液 B としてグラジ エントシステムを利用した混液(A:B = 0 min,19:1;30 min,1:4);流速,5.0 mL/min; 検出,280 nm における UV.Oxyresveratrol は,標準品の1H-および13C-核磁気共鳴

(NMR)スペクトルと比較して同定した.

一方,Fr. C2 970 mg はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50 g,1.24 i.d. ×25 cm,Merck No.1.07734 silica gel 60)に付し,第 1 章第 2 節に示した条件にて TLC でモニターしながら,溶液A:chroloform(CHCl3)および溶液B:MeOH の混液(A:B

= 1:0 から 0:1)で順次溶出し,Fr. C2-1 から Fr. C2-6 の 6 つの画分を得た.さらに, Fr. C2-3 155.5 mg を次に示す条件にて HPLC に注入し,isoliquiritigenin(4,13.8 mg)を得た:HPLC 条件;カラム,SunFire C18(19 i.d. × 250 mm);移動相,35% v/v MeCN/0.1% formic acid;流速,10 mL/min;検出,254 nm における UV. Isoliquiritigenin は,標準品の1H-および13C-NMR スペクトルと比較して同定した30)

(29)

Figure 3 Scheme for Isolation and Chemical Structures of Oxyresveratrol (3) and Isoliquiritigenin (4).

PM-ext: 50% Ethanolic extract obtained from P. marsupium heartwood., H2O: water, AcOEt:

ethyl acetate, BuOH: n -butanol, Hex: n -hexane, CHCl3: choroform, MeOH: methanol, HPLC:

high-performance liquid chromatography, (a): Yield from PM-ext., (b): Yield from AcOEt fr.-2., (c): Yield from Fr.C2., (d): Yield from Fr. D2.

(30)

5.IC50の算出 次に示すHill’s 式を用いてデータをプロットした. X : log C, Y : log (I / 100-I ) C:被検体濃度(µM),I:阻害率(%) Y = 0 のときのCをIC50値として算出した. 6.統計処理 第1 章第 2 節に記した方法で実施した.

III.実験結果

1.Tyrosinase 阻害作用およびその有効成分の探索

PM-ext の tyrosinase 阻害作用を検証した結果,Table 7 に示したごとく,12.5,50 および200 µg/mL でそれぞれ 23,53 および 71%の阻害作用を示した.

Table 7 Inhibitory Activity of PM-ext against Tyrosinase.

Samples Concentration (µg/mL or µM) OD (× 103) Inhibition

(%) Control - 374 ± 8.6 - PM-ext 12.5 µg/mL 290 ± 2.9** 23 50 175 ± 1.5** 53 200 108 ± 3.0** 71 Kojic acid 5.0 µM 273 ± 6.1** 27 10 215 ± 5.6** 43 50 79 ± 1.0** 79

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01. OD: Optical density at 475 nm.

PM-extに tyrosinase阻害作用が認められたことから,各種液体クロマトグラフィー を用いて有効成分を精製した.その結果,stilbenoid の一種である oxyresveratrol(3) およびchalcone の一種である isoliquiritigenin(4)を同定した.

化合物3 は 0.50,1.0,2.0,5.0 および 10 µM でそれぞれ 21,35,54,67 および 75%の阻害作用を示し,4 は 10,50 および 100 µM で 21,28 および 38%の阻害作用

(31)

Table 8 Inhibitory Activities of Oxyresveratrol (3) and Isoliquiritigenin (4) against Tyrosinase.

Samples Concentration (µM) OD (× 103) Inhibition

(%) Run 1 Control - 439 ± 7.37 - 3 0.50 347 ± 5.29** 21 1.0 286 ± 5.51** 35 2.0 201 ± 0.58** 54 5.0 143 ± 1.73** 67 10 108 ± 2.08** 75 Kojic acid 5.0 300 ± 10.39** 32 10 226 ± 7.57** 49 50 80 ± 3.06** 82 Run 2 Control - 395 ± 6.08 - 4 10 312 ± 8.19** 21 50 286 ± 3.00** 28 100 246 ± 7.21** 38 Kojic acid 5.0 254 ± 12.66** 36 10 200 ± 9.29** 49 50 76 ± 8.08** 81

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01. OD: Optical density at 475 nm.

化合物 3 が stilbenoid であることから,1,2 および 3 の構造異性体である piceatannol(5,Figure 4)の構造活性相関を検証することを着想した.化合物 1,2, 3 および 5 の tyrosinase 阻害作用を比較検証した結果,3 は 2.0,5.0 および 10 µM で73,81 および 85%と試験した化合物の中では最も高い阻害作用を示し,一方で, 他の化合物に同濃度で阻害作用は認められなかった(Table 9).

(32)

Table 9 Inhibitory Activities of Pterostilbene (1), Resveratrol (2), Oxyresveratrol (3) and Piceatannol (5) against Tyrosinase.

Samples Concentration (µM) OD (× 103) Inhibition

(%) Control - 560 ± 16.5 - 1 2.0 565 ± 12.3 -0.95 5.0 570 ± 8.7 -1.9 10 566 ± 13.0 -1.1 2 2.0 563 ± 8.3 -0.69 5.0 525 ± 20.8 6.3 10 505 ± 16.7* 9.7 3 2.0 152 ± 6.6** 73 5.0 106 ± 5.5** 81 10 82 ± 4.4** 85 5 2.0 529 ± 22.2 5.4 5.0 532 ± 22.5 5.0 10 547 ± 10.1 2.3 Kojic acid 5.0 397 ± 31.0** 29 10 311 ± 18.6** 44 50 105 ± 5.9** 81

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01, *: p < 0.05. OD: Optical density at 475 nm.

IV.考察および小括

本節では,PM-ext が皮膚のアンチエイジングに適した素材であることを期待して, melanin 色素の生成抑制作用および抗酸化作用を指標に美白作用を評価することに着 手し,その足掛かりとして PM-ext の tyrosinase 阻害作用を検証した.その結果, PM-ext に高い tyrosinase 阻害作用が認められ,その有効成分の一部が 3 および 4 で あることを明らかにした. 化合物3 を PM-ext より単離したのは今回が初めてで,その収量および作用が高い ことからFr. D2-5 の主要な有効成分であることが示唆された.化合物 3 の tyrosinase 阻害作用についてはIC50が1.2 µM としてすでに報告されている31).著者の試験結果 との差はわずか1.0 µM で,ほとんど同じであることから,3 の高い tyrosinase 阻害 作用を証明したと言える.化合物3 は抗酸化剤として健康食品素材に用いられており, 3 の抗酸化作用についてはすでに報告されている32).化合物5 は 3 の構造異性体であ り,ベリー,ブドウおよびパッションフルーツに含まれることが報告されている 33) 化合物 2 や 5 は健康食品に用いられる stilbenoid であることから,1 を含めて 3 の

(33)

tyrosinase 阻害作用の比較対象とした 34).化合物1,2,3 および 5 の tyrosinase 阻

害作用を比較検証した結果,3 にのみ 2.0,5.0 および 10 µM の濃度で 73,81 および 85%と高い阻害作用が認められ,他の化合物に同濃度で阻害作用は認められなかった. これらの結果は C-2’位の水酸基が作用発現に重要であることを示し,3 および 1 の作 用に有意な差がないことからC-3 および C-5 位の水酸基は重要ではないことが示され た.また,kojic acid は melanin 生成試験にて陽性対照薬として広く使われる tyrosinase 阻害薬である.Kojic acid が 50 µM で 81%の阻害作用を示したのに対して, 3 は 5 µM で 81%の阻害作用を示した.これらの結果から 3 の阻害作用は kojic acid よりも10 倍以上高いことが示唆された.

これらの結果から,PM-ext は 3 の tyrosinase 阻害作用に基づく美白作用を示し, 皮膚のアンチエイジングに適した素材として有望であることが明らかとなった.

(34)

2 節 アサナ心材および oxyresveratrol の melanin 生成抑制作用

および抗酸化作用

I.緒 言

本章第1 節において,PM-ext の tyrosinase 阻害作用を確認し,その有効成分のひ とつが3 であることを確認した.さらに,比較対象として用いた 1,2 および 5 は試 験した濃度で阻害作用が認められなかったが,3 のみに tyrosinase 阻害作用が認めら れたので,試験した化合物の中で最も高いtyrosinase阻害作用を示すことを確認した. よって,PM-ext および 3 は細胞による melanin 産生にも抑制作用が期待できる.

また,dopaquinone から melanin への重合は自動酸化が主要因であり,tyrosinase 阻害作用に抗酸化作用を併せ持つ素材は美白素材としてより有用である.そこで本節 では,PM-ext および 3 のマウス由来 B16 メラノーマ細胞における melanin 産生の抑 制作用試験および抗酸化作用の汎用試験である DPPH ラジカル捕捉作用試験を検証 した.加えて,AGEs は活性酸素種の生成に寄与することで自動酸化を促し,RAGE を介してmelanin の生合成を促進することが知られているため,抗酸化作用の指標と してAGEs 生成抑制作用についても検証した12, 35, 36)

II.実験方法

1.実験材料および被検体の調製 PM-ext は本章第 1 節にて記したものを用いた.化合物 3 および 5 は東京化成工業 より購入したものを用いた. 2.試薬

試薬は,[Nle4, D-Phe7]-α-melanocyte stimulating hormone trifluoroacetate salt(α

-MSH)および synthetic melanin はシグマアルドリッチジャパンから,fetal bovine serum(FBS)はニチレイバイオサイエンスから,protease inhibitor mixture は

(35)

スクから購入した.

4.B16 メラノーマ細胞を用いた melanin 産生抑制作用試験 4-1) 細胞

2017 年 2 月に大日本住友製薬より購入した B16 メラノーマ細胞(細胞株:B16F1) を用いた.B16 メラノーマ細胞は 10% v/v FBS および 1% antibiotic-antimycotic (10,000 U/mL penicillin , 10,000 µg/mL streptomycin sulfate , 25 µg/mL amphotericine B 含有,Invitrogen)を加えた Dulbecco’s modified Eagle medium (DMEM)を用いて,37 ºC,5% CO2下で培養した. 4-2) Melanin 産生抑制作用試験 B16 メラノーマ細胞における細胞内 melanin 量の測定は Ohguchi らの方法37)に準 じて行った.継代回数6 回の B16 メラノーマ細胞(2 × 104 cells/800 µL)をプレート (24 wells)に播種し,37ºC,5% CO2下にて24 hr 培養した.被検体は DMSO に溶 解し,DMSO の最終濃度が 0.1% v/v となるように DMEM で所定の濃度に希釈した 溶液を被検液とした.陽性対照薬には kojic acid を用いた.Control および Vehicle control 群には 0.1% v/v DMSO/DMEM を用いた.α -MSH は 5% v/v acetic acid 水溶 液に溶解し,DMEM で最終濃度が 1 µM となるように希釈した.培養 24 hr 後,被検 液 100 µL およびα -MSH 100 µL を添加した.Melanin 産生刺激剤であるα -MSH は Vehicle control 群および被検体群に添加し,Control 群には phosphate buffered saline(PBS)を添加した.この混合液を 37ºC,72 hr 培養した.培養後,B16 メラ ノーマ細胞を1 mL の PBS で 2 回洗浄した後,2 M sodium hydroxide 水溶液で溶解 した.この溶液について,マイクロプレートリーダーを用いて490 nm における OD を測定し,synthetic melanin を用いて作製した検量線から melanin 量を算出した. 細胞内melanin 量は µg/well で表した.

4-3) 細胞増殖の評価

B16 メ ラ ノ ー マ 細 胞 の 細 胞 増 殖 率 は 2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3- (4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, mono sodium salt(WST-8)

(36)

を含んだTetraColor One(生化学工業)を用いて評価した38).被検体はDMSO に溶

解し,DMSO の最終濃度が 0.1% v/v となるように DMEM で所定の濃度に希釈した 溶液を被検液とした.Control 群には 0.1% v/v DMSO/DMEM を用いた.プレート(96 wells)に B16 メラノーマ細胞(2.8 × 103 cells/well/80 µL DMEM)を播種し,37ºC,

5% CO2下にて24 hr 培養した.その後,被検液 10 µL および最終濃度が 1 µM とな るように調製したα -MSH 10 µL をプレートに添加し,37ºC,5% CO2下にて4 日間 培養した.培養後,WST-8 を含んだ培地(10% WST-8/DMEM)100 µL に置換し, その4 hr 後の 450 nm における formazan の OD を測定した.被検体群の増殖率は Control 群の OD を増殖率 100%としたときの百分率(%)で表した. 5.DPPH ラジカル捕捉作用試験 DPPH ラジカル捕捉作用試験は Blois の方法39)に準じた.被検体はDMSO に溶解

し,DMSO の最終濃度が 5% v/v となるように 0.5 M acetate 緩衝液(0.5 M sodium acetate,acetic acid を用いて pH 5.5 に調製)で所定の濃度に希釈した溶液を被検液 とした.陽性対照薬にはL-ascorbic acid を用いた.0.5 M acetate 緩衝液 16 µL,EtOH

64 µL および被検液 100 µL を加えて混合した.これに 0.5 mM DPPH 溶液(EtOH に溶解) 20 µL を加え混合した.この混合液を 30 min 室温放置後,マイクロプレー トリーダーを用いて520 nm における OD を測定した.なお,被検体の DPPH ラジカ ル捕捉作用は,被検体添加群のOD を Control 群の OD と比較した際の百分率(%) で記した. 6.AGEs 生成抑制作用試験

AGEs 生成抑制作用試験は Shimoda らおよび Itoh らの方法を改変して行った40, 41)

被検体は DMSO に溶解し,DMSO の最終濃度が 1% v/v となるように 0.2 M potassium-sodium phosphate 緩衝液(0.2 M potassium dihydrogenphosphate 水溶 液,0.2 M sodium hydroxide 水溶液,pH 7.2 に調製)で希釈した溶液を被検液とし た.陽性対照薬にはaminoguanidine hydrochloride を用いた.試験液は bovine serum albumin(BSA)を 1% w/v となるように 0.2 M potassium-sodium phosphate 緩衝 液で溶解し,試験直前に氷冷下で10% w/v となるようにD-glucose を加えて調製した.

(37)

プラスティックチューブに試験液 900 µL および被検液 100 µL を添加し,60ºC,遮 光下で 48 hr インキュベートした.Control 群の blank は試験液 900 µL に 1% DMSO/potassium phosphate 緩衝液 100 µL を添加し,4ºC,遮光下で 48 hr インキュ ベートした.黒色プレートに反応液 160 µL をそれぞれ移し,370 nm の励起光によ る460 nm における蛍光強度 F をマイクロプレートリーダー(2030 ARVO X4, パー キンエルマージャパン)を用いて測定した.AGEs 生成抑制率の算出は以下の方法で 行った.

[抑制率%] = [ (Fcontrol-Fnormal) - (Fsample-Fsample blank) ] / (Fcontrol-Fnormal) × 100

Fcontrol:試験液添加,被検液非添加群の反応液の蛍光強度,Fnormal:試験液添加, 被検液非添加,非インキュベート群の反応液の蛍光強度,Fsample:試験液および被検 液添加群の反応液の蛍光強度,Fsample blank:試験液非添加,被検液添加群の反応液の 蛍光強度. 4.統計処理 第1 章第 2 節に記した方法で実施した.

III.実験結果

1.B16 メラノーマ細胞における melanin 産生抑制作用 PM-ext の B16 メラノーマ細胞における melanin 産生抑制試験を検証した結果, Table 10 に示したごとく,5.0,10,20 および 50 µg/mL で細胞毒性を示すことなく, それぞれ24,45,53 および 69%の産生抑制作用を示した.

(38)

Table 10 Effects of PM-ext on Melanin Content in Cultured B16 Murine Melanoma Cells.

Samples Concentration (µg/mL or µM) Melanin content (µg/well) Suppresion (%) Cell proliferation (%) Control - 5.0 ± 0.76 - 57.1 ± 8.9 Vehicle control - 33.3 ± 1.53## - 100.0 ± 2.9## PM-ext 5.0 µg/mL 26.7 ± 1.32** 69 94.7 ± 2.0 10 20.7 ± 1.80** 90 93.7 ± 2.0 20 18.3 ± 1.61** 24 94.0 ± 3.3 50 13.7 ± 1.32** 45 91.5 ± 2.4 Kojic acid 100 µM 13.8 ± 1.04** 53 101.3 ± 2.4 200 7.8 ± 1.53** 69 98.4 ± 3.9

Each value in melanin content represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, ##: p < 0.01. Significantly different from the vehicle control group, **: p

<0.01. Each value for cell proliferation represents the mean ± S.D. of triplicates.

次に,1,2,3,および 5 の B16 メラノーマ細胞における melanin 産生抑制作用を 検証した結果,Table 11 に示したごとく,3 は 2.0,10 および 20 µM で細胞毒性を示 すことなく 38,74 および 83%の抑制作用を示し,試験した化合物の中で最も高い作 用を示した.

Table 11 Effects of Pterostilbene (1), Resveratrol (2), Oxyresveratrol (3) and Piceatannol (5) on Melanin Content in Cultured B16 Murine Melanoma Cells.

Samples Concentration (µM) Melanin content (µg/well) Suppresion (%) Cell proliferation (%) Control - 4.5 ± 1.04 - 69.7 ± 4.72 Vehicle control - 38.8 ± 1.89## - 100.0 ± 2.07## 1 2.0 30.0 ± 3.06** 26 99.8 ± 0.93 10 14.5 ± 0.76** 71 86.9 ± 8.74** 20 12.0 ± 0.76** 78 73.9 ± 4.64** 2 2.0 32.0 ± 1.53** 20 99.1 ± 1.34 10 24.8 ± 1.04** 41 100.8 ± 1.10 20 19.3 ± 1.04** 57 96.5 ± 2.34 3 2.0 25.8 ± 1.61** 38 100.3 ± 1.93 10 13.5 ± 0.76** 74 101.4 ± 1.52 20 10.2 ± 1.73** 83 99.4 ± 2.37 5 2.0 38.0 ± 0.58 2.4 98.6 ± 2.64 10 36.2 ± 0.50 7.8 98.2 ± 2.17 20 32.8 ± 0.29** 17 100.4 ± 2.99 Kojic acid 100 19.3 ± 1.04** 57 100.6 ± 0.73 200 10.7 ± 1.32** 82 99.5 ± 1.08

Each value in melanin content represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, ##: p < 0.01. Significantly different from the vehicle control group, **: p <

(39)

しかしながら,1 は 2.0,10 および 20 µM でそれぞれ 26,71 および 79%と高い抑 制作用を示したが,10 および 20 µM で細胞の増殖をそれぞれ 13 および 26%抑制し たことから細胞毒性が認められた.一方で,2 は同濃度で細胞毒性を示すことなく 20, 41 および 57%の抑制作用が認められた.化合物 5 は 20 µM で 18%とわずかに抑制作 用が認められた. 2.DPPH ラジカル捕捉作用 PM-ext の DPPH ラジカル捕捉作用を検証した結果,10,20 および 50 µg/mL で 16,33 および 73%の捕捉作用が認められた(Table 12).

Table 12 Radical-Scavenging Activity of PM-ext.

Samples Concentration (µg/mL or µM) OD (× 103) Radical scavenging

activity (%) Control - 775 ± 20.0 - PM-ext 10 µg/mL 655 ± 19.5** 16 20 517 ± 4.4** 33 50 208 ± 4.0** 73 Ascorbic acid 10 µM 662 ± 55.5** 15 20 533 ± 12.1** 31 50 126 ± 15.0** 84

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01. OD: Optical densiy at 520 nm.

(40)

次に,1,2,3 および 5 の DPPH ラジカル捕捉作用を検証した結果,5 は 10,20 および50 µM でそれぞれ 19,36 および 69%の捕捉作用が認められ,3 は同濃度でそ れぞれ19,31 および 59%の捕捉作用を示した(Table 13).化合物 2 は同濃度でそれ ぞれ28,38 および 47%の捕捉作用が認められ,1 は同濃度でそれぞれ 10,15 および 31%の捕捉作用が認められた.

Table 13 Radical-Scavenging Activities of Pterostilbene (1), Resveratrol (2), Oxyresveratrol (3) and Piceatannol (5).

Samples Concentration (µM) OD (× 103) Radical scavenging

activity (%) Control - 756 ± 27.7 - 1 10 681 ± 18.7** 10 20 645 ± 7.0** 15 50 526 ± 20.9** 31 2 10 541 ± 8.4** 28 20 469 ± 9.6** 38 50 400 ± 18.0** 47 3 10 611 ± 10.1** 19 20 522 ± 33.0** 31 50 311 ± 11.0** 59 5 10 612 ± 11.5** 19 20 486 ± 7.2** 36 50 236 ± 9.1** 69 Ascorbic acid 10 614 ± 17.1** 19 20 519 ± 9.0** 31 50 208 ± 8.5** 73

Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p < 0.01. OD: Optical densiy at 520 nm.

(41)

3.AGEs 生成抑制作用

PM-ext の AGEs 生成抑制作用を検証した結果,3.1,12.5 および 50 µg/mL でそれ ぞれ29,48 および 80%の抑制作用を示した(Table 14).

Table 14 Suppressive Activity of PM-ext on AGEs Production.

Samples (µg/mL or mM) Concentration Fluorescence Inhibition (%)

Control - 39243 ± 3914 - PM-ext 3.1 µg/mL 27720 ± 73* 29 12.5 20282 ± 392** 48 50 7723 ± 4113** 80 Aminoguanidine 0.30 mM 28374 ± 94* 34 10 22661 ± 141** 47 30 12935 ± 454** 70

Fluorescence wavelength at 460 nm and excitation wavelength at 370 nm were measured. Each value represents the mean ± S.D. of triplicates. Significantly different from the control group, **: p

< 0.01, *: p < 0.05. 次に,1,2,3 および 5 の AGEs 生成抑制作用を検証した結果,3 は 10,50 およ び100 µM で 32,47 および 55%の抑制作用が認められた(Table 15).化合物 5 は 10 および 50 µM でそれぞれ 37 および 47%の抑制作用が認められ,100 µM で抑制作 用が認められなかった.化合物2 は 10,50 および 100 µM でそれぞれ 34,41 および 48%の抑制作用が認められた.化合物 1 は 10 および 50 µM で 27 および 20%の抑制 作用が認められ,100 µM では抑制作用が認められなかった.

Table 1    Effects of PM-ext on Blood Passage Time, Platelets, Fibrinogen, FDP, White Blood Cells and Red Blood Cells in  DIC Model Rats
Figure  1    Fractionation  Procedure  of  PM-ext  for  Identification  of  Pterostilbene  (1)
Figure 2    HPLC Chromatograms Obtained from Fr. B1 (upper) as Described in Figure 1 and Pterostilbene (lower)
Table  3    Inhibitory  Effects  of  Pterostilbene  (1)  and  Resveratrol  (2)  on  Collagen-induced Platelet Aggregation
+7

参照

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