高齢者による地域リハ・ネットワークを構築へ
滝沢茂男
バイオフィリア リハビリテーション学会 常務理事
要旨
当学会は、リハビリテーションネットワーク構築研究(リハ・ネット)のために、2005 年度「独
立行政法人福祉医療機構」(WAM)の長寿社会福祉基金助成金を得ました。国民生活・福祉の
向上に寄与するため、可能な限り多人数の高齢障害者の日常生活が「介護・依存ではなく、自立
する」ことを目指し、在宅生活におけるリハビリテーション(以後リハ)・ケア実施について、
障害者の意欲を高めることが出来、同時に障害者自身がリハを実施し、中核機関と在宅リハのネ
ットワークを構築し、両者が機能的な連携を図る中で、高い効果を挙げ得るシステム構築を試行
するための研究です。
この高齢者自身による地域リハ・ネット構築事業を行うことにより、高齢障害者の歩行・移動自
立(歩行補助具を利用するものを含む)と日常生活動作の向上が図られ、次のような効果が期待
できます。
ア. 高齢障害者の歩行・移動自立と日常生活動作の向上が可能になる。
イ.身体機能と日常生活動作の向上が可能なリハ手法を普及する。
ウ.安全で簡便な地域リハ・ネットの構築が全国で可能になる。
エ.要介護度が低下することから、社会保障関係費の削減が可能になる。
研究は、講演会を行い、参加者を募り、マニュアルを作成し、参加者に機器を配布して、実施し、
その実際を報告する、で構成されています。
キーワード:地域リハビリテーションネットワーク、高齢障害者、歩行・移動自立、日常生活動
作、向上
1.WAM助成金
当学会は、地域におけるリハビリテーションのネットワーク構築研究のために、2005 年度「独
立行政法人福祉医療機構」(WAM)の長寿社会福祉基金助成金を得ました。国民生活・福祉の
向上に寄与するため、可能な限り多人数の高齢障害者の日常生活が「介護・依存ではなく、自立
する」ことを目指し、在宅生活におけるリハビリテーション(以後リハ)・ケア実施について、
障害者の意欲を高めることが出来、同時に障害者自身がリハを実施し、中核機関と在宅リハのネ
ットワークを構築し、両者が機能的な連携を図る中で、高い効果を挙げ得るシステム構築を試行
するための研究です。そのために、講演会を行い、参加者を募り、マニュアルを作成し、参加者
に機器を配布して、実施し、その実際を 2006 年 3 月に報告します1)
。
2. 介護度の重度化
我が国における要介護老人の介護度は重度化が進んでおり、その実際は 2003 年 8 月分介護保険
事業状況報告(要介護度別認定者数の推移)に明らかで、対 2000 年比要介護度 5 は 51%増、要介
護度 4 は 32%増、平均で 67%増と看過できない数で増加しています。一例として佐賀県では、高
齢者数は三年で 6.5%増加したのに比べ、介護保険制度開始から三年で要介護認定を受けている高
齢者は 36%増えました。これまでのリハの機能訓練は、神経・筋促通法によっており、リハの機
能訓練の手法ではボバース、ルード、グリーブなど先人の業績から生まれたものが知られていま
す。こうしたこれまでのリハが多くの高齢者・障害者・患者に実施されています。この神経・筋
促通法はリハ分野で愛用されていますが効果ありとの説と効果なしとの説と 2 分されています。
要介護度の悪化、要介護者の増加の現状を見たとき、持続可能な社会保障制度確立のためには介
護予防が欠かせません。現在介護予防として導入が予定されている手法は、国会での議論から、
必ずしも有効とは限らないことが明らかになってきました。
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3. インペアメントの克服
我々は日本発のタキザワ式と名づけた顕著な効果をあげる、「患者自身の意欲を最大限に引き
出し、患者の健側で開発器具を利用し患側を運動する創動運動を、座位で患者自身が行う」を中
核とした手法の研究を、財団法人テクノエイド協会研究助成金、文部科学省科学研究費など公的
研究費助成を得て続けています。近年国際学会も組織され、また大きく報道されるなど国際的評
価も得ています。
こうした内容が評価され、「皆が介護・依存から自立可能であることを、そうできる方法があ
ることを知る。そして、現在では個人の尊厳も奪われ、社会参加の喜びなど持ち得ない高齢障害
者のインペアメントを克服し、高齢障害者が自立へ向かうことは、健康寿命を延ばし労働可能年
齢を伸ばすことにもつながる。」とした申請が採用されたのです。
4. 研究事業の内容
本研究事業は、タキザワ式を中核においた地域リハ・ネットワーク(バイオフィリア リハ
ネット)事業の先駆的な研究事業です。また可能な範囲で在宅における栄養管理を試行します。
この研究については、岡本病院理事長岡本雄三医学博士は学会副会長としてこれまで研究を報告
してきていることから、中核機関として岡本病院を宛てる計画になっており、大分県豊後大野市
域が主たる対象地域になります。
研究参加者を募るため、仮称「地域リハ・ネット構築研究会」を 2005 年 7 月 2 日大分県豊後大
野市エイトピアで午後2時から開催します。この事業は大分県社会福祉協議会、大分県医師会な
どの後援(予定)の下実施します。会参加対象者は豊後大野市近郊に在住の在宅高齢障害者及び
家族・関係医師・医療関係者・福祉用具エンジニア等 200 名程度を予定しており、約 10,000 部の
参加募集案内を配布する予定です。さらに全国の社会福祉協議会関係者に参加を呼びかけること
になっています。大分県内の関係者には社会福祉協議会を通じた呼びかけも予定しています。
この会では、新潟医療福祉大学牧田光代教授、川崎病院(岡山県岡山市)リハビリテーション
科医師森田能子部長、前出の岡本雄三理事長の手法の実際に関する報告と、私から参加のための
方法説明を予定しています。
この会の説明を聞いた関係者が、この事業への参加を申し込むことになります。
参加希望者は 50 名まで参加できます。8 月 5 日に神奈川県藤沢市の学会本部で審査会を開催し、
大分県関係者を除外して、参加の 50 名を公平に選びます。なお、参加希望者の主体的な意思を確
認するため、希望者は審査手数料 500 円が必要です。また実績評価のため、介護保険関係者の同
意が必要になります。
2005 年 8 月 19 日に再び豊後大野市エイトピアで、参加者と家族のための講習会を開催します。
在宅高齢者の運動機能改善のために、自宅で出来る機能訓練の方法を知らせるためのもので、マ
ニュアルと実施方法を説明したビデオを配布します。参加者は意思確認のため若干の資料費を負
担することになります。介護保険関係者には評価方法を指導します。参加者の当初の身体機能状
態を評価した後に、リハ実施となります。
この研究では自宅で安心して実施するための、機能訓練に関するマニュアル及び在宅訓練用ビ
デオの作成も同時に行います。内容は、器具の利用方法、運動の適切な介助方法、実施回数の目
安などわかりやすいものになります。
作成したマニュアル及び在宅訓練用ビデオは学会における研修会にも利用する計画で、今後永
く利用されることになります。
5. 基幹施設
ネット構築に関する事業は基幹施設が必要になります。今回は、岡本病院の介護関連の通常業
務と連携し、在宅と施設での間で切れ目のないリハ・ネットを参加者に提供する予定です。前述
のように介護保険関係者の同意があり、実施後の健康状態の変化や自立獲得状況について評価等
の事業に参加可能な場合は、どの施設も研究事業を行う基幹施設として参加できます。経過と結
果の評価は学会のリハ専門家が、11 月初め頃と 2006 年 2 月初め頃に行います。
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6. 研究の効果
この高齢者自身による地域リハ・ネット構築事業を行うことにより、高齢障害者の歩行・移動
自立(歩行補助具を利用するものを含む)と日常生活動作の向上が図られ、次のような効果が期
待できます。
ア. 高齢障害者の歩行・移動自立と日常生活動作の向上が可能になる。
イ.身体機能と日常生活動作の向上につながるリハ手法を普及する。
ウ.安全で簡便な地域リハ・ネットの構築が全国で可能になる。
エ.要介護度が低下することから、社会保障関係費の削減が可能になる。
7. 介護・依存から自立へ
皆が介護・依存から自立可能であること、そうできる方法があることを知る。そして、現在で
は個人の尊厳も奪われ、社会参加の喜びなど持ち得ない高齢障害者のインペアメントを克服し、
高齢障害者が自立へ向かうことは、健康寿命を延ばし労働可能年齢を伸ばすことにもつながりま
す。この実現は社会保障経費の増大による社会崩壊を防ぐために重要であり、有効です。
そしてその実現のためには、その事実を知り、皆が生活自立に努めることが重要です。この研
究はその実現に大きく寄与できるものと確信しています。皆様の研究へのご参加を期待します。
連絡は当学会まで(takizawa(at)biophilia.info)
(初出:2005 年 5 月 24 日時事通信「厚生福祉」5288 号 p5-7 に加筆)
参考資料
1) 木村 哲彦, 滝沢 茂男, 森田 能子, 長岡 健太郎, 牛澤 賢二、平成17年度独立行政法人福
祉医療機構助成事業 高齢障害者自身による地域リハ・ネット構築事業報告書 概要 復刻、
バイオフィリア リハビリテーション学会研究部会医学研究会予稿集、2013 年(初出 2005
年)p128-136、http://doi.org/10.14911/biophilia.2013.2.0_128
2) 高齢障害者自身による地域リハ・ネット構築事業報告書全体報告、バイオフィリア リハビリ
テーション学会研究部会医学研究会予稿集、2013 年(初出 2005 年)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/biophilia/2013.3/0/_contents/-char/ja/
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