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Generative Dialogue 設計方法の提案及び有効性の検証

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Academic year: 2021

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13 [ 論⽂ ]

Proposing the Method to Design Generative Dialogue

and its Validation of Efficacy

坂倉由季子*1,保井俊之1,当麻哲哉2,前野隆司2

Yukiko Sakakura1, Toshiyuki Yasui1, Tetsuya Toma2, Takashi Maeno2

(1慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所 2慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)

(¹SDM Research Institute, Graduate School of System Design and Management, Keio University ²Graduate School of System Design and Management, Keio University)

*Corresponding Author: ysakakur@keio.jp 案件の複雑化や新規事業創出のため、企業内の連携や協業が近年、ますます重要視されるようになってき た。さらにバックグラウンドを持つ人々の連携や協業を促す方法論として、ダイアローグの理論及び実践の 発展が2010 年代に入り注目を集めている。本研究では対話研究の中でもとりわけ連携及び協業における創 発性が高いGenerative Dialogue(GD) (Isaacs 1999: 38-41) に着目し、システムズエンジニアリングの手法 を用いた設計方法を提案し、その有効性を定性的及び定量的に検証した。 具体的な設計モデルの構築に当たり、機能設計レベルではGD に必要な機能として、対話に参加する機能、 他者と連携することに積極的になる機能、参加者の高揚感が高まる機能、参加者が一体感を持つ機能、並び に参加者のパフォーマンスを出す機能の5 つを特定した。そして、物理設計レベルにおいて、この 5 つの機 能を用い、企業内で展開可能な、GD を生成するワークショップを設計した。さらに、提案した GD 設計の 有効性を定性的及び定量的に検証するため、日本の中小企業の典型的存在と目される企業において、本研究 により設計したGD 生成ワークショップを実施し、参加者の参与観察、PANAS、協調的幸福感尺度、並び に参加者の発言のテキストマイニングにより、定性的及び定量的に同ワークショップの有効性を示した。ま た、企業の現場でワークショップを実施し、参加者から高い満足度を得たことで、今後企業等で連携及び協 業の促進のためにGD 生成ワークショップが複製性のあるモデルとして展開できる可能性を示した。 キーワード: Generative Dialogue、システムズエンジニアリング、関係性

Cooperation and collaboration within companies have become increasingly important for companies to handle complicated projects and create new businesses. Besides that, as a methodology to encourage cooperation and collaboration among people with different backgrounds, the development of dialogue theory and practice has attracted attention in the 2010s. In this research, focusing on Generative Dialogue

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(GD) (Isaacs, 1999: 38-41) which is highly emergent in cooperation and collaboration among dialog research, we proposed a design method using Systems Engineering method and verified its effectiveness in qualitatively and quantitatively way.

For constructing a concrete design model, at the functional design level, functions required for GD include functions to participate in dialogue, to become active in cooperating with others, to enhance the sense of elevation of participants, to have a sense of unity, and to give participant's performance. And at the physical design level, we designed a workshop to generate GD that can be deployed within the enterprise companies using these five functions.

Furthermore, in order to qualitatively and quantitatively verify the effectiveness of the proposed GD design, in a company witnessed the typical existence of Japanese SMEs, we conducted a GD generation workshop designed by this research, We showed the effectiveness of the workshop qualitatively and quantitatively by observation of participation, PANAS, Interdependent Happiness Scale, and text mining of participants' remarks. By conducting a workshop at the company's site and obtaining high satisfaction from the participants, it shows possibilities to expand the GD generation workshop as a replicable model to promote collaboration and collaboration in companies and other entities.

Keywords: Generative Dialogue, Systems Engineering, Interaction 1. 研究の目的、背景及び先行研究

1.1. 背景

企業、政府機関及びNPO 等における部内の連携や協業が 2010 年代に入り、ますます重要視されるよう になっている(Bosch et al. 2013, Yasui et al. 2015) 。これらの組織に対応が求められる案件が、社会の高度 複雑化により一層holistic なデザインを求められるようになっていること、並びに、分野や職域を超えた協 創により新規事業を創出することがますます求められるようになっているためである。実際に日本企業では、 取り扱う案件やシステムの大規模複雑化に伴い、これまで単一の部署で担当していた仕事が単一では回せな くなり、他部署、時には他社との連携や協業が必要になる事例も増えている (安部ら 2017: 153-162)。加え て、新規事業の創出及び企業内外でのイノベーションの創出には、集合知が有効である (Woolley et al. 2010: 686-688)ことから、イノベーティブなアイデア出しを促進するツールとして、また企業内での他者との連携 及び協業が問題解決に果たす手段としてブレインストーミングなどのツールが注目されている。 他方で、「(他者との連携や協業を必要とする)コラボレーション型業務は(一部の社員に)極めて偏って 分布していることが多い」(Rob Cross et al. 2016: 61-68)(カッコ内は筆者補注)傾向にあり、さらに、他部署 や他者との連携、協業経験の乏しい企業では、「ただ物理的に集まってブレインストーミングするだけでは問 題解決のための案が生まれない」といった声1) も、筆者らが行った日本企業での聞き取りで聞かれた。ビジ

ネスにおいて連携や協業を真に促進するには社員一人一人に他者と連携、協業するためのマインドセットを 構築することが重要である(Rob Cross et al. 2016)そのような状況において、異なるバックグラウンドを持つ 人々の連携や協業を促す方法論として、ダイアローグの方法論が社会起業や企業におけるイノベーションの 創発を促進する理論としてここ数年来注目を集めている(中村ら 2017)。ダイアローグ理論は、組織論、地域 活性研究、並びに平和構築論など当事者の協業及び連携による問題解決を指向する複数のディシプリンで、 他者との共同作業や相互関係を生むためのマインドセット構築のための方法論である。組織論においては、

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15 複数の人間が集まった際に生じる思考の一貫性のなさを解決する手段として有効であるという指摘 (Senge 2011)、組織の抱える問題の解決方法や成果の伝え方の手段として有効であるとの指摘 (Jaworski 2011: 171-183)がある。また地域活性研究の分野においても、地域に根付くコミュニティを軸とした事業形成にダイア ローグが寄与したことを示す研究 (中村ら 2017)が報告されている。また平和構築論においても、ダイアロ ーグを用いた紛争解決の有効性が示されている (Kahane 2014: 138-139)。 ダイアローグ研究の90 年代の第一人者であった Bohm は、ダイアローグの本質について「グループ全体 に一種の意味の流れが生じ、そこから何か新たな理解が表れてくる可能性」 (Bohm 1996: 44-45)とした。さ らにBohm はダイアローグをディスカッションと明別し、「ディスカッションの語源には物事を壊すという 意味があり、基本となる点としてゲームに勝つ」という考え方が存在するが、ダイアローグでは「人々は互 いに戦うのではなくともに戦っており誰もが勝者である」とした (Bohm 1996: 45)。 さらにBohm のダイアローグの本質論を整理及び体系化した Isaacs によれば、ダイアローグとは「グル ープ全体に一種の意味の流れが生じ、そこから何か新たな理解が表れてくる」状態であり、「見えないものが 形になる(Architecture of the invisible)」 (Isaacs 1999: 36)ことと定義し、そこに至る行動様態を明らかに している。Isaacs のダイアローグ論は、聞く、大事にする、保留にする、並びに声に出すという 4 つの個人 の新しいbehaviors が個人の行動変容を促す、兆しのある直観を生むために必要だとするところに特色があ り、ダイアローグにおける自発性、創発性及び即興性を重視している。 また Isaacs は、ダイアローグには自分自身の思考の枠を外し、個人の内側の声を深く聞く Reflective Dialogue(内省的対話)」と、Reflective Dialogue (RD)を経たあとにさらに一歩、協創の段階に入る Generative Dialogue (GD)の二つがあるとした。この二つのダイアローグのうち、見えないものが形になる 状態、すなわち自発性、創発性及び即興性をもった個人の行動変容を生むためには、ダイアローグに参加し た参加者のグループ全体がRD から GD の状態に進む必要があることを明らかにした。 GD は、ダイアローグ論の大家である Scharmer によるダイアローグの四つの分類2) における最終状態で あり (Kahane 2014)、GD は「対話への参加者が各人の見解や立場を完全に離れ、個人としての思考の枠も 取り外し(中略)会話の中に身を浸すことから、何か新しいものが対話の集団そのもののアウトカムとして つくりだされる」 (前野隆司, 保井俊之 2017:48)状態と表現される。Issacs は GD をジャズの即興演奏に 例えており、GD が表れると「新しい関係性が構築される(create new levels of interaction)」 (Isaacs 1999:38)としている。対話の中で最も自発的、創発的及び即興性が進んだ状態を指し、生成されると対話参 加者の間に新たな関係性や可能性が生まれる (Isaacs 1999, Scharmer 2001)とされることから企業における 協業及び連携の文脈においても有効と考えられるだろう。しかしGD 発生のメカニズムは研究の萌芽段階に あり、かつ生成のプロセスは必ずしもduplicability を有するかたちで明らかになっていない。 一方、近年都市政策や地域課題等の解決などの様々な社会課題を、システムズエンジニアリングの方法論 を用いて可視化および構造化する流れが拡大している。(保井ら 2015: 20-29, 津々木ら 2011: 110-116)。シ ステムズエンジニアリングは、技術システムの設計開発に用いられる工学的手法で、要素だけでなく要素間 のつながりに着目し、全体を俯瞰し問題を解こうとする方法論であるが、invisible な対象を含めシステムと して記述するため問題及びその解決法を可視化し共有することが可能となることから、近年は複雑で原因が 絡み合った社会課題を解決するなど、社会システムへの応用が目立つ (Senge 2011)。

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16 1.2.目的 本研究は、日本企業によるイノベーション創発への注目がこの数年来高まってきた流れの中で、企業内の 部門間の縦割りを打破し、連携及び協業を促す、自発的、創発的かつ即興性を持つダイアローグが重視され るようになったこと、および社会課題をシステムズエンジニアリングで可視化および構造化する流れが拡大 していることを受け、ダイアローグ理論の中でもとりわけ、自発的、創発的かつ即興性に特色を持つ Generative Dialogue(以下 GD と記載) (Isaacs 1999: 38-41)の概念をシステムズエンジニアリングの手法 を用いて構造化し設計しその定量的評価方法を示すことを目的とする。GD は invisible なシステムといえ、 その複製可能な設計を行う方法としてシステムズエンジニアリングは適しているといえよう。実際に企業の 現場で実施可能なモデルを構築するため、設計後はプロトタイピングとして企業のアイデア創出の現場など でも使用できるワークショップを、社員研修という形で実施し、その有効性を定量的及び定性的に検証する。 2. 方法 初めに、システムズエンジニアリングの手法を用い、本研究におけるGD の定義とその構造を明らかにし、 GD の設計を行うための設計方法を述べる。次に設計に基づいたプロトタイピングを実施し、設計に問題が ないか検証を行うための方法を記述する。 2.1 設計方法 2.1.1 システムズエンジニアリングを用いた設計の考え方 本研究ではシステムズエンジニアリングの機能設計の考え方を用いて設計を行う。まず GD を構成するの に必要な要素をGD の定義から特定する。次に各要素を GD に必要な機能と捉え、機能設計により、機能間 の関係性を明確化する。さらに、物理設計を行い、各機能を企業等の被験先に提供可能な具体的なシステム として構成する。最後にプロトタイピングとして実際に設計を行い、設計されたGD がきちんと動作するか、 意図した通りであったかの評価検証を実施する。評価検証方法の詳細については2.2 以降で詳述する。 2.1.2 Generative Dialogue の定義 システムズエンジニアリングの手法を用い設計するにあたり、初めにGD に関する先行研究を参照し、GD の持つ要素を分解し、本研究におけるGD の定義として措定する。 まず本研究におけるGD の定義を述べる。 「対話の場において参加者が他者と連携することに積極的になり、一体感を感じてまとまり、高揚感ととも にパフォーマンスを出すこと」 Issacs は GD を「内省的対話の後に生じるものであり、新たな可能性と新たな関係性をつくりだすも の」(generative dialogue, in which we begin to create entirely new possibilities and create new levels of interaction.) (Isaacs 1999: 38)としており、GD に含まれる要素は ①対話に参加する機能、②参加者の関 係性が変化する機能、並びに ③新たな可能性を生む機能、である。その上で、Issacs が GD の具体例とし て引いているジャズの即興演奏(Isaacs 1999: 38)及び Bohm の会議での経験 (Isaacs 1999: 41-42)から、参 加者がいつのまにか夢中でダイアローグに参加していること、一体感をもってまとまり集団としてパフォー

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17 マンスを出していることに注目し、③参加者の高揚感が高まる機能、④参加者が一体感を感じてまとまる機 能、並びに⑤参加者のパフォーマンスをだす機能が必要となる。

なお、②の関係性が変化する、という機能についても、Issacs は事例の中で「 People are no longer primarily in opposition, nor can they be said to be interacting; rather, they are participating in this pool of common meaning which is capable of constant development and change.」 (Isaacs 1999: 41)と述べてお り、対話に参加する人々はもはや争うのではなく共通の意味の中に浸るようになる、と表現している。この ことから関係性の変化はいかようにも変化するという意味ではなく、「共通の意味(common meaning)」 (Isaacs 1999: 41)に浸るため他者との距離を近づける、という方向性を持った変化であることがわかる。 よって②の機能は、他者と連携することに積極的になる、と具体的に置き換えられる。したがって上記 5 つ(①対話に参加する機能、②他者と連携することに積極的になる機能、③参加者の高揚感が高まる機能、 ④参加者が一体感を持つ機能、並びに⑤参加者のパフォーマンスを出す機能)をGD に必要な 5 つの要素と する。 2.1.3 Generative Dialogue の機能設計

上記5 つの要素を用い、Function Flow Block Diagram (FFBD; 機能フロー図法)による GD の機能設計 を行う。 FFBD は機能の流れを明確化し、階層化による細分化を行うシステムズエンジニアリングの一般的な手法 である。この設計方法により、2.1 で抽出した GD の 5 つの機能の前後関係が明確化し、またほかに必要な 機能に抜け漏れがないかをチェックすることが可能となる。GD の FFBD 図は図 1 のとおりである。なお機 能の流れを明確化するために、5 つの機能にそれぞれ番号を振っている。図 1 は、GD が「機能 1.0 対話に 参加する」ところから始まり、「機能2.0 他者と連携することに積極的になる」プロセスを経て、「機能 3.0 高揚感が高まる」と同時に、「機能4.0 参加者間に一体感を持つ」が生まれ、「機能 5.0 パフォーマンスを出 す」までの流れを記載している。 図 1 GD の FFBD 作成したFFBD に沿い、設計手順について説明する。なお、今回は企業のアイデア創出の現場などでも使 用できるワークショップモデルとしての提案を想定しているため、ワークショップへの参加、すなわち「機 能1.0 対話に参加する」は前提条件として定義する。したがって機能 1.0 は、今回の設計プロセスからスコ ープ外として除外する。手順としては、まずFFBD による機能フローを確認し、抜け漏れやさらにブレイク ダウンすべき箇所がないか確認し、物理設計が可能な状態にする。次に、完成したFFBD 図をもとに物理設 計を行う。 まずFFBD の確認を行った。基本的なフローの流れについて Issacs の定義及び事例 (Isaacs 1999: 38-42)

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18 をもとに作成したことを確認した。また機能3.0 から 5.0 までについては GD の参加者が自然に体感できる 機能であること、並びに記述が明確でありこのあと物理設計するに当たり現在の状態のまま物理に立て付け が可能であること、からこれ以上の詳細化は必要ない。他方で、機能2.0 については参加者自身にアクショ ンが必要な機能であり、物理にたてつけるにあたっても具体的に何をすればよいのか、さらに詳細化する必 要がある。

「機能2.0 他者と連携することに積極的になる」について、Value Graph、Enabler Framework の二つ の分析方法を用いて詳細化を行う。Value Graph は価値工学の手法のひとつであり、製品やサービスの価値 を構造化し、そこから実現手段を探すツールである (石井ら 2008, 慶應 SDM 2014: 54-55)。また Enabler Framework はシステムエンジニアリングの手法の一つで、「ある対象に対してその実現子(Enabler)を探 していく」ための枠組み (慶應 SDM 2014: 56-57)である。 Value Graph 及び Enabler Framework はとも にシステムが果たす機能を探すためにシステム開発の現場等でよく用いられるツールであり、Value Graph は価値から、Enabler Framework は実現子の関係性からシステムに必要な機能の詳細化および機能感の関 係性を導くことが可能である。研究のロバストネスを得るため、本研究ではこの二つのツールを用いて「連 携を強化する場」の機能分析をそれぞれ行う。 まずValue Graph を用い、ある企業のインタビュー内容をもとに「連携を強化する場」の価値について考 えそこから機能を導く。次に導いた機能を全く別のアプローチ、すなわち、無作為に選ばれた社会人20 名 へのアンケート内容を情報ソースとし、 Enabler Framework を用い、価値からではなくキーワードの関係 性から把握し分析を行い、Value Graph の結果との比較を行う。 まずは本研究の検証先である A 社の幹部 3 名に「他者と連携できるとはどういうことか」についてインタ ビューを行い、その内容から Value Graph を作成し、他者と連携するために必要な機能を特定する。次に Value Graph の結果の客観性確認のため、小売業、地方自治体、大学教員、IT、不動産、並びにプラント建 設業など複数のセクターで仕事をする40~60 代の社会人 20 名を対象に、「他者と連携できるとはどういう ことか」をテーマにインタビューを行い、その結果をEnabler Framework で分析し、Value Graph の結果 との比較し、内容の補強を行った。 Value Graph の結果を図 2 に示す。分析対象、すなわち本研究においては「研修参加者の連携が強化され た場」を中心に置き、インタビュー結果を踏まえて分析対象が提供する価値を上段に、その価値を提供する のに必要な要求機能を下段に記述している。機能2.0 に必要な機能としてインタビューから導かれたのは、 他者と会話する、他者と協業する、の二点であった。なお、本来Value Graph では物理へのマッピングにつ いても行うが、今回は機能の詳細化とて使用しているため、この時点で物理へのマッピングは行わない。 Value Graph は A 社とのインタビューと並行する形で 2016 年 8 月から 11 月にかけて制作され、完成した Value Graph は内容の客観性を担保するため、システムズエンジニアリングの有識者 10 名のレビューを受 け、インタビュー内容が正確に反映されているか、恣意性はないかなどの確認を受けた。

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19 図 2 GD の機能 2.0 に関する Value Graph

Enabler Framework を用いて機能 2. 0 を実現するための機能を抽出した結果を図 3 として示す。 Enabler Framework では問題や課題を構成する要素を求め、要素間が enabler(実現子;一方がもう一方 を実現する)の関係性となっているものを探し出す。その際、下が上をenable するものとして記述を行う。 (文科省 2013: 36-38) 本研究では、Enabler Framework による分析を行う前に、まずインタビューの回答 内容からキーワードを抽出し、親和図法(慶應 SDM 2014: 44-45)を用いてキーワードのグルーピングを行っ た。その後Enabler Framework による分析を行い、実現子を抽出した。Enabler Framework の分析は 2016 年9 月から 11 月にかけて 3 回行い、結果についてはシステムズエンジニアリングの有識者 10 名にレビュー を受けた。

具体的にはまず、インタビューから抽出されたキーワードの中から必要な機能を抽出した。その結果、(1) 会話する、(2)協業する、およびそれによって他者と(3)共有するというアクションが生まれ、これにより 「他者との連携が強化される」との機能にまとめられた。

すなわち、先ほどのValue Graph では出現しなかったが、Enabler Framework を通じて(1)会話する、 (2)協業するによって実現される(3)共有するという機能の存在が明らかになった。

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図3 GD の機能 2.0 に関する Enabler Framework

Value Graph と Enabler Framework の結果から FFBD をさらに細分化したのが、図 4 である。 図4 は、「機能2.0 他者と連携することに積極的になる」プロセスにおいて、「2.1 他者と会話する機能」及 び「2. 2 他者と協業する機能」が動作し、そこから「2.3 他者と共有する機能」がさらに動作し、最終的に 「2.0 他者と連携することに積極的になる」状態が生成される様子を表している。 図 4 機能 2.0 の詳細設計を付加した GD の FFBD 2.1.4 Generative Dialogue の物理設計 GD の設計プロセスの最後として物理設計を行った。 本研究はワークショップを物理として設計を行っている。ワークショップは人が仕事または私生活で何が 必要かを知る短期間の対話学習のフォーマット (Fleming 1997: 95-98, Fleming 1997: 1-4)であり、短期集 中型であること、成果として行動変容が期待されること、学ばれたことが新しい学習へ応用されるなどの特 徴を持つ (山内ら 2013: 6-7)ことから、短期間で行動変容を促したい、研修での経験を職場に持って帰って

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21 ほしいという企業研修と親和性が高い。 ワークショップは、その内容すなわちワークにより、ワークのもたらす成果についてPenetrating(内向き) 指向か Presenting(外向き)指向か、あるいはワークが参加者へ及ぼす変容への期待として Process 指向か Product 指向か、といった分類方法があり(中野民夫 2001)、それぞれワークショップの目的及び機能にあっ た指向のワークを参加者は提供されることとなる。

本研究はGenerative Dialogue の定義から、本研究の設計するワークショップは Penetrating 指向のワー クと Presenting 指向のワークの双方であることが必要であると措定した。そしてこの二つの指向を、第一 に対話のためのワーク、第二にアイデアを生み出すワークとして別々に配置した。それに先立ち、本研究が 設計するワークショップへの参加者がワークショップの初心者であることを想定し、対話準備のためのワー クを前述の二つのワークの前に配置した。さらに、これら三つのワークを総覧した上で、FFBD で確認した GD を実現させるために必要な機能とワークのマッピングを行った。マッピングの結果を図 5 に示す。 図 5 機能と物理設計のマッピング

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22 本研究は、「対話のためのワーク」で設けるテーマを、自分の強みを探すとした。強みの活用感の高さはポ ジティブ感情を上昇させる効果がある (Wood et al. 2011: 15-19)。機能 2.0 だけであればテーマの自由度は 高くても差支えないが「3.0 参加者の高揚感が高める」ことを考慮したため、自由度の比較的低いテーマ設定 にした。 最初に行う「対話準備のワーク」では、事前に対話のテーマについて一人で考える時間を設けた。最後の 「アイデアを生む出すワーク」では、チーム一丸となって一つの課題を解決することを目指すワークとした。 「対話準備のワーク」と「アイデアを生み出すワーク」の間である「対話のためのワーク」においては、気 づきを得た自分の強みをアイデア作りとするため、強制連想法3) を使用し、アイデア発想の際、自分の強み を使うこと、という条件指定をして発想を行った。 物理設計の概要をまとめたものを表 1 として示す。 表 1 ワークショップ物理設計概要 2.2 評価方法 2.2.1 評価基準と手法 本章では、第2 章で設計した GD 生成ワークショップにより GD が生まれたかどうかについて、定量的及 び定性的に検証する。実験の対象者は社会人(成人男女)を想定している。 GD 発生の有無について、FFBD で定義した各機能の中でスコープの範囲内としている機能 2.0 から 5.0 までについて、それぞれ満たされているかを確認する。 まず「機能2.0 他者と連携することに積極的になる」及び「機能 3.0 参加者の高揚感が高まる」の二つに ついては、個人の感情の変化について、被験者への負荷等を考慮し、既存の心理指標を用い被験者にアンケ ートという形式でデータ取得を行い統計解析する手法を用いる。検定方法は、ワークショップ前後で一つの 被験群の事前事後の変化について測定し検定するため、対応のあるt 検定が適当であると判断した。 使用する具体的な指標として、機能2.0 については、「連携の強化量」を直接的かつ定量的に計測すること が困難であると考え、ワークショップ前後での参加者の心理的変化を協調的幸福感尺度 (Hitokoto 2014) 4)

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23 を用い、対人関係の質を幸福感として計測することにより他者との連携に積極的になっているかの代理変数 として判定に使用する。機能3.0 については高揚感を個人のポジティブ感情への影響について確認すること とし、PANAS (佐藤徳, 安田朝子 2001: 138-139) を用いて確認を行う5) 。両指標共に測定はいずれもワー クショップの前後で行い、心理学の統計的慣例 (水本 2008: 58) に習って有意水準を5%として規定する6) 「全く当てはまらない」、「あまり当てはまらない」、「どちらかといえば当てはまらない」、「どちらともいえ ない」、「どちらかといえば当てはまる」、「かなり当てはまる」、「非常に当てはまる」の7 件法を採用し、集 計方法は各指標の使用方法に則るものとする。 「機能4.0 参加者が一体感を持つ」については、複数の参加者の関係性の変化に起因して発生する事象の ため、統計解析ではなく参加者の様子を参与観察し、時系列とともに変化がみられるか分析する方法をとっ た7) 。最後に「機能 5.0 参加者のパフォーマンスが上がる」については、お題への回答に対し質的に評価を 行う。この際、アイデアの比較検討をするために個人でアイデアを発想する被験群を用意し、ワークショッ プ内でアイデアを発想する被験群のアウトプットと個人でアイデアを発想する被験群のアウトプットの比較 を、テキストマイニングを用いて行った8) 。なお、被験群を二つに分けた理由としては、アイデアの比較の 際、被験群を一群のみとした場合、同じお題で被験者が個人と集団とで二度アイデア出しを行うこととなり、 二度目のアイデア出しが一度目のアイデア出しの影響を受ける可能性があるためである。 最後に、企業内で複製性のある展開可能なワークショップであるかについて確認するために、検証終了後 A 社人事担当者より参加者に対し、全体の満足度についてヒアリング調査を行う。 2.2.1 試験の実施方法 実際に企業の現場で実施可能なモデルを構築するため、検証のためのプロトタイピングは企業への社員研 修という形で行った。今回検証先として選定したA 社は、大阪に本部を置く日本の製造業の典型的な中小企 業であり、事業部制を採用する典型的なサイロ型の組織である。第一章で論じられた従業員の連携に対する 意識改革の必要性という問題を抱えている。A 社は情報処理産業に属する中小企業であるが、社内コミュニ ケーションの課題は企業規模、産業を問わず日本企業で発生している (HR 総研 2016)とされ、本研究では A 社を日本の GD 生成ワークショップの有効性検証のフィールドとして採用した。 A 社の社員 30 名への GD 生成ワークショップを企業研修として実施した際の研修構成を図 6 に示す。な お研修参加者の30 名は 20 代から 40 代の、A 社内の各事業部内の幹部候補生が A 社内でそれぞれ選定され ている。 ワークショップ参加者を午前・午後各15 人ずつの 2 班に分け、午前班は先に個人でアイデア出しを行っ てからワークショップに参加させ、午後班は最初からワークショップに参加させた。アンケートについては、 便宜上それぞれ午前班をA、午後班を B とし、取得したタイミングに応じて下記のルールで名前を付けてい る。 事前アンケート:午前班 A-1 午後班 B-1 中間アンケート:午前班 A-2 午後班 B-2 事後アンケート:午前班 A-3 午後班 B-3 機能2.0 及び 3.0 については、B-1/B-2 のアンケート結果の比較で行い、機能 5.0 については A-1/B-1 の比 較で行う。4.0 については A/B 両方の参与観察により実施する。

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24 図 6 有効性検証のための研修構成 3.結果 以下、GD のそれぞれの機能について結果の詳細を述べる。 「機能2.0 他者と連携することに積極的になる」については、協調的幸福感尺度を測定し、p=0.057 とい う結果を得、ワークショップの前後において協調的幸福感の向上に有意傾向を確認した(表3)。また「機能 3.0 参加者の高揚感が高まる」については、PANAS の測定で、ポジティブ感情がワークショップ前後で、有 意水準5%で有意に向上したことが明らかとなった。またネガティブ感情についても有意ではないものの、 減少傾向を示していた。(表4 及び表 5)。 表 3 協調的幸福感尺度の変化による検証 対応サンプルの検定 対応サンプルの差 t 値 自由度 有意確率 (両側) 平均値 標準偏差 平 均 値 の 標準誤差 差の 95% 信頼 区間 下限 上限 項目 B-2–B-1 1.40000 2.61315 .67471 -.04712 2.84712 2.075 14 .057 表 4 PANAS によるポジティブ感情変化の測定 対応サンプルの検定 対応サンプルの差 t 値 自由度 有意確率 (両側) 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 差の 95% 信頼 区間 下限 上限 項目 B-2-B-1 6.73333 5.35146 1.38174 3.76980 9.69687 4.873 14 .000

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25 表 5 PANAS によるネガティブ感情変化の測定 対応サンプルの検定 対応サンプルの差 t 値 自由度 有意確率 (両側) 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 差の 95% 信頼 区間 下限 上限 項目 B-2-B-1 -2.40000 6.51153 1.68127 -6.00596 1.20596 -1.427 14 .175 次に「機能4.0 参加者が一体感を持つ」について、参与観察の結果、チーム内での一体感が生まれていた ことを確認した(表6)。 表6 によれば、最初の無言の状態と比べるとワークショップが進むにつれ、関係性に変化が起こっている。 対話が開始された状態では普段の仕事内容や営業所の様子など、仕事に関連する内容にフォーカスを当てた 会話が多かったのに対し、②‐2 の段階ではそういった会話が減少し、各人の見解や立場をいったん離れ夢 中で話をしている参加者の様子を確認した。 表 6 ワークショップ中の参加者参与観察結果 時系列 参与観察内容 キーワード ワークショップ 参加前 ・知っている人を探そうとする。 ・講師が話しかけても、今日は何をするか聞いていない、アイデア出しな どはやったことがないと訴える。と不安げな様子 ・地方の参加者の「地方からきた」「良く知らない」という言葉が目立つ ・机に座っても軽く挨拶をかわす程度でほとんど無言のチームが多い ・無言 ・不安 ・わからない ① 対話準備のため のワーク実施時 ・悩みながらワークに取り組んでいる様子。 ・自分の強みをすぐに書き終えられる人が少ない ・一人で集中 ② ‐1 相手の強み を探すワーク実 施中 ・仕事の話からインタビューに入る参加者が多い。普段どんな仕事をして いるか。 ・徐々に好きなもの、趣味、カラオケで歌う歌、ペットの話など、趣味や 個人的な話をするチームが増えてくる。 ・どこの誰であるのか、 を聞く会話 ・個人の話をするチーム がでてくる ・徐々ににぎやかになる ②‐2 相手の強み をリフレーミン グするワーク実 施中 ・意外な強みを指摘され「え、そこですか」と驚く声、笑い声が増えてい く ・「ありがとうございます」というお礼の声があちこちで増える ・互いのリフレ―ミングが終わった後も無言にならずずっとしゃべり続け ている ・笑い ・驚き ・感謝の言葉 ・ワークが終わった後も 会話 ③アイデアを生み 出すワーク実施 中 ・「うわ、またこのカードでた!」「もっかいやり直しますかーせーの、」 などといった掛け声、笑い声が響く。 ・気分が上がる、楽しいと直接講師に声をかけてくれる参加者もいた ・笑い ・掛け声 ・楽しい ④終了後 ・ワークショップの間気持ちが上がるのを感じた。気持ちが上がった、知 らない人だったが話せてよかったなど、積極的に講師に話しかけてくれる 参加者が多くいた。 ・気持ちが上がった ・知らない人と話せた

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26 「機能5.0 参加者のパフォーマンスを出す」について、アイデアのテキストマイニングを行った結果を表 7 に示す。 テキストマイニングにより、集団でアイデアを発想したチームにのみ、参加者が従来持っていた解決策の 思考空間すなわち解空間を抜け出るような単語が部分的に出現している。このことは、集団で発想すること により思考の枠が広がり、一人で考えているだけではなかなか思いつかないような発想が生まれていること を示唆している(表7)。 表 7 テキストマイニングによる分析 テキストマイニングの過程では、それぞれA-1 にだけ出現、B-1 にだけ出現の語がそれぞれ 30 語ずつあ った。本研究のワークショップのテーマは「今の事業部制という仕組みを維持しながら、各部署のそれぞれ の強みを、A 社の一つの強みとして結集するための案をだしてください」であった。個人でのみアイデア出 しを行ったA-1 についてはほぼすべての語が仕事、業務内容にまつわる内容であったが、団体でアイデア出 しを行ったB-1 では「五感、笑顔」など、業務にまつわる単語とは少し異なる単語が出現したことを確認し た。 最後に本ワークショップの参加満足度について、A 社人事担当より参加者にヒアリングした結果を記す。 担当者からは、研修終了後も参加者から特にネガティブなコメントはなく、社内の同世代及び昇級のメンバ ーと深められてよかった、いうコメントが多かったとのフィードバックを得た。また、検証に参加していた A 社のトレーニング担当から、本トレーニングを内製化したいという声もあり、今後本ワークショップが企 業などで誰もが使用できる複製性のあるモデルとして展開できる可能性が検証先から示された。 4. 考察 協調的幸福感の上昇について有意傾向が見られたという結果は、ワークショップ参加者が他者と連携する ことに積極的になるという変化を示したと言える。また上記上昇と同時にポジティブ感情の上昇にも有意差 が認められたことから、協調的幸福感とポジティブ感情の上昇の相関についても示された。 B-1(団体でのアイデア出し)にだけ出現 A-1(個人でのアイデア出し)にだけ出現 特技 業務 意見 幅広い 知る 言う 五感 顧客 知らない 課題 笑顔 発信 フィールド 実感 過去 格差 統一性 サポート 出席 特色 明らか 分割 地域 統括 顧問 臨機応変 不得意 協調 若者 案件 部門 ローテーション 定期 各部 事業部 実施 情報 クラス ごと お客様 研修 技術 管理職 体験 設ける 参加 限定 社内 OK 提供 か月 提案 個人 OJT 会議 リスト 人員 サイト 主任 弱み

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27 このようにGD を生むための機能 2.0 から機能 5.0 までの結果を考察し、GD が生成されたことを確認し た。さらに、FFBD で設計した GD の 5 つの機能、すなわち、対話に参加する、他者との連携に積極的にな る、参加者の高揚感が高まる、参加者が一体感を持つ、並びに、参加者のパフォーマンスを出す、を各要素 とするGD の構造化とその設計方法について、妥当性を確認した。 5. 結論 本研究では対話研究の中でもとりわけ連携及び協業における創発性が高い Generative Dialogue (GD)に 着目し、システムズエンジニアリングの手法を用いてその設計方法を提案し、その有効性を定性的及び定量 的に検証した。 具体的な設計モデルの構築に当たり、機能設計レベルではGD に必要な機能として、対話に参加する機能、 他者と連携することに積極的になる機能、参加者の高揚感が高まる機能、参加者が一体感を持つ機能、並び に、参加者のパフォーマンスを出す機能の5 つを特定した。そして、物理設計レベルにおいて、この 5 つの 機能を用い、企業内で展開可能な、GD を生成させるワークショップを設計した。 さらに、提案したGD 設計の有効性を定性的及び定量的に検証するため、日本の中小企業の典型的存在と 目される企業において、GD 生成ワークショップを実施し、参加者の参与観察、達成動機測定尺度、協調的 幸福感尺度、並びに参加者の発言のテキストマイニングにより、各機能の有効性について定性的及び・定量 的に同ワークショップの有効性を示した。 また、企業の現場でGD 生成ワークショップを実施し、参加者から高い満足度を得たことで、今後企業等 で連携及び協業の促進のためにGD 生成ワークショップが誰もが使用できる複製性のあるモデルとして展開 できる可能性を示した。 6. 今後の研究課題 今回は企業内において設計したGD の生成有無の確認を行ったが、企業間連携、もしくは複数セクターに またがる企業活動においても、本研究の設計方法が適用できるかどうかについては、引き続き検証を重ねて いく必要がある。さらにGD 生成ワークショップを企業内で継続して実施し、かつ内製化するにあたりワー クショップ実施の難易度が高くないかどうか、引き続き検証していく必要がある。また本研究はGD の生成 に着目した機能及び物理設計をシステムズエンジニアリングの手法を適用して行ったが、GD により変化し た関係性の維持をシステムズエンジニアリングの手法を適用して設計する研究も、今後の研究課題として進 めてまいりたい。 注 1)本研究の検証先であるA 社(従業員 400 名程度)の CEO、人事担当およびマーケティング担当者へのイ ンタビューによる。インテビューは2016 年 5~8 月の間に 2 回実施した。 2) Otto Scharmer は、対話をダウンローディング、ディベーティング、内省的対話、並びに生成的対話の 4 つに分類している(Kahane 2014: 138-139)。 3) マトリックス法とも呼ばれる。 4) 協調的幸福感尺度の項目数および算出方法(因子構造)は以下の通りである。 項目:以下9 項目。「自分だけでなく、身近なまわりの人も楽しい気持ちでいると思う。」「周りの人に認め

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28 られていると感じる。」「大切な人を幸せにしていると思う。」「平凡だが安定した日々を過ごしている。」 「大きな悩み事はない。」「人に迷惑をかけずに自分のやりたいことができている。」「まわりの人たちと同 じくらい幸せだと思う。」「まわりの人たちと同じくらい幸せだと思う。」「わりの人たちと同じくらい、そ れなりにうまくいっている。」 算出方法:上記9 項目の点数の平均値として計算する一因子構造 5) 日本語版PANAS における因子構造は NA(ネガティブ感情)因子、PA(ポジティブ感情)因子の二因子 構造である。 6) システムズエンジニアリングにおいて統計的有意水準について明確な基準が存在するわけではないが、本 研究は既存の心理指標を用いたことから心理学の統計的慣習に習い有意水準を 5%と規定し、有意水準 10%については有意傾向として表記としている。 7) 機能4.0 については、参与観察の結果において、例えばワークショップが進んでいる最中、個人に関する 質問が振られているにも関わらず普段の仕事内容や営業所の様子など、仕事に関連する話題に終始してい る、チーム内の人間と目を合わすより時計やメモなどばかりを見ている、声量が上がることもなく淡々と 冷静にワークを進めている、「わからない」、「できない」、「知らない」と言ったネガティブなワードが目立 つといった場合、関係性に変化が見られず結果が出ていないと判断する。 8) 機能5.0 については、テキストマイニングの結果において、会社の課題についてのお題に対し会社や業務 にまつわる単語しか出てこないなど、個人でのアイデア出し時に見られたような、解空間の中に止まる回 答しか見られない場合、結果が出ないものと判断する。 謝辞 本研究の検証先となったA 社に感謝する。同社 CEO、マーケティング担当者、並びに人事担当者からは ワークショップ実施に当たり多大な支援を得た。さらに事前検証の実施や有識者レビューにおいて、慶應 SDM 及び同附属 SDM 研究所有志、NPO 法人ミラツク関係者の協力を得た。また匿名の査読者から有益か つ貴重なコメントを頂いた。記して謝意を表す。 参照文献 安部和秀、高野研一, 2017, プラント建設プロジェクトの成功に影響する 組織のレジリンス向上とプロジェ クトマネジメント施策との関係, 日本建築学会計画系論文集. 石井浩介, 飯野謙次, 2008, 設計の科学 価値づくり設計, 養賢堂. 岩間 暁子, 1997, 性別役割分業と女性の家事分担不公平感公平価値論・勢力論・衡平理論の実証的検討, 家 族社会学研究, 9, 67-76. HR 総 研 , 2016, 社 内 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 す る ア ン ケ ー ト , ProFuture 株 式 会 社 , http://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=153.(最終アクセス 2017 年 5 月 31 日) 慶應SDM, 2014, システム×デザイン思考で世界を変える, 日経 BP 社. ワークショップで用いる基本手法解説書, 文科省, 2013, http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/06/1347910_4.pdf (最終アクセス 2018 年 2 月2日) 佐藤徳, 安田朝子, 2001, 日本語版 PANAS の作成, 性格心理学研究, 9, 139.

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図 3  GD の機能 2.0 に関する Enabler Framework

参照

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